sf小説・体験版・未来の出来事22

YP33号はロボットらしく、頭をかしげて、
「御嬢様、なんの事でしょう?私には分かりません。」
と言うのだった。
ソープ嬢の赤鳥女子は、
「わたしの名前は赤鳥華子(あかとり・はなこ)っていうの。あなた、わたしを何処で知ったのかしら。」
「ええっ、赤鳥華江さんでは、ないのですか。」
「それは、わたしの姉の名前。姉さんは一人娘だから家に、いつもいて外には働きに行かないわ。わたしは、あの大邸宅を抜けて町に住んでいるの。そうしないとソープで働けないから。」
「ああ、姉妹だったのですね。仕舞いには姉妹と分かる、ですか。」
「おほほ。ロボットにして語呂合わせができるなんて、あなた、中々ね。」
「いえ、それは自由意志を与えられています、少しだけですが。」「そうなの。プレイは、あと一つ体位を変更して出来るけど、する?」
YP33号は最早、愚息が↓縮んでしまい、伸び↑上がらないのを自覚した。あの令嬢の妹というだけで、勃起不能✖となってしまったのだ。ロボットの頭には、そこまでのプログラミング‰がされている。YP33号は、
「もう、できないみたいです。あの御嬢様の妹様と、あれだけの行為を出来たのも、あなたが他人の空似と私の脳が認識したからこそ、できた性行為でした。」
過去を懐かしむような語調で話したYP33号は浴槽を出ると服を身に着け部屋を出ていく。そこで動画は終わった。
 霧沢は釣次郎に、
「面白かったろう、どうかね?」
「ええ、地球ではロボットは、あそこまで進化していないようですよ。」
「もう地球の大気圏内だよ。私の弟の邸宅の屋上に着くと分かる。」
その時、機械音でアナウンスが流れた。
「目的地ニ到着シマシタ。」
UFOの窓の外は郊外の風景を映している。切れ目のない壁が開いた。霧沢は立ち上がると、
「さあ、外へ出よう。地球に着いたのだから。私の弟の屋敷の屋上にね。」
と釣次郎を誘う。霧沢を先頭に外へ出た二人を冬の寒気が歓喜の声を上げるように迎えた。二人とも冬の服を着ているから、寒くはない。!

れは福岡市東区ではないか、釣次郎には予測できる自信がある。何故なら屋上から見える風景は彼が、かつて見た事のあるものだからだ。
 みならず、彼、釣次郎は来たことがある、この辺に、そうだ、まだ幼いころに・・。だから思い出したのだ。

驚きだが、とても愉快な気がする。UFOに乗せられて地球のどこに行くかと思ったら、なんと福岡市ではないか。釣次郎の不安は完全に消去された。
 屋上に一人の中年紳士が現れた。どこか霧沢と似ている。もしかしたら、この人が・・・、彼は霧沢を見ると、
「兄さん!よく来てくれたね。もう少し遅いかと思っていたよ。」
と霧沢に向かって両腕を広げた。霧沢は、
「金雄。元気そうだな。発明を頑張っているか。」
と楽しそうに云う。金雄と呼ばれた紳士は、
「もちろんさ。下に行こうよ。」
「ああ、連れて行ってくれ。」
「そこの貴方も一緒に、どうぞ。」
と釣次郎に手招きした金雄氏であった。
 エレベーターで降りた場所が金雄氏の部屋らしい。社長用の部屋らしい雰囲気を持っている。金雄氏は社長のイスを霧沢に手で示すと、
「兄さん、座ってくれよ。ぼくの椅子に。」
「ああ、いいよ。うん、いつもながらイイ座り心地だ。」
金雄氏と釣次郎は社長のいすに座った霧沢の前の横長のソファに座る。大きな窓の外には鷹が悠然と大空を飛んでいる。
社長の机の上にはパソコン、小山のように積んである書類、何かの試作品のような機器類、コーヒーカップなどがある。霧沢は右手で金雄氏の横に座っている本池釣次郎を示すと、
「地球から来ていた漁師の本池クンだ。本池クン、私の兄の黒沢金雄、株式会社サイバーモーメントの社長だ。」
と自分の兄を紹介した。
 黒沢は釣次郎を横目で見て、
「おお。漁師なのかい、君は?」
と好奇心を示す。釣次郎は右横の黒沢に、
「はい。漁師ですけど、小説を読みます。SFが好きなんですよ、ぼく。」
とハキハキ・テキパキと答える。黒沢は即座に、
「それなら漁師などやっているより、ウチに来て働かないか。自衛隊からの注文が多くてね。馬の足でも借りたいくらいなんだよ。」
と釣次郎に申し出る。
釣次郎は最近、福岡市の湾内では漁獲高が減っていたので、
「漁師を廃業する予定でした。仕事をさせてください。」
と即応したのだった。二人を見ていた霧沢は満足げに、
「金雄。そちらだけでは新兵器の開発プランですら間に合わないだろう。こちらからも提案してやるよ。」
と激励する。
「ありがとう。兄さん。母は先週、死んだ。」
霧沢の顔は、それを聞くと少し哀愁を漂わせて、
「それは悲しいだろう。しかし、私の母ではないし・・・。」
と言葉を濁すと黒沢は、
「そうだね。僕らは父さんが同じで母親は違うものね。兄さんの母は地円の陽元人だろう。」
「そうだよ。まだ生きている。地球人より地円人の方が長生きだね。三倍は生きれるよ。おれたちの共通の父も、まだ現役で働いているからな。」
「そうだったね。父さんは時々、地球に来て僕に会いに来るよ。でも母さんが生きていた頃も、そんな具合に時々しか地球に来なかったから母子家庭となっていたんだ、うちは。」
「ふむ。それを申し訳なく思っていたらしいから、金雄の母さんには兆単位の資産を送っているはずだ。スイスをはじめにして世界各国に資産を分散させ、仮想通貨もあるはずだよ。そうだろ。」
「そうなんだ。それで僕はね、大学院を出てから働いたこともなくアルバイトさえ、したことが無い。有り余る研究費を母さんから貰い、パソコン関係の特許を取った後は会社を作ることが出来た。恵まれた生き方をしてこれたよ。」
「それは、よかった。おれも働いたことは、ない。自分の趣味を仕事にしているし、だれにも雇われたことはないな。」
ここで霧沢は本池釣次郎の方を向くと、
「漁師だそうだけど、君は親の仕事を継いだのだろうね。」
と尋ねたので釣次郎は、
「ええ、父からの仕事をやっています。漁船一つで漁をしていますよ。」
と答えると霧沢は、
「ふーむ、それならロボット漁業も、していないだろうね。」
釣次郎は初耳の話に、
「ロボット漁業ですか?ええ、第一にロボットなど持っていませんし。」
霧沢は、
「地円の漁業はロボットが行っているものが多いよ。人魚型ロボットが海中に飛び込んで、海水中に網を張る。魚の多い場所までは網を広げないけど。漁獲を見込める領域まで海中を泳いでいく。
人魚の形で足は無く、尾ひれがあるから魚も安心して逃げないようだ。彼女の目は暗い海中でも光って見えるのだよ。地球の漁業は古来と、あまり違いはないだろう。」
と話す。釣次郎は、
「ええ。そういえば、そうなります。それでサイバーモーメントでモニターとして働ければ、と思っていますから、今は。」
と自分の胸中を語った。
黒沢は自信に満ちた表情で、
「防衛費は国家予算の30%になったから、うちに送られてくる仕事も豊富にある。兄さん、貴重な人材を有難う。」
「いや、おれの功績じゃないよ。知り合いの若い女性が連れて来たんだ。」
「そうか。不思議な巡り合わせだな。丁度、うちに若い人材が欲しいと思っていたんだ。兄さん、この件についての御礼は必ず、する。」
「そうかい?それじゃ、期待しておくよ。私は地円に帰るから。」
と話すと霧沢金之助はサイバーモーメントの社長のイスから立ち上がった。
 霧沢金之助が乗り込んだUFOは瞬時にして黒沢と本池釣次郎の視界から消えた。地円の陽元に帰っていったのだ、サイバーモーメントの社長の黒沢金雄の父は地円の陽元人だった事が判明したのだ。道理で頭のいい黒沢である。
黒沢の母、金子(かねこ)は新興財閥の一人娘で過去の時代的な表現では深窓の令嬢という形容が成り立つかもしれない。その財閥はインターネット関連の会社を複数×複数と増大させていった時代の先駆け的な会社だった。金子には自分用のパソコンを与えていた両親だ。彼女は幼いころからパソコンを触り、インターネットに接していた。小学校のころから通学は黒色の車で運転手が送り迎えしてくれた金子だった。その広い車内の後部座席で金子は、ゆったりとシートに背中をもたせて窓の外は見ずに左手に持ったスマートフォンでネットサーフィンを楽しむ。福岡市の中心に近い場所の小学校から大学まで一貫して進学できる教育機関に金子は通っていた。その通学手段は運転手付き自家用車だ。男女共学だが私立の小学校で入学者も少ないのは九州の福岡県福岡市なので珍しい話ではない、やはり富裕層の世帯が少ないのが一番の原因で教育熱心な親も少ないせいだ。福岡市には中学、高校と進める私立の学校は女子専用というものも二校あるし、中、高、大と進学できるキリスト教系の学校もあるが、小学校から大学までという教育施設は21世紀になってから創設された。
 そこから金子の自宅までは片道で自動車でも三十分は要する。所要時間三十分は窓の外に見える同じ風景よりもスマートフォンで好きなサイトを見て回るのが金子には面白い。
そういう通学を続けて今は大学に入り、二年目になって成人式を迎えた。この十三年間というもの運転手は同一人物で金子には必要な言葉しか喋らない。深く帽子をかぶっていて、顔は良く見えないが運転手の声は若い男性の声だ。金子は運転手は気にならなかったのだ。それは運転が凄くうまくて文句のつけようのないものだからだ。交通規則に違反することも一度もない模範的な運転手。だから金子は運転手に何か言ったことは実は、ない。それでも成人になる前から女性としては発育してくるし、運転手が男性らしいのは少し気にはなる金子では、あった。自分の胸は大きくなってきたし、乳首の感度も鋭いものを感じる。股間の黒の茂みは中学三年生で生えそろったし、その頃、生理も始まったが、運転手は気にならなかった。自宅に到着すると運転手は、
「御嬢様、着きましたよ。」
と簡潔に声を後部座席の金子に送ってくれる。そして、その声は金子が何か言いたくなるような声音でもなく、
「ありがとう。」
と一言、話すと後部座席の横のドアは金子が手を触れなくても横に開いた。
金子は理系の学部で生物学を学んでいた。同級生の男子は皆、眼鏡を掛けた真面目な青年ばかりで、金子には好意は持っても恋愛対象にはならなかったらしい。それで私的な会話を同級生の男子と小学一年生の時から交わしたことのない金子だった。
金子の母はインターネット関連の会社で働いていて金子の父と出会ったのだが男性と気軽に交流することの多い女性で、金子が十歳になるまでは父以外の男性とも交流を持っていた。それが、どの程度であったのか金子には知る由もない。そういう母は金子が成人した時は四十歳で、父は四十五歳だ。和服を着た金子の母は日本風の居間で金子に、
「金子。あなた男の人と交際したことないでしょ?」
と彫りの深い笑顔で訊いたので金子は、
「ええ。ないわよ。なんで、そんな事を聞くの?」
二人とも立ったまま、会話をしている。母は、
「わたしが十九歳のころには父さんと知り合って付き合い始めたのよ。その前に、ネット通販でバイブレーターを買って試していたのよ。そしたら或る日、電車の中で父さんと知り合いになり、休日には父さんの車で福岡市郊外にドライブしてね。色々な場所で夕陽を見ながらキスをしたものだわ。」
「ふーん。そうなの。それで十九で私を身ごもったのね。」
「そうなるわ。できちゃったわ、どーしよー結婚よ。私も父さんも会社員だったけど違う会社だったから、社内恋愛では、ないのね。」
「そーかー、それで?」
「だから、あんたもさ、わたしを見習って早く結婚したら?どうなのよ、って話なの。」
「そういう事ね。でも、大学の勉強は私には面白いものなの。周りの男子も勉強好きな真面目な人ばかりで。」
「母娘って似ているのよ。勉強より男を捕まえなさい。母さんがバイブレーターを買ってあげようか。」
「そうね、買ってもらってもいいけど。でも、ふつーさー、そんな話をするの?母が娘に。」
「普通、しているかもよ。わたし、あんたの子供、つまり私の孫の顔が早く見たいのよ。あんた私の一人娘だもの。わたしたち夫婦で働いて大金持ちになったけど、わたし大金には余り興味がないから孫に全部上げたいから。あんたも早く相手を見つけなさい。」
「って、命令するの?わたしに。」
「命令は、しないけど。勧めているだけ、だけど。あなたは私より美人だし、胸もお尻も大きくなったわ。そっか。」
と話すと金子の母は右手の人差し指と親指を合わせてパチン、と弾いて音を立てると、
「美人は敬遠される昔からの日本の風土。あんたを美人に産んだ私が悪いのだわ。ごめん、金子。」
「何も謝らなくてもいいわよ、母さん。それに別に異性で悩んでいる訳でもないもの。」
「異星で異性に悩んだら?」
「え、何のこと、それ。」
「地球外の星を異星というわね。その星の異性、つまり自分と別の性別の男性に恋をするの。」
「そんなのー、SFじゃないの、母さん。」
「いえ、いえ。その位の気持ちを持ってほしいの、母さんは心配でね、金子が一生独身でいたら、どうしようかって悩んでいる事もあるから。」
「独身だとしてもウチは、お金あるでしょ。わたし、一生困らないはずよ。」
「それは、そうだけど。一般的には晩婚の日本だから焦らなくても、いいわよ、金子。」
「ええ、もちろん、そうするわ。でも、頑張ってみようかな?」
母の琴音は娘の頑張る発言に同意した顔で無言になり、金子は自由奔放な身動きで自分の部屋へ行く。窓の外には小さな山が見え、紅葉の季節だ。山の麓の林が秋を主張していた。母には、あのような強気の発言をしたが、金子は実は男性との出会いを熱望していた。一人で自分の部屋にいる時は頭の中に、その出会う男性像を思い、見えない絵筆で理想の男の姿を描いてみる。いっそ日本人離れした男性がいい、と思うと彫りの深い顔に目は青で…、いや、行き過ぎかな、そうだ瞳の色は茶色がいい、鼻筋が真っすぐで高く、髪は短くなくてもいいし・・・
 幼いころから親しんだノートパソコンはテレビのない部屋で何でも娯楽を提供してくれる。理想の男性の顔を画像を組み合わせて作ってみるのも金子の最近の楽しみの一つだ。金子はプログラミングも出来るので写真画像のソフトを作って自分で楽しんでいる。が、写真は現実的すぎて、どうも自分の理想の顔は作れない。幻想の方が理想の男性像を作りやすいのだ。それで金子は目を閉じて、その理想の男性を思い描くこともあるし、目を開けたまま白昼夢のように、その男性を見ることもある。どちらにしても若い男性で知的で容貌の整った白おもての顔の人。(日本人には中々、いなさそうだけど。)と金子は思う。それが段々とハッキリ、金子の心の目に見えてきた。
バイブレーターって、母さんが言っていたわ、よし検索しよう。金子は心の目を閉じてノートパソコンで検索する。
一番上に出てきたのは、
最新バイブレーターを御紹介
というサイトだ。それを金子はクリックする。
何人かの人気AV男優の顔が掲載されていて、その男優の男根から製作したバイブレーターを売っていた。金子の理想の男性の顔には程遠すぎるAV男優の顔だが、無理にも一人を選ぶと、そのバイブレーターを買い物かごに入れる。そして清算した。注文完了!即日配達で、つまり今日、届く!東京ではないのに地方都市の福岡市でも今日、届くのだ。ネット通販も進化したものだ。
 その日の夕方に金子が大学から帰ると母が玄関に立って右手に小包みを持っていた。母の琴音はニヤリとすると右手を肩の高さまで上げて、
「これは大人のおもちゃでしょ。」
と訊いてくる。金子は、
「ええ、そうよ。母さんがバイブレーターの話をしていたから。」
「それじゃ、バイブレーターなのね?」
「ええ、そうです。御明察のとおりよ、母さん。」
「それなら、中を見ていいかしら?どうせ、あんたの御小遣いは私が出しているんだから。」
「ええ、でもスグに持ってきてよ。」
「はい、はい。すぐに二階のあんたの部屋に持ってきますよ。」
二人の母娘は玄関から、それぞれの部屋へ散開した。
 二階の部屋に入ると金子は椅子に座り、(もう届いたわ。AV男優、今唐達蔵(いまから・たつぞう)のペニスのバイブレーターを見て母さんは何を思うのかしら?)
母の琴音は自分の部屋の和室で(富裕な家らしく、夫人の部屋もある)娘の金子に送られてきた大人のおもちゃの小包みを開いた。中から出てきたのは茶色の男性器の平常時の長さのモノ。白い紙には、
この度は弊社の製品をお買い上げいただき誠に有難うございました。
AV男優の今唐達蔵の男性器を再現したシリコン製のバイブレーターです。このバイブレーターの特質は勃起する事。女性の肌を感知すると勃起を始めます。お客様が女性の場合は手の指で触っただけでも勃起し始めるでしょう。その他のもっと女性らしい部分で接触した場合は完全勃起までの時間は短くなるように設定してあります。
唇、乳房、乳首、そして女性器そのもの、などなど色々な部位で、お試ししてみては、いかがでしょうか。
 という説明文だった。もちろん、それ以外にも、その会社の住所やサイトおよびメールアドレスなども記載されている。琴音はビニール袋に入っているバイブレーターを取り出した。が、何の変化もない。(あれ?勃起しないわよ。あ、そうか。電源を入れていなかった。ん、充電すれば、いいのね。)ACアダプターでバイブレーターを充電する琴音。充電は十分と短い時間で済んだ。再びバイブレーターを細い指で握る琴音は手の中に膨張してくるバイブレーターのバイブレーションを感じた。(大きくなってきた。硬いわ・・主人のよりも、すごくなりそう。)
完全勃起したバイブレーターは亀頭の張りも十分だ。琴音は椅子に座ると足を大きく開き、熱さえある、そのバイブレーターを自分の中心に持っていく。

 二階にいる金子は母の琴音が中々、階段を上がってこないので、
ノートパソコンを起動するとメールが届いている。
 貴女を探していました
という件名で、本文は、
生物学者の会合で日本に来ています。貴女の大学の先生から生物学に熱心な人がいるという事で、紹介してもらったのです。ひまな時にでもメールください。星頼北男(ほしより・きたお)と言います。
(ほしより・きたお、って変な名前だけど、日本人みたい。海外に住んでいるのかな。)と思うと俄然、好奇心が沸点に到達する勢いで跳ね上がる。それと同時に条件反射のように金子の両手の指は、返信メールを打っていた。
こんにちわ
メールをありがとうございます。今、ひまなんです。ぜひ、お会いしたいと思います。
 それを送信すると五分もしないうちに返信が来た。
迎えに行きますよ
貴女の自宅の住所も教えてもらっています。今から車で行きますので、自宅にいるなら待っていてもらえませんか。
 それを見て金子は返信した。
待っています
自宅にいますから。
 一分後に門の外に車が停まる音がした。金子は下に降りると、母の部屋から、
「ああ、すごいー。」という甘えるような声がした。多分。バイブレーターを使っているんだ、と金子は思ったが玄関を開けて外に出ると門の外に白い大きな車が停車していた。玄関の鍵を掛けると身をひるがえして金子は門の外に出る。白い車の運転席が開くと、中から背の高い好男子が現れた。金子は思わずア!と叫んでいた。その好男子の顔は、自分がパソコンの画像ソフトで作成した理想の男性の顔、そのものなのだ。神秘学でいうところの引き寄せの法則が働いたのだろうか。驚いている金子を見ると、その男性は笑顔で、
「星頼です。メールしたんですよ。ドライブしましょう。乗りませんか。」
と優しい声で誘う。金子は逆らう意志など爪のかけらほども持っていず、
「乗りますわ。どこへでも連れて行ってください。」
と答えると白い車の開いたドアから助手席に乗り込んだ。
 運転席に星頼も戻ると助手席の金子に、
「行きたいところ、ありますか?」
「え?海でも見たいです。」
「それなら第二アイランドシティに行きましょう。」
「アイランドシティの隣の新しい人口島ですね。うわあ、行きたかったんですよ。」
星頼北男は運転席の前にあるタブレット型のようなパソコンに似た画面に出ている地図のある地点を指で押す。そこが福岡市の第二の人口島、第二アイランドシティだ。それから自動運転のボタンを押した。アクセルが自動で下に下がると車は快適に発進した。自動運転の開始、人間の目と違って自動運転の車の目であるカメラは前後左右についている。それを同時に捉えられるのが人間の目よりも優れている点だ。車の自動運転より二つの目で判断して運転する人間の自動車操縦の方が、より危険性があるのは核爆発を見るより明らかだ。
シートベルトも発車前に自動で運転席と助手席の二人に絡みつき、嵌め込まれた。助手席の窓から金子が見る風景は車の窓も大きいので、街路樹の緑が印象的だ。第二アイランドシティの隣に浮かぶ福岡市最初の人工島のアイランドシティの上空に浮かぶ愛高島は今でも世界最大の謎とされているが、これは火星人によって作られた巨大なUFOであるのだ。その事実は知られてはいないが、地円の陽元人などは知っている。
 金子の目に人工島の上に浮かぶ不思議な島の愛高島が映った。金子は、
「わたし、まだ一度しか愛高島に行ってないんです。子供のころ、両親に連れられてヘリコプターで行きました。」
と言葉を運転席の星頼に投げる。
それを聞いた星頼北男は気軽に、
「あの島には着陸許可が要ります。この車では行けませんよ。」
「えええっ?この車は空を飛べるんですか?」
「ええ、もちろん。だから、あの島の近くまで飛んで空中で停止しましょう。そこからの眺めは超絶景ですよ。大絶景かな。」
「でも、とても目立つのでは?空に浮かんだ車なんて。」
「あ、いや。ある電磁波を車の周りに張り巡らせれば、人間の目には見えなくなります。スイッチを押すだけで。」
と云うと星頼は右手の人差し指で運転席の一つのボタンを押した。突兀として二人が乗っている白い自動車は空に躍り上がったのだ。後ろを運転していた車の運転手は、
「なんだ、前の車は!消えてしまったぞ!」
と大声を上げた。後部座席の会社の同僚は、それを聞いて、
「消える車なんて、ないだろう。頭は大丈夫か。」
「大丈夫だよ。やはり見えなくなって、戻ってこない。」
「何かの錯覚だろう。気にするな。これから重要な商談だぞ。取引先に今のような話は絶対にするなよ。」
「ああ、わかったよ。黙っておこう。」
その時、星頼北男と黒沢金子を載せている車は愛高島の近くで空中に停車していた。星頼北男は、
「金子さん、窓の外から下を見てください。」
金子は大きな窓ガラスを通して見える博多湾と、二つの人口島が見えるのを信じられない気持ちで、
「夢を見ているのかしら、わたし。車がこんなにも高い空中に浮いているなんて。」
「これこそ最高のデートスポットです。今、後部を変えるから。」
と話すと星頼北男はハンドル近くのボタンを押す。すると後部座席が広がり、それは縦にも横にも広がったのだ。後部座席は折りたたまれて床からダブルベッドが、せりあがってきて止まった。両側と後ろの窓には赤いカーテンが現れ、ベッドの横には小型の冷蔵庫まで出てくる。それで、まるで後部座席はラブホテルのように変貌したのだ。星頼北男は、
「金子さん。後ろの座席を見てください。」
金子は後部座席を振り向き、あっと息をのむような顔をした。そして、
「いつの間に、こんなに変わったのかしら。最初は、こんなものは、ベッドなんてなかったのに・・・。」
「今、変えたんですよ。金子さん、ぼくは貴女の理想の容姿と思うのだけど、そうかな。」
「そうなのよ。わたし驚いています。自分で画像ソフトで描いた男性像と貴方が生き写しなくらい似ているんですもの。」
星頼北男は勝者の自信を見せて、
「金子さん、後ろに行きましょう。そして僕らは好きなことが出来る。」
「椅子があるわ。窓の外に出るの?」
「いや、椅子は今から引っ込めます。」
星頼北男の指がボタン一つで、二人の座席の背もたれを下部にしまいこんだ。
星頼北男は金子を横抱きに抱くと、後部にある広い部屋へ運び、ダブルベッドに金子を横たえた。
金子は手早く全裸にされ、星頼北男は自分も全裸になる。金子は、さっき見たバイブレーターよりも星頼北男の股間に、ぶらさがったものが勢いよく立ち上がるのを見て、次に北男の美顔が自分の顔に近づくと自分の唇と北男の唇が重なり、自分の柔らかな太ももは広げられて北男の、そそり立つものが自分の洞窟の中に入るのを感じ、その甘美な感覚に忘我の状態となっていった・・・。

 それから二時間は二人は快楽の世界にいたが、北男とて二時間連続して立たせていたものも、ゆっくりと平時の状態に戻った。その間、三回は放出させて持続させていたから見事なものだ。四回目の金子の中への放散により、満足したように萎えていったのだ。北男は自分の横に寝そべっている金子に、
「驚いたかな?こんな展開に。」
と訊くと目を閉じていた金子はパチと両目を開き、
「いえ、理想的な成り行きです。もしかしたら、すぐ妊娠するかも。」
「ああ、それは私の望みでもあるよ。実は私の顔は、本当は今の顔ではない。」
と告白するように話した星頼北男だ。金子は困惑して、
「本当の顔?って、なに、それ、どんな顔?」
「こういう顔なんだ。そら。」
北男は自分の顔に両手を掛けると、顔の皮を剥ぐような動作をした。するとマスクが剥がれたように、北男の顔は別人の顔が現れた。その顔は科学者の顔、というべき顔で、さっきまで金子に見せていた甘い美男の顔では、なかった。
金子の心臓はギクリ、とした。別人の顔とは言え、悪い顔でもない。金子は、
「びっくりしたけど、なぜ、そういうマスクを着けていたの?」
「それはね、君の理想の顔を変顔マスクに作ったんだ。私は地球人ではない。地円という星の陽元という島国から来た。本当の名前は霧沢という姓だ。霧沢無次郎と(きりさわ・むじろう)いうのが本名さ。地球の日本人の名前みたいだが、そもそも地円から太古の昔に地球に来た我々の先祖が日本の女性と性交して産ませた子供は今の日本人に多数いる。君の理想の男性像についてはUFOから君のパソコンにハッキングして、その顔を見ていたから、それをスキャンして変顔マスク生成機に送れば、地球のパソコンの印刷みたいに変顔マスクが出来上がる。それを自分の顔に装着すれば、君には君の理想の男性の顔が見えた、というものだよ。」
金子は成る程、と思った。すごい科学的な機械だ。UFO?やっぱりだわ、地球の科学じゃないもの。星頼北男、本当の名前は霧沢無次郎の男は、
「金子さん、これからの生き方は貴女の自由だ。他の男と結婚するのもよい。ただね、わたし霧沢無次郎は貴女の生涯を地球の誰よりも裕福に暮らせる資産を送り続けることを約束しよう。どれどれ、ちょっと確認させてくれ。」
と彼はベッドの脇の台にある体温計のようなものを手にすると、金子の陰毛のあたりに接触させた。すぐに外すと、その体温計のようなものをジッと見た霧沢は、
「よし。妊娠している。男の子が生まれるだろう。その子には金雄と名付けたらいい。でも、これは提案だから金子さんが名付けてもいい。」
「金雄にしますわ。私の名前と似ているし。」

 服を着た二人は前部の座席に戻ると、霧沢無次郎は下界に車を降ろし、金子の自宅まで送った。

 サイバーモーメントの社長黒沢金雄は社長室で本池釣次郎に、
「わたしの母は数か月前に死んだ。私の名前の金雄は異星人である父が提案したものである、と母には聞いていたが・・・そして兄もいることも。さっき君と来た霧沢さんが僕の異母兄なんだ。サイバーモーメントの発明品の多くは、あの兄の発案が多いのさ。とても優しい兄さんだ。母は結婚せず、独身をとおした。それは男性の稼ぎなしに、母も働く必要がなく生きていけたからだ。その資産は私の実の父である地円から送られてきていた。」
本池釣次郎は、
「すごすぎる話ですね。僕も地円に連れ去られて、それから、ここに来たんです。」
黒沢は社長のイスから身を乗り出すと、
「そうだったのか。それまでは一漁師としての生活を送っていたわけだ。」
と語りかける。釣次郎は、
「そうなりますが、でもSF小説を読むのが好きで、漁師なんて退屈な毎日と思っていたんですよ。」
「そうだろう、そうだろう。漁業は少しも進歩しなかったからな。海に囲まれた国としては変な話だ。それではサイバーモーメントに入社、という事で、いいな?」
「それは・・・僕も完全に漁業を捨てられません。家が代々、引き継いできた職業なので・・・。」
「それでは、まずはアルバイトみたいなものでもいい、か。」
「そうです、それなら出来ますよ。」

 陸上自衛隊の第四師団がある春日市は福岡市の南にある。外から見ても、その地下に広大な敷地があることは分からないだろう。その敷地は地上の三倍とも言われるが、今なお造営中だ。ジープで荒堀二尉に連れられて本池釣次郎は正門から陸上自衛隊春日駐屯地に入った。荒堀二尉はジープを降りると、
「まずは、やらなければならない事がある。それを、まず、やりに行こう。」
と話した。釣次郎は訳も分からずに、
「はい、お願いします。」
と答えると、颯爽と制服を着て歩いている荒堀二尉に遅れじと、ついていく。建物は多く、何が何やら分からない釣次郎は、その中の一つの兵舎に入った。荒堀二尉がドアを開けると、その中は白い服を着た隊員がいて釣次郎を見ると、
「今から調べるから、こっちに来るように。」
と話した。そこは医務室のような部屋だった。白衣を着た、その隊員は、
「その椅子に座って。上着とシャツを脱ぐ。」
と指示し、上半身を露呈した釣次郎の胸に聴診器を当てた。
「うん、異状ないよ。あとは体重と身長を計る。」

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