sf小説・体験版・未来の出来事23 陸上自衛隊・春日学校・虹一号作戦

 中国からの女性客を優先して回してもらえるなんて、嬉しい限りだが、それでは工作員としての仕事は捗らない。だが社長の行為を断るわけにもいかずに珍光年は、
「ありがとうございます。がんばりますよ。」
と元気よく即答した。

 陸上自衛隊の春日駐屯地の地下で講義をする元海教官の話に戻ろう。
「・・・という事で防衛大臣の腰野カルコは辞任することに、なった。という事例は君達は小さい子供の頃の話だから知らないと思うが。その盗撮ビデオは情報第三部で鑑賞した後に、業者に出品させた。情報第三部の名前で出品することなど、ありえる話ではない。又、その業者も陸上自衛隊春日学校の情報心理戦対防護必須課程を修了した隊員が作っているアダルト専門の会社から出品する。
収益は陸自で取るわけでなく、春日学校出身の隊員が運営しているアダルト会社の収入になるよ。
防衛女大臣の腰野カルコは無料で出演、中国の工作員青年も無料出演だ。彼らは性器を露出させているしな。時君、何か質問があるか?」
と元海教官は流太郎に質問を振り向けた。流太郎は考えて、
「それにしても凄い話ですね。それでは僕らも、こういう事をしないといけないんですか。」
元海教官は静かな笑顔で、
「なーに。ここまで高度な事は、しなくてよい。盗撮機器の操作も実習の必要は、あるから。君達には、もっと簡単なことをしてもらう。国会議員の暗殺の手伝いとかも頼むかもしれんな。ま、冗談と今は受け取っておいてくれ。
腰野カルコが知りうる自衛隊の情報は大したものではないが、工作員に入手されていいというものでもない。国会議員の中にも他国へ情報を流す輩、それは男女を問わず、いる。愚民が選ぶ政治屋だ。金さえもらえば他国に国家の機密は、どんどん流しているのも、いるからな。
特に中国から大金を貰って、せっせと情報を流す政治屋は国会議員に限らず、都、府、道、県会議員、市会議員の中にも、いるのだ。
それらの輩を暗殺せねばならない、と思わんかね、本池クン。」
と今度は釣次郎に質問が飛ばされた。釣次郎は、
「ええ、まあ、思いますが。まるで小説か映画のような話ですね。」
と答えると元海教官は、
「うむ。そうだなー。でも実際に行ったとしても国防の為だ。売国議員は抹消する必要は、あるよ。これらの調査は情報本部第三部で、おこなっていると少し記憶しておいて外では話さないようにしてもらいたい。という事で、君達への指令は自衛隊情報本部第三部から来ることもあるし、参謀本部から来ることもある。ま、この陸上自衛隊参謀本部も自衛隊の組織図には載せられていないが、実は、この参謀本部が陸上自衛隊の最上部組織なのだ。統合幕僚監部の上に位置した自衛隊の最高機関なのだね。これは政治屋も国民も知る必要は、ないし自衛隊の機密の一つだからだ。
 君達も、この機密は守るように。外の人間に話さないように。
 まず君達に課せられた任務は女体一号作戦、と名付けられている。それと君達にはコードネームが与えられる予定だ。」
釣次郎は思わず、
「コードネームって、なんですか。」
と訊いてしまった。元海教官は、
「おほん。(と咳払いして)こちらが質問をしていいと時間を取らない限り、質問や意見は言わないように。」
と厳重な注意をした。釣次郎は、
「すみません。気を付けます。」
元海教官は、
「よろしい。君達には諜報活動の手伝いをしてもらうのだ。そこから考えても分かりそうな用語だな。時君のコードネームは海、本池クンのコードネームは空である。覚えられないと思うし、ノートに書いておくといい。で、だね。ノートにはコードネームなどと書かずに飲み屋のツケに使う名前と書いてくれ。
このコードネームを使う事に君達は、なる。軍事作戦には大なり小なり暗号は必要だ。昭和の日本の海軍は何故完敗したか。それは暗号をすべてアメリカに解読されたからだ。最後の方は薩摩弁を暗号にして、それもアメリカに解読され、昭和の海軍の行動は筒抜けで知られていたのだよ。
ぽっぽーや、海軍の哀れな最後は暗号にある。ぽっぽーや、とは薩摩っぽ、という軽蔑用語から取られている。薩摩が日本のどの地方かは知っていると思うが、知らなくても調べたまえ。」
 流太郎と釣次郎は電子ノートに自分たちのコードネームを書き付けた。この電子ノートは元海教官の授業に際して二人に手渡されたもので自衛隊特製のモノだ。自衛隊というより情報第三部で使われている。電子書籍を読むためのタブレット型の機器に似ているが、電源を入れて起動すると人差し指で字が書ける。人差し指の大きさで線を引くことにはならず、ボールペンで書く字の大きさになる。
ひらがなから漢字への文字変換機能もあり、漁師だった釣次郎には使い勝手が良かった。
 コードネームも貰って、いよいよ、これから諜報員として活動できるのだと思うと釣次郎と流太郎の胸は気球が空に昇るような期待で膨らんだ。
 休憩をはさんで、次の授業では中国の工作員の見分け方をスライド写真を黒板に投影しての解説を元海教官が、おこなう。
「いずれにしても、これという人相があるわけではない。しかし工作員の顔は一般中国人とは違うので見抜くのに早く慣れてもらいたい。」
元海教官は教卓から眼鏡を取り出して、二人に見せる。
「実はね、この眼鏡を掛けると中国の工作員は即座に見分けられるんだ。レンズに仕掛けがあることは、あるんだが何といってもマイクロコンピューターが内蔵されていて、そのコンピューターが対象人物を工作員かどうか、判断する。
 決定的な事には、この眼鏡から出るごく微弱な電波によって対象人物の脳内を検査し、調べて工作員であるという記憶も調べるんだ。だから間違いなく確定できるよ。」
流太郎と釣次郎は絶句した。
信じられない話だからだ。こんな凄いものを日本で開発したのだろうか。しばらく前に地円の陽元に住む霧沢金之介は異母弟の黒沢金雄に会うために地球に、やってきた。
黒沢の自宅で兄の霧沢は、
「日本の自衛隊にも新兵器は必要だが、大きな戦争もないから緊急の要件ではないと思う。しかし中国の工作員とかは要注意だね。スパイでなければ逮捕も出来ないが、だからこその警戒は必要だと思う。この中国の工作員を見分ける眼鏡を、この前、遊び半分で作ったが成功した。
おまえに上げるから自衛隊に提供して利益を上げろよ。」
と兄らしく語ったのだ。

 元海教官は流太郎に、
「なにか質問があるか。」
と面白そうに聞いたので、流太郎は、
「その眼鏡はサイバーモーメントの発明じゃないかと思いますが。」
と答えると元海教官は、ほお、という顔をして、
「よく知っているな。その通りだよ。つい最近、完成したらしい。サイバーモーメントの製品は、これからも自衛隊で採用予定のものが多数ある。なんとも超科学というか、こんなものを地球人が作れるのかというものが多いらしいなー。て、君はサイバーモーメントと関係した事があるのか。」
「ええ、サイバーモーメントの社長は知っていますよ。」
「そうか。それなら・・・君を通じて自衛隊もサイバーモーメントに要望を出せるだろう。ま、この驚愕的な眼鏡は君達に支給されるし、それでも自分の目で中国の工作員を見抜けるように、なって欲しい。」
三月になって暖かく、暖房もしていない教室だが、時折、少し寒い空気が地下とはいえ窓から入ってくる。
 驚異で脅威の眼鏡の存在を知った二人は心強い気持ちになった。
 情報心理戦防護必須課程に準じた教育が元海一佐によって、時と本池に続けて、おこなわれていった。
元海教官曰く、
「情報戦は実戦よりも多大な影響を対峙した国に与えることが出来る。攻撃は最大の防御とは広く知られた言葉だ。武力による攻撃を上回れる場合がある。これは「ペンは剣よりも強し」としても知られている。陸上自衛隊春日学校では情報心理戦攻撃過程も加えられている。防御の後に攻撃か、攻撃の後に防御か、というのは、それで一つの論題ともなるわけだが、専守防衛というオカマじみた見せかけを取らなければいけなかった日本の自衛隊としては防御の後に攻撃の路線ではあるが、それは実戦部隊の話で、我々情報三部、そして参謀本部からの指令では攻撃が先になることもある。要は武器による攻撃ではないからな。
それで情報心理戦における攻撃を君達にも学んでもらう。ボクシングでも防御しかしていないと、どうなると思う、本池クン。」
「いつかノックアウトされますよ、間違いなく。」
「その通りだ。日本の自衛隊は同盟国アメリカ軍の後方から、ついていく行動となっていた。だが情報第三部は違う。攻撃のための攻撃も、おこなう。
参謀本部も原則的に統合幕僚監部には口出しを平時では、しない。
日本は古い過去に軍隊の経営を間違った。直接的には頭の悪い人間しか海軍に行かなくなった。それが第二次世界大戦の日本の結果となった。それは、そのころにあった制度にも問題がある。御前会議というやつだな。実はね、帝国陸軍でも、これは御荷物というか必要ないものであるばかりか御前が意見もしたし、命令もしたりしたので皇道派以外は、ため息が出るものだったのだ。
 それでだね、英才ではあったが皇道派に近い石原莞爾を二二六事件の反乱部隊の鎮圧に派遣させている。石原が反乱部隊に殺される可能性もあることを分かった上でだ。
 最終的には石原は左遷、そして予備役へと引退していく。これも当時の陸軍に反発したためである。
そして中国への戦争を長引かせることは陸軍の意思では、なかった。公家上がりの近衛首相ら政治屋の意志である。
 文民統制を廃絶した今の日本は昔よりも、戦争のプロである我々に国民は任せて安心、という事なのだよ。
それでも一応、先に攻撃しないのは自衛隊の実戦部隊であるから、先手必勝なのは情報第三部と、さらに上の参謀本部の領域となる。
 君達の授業の態度もいいので参謀本部も期待しているから、大いに頑張ってもらう。机上の空論に終わらないためにも街に出て実践の足慣らし、手慣らしに行こう。」

 元海一佐に伴われて地下から上がり、春日駐屯地を出た二人。正門前に見えるUR、公団団地を見て、右に直角に歩道を曲がって歩いていく。JR南福岡駅から電車に乗り、博多駅という福岡市で一番大きな駅に着く。ここから新幹線も出ている。その新幹線で中国の工作員が福岡市に、やってくる場合もある。それで元海教官は二人を新幹線乗り場の近くまで導いた。元海教官は、
「この新幹線の出入り口も要注意な場所だ。そもそも工作員が最も多い場所は東京だ。福岡市に乗り込んでくる中国の工作員は少ない。それだけに見分けは、つけやすいよ。」
と話す。
 確かに新幹線の降り口から出てくる乗客に中国人らしき人影も見えない。元海教官は、
「次は地下鉄で移動する。行くぞ。」
福岡市営地下鉄は博多駅から乗れる。もちろん地下に降りて切符を買い、列車を待つ。明るい構内には中国語の案内文も見える。工作員を歓迎しているかのようで馬鹿馬鹿しい。通勤時でもないので人は少ない。元海教官は、
「KCIAという韓国の諜報機関員も福岡市に、いるはずだが、中国ほど活動はしていない。福岡市だからだろう。」
 福岡市はアジア人を歓迎している。それだけに工作員天国なのだ。中国人の店は料理店に限らない。それには風俗業も含まれる。福岡市の風俗業は中洲という場所に大体、限定されている。これは何と江戸時代の黒田藩で決めた事だ。黒田五十二万石、筑前・黒田藩以来の伝統なのだ。
そもそも日本全国的に戦国大名の拠点地が、そのまま発展を続けている。福岡市の風俗店は、ポツンと他の場所にもあるが、広がらないで消えていく場合が多い。中州にはビルが立ち並び、その中の大半は飲食店で、それも主に酒を提供する店でスナック、パブと呼び名は色々ある。会員制のスナックもある。
 これらの店も全ては生き残れず、空室も出てくる。元海教官と流太郎、釣次郎は今、中洲の飲み屋ビル街を歩いている。随分と大昔には呼び込みの連中もいたが市の条例で禁止されてからは、呼び込みは消えている。
 飲み屋のビルは高くても六階程度、数十階のビルなどは昔からない。そのうちの一つのビルの一階にある店に元海教官が、
「ここに入るぞ。」
と先導した。「ぃらっしゃいません。」と中国語訛りの女性の声が聞こえた。中国風スナックで風水的飾り物が店内には多い。福とか赤色の配色が多数、見られる。大きな水槽に赤い金魚が数匹泳いでいた。女性店員は赤や紺色、黄色のチャイナドレスで三人が並んで立っていた。中国的美女、キャバクラのようだ。厨房に近いカウンター席の向こうに店の女主人が元海ら三人に気づくと、声をかけたのは、この三十代後半に見える髪の長い中国美女で、もっと若いころはキャバ嬢だったのだろう。この女店主は、
「カウンターの席に、ひと席ずつ間を開けて座ってくださいませんか。そこに、あの子たち三人を座らせます。」
と元海教官に話す。元海は、
「諸君。そのように座りなさい。」
右から元海、流太郎、釣次郎と、それぞれ一席ずつ開けて腰かける。まもなく三人の左席に、赤、紺、黄色のチャイナドレスの女性が座った。香水の甘い香りが元海ら三人の鼻を、くすぐる。元海は左に座った女性の左肩に左手を回すと、
「とりあえずビールを三人分、頼む。」
と注文すると、左の女性の肩から尻に左手を降ろし、その女性の丸い大きな臀部を、ゆったりと触る。元海は機嫌良さそうに、
「時と本池、ここは、おさわりOKなのだ。尻と胸は触っていいんだ。」
と教えた。香港から来たという店の女性たち。マダムは笑顔で、
「お二人さんも、触って大丈夫よ。この三人は彼氏も、まだ、いないし。」
流太郎と釣次郎は、しかし、手を動かさない。元海は、
「香港はアメリカの原爆は落ちないんだろう。」
とマダムに聞く。マダムは、
「ええ、ダイジョブです。北京には落ちましたね。わたしたち、北京から逃げた、あるよ。にじゅ、まん死んだね。でもロサンゼルスに中国のICBM(大陸間弾道ミサイル)に積んだ原爆、おちたよ。ハリウッドの大きな文字は、消滅したのある。」
元海は目の前に出された大ジョッキの生ビールを右手の取ると、左横にいる流太郎たちに、
「さあ、乾杯だ。(グイ、グイと一息に飲んで)、ああ。うまいな。なにせ中国から核弾頭搭載ミサイルを数百発は飛ばしたらしいね。」
「人民解放軍がシュミレーションでアメリカを攻撃する訓練をしていたら、実際の発射ボタンを押してしまったあるの。アメリカも百五十発は撃ち落としたらしいけど五十は爆発、大惨事よ。その大惨事から第三次世界大戦、始まったアルネ。」
「もう三十年も前の話だな。日本は戦争放棄国だから、よかった。今は核攻撃なしにズルズルと続いているな、中国各地にアメリカの軍隊は入っているらしいが。」
「小さな駐留しか出来ていないわ、アメリカは。ベトナムでも結局、引き揚げたしアメリカはね、だからワタシタチ中国人、漢民族負けないのあるよ。モア一杯、ビール飲む?モトウミ、サン。」
「アア、もう一杯、頼む。時君と本池クンも、お代わりで飲めよ、生ビールをね。」
流太郎と釣次郎の隣に座っている中国人キャバ嬢も、
「ママ、わたしもビール飲みたい。」
「わたしもね、ママ。」
と声を上げた。店のママは、
「ああ、あんたたちの分は店で持つわ。はい、ジョッキで飲むあるよ。」
と二人の前に生ビールの大ジョッキを一つずつ置いた。店のママは元海の顔を覗き込むように、
「自衛隊はアメリカに協力していないあるけど、いいの?」
それに対して、胸を反りかえらせた元海は、
「日米安保条約は日本はアメリカ軍を助けなくて、いい、となっているよ。戦争に手助けすることは、戦争に参加していることになる。戦争放棄国は戦争を、しないもんだ。楽なものさ。」
 中国大陸に上陸しているアメリカ軍は五十万人ほど、だ。この大部分は在韓国米軍が移動し、その後にアメリカは韓国に新しい五十万人を上陸させた。ベトナム戦争と同じく、他の国、イギリスやフランスなどは不参戦の戦いなので第三次世界大戦とは呼称しにくい戦いなのだ。
 日本にとっては随分昔の朝鮮戦争と同じような雰囲気が漂い、朝鮮特需があったように中国特需が発生している。なので好景気な世の中、アメリカからに限らず中国からも日本への医薬品などの需要が出ているため、空前の好景気が日本に出現している。
日経平均も十万円を突破している。中国とアメリカの戦争は十五年を経過した。どちらの国も過去のコロナ・ウイルスで一億人以上の死者を出している国だ。コロナウイルスでは全世界の人間は十億人以上の死者が出ている。
中国としてはコロナウイルスはアメリカが持ち込んだ、と信じている人たちもいるために、手違いの核ミサイル発射も無意識的なヤリタイ事をしてしまったのが本当なのかもしれない。
謂わばアメリカのコロナウイルス持ち込みの行為に対する核攻撃と見てもよいのかもしれない。
HOLLYWOOD
の文字を吹き飛ばされた恨みのせいか映画関係者の志願兵が相次いだという話が日本にも伝えられた。
 流太郎の隣に座っているのが赤のチャイナドレスを着た、レンレンという北京出身の中国女性だ。彼女は流太郎に、ビールのおつまみを差し出しながら、
「わたし、レンレンいうね。あなたも兵隊サン?」
と尋ねた。流太郎は、
「いや、ぼくは兵隊じゃないよ。ただの民間人だ。」
「そうなの?あのモトウミさんは陸上自衛隊なんでしょ。」
「そうだよ。でも僕は自衛隊員じゃないんだ。」
「そうなの?じゃあ、自衛隊さんより自由なのね。」
「だろうねえ。朝からビールも飲めるし。」
「モトウミさんも飲んでる。モトウミさんは自衛隊。」
「うん、自衛隊でも特別な部隊さ。だから、いいんだろう。」
「時サン、お酒強いのね。顔も変わっていないし、あたし少し酔ってきたわ。」
レンレンは顔色を赤くしている。釣次郎の隣にいるのは黄色の服のマンマンだ。二十歳くらいで髪は肩よりも下に長い。黄色のチャイナドレスの胸は大きく、肉まんの大きなものが服の中に二つ、おいしそうに入っている感じだ。
釣次郎も大ジョッキのビールを飲んで顔色は、それほど変わらない。マンマンは、するめを釣次郎に差し出すと、
「わたし香港から北京にいた時、この店のママに誘われて日本に来ました。北京でもママは飲食店で主に飲酒する人のための店を、やってたの。福岡は、あったかくて、いいわ。香港みたい、雪は降らないし、降っても積もらないし。お金貯めて、店、出したいです。」
と話すので釣次郎は、
「日本に店を出すの、それとも中国に?」
「中国はアメリカと戦争しているから日本に店、出したい。」
「店を出すのには、お金が、たくさん要るよ。」
「わたし、ここ以外でも働いているから。」
とマンマンは髪を、かきあげながら話す。

 酔いが回ってくると何の話か、いい加減になるものだ。元海教官は、
「そろそろ退店しよう。」
と二人を急(せ)き立てた。地下鉄で博多駅まで行き、地上に出て博多駅から南福岡駅へ、そこから歩いて春日駐屯地に戻ると、又、地下に降りる。そして昼食後、授業が再開された。
 教壇に立った元海一佐は、
「諜報員としては外国語の習得、それも複数の言語は知らなければ、ならない。君達は正規の諜報員ではないので、深く知らなくてもいい。主に中国語は知っておこう。君達の調査する対象は中国人から、となる。女性に限らない。珍光年という中国青年がいる。日本ではホストクラブで働いているが、奴は中国の工作員だ。過去に女性防衛大臣と肉体関係を持ち、日本の国防機密を盗み出そうとした。それは随分過去の話だが、今は女性法務大臣と肉体関係に進んでいるようなんだ。日本の法律事情を手に入れたいのだろう。まだババアとはいえない女性法務大臣だ。ホストクラブに遊びにも行くだろうし、写真週刊誌も大臣を追うほど暇でもないから世間に知られることも、ない。情報第三部では今の女性法務大臣が珍光年と少なくとも三回はホストクラブで酒を飲んでいるのを調べている。防衛大臣ではないために法務大臣の行動は、深くは調べていないようだ。法務大臣だけでなく他の大臣も防衛機密を知ることは出来ないので、女性法務大臣の夜のホストクラブ遊びに立ち入りすぎることは、しないのだが珍光年が、いつ矛先を防衛省に向けるかが重要ではあるから情報第三部も気が抜けないのだよ。
 それで女性法務大臣も追尾している。女性法務大臣の財布の中には情報第三部が仕掛けた特殊なGPSが入っている。それにラブホテルに入ると撮影が始まるという特殊カメラも、そのGPSには付属している。これが秘密兵器の、ゆえんたるものだ。つまりGPSでラブホテルに入ったと認識されるとカメラが回り始めるのだ。赤外線により財布を透かして撮影が始まる。
時君、質問があるかね。」
「はい、元海一佐。法務大臣の財布の中に、どうやって、そのGPSを入れるのですか。」
「いい質問では、ないな。それは君、大臣秘書を通して、やってもらったりと色々だ。具体的詳細は国防機密だな。君達には教えられない事だ。君達が実行することも、ない事だ。で、そのカメラは女性法務大臣がラブホテルに入ったのを捉えて撮影を始めている。」

 五十歳になったばかりの女性法務大臣、しかし彼女は独身だ。大学の法学部を出て、すぐに司法試験に合格し弁護士となり弁護士事務所で働く事、十年、そこから独立開業して多数の法廷に立つこととなった。少子化、そして人口減少という日本の流れの中で悪い人間も減少したので弁護士の仕事は減っていく。四十にして惑わずなどというのは一人の変哲もない中国人の幻想を、かなり昔の日本人さえ理想の人生としていたが、人の一生に理屈を当てはめようとするのはバカ中国人の思考傾向である。四十にして立つ、でもいいではないか。三十にして立つ、のは男として当たり前なのだが、それは閑話休題(さておき)、この弁護士の桜・摩見子は四十にして立った、立候補したのである、いきなり衆議院議員に。
そして初当選後、東京に出て事務所を構える。彼女のビルの部屋の窓からはスカイツリーが見えた。仕事が終わって男性秘書と事務所内にある彼女のベッドで性交する、というわけにもいかず、かといって外出も好まない彼女、桜摩見子(さくら・まみこ)であるからして男性とは縁のない性活とはなる始末。
 五十になる少し前に桜摩見子は法務大臣に選ばれた。そうなると公設秘書は三人、私設秘書を七人置いて丁度いいほどになる。摩見子の場合は公設、私設の秘書すべてを男にした。
これで男日照りの時代は過ぎたのだ。男でも身近に十人の女を置くのは難しい時代に桜摩見子は十人の異性に取り囲まれて仕事をしているのだ。何度も書くことだが大臣の私生活なんて写真週刊誌も相手にしないものなので桜摩見子はヤリタイ放題、文字通りのヤリタイ放題の私性活となった。このうちの二人の秘書は地元に置いておく。だから摩見子は地元に帰っても最低、二人の自分の言いなりになる男を持っている。これに加えて年収・数千万円という給与の支給でホストも何十人でも買えるのである。が万が一、写真週刊誌に狙われたら、その際は私設秘書が上手く処理するのだ。だから一般人には大臣の夜遊びは知られることは、ない。
これは男子大臣も同じこと。ところが、である。自衛隊情報三部は確実に各大臣を追っている。中国の工作員は日本の大臣すべてに近づくことが彼らの任務だ。ハニートラップ、つまり甘い罠をしかければよい、という訳で男性大臣には美女工作員、女性大臣には美男工作員を近づけていく。
それ以外にも、労働者として日本に入国してきた中国人は工作員といってもよい。それを知らない大手コンビニなどは、ありがたやとばかりに店員として働かせてきた。大量の中国人労働者を認めた時点で中国の工作は成功していたのだ。おそらく売国議員によって提案されたものであろう。その辺りを元海一佐は話す。
「中国から来た人間は基本的に全て工作員と思ってよい。彼らは日本を破壊しに来ている。どこかの田舎者が提案した日中友好など、中国人が喜んでいるだけだ。中国に技術支援した大手電機メーカーは、のちに電化製品、特に白物家電で市場を奪われていった。松の名前がついた電機メーカーだ。ここの創業者は、ある国会議員の要請で中国支援を決めたという。これが数十年後の日本の家電メーカーの没落へと繋がっていく。
それだけではなく日本の大学は防衛大学以外は東京大学でさえ共産思想を植え付けられている。それが日本の貧困を招いている、何故なら大学卒の増大が民間企業の年収低下、大企業さえ収入低下を喜ぶ風潮、そして週休二日制、休日の増大と正に中国にとって笑顔の絶えない日本になっていったのだ。
君達は大学には行っていなかったな?」
と元海教官は流太郎と釣次郎を見る。流太郎と釣次郎は、ほぼ同時に、
「はい、行っていません。」
「よろしい。それで、いい。東京の共産汚染は日本で一番、ひどいものだ。コロナウイルスも日本で一番多く感染した場所だ。それで陸上自衛隊としては春日駐屯地の地下に陸上自衛隊・春日学校を創設、運用している。ここには自衛隊の幹部学校を出た尉官のみを入校させているから、現在の君達は入校できない。
五万とあるという言葉があるが、2020の頃でも中国の工作員、別名スパイは日本に五万人はいた、とされている。
さて簡単な中国工作員の仕事を教えよう。彼らは外食産業で働き始める。目的は収入を得るためではなく日本の外食産業を破壊するためだ。信じられないと思うが福岡市でも安いうどん屋などは閉店してしまった。中国人は安く雇用できると浅はかな考えの経営者は大手電機メーカーにも、いた。彼らは安く働く代わりに日本の企業を壊滅に追い込むのが目的だ。
それで奴らの収入も無くなる、と思うだろうが中国の工作員だから例え働いている日本の会社、店が倒産しても金に困ることはない。奴らは収入を得るための労働を、しにきたのではない。たとえ彼らが工作員でなくても大陸の中国人は、みな共産主義だ。彼らは資本主義を悪だと教えられている。それで資本主義国家は悪だと考えている。実際は、どちらが悪なのかは歴史を見れば分かる。
ソ連共産党の崩壊などでだ。
 少し早いとは思うが明日からは二人で街に出てもらう。諜報活動は机上の御話ではないから。
さっき行った店も工作員の店の可能性がある。週に一度は君達二人の、いずれかに行ってもらう。飲み代は、あらかじめ必要以上の額を渡しておく。
映像でも見よう。情報第三部が手にしている女性法務大臣の桜摩見子のラブホテル盗撮編の映像だ。」
教室の黒板に映像が投射され始める。東京都郊外のラブホテル内が映された。桜摩見子の歩調に合わせて映像は揺れている。
カメラは桜摩見子の財布の中に入っているのだ。
無人のラブホテルで男が金を入れると部屋の鍵が出てくる。
8号室の鍵を手にした男は摩見子の腕を取って部屋に連れ込んでいく。部屋に入るとシャワーを浴びに男は行った。シャワーのある部屋から出て来た男は全裸で、棍棒のような肉茎を天井に向けていた。もちろんは皮は向けている。
 摩見子は男の立派な道具を見ると、
「すばらしく太くて逞しい。わたしも裸になるわ。」
と話すと手早く衣服を脱ぎ、下着姿になる。全裸の珍光年は反りかえって固定したかのような勃起棒とユラユラと揺れる陰嚢を見せながら、速歩で摩見子に近づくと彼女を抱え上げてキスをする。
真面目な彼女は男の秘書と肉体関係を持てなかった。ただ精神的に満足していた。それだけに肉体的に満足させてくれる男が現れて、今、摩見子の下着を剥ぎ取り、荒々しく肉の棍棒を自分の中心に、ねじ込んできた、その快感は彼女の予想以上だった。
快感で朦朧となった摩見子はベッドに仰向けに横たわり、両脚を大きく広げて珍光年を迎え入れている。突如、珍光年は腰の動きを止め、摩見子に聞く。
「コロナウイルスが東京で再び拡大した時に、検察官は逃げたのですね?」
「そう、逃げたわ。拘束されていた人たちを釈放して・・・。ん、腰を動かしてよぅー、はさんだだけでも気持ちいいけど。」
珍光年は摩見子の両手と自分の両手を絡み合わせて、
「やります、やります、その前に逃げた検察官の数を教えてください。」
「数?十人以上かな。東京地検特捜部の検事も逃げたわよ。」
と国会で答弁しなかった内容を今、珍光年に貫かれている桜摩見子は洩らした。珍光年は腰を大きく動かして、一度、摩見子の女の洞窟を深く突くと、彼女は目を閉じて、
「気持ちいいっ。あら、一度だけ?」
「検察庁の庁舎からですか?」
「そうよ。庁舎に救急車が来て、倒れた職員を運んでいったけど、救急隊員はマスクと目にはゴーグルをしていたの。その事が庁内に広まると検察官は庁舎から逃げたのよ。」
「ありがとう。摩見子さんの体は素晴らしい。」
と珍光年は摩見子の耳元で囁くように話すと、彼女の耳にハアーッ、と息を吹きかけ、彼女が両脚をすぼめるようにしたので彼は電撃的に腰を前後にメロディカルに動かし始め、何度も摩見子を絶頂に導いた。
 そこで一旦、映像は停止した。明るくなった教室の教壇で元海一佐は、
「こんな具合に女大臣は日本の報道各社も知らない内容の事実を中国の工作員にベッドの上で話している。それにしても財布の中から盗撮しているのに鮮明な映像だった。これはパソコンで見られる映像ファイルで記録されているので、ここにはコピーされたものが送られている。春日学校の授業でも使われているのを今、君達に見せたわけだ。感想は、どうかね、時君。」
と名指された流太郎は、
「ネットニュースで見たことのある大臣だけに、裸で男に激しく突かれている姿には驚きました。国会での冷静な姿勢からは想像も出来ない乱れた姿でした。」
と興奮気味に答える。元海教官は軽く、うなずくと、
「本池クンの感想は、どうだ?」
「法律の大臣のベッドでの姿には驚きました。大臣の女性器もバッチリと写っていましたね。独身だけに若い体なのかと思いました。」

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