体験版・sf小説・未来の出来事1

 20xx年の春、福岡市の博多区東那珂(ひがしなか)にある自社ビルの最上階にある社長室に一人の青年が訪問してきた。室内には男性社長で年齢は五十代、が一人、ノートパソコンに向かっていたが、
「や、そこに掛けてくれたまえ。いい話って、どんな内容なのかな?」
と、にこやかな笑顔をその背の高い痩せた青年に振り向ける。
(なんだ、フルフェイスのヘルメットじゃないか。顔が見えない・・・)
が、しかし、そのうちにそのヘルメットを外すだろうと思うと、
「社長の鬼沢(おにさわ)です。名刺を差し上げましょう。」
白色の大きなデスクの上にある名刺入れの中から金色のカードを取り、応接テーブルのソファの近くに立っていた青年に近づくと、
「座っていいから。」
と着座を勧めると同時に金箔の名刺を青年に手渡した。
それを両手で丁寧に受け取ると青年は、
「社長から、お座りください。」
とヘルメットの中から柔らかな声を出した。
社長の鬼沢金雄は気分よく、
「今時、珍しいね。じゃあ、お先に、失礼して、と。」
弾力性のある茶色の革の高級そうなソファに深々と腰を降ろした。
青年は貰った名刺を胸ポケットに入れると、ガラスのテーブルを挟んだ社長の前のソファに、ゆっくりと座った。その座り方が、というか動作が機敏で直線的な感じだと鬼沢金雄は感じたものだ。
(運動神経がいい活発な若者なのだろう。まだ、ヘルメットを外さないようだが、それに気が付かない筈はないと思うが・・・ハテ。)
ヘルメットをかぶったまま、青年は行儀よく両手を両膝の上に並べて置いて、かしこまっている。鬼沢は少しイライラして、
「君さあ、頭の上のものを取りなさいよ。それ。」
「え?頭の上には何もありませんけど。」
「かぶっているものが、あるだろう。忘れてしまったのかね、それ。」
「何でしょうか、それは。」
鬼沢の眉間に針が刺さったように見えると、
「フルフェイスのヘルメットだ。それに、君。僕が名刺を渡しのだから、君の名刺も貰えないかな。」
と努めて落ち着いた感じで説諭した。
「名刺は、お渡しします。申し遅れました。わたくし、株式会社夢春(むしゅん)の営業一課、時・流太郎(とき・りゅうたろう)と申す者で御座います。」
と申し出ると、財布から名刺を出して鬼沢に渡した。その名刺にはメールアドレスとウェブサイトも記載されている。
時・流太郎は頭に手をやると、
「すみません。ヘルメットをかぶったままでした。失礼しました。」
と慌ててヘルメットを外すと、隣のソファに置いた。
美青年、時・流太郎であったのだ。と鬼沢は思った。彫りが深く鼻が高く目は二重瞼にして黒目も大きくて色白なのだ。彼は営業マンらしく続けて、
「このヘルメット、とても軽くて、それにプラスチックが透き通って、よく見えるんです。それで、ついかぶっているのを忘れてしまって、すみません。言い訳にしか、なりませんけど。」
「そうだったのか。フルフェイスのヘルメットは重そうに見えるから。まあ、いいよ。株式会社夢春(むしゅん)・・・ああ、あのサイバーセキュリティの会社。だったよね。」
「はい、ご存知だとは思いませんでした。当社は、それほど知名度もありませんから。」
「サービス内容をウェブで見させてもらったよ。うちも顧客の情報を管理しているものだから、セキュリティ対策が必要なんだ。」
「それでは弊社のサービスに関心を持っていただけたわけですね。」
「ああ、だから来てもらったんだ。」
「ありがとうございます。こちらはロボットと人工知能の製品の開発と販売をしておられる、のですね。」
「ああ、そうだ。ロボットといっても昔のように大きなものじゃなくて、手のひらサイズのものもある。妖精、まさにそんな感じだよ。
明日、発表するけど。」
その話に時・流太郎は嬉しそうに驚いた。つやのある若い唇を開いて、
「革命的ですね。手のひらサイズのロボットなんて見たこともないです。」
「世界初だよ。これを発表すると注文が大殺到するはずだ。」
鬼沢金雄のデスクの上には、その妖精ロボットとも思われるものが置いてあるように見えた。可愛らしい少女と老人の妖精が、それぞれ一体ずつある。そこに時・流太郎の目線は移動していたのだ。
時・流太郎は考えるのだ。この会社は今より遥かに巨大になる。ならば・・・。しかし落胆気味に、
「御社サイバーモーメント様は非上場でしたか。」
「そうだね。そのうち、したいと思っているがね。ロボットは開発に時間が掛かるんだ。それまで株主の方に迷惑をかけることになるからね。」
 「そのためにもサイトのセキュリティーは必要で、ございます。」
「なるべく金は、かけたくないんだが?」
時・流太郎の頭の中にはサイバーモーメント社長、鬼沢金雄の資産額が頭の中に入っていた。その額は何と、今の時価にして三千億円はあるのだ。なんとケチな男だろう。ま、金持ちは大抵、ケチなものだが。
「もちろん、最初の三か月は無料に、させていただきます。」
「なんと、三か月も!」
「ええ、それと今回のご契約記念に外付けHDDをプレゼントします。」
時・流太郎はビジネスバッグの中から小さな箱を出して鬼沢に差し出した。鬼沢は満足げに受け取り、
「ありがとう。あ、お茶も出していなかったな。」
携帯電話を取り出すとプッシュして、
「美月(みつき)クン、お客さんだ、ブラック・アイボリーを持って来なさい。」
「はい、社長。いますぐ、お持ちします。」
と若い女性の綺麗な声がした。
時・流太郎はブラック・アイボリーって何だ、と思っていると、社長室の部屋の奥のドアが開いて、高級な金属プレートに湯気の立つコーヒーカップを二つ乗せた若いスラリとした美女が笑顔を浮かべて出てきた。
二人の前のテーブルに、しなやかな手つきでカップを並べると、深々と頭を下げて向きを変えて元の所へ戻っていく。
時・流太郎にはコーヒーの香りより美月なる秘書らしき女性の美フェロモンのような匂いが頭に痺れをもたらしそうだった。時は平静に戻ると、
「ブラック・アイボリーって、コーヒーだったんですね。」
「そうだよ。さ、飲みたまえ。」
はい、いただきますというと時はコーヒーカップを口に持っていき、おいしいですね、と舌で味わう感触を楽しみながら答えたら鬼沢は、そうだろう、それもそのはずさ、ゾウの糞からつくられるのだから、ブラック・アイボリーは、と受ける。ええっ、そんな・・と時は一瞬、吐き気を感じてしまうかと思いきや、それは起こらなかった。しかし、なんとなく眠くなってきたような気がする、おかしいな、昨日はよく眠れた筈だが、どうした・・・ううん。
 
 時は、やっぱり眠ってしまったのだ。仕事に来て眠ってしまうなんて、と頭に思いがするが何と、ベッドの上に寝ているではないか。鬼沢の前に座って寝てしまったのではなく、それに、嗚呼!眼の前にはなんと赤いマイクロビキニの美女が長い美脚を見せて時のベッドの傍らに百合の花のように姿を見せていた。
そんな、これは夢だろう、ベッドはともかく水着の美女なんて。サイバーモーメントに、おれは営業に来たんだ、社長室で高級な牛の、いや、ゾウの糞のコーヒーを飲んでいたのに、うむー、まだ、夢の中なのか、これは、もしかしたら、そうかもしれない、いや、そうだ、夢の中だ、試しにほっぺたを抓ってみよう、
と右手を持っていくよりも早くビキニ美女の右手が伸びてきて時の頬を細長い人差し指と親指で軽く抓ったのだ。
痛い、でも軽い痛みだな、としたら、夢ではない。
美女は時に顔を近づけて、
「今、右手の指でほっぺたを抓ろうとしたでしょ?だから、あたしが代わりに抓ってあげたの。痛くなかった?」
と心地よい美声で問いかけてくる。
「少しね。でも、気持ちいいな。こんな風景は。」
「何が気持ちいいの?」
「心、でしょう。体も、そうかな。」
「だったら、起きたら?あなた、仕事をしにきたんじゃ、ないのかしら。」
「そうだったね。あなたは美月さん?」
「いえ、違うわ。舞山舞子って、いいます。これでも、ここの女子社員なの。」
「その格好でえ?何の仕事をしているの?」
「接待です。」
「はあ、枕営業もするのかな。」
「失礼ね。そんなこと、芸能人じゃないし、するわけないでしょ。サイバーモーメントでは、そんな事は、していません。」
「失礼いたしました。」
時は起き上がるとベッドから立ち上がり、
「ゆっくりさせていただいて、申し訳ありません。やっぱり、コーヒーを飲んでから寝てしまいましたか。」
「それは知りませんけど美月さんに呼ばれて社長室に行ったら、ソファに眠っているあなたが、いた。鬼沢が、この部屋に寝かせておくようにと命じましたので、わたしがあなたを担いで、このベッドに寝かせたんです。」
「すみませんねえ。急いで社長とお話の続きをしなければ、いけません。」
「あら。もう夜の十二時だわ。鬼沢は退社しました。午後六時に。」
時の心臓は中心から矢が突き抜けたようだった。
「それなら、ぼくもここを失礼しないと・・・。」
「あなた、車で来たの?」
「いえ、タクシーですよ。」
「タクシーは呼べば来るけど、鬼沢は時さんを会社に泊まるように勧めてくれって、言いましたの。」
「で、へー。泊っても、いいんですか。ここに。」
「社長が勧めているんだもの。泊りませんか。」
部屋はビジネスホテルのツインぐらいあり、会社の中の部屋というより、そう、ビジネスホテルの部屋みたいなのだ。おまけにカーテンは赤いし、ベッドは・・・おーう、ダブルベッドなのだよ。
時は床を見た。すると床の絨毯も赤色のふさふさした高級感が床から湧いてくるみたいな色をしている。カーテンは閉じられていて、時が部屋の中を見回すと風呂もトイレもビジネスホテルの部屋のようにあるらしい。顔を少しこわばらせた笑顔で時は、
「確かに泊まれそうですね。」
と、うなずいてみせた。
「なら、泊まって行ってください。」
赤いビキニの舞山舞子は両手を豊かな腰の上の細いクビレにあてて、誘うのだ。
彼女も女性にしては背の高い方だが、時の頭より低いところに彼女の頭はあるし、見下ろす形になるとマイクロビキニだからメロンみたいな白い大きな胸のふくらみが大きく視界に飛び込んできた。
舞山舞子の両目は大きく睫毛は長い。それも上から見下ろすから、よくわかる。彼女の濃いピンクの唇は両端が上に向いて、右ほおに笑窪が出ている。
 髪の毛は細い肩の下まで長く、苺のにおいがする。それに二十代前半のような彼女は、色白だ。細面の顔にしてはビキニは破れそうなほど膨らんでいる。
 ソレニ夜の十二時ナノダ。時は考えた。もしかして、これは接待で、しかも・・・しかし、彼女はさっき、枕営業はしないといったなあ。鬼沢社長は、そんなことをしないと思う。社長の家族関係は愛妻と娘が二人、息子が一人のはずだ。いや、それは妻が、いようといまいと枕営業を戦略的に用いる社長もいるだろう。そうではなくて、鬼沢氏の家庭は円満で浮気もしたことがなく、又、この会社に関わった人たちの話では枕営業らしきものは浮かび上がってこないのだ。
でも、だ。こんな赤い水着の美女を差し向けるなんて、一つの誘惑であって、おれがそれに乗るのを待っているのかもしれない。
そうだとしたら、そうしたら、鬼沢氏にどういう得があるのだろう?
値引き?無料の延長、株式会社夢春(むしゅん)との関係を有利にする、
まさか、女と一晩を過ごしたおれを脅す・・・、そうなのか?それなら舞山舞子は、ここに泊まって行くために来たのか。
「舞山さん、でしたね?舞山さんも、これからここに泊まってくれるのですか。」
舞子は、ふふ、と小さく笑うと、
「あら、誤解だわ。でも、ここは五階ですけど。わたしは、あなたが眠るのを見届けたら、出ていきますわ。さっきも申したでしょ、わたし、枕営業はしません、と。」
「そうでしょうね、そうですよ、いや、そうに違いないと思っていました。でもねー、いまさっきまで寝ていましたから、なんだか眠くないんですよ。どうしたら、いいのかなあ。だってさー、舞山さん、あなたはー、ぼくが眠るまでここを出ていかない訳じゃないですかー。だとしたら、舞山さん、ぼくが眠らなければ、あなた、ここに、ずっといる、わけ、で・す・ね。」
 舞子は謎めいた微笑みで、でもそれはモナリザの微笑とは全く違う分かりそうな謎めいたもの、
「そうなりますわ。社長命令ですもの。わたし、入社して二年。二十歳です。」
「ほ。はたちですか。そいつは、いいなー。新鮮ですよ。」
「あなたも、お若いのに、ね。」
「ぼくは三十超えていますよ。」
「奥さんは、いらっしゃらないのですか。」
「いません。独身です。」
「まあ。モテそうですね。色男そうですし。」
「いえいえ、全然、モテません。ですから、仕事一筋で。」
「彼女も、いないのかしら?」
「いるには、いるんですが。今、東京に行っています。」
「どんな、お仕事をされていますか。彼女。」
「やはり、同業ですよ。しかもライバル会社だったりして・・はは。」
「それは、それは。まるでロミオとジュリエットね。」
「そこまでのことは、ないと思います。」
はっ、と気づいたように舞子は勧告した。
「少なくともベッドに、おかけになって。時さん。」
「では、失礼します。」
その時、部屋の照明が白色からピンク色に変化した。それは時の視覚に舞子をより魅惑的に見せる効果が多大なるものとなったのは、いうまでもない。
でも、ベッドに腰かけた時は、
「舞山さんも、腰かけませんか。立ってばかりじゃ、きつくありませんか。夜の十二時ですよ。」
と言ってみる。
「わたしは立ったままで、いいのですよ。仕事ですものね。」
時は困惑したが眠くならないので、この女子社員の前で寝てしまうことはないだろうと思った。
「ぼくは、これから一晩中眠らないかもしれない。そしたら、あなたは一晩中、立っているのですか。」
「そろそろ疲れましたわ。交代できますもの。うちは、こういうことのための社員が大勢、いるんです。サイバーモーメント接待課に所属しているんです、わたし。課長は社長秘書の美月美姫(みつき・みき)が拝命しておりますの。」
時は株式会社サイバーモーメントには、そんなものまであるのを知らなかった。
薄い水着の舞山舞子は何かを聞いている顔になった。彼女の左の耳にはイヤリングがついているが、それは骨伝導の携帯電話で通話のみのものである。が、時はそれに気づかない。舞子は姿勢を正し,両美脚を膝をくっつけて立つと、
「はい、わかりました。すぐに、やります。」
と誰かに答えている話し方だ。
時は不可思議そうに舞子を見ると、
「独り言かな。今のは。」
「違うわよ。耳のイヤリングは携帯電話なの。美月課長から電話があって、・・・それじゃ、わたしはこれで。」
美的誘惑的曲線を持つ柔らかな赤いビキニの尻を舞子は時に見せると、そのビジネスホテル風の部屋を静かな風の様に退出した。
一人にされてしまった時は、社長室にコーヒーを持ってきた美月が夜の十二時の今でも働いているらしい事や接待課などを考えてサイバーモーメントは凄い会社なんだなと思ったのだ。それでもだ、明日は休みではないし出社しなければならない。とは言っても自分の会社、株式会社夢春(むしゅん)は福岡市東区にあるから、それほど慌てなくてもいい。
誰もいないと時の頭の中に交際中の彼女、城川康美(しろやま・やすみ)二十一歳、身長158センチ、ロングヘアでBWH(バスト・ウエスト・ヒップ)は、84、58、87の姿態が浮かんでくる。今どきの女性としては固いというか手を握らせてくれただけでキスもまだ時は彼女にしていないのだ。それというのも務めている会社がライバルであるという要因もあるわけだが、専門学校ではクラスは隣りで同じではなかったのだ。卒業するまで時は度々、彼女を見た。それも時は学生ではなく専門学校の講師として、である。舞子に三十過ぎと話したように、その頃の時・流太郎は二十代の終わり頃で城川康美が卒業するころに学校の講師を辞めて株式会社夢春(むしゅん)に入社したのだ。城川康美が学校で見れなくなるのが寂しいというのも、その理由の一つではあるのだが、株式会社夢春の社長も時が教えていた学校の卒業生で、時よりも三つ年上の男性で新しくサイバーセキュリティの会社を打ち上げる、というか立ち上げるので人材を募集していたのだ。専門学校に訪れた株式会社夢春の社長、籾山松之助(もみやま・まつのすけ)は講師・時・流太郎に教員室で話しかけてきた。
「ぼく、今度サイバーセキュリティの会社を作るんだけど、人材不足なんです。興味、ありますか?」
いきなりなので時は心にさざ波が立つのを胸に覚えたが、
「興味ありますよ。とっても。」
と即答したのである。籾山松之助は線の様に細い体に優男(やさおとこ)の面立ち、平均身長に少し届かないくらいの背丈、灰色の背広を着てネクタイをせず、髪は短く七三分けで、その時の答えに満面・虹の様な笑顔を浮かべると、
「よかった。仕事が終わったら中洲に行って飲もうよ。又、来る。いつ、終わるのかな、仕事は。」
とソフトな感じで聞いてきたので時は退校時間を籾山に伝えると、
「分かった。それでは、その時に。」
右手を挙げると籾山松之助は静かな教員室をカツカツと秒刻みの時計のように出て行った。
そのインターネット関連も教えている専門学校はJR博多駅の北側にあり、近くには広い森林の公園があってサラリーマン及びサラリーレディの昼の憩いの場でもあるその公園の専門学校の玄関に面したポプラの木の下で籾山松之助は退校してきた時・流太郎に又、右手を挙げると、
「おーい、時くーん。」
と親しげに呼びかけたのだ。
「あ、籾山さん。お疲れ様です」
時も知らず知らずの、そのまた知らずのうちに笑顔になると籾山のところに行くために駆け足で学校の玄関前の白い階段を下りて行った。
博多駅から中洲までは福岡市営地下鉄を使うのだ。随分前だが、博多駅の近くの道路が工事中に陥没したことがあり、修復が早いということで世界中の話題となったことがあったのは二人が歩いている場所から、そんなに遠くはないところにあるのだが、博多駅付近は低地帯で御笠川という川が博多駅の東側に流れている、これが氾濫すると通行人は膝近くまで冠水した道路を通勤しなければならなくなる、その事態を改善するべく御笠川の川底の土を掘り、それを除去する工事なども行ってきた。
それらは今では遠い昔というほどでもないが、今、乙な事にその御笠川に降りて水上バスともいえる乗り物が頻繁に出ていて、そこから北に向かって博多湾に出ると西に向かい、天神という福岡市の最大のショッピング街の東側を流れる那珂川の河口に辿り着くと、それから水上バスといえる船は南下して左手の川沿いに並ぶラーメンの屋台が見えると、そこはもう歓楽街・中洲だ。そのあたりに水上バス船が停泊する場所がある。次の停泊地は対岸が西中洲で、ここからは西に歩くとデパートの立ち並ぶ天神に歩いて五分ほどで到着する。
 二人は、その御笠川に浮かぶ水上バスに博多駅の東から歩いて行って乗船したのだった。平日は祝日より乗船客は少ない。快晴の空は雲一つない。真青な空の色は一色だけで誰があの青の色を決めたのだろうか。神様なのか、そんな馬鹿なことはない単なる自然現象だから、それは偶然にそうなったのだと答える人も多いだろう。でも、本当にそうだろうか。人生に起こることは全て偶然のなす業、なせる業なのか。時・流太郎もインターネット関連の専門学校に入学し、そこの講師となっていたから籾山松之助との出会いがあった。それで今までの生き方を変えて専門学校の講師からIT関連会社に身を進めようとしている。空の色は、そんな彼を祝福しているかのように見えた。
水上バスは御笠川から那珂川に移り、まだ営業を始めていないラーメンの屋台が見える船着き場へと滑り停まった。
籾山松之助がサイバーセキュリティの世界に興味を持ったのは「情報モラル・セキュリティコンクール」だった。彼は標語部門で最優秀賞を取ったわけではないが、いいところまで行った。これが重要であるのだ。最優秀賞を取ったら籾山は満足してしまって、それ以上進まなかったかもしれない。
小学校五年の彼は同学年の男子生徒が最優秀賞を取ったのを知ると、
よーし、標語なんかよりセキュリティーを勉強してやる、と一念発起、発奮したのだ。NISC,IPA、の事も知った。NISCとは内閣サイバーセキュリティセンターで、IPAとは独立行政法人情報処理推進機構のことだ。アメリカが日本の同盟を破棄した時、アメリカの某機関が日本のインフラを破壊するべく、そのようなウイルスをセッティングしていると暴露した元情報部員の人が、その人はロシアに亡命した。だが、現在、それは20xx年に至っても行われていない。
もし、そのようなことがあったとしたらIPAは、それを防げるのだろうか???
サイバーフォース、これは警察庁にあるサイバー攻撃対策の部門でサイバーフォースセンターは昼も夜も警戒中だ。
サイバー防衛隊、これは自衛隊にある部署。防衛省と自衛隊のネットワークを守っている。
NICT、国立研究開発法人情報通信研究機構は東京都小金井市にある。
コンピューターシステムNICTERでサイバー攻撃を分析、研究等々を行っている。2014年には日本へのサイバー攻撃は256億件にも昇っていた。
JPCERT/CC、一般社団法人JPCERTコーディネーションセンターはサイバー攻撃が起こったという報告を受けて対応している。インターネット上にセンサーを置いて観測する組織だ。
 籾山はセキュリティ・キャンプ全国大会に参加しようと中学生の時に思ったのだが家庭の事情でその望みは叶わなかった。これも後になって籾山のサイバーセキュリティに対する情熱の炎に一層の油をそそぐことになったのだ。
NICTERのウェブサイトでは動画としてサイバー攻撃が日本に対して世界のどこから向かってくるのかを公開している。ATLASでは沢山の小さな切れた線の形で攻撃が日本に向かってきているのが目で見える。
CUBEという形でも見ることが出来る。拡大、縮小、回転させて見ることも可能だ。ダークネット、即ち到達可能で未使用のIPアドレス空間のこと、ここにパケットが送信されていて、これらにマルウェア感染をねらったものなどが存在する。
これも少年時代の籾山には刺激を与えた。
 
 中洲にある二十階建ての雑居ビルには飲食店や居酒屋、スナック、バー、が入店して深夜まで人の出入りの流れは止まることがない。商談にビジネスマンが利用するので日曜、祝日より平日の方が、こちらは水上バスよりも混み合っている。籾山松之助は時・流太郎を最上階にあるインターネット居酒屋「ネットで、お酒を」に連れていく。ここは個室、二人部屋、四人部屋、宴会広間と部屋が豊富でインターネットを見ながら酒が飲めるというものなのだ。日本風の入り口を開けると着物姿の若い美女が一人、立っていて、
「いらっしゃいませ、ようこそ、おいでくださいました。どちらのお部屋になさいますか。」
とニコヤカな笑顔を二人に差し向けた。籾山は、
「二人部屋に案内してください。」
「かしこまりました、こちらへ、どうぞ。」
二人は六畳間位の洋室に、廊下も日本風だったが、中は洋風で緑のカーテンが閉じられずに窓の両側に対峙している、その窓は曇りガラスだ。部屋は小さな照明だけで十分に明度の高い環境となっている。横長の高級オフィスデスクのエンベロップデスクの上には二台のノートパソコンが距離を置いて並び、その前には座り心地のよさそうな高級チェアが存在感を二人に訴えた。どちらもヘッドレスト付きのハイグレードなものだ。頭まで椅子に寄りかかれる訳だ。
そのデスクの右端にスピーカーがあって、二人が椅子に座ると、
「メニューの御注文は、スピーカーの青のボタンを押してから、お話しください。」
と、さっきの受け付けてくれた女性の声がした。
成程、デスクのスピーカーの横にはメニュー表が、あった。籾山は、メニュー表を取ると左に座っている時に、
「注文は何か好みが、あるかい。」
「いえ、特にありません。社長が決めてください。」
「よし、わかった。う?海老と蟹、和牛に鯛の鍋と最高級うなぎの蒲焼きにワインのセットにしよう。」
「ワインなんて、とても高価なものがありますね。それは社長だけにしてください。」
「ハハハ、DRC・ロマネコンティなど頼むのじゃないからね。ワインは安いのにしておくよ、だから君も飲め。」
「はい、安心しました。いただきます。」
籾山はスピーカーの青のボタンを押して注文した。応答は、又さっきの女性の声が籾山の注文を復唱して、
「それでは、おまちくださいませ。」
 
籾山は時の方を椅子を回転させて向くと、
「この店も大手明太子メーカーの子会社で、だから海産物は安く食べられる。その明太子メーカーのサイバーセキュリティを受け持つことになったんだ。それで商談の時、この店に連れられてきてね。
契約が成立した。まずは一年、よければ、ずーっと、という回答だった。嬉しかったね。」
「それでは、それが初仕事というわけなのですか。」
「そういう事になる。この一社だけでも、凄いものがある。当然ながら、その明太子メーカーのホームページには、この店のウェブサイトもリンクされているから、それにこの店もネット通販対応で顧客情報もあるわけだろう。クレジット決済にも対応している。もっともクレジットカード決済は決済会社に任せれば、いいわけだけど、
顧客の住所、氏名、電話番号、それに任意ではあるが年齢、職業、好きな食べ物、好きな飲み物、誕生日まで情報を記録している。
特に誕生日を記入してくださった、お客様には誕生日にポイントをプレゼントするというから、誕生日まで記入する顧客も多いそうだ。」
「それは大変な情報ですね。狙われるのですか、その情報が?」
「何度かDOS攻撃は、受けたらしい。が、情報は盗まれなかった。それでもサーバーはダウンしたらしいから。サーバーダウンでウェブは見られなくなるし、その隙に顧客情報を盗み出そうという魂胆なのかもしれないが。
それでサイバーセキュリティの会社を検討していた矢先、白羽の矢を僕の会社に立ててくれたのさ。」
「よかったですねー。運より実力ですよ、社長の。」
「まあ、そう、おだてなくてもいいよ。少年の頃からの夢だったからね、こういう会社を作るのが。」
「僕の様な人間でも、お役に立てますか?」
「もちろんだよ。君も学校でサイバーセキュリティについて教えているじゃないか。どんな新人よりも頼もしいものだ。」
その時、二人の耳に、
「お待たせしましたー。」
と受付の時の女性が細い両手に大きなプレートを持って高級料理を持ち来ったのだった。
 
 
 時・流太郎が籾山社長と会食している時に、時が恋人だと思っている城川康美は別の会社の社長と時達がいる同じ中洲のビルの最上階の別のレストランで会食していた。
その会社は、やはりサイバーセキュリティの会社であり、株式会社夢春より古参の大手、株式会社ネットダイヤモンドだ。
 社長は六十代初めの太った男で赤ら顔の汗が出やすいタイプ、城川康美を前にしても時々、背広の上着のポケットからハンカチを出して汗を拭いてる。こちらの会食は種類はなしで、その日のサービスメニューのものというからケチな社長らしい。その社長が城川康美にテーブル越しに名刺を渡して、
「今月大治(いまつき・だいじ)です。城川さんはシステムエンジニアとして採用しますが、サイバーセキュリティの方も頼むかもしれない。」
城川康美は渡された名刺を覗くと、顔を上げて、
「わたし、インターネット関連の仕事なら何でもやります。」
とキッパリと答えた。
「ほう、それは頼もしいな。そういう人を待っていたんだ。わたしの秘書にしたい位だが、秘書は福岡市内の某大学のミス・キャンパスだった女性が、まだ辞めないのでね。城川君は、その秘書と比べても美しいよ。」
「まあ、わたし、自分では美しいなんて思った事、ないです。」
「そういうもんかな。大体、世間の奴らは間違っていて、美人は能がないなんて思っているのがいるらしいが、そんなことはない。実際、ワシの人生でも美人社員がどんなにワシを助けてくれたことか。ま、わたしのカミさんは普通の下膨れの女なんだけどね。
だったりするから、わたしが城山君を美人と褒めたからと言って警戒する必要はないんだよ。
仕事が出来る有能な社員だと思うんだな。」
「がんばります、わたし。」
青春の希望が溢れた答え方だった。
 
 この株式会社ネットダイヤモンドと株式会社夢春は同じ福岡市東区の埋め立て地、アイランドシティにその居を構え、建物もお互いすぐ隣にある。
であるが、時・流太郎と城川康美は入社して一か月、まだ顔を合わせていないのだった。それは通勤途次の事であるけど休日も出社となった二人は、休みの日も会っていないのだった。
 勤務場所に近い西鉄香椎駅前のマンションに城川康美は引っ越して一人暮らしを始める、というのも彼女の実家は福岡市ではなく北九州市というから電車通勤する人もいるし新幹線で通勤、通学する人もいるけれども、株式会社ネットダイヤモンド社の寮というそのマンションに入り、家賃はタダという特典付きだ。その代り、というわけか休日出勤、サービス残業はありで社長の今月大治は、それなりに元を取る男なのだ。そのマンションの名称がダイヤモンドマンションといい、所有はネットダイヤモンド社のものとなっている。
七階建てだが城川康美の部屋は一階でベランダの外は狭いアスファルト舗装の道だから西鉄香椎駅で乗り降りする乗客が多く足を運んでいく。
臆することのない彼女は洗濯物もベランダに干すのだが、下着は内側に掛けて通行人には見えないようにした。
 さて、そのダイヤモンドマンションの隣のマンションがモーメントマンションという。
ここは五階建てで、その三階の部屋が・・・と駅前の不動産会社の女子社員が空室物件を探しに来た時・流太郎に、
「空室がありますよ。」
と笑顔で紹介するので、
「見に行きたいです、その部屋。」
と時は身を乗り出して、うなずくのだ。
「それではご案内しますわ。車で行きましょう。」
その不動産会社の裏に駐車場があり、数台並んでいる不動産会社の社名が自動車の側部に記されているものの一台に女子社員は近づくと時に、
「後部座席に乗ってください。」
と促して、自分は助手席に乗る。
時は自動で開いた後部座席に乗り込むと、運転手は後から来るのかな、と思いきや、後部のドアが閉まると同時に自動車は発進したのだ。
自動運転車だったのだ。いまだ普及は進んでいない自動運転車後進国の日本であるから時は驚いた。助手席に座った不動産会社の女子社員はフロントパネルのスイッチを押すだけだった。時は、
「目的地はカーナビですかねえ。」
と聞いたら、
「IOTですよ。さっき車内からパソコンでモーメントマンションを目的地に入力したんです。この車は無線ランが搭載されていまして、インターネットも繋がります。
ですからカーナビは要らないのですわ。」
と余裕綽綽(しゃくしゃく)と後ろを向いて話すではないか。
少し唖然とした時ではあったが、モーメントマンションでは更なる驚きが待っているのだ。
モーメントマンションも駅前にあるのだから車では五分も所要時間を要さないものであるわけで、モーメントマンションの広い駐車場には外来用の車を停める空間も広くあるから時達の自動車は縦列駐車も自動で行われた。
 モーメントマンションの外壁は緑色という珍しい色だ。玄関から入るとオートロックの集合玄関があり、右手に管理人室があって、
時が見るとその管理人は、どう見てもロボットだ。
これも全国的には普及は遅く、福岡市で、いち早く始まっている。それでもロボット管理人はモーメントマンションが第一号だろう。
実はロボットは作られていても購入費用が高額なため採用を見送っているマンションオーナーやマンション会社が圧倒的だったのだ。
ロボットとはいえ長い髪の毛で女性型ロボットなのは、このモーメントマンションはワンルームマンションで独身男性が多いためだろうと思惟できるのではないだろうか。
 時がロボットと見抜いたのは彼が鋭い観察眼を持っていたからで、一見するとマネキンかと見える雰囲気もある。さすがに人間の若い女性と見間違わないのは、その静止した様子にある。人間なら座っていても何処となく動いているもので、機械にはそれはないのだ。
ところが、である。
 その若い女性、に見えるロボット管理人は玄関のガラスの第一の扉を手で開けて入ってきた二人の方を顔を向けて見た、のである。
 その目たるや人間のものと変わらない外見で、義眼などは昔から優れたものがあったので、さして驚くにあたらないが秀逸なのは顔の振り向け方が優美でF分の一の揺らぎのような直線的ではない若い女性らしい顔の向け方であった。
更に、だ。管理人室の前に立った二人を見て、そのロボットは微笑みまで浮かべたではないか!
不動産会社の女子社員は、
「空室を見たいお客さんです。303号室のカギをお願いします。」
と申し込むと、その女性ロボットは、
「かしこまりました。」
と自動音声の女性の様な声を出して、管理人室内から鍵を持ち出して来て女子社員に手渡した。
見事な動作であった。行き届いているというか、不要なようにも思われるのは、その女子ロボットがカギを室内に取りに立ち上がり、歩いていく動きの中で豊かな尻が色っぽく左右に揺れる事なのである。
前面から見ると立ち上がった時には豊満な胸のふくらみが揺れ動いた。そこまで作らなくてもいいようには思えるのだが、製作者の、ゆとりも思われる。
その胸のふくらみも、かなりなものだ。男性入居者へのサービスの一環であろう。おまけに、その女性ロボット管理人からは若い女性の芳香みたいな匂いがした。肌はすべすべで、よく作ったものだと時は思う。
 貰った鍵でマンション内に入り、二人はエレベーターで三階に行き、303号室に入る。
 玄関では靴を脱ぐのは大昔から同じで、ワンルームマンションとしては普通のものだったが、六畳の部屋で女子社員は、
「大昔にはオール電化などが、ありましたけど、このマンションではオールIOTを目指しているらしいんです。インターネット・オブ・シングスの略はIOT、というのはご存知ですね?」
「ええ、一応は知っていますよ。インターネット関連の会社に就職したものですから。」
「まあ、それは本当に、お客様にはピッタリですわ、このお部屋は。」
「そうみたいですね。というか据え置きの電子レンジや冷蔵庫まで、ありますね。」
「ええ。それらは、外から携帯電話で操作できるものなんです。」
「電子レンジなんて外からじゃなくても・・・。」
「いえ、帰宅後にすぐ温まった料理が食べれますよ。なんと冷凍、と冷蔵が兼用でできる電子レンジなのです。ですから、冷蔵庫から出して、その電子レンジを冷蔵庫の状態にして何かの食べ物を耐熱性のお皿に乗せてレンジに入れておけば、いいのですわ。
そしたら下の玄関に着いた辺りで携帯電話からインターネットで電子レンジを操作したら、いいのですわ。
冷蔵庫の冷凍室から冷凍ものを取り出して入れる場合には、電子レンジを冷凍室の状態に切り替えれば、いいんです。
チン妻なる人達が、いましたけど、自分で出来ますよ、今の独身男性の方は。冷蔵庫は冷凍室が大きめに作られています。電子レンジ用の冷凍食品を大量にネット通販で購入して保存しておくために便利ですから。」
「なーるほど。僕もネットショッピングの常連ですよ。これは、いい。」
ということで時・流太郎は三日後には、そのマンションで生活するようになった。隣のマンションの一階に城川康美が住んでいるとは露、いやミトコンドリアほども知らずに。
 
 夜遅く帰ってきて時・流太郎の趣味といえばインターネットラジオの株式投資の番組を聞くことだった。彼も少々は株式投資をネット証券経由でやっている。それを聞いて思うのは昔のように証券アナリストが喋るのではなく、人工知能を使って解析された結果を証券会社の若い女子社員が話しているという事だ。
既に一部の将棋の対戦は人工知能同志の戦いとなっていて、ネットでは将棋AI王戦が行われている。
 その将棋のAIの一方は株式会社ネットダイヤモンドが開発したものだ。開発方法としては過去の将棋の棋譜をすべてAIに記憶させて、勝利の定跡を読み取らせる。最新の棋譜まで打ち込むため、日本将棋連盟の棋士は戦々恐々とした状態だ。 
 
時・流太郎はノートパソコンを開いて、そのネットラジオを聞いていたが、それを閉じるとメールチェックした。城川康美から返信が来ていないだろうか。いや、来ていない。お互いの入社後、一通の返信も届かないのだ。忙しすぎる、のだろうか。しかし、自分ほどではないだろうと思う。返信がないのにメールを送るなんて、あまりよくないと思って遠慮している。
その時、隣のダイヤモンドマンションの一階に住む城川康美は洗濯物をベランダで干していた。こちらのマンションは集合玄関のオートロックではなく、オールIOTではない昔のマンションと言える。
 
 ハッ、と時は回想から現在の居場所に意識が戻った。というのは、若い女性の声がしたからだ。
「ぼんやりされていますが、大丈夫ですか?」
ベッドに座った位置から上を見上げると、さっきの舞山舞子とは違う美女が出現していた。いや、なんとその顔は城川康美 !!!
時は驚きのあまり口をポカンと開けてしまって、慌てて閉じると、
「康美ちゃん!君が入社したのは確か株式会社ネットダイヤモンドだったよね。」
「康美?わたし康美じゃありません。貴美(きみ)ですけど。」
時の脳内は目まぐるしく動いた。
「そうか、もしかして君の名前は城川さん、でしょう。」
「そうです。よく、ご存知ですね、わたし、自己紹介していませんけど。舞山さんから、お聞きになられたの?」
「いや違うんだ。ぼくの彼女の名前がさ、城川康美 でね、君にそっくりだから、もしかして双子じゃないかと思ったんだ。」
「ご名答です。わたしの姉は康美ですけど、でも、本当は他人の空似かもしれませんよ。それに、わたし姉とこの前、携帯で話したけど彼氏はいないって言ってましたわ。」
ガキーン!と時の頭にハンマーが刺さったような音が聞こえた。
「それはね、それは照れ隠しかもしれないじゃないか。」
「かもです、ネギがあったら、おいしいかな?」
なんか変な奴、生真面目な姉の康美とは性格が違うようだ。貴美は一歩、時に近づくと、ミニスカートの両端を両手で持って、
「康美姉さんだと思って抱いてくださらない?」
「そ、そんな・・・事は、できない。」
と固く断る時ではあった。
「そう、お堅いのね。そういう人が、わが社の社長は好きなんですって、ですよ。」
「それは光栄です。契約の方は明日にでも、お願いできますか。」
「そうするって、社長は言ってましたわ。ねえねえ、今度、姉さんとデートする時、これ、姉さんにプレゼントしたら?」
貴美は肩に掛けていた赤いショルダーバッグからレンズが青色の眼鏡を取り出して時に手渡した。
「これ、なんだい?受け取るかな、彼女。」
「面白いメガネよ。かけてみたら、わかるらしいわ。」
「そうか。それなら貰っておくとするか。」
「それじゃあ、これで失礼いたします。」
白いミニスカートの貴美は深く美髪の頭を下げて部屋を出て行った。
時はゴロリとベッドに寝そべると、部屋の照明が消えた。
(あれ?電気消してないのに。監視されているのか・・。でも、親切なのかもね。)
いきなり部屋の壁に付いているらしいスピーカーから社長秘書、接待課長の美月美姫の声が響く。
「こちらで照明を消したりしませんわ。そのベッドは寝転ぶと部屋の明かりが消えるんです。それも我が社の開発したもので、間もなく売り出します。」
と笑みを含んだような声で丁寧に説明した。又もギョッとした時は、
(どっちみち監視しているんじゃないか。でも、すごい発明だ。自動消灯ベッドか。高すぎても売れそうだなー。)
又も美月の声がして、
「眠れるような音源を流しましょうか。」
というから、
「はい、お願いします。」
と時が答えると波の音が繰り返される響きがスピーカーから流れるように聞こえてきて、時は一分もすると眠りの世界へ移行していった。
 
 時・流太郎が睡眠に入った時、サイバーモーメント社長、鬼沢金雄に秘書の美月から携帯電話で連絡があった。
「社長、時さんは、お休みになりました。」
「そうか、よくやった。ご苦労さん。」
鬼沢の表情は満悦へと変わる。
 
 
翌朝早く起きた時・流太郎の耳には壁のスピーカーから、
「おはようございます。只今、時刻は7時です。朝食をお届けしますので、洗面などをどうぞ。」
と昨夜の秘書の美月とは違う女性の声だ。
洗面所に行って顔を洗い、歯を磨く。そこから出たら、入り口のドアが開いてメイド喫茶にいるようなウェイトレス風の衣装の若い女性が銀色のプレートにカステラの様なパンとコップに牛乳、カップにコーヒー、グラスにオレンジジュース、ちいさな皿にヨーグルト、バナナ一本という朝食メニューを載せていた。
メイド風のその若い女子社員は、
「お食事がすみましたら社長室まで、ご案内します。」
「連絡は、どうすれば・・・モニターカメラで見ていますね、さっきの目覚めの時も。」
「ええ、しっかりと監視させてもらってまーす。大事なお客様ですもの。」
「客って、そちらこそ、お客さんですよ。」
「株式会社夢春様には当社の製品をご購入いただいています。」
「あー、そうなんですか。知りませんでした。」
「それでは、お召し上がりください。わたしも、お召し上がりますか?うふふ。」
呆気にとられた時の顔を微笑で眺めたメイド女子社員は、軽く一礼して軽く部屋を出て行った。
 
 朝食も済み、そのあとの社長室での契約も済んだ時は颯爽とサイバーモーメント社を後方にした。
 
 
 株式会社ネットダイヤモンドはサイバーモーメント社とも覇を競い合う関係にあるのは今年に始まったことではない。なにしろサイバーモーメントの鬼沢金雄は、かつてネットダイヤモンドで働いていたことがある。その頃はネットダイヤモンドは格安のレンタルサーバーが主なる事業だった。潤沢な資金を元に社長の今月大治はロボット産業に乗り出していったのだ。その時、研究開発の一人として今月は鬼沢を指名した。社長室に呼びつけると、
「鬼沢君。今度はウチでロボットを作ろうと思ってな。君を開発担当主任に命ずる。」
「は。やらせていただきます。」
と電子レンジの終了音のような機敏な応答の鬼沢は、その時、三十代だったのだ。
その時の経験が鬼沢の独立後に作っていくロボット製造の原点だと、いってもいいだろう。
それから二十年、時が退出してから次の日にパソコンを開いてネットニュースを見て事件が発生しているのを知った。
 
 福岡市内の春日市に近いところの銀行の支店である。昼の一時、同支店に背広を着て、フルフェイスのヘルメットをかぶった男が入り口から入ってきた。スタスタスタと預金の窓口に来ると、
「五百万円ほど、このアタッシュケースに入れてください。」
と丁寧な口調で持参した銀色のアタッシュケースを開いて窓口のカウンターに置いた。受付の女子銀行員は、
「通帳を、お出しください。」
と答えたが、その男は胸元のポケットからピストルらしきものを出し女性行員の額に銃口の照準を合わせると、
「このアタッシュケースが通帳です。警察に連絡したら、すぐにこの引き金を引きますよ。カウンターの下にあるボタンを押すのが見えても撃ちますからね。この銀行のみなさん!」
と男は大声を上げた。「あなたがた、みんな同じです。わたし、目がいい。遠くのあなたもよく見えます。だから、この銀行の誰が警察に連絡しても、この窓口の女性の命はなくなるのでーす。」
女子行員は後ろの席にいる支店長を振り向いた。初老の男性支店長は、要求された金を出すように目で促す。女子行員は要求された金額をフルフェイスのヘルメットの男のアタッシュケースに、詰め込んだ。
それを見た男は、
「よろしい。それでは、みなさん、さよナラ。」
と言うなり全力に近い速度でその支店から出て行った。
 
 鬼沢は、これを読んで(時・流太郎じゃないのかな)と思ったりした。
その男は銀行の駐車場に停めてあった車で逃走した。刀装していたわけではないが銃装していたのだ。
犯人が喋った口調から外国人ではないか、と行員たちは話していたが。
銀行の防犯カメラに写っていた画像から犯人は何と!ロボットだと分かったのだ。
 最近では無人の自動運転よりタクシーの場合、ロボットの運転手が座席に座っているところが多くなった。というのは自動運転車よりもロボットと自動車を購入する方が安くてタクシー会社にとっては経費が削減できる。
会話をするロボットは値段も上昇するため、無言のロボット運転手が大半なのだが、タクシーの側面にロボットで話せませんと表記されている自動車が走っているのをよく目にするものだ。
ということでロボットは大勢いる、という三人称を使っていいのだか、日本で製造されるロボットは人口ならぬロボット口は正確な数度が把握されていない。自動車が陸運局に登録されるのとは違うからだ。
鬼沢は(こういった銀行強盗は福岡市では初めてだろう。)と推察する。
(なるほど、ロボットでは、どんな警備員だって勝てないだろう。よくやれても壊せるぐらい、その前に警備員の命が壊されるはずだ。)
(では、)
そこで鬼沢はニヤリとする。それなら警備員のロボットを作ればいい、と思うのだ。突然、秘書の美月がドアを開くと、
「社長。ネットダイヤモンドの城川康美さんです。」
と紹介すると、ロングヘアの康美が春風のように顔を出す。鬼沢は、
「やあ、お待ちしていましたよ。さあ、どうぞ。おかけになって。」
「城川と申します。以後、お見知りおきを。」
「ああ、覚えておきますよ。今日は、サイバーセキュリティの話ですか?」
と鬼沢は言いながら康美の前に座る。康美は長い髪をかき上げると、
「ええ、そうです。既に他社さんで御使用になられていると思いますが。」
「ええ。昨日、来た人がいてね、もう、契約してしまったんだけど。」
「どちらの会社でしょうか。」
「株式会社夢春だったかな。」
「夢春さんよりも、わたくしどもの会社の方が、お安くできます。」
「そうかー。でも、昨日契約したばかりだから。」
「それなら、その契約が終わってからは、どうですか。」
「そうだね。それなら、いいかもしれない。」
「それでは、そういう事で、お話を進めさせていただきます。」
鬼沢は康美の話は天空はるか、かなたで聞いていて視線は彼女の胸から腰のあたりを見つめている。(とても、いいプロポーションというか、)
「・・・ということで、よろしいですか。」
「あ、ああ。いいよ。次回契約でしょう。」
「来月から、ということで。」
「来月?一年契約だったと思う。」
「違約金は当社で、お支払いします。」
鬼沢はテーブルの自分の前に広げられている案内書を手に取って見ると、
「確かに安いね。じゃあ、そうするか。」
「ありがとうございます。それでは、こちらの契約書に署名と捺印を、お願いします。」
鬼沢は自動筆記ペンを取り出した。マイクロコンピューター内臓のもので、自分の名前を記憶させてある。その場合、ペンの頭にある赤の部分を押せば、いいのだ。スイスイ水のようにペンは動いて鬼沢金雄と署名する。
康美は、そのペンをじっと見て、
「まあ!自動で筆記するんですね。まるで宗教のお筆先みたいですわ。驚きました。」
「うん、これも販売予定だけど経費が、かかりすぎて一般に販売するのは無理だと思うね、当分。」
「わたし、購入したいです。」
「そうかね、嬉しいね。だけど、今は、これいっペン、いや、一本しか作ってないんだ。申し訳ない。」
「あら、それでは待ちますわ、いつかは次のものを作るのですね。」
「そうだね、そのつもりだよ。」
「楽しみですよ、そのペン。」
「楽しみにしていてくれたまえ。ところでだ、どうかね、君は彼氏は、いるのか。」
「うーん、いますけど、だらしない感じで。生活力なくて。という人ですけど。」
「ふーん。それなら、その彼氏を君はあまり好きではないのだろう。」
「そうなりますかしら。あっちが積極的なだけとおもいます。」
「あっち、というと、もしかして。」
「いえ、あっちって彼のこと。」
「うーむ、それなら、どうかね。今度、食事でも。」
康美の瞳はキラ、と輝いた。彼女は、ずっと年上の男性が好きなのだった。というのは康美の父親は事業家で精力的に働く男、だから父親をとても尊敬している。一種のファザーコンプレックスみたいなものは外の男性に振り向けられる、ということだろう。だから康美は、
「いいです、今度、休みがもらえたら、ですけど。」
「なに、休みなしかね、今は。」
「ええ。でも、そのうち、もらえると思います。」
「そうか、そうか。では、私の携帯の番号を教えておくから。」
と鬼沢は自分の番号を康美に教えた。
それをメモする康美、もちろん携帯電話にメモしたのだ。
 
 マンションに夕方帰った康美は部屋で携帯電話が鳴るのを聞くと、
(もしかして鬼沢さん?)と思い、
「もしもし。」
「あー、流太郎だよ。」
「時さんか。」
「時さんではダメなのかしらん。」
「駄目じゃないけど、何用なの?」
「何用って、明日、水曜日が休みになったんだ。君は?」
「仕事ですけど。」
「いつ会社は終わるんだ?」
「明日は定時よ。」
「定時は五時半?」
「ええ、五時半だわ。」
「じゃあ、おれ迎えに来るから。君の会社の前まで。」
「うん、そうしても、いい。」
「じゃあ、そうする。」
「お休み。」
「もう、寝るの?」
「まだ寝ないけど。」
「君の住所を聞いてなかったね。」
「まだ教えたくないわ。」
「それじゃあ出会い系みたいじゃないか。」
「そのうち、教えるわ。」
「そうして欲しいね。それじゃ、ね。」
携帯電話は切れてしまった。
 
 翌日は夕方から曇り空になった。午前中は快晴の空が、少しずつ薄い雲が現れ始め、今は墨色の空模様の午後五時半になった。時・流太郎の心の中も、その天候と同調するかのような動きとなりながらも城川康美を迎えに行く約束なので、行かなければ、と立ちあがっていた。
 
 西鉄香椎駅近くの時のマンションから康美の会社までは歩いて四十分ほど、さっき時が立ち上がったのは五時半より五十分前だった。だから康美のいる会社ネットダイヤモンドの前には康美の退社時刻より十分前には立っていたのだ。
五時半になり、ネットダイヤモンドから出てきたのは康美一人だけだったので、
時は彼女に手を振って、
「おーい。」
と呼んでみた。
「約束を守る人なのね、時さん。」
鬼沢には時のことを、だらしないなどと説明したけど、やはりキチンと待ち合わせてくれた彼を嫌いには、なれないらしい。
二人が立っている人工島のアイランドシティには広い公園があって、
アイランドシティ中央公園といい、その外側を一回りすると1.6キロにも及ぶ長方形の樹木の多く林立する潮風が来たから訪れる場所だ。
休日には人も多く来るけど、平日はあまり立ち寄られることはない。
雨が降りそうな今日は、時に連れられて康美が入ってみると誰もいない緑の空間だったのだ。康美は可愛い唇を開くと、
「こんなに広い公園が割と近くにあったのね。静かで、いいわね。」
「君の会社が僕の会社の隣りにあったなんて知らなかった。」
「あら、そうだったの。わたしも知らなかったわ。」
「これなら会社の帰りに駅まででも帰れるよ、一緒に。」
「退社時間が同じだったことは、今まで一度だって、なかったわね。」
「そうみたいだ。僕の方が遅いんじゃないか、と思うよ。」
「わたしだって夜遅いことも、あるわ。今日は入社して初めて、こんなに早く帰れるの。」
そんな康美の顔は可憐で、いじらしいと時・流太郎は思った。そういえば、と時は思い出した。自分のズボンのポケットに青色レンズの眼鏡を持って来ていたのだ。これはサイバーモーメントで康美の妹と名乗る貴美(きみ)から貰ったものだ。
それを取り出すと康美が目を錐(きり)のようにして、
「なんなの、それは。気味が悪いわ。」
「君の妹さんから貰ったんだ。」
「妹を何故、知っているの?」
「貴美さんだろう?」
「ええ、そうだけど。」
「サイバーモーメント社に社用で行った時に、貴美さんが出て来たんだ。」-まさか、夜にとは、いえない。
「そうだったの。貴美がサイバーモーメントで働いていたなんてね。」
「えっ、知らないのかい。実の妹さんだろう。」
「そうだけど、異母の妹よ。母が違うの、実は貴美は父の愛人の子なんです。」
「そうだったんだね。それなら何処の会社に勤めているかも知らなくって不思議ではないさ。この眼鏡、掛けてみる?」
「ええ、掛けてみるわ。」
康美は青いメガネを時から受け取り、その時、時の手に少し触って、自分の耳に乗せてみた。
すると!時のどちらかといえば好男子風の顔が邪悪で淫猥な男の顔に見えてきたのだ。康美は(こんなこと。これが時さんの本当の顔、なのかしら。)時は黙りこくった康美に、
「どうかしたのかい。変なものを見ている感じだな、君の顔は。」
パっ、と碧いメガネを外すと康美の目は一直線に時の面相を眺めるのだ。すると、眼鏡を通してみた時とは全く違う、いつもの時の優しそうな笑顔が、そこに厳然、泰然、健全として存在を示現している。
(あら不思議、さっきのは錯覚?幻覚?だったのかしら。)康美は、そう思う。
「なんだか変な顔に見えたのよ、時さんの顔が。」
「天候のせいじゃないのかな。雨が降りそうだし、ね。」
確かに炭色の空模様、軽い塩の匂いのする微風、青色は人の顔を歪めてしまうのか。青色は食欲を減退させるという実験結果もある。
食欲の減退は同じように異性間の興味も冷めさせる力が、あるのだろうか。
見よ!雨が降ってきたから二人は、それぞれ持ってきた傘を広げた。
康美は傘の下から雨天の空を見上げて慨嘆する。
「今日は台ナッシング、だわ。」
「外でばかりが会う場所でも、ないんだ。屋根の下なら、傘もいらない。」
「君の部屋に行きたいね。」
「いや、それはまだ駄目です。うちの父は厳しいの。」
「良家の子女らしいね。そうしよう。ネットカフェとか、どうかな?」
「それ、いいわね。時さんはサイバーセキュリティの?会社に勤めているのよね、今。」
「君も同業の会社で働いている。」
「だったらネットカフェなら満点デートね。行きましょう!時さん。」
康美は先んじて歩を進めた、それは帆を張った小舟がスイスイと進むように。時は慌てて、
「康美ちゃん、ネットカフェを知っているのか、先に行くけどさ。」
土砂降りになりだした滝の雨の中で呼びつなぐ。
「知ってるわ。一緒に来て。」
 
 雨に少し濡れた城川康美の後ろ姿は、その流線型の美というものに満ちている。株式会社ネットダイヤモンドでは、制服というものがない。康美のスカートは膝より少し上の長さで、ぴっちりとした臀部が、西瓜のように左右に揺れ動いている。まだ、時太郎は、そのスカートの中身を見た事が、ないのだ。灰色のスカートに、上着はクリーム色の長袖で、傘は桃色の自動で開閉する、そう、閉じるのもボタン一つで、その傘は閉じるのだ。
 かなり昔、2017年頃でも自動で開く傘は販売されていても、自動で閉じる傘は発売されていなかった。彼女に後ろから追いつきかける時は、康美が、その傘を開くのは初めて見たが、閉じるのは未だ見ていないのだ。
彼女の右側に追いついて並んで歩く時・流太郎は、傘をさしている為に彼女に近づける距離も普段より遠くなる。康美の右から見た横顔も、鼻も少し高くて睫毛の長いのが時の左の目に映写される。
 少し彼女の髪が濡れているのも普段とは違って、時の感覚に弱い電流の様なものを走らせるのだ。
嗚呼、ネットダイヤモンドは自分の会社とはライバル関係に、あるではないか。その彼女と、交際してもいいのか、という思いも彼の頭を時々、ちぎれた黒い雲の断片が空を行くように、かすめていく。
 
 並んで歩けば時の方が背が高いし、足並みは彼の方が彼女に揃えなければならない。時は、時々、康美の美脚を素早く見下ろしては、視線を元に戻す。白い肌の、おみ足だ。それがリズミカルに魅惑的に動いている。彼女の肩幅は彼女の腰の幅よりも、ずっと狭く、女らしさに溢れていた。
(おれが、なんとかするから、会社なんて辞めてしまえよ、康美ちゃん。)そう言いたい、時・流太郎なのだが、康美が鬼沢に言うように経済力に乏しい。それでは、共働きでは?とすれば、お互いライバル会社なのだ。これこそ現代の悲劇で、あろうか。
 おお、ネットカフェが見えてきた。二十四時間営業のネットカフェ、「美しすぎるネットカフェ」と赤い文字で看板には書かれている二階建ての白い建物が信号を渡ったところに、二人を待っていたかのように、その姿を、その店を見せている。
 信号は青だ、渡ろう、康美、君なら福岡市議会議員に立候補したら日本一、美しすぎる美人市議になれるぞー、と心の中で思う時・流太郎であるが、彼女は黙って横断歩道を黄疸という病気など無縁そのもののように渡っていくから、時も胸を茹でられるような感覚を覚えつつ、耳の中に彼女の指を入れても痛くない彼は、それは、おれひとりだろう、いや、他にもいるか、美人すぎるから、そう、美人すぎて彼女を狙っているのは、おれ、一人ではないはずだけと、デートできるのは今のところ、おれだけさ、だから、この今の位置を、そう、この優位な位置を利用して、なるべく早く、彼女と身も心も下着も同じ全自動洗濯機の中に入れて洗うような生活がしたい、それは即ち、結婚というものでなくてもいいから、そう、同棲というもので恋の動静を探りつつ、ライバルがいたら薙ぎ倒す、同棲出来たら、おれの一人勝ちだ、康美ちゃん、何も言わないのに、ここは、もうネットカフェの中だね。

体験版・sf小説・未来の出来事52

「あ、そうなんですか。初めて知りました。インドが統一された言語でない状態なんて。」
流太郎としても驚きだったのだ。マディラは、
「インド人女性を口説くのも英語が、いいわ。」
と助言してくれた。
「そうですか。僕は、お試しレッスンという事で来たので、ヒンディー語は辞めようと思います。」
「そうですね。英語が、いいですよ。日本語を学んで日本に行こうというインド人もいますから。日本語講師の需要もある位です。もう少し時間、ありますけど?」
「マディラさん、日本の政治に興味がありますか。」
「ありますよ。日本人より興味があります。(笑)。だって日本の人、自分の国の政治に興味ないみたいですもの。」
「新進民主党という党は、どうですか。」
「あ、知っています。まだ小さいけど希望が持てるのかなー、と思いますわ。」
「フレッシュアイランドに新進民主党の福岡支部がありますよ。」
「そうですか、一度行ってみたいな。と思うのね。」
「それではマディラさん、ご機嫌よう。」
流太郎は立ち上がり、部屋を出た。
授業を受けるために待っている人達の中に丸内円太もソファに座っていた。丸内円太は(あ、ビルの一階だった、待合場所は)と思い出して立ち上がりバラリッツを出るとエレベーターの前に一人の青年が立っていた。時流太郎だ。しかし丸内円太は時を知らない。エレベーターに二人で乗りこんで流太郎は丸内円太に気づき、エレベーターを降りてビルの外に出ても丸内は一階に立ち止まっているのを確認した。
流太郎はフロックコートの中からサングラスと帽子を取り出して身に着けると付け髭も鼻の下につける。
前にも見かけた新入社員風の男、ますますインドの雰囲気を身に着けている。マディラにヒンディー語を習っているに違いない、と流太郎は観察したのだ。
思惑通りにビルからマディラと新卒男が並んで出てきた。体の関係がある男女の雰囲気が流太郎には感じられた。二人はヘリタクシーの乗り合い場所に歩いて行く。博多駅周辺には幾つかのヘリタクシーの乗降場所がある。観光目的で乗る人達が殆どだが、料金も安くはないので利用者は少ない。マディラと丸内はヘリタクシーに乗った。クレジット決済が出来るヘリタクシーに流太郎も乗りこむと、
「今、飛び立ったヘリタクシーを追ってくれ。」
と運転手に告げる。運転手は中年の男で、
「だんな、探偵さんか何かですか?」
「うん、そんなものだ。少し間をおいて追跡した方が、いいな。」
「合点満点です。私も私立探偵は少し、した事がありますよ。元々は航空会社のパイロットだったんですが、CAと勤務中にトイレでセックスしたのを別のCAに密告されてクビになり、この仕事に就くまでには色々な職を経験しましたけどね。あ、飛び立ちます。」
流太郎の乗ったヘリタクシーは上昇した。そして可能な限り運転手はマディラと丸内の乗ったヘリタクシーに近づく。それを運転手は観察すると、
「お客さん、あれは豪華ヘリタクシーですぜ。マジックミラーの車体で外から中は見えないものです。車体が大きいのは後部座席が広いので、後部座席はシートを倒すとダブルベッドになります。運転席とは厚いガラスで仕切られて完全防音。バックラーは車体の後部に付いていますから、後部座席は運転手には見えないんです。だから空中セックスし放題ですね、これは。」
と話す。
こちら後部座席に乗っているマディラと丸内である。後部座席の前面は壁となっていて、そこに運転手と話せるマイクが設置されている。マディラは、そのマイクに、
「運転手さん一時間程、博多湾上空を周回してください。」
と要望した。
すると中年男の声が、
「はい、承知しました。ゆっくりと、お楽しみください。」
と答えた。
後部座席の左右と背後はマジックミラーに、なっている。三方から外の景色が見えるので気分爽快となったマディラと丸内だ。マディラは左に座っている丸内に、
「いい景色だわ。博多湾の上空でセックス出来るのなら運航料金も安いものだわ。丸内君、空の上でセックスした事は、ないでしょ?」
「ありません。もちろんですとも。」
「では、今から経験できますよ。誰も見ていないから安心ね。」
マディラは丸内円太のズボンのベルトを外すと一期に降ろした。そこには、もう半勃起を顕わすパンツの形がある。
 丸内としてはマジックミラーから外の風景、といっても見下ろさなければ見えない海や島々を眺めつつ、いつの間にかマディラと自分は全裸になり坐位により彼女を突きまくっていた。アへアへ顔のマディラは、
「あなたの会社、インドに輸出しているの?」
と問いかける。
「ええ、そのために僕が出張するんです。外の景色、いいですよ。マディラさん体位を変えて外を見ますか。」
「いいえ、いいの。あなたがインドに出張する時に私もついて行けると思うわ。ニューデリーに行くんでしょ。」
「そうみたいです。あ、愛高島が見えました。」
「ああ、あの謎の博多湾に浮かぶ島ね。インドでも有名ヨ、愛高島は。そのために日本に来るインド人も多いわ。」
「愛高島にもホテルは、あるしラブホテルもあります。今から行きませんか。金は僕が出しますよ。サイバーモーメントから貰う給料がいいから。」
「それなら、そうして。運転手に言うのよ。」
「わかりました。そしたら一旦、離れます。」
丸内円太はマディラから離れると前面のマイクに、
「運転手さん、愛高島に寄って下さい。」
「はい、コース変えます。」
ヘリタクシーは空に浮かぶ島、愛高島に向かった。数分でヘリタクシーは愛高島に到着した。それを追っていた流太郎を乗せたヘリタクシーも愛高島に着陸した。
 マディラと丸内はラブホテルに向かって歩いている。流太郎も後を追う。ラブホテルの近くには森林地帯がある。そこへ行き流太郎は二人を待った。
十分、二十分、数時間後には出て来るさ、と流太郎は気長に待つつもりでいると、十五分後にラブホテルの屋上に巨大なUFOが現れたのだ。
そのUFOの基底部から黄色の光が真下に放射されて一組の男女が光に包まれて上昇しUFO内へ消えた。それを見上げた流太郎は、(マディラと新入社員だ!)
それに至るまでのマディラと丸内の行動に戻ろう。そのラブホテルの経営者は地球人では、なかった。パリノ・ユーワクという火星人によって持ってこられた巨大なUFOが愛高島なので、ラブホテルの経営者は火星人が多い。彼らのラブホテルは地上よりも格安な宿泊料金だ。
それで、どうして儲かるのかと言えば彼らのラブホテルには各部屋に隠し撮りカメラが設置されている。そこで各部屋のカップルの行為は逐一、撮影されている。経営者は火星からアダルト動画の有名な監督を呼び寄せたり、又は火星に撮影された動画をUFOで持ち帰らせたりしている。それらは編集されて火星で販売される。地球人の実写セックス物は人気が高い。それでラブホテルの宿泊料金は格安にしても経営者は隠し撮り動画で高額な報酬を得ているのだ。
 無目的で火星から飛来するのは太古の時代に終わっている。空に浮かぶ島の愛高島は宇宙人にとってのビジネスチャンスである。
実はマディラは、そのラブホテルの経営者と知り合いであった。そして、その経営者の正体も知っていたのだ。経営者は、「マディラさんの宿泊の場合は半額に致しますよ。マディラさんの本当の姿のセックスでは宿泊料金は無料にします。」
とドラム判を押したのだ。
 その話を今、室内にいるマディラは思い出した。スイートルーム並みの部屋の寝室でマディラは丸内に、
「丸内さん。わたしは本当はインド人では、ありません。それを実際に見せますから、見ていてください。」
と話す。
それから、ゆっくりとマディラは服を脱いでいく。下着姿になったマディラ。薄茶色の肌にコンモリと高い丘のようなブラジャーの盛り上がり、くびれたウエストから下に向かうと横幅の広い尻の前面の逆三角形のショーツは透けていて黒い茂みが見えている。丸内は涎を垂らしそうな顔をして、それを食いつきそうな顔で見ていると、マディラは、
「浴室に行くから付いてきて。」
と誘い、ふたりで大浴室に行った。普通の浴室の五倍の広さ、脱衣室まである。マディラは下着も取ると尻と乳房も薄茶色の肌だが美形にして大きく柔らかそうだ。丸内は殆ど勃起している。マディラは丸内の股間を見て、
「丸内さんも脱いで。」
と促すので丸内は急いで全裸になる。完全勃起に近い丸内の肉棍棒をマディラは確認すると大浴室に入る。
そこでシャワーヘッドを手に取り、お湯を浴びたマディラの肌は薄茶色が抜け落ちて積雪のような純白の肌が現れる。顔にもシャワーを浴びせるとマディラの顔は白人女性よりも白い顔になった。丸内は驚きすぎて、その場に尻スイカを付きそうになった。
シャワーを停めるとマディラは丸内に全裸を見せて、
「どうですか?この体は。」
「ああ、素晴らしいです。マディラさんはインド人では、なかったのですね。」
「そう、その通りです。実は私は地球人ではないのです。」
「そうなんですか。では宇宙の何処から、いらっしゃったんですか?」
「それは説明が難しいですね。何故なら私の星は、まだ地球で発見されていないんです。それだから地球の言葉では私の星の名前はないんです。インドは潜り込みやすい国でした。そこで英語を学び、ヒンディー語を学び、日本語も学びました。宇宙人と交信が難しいのは言語の問題です。
日本人としても英語を知らなければアメリカから、やってきた人の言語は分かりません。ましてや宇宙人の言葉など聴きとるのも難しいです。それで我々の方で地球の言語を学び、接触しなければ、なりません。
丸内さん、あなたがインドに行くとか、あなたが勤めている会社の製品を輸出するとか、そういう事は私には、どうでもいいのです。あなたは今の仕事を、辞めたくなると思いますよ。服を着て屋上に行きましょう。インド人の女の体で貴方の体を楽しみましたが、今は時間がない。というのはですね、このラブホテルの屋上の上に来ている、と通信が今、あったのです。それはテレパシー会話のような非科学的なものではなくて私の頭の中に埋め込まれたマイクロチップに無線で届いたものです。さあ行きましょう。」
マディラは大浴室を出ると脱衣室で手早く服を身に着けた。丸内も遅れまいと慌てて服を着る。スイートルームを出てエレベーターで屋上に行くと確かに二人の頭上には巨大なUFOが空中に停止していた。
二人はUFO下部から放出された光によって上昇し、宇宙船内に誘導されていた。待合室のような場所に移動した二人は開いていた部分が閉じるのを眼下に見た後で床面に静かに着地した。
その部屋の壁が左右に開くと隣の部屋は広くて数人の白い肌の宇宙人がいた。その内の一人である船長ともみられる人物が、
「ようこそ。日本人さん。私達は地球より数万年は進化した星から来ました。この宇宙船は宇宙空間にあるフリーエネルギーで動いています。それで光より早く移動できる。光より早く移動するエネルギーをまだ地球人は見付けていません。地球人は何かを燃やす事でエネルギーを得るという考え方から脱却していないのは旧石器時代から変わっていないのです。それで地球の神話にも火の神などが存在しています。
ですが宇宙空間は真空ではなくエネルギーに満ちています。そこから際限なくエネルギーを取り出して宇宙船の動力源にするのです。
マディラの他にも地球の主要な国家に潜入させて言語を学ばせています。私は立っていますがマディラと日本人さんは座ってくださいね。そこの円形のソファに。」
船長は右手でコの字型のソファを示したので二人は腰かける。船長や他の宇宙人は白い服を着ていた。船長は、
「私の名はエホバエリです。日本人さん、あなたの名前は丸内さんですね。」
丸内はビク、として、
「はい、そうです。」
「あなたは日本の会社員らしいが・・・我々と遭遇した事は・・・記念すべき事ですよ。何故なら・・・それは、これから分かります。地球なんて我々の星に比べたら貧弱なものなんです。女性も単一的なものですし、地球人はね。これから我々の星に来ていただければ、それは分かります。行きますね、私達の星に。」
とエホバエリは同意を確認する発言をした。丸内は喜んで、
「行きます、ぜひ連れて行ってください、お願いします。」
と懇願した。
エホバエリは大きく胸を張ると運転士らしい若い男性に、その星の言語で何か指示した。多分、運転開始の指示だろう。移動を始めても船内は微動だにしない。エホバエリは、
「今、光速の何百倍もの速度で宇宙空間を移動しています。それでも少しも揺れないでしょう?」
と丸内に賛意を求めた。丸内は大驚嘆の眼差しで、
「そんな速度で。揺れませんねー。」
エホバエリは落ち着いた様子で、
「もうすぐ到着です。私達の星は球体では、ありません。太陽系の惑星などは全てが球体ですが正円ではないものです。だけど星が球体である必要が、あるのでしょうか。私達の星は地球のドーナツのような形をしています。つまり中央の部分が空間だという事です。そして、この宇宙船も中央の部分が空洞であるのです。我々の星に似せた形に作られています。その方が移動の際も球体よりも早く移動できます。」
という驚くべき話をした。
丸内は、
「ドーナツが空を飛んでいる訳ですね、要するに。」
エホバエリは楽しそうに、
「そうです、その通り。それで私達の星は中心が空洞ですけど、そこに小さな太陽があるんですよ。我々の星は巨大ですから重力の法則では我々の星が小さな太陽を引っ張っているのです。もちろん我々の星は惑星なので恒星、太陽系の太陽のような星を回っているのですが、空洞の内部にも小さな太陽があるので我々の星の内部に面した地帯は夜がない一日中が昼の状態です。
考えてみて下さい。夜のない世界を。闇のない世界を。食物の野菜は地球の三倍の大きさ。樹木も三倍です。そして、その地帯には五メートルに近い人間がいます。その巨人族とも我々は仲良くしています。彼らの知性は三倍かというと、そうではなく、二メートルに満たない我々より知性は発展していません。地球に於いてもクジラは最大の哺乳動物ですが知能は、どうですか、という事と同じですね。
なんと彼らは原始的生活を好み、読書も大してしない。我々の指導により彼らは文盲ではないですけど、巨人の女性は美人だし、夜のない世界で交合している彼らです。その場所などは自治区みたいに我々の法律も無視していい事にしているので、観光に行くと楽しいですよ。
彼らは決して凶暴ではないので観光客に乱暴などしないんです。御菓子など渡してやると喜びます。
丸内さんも観光で連れて行ってあげますよ。五メートル近い巨人を見る事など地球では、あり得ませんからね。おお、もう到着しましたよ。私より日本語が上手いマディラと行動してください。」
と話した。
そのUFO自体もドーナツ形だが、丸内は上からUFOを見られないので確認できない。
その星の太陽光線は眩しすぎる程だ。宇宙船を降りてからはマディラに付いて行く丸内円太。地球に居るよりも幸福感を感じるのは心地よい春の気温のせいばかりではなく、目に映るものが地球とは違い、建物はビルなどは百階建てと思われる程の高層ビルが立ち並んでいたり、マイカーならぬマイUFOで道路を走っている光景が見えたりするからかもしれない。マディラと街を歩いても丸内は背広を着た人を見なかった。皆、肌が白いので黄土色の丸内は、その星の人の注意を惹いた。一人の山高帽を頭にしている中年男が丸内に近づいてきて、その星の言葉で何か話してきた。マディラは、
「うちのサーカスに入りませんか、と話しているのよ。どうする?丸内さん。」
「お断りします。と伝えてください。」
「あら、サーカスと言っても地球のモノと違って楽なものなのよ、この星のサーカスの出演者は人気者で収入も高いの。多くても月一度の出演程度だし、週休四日は確実。なりたくても、中々なれないんだけどなあ、サーカスの団員には。」
丸内は困惑気味に、
「言語の違いや、その他の違いもあるでしょう。」
「そうね。一応、断わっておくわ。」
マディラがサーカスの関係者に丸内の断りを伝えていた。
 レストランに入ってマディラが注文し、運ばれてきた料理は地球の一般的なレストランのモノの二倍は、あった。それで普通だとマディラは云う。
食後のデザートに地球の葡萄に似たものが出されたが、それは地球のモノの三倍の大きさだった。五メートルに近い巨人族がいるというのも、うなずける。食後に丸内は、
「五メートルに近い巨人の人達は見られるのですか?」
「ええ。これから見に行きましょう。観光地になっています。入場料は払うのです。それは巨人達の収入になりますし、彼らは入場料だけで生活も出来ます。」
コーヒーと紅茶が混ざったような味の飲み物を二人は飲んだ。マディラは、
「外で小型UFOタクシーを拾うわ。さあ、出ましょう。」
道路面から浮いて走っているタクシーはマディラが右手を挙げて停めた。二人は車内に乗り込み、マディラは丸内には分からない言語で指示した。それから丸内に、
「巨人村まで、と言ったのよ。」
小型UFOは浮上した。
丸内が窓の下を見ていると、繁華街から緑の多い地帯へと移動して小さな山のある牧場のような場所に降下していく。
 牛らしき動物が数頭、見えたが牛の体長は地球の牛の三倍は、ある。それでも、おとなしそうに巨牛は草を食べていた。地球の緑地の草の三倍の高さなので牛の餌には困らないはずだ。地球の農家風の建物も地球の農家の三倍の高さである。
 UFOタクシーはタクシー専用乗り場に着地して二人は外に降りる。巨大な農村という風景に丸内には思える。
 それでも歩道には観光客の姿も見えたので、やはり巨人村観光地らしい。遠くに巨人の男の姿が見えた。地球の原始人のような姿で、ゆっくりと歩き回っている。その近くには巨大な邸宅がある。マディラは丸内に、
「見世物にするために、わざとあの格好をしています。彼らは彼らの学校がありますが日本だと中学までの学校しか、ありません。巨人村の収入は凄いので彼らは働く必要が、ないのです。近くで見るためには入場料が必要です。あそこが入り口、入場料の二人分は私が払います。」
マディラと丸内は延々と続いている高い柵の一か所にある入り口から入る。マディラがスマートフォンのようなものでクレジットカード決済を二人分、したらしい。
フェンスのようなものは十メートルの高さだ。広大な敷地でもあるし巨人たちはフェンスの外に出る気もないらしい。
地球の三倍の大きさの馬が巨人の近くに現れた。巨人は、その巨馬に乗ると手綱を引いて巨馬を走らせる。圧巻過ぎる光景だ。巨馬の目も地球の馬の三倍なのも丸内からすれば驚きの一言、地球規格外の世界だ。
巨馬と同じく巨人は観客に突入する事は、ない。平日の時間帯らしいが観客は多い。マディラは向こうを指さすと、
「あの大邸宅の中に入れます。あの中では、もっと驚く事が見られますよ。」
 その大邸宅の中に移動した二人。見るものは何もかもが大きなモノばかり。食堂は広いだけでなく五メートルに近い巨人が座れるような椅子に食卓が地球の食卓の三倍は、ある。
 居間も同じく巨人が寛げる空間であるし、普通の身長の人間が見学できる広さは充分にある。もちろん見物人はフェンス越しに食堂でも居間でも見学するので巨人が食卓や居間の巨大ソファに座っていても行動に妨げは、ない。
驚くべき事に、彼らの寝室でさえ見学できた。
昼間でも時々彼らは寝室でセックスする。それで巨人の寝室が一番多く人だかりがしていた。
特別観覧席は屋根裏にあり、そこは入場料の百倍はするもので、富豪達が利用する事が多い。今、男女の巨人が寝室に入って来た。二人は若くて男は筋肉質、女は豊満巨大な乳房と尻を持っている。元々二人とも軽装なので、すぐに全裸になった。二人は立ったまま正面から抱き合い、キスをした。巨人男の股間は野球のバットかと思われるような長大なモノが即座に完全勃起した。六十センチはあるだろう正に肉筒、それが足を開いた巨人女の秘洞窟に潜入した。これで巨人男女は一つとなり男は連綿と自分の腰を振り続ける。巨人女は長い黒髪を乱しながら雷のような快楽の声を発した。
満杯の観客からは、どよめきの声が上がる。
これを見たいために来る人達も、いるほどだ。
地球ではストリップショー程度で男女の交わりを金を取って見せてくれるところは、ない。この星では巨人の性行為は、このように解放されて一般公開されている。もちろん巨人村には未成年者は入場できない。
年中無休の巨人村である。巨人男女の立ちセックスを唖然として見ている丸内円太である。しかし巨人たちの性交は三十分で終わった。地球のクジラの性交時間は、もっと短い。それに比べれば、この星の巨人の性交時間は長いと言える。
次は、いつになるか分からない巨人の性交だ。巨人の二人は巨大なベッドに寝て休憩している。
確かに六十センチの勃起陰茎を持続するのには大量の血液が必要だ。マディラは丸内円太に、
「巨人の寿命は三十歳です。彼らは、それで文化を持ちません。識字率は十パーセント以下で、義務教育ではない中学には行く必要が無いんですよ。小学校三年までが巨人の義務教育です。それは長い間、我々が巨人を管理してきて適切な教育期間を割り出しました。」
「そうなんですね。」
と丸内。
巨人男の勃起陰茎が巨人女の膣内に入るのは圧倒的迫力だった。巨人女の膣の長さは二十一センチで伸縮性があり、出産時には数倍は広がる。マディラは、
「彼らは長い事、休憩します。それを見ていても仕方ありません。出ましょうか。」
巨人の館を出るとマディラに連れられて丸内はUFOタクシー乗り場へ行き、再び空へ舞い上がり、今度は官庁街のような場所のビルの屋上に着地したUFOタクシーから降りるとマディラは、
「実は私は公務員のような職業なんです。このビルは外惑星省と日本語で訳すと、そういう機関のもので私は、ここの地球対策室で働いています。さっきの船長は私の上司で地球対策室長のエホバエリです。今から地球対策室に行けばエホバエリは、いると思います。」
と説明した。それからエレベーターで下に降りると地球対策室は遠くなかった。中に入ると数人の宇宙人が勤務している部屋の中に、あのエホバエリが座っていたが入って来た二人をると立ち上がり、
「ようこそ、丸内さん。お待ちしていました。応接室へ案内します。」
その部屋の中にあるドアを開いてエホバエリは丸内を応接室に入れた。
星の違いこそあれ、役所的な雰囲気のある部屋だ。マディラは入らずにエホバエリと丸内円太だけになった。エホバエリは、
「どうでした、丸内さん。我が星の世界は。」
「驚きましたよ。巨人の世界に。」
「うん、そうでしょう。でもね、地球にも太古は巨人がいたのです。でも滅亡してしまった。我が星では巨人が亡びるのを防いでいます。でも、あれは一部の世界です。この星では地球よりも遥かに楽しく生きられますよ。」
丸内は目をダイナマイトの爆発のように光らせると、
「おわう。そうなんですか。労働は免れないのでは。」
「いいえ。労働のない世界が我が星です。私もマディラも好きで、この仕事をやっています。私は小さい頃から我が星以外の惑星に興味を持っていました。それで公用で地球などにも行けるのですからね。貴方も自分の望む仕事が出来ますよ、丸内さん。」
と言われると丸内も考え込む。エホバエリは、
「どんな事をしてみたいですか。」
「働かずに遊んで暮らすとか。」
「ああ、出来ますよ。そういう地球人を求めていたんです、我々は。」
丸内は外惑星省の若い男の役人に連れられて、その星の豪華なマンションに住む事になった。
 5LDKのマンションでベランダからは、その星の郊外の風景が見渡せる。五人の美女と生活している丸内円太、各部屋に一人の美女がいるのだ。いずれも日本語の出来る女性だが、その星の言語の訛りは感じられて、それが神秘的に聞こえるのだ。その五人の美女が日常生活を支えていて、炊事、洗濯、掃除をしてくれる。
週の内、二日は休んでいいが残りの五日は毎日、五人のうちの一人とセックスする事が義務付けられている。
義務付けられなくても丸内円太は実行しただろう。
それは夢にさえ見た事のない世界だった。ただし、その丸内の生活は室内に仕掛けられた隠しカメラで二十四時間、生放送されている。
その星の全地方にインターネット配信されていて、「地球人の男の生活と性活」として有料で見ることが出来る。その収入源の八割が丸内と女たちに振り込まれた。日替わりでセックスしているので女性には均等に収入を割り当てられる。
丸内は地球に帰ることを忘れてしまい、その星の言語を学び始めた・・・。

体験版・sf小説・未来の出来事51

 同級生のアダルトビデオを見ている不倫課長の妻、百合江は自分と同じような名前の同級生百合乃の温水プール・セックスには心を激震するほどの影響を受けた。(ああ、わたしも、やりたい。夫とのセックスは二か月に一度になっている。日本人の三十代の主婦としては、それが平均的なのかしら。誰にも聞いたことが無いから分からないけど、百合乃は、あんなに温水プールの中で激しくやって、快楽の極みを感じているのに自分は、ここで虚しく夫の帰りを待っている。深夜の十二時頃に帰って来るんだもの。「あなた、ご飯は?」「いいよ、外で食べてきたから。」「毎日の残業は大変ね。」「まあね。でも家族のためさ。」という遣り取りが多くて、最近は私も何も聞かないし、夫も何も言わない。)同級生の百合乃が温水プールの中でのカタシとのセックスを終え、次に超スイートルームのダブルベッドの上で温水プールの温水が裸身に残ったままカタシと正常位で性結合をしたところで不倫課長の妻、百合江はビデオを停めた。(百合乃。ありがとう。続きは又、楽しみに見るわ。わたしも行動しなくっちゃ。)百合江は自分のスマートフォンを手に取ると出会い系アプリで相手探しを始める・・・とアフリカ人形は時流太郎の心に語ると、(ちょっと長いかな?)と訊いてきた。流太郎は、(いいや、面白いな。続けてもらおう。)アフリカ人形(よし、続けるぞ。そこでオレは不倫課長の妻の出会い系アプリを操作して、ある人物に登場してもらった。ニックネームはT、初老の男性。
撮影希望の女性を募集しています 希望であれば目隠しやボカシを入れられます。主婦の応募も歓迎します。
という呼びかけが表示された。不倫をまだ、した事のない不倫課長の妻の百合江は(まあ、私にピッタリンコじゃないの。もしかして、AV?それでも、いいわ、不倫できるなら)と瞬思してメールで応募してみた。十分後には返信メールが届く。
ご応募、ありがとうございます。わたし共の会社は東京にありますが、どちらに、お住まいですか?
百合江はメールを返信して、
福岡県福岡市です。遠いですか。
すると、すぐにTからの返信が、あった。
福岡市ならフレッシュアイランドに私共の支社があります。明日にでも飛行機で飛びますから、明日の撮影では、どうでしょうか。
百合江は乳房を高鳴らせて、
明日で構いません。初めてです。撮影されるのは。
Tからはスグに返信が
初めては大歓迎です。ういういしい、ですもんね、初撮影は。ギャラも、はずみますよ。明日、又、連絡させて、いただききます。今日は、おやすみなさい。
百合江の乳房の中を期待と不安が錯綜した。その夜、夫は十二時を過ぎても帰らなかったので百合江は寝てしまった。
朝起きても夫は、いなかった。帰って来た様子もない。朝は子供を送り出すと、居間に座る。テーブルの上のバナナの一房から一本を取り出すと自分の赤い唇の中に入れる。まるで、それを男の果実棒のように咥えて口に出入りさせる。すると百合江の体は熱く、火照って来た。バナナを食べてしまうと寝室に行き、夫には分からない場所に隠したバイブレーターを取り出す。ある人気AV男優のペニスと全く同じ形、長さをしていて、おまけに自分の股間に挿入すると、そのAV男優の息遣いまで再現される。百合江は下着を履いていないので両脚をソファに座ったまま、大きく広げるとバイブレーターを赤い陰唇に挿入した。AV男優の荒々しい性行為の息遣いが百合江の耳に聞こえてきた。まるで、そのAV男優に犯されている気分になり、百合江はソファに寝そべった。その時、スマートフォンからメールの着信音が鳴り響く。百合江はバイブレーターを股間に挿入したまま、テーブルの上のスマートフォンを手に取るとメールを確認する。やはりTからの送信だった。
T おはようございます。私は今、フレッシュアイランドの福岡支社に来ていますよ。奥さん、こちらは撮影いつでもスタンバイです。今から、どうですか。
百合江は股間のバイブレーターを外さずに返信する。
今から行けます。よろしく、お願いします。
すると、すぐに返信が、
T 弊社の所在地の地図と住所を添付していますから、お待ちしています。
百合江の股間のバイブレーターが激しく動き、AV男優の声が、「おわああ、いくっ!」と叫んだ。百合江も同時にイってしまった。
しばらくして百合江はバイブレーターを外して起き上がると、身づくろいをして外出した。サングラスは一応、かける百合江、帽子も、かぶってマスクも付けた外見でロボットタクシーはスマートフォンで呼ぶと三分くらいで到着した。「アイランドシティのココに行ってください。」と百合江はロボット運転手にスマートフォンを見せた。そこにはTから添付されて送信された地図と住所が載っている。ロボットは、それをカーナビに差し込んで記録すると百合江にスマートフォンを返した。タクシーの窓の外は流れるように動き始めて二十分程でフレッシュアイランドのTが待つ会社のビルに到着した。自社ビルらしく受付には赤い帽子を被ったサイボーグの若い女性が座っている。百合江は受付に近づいて「撮影希望の者です。」
と話すとサイボーグの女性は微笑みを湖上のように浮かべて、
「13階が社長室です。あちらのエレベーターで、どうぞ。」
と右手で近くのエレベーターを指し示した。百合江はエレベーターで社長室へ行く。ドアが開くと地中高年の男性が私服で立っていた。Tらしい。男は嬉しそうに、
「やあ、どうも。私がTですよ。撮影スタジオは社長室の隣です。社長室からも行けます。まずは社長室に入りましょう。」
と話すとドアの所へTは行くと、ドアを開いた。二人は中に入る。社長の机の後ろには書棚に似たスチール製の置き場所にビデオテープやらCDROMがギッシリと並べられている。それはアダルトなものばかりだ。Tは応接ソファに百合江を座らせて、自分も百合江の真向かいに座らせる。それから、
「ようこそ、お越しくださいました。ウチはAV制作会社なんですよ。今では制作数が日本一で、売れ行きも日本一です。それで女優さん探しに苦労しています。お金は一杯ありますから、奥さんにもヨソより倍は出演料を出します。政治じゃないけど金が決め手のアダルトです。気持ちよくなってもらって、お金も沢山貰える。こんな副業は他には、ないですからね。」

百合江は微苦笑した。帽子とマスクとサングラスが百合江の表情を、かなり隠している。Tは勇みよく、
「奥さん、隣のスタジオでは男優がスタンバイしていますよ。行きましょう。」
確かにスタジオでは男がパンツ一枚で椅子に座っていた。広いスタジオでは様々な状況設定がされている。ラブホテルの部屋、医療現場、飛行機の中など、壁にはドアが並んでいて、その内部は更なる場面が設定されているのだろう。Tは、
「奥さん、サングラスと帽子とマスクを外してください。そこのテーブルに置けば、いいですよ。」
言われた通りに百合江がすると、Tの目は夜空の星のように瞬き、
「いやあ、奥さん美人ですね。胸の膨らみも凄い。旦那とは毎日、セックスしているんでしょう。」
「いいえ、二か月に一度ほどです。」
「信じられないな。おいハメ一郎。奥さんの胸を触らせてもらえ、いいですね?奥さん。」
「ええ、いいです。触って下さい、男優さん。」
ハメ一郎は既に股間の肉道具を半分ほど立てていたが立ち上がり百合江に近づくと彼女の胸をス~っと右手で触った。百合江は軽く悶えると、
「あっはん、乳首に触れました。立ってきてます、乳首が。」
と気持ちよさそうだ。」
Tは、
「もうカメラは回っていますよ。カメラマンは、いませんけどね。奥さん、男優のリードに任せてください。いけ、ハメ一郎。」
ハメ一郎は百合江を抱くと抱え上げてラブホテルの場所へ移動する。百合江は自分を抱きかかえているハメ一郎の顔を真直に見て、(この人、政治家の玉金硬一郎に、よく似ている!)と気づいたのだ。(そんな事ないわよね。他人の空似なのかしら。)ベッドに横たえられた百合江はハメ一郎に長いキスから舌を入れられ、首筋を舐め回され、乳房を吸われ、太ももを大開脚されて、クンニリングスをされる。その技巧の素晴らしさは夫を遥か彼方に凌ぐものだった。百合江の股間からは甘い蜜液が滲み出し始める。ハメ一郎の股間のモノはバナナかと思わせるほどに巨大化していた。頃よしと見たハメ一郎は百合江の股間にバナナもどきを入れようとしたので百合江は「玉金硬一郎さん!気持ちいいっ!」
と叫んでみた。すると、どうだろう、ハメ一郎のバナナのような大男根は見る見るうちに委縮していったのだ。百合江はハメ一郎の顔が、しまったと言っているのを見て、大開脚したまま、
「やっぱり玉金硬一郎さんですね。新進民主党を支持していますよ。誰にも言いません。」
「いえ。玉金硬一郎は僕の兄です。双子なんですよ。似ているのは仕方ないです。でも兄は、それほど有名でもないから今まで気づかれなかったんですけど。」
とハメ一郎は説明した。百合江は納得して、
「分かりました。早く来て!」
と更に開脚した。彼女の陰唇は大きく開いている。ハメ一郎は百合江の蕩けそうに柔らかな尻を抱えると再勃起した。ハメ一郎の肉凶器は百合江の久しく何も咥えていなかった淫裂に突き刺さっていく。百合江は顔を、のけ反らせて
「すっごーい。夫のより、いいわっ。あん、ああーっ。」
と大いに淫らな嬌声をあげた。
ハメ一郎と百合江の収録は二時間にも及んだ。AV監督らしいTは、
「お疲れ様でした。タクシーを呼びますから。」
と百合江に声を掛けた。
スタジオを出て行った百合江の後ろ姿が消えたのをみてハメ一郎は、
「見抜かれましたね、お父さん。玉金硬一郎の弟という事で誤魔化しましたけど。」
「ああ、おまえは俺の子だ。政界なんて向かないよ。政治では金も儲からないし。俺の跡を継いでくれれば、いい。」
パンツ姿の硬一郎は、
「それでも、せっかく党首になったんだし、AVが日本の社会に本当に確立するように法改正も、していきます。」
「ああ、頑張ってくれ。早めに政界は引退して俺の跡を継ぐんだぞ。」
無言の玉金硬一郎、これから天神で政権演説をする予定だ。

という事でだ。)とアフリカ人形は流太郎の心の耳の中で語った。(まず第一歩は成功した。辛い思いの不倫子の恨みを晴らさなければ、ならない。玉金玉男に出会い系サイトに入らせて、不倫価値用の妻の百合江に会わせたのも俺の力なのだ。後は百合江と玉金硬一郎のアダルトビデオが出回るのを待つだけ。意外と早く一週間後に発売された。これは新進民主党が主張するアダルトビデオ新法が国会を通ったのだ。玉金硬一郎は街頭演説では話さないが密室での集まりではアダルトビデオが早急に発売される新法を制定する事を有権者に主張した。彼の支持者は、ほとんど男性だったので皆、支持者は賛同したものである。次に玉金硬一郎が狙うのは無修正、つまり女性器、男性器の公開である。これは玉金は隠密な集会では発表している。
さて。この不倫課長の妻の百合江のアダルトビデオを不倫課長に購入させるか閲覧させるか、しなければならない。オレは今、奴が不倫中の新入美人社員にエリートの別の会社の独身男に出会わせたのだ。当然の事ながら彼女は不倫課長に会うのを拒否した。性欲の捌け口を失った奴はビデオ鑑賞個室に会社帰りに出かけた。奴は個室で新着アダルトビデオを探すと「課長の妻」というタイトルのビデオを見つける。(面白そうだな、これは)と思った奴は早速、それを見始める。なんと自分の妻の百合江が出ているではないか。(おお。気持ちよさそうにセックスしているな、百合江。なに・・あんなに乱れた裸身はオレにも見せたことが無いのに・・・。騎乗位に後背位、駅弁売り体位、モザイクも薄い・・・男優の目にはボカシが入っているが何処かで見たような気もする。それにしても数十回はイッた百合江だ。)
帰宅した奴は妻の百合江を問い詰める。
「おい、おまえアダルトビデオに出たな。」
「ええ。あなただって浮気してるんでしょ。だから、わたしも・・・。」
「・・・・・。」
絶句する不倫課長。数日後に奴の部下の男性は
「課長の妻というアダルトビデオを見たけど凄いな。うちの課長の奥さんだよ、あれは、きっと。」
と仲間に話す。仲間は、
「本当か、それ。それならオレも見てみるよ。インターネットでも見れるんだろ?」
「ああ、見れるよ。おれさ、課長の分譲マンションに行って、奥さんを見た事があるんだ。」
「そいつは凄い、今日、会社が終わったら是非、見る。」
翌日、奴は部長に呼び出される。別室に行くと部長から、
「アダルトビデオに君の奥さんが出ているじゃないか。」
「・・・そのようです。申し訳ありません。」
「もう一度、出演するようなら君の進退問題にもなるからな。」
「はい、決して、そのような事には、ならないように妻に言い含めます。」
「そうしてくれ。それにしても君の奥さんの裸と乱れ方は凄いな。人気AV女優並だよ。男優がテクニシャンなんだろう。」
と好色な表情で部長は云った。翌日、又、奴は部長に呼ばれた。
「君は社長によって解雇された。理由は分かるかな。」
「分かりません。妻のアダルトビデオの件ですか。」
「違う。君は部下の新人社員と不適切な関係を持っていた。昨日、それを新人社員が社長に話したんだ。」
言い訳の仕様もなく奴はクビに、なった。
再就職を探したが見つからない。新就職先では前職場の退職理由を本人ではなく、前職場に連絡して尋ねるからだ。失望した奴の遺体は睡眠薬を多量に服用した死因で発見された。それはネットニュースでも報じられて不倫子も、それを読み溜飲を下げた。
どうだい?この話。)流太郎は心の中で、
(それは凄いね。で、あんたはアフリカの精霊なのか。)
(いや、いや。アフリカの精霊に、それほどの力があるのかどうかは私は分からない。ただ私はシリウスに近い星の高度に発展した星から来た人工的に作られた精霊なのだ。私の御主人に地球で活動するように命ぜられたのでね。光よりも速く飛べるし、霊体なので食べ物や飲み物も要らない。地球での活動は御主人様に報告する。シリウスに近い星に帰還したら。私の御主人様は霊能者なんだ。)それに対して流太郎は、
(それで。僕の役に立ってくれるのか。あんたが。)
(ああ、役に立つとも。出世するよ。あんたは。自衛隊の地下組織、情報第三部隊に委託的に関わっているだろ、あんた。)
(なんで、そんな事を知っている?)
(まあまあ。理由は知らなくても、いい。そして最近、参謀本部の軍田大元帥を暗殺益する話を聞いたね?)
流太郎は腰の関節が外れるような程、驚き、
(どうして、そんな事まで・・・)
(まあ、理由は知らなくていいよ。だからこそ、その軍田大元帥暗殺益に私が貢献できると言いたいのさ。いいね?)
流太郎の顔に喜びが溢れて、
(いや、ありがとう。)
(では、私を自衛隊情報第三部隊に連れていくように。)
(そうしますよ。よろしく頼みます。)
時流太郎はアフリカ人形を手に取ると背広の上着のポケットに入れた。それから専務の釣次郎の方を向くと、
「自衛隊に行ってくるからな。留守番を頼んだよ。」
「はい、いってらっしゃい。」
自分が持ってきたアフリカ人形が自衛隊の根幹を変える事に活躍するとは、その時の釣次郎は想像さえしなかったのであった。
フレッシュアイランドの陸上自衛隊情報第三部隊に歩きつくと流太郎は七谷教官にアフリカ人形を見せた。机の椅子を立ち上がると教官は興味を示して、
「珍しいな。変わったものだね。」
流太郎は、
「実は、このアフリカ人形は只の人形では、ないんです。自分に思念で話しかけてきました。」
七谷の目は鋭く光り、
「ほーお、そうかね。それで何を話したのか。」
「軍田大元帥の暗殺に貢献できる、と話しました。」
七谷は、
「すごいな。それに、その計画を知っているとは・・・。君の妄想じゃないのか、と疑うのが常識だ。だが私は、そうは疑わない。何でも、やってみないとな。結果は分からないものだ。計画の責任者は湖水一佐だが、作戦そのものは私に任されている。うん、アフリカ人形で軍田大元帥を葬(ほうむ)られるのなら試してみたい。」
その時、七谷一尉の心の耳にアフリカ人形の声が聞こえた。
(よう。私がアフリカ人形のモガベだよ。初めましてだな)
七谷一尉は奇異な顔をして心の中で
(初めまして。私の声は聞こえますか。)
(ああ、よく聞こえるよ。)
(我々の計画である軍田大元帥暗殺について協力して下さるのですね。)
(もちんさ。それには、まず第一に私を軍田大元帥に会わせてくれないとな。)
(分かりました。私が直接、軍田大元帥の所に行くのは難しいので少々、お待ち下さい。)七谷一尉は机の前の椅子に座ると固定電話で連絡する。
「湖水一佐、七谷です。急な話ですが今から参ります。はい、ただちに。」
七谷一尉は立ち上がると時流太郎に近づいて、
「アフリカ人形を借りるよ。」
と右手を差し出した。
アフリカ人形・モガベは七谷一尉の手に渡る。七谷は「君も出てくれ。講義室で待っていなさい。」
と指示すると足音も高く七谷一尉は湖水一佐の待つ部屋へと向かった。その部屋は、そんなに遠くではなく二分もすると七谷一尉は到着した。湖水一佐の部屋は七谷一尉の部屋の八倍は広い。ゆったりと椅子に腰かけた湖水一佐は四十代前半の顔を三十代の七谷一尉に向けると、
「急な話とは、もしかしたら軍田大元帥の件か。」
と鋭く指摘した。七谷は上着のポケットからアフリカ人形を取り出すと、
「はい、軍田の件です。このアフリカ人形は何と軍田消滅計画を知っています。」
湖水一佐の目が輝いた、そして、
「そうか、普通なら馬鹿馬鹿しいと否定される事だな。だが私はオカルト好きというよりもオカルトマニアな程だ。そのためとも言えないけど通常の指揮過程を外されて情報第三部隊長を任命された。いわゆる呪いのアフリカ人形なのだね。」
その時、湖水一佐の脳内にアフリカ人形の声がした。
(そうだ、湖水さん。私はモガベ。実はシリウスに近い星で作られた人工精霊なのだ。)
湖水一佐が、それほど驚かなかったのも、彼は降霊会のようなものに参加していたりしたからだ。湖水一佐は頭の中で(ようこそ、モガベさん。いやモガベ様。私は情報第三部隊長の湖水一佐です。軍田大元帥暗殺計画を御存知のようですね、モガベ様。)
(ああ、知っている。でも、この時点では私は何も出来ない。そこで軍田大元帥に会わせてくれ、という事だ。それに暗殺というより殺益と呼ぶべきだな。)
(なるほど、そうでございますね。殺益。全くで御座います。分かりました、軍田大元帥に今から会う予定です。モガベ様。わたくしの制服の上着のポケットの中にご滞在ください。軍田の部屋に入ったらモガベ様を取り出して軍田に見せてやります。)
(うん、そうしてくれ。)湖水一佐は七谷一尉に、
「そのアフリカ人形を私に渡してくれ。軍田大元帥に見せるためだ。」
と指示、七谷一尉は無言でモガベを湖水一佐に手渡す。湖水一佐は立ち上がると、
「今から軍田大元帥に会いに行く。君も、この部屋を出るんだ。」
と命令した。軍田大元帥の部屋は、そもそもフレッシュアイランドの基地内には、ない。福岡市中央区の福岡城の地下にある。それなので湖水一佐はスマートフォンで軍田大元帥に連絡をして面談の約束を取り付けた。フレッシュアイランドの地下から湖水一佐専用ジープで福岡城の地下まで通じている道路を走っていく。トンネルの内部より明るく照明された広い地下道路を走っているのは湖水一佐の専用ジープだけだった。時折、逆方向から専用ジープが走り過ぎたが、極めて少ない車両だった。福岡城まで時速100キロメートルで走る専用ジープは太陽光と電池を両方使える自動運転も出来る最新型のジープだ。自衛隊の車両そのものも電動式に切り替わっている。地下道路の照明も自衛隊独自で給電している太陽光発電システムに、よるものだ。
そして何と運転手はロボット運転手である。運転自体は自動運転で行なわれている。福岡城の地下にある参謀本部までの道のりは、そんなに遠くはない。到着して湖水一佐は顔を見せるだけで警衛は門を通してくれた。兵舎は廊下も地下なのに昼間のように明るかった。軍田大元帥の部屋までは少し歩く必要がある。その部屋の扉の前に立ち、モニターカメラに湖水一佐の顔が映されると中からインターフォンで軍田大元帥の声が、
「湖水君、入り給え。」
と声を掛けた。ドアノブを捻って湖水一佐は部屋の中に入る。なんと広い部屋である事か、そこは百坪は、あろうかという広さだった。天井も高い。壁面に映画館のスクリーンと思われるようなパネルが設置されている。パソコンは横並びに十台は設置され、背後にはスーパーコンピューターと思われる巨大な機器が聳え立つ。部屋のドアのすぐ近くには応接用の長椅子とテーブルが客人を迎えるかのように並べられている。何処からともなく現れた軍田大元帥は快活な態度で湖水一佐に、
「よく来たね。湖水君、そのソファに座りなさい。」
と話す。言われた通りに長椅子に座った湖水一佐の前に軍田大元帥は腰かけると、
「話とは、何かな。」
「実は大元帥。珍しい人形を手に入れたのです。これです。」
と湖水一佐は発言すると制服の上着のポケットからアフリカ人形のモガベを取り出して軍田大元帥に見せる。軍田は興味深い顔で、
「なにやらアフリカの人形だね。不思議な雰囲気を持っているなー。これが自衛隊と何か関係があるかな、湖水君。」
その時、軍田大元帥の耳の中でモガベの声がした。
(こんにちは、軍田大元帥。私はアフリカ人形のモガベだ。)
軍田大元帥は奇異な顔をすると湖水一佐に、
「空耳かな。私には、この人形が話しかけたように聞こえたけど。」
(空耳ではない。私の声だ。軍田大元帥、あなたは日本紅党の桜見・世子と関係を持っているだろう。)
(なぜ、それを・・しまった!聞こえたかなモガベ殿。)
(よく聞こえたよ。もっとも君が私とテレパシー的に話せるのも私が君を霊的に活性化しているためだよ軍田君。)
テーブルの上に置かれたアフリカ人形のモガベは淡々と指摘した。軍田は、
(そうだったのですか、モガベ殿。私には霊的能力など、ないと思っておりました。)
(ないようだね、軍田君。私の霊的な援助で君は私と会話できる。)
自信を失う軍田にモガベは(桜見世子の父親が陸上自衛隊の陸将であった事に好感を持った君は桜見世子とラブホテルに行った。)
反論しない軍田大元帥は事実を認めたようなものだ。モガベは(そこで行なった行為は後々、知られていくだろうが、それよりもオタクは日本紅党を支持する事に、したんだな。)無言の軍田大元帥にモガベは続ける。
(そのような事を非難する気は私には、ない。それよりもアンタには初恋の女性が、いた。婦人自衛官の。そうだろ?)軍田は無言で頷く。モガベは(アンタは防衛大学校の一年生、彼女は防衛大学校の近くの陸上自衛隊の駐屯地に入隊したばかりの18歳の女性だった。美人でモデル体型の彼女と交際を始めたアンタだったが彼女は一か月後に交通事故で亡くなった。そうだな、軍田君。)
軍田大元帥は驚愕で動揺する眼を上げた。そして思念で(どうして、そこまで分かるのですか)モガベは、
(すべてアンタの脳内に記録されているんだよ。私は、それを読むというか見ることが出来る。)
(そうなのですかーっ。どうか私の守護神になって戴けませんか)(それは無理だな。でもアンタを喜ばせる事は、してあげよう。それには金が必要だけどね。)(いくらでも出します。モガベ様。)(それでは見積もりなど出しておこう。湖水君に報告させる。)(ありがとうございます、モガベ様。)(おう、それでは後程(のちほど)にな。)それからモガベは湖水一佐にだけ聞こえるように(湖水君、帰るぞ。)湖水一佐はテーブルの上のアフリカ人形のモガベを手に取ると制服の上着のポケットに入れた。そして立ち上がると、
「それでは軍田大元帥。失礼します。」
と挨拶すると踵を返して大型すぎる部屋を出る。それから長い廊下を歩いて兵舎からジープの待つ駐車場へ行き、ロボット運転手にフレッシュアイランドの駐屯地に帰るよう指示する。明るい地下トンネルからフレッシュアイランドに戻ると湖水一佐は七谷一尉に自分の部屋に来るように連絡した。

体験版・ブルジョア気分でセックスしたい

 照山秋絵は福岡県福岡市南区井尻に住む、二十八才の主婦だ。人口百五十万人を突破した福岡市は、全国で六番目に人口が多いところ。照山秋絵は福岡市の生まれ育ち、夫の照山幸次郎も同じだ。
照山秋絵の身長は158センチ、B86 W59 H89となかなかの身体であるけれど、顔は美人と言うより知的な印象を与える。
それもそのはず、秋絵は九州大学文学部国文学科を出た才媛で福岡市内の不動産会社に勤務した後、夫の幸次郎と結婚した。
夫の幸次郎は身長178センチと高く、やせ型で出身大学も秋絵と同じ九州大学で経済学部の卒業、二人は同い歳で学生時代には同棲していた。
秋絵の実家は福岡市内にあるけれども、東区にある九州大学には遠いため、大学のある箱崎という町に1LDKの広い部屋を娘に借りてやった。
大型冷蔵庫まで備え付けてやった父親の配慮は、幸次郎との生活に大いに役立った。大学四年の夏に同凄を始めた。出会いは、その年の春に大学正門を抜け出た秋絵に後ろから幸次郎が声をかけたのだ。幸次郎は秋絵の大きな尻がぷるんぷるんと左右に揺れるのを見て、胸に込み上げるものを感じた、追いすがると幸次郎は、
「ちょっと、君。いいかな?」
「えっ、なんですか。」
振り返って立ち止まった秋絵の顔は美人ではなかったけども、幸次郎の視線は秋絵の胸に移動すると、その豊かな膨らみを認めて合格点を心の中で与えた。
「この近くで、お茶でも飲もうよ。」
「いいわよ。」
幸次郎の実直そうな顔はハンサムでなかったため、秋絵は安心したのである。つまり軽いナンパではないと、値踏みした。
秋絵のような知的レベルが高い女性に限らず、ハンサムな男性は女性は敬遠する。結婚するのにいやな男性の一番目は
女癖の悪い男
だそうだ。幸次郎は、
「じゃあ、連れて行くよ。」
と秋絵を誘導した。個室喫茶みたいなその店は、周囲を気にせずに話せるのがいい。
幸次郎は目の前に座った秋絵が大きく足を開いたので、白いパンティが眼に留まったが、すぐに秋絵は足を戻した。
幸次郎の口の中に唾液が出てきた。二十一歳の女性が持つ香りみたいなものを彼は、鼻一杯吸い込んだ。すると、股間のイチモツが少し反応してしまった。でもまず、会話をしなければ・・・
「君、頭がよさそうだね。」
と口火を切ると、秋絵は平然と、
「そうかなあ。文学部だから想像力の方が優先されると思う。」
「文学部ねー。ぼくは経済学部だよ。」
「それじゃあ、違いがありすぎるかもね。」
「男女の差ほどは、ないと思うよ。」
秋絵はくちびるの左右を両方上に上げた。目じりも笑って、
「気障な表現ね。それ。」
「文学的かな、と思って、言ってみたんだけど。」
すてきな人だわ、と秋絵は思った。この歳になるも男性経験ゼロの彼女は、男に声をかけられたのは、これが初めてではない。やはり、喫茶店に連れられていって、さて話を聞いてみると英会話教材のセールスだったり、あやしげな新興宗教へのお誘いだったりした。
それというのも秋絵は二十歳までは貧乳だったし、貧尻だったのだ。ここ一年ちょっとで、大きく女としては発育したのだが、秋絵の身体を見て好色な視線を注ぐ男も、彼女の顔を見るとまともな顔に戻った。つまりは、秋絵を軽い女と見ないということで、これは正解だろう。
目の前の男は過去の男性とは違う、と秋絵は直感したので、
「文学も好きなのかしら。」
と、弱弱しく尋ねると、
「ああ。ぼく、文学部に入ろうと思ったんだ。そしたら、高校の担任の先生が反対してね。男は、経済だっていうものだから。」
「なるほど、そうね。わたし、兄がいるけど、やはり経済学部に通わせられたのよ。兄も文学好きだけど、うちは明太の会社ですから。兄は社長にならないといけないし、父が、
『文学部にどうしても入りたいのなら、学費は新聞奨学生にでもなって稼ぎなさい。』
と言うと、素直に経済学部に入ったのよ。京都大学のね。」
「京都大学になぜ?」
「うちは、もともと京都なのよ。でも京都も博多も美人の産地だから同じね。わたしは美人じゃないけど。」
「そんな事ないよ。君は綺麗だ。というとお世辞めくから、本当のところは知的美人だな。」
秋絵は、うなずいた。その日は、それから携帯電話の番号を教えあって別れた。

それから数ヶ月後のある夏の朝、秋絵は幸次郎の荒々しい、いつものセックスを堪能していた。学生同凄である。鉄筋マンションの六畳の部屋で朝と晩、幸次郎に抱かれて九州大学に通った。
避妊具なしの性交は、幸次郎も覚悟の上だ。妊娠しても、出産は卒業後になる見込みで、秋絵が見込んだとおり幸次郎は真面目に二人の関係を考えていた。
勉強もあるし、週二回のペースでセックスに朝晩、一時間ほど励む。若いのに少ないと思う奥さん方は、セックスレス夫婦も世の中には多いという事を考えるべきだ。
初めて知った男のちんぽを、秋絵のまんこは離さなかった。文字通り秋絵の膣は幸次郎の竹のような男根を力強く締め付けた。幸次郎は外は暑くてもエアコンの効いた秋絵の部屋で下の布団一枚で、秋絵の上に乗り高速度で腰を前後に振りながら、
「おおー、秋絵―っ、ちんこがしまっていいー。あっ、出るっ。」
と叫ぶと、男の精密エキスを心置きなく放出すると、柔らかく大きな白い尻を若々しく震わせながら秋絵は、
「おまんこ、いいーっわっ。」
と叫んで、幸次郎の尻を両手で掴んで自分の方に引き寄せた。二十分の前戯と二十分の性交、二十分の後戯で朝晩のセックスは構成されたが、この時間はそれぞれ短くなる事も多かった。
九大生でもあるし、試験前にはセックスを控えておいた。試験が終わると徹夜でセックスに励む二人だった。
一晩最高、三回というのが幸次郎の記録である。秋絵の上で果てた後、幸次郎は、
「三回が限度だろう。度を超して射精すると下手したら死ぬかもしれないらしいよ。」
彼の顔を十センチ前で布団の上に横になって眺めながら、秋絵は、
「本当なの、それ?」
幸次郎は秋絵の大きな尻を優しくつかんで揉みほぐすようにすると、秋絵は、アアン、と眉を寄せて呻いた。幸次郎は、
「豊臣秀吉の本当の死因は、女とやりすぎたかららしい。三百人以上の女性とセックスしたあと、秀吉は死んだんだって。」
秋絵は幸次郎の小さくなった肉欲棒を右手で掴んでみた。すると、それは少し膨らんだ。
「そうなの。わたし、あなたに早く死なれたら困るわ。まだ学生だしなー。本当のセックスは、結婚してからね?」
「今でも世間のセックスレス夫婦よりは、セックスしているよ。そんな夫婦、奥さんが可哀想だよ。中には・・・・。」
と秋絵の硬さの残った乳首にキスすると幸次郎は、話し出した。

関東の方の主婦でさー、カリスマ主婦っているんだよ。アフィリエイトですごく稼いでいてね。アフィリエイトってインターネットで、企業やお店の商品やサービスを紹介して儲けるんだけど。
その主婦のアフィリエイトへのきっかけが、だんなのボーナスが出なかった事らしい。
こどもの教育費だけでもと、その主婦は考えたらしいね。
――――――――――――――――――――――――――――――
「登喜子、すまない。おれ、今年の夏のボーナスはなしだ。」
敬二は妻に話した。
「しかたないわよ。社会的な不景気ですもの。でも、いいわ。夜のお勤めだけでもしてくれれば。」
三十後半の登喜子は、色っぽい眼をして夫を見た。敬二は、
「ああ。ボーナスがないぶんだけ、夜のボーナスを出すとするか。」
と食卓で子供の寝静まった頃に、妻に答える。
いそいそと、食器を片付ける登喜子に敬二は後ろから襲うように抱きつくと、彼女の首筋を舐めまわした。登喜子は身をくねらせながら、
「ここじゃ、やめて。子供に聞こえるかもしれないから。」
「いいさー、聞かれても。おれたちの子供だろ。」
敬二は固くなったモノを妻の尻に擦り付ける。じわーっと、まんこが濡れるのを登喜子は感じたが、
「あなたみたいなスケベに、なってほしくないもの。」
と笑うように答えると、ふっと敬二は登喜子から離れて、
「大体、子供の教育で疲れたとか言って、ここしばらくご無沙汰だっただろう。だから、ボーナスないんだよ。」
「そんな・・そんな事が、ボーナスと関係あるの?」
「いや・・・言いすぎだな。関係はない。不景気が原因だろう。でも、おれの性欲は好景気なんだよ。」
敬二は自分の方を振り向いて立ったエプロン姿の妻の両肩を捉えて、キスをした。すぐに敬二は舌を差し込んだ。妻は柔らかく、それに応える。ぐんぐんと敬二の肉欲棒は大きくなっていった。エプロンとスカートをしたままの登喜子のパンティを身をかがめて、ずり降ろした敬二は妻のエプロンとスカートを上に上げた。豊かな陰毛が丸見えだ。敬二は妻を抱えて、台所の食卓の上に乗せると足を広げさせた。妻が腰掛けている食卓の部分は、いつも子供が食器に顔を向けているところだ。
登喜子は愛汁が溢れてきたので、声を出さなかった。敬二は妻の両足を抱えるようにして、いつの間にかズボンのチャックから出している金剛のような棒を妻の開いた穴の中に挿入していった。
夫の首にぶら下がるようにして、声を出すまいと頑張った妻の登喜子は夫が割りと早く放出した時に、
「あ、はーんっ。」
と艶かしく悶えると、食卓の上で腰を震わせた。

銀座のキャバクラに立ち寄った敬二は、ナンバーワンのあゆみに、
「今月から愛人やめても、いいのね?」
とトイレの前で聞かれた。
「すまない。夏のボーナスの後払いにしてくれた君には悪いけど、次のボーナスは確かじゃないし・・・。」
あゆみは冷たい眼をすると、
「いいわよ。お金に予定立ったら又、声かけてね。」
すぐに背を見せて歩いて行くあゆみの尻を見て、半分ちんこを勃起させた敬二ではあった。
数ヶ月、あゆみは敬二の愛人として都内某所にある彼女の自宅の高級、高層マンションの最上階まで敬二は、退社後、訪れていてはセックスレスとなった妻の代りにしていたのだ。
手付金というか前金をいくらか払っただけで、あゆみは敬二との愛人関係を了承していた。
敬二の今夏のボーナスは、あゆみへの銀行振り込みで跡形もなくなくなっていたのだ。やせていても胸と尻の大きなあゆみの身体は、敬二のちんこを捕らえて放さなかったのだが、昨夜の妻との台所でのセックスは、続けて夫婦の寝室での二回目にも持ち込めたので、妻は三十代後半とはいえ自分専用の女で、そういうまんこも持っている事がわかった。
なんとも、嵌め心地がいい。若いが、あゆみのまんこは遊び馴れているらしく、締まりのないようにも感じられると思い出す敬二だ。

次の日、敬二は又、台所で妻の身体を求めたが、
「ごめん。今からわたし、仕事なの。」
と拒否された。
「仕事?どこへ行くんだ、今頃から。」
「パソコンで、できるのよ。アフィリエイトって言うんだけど。」
「・・・・。」
「少し稼げば、セックスできると思う。」
登喜子は、すぐに台所から消えた。
次の日、敬二は食事後、トイレに入った妻にドアの前で、
「もう、終わったか?」
中から、
「終わったわよ。今はパンツはいてるところ。」
ガタッと勢いよくドアを開けると敬二は、パンティをあげようとしている妻に襲いかかった。登喜子は、
「やめてっ、こんなところで。」
と声を出したが、その唇は夫にふさがれた。それでも、口を外した夫に、
「アフィリエイトやってると、儲かるのが分るのよ。お願い、ここでのプレイはいつかするから。」
と両手を合わせた。夫は、たてていたモノが萎んでいくのを感じた。

幸次郎は寝そべったまま、
「それからしばらくして、その主婦はカリスマ主婦として有名になったし、という話。」
と秋絵に語った。秋絵は、びっくりしたような顔で、
「カリスマ主婦って、本当は大変なのね。実情は。」
「ああ、その夫の裏話もネット界のパパラッチが探り出したらしいよ。」
「ふーん。そうなのね。」
それから二人は朝陽の光が射してきたので、起きて服を着て大学に行く準備をした。
ドアを開けない玄関の中で、立ったまま二人はキスをしてから外へ出る。
九州大学は国道三号線沿いにある。その車道の大学側の歩道に沿って白い壁が延々と続き、中の様子は見えない。2013年の今は、かなりな部分が西区にできた新しい九州大学用地に移転しつつあり、2019年には完全に西区元岡という福岡市西の郊外に完全に移ってしまう。秋絵と幸次郎の頃には、第一ステージとして移転が始まっていた。最初のステージでは理系の学部だったので、幸次郎と秋絵は関係なかった。
 二人とも授業は真面目に出て、それが終わっても一緒に帰る事もなかった。近年よくあるカップルが手を繋いで並んで歩く、というような事もする事はなかった。むしろ、二人はそうするのを避けた。
なぜか、というと秋絵の手を握っただけで幸次郎は勃起したからだ。
東京でも福岡でも見られる手を握って歩くなどというカップルは、セックスレスなものと思って間違いない。ちんこを立てつつ街を歩くなんて事は、いくら男でもなかなかできないからだ。
また、その接触から即座にセックスに移行できないというのも、その男のインポ体質を表している。
手を繋いで歩けるのは、小学生までである。
大抵は幸次郎が先に部屋に帰っている。秋絵はもちろん、合鍵を彼に渡した。夕食の食材をコンビニで買って、秋絵が戻ってくる。
前に一度、二人で外食した。箱崎商店街の中にあるイタリア料理店は、小さな店で顔を合わせて食事をするにはもってこいのところだが、その頃、二人は週二度のセックスという慣習に馴染んでいて、その日が、やる日だったのだ。前菜に続いてパスタが運ばれた。幸次郎はフォークを取ろうと、まとめておいてある小さな細長いかごに手を伸ばすと秋絵も同じところに手を伸ばしていた。
二人の手は触れ合った。幸次郎は、右手の指先から女の色香が電流のように腕を伝い、喉から下腹部へと流れていくのを感じた。彼は、
「あっ。先にいいよ。」
と慌てて右手をどける。
「うん。お先に。」
秋絵は幸次郎より先に銀色のフォークを掴んだ。そのフォークは、クリストフルシルバーの大きなものだ。40ミクロンで銀メッキされているが、銀そのもののフォークは中々、作られるものではない。カトラリー(スプーン、フォーク、テーブルナイフなどの食器類)も贅沢にというのがそのイタリアレストランの趣旨だった。店主は時々、イタリアに今でも行って本場のイタリア料理を食べてくる。のみならず、昔修行したレストランに戻って手伝う事もある。
CUTLERYのクリストフルは、バターナイフその他もある。日本人のシェフにも人気がある。秋絵が手にしたものは、13650円のものだ。続いて幸次郎も同じ渋い銀色の優美に曲がったフォークを手にした。その時、そのフォークにも秋絵の色気が感染していたらしく、なぜならまとまったフォークを取る時は、他のものにも触るから、
だめ押しの形で幸次郎の小さなものを大きくしていった。
彼がフォークを小麦色のパスタに突き入れた時に、秋絵が口を丸めた後、
「おいしいね、このパスタ。」
と話しかけて来た時は、すでに幸次郎のイチモツは秋絵の股間より少し高めのところに向けて勃起していた。秋絵は幸次郎の前に座っている事もあって、白い太ももをダランと広げて座っている。純白のパンティは、そのテーブルの下に屈めば見えるはずだ。
秋絵の問いかけに幸次郎は、ハッとなり、
「う、うん。」
とまだ食べてないパスタについての感想を答えた。全勃起させているので、小さな声しか出せない。他のテーブル席には、横に三メートル離れたところに老夫婦が座っているだけだった。その老夫婦の頭の色は、どちらも半分白くなっていた。黙々とフルコースを食べているらしく、幸次郎には眼もくれない。
パスタの上に小さな肉が載っていたので、幸次郎は食器かごから15120円のテーブルナイフを取り出して切り始めた時に、テーブルにあったおしぼりを床に落としてしまった。拾うために屈んだ幸次郎の眼に飛び込んできたのは、むにむにとした白い太ももを広げている秋絵の姿態で、パンティが丸見えな上にぴっちりとはりついた布地に真っ直ぐな縦の線が入っているし、それが少しぷるぷると揺れて甘い匂いが幸次郎の鼻に侵入する。
両膝を床に着くと幸次郎は、秋絵のパンティに顔を近づけて割れ目がくっきりと浮き出ているところにキスをした。
テーブルの上の秋絵の顔は、感じているところを押し殺した表情だ。幸次郎は秋絵の顔が見たくなって、おしぼりを拾うと席に戻る。秋絵の顔は甘く歪んでいたが、非難の色はない。いつもは、後数時間もすれば布団の中で、ちんことまんこを擦り合わせている時間帯だ。幸次郎は、もう一度屈んでテーブルの下に潜ると、秋絵の白い布で覆われた縦のスジを見てみた。その部分は、じわりと水分に変色している。
座りなおした幸次郎は小さな声で、
「トイレに行こうよ。」
と秋絵の眼を見て囁いた。すぐに彼女は前髪を下に揺らした。そのついでに彼女の豊かな胸も小さく揺れた。
連れ立ってトイレに入った二人は、上は服を着たまま、ズボンとスカートをおろして、秋絵はパンティも膝まで下げて、幸次郎はブリーフの切れ目の中から出した肉体の巨棒を逆三角形の秋絵の陰毛の下にある濡れた柔らかなもう一つの口に、もどかしく挿入させた。
秋絵は頭を後ろに、のけぞらせると、
「ああーん。すてきだわあー。」
と声を高らかに出した。その時、幸次郎の両手は秋絵の白い大きな二つの尻肉をたっぷりと、掴んでいる。柔らかな尻の肉は幸次郎の指をのめりこませた。

もう一つのテーブル席にいた老夫婦の片方、奥方の方が手にしていたフォークを止めて、
「あなた、今、若い女性の声が聞こえませんでした?」
と口をもぐもぐさせている夫に問うと、
「ばかだな、おまえももうボケ始めているよ。声なんか、なんにも聞こえはしない。このおいしいイタリア料理に集中できないなんて、どうかしてるよ。まったく。何と言うか・・・。」
老婦人は顔を赤らめると、
「そうですね。そう言えば、そうですわ。長い間の欲望が声になって、外から聞こえてきたのかもしれませんわね。」
老夫は苦く笑うと、
「なんの欲望だ?もしかして、あれか?」
と声に出す前に店主の方をチラと見た。店主は彼等とは別の方を向いて、距離も十メートルはある。イタリア人みたいな日本人の中年店主だ。聞いている風には見えなかった。
老婦人は、ますます顔を赤くすると、
「そうです。あなた。あれなんです。」
「へへえー。帰って、するか?あれ。」
「いいですわねー。三十年ぶりになるのですかね。」
老夫は笑いをこらえた顔になり、
「は。よく覚えているよ。おれは、十年前に・・その・・・。」
老婦人の顔は、きっ、となると、
「浮気ですね。あ・な・た。」
「いや、そのね、勃起したのは十年前が最後だったかなー、と。」
「うまい、言い訳ですこと。」
「まあまあ、食べてから帰ろうよ。帰りに精力剤の店に寄るからさ。それで、大丈夫だと思う。」
老婦人の顔は、嬉しそうになった。首を二回もタテに振ると、
「さっきの声は、わたしの気持ちだったのですよ。やっぱり。」

赤い壁紙で内装されているトイレの中で、腰を逞しく振りながら幸次郎は右手で秋絵の口を押さえた。彼は小声で、
「おれも、いいんだ。腰がとろけそうだ。けど、秋、我慢しろよ。」
と彼女の耳たぶの近くで囁く。
自分の頭の左側で秋絵の顔がうなずいたのを感じると、彼は囁いた彼女の耳たぶを舐めまわして軽く噛んだ。彼女は、彼の手の中の口で、
うふん、いやっ
と悶えた。その感じられた声が幸次郎を昂ぶらせる。彼は、彼女の細い首すじにも自分の舌を長くして這い回らせた。秋絵の首の周りは、幸次郎の唾液でいっぱいになる。彼女の尻の肉から左手だけ離して、彼は彼女の右胸を揉みまくり続けた。知的な秋絵の目は、すでにトロンとなっている。

痴漢一発 体験版

痴漢一発
 東京の山手線の電車内でおれは、前に立っている女の背後に立った。三十代後半のその女は、いかにもキャリアウーマンという雰囲気を全身から漂わせている。時刻は会社から帰る時間のラッシュアワー。東京のラッシュアワーなんて、夜遅くまで続いているよ。
夏だから軽装のその女の尻に、おれは軽く手のひらを当てた。女が感じるか、感じないか位だ。すると、都合よく電車が揺れて人が一方向に倒れ掛かる。
その方向が女の尻のほうだったから、しめたものだ。おれは、むんずと女の尻をつかんでやった。しばらく、おれの後ろから多くの乗客が、おれを押していた。
その女の尻は、柔らかくて心地よかった。だから、痴漢はやめられないのだ。女の髪は短めで、顔も人に命令しているような顔だが、それに反してスカートを履いている。そのスカートも薄い布なので、パンティの感触まで味わえた。
女の身長は平均よりも高め、だが、百七十五センチのおれよりは遥かに低い。
女は、おれが尻をつかんだ瞬間、身をくねらせた。すかさず、おれは女の足の間に右手を入れて、その女のマンコのあたりに指をすべらせて、ぐっとなぞってやった。車内は満員で、女の前に座っているのは眼をほとんど閉じた初老の男性サラリーマンだ。
また、後ろから多くの人がおれを押してきたので、おれは左手で女の左の乳房をムンズとつかんで、そのまま揉みしだいた。
おれの両手は、女のマンコと乳房をそれぞれつかんでいた。そのまま三十秒位、時間が経った。女の顔は見えないが、悔しそうな表情をしているに・・お、電車の窓ガラスに女の顔が見える。さっきまでの威厳のありそうな顔つきから、快感をこらえている女の顔に変わっている。
この女、感じているんだ。だから、痴漢はやめられない。そうとも、世間ではなんといおうと、おれはEことをしているんだ。
その女の乳房と尻は、普通より小さめだったが弾力はある。女は、おれの両手に大事なところを握られて気持ちいいのを我慢している。
電車内で悶え声など、上げられるわけもない。
一分もそのままにしていると、おれの後ろの乗客が元の体勢に戻ったので、おれはすばやく両手を外した。女は窓ガラスに映っているおれを見つめたが、すぐに眼をそらした。
おれはサングラスを掛けて、口にはマスクをしている。平たい帽子をかぶり、鼻の下に付け髭までしている。
まだ、する事があった。おれは、勃起したものをズボンから取り出すとシャコシャコと右手でしごいて、どくっと女のスカートに射精してやった。
この動作は平静な顔や態度をしてやらないと、いけない。物事にはなんでも、慣れというものがある。過去に数十回の体験を持つおれは、顔色一つ変えずに電車内で女に射精することができるのだ。
女のスカートの尻には、おれの放った白い液体が大量に付着していた。
おれの両隣の男性サラリーマンは、携帯電話でネット閲覧でもしているらしく、少しもおれがやった事に気がつかなかった。

電車は大森というところに、停まった。おれの精液をスカートにつけた、そのキャリアウーマンは電車を降りた。

と話す霧下才一(きりした・さいいち)の話を、私は満足感を持って聞いた。これで、いい。これで、いいんだ。

霧下才一は、月に四回から八回は痴漢をしていた。あまり回数を増やすと、捕まってしまうと彼は言う。私は、霧下才一の高校の同級生で、福岡市から東京に出て就職した。霧下君は、最近、上京してくる。というのも、彼は今も福岡市に住んでいるという。
霧下君は、
「痴漢の本場は、やはり東京だね。日本でもっとも、やりやすいよ。福岡市で痴漢の達人になれば、東京は痴漢天国だ。おれは、福岡市の西鉄バス内とかでも鍛えてきたからな。
それともうひとつ、見て見ぬ振りをする東京の人間。これも、やりやすい原因のひとつだろう。」
と都内の喫茶店で堂々と、私に語った。
東京というところは、JRと私鉄が発達したために、バスはそれほど盛んではない。その結果、大分部分の人は、電車で通勤する。その中でも埼京線という路線がもっとも痴漢が多い、といわれているわけだが、これは訴える女性が最も多いと言う事も、できるかもしれない。
霧下君は、金にゆとりのある生活を送っているらしい。が、飛行機ではなく新幹線で東京まで来る。月の半分は、東京で暮らしているらしい。新幹線の車内でも痴漢をするらしい。
彼は、こう語る。
「新幹線の自由席で女の隣に座れば、女が降りるまで痴漢し放題だ。女の到着駅では、とめてやるのがエチケットだけどね。特に女が窓際で、横一列に誰もいない場合は、最高度な状態だ。パンティの上からではなく、直接マンコに指を入れるのは当たり前で、時々、新幹線の女客室乗務員が歩いて通り過ぎる事もあるが、気がつかないよ。」

私は普通のサラリーマンを続けて、もう三十歳だし、霧下君も同じ年齢だ。私は、
「霧下君。就職した事はないのか。」
と聞いてみると、
「いや、ないね。又、おれみたいに痴漢の常習者が、万一、捕まったら会社も迷惑するだろう。まあ、おれは今まで一度も捕まってない。痴漢は申告罪なんだ。女が訴えない限り、捕まらないよ。」
と外国煙草の煙を吹かしながら、そう答えてくれた。
「君が痴漢するようになった、動機ってなんなの?」
「ああ、それは色々あるよ。ただね、一つは親父だ。おれの親父は地方公務員だったが、仕事中にアダルトサイトを閲覧してクビになった。母には退職の理由を言わなかったらしいけど、高校を出てアルバイトをしているおれには、
「才一。父さんはな、アダルトサイトを仕事中に見てクビになったんだ。おまえは、そうならないよう注意をしろよ。親子なんて、よく似ているのだから。」
と母のいない時に、おれに語ってくれたよ。」
「そうだったのか。でも、それなら・・・。」
「痴漢とかもしないように気をつけるはずだ、ということだね。でも、おれは親父の敵討ちみたいな気持ちもあるんだ。」
「なるほどね・・・。」
私は、分かったような、よく分からない気持ちになった。それで、次の質問をした。
「君が最初に痴漢した女性は、どんな感じだった?」
霧下才一は、眼をキラキラと輝かせると、
「高校の時の教師だよ。英語の教師だった。おれは、英語が苦手だったから、あやうく落第しかけたけど、その時もその新任の女教師は冷淡だった。私大出で、金持ちの娘だという評判はあったね。
なんかモデルみたいに背が高くて、髪は長いし、それで結構美人顔なんだ。
落第しないための授業に出たから、なんとかなったけど、学年で最低の英語の成績だったらしく、その英語の女教師はおれを馬鹿にしたような態度でその後も接した。
高校を卒業してある日曜の午後、福岡市のある地下鉄の駅でおれは、その女教師を発見した。彼女とおれは視線が合ったが、向こうはおれを無視したよ。その女教師の隣にはハンサムな若い金髪の男性が立っていた。染めているんじゃなくて、白人だよ。
おれと彼等は二メートル位しか、離れていない。電車が来た時は、同じ車両に乗り込んだ。座席は満杯なので、それぞれ吊革につかまって立つ。
おれは、女教師の後ろに立ってしまったんだ。彼女の左側に金髪の白人男性が立っていた。その女教師とおれの身長は同じくらいなんだ。金髪野郎は、おれより、あと五センチは高い。
電車は発車した。おれは下に視線を向けると、女教師の尻に眼が行った。薄手のスカートは、大きくふくらんでいた。意外と、巨尻なんだなとおれは思った。それが時々、ぷるぷる、と左右に揺れた。高校時代の屈辱をおれは、はらしたくなった。
右手を女教師の尻に当たるかあたらないか、という程度に接触させる。電車が揺れた時、おれはグイッっと女教師の巨尻を掴んだ。ピクンと彼女の肩が揺れると、顔だけ振り向けておれを見た。
あっ、という顔をすると女教師は何も言わなかった。自分の教えた生徒に痴漢されるなんて、という思いが顔に現われていた。
おれは再び、彼女の尻をいやらしく撫で回した。柔らかく、ぷるぷるした彼女の尻の肉の感触に、おれは勃起していた。それでズボンの前に布を突っ張らせているモノを、彼女の尻の割れ目の辺りに押し付けた。ズシ、と彼女の尻の肉は、おれのズボンのふくらみを受け入れた。
尻の割れ目のあたりと思っていたが、それは女教師のマンコの割れ目だったのだ。ガタン、ゴトン、ガタン、ゴトンと電車が揺れる度に女教師の巨尻もおれの勃起物を受けたまま、揺れている。
(空いた手が、もったいない。)
そう思ったおれは、両手を女教師の背中から、たっぷりと盛り上がった乳房に当てて、柔らかく揉んでやった。何かに耐えている感じを彼女の後姿は、表現している。背が高いので、座っている乗客には彼女の胸の位置は高くて見えないのだ。
女教師の隣の白人男性も背が少し高いためか、おれの動きに気がつかなかった。それから十分ほど、おれはズボンの上からだったけど自分の勃起したモノを女教師の後ろから彼女の割れ目に当てていた。おれは自分のイチモツから彼女のマンコの割れ目が、おれのモノを咥える様に動くのも感じた。
(なんだ、おれのチンコを欲しがっているようだな。)
とおれは思ったので、天神駅に着いて車両を降りた女教師に、
「先生。お久し振りです。」
と声をかけた。白人共々、おれを振り向くと、
「あら、霧下君ね。久し振りだわ。」
と顔を赤らめて返事をした。彼女の視線は、おれの股間に走っていた。おれは、まだ勃起させていたのだ。それを女教師、幾野育子(いくの・いくこ)は、おいしそうに眺めて、
「よかったら、お茶でもしない?」
とおれを誘う。
「いいですよ。落第しそうな僕を助けてくれたのは、先生です。」
「まあ。当たり前の事ですよ。教師として。」
と、いかにも教師風の語調で幾野先生は、答えた。となりの白人は、
「ミーは、どうしますか?」
とオズオズと幾野育子に聞く。
「一緒に行きましょう。」
と育子が答えると、
「オー、イエース。」
と納得した。
三人で天神のレストランで食事して、地上に出るとタクシー乗り場に女教師はおれたちを引っ張って行った。

タクシーでは、おれと女教師が後部座席で、おれが運転手の後ろ。白人は助手席だった。幾野育子は、
「糸島のラブホテルに。」
と教師らしく命じた。
「糸島のラブホテルって、いくつかありますよ。」
「じゃあ、一番遠いところで、いいわ。」
「わっかりましたー。」
タクシーは、快走し始めた。
すぐに幾野育子は、おれにピッタリと身を寄せると、
「今、就職しているの?」
と、さり気なく聞く。
「いえ、フリーターしてますよ。」
「そうなの。最近は就職が難しいものね。なんなら、父の会社関係で働けるようにしてあげてもいいけど。」
おれは、驚いた。さっき、痴漢をしていたおれに・・・職の世話まで考えてくれるなんて。
「それは、ありがたいですね。ぜひ、お願いします。」
「うん、任せてね。父は四十位、会社を経営しているの。東京支店が三十もあるのよ。」
「ええ、もう、どこでも構いません。」
育子は、おれの耳に両手を当てて前の人間に聞こえないように、
「さっきの、あなたのチンコ、よかったわ。これから行く糸島のラブホテルでナマで挿入してね。」
と囁いた。その手をわざとらしく滑らせると、育子はおれの股間にズボンの上から触った。すぐに、元の位置に女教師は手を戻したが。

タクシーは、国道202号線を西に走っていく。今は糸島市となったが、つい最近までは糸島郡だった。JRの前原駅近辺が、そこそこ発達した町ではある。
糸島市に入ると、国道202号線に沿ってレストランなどの店がずらりと並んでいる。途切れるところもあるが、昔はただの空き地だったのだ。やがて、右手に海が見えるようになる。それは博多湾という内湾で、小さな島もところどころに見えてくる。
幾野育子は、おれの右にある窓ガラスから見える海を見ながら、
「海水浴の季節が過ぎたら、楽しめるわ。」
と謎のような事をおれに囁いた。今は八月だけど、盆を過ぎれば海水浴客は少なくなる。
育子は自分の右足の太ももを、おれの左足のふとももに押し付けてきた。柔らかい感触が、おれの脳に股間に血液を送るように指示させる。それで、少し勃起した。
前の助手席で、
「ニホンノ、イナカ、イイデッスネー。」
という声がした。運転手は、
「いいでしょう?でも、だんだん田舎ではなくなっていってますね。」
と話した。
育子の右手が伸びて、おれの股間のふくらみに触ると又、元に戻った。彼女の顔を見ると、満足そうな笑みが浮かんでいる。
タクシーは、ラブホテル「シーピンク」に到着した。国道202号線の右は、海岸、左は小高い丘がある、その丘の上に「シーピンク」がラブホテルらしく立っていた。タクシーを降りると、潮風が鼻にきて、海は丘の上から見晴らせる。深い青色の海だ。
駐車場には車が二台、先客らしく停まっていた。運転手は、
「帰りのご用命も、ぜひ、お願いします。」
と車の中から幾野育子に頼みかけた。
「あら、ひまなんじゃない?この辺で待ってたら。」
と育子は身を少し屈めて答える。
「いえ、なんとか時間を潰します。」
「そう、じゃあ、好きにしてて、いいわ。」
「ありがとうございます。」
深々と、運転手は頭を下げた。

おれたち三人は、幾野先生を先頭にラブホテルに入った。受付は農家の青年風の男性が、野良着姿でチェックインの手続きをした。
「すみません、こんな格好で。いつもの人が急用で福岡市に行ったもんだから、畑仕事をしていたオレが呼び出されて、こんな格好しとるとです。」
と言うなり頭を下げた。幾野は、
「いいわよ、気にしなくて。ラブホテルの受付に農家の作業着というのも面白いわ。」
と賛美した。
鍵を幾野が受け取って、先に歩いて行った。受付から最も遠い部屋、その部屋が海がよく見える部屋だったのだ。
育子は、全員部屋に入ると鍵をかけた。それから、おれに歩み寄るとキスを長くした。

痴●一発

110円

レズしたいっ!体験版

レズしたいっ!

 白花百合子は、もう二十二歳になる。福岡県福岡市内中央区にある不動産会社に勤めるOLだ。身長160センチ、体重60キロ。スリーサイズは、上から86>58>88という極め付きの体は洋服を着てもハッキリとそのふくらみが見えるものだ。顔はすこぶる美人で、博多美人というおもむきだ。という彼女だが、彼氏はいない。
彼がいない理由の一つは、職業によるものだろう。不動産会社は日曜も仕事がある。
 最近の世相では、女性で二十二歳で独身というのは別に珍しくもなくなっている。
だから、もう二十二歳という表現は当節不自然だが白花百合子としては普通の女性よりも結婚願望が強いので、彼女の気持ちとしては、もう、という気持ちなのだ。
彼がいないもう一つの理由として考えられるのは、彼女は女子中学、女子高と福岡市内にある私立の学校に通わされた事にあるだろう。
おまけに女子中、高と空手部に在籍していたので、これも男がいない理由かもしれない。つまり、白花百合子には隙がないということだ。
以前、二十歳の頃、通勤している地下鉄で朝、彼女は痴漢に会いかかった。彼女の豊満な尻に触ろうとした若者の手をハイヒールを履いた片足で蹴り上げて、その二十代の学生は手にひびが入る怪我を負った。激痛にしゃがみこむ、そのやせた男を見おろすと百合子は、
(わたしは、ちゃんと見てたんだからね。あんたの右手の動きを。)
と心の中で言い捨てた。
さすがにその件は、百合子も幾分気の毒に思えたので彼女は美容院で髪の毛を短くしてもらった。椅子に座ると、
「スポーツ刈っていうのかな、あれにしてください。」
「ええっ、男の子?のようにですか?」
「ええ。その方がいいかと思って。」
「わかりました。」
それで百合子の頭は男子のように、短髪になった。会社に行くと課長が驚いて、
「白花君。びっくりするな。でも、似合うよ。不動産会社勤めには、それでいいと思うよ。」
「ええ。変な男がいましたから。」
「ああ、客の中にはたまにそんなのもいるだろうね。その髪型だったら安全だろうな。」
百合子は詳しくは答えずに、
「そう思います。これでお部屋の案内も、もっと多くできますわ。」

百合子は男性経験は、なかったが処女ではなかった。百合子の処女を奪ったのは、彼女が通う空手道場の女師範、六月(むつき)さね子だった。それは百合子が十八の歳で、女子高の夏休みに夜、いつものようにその道場で稽古を終えた後に六月さね子は寄って来ると、
「女らしくなったわね。わたしが空手の秘儀を教えるのに、ちょうどいいな。」
と耳打ちした。六月は三十歳だ。空手歴も長いし、手には拳ダコがあり肩幅も広い。胸は小さく、しかし尻は大きかった。眼は細長く、鼻は高い。百合子のようにパッチリと開いて、二重まぶたの瞳とは正反対で六月さね子の眼は一重だ。さね子は、その空手道場の館長の六月武郎の一人娘なのだ。まだ、独身である。その時、道場のみんなは既にいなくなっていた。さね子は洋服に着替えると、
「その技を身につける前に、百合子が経験しなければ行けない事があるの。それは、シティホテルでね。」
「おす。わかりました。」
「わたし達、メスだからめす、って言ってもいいわよ。って冗談よ。行きましょうか。」
茶色の服を着た百合子を六月女師範は、促した。
その空手道場は福岡市南区井尻にある。百合子の両親は東区香椎の辺りに住んでいて、百合子も小学校卒業までは東区で育ったのだが、私立の女子中学に通うのは大変なので、その学校に近い駅の井尻のマンションに百合子は一人暮らしだった。その井尻の駅近くにある空手道場、練心館こそ百合子が中学入学と同時に通い始めた道場なのだ。百合子は中学でも空手部に入った。その練習が終わると練心館道場に通う。
おかげで高校三年の夏に百合子は、女子空手日本一になった。
(六月師範も、わたしに期待してるんだわ)百合子は、これから始まる師範の指導に心をときめかせた。
井尻にはホテルはないので、一つ北に行った大橋駅近くのシティホテルに二人は入った。六月女師範は片手に大きな黒いバッグを持っていた。部屋に入ると、そこはシングルでベッドは一つだ。フロントの三十代の男性は変な顔をしていたっけ。と百合子は思い出す。さね子は、
「泊らないし、これでいいのよ。さあ、裸になって。」
と指示する。ええっ?裸にいっ?百合子がそう思ってボンヤリしていると、目の前の女師範はスルスルと洋服から下着まですべて脱いで全裸になった。筋骨逞しいといっていいような体に、小さな胸と黒々とした足の付け根のアンダーヘアが百合子の眼に入った。百合子も急いで裸になる。高校生にしては発育した胸と尻が女師範の眼に入ると、
「百合子、いい体しているわね。これから貴女が習う秘儀は男に使うものだけど、その前にあなたがやらなければいけないことはね。」
師範は飛ぶより早く全裸の百合子、その頃は少し長めの髪の毛の百合子に近づくと彼女の肩を抱いてキスをした。初めて触れる女性のくちびるの甘みに百合子は、ぼーっとなった。そのまま、さね子は百合子の口を自分の舌で開けると十八の百合子の舌にくにょくにょと舌を絡めていく。さね子の左手は百合子の右胸を優しく揉み始めていた。(ああっ、師範はレズだったんだあっ・・)と揉みしだかれる胸からくる快感を感じながら百合子は思った。さね子は自分のアンダーヘアを百合子の同じ部分に当てると、腰を左右に振って擦りつけた。百合子は自分のその部分が濡れてくるのを感じた。さね子は舌を抜くとキスをしたまま、百合子を抱きかかえてベッドの上におろした。閉じたままの百合子の白い両足を、さね子は素早く大きく開かせた。その上にさね子は乗ると、又アンダーヘアを合わせた。今度はさね子の女性器が百合子のものに当たった。ふたつの陰唇が合わさると、さね子は激しく男性のように腰を振り始めた。ぐにょぐにょと割れ目の擦れる音がし始める。百合子の頭の中は透明になっていった。さね子は百合子の両方の乳首を一つずつ、口に含むと舌で愛撫する。百合子は自分の乳首が硬くなっていくのを感じた。次に、さね子の舌は百合子の首筋、耳を舐めまわす。百合子は自分の股間が、じっとりとするのを覚えた。さね子の腰の動きが早まりだした。さね子は、
「百合子、もうわたしイキそうだわ。ああっ、出る!!!」
さね子は、びゅっと出した潮を百合子の柔らかな淫唇にかけてグッタリとした。百合子は自分のアソコが師範の出した液体で濡れたのを感じた。百合子も何か、イクという感覚を覚えたような気がした。
さね子はすぐに立ち上がると、バッグを置いてあるサイドテーブルのところに行き、バッグの中から何かを取り出した。ベッドに白いふっくらとした足を大きく広げて寝ている姿勢から、百合子が見たものは天狗のお面を手に持つ女師範の姿だった。さね子はその天狗の高い鼻のお面から出ている紐で、自分の腰に巻きつけるとそれは師範が勃起したイチモツを現したようだった。その鼻は、さね子の腹部から四十五度の角度をもって上に跳ね上がっていた。(師範、まさかそれで・・・)百合子が思う間もなく、さね子はベッドに戻ると百合子の上に覆いかぶさって、天狗の長い太い鼻を百合子の若いおまんこの中に挿入していった。(ああんっ)百合子は、かすかな痛みと強い快感を挿入の瞬間に覚えた。さね子は天狗の鼻を根元まで百合子のかわいいマンコに入れ終わると最初はゆっくりと、やがて激しく腰を振り始めた。百合子は小さな声で、
「ああんっ。」
とかわいい悶え声を洩らした。さね子は腰を目まぐるしく動かしながら、百合子に顔をくっつけてくちびるを合わせた。天狗の鼻は硬いゴムのようなもので、できていた。さね子は律動を早めていくと、
「ううっ、又、イクわっ。」
そう叫ぶと、ぐったりとなった。天狗の面の中に潮を出したのだ。百合子もその時は、失神しそうな状態になっていた。
やがて身を起こすと、さね子は天狗の面を外して、
「これで百合子も女になったのよ。わたしを女にしたのは父。でも父が自分のものを娘のわたしに入れるわけはないわ。父は自分の体にわたしが今、あなたにしたように天狗のお面をつけてわたしに挿入したの。それは、わたしがやはり貴女と同じように十八の夏だったわ。」
ベッドに腰掛けて、遠い日を思い出すような眼をしながら女師範はそう語った。
(えええっ)と百合子が思うと、さね子は苦笑いして、
「でも父は変態じゃないのよ。わたしに空手の秘儀を教えるためだったの。そのためにわたしの女性器を打ち破ったのよ。それからわたしの修行はまた、始まったのね。」
さね子は又、バッグのところへ行き、天狗の面をしまうと又、中から何か取り出した。今度は黄色いバナナだった。まあ、赤いバナナがあるわけもないけれど。女師範は、バナナを立ったまま皮をむきベッドに戻って腰掛けた。百合子も起き上がってベッドに座った。立膝をして手を膝に置いている。
さね子は柔らかな感じで足を開くと、手に持ったむいたバナナを自分のマンコに入れていった。あ、と息を呑んで百合子が見ていると、さね子は、
「うむっ。」
と小さく声を出した。右手のバナナを上に上げると、そのバナナは半分に切れていた。半分は女師範のマンコの中に入っている。百合子が仰天すると、さね子は、
「これが秘儀、マンコ割りなのよ。最初はバナナなんかの柔らかいもので、練習するの。」
と落ち着いて説明した。
それから再び、さね子はバッグのところに戻り中からキュウリを取り出して百合子を見ると、
「見てて、これを割る。」
直立しているさね子は脚を広げると、右手でキュウリを自分のまんこの中に入れた。
「はっ!」
と気合をかけると、キュウリはペキンと折れて彼女はそれを右手で高く上げてみせる。
「これくらいできるようになれば、マンコ割りは完成半ばってところかな。」
「すごいですね、わたしも練習すればできるようになりますか。」
百合子が賛嘆の面持ちで聞くと、
「ええ、もちろんだわ。あとで男を相手に実演してみせるわね。大橋駅近辺にもナンパ野郎はいるから。」
「わたしも、ナンパ男を相手にするんですか。」
「いえ、あなたはまだいいわ。マンコ割りで男がどうなるか、見てみることね。」
「ええ、見たいです。」
「これは一つの秘儀だから、最終的にそういう状況になった時に使うものなの。指で男のちんこを掴めれば、わたしならね・・・。」
全裸のさね子は、バッグの中から財布を取り出すと百円玉を右手の親指と人差し指でつまんだ。
「エイヤーっ!」
すると百円玉は少し曲がってしまった。又しても唖然とする百合子だった。
(あれじゃ、男の子のものは・・・)
百合子は、まだ見た事のない男のちんこを想像していた。
さね子は百円玉を財布にしまいながら、父以外の初体験の相手を思い出していた。
それは六月さね子が二十歳の歳で、彼女が昼間はコンビニでアルバイトしていた時の店長だった。コンビニのアルバイトといっても接客をしていたわけではなく、さね子は裏で商品の仕分けや搬入などをしていた。その店長は四十過ぎの妻子持ちだったが、奥さんが三つ年上でセックスレスが続いていたようだ。その頃のさね子は、すでに巨尻となっていたのでコンビニの制服は尻のところが破れそうなほど膨らんでいた。黒の眼鏡をかけた店長は、いつもさね子のとなりで仕分けなどを一緒にした。その時に、さね子は自分の尻のあたりに視線を感じるのだったが、それはその店長が度の強い眼鏡でしゃぶるように眺めていたからだ。店長は三宅という名前だった。三宅雄三というのがフルネームだ。
最近、三宅雄三は新しく眼鏡を買った。それは六月さね子の尻をよく見るためである。
昼の十二時頃、客も店内は多くてレジも忙しいが裏で働くのも忙しくなる。その裏では店長とさね子の二人が商品の仕分けをしていたが、ついに店長の手が六月さね子の尻に触れた。さね子は、それを感じたけど何も言わなかった。三宅は彼女により近づいて、
「六月君、ホテルに行かないか。君は四時で終わりだろう。ぼくは外に出る用があると言えば、誰も何も言わないし。」
「いいですよ。」
さね子は、顔を赤らめた。三宅は体格もよく身長は百九十センチはあり、体重も百キロは超えていただろう。プロレスラーのような体なのだった。だから、強い事へ憧れを持つ六月さね子は三宅雄三の露骨な誘いにも抵抗しなかった。それに三宅を独身だと思っていたのだ。
その時、店のほうから若い女性店員の声がした。
「店長、レジをお願いします。」
三宅は慌しいレジを手伝いに行った。袋詰めをしながら三宅は、
「ただいま炭火たこ焼きが、十円引きとなっておりますよ。いかがですかー。」
と声を出したりしているのが、裏で働く六月さね子の耳にも入った。
その店は、井尻駅近辺のコンビニだった。四時になると客は少なくなり、六月さね子は店長の車に乗って竹下駅近くのラブホテルに入った。
三宅は部屋に入ると、
「おれは、これからまだ仕事があるから。早くしないとね。」
と話すと、さね子を抱いてキスをする。口を離すと、さね子は、
「結婚すれば、こんな事、毎日できますね。」
と三宅にもたれかかって口にすると、
「ぼくはもちろん結婚してるよ。でも、もう妻とはセックスもキスもしてないな。」
(なにいっ!)
というのが、さね子の心の中だったが顔には出さずに、
「それは、つまらない結婚生活ですね。」
「そうさ。だから君が必要だ。」
三宅雄三は、さね子の私服を脱がせようとしたが、
「あっ、わたし自分で脱ぎます。」
「それじゃ、ぼくも脱ぐよ。」
二人は、手早く全裸になった。三宅は、さね子を抱え上げて彼女の尻を揉むようにしながらベッドに降ろした。三宅の体は少し脂肪がついていた。正常位で三宅が、さね子に硬くなったちんこを挿入した。さね子は、特に何も感じなかった。思いはあるものに集中していった。三宅が腰を動かし始めた時、さね子は、
「秘儀、マンコ割り。」
と呟いた。上の三宅は、
「えっ?学割、かなんかの事?」
と聞き返したが、次の一瞬で、
「ああああーっ。痛いーっ!」
と狂ったように絶叫した。三宅のちんこは、さね子のまんこから滑り出たが、それはダラリとしていた。
立ち上がった六月さね子は、服を着ると、
「これでもう、奥さんと何もできないんじゃないかしら。」
と冷たく言うと、部屋を出て行った。さね子は、その辺が竹下である事を知っていたので、井尻の家に帰るのは難しくなかった。
それから、さね子はそのコンビニには行かなかった。噂では、その後の三宅雄三はコンビニではナヨナヨとした感じで仕事をしているという。中洲のゲイバーで、夜働いている三宅を見たという人もいた。
実際にあのラブホテルから、三宅は救急車で運び出されたのだった。さね子が出て行って、しばらくしても出てこないのを不審に思った若い男のホテルマンが部屋に見に行くと、三宅雄三は気絶していた。
―|===========================================
六月さね子は服を着ると、全裸の百合子に、
「わたしチョット、外へ出てナンパされてくる、というか連れてくるから待ってて。」
と告げてホテルの部屋を出て行った。
そのホテルから大橋駅西口までは、徒歩二分である。西口前の路上には、金髪の若い男性が一人立って通りかかる女性を物色していた。身長180センチの痩せ型。二十代前半だ。青いジーンズに赤いシャツ、靴はスポーツシューズを履いている。ジーンズのポケットに片手を入れて、その若者は六月さね子に近づいてきた。夜の九時頃だ。サーファータイプのその男は、
「ひまなら、お茶でもどうね。」
と福岡言葉丸出しだ。さね子は、
「いいわね。それよりホテルに行こうよ。もう部屋はとってあるのよ。」
若者は眼を輝かせた。その時、通りかかった若い女性が、
「わたしもホテルに行きたいな。」
と割り込んできた。引き締まった体の二十代後半の中背の女だ。サーファータイプは、
「いいねー。3Pできそうやね。」
と臆面もなく口に出すと、さね子も、
「いいよー。まずは、あんたたちのプレイを見たいな。」
中背の女は、
「絡んだらいいよ。その方が楽しいけん。」
とこれまた福岡言葉で答えた。
三人は、並んで百合子の待つホテルの部屋へ。さね子がまずドアノブを回して入ると、百合子はもう服を着ていた。サーファータイプは百合子を見て、
「こらあいい。4Pできるやない。」
さね子はニヤニヤして、
「まず、あんたたちのプレイを見たいのよ。」
中背の女は、自分でさっさと服を脱ぎ始めた。サーファータイプも、
「おれも脱ぐたい。」
中背とサーファータイプは、ほぼ同じに全裸になった。若い男は中背の女の裸体を見て、するするすると長めのチンコを天井に向けていった。中背の女は、男にすぐにしがみつくと眼を閉じて口を突き出す。男は屈んで女にキスすると、抱えてベッドに置いた。女は自分から四つん這いになり、尻を突き出す。男はその女の尻の間に見えている大きな割れ目に挿入していった。
「あはんっ。いいー、よかとよ。」
と女は短めの髪を振り乱して悶えた。百合子は、その女性の脱ぎ捨てた服の近くに何か手帳のようなものが落ちているのを見つけた。近づいて、手にとって見ると、それは警察手帳だった。中を開けると
巡査 島木園子
の文字の上に、今、ベッドの上でサーファー風の男に後ろから突きまくられている女性の顔が写真に写っている。百合子は、
「お楽しみ中、すみませんけど、島木さん警察手帳を落としてますよ。」
それを聞いたベッドの上の女は、
「今、いいところよ。服の上に置いといて・・・ああっ、いい。」
体をのけ反らせる。男は、
「あんた、警察官か。まあ、アフターファイブは自由だもんな。おれと、こうやるのも犯罪じゃないし。」
ズンズンズン、と男は島木の柔らかい尻を両手で揉みながら突きまくる。
「そうねっ、なにやってもいいのよ。あはん、ストレスたまって、ああん。この前、同僚の婦警と便所の中でレズしてしまったの。でも、あなたの棒がいいわああ。」
島木園子は、悶えながら涎を垂らした。男は、腰のスピードが速まってきた。両手で島木の小ぶりのおっぱいを揉みながら顔を島木の耳に近づけると、
「もう、出そうだ。中に出してもいいのかっ。」
と歯を食いしばって聞く。
「いいわあん、ああ、ピル飲んでるのよ。だから、大丈夫。」
「よし、いくぞー。島木っ。」
「園子って呼んでっ。」
「園子っ。いくいく、出るーっ。」
ドピュピュッ、と男は精子を放出した。
六月さね子は、感心したように、
「よかったよー。まだ婦警さんのアダルトビデオはないみたいだから。近くで見れて、よかったです。」
島木園子は、だらりとなった男のペニスを手にとってペロリと舐めると、
「ああ、おいしいなー。まだ、やりたいけど、あなたもしたいんでしょ。」
と、さね子に顔を向けて言う。さね子は、無言で服を脱ぎ始めた。すぐに全裸になると、
「わたし複数プレイは苦手なのよ。よかったら、そこにいる百合子とレズしたらどうですか。」
島木園子は立ち上がると、百合子に近づきキスをしようとしたが、
「男との余韻を楽しみたいから、ごめん。又、大橋駅近くでナンパされれば楽しめるから。わたしは失礼します。」
そう言うと婦警らしく服を着て、出て行った。サーファー男は、
「あいつのマンコ、締りがよかったなあ。」
と思い出すように語ると、さね子は悪戯っぽく、
「そうかあ。締まりのいいマンコがいいのね。じゃ、わたしの試してみる?」
さね子は裸身をベッドの上に置いて、足を大きく広げた。サーファー男は、さね子の濃い目のヘアを見るとすぐに勃起した。
「試すよー、いく。」
男は、さね子の両脚を高く上げて素早く巨大なソーセージを湖の中に沈めた。男は、
「いいなー。閉まり、いいよ。」
「秘儀、マンコ割り。」
と、さね子は小さく呟いた。その途端、塗炭の苦しみを顔に浮かべた男は、
「ああっ、折れるーっ。」
と絶叫すると、小さくなったソーセージをさね子の鋭利のようなマンコから抜き出した。そのまま、男は気絶していた。男のシンボルは、根元から折れたようになって垂れ下がっていた。さね子は立ち上がって、男を見下ろすと、
「これでも手加減してるんだから。有難く思いなさい。」
と宣言して、百合子の方を向くと、
「百合子、出るわよ。」
「服は着ないのですか。」
「それは、着るわよ。」
素早い動きで六月さね子は、洋服を身につけて、
「行くわよ。この男は、あの女にだけイッタけどさ。」
あはは、とさね子は笑った。ホテルを二人が出ると、大橋駅西口近くであの婦警、島木園子がナンパされてベンツに乗り込むのが二人の目に鮮やかに映った。