福岡市東公園のベンチで寝ていた浮浪者は飛行機で香港に運ばれていた。香港の空港で楽団員の楽器の箱の中から係員に別の場所に浮浪者の入った箱は移動させられて空港の関係者だけが出入りする通用口から外に出された。そこへトラックが到着。浮浪者の入った箱は、そのトラックで空港から別の場所へと移動を始めたのだった。
トラックは医療施設のような建物の敷地に入っていくと、その大きな箱はトラックから降ろされ、箱ごと建物の中に数人の医療施設の男たちが運び入れる。病院のような廊下を通って浮浪者の入った箱は一番奥の部屋に入れられた。中国語で「関係者以外立ち入り禁止」と大きくドアに表示されている。その広いドアが開かれると、大形の箱は広い部屋の中央に運ばれて停止した。箱の下部には小さな車輪が幾つも、つけられているので押せば楽に動く。その部屋には白い服を着た医者らしき人物と公務に従事しているような背広の男性が立って、その停止した箱を見ると医者は箱を運んできた男たちに中国語で、
「ありがとう。お疲れ様。今晩は君達専用の女を好きにしていい。金での報酬とは別に高級ホテルに用意しているからね。このホテルに、今晩、行くといい。」
と声を掛けると、それぞれの男にホテルの名刺のようなものを渡した。男たちは、それを受け取ると、
「謝射(ありがとう)、謝謝。」
と口々に礼を云うと部屋を出ていく。白衣の医者は大きな楽器の箱を開けた。中には青いビニールに包まれたものが転がっていた。医者は深々と、その青のビニールに顔を近づけると二か所、ビニールに丸い穴が開いている。大きな青のビニールは少し動いている。
医者がビニールを破り広げると中には日本人の浮浪者らしき男、四十代か、が深く眠っている。中国の公務員風の男、四十代に見える人物も箱に近づき中を見て、
「ほ!これは上物だ。健康そうだし生きたまま臓器を摘出できますな、先生。」
と不気味な笑みを浮かべる。黒縁眼鏡を掛けた医者は、
「一応レントゲン検査や、その他の検査をした後で、この日本人が健康なのを確かめますよ。ここ最近、世界各国の金持ち連中から臓器移植の手術の依頼が世界中に来ています。しかし、新鮮な臓器は簡単に手に入るものでは、ありません。」
と冷徹的確に話す。課長クラスの役人は左手で右手の肘を支え、右手を顎の下に当てると、
「うん、中国国家の独占市場ですよ。まだ、この事は何処の国にもバレてないから。日本は特に日中友好を柱として政治活動を、してくる。これは我々国家からすると、やりやすいのです。随分大昔にコロナウイルス感染が武漢で大流行した時に日本人はマスクを大量に送ってくれました。まさに日本でいうカモネギですよ。小日本人は中国人の心の中まで知らないのです。日本の田中という奴が日中友好を掲げて来た時に、こちら側はシメタ、と思ったんだから。」
医師は、うなずくと、
「それから日本の有名な電機メーカーが我が国を支援したりと、これも鴨葱ですよね、園さん。」
「そうですよ。こちらが有利になることを進んで、してくれた日本人。そもそも、ね、共産党軍が中国国民政府軍に勝てたのも日本の陸軍が国民政府軍を壊滅に近い所まで追い込んでくれたからだね。
今では公園で寝ていて我々の利益になってくれる日本の浮浪者に感謝しようよ。医師の貴方にも高額な手術料を提供できる。まずは腎臓、そして肺、これは片方は切り取っても生きていけるから、まずは、いつも通りに手術してください、シーフ(先生)。」
「トエ(はい)。これで又、フランスの高級ワインが買えるというものです。日本人て公園で寝るような貧乏人も多いでしょう。家電メーカーの奴らも公園のベンチで寝ているかもね、しれません。中国の方が日本人より金持ちが多いのに、うはは、マスクを大昔、送ってくれましたから小日本人達は。」
園と呼ばれた官吏は笑顔で、
「自分たちのマスクもない小日本人がね。欧州から美国、そして日本に感染が増えたのに。あの頃でも我々の方が金持ちだった。貧乏人が多い小日本人が我が国に寄付なんて驚きですよ。ふふ、今は浮浪者を大量に寄付してくれていますから。小日本人は。あ、この浮浪人は冷凍保存した方が、いいのなら先生、今すぐに。」
医師は落ち着いて、
「冷凍したら解凍しないと、いけませんから。目が覚めたら、この小日本人に・・・してやる事は、あるでしょう園さん。」
と話すとニヤリとした。園は思い出したように、
「ああ、そうでした。準備は、こっちでします。日本の浮浪者への小さな投資です。よっし、ちょっと行ってきます。」
「はい、どうぞ。待ってますから。」
園という官吏は部屋を出て行った。
医師は注射器を持ってきて箱の中に寝そべった浮浪者の腕に静脈注射した。十秒もすると浮浪者は目を覚まし、天井を見ると、
「おお、天井がある。おれは公園に寝ていたのになあ。」
と口を開いて話した。
浮浪者は視界に医師の顔が自分を覗き込んでいるのを認めて、
「ん、おや?あんた医者だろう、ここは病院かな、ね?そうだろー、先生。」
中国の医師は優しく微笑み日本語で、
「そうです、ここは病院ですよ。あなたは救急車で運ばれたんです。軽い貧血を起こしていただけなので、今は大丈夫。ただ、すぐに動くのは、やめてください。」
「ああ、そうなんですか。ここは国立病院ですか?」
「国立病院です。」
中国の国立病院である。浮浪者は納得して、
「先生、おれ何ともないよ。動けそうだけど。」
「いえ、だめです。医者のいう事は聴いてください。それに貴方の財布では出来ない事も、ここでは出来るから。」
「ええっ?なんなんでしょう?それ。」
「もうすぐ分かるよ。ああ、園さん、いらっしゃい。」
ドアが開いて官吏の園が戻って来た。その後ろに可動式電動台車が誰も押していないのに園の後ろに、移動してきたらしい。園が室内に立ち止まると、その台車も停止した。その台車の上には一流ホテルのルームサービスのような豪華な食事とバナナ、りんごなどの果物が小山のように載っていた。
園は浮浪者に日本語で、
「やあ、お目覚めですか。元気そうですね、腹は減りませんか?」
とニコニコとして聞く。浮浪者は上半身を起こすと、豪華な食べ物が並んでいる台車を見て、
「あ、腹減ったなー。実は三日も水だけで過ごして公園で寝ていたんです。あなた方が助けてくれたんですね?」
園と医師は、うなずく。浮浪者は安堵したように、
「助かりました。ここは九大病院ですか?」
官吏の園は日本語で、
「いえ違うのですよ。それと似たような場所ですけどね。それより、あそこのソファに座ってください。私が台車を運びます。」
浮浪者は立ち上がるとフラフラっ、とした。よろよろと示された白い長椅子に歩くと腰かける。ふかふかとした座り心地で浮浪者は気持ちよくなった。園が浮浪者の目の前に台車を運んだ。すぐに台車の上の食べ物、果物を手に取って浮浪者は食べられる。赤茶色の長い箸も据えてある。浮浪者は両手を合わせると、
「いただきます。」
それから彼は絶え間なく食べた。中華料理ばかり並んでいる。餃子、シューマイ、中華丼に麻婆豆腐、スーパイコ、ふかひれスープに烏龍茶、りんご、梨、みかん、杏仁豆腐・・・。三日間も空いていた彼の胃袋は貪欲に美味な料理を平らげた。浮浪者は満足げに、
「あー、食べた。食べた。満腹ですよ、うーん眠くなってきました・・。」
と話す。白衣の医師は浮浪者に近づくと、
「食後の眠りは価値が高いですよ。どうぞ眠ってください。」
「はい、それでは・・。」
浮浪者は再び眠る。後ろにいた官吏の園は、いつの間にか右手にハンカチを持っていて、それを浮浪者の鼻に当てる。医師は中国語で、
「それで一日は寝てしまいますよ。起こす時は私が、やります。」
園は満足そうに中国語で、
「それでは腎臓から切り取ろうよ。一つ取っても死なないんだろ。」
「ええ、大丈夫です。ここで手術しますから園さんも、こいつを手術代に乗せるのを手伝ってください。」
二人で話す時は日本語で話す必要はない。園は浮浪者の両肩を医師は浮浪者の両足を持つと、手術台に浮浪者を運んだ。
手慣れた手術で医師は浮浪者の腎臓の一つを切除した。部屋の奥のドアが開いて若い男の看護師が出てくると手袋をした手で医師から浮浪者の腎臓を受け取り、出て来た部屋に引っ込んだ。腎臓を冷凍保存するのだろう。医師は落ち着いて、
「世界には腎移植を希望する人達は数多くいます。日本でも一万人はいる。でも一番高く買ってくれるのは小日本人ではないから。」
官吏の園は、
「そうだね、日本人はケチなのだから仕方ない。欧米の富豪なら幾らでも出すからなあ。我が党の隠れ元箱なんだ、臓器提供は。」
と恐るべきことを平然と中国語で語った。
白衣の医師は園の機嫌を伺うように、
「臓器関係だけでなく私はウイルスの方も詳しいんですが。」
園は苦く笑みを浮かべつつ、
「そっちの方は何十年に一度、という割合で検討されている。我が国は世界に安い労働を提供したのだから多くの人間が細菌で死んだって当たり前のことだ。君には即金が手に入る方で活躍してもらいたい。」
医師は少し心配そうに、
「世界にバレませんか、この臓器売買は。」
園は自信ありげに、
「なーに、マスバカを抑えておけば、いい。美国なんてのも金を掴ませれば何でもするよ。小日本のマスバカは勿論だけど。欧州も貧乏だから簡単。アヘン戦争を仕掛けたイギリスも薄のろ。コロナで大騒ぎした奴らだ。超後進国のイタリアは我々の言うなり。我が国の世界進出は続くよ。小日本は女工作員で、というところかな。」
医師は思い出すように、
「それにしてもコロナの頃の小日本は傑作でしたね。大量にマスクを送ってくれて。」
園は思い出し笑いして、
「我が党の幹部が『日本のみなさんに感謝します』という会見をするのに有名女優を呼んで演技の練習をしたそうだ。本当は小日本人を笑いたいのを演技で感謝するのは難しいらしいよ。その後、コロナは日本にも行っているからな。」
「ま、小日本人は扱いやすいですよ。軍部を解体された後は。自衛隊は侵攻してきませんからね。日本の陸軍は世界一だったが、海の方が弱かったんで我が国も助かったんですよ、ね?園さん。」
「私は軍部じゃないから詳しくは知らないが、神風特攻隊なんて精神異常者の末期症状のようなものだな。あれで終わったんだよ。大日本が小日本になったのさ。」
医師は満足げに、うなずくと、
「小日本人の腎臓の方は看護師が冷凍保存状態で業者に手渡しますよ。もう手渡しているでしょう。浮浪者だったんだから、これで人の為に働いたことになるし、我々が豪華な食事もさせていますから極めて人道的ですよ。」
「そうそう。小日本の電機メーカーにしたって古い昔に、ホテル住まいで運転手付きの生活と高給を与えて技術を教えてもらった。日本にいてもリストラされた人物だったからな。関西の電気メーカーだったと思う。日本のリストラブームも我が国の為になった。すべて小日本人は中国の為に働いてくれている。リストラ促進は日本政府主導でもあったそうだ。国会議員には中国美女を、あてがっておけばいい。中国の美女が間に合わない時は・・。」
そこで園は言葉を止めた。
医師は好奇心旺盛に、
「間に合わない時は?どうしますか。」
園は改めて医師の顔を見て、
「興味津々そうだな。考えてみれば分かると思うけど、日本の芸能プロダクションに手を回して若い美人タレントを議員に回す。芸能事務所に居るような女は百万円でも、すぐ寝てくれるのは多いんだ。
金で大抵の日本人は、どうにでもなる。私も一時期、日本の芸能事務所を担当していたからね。大体、日本の芸能人と言う奴らが欲しいものは、たった一つ、金だけだよ。それを小日本国民は憧れたり、好きだったりするからな。それをさ、そういう奴らを民間人だけなら、ともかく公務員とかなんかも、役所なんか他は警察でさえポスターに使っているんだから。」
医師は愉快そうに、
「はっははははは。程度の低い奴らですね。今や収入は、とうの昔に我が国の方が小日本より高いのに。相変わらず小日本の芸能とかいう、あの馬鹿どもを?」
「そうだ、使っている。一億は皆、白痴の小日本人。勉強だって我が国の方が若者も、しているし本も読んでいる。日本は年寄りまでが漫画。圧倒的に我が国の勝ちだよ。手ごわいのは、でも、やはり自衛隊だろう。」
「うーむ。そうですね。でも戦争の時代は終わっているのでは?」
「まあ、そうだろうけど。自衛隊とは過去に交流もしているから、いくらか盗み出せたのかもしれない。その辺は軍部の経験がないから分からないな。私はダークサイドの仕事が多いけど国家に奉仕しているのは変わりないよ。日本の方で過去に中国を親戚のように思ってなんて、あったろう?」
「ありましたねー、何党だったか忘れましたけど。マスクで、でしたか。」
「ああ、そうだ、マスク、マスクをねー。それで一帯一路でなくて、日本には親戚一路にしようかなんて笑い話でなく、実行可能だよ。」
「本当に小日本人なんて自衛官以外は危機意識を持ってないようですね。それだけに我が国としても、やりやすいんじゃないですか、園さん。」
「やりやすいなー。日中友好なんて我々の為に、あるようなものだ。田中なんて田舎出のオッサンは操りやすかった。あの当時の我が国の指導部は色紙にサインして日本から来た議員に手渡したんだよ。わたしたちのファンなんでしょ、という意味さ。」
「なーるほど。昔から日本人は孔子が好きですもんね。論語なんてものに敬意を払っていた。松下電器産業なんていう会社は朝礼で論語の一節を声を出して社員一同、唱えていたんだそうです。」
園は初耳とばかりに、
「そうか。まさに、それは中国の為に、その松下とやらいう会社が働きますと毎朝、宣言しているようなものだ。」
「しかも、その松下という会社は日本の電機メーカーとしてはエリートだったそうです。」
「おやおや、小日本の電機メーカーなんて、ちょろいわ。その松下の創業者は中国の崇拝者だったんだな、いや、これは、いい。他にも、あるんだろ?孔子のファン、孫子のファン、老子、孟子、荘子、墨子、荀子、色々、いるよ。あ、それでね、日本の大学の教員に中国の崇拝者が多い。老荘思想なんて我々でも知らなくていいものを一生懸命やっているのが、いる。それに日本人は漢字を書けるほど尊敬されやすいらしいな。漢字なんて我々には平仮名は、ないからな。小日本人と我々の、どっちが漢字を多く知っているか、だよ。」
医師は誇らしげに白衣の胸を張り、
「それは、もう我々ですよ。もともと小日本人は遣唐使、遣隋使などを我が国に送っていましたからね。」
園も誇らしそうに、
「日本の仏教は中国仏教さ。それに経文は全部、漢字だからな。」
「小日本の東京にも中国崇拝者は沢山いる。日本の大学の学長は全て中国崇拝者として我々が最も操りやすい連中だ。こいつらに共産思想、修正共産思想ではない古い共産思想を吹き込んだので、大学出の多数を古い共産思想の持ち主にした。それで小日本は失われた何十年もの経済停滞があり、我が国は修正共産思想により大躍進した。美国なんて問題にもならない程にな。」
医師は目を細めると、
「小日本の大学出が古い共産思想では金は要らない、て事になり経済発展なんて、ありえません。それで我が国は小日本より経済大国になったんです。ダッチワイフ、というかラブドールでさえ小日本のラブドールメーカーより先に人工知能AIをつけて販売しました。
もはや、そういう産業でさえ小日本を見下せます。」
園はニヤニヤすると、
「ラブドールも我が国の方が進歩し始めたね。小日本の国会議員はハニートラップか大金で簡単に操れるから、そうそう、私もマカオに別荘を建てられたのも小日本の国会議員を操作したからなんだよ。田舎者だし、そいつはね、でも小日本の国会議員なんて大抵は田舎者だろ。女と金をやれば、何でもするよ。中国崇拝者にも、すぐになる。もともと孔子様なんてのも多いしな、小日本人には。」
「水戸拷問でしたっけ?あれは・・・。」
園は、それを正して、
「水戸黄門だろう、それは。」
「ええ、印籠を出すと平伏するんです、あれは。我々なら孔子とか出せば平伏しますよね、一部の日本人は。」
「するよ、特に大学の学長あたりでも。小日本の大学のな。」
「小日本の大学出は御しやすし、ですか。」
「まあ、そうだろう。でも防衛大学は、そうではない。が、君は医師だし気にするな。」
「気に島専太郎、でしょう。小日本風に云うと。」
「そういう事だ。界深淵君、臓器摘出の医療に励みたまえ。」
「はい、園凱旋さん。励みます。」
中国人留学生の李芽が女工作員であることは本池釣次郎によって明らかにされたが、彼女は本当に日本の学校に行っているのか。というのは気になるところだ。一日中、働いているかもしれない。釣次郎が中国人留学生・叛英果に変装して李芽と知り合ったコンビニでは李芽は一日中、働いてはいない。その時間帯以外では別の場所でも働けるだろう。そのコンビニの店主はアルバイトに来た李芽に、
「今日は叛君は休み、というか、しばらく休むそうだ。丁度、別の留学生がウチにアルバイト希望で志望して来てくれたよ。やっぱり、君と同じ中国からの留学生で上海から来た刻クンだ。おーい、刻クーン。」
広めの控室の奥の方に座っていた中国人男性が立ち上がると店主と李芽の近くに歩いてきた。良く日焼けした顔で、日本に初めて来たような顔をしている。店主は彼を右手で示すと、
「刻クンだ。刻クン、こちらは李芽さん。同じ国だから仲良く、やれるよね、うん、仲良くやってほしい。刻クンは別のコンビニで働いていたことがあるそうだけどウチと競合している他社のコンビニだから見習のやり直し、みたいになるけど李さん、よろしく頼むよ。」
と励ます。李芽は気軽に刻という留学生に近づくと、
「よろしくね、刻さん。」
と呼びかける。刻は浅黒い顔を李芽に向けて、
「よろしく、お願いをします。」
と変な日本語で答えた。店の裏側で飲料水を並べて入れたり、手書きで商品説明を書いたりする研修を李芽は刻にしながら、前に居た叛とどこか似たとこがあると感じていた。それで休憩時間に向かい合って座ると李芽は刻に、
「前に叛さんっていう留学生がいたけど、なんか雰囲気が、よく似ているわね。叛さんも中国からの留学生。わたしも、そうだけど。刻さん、叛さんっていう人、知りませんか?」
刻は首をかしげると、
「叛さん?知りませんよ。僕の言っている学校には叛という名前の人は、いない。」
李芽は、
「そうだろうね。わたしの学校にも叛さんは、いないもの。なんか貴方にはAV男優の雰囲気があるわ。気のせいかしら。」
「AVには東京で出た事、あります。顔に目線を入れてもらいましたから分からないと思っていましたけど、李さんAVとか見るんですか。」
「ええ、少しよ。それもパソコンから見るからレンタルの店に行かなくていい。女性で若くてAVなんて借りにくいもの。それにレンタルの店なんて少ないでしょ。大昔のコロナウイルスで店舗自粛とか、そうしなくても人が来ないとかで大半が潰れたそうよ、日本でも。スマホで見たりするほどマニアじゃないもの。でも・・・。」
刻は訝し気に李芽を見て、
「でも・・・?デモってデモストライキのデモですか。」
目を伏せた李芽は再び、目を上げると瞳を輝かせて、
「うちのオーナーさん、実は昔、AVの監督を東京で、していたんですって。だからメーカーとかレーベルとか、その業界のつながりを知っていて何処に出せば売れるかとか知っているそう。AVなんてスマホで撮影して編集して出来上がりに出来るらしいわ。それでオーナーさんもコンビニは人に任せて他の場所でAV作ってるそうよ。刻さんの雰囲気、AV向きだと思うのね。」
と話すと李芽は刻の顔から上半身、股間、足までジロジロと見た。