魔法で性交したら4 お試し

竹島を知らない人が、いなくなるように
 その老人たちは、まだ喧々諤々というように話していたが、町田に着いたので、浜野と那美子は電車を降りた。竹島が日本の領土であるという事は、ネットでも最近盛んなので、二人はその事を知っていた、とはいえ、自分たちでは、どうしようもないと思うしかなかった。それで那美子は
「これからの若い人達に、しっかり竹島が日本のものであり、韓国に不法占拠されている事を伝えていくしか、ないのかしら。」
「うーむ。大きな人の波が日本を変えるんだろう。竹島なんて知らない人も、多かったわけだから。あー、絵にしても、いいかもしれんね。」
「わたしもヨガの生徒や、カレーの店の人達に伝えるわ。あ、もう、お別れの場所よ。」
JR町田駅前の立体歩道橋のところで、下りる場所は二人はそれぞれ、違っている。浜野は右手を上げて、
「じゃあ、また会おうよ。」
那美子も、同じように右手を上げて、
「またねぇ。携帯で、け、遺体が。なんて事は、もう、ないわよ。」
暗い青の夜空は、日本の悲しみを表しているようだ、竹島を取り戻したい、そう日本列島が思っているように。那美子はスイスイと人混みの中に見えなくなっていった。浜野は少し寂しさを感じた。そういえば異性の知り合いは最近、与我那美子だけ、みたいだからだ。あの写真を撮ってくれた女性とは、会っていないから縁もないのだろう。
 
ミンクレディ
部屋に帰った浜野の楽しみはパソコンで動画を見る事だった。動画共有サイトを、よく見ている。その他にも動画を無料で見れるところもあるが、動画共有サイトが、やはり一番いい。チャンネル数も一番多いし、プロ、アマが関係ないのも、いいのだった。そんな中、イギリスのスーザン・ボイルの日本版かといえる歌手が登場している。彼女達は二人でグループ名をミンクレディとしている。歳も五十近いが健康食品のバナーに出てくる女性のように若々しい。ミニスカートで踊りながら歌う、その二人は人気絶頂。最初に登場する時はミンクのコートを羽織っているが、歌う前に、それを脱ぐとビキニ風の衣装で、ミニスカートになる。そこで挨拶して、
「ユーです。」「カイです。」
「二人合わせてユー、」「カイ。」
彼女達は静岡の出身で信用組合に勤めているが、子供の頃に見たピンクレディが忘れられなくて、この度、結成したらしい。デビュー曲となったのが「けったいな警部」次が、信組の職員らしい「ユーオウ」だ。YOU OWEのOWEは金銭の借りがあるという意味がある。過去に借金の経験がある人に、特に受けているらしい。結構、反響が大きいので某インスタント食品メーカーも自社のCMにミンクレディを使おう、という話も進んでいるという。「ポスター」という曲も発表され、子供たちにも大人気だ。まさにパソコンの前が、お茶の間というものになりつつある、きっかけは、このミンクレディが最初だと、いってもいい。
 那美子の容貌を要望?
浜野はミンクレディの「ユーオウ」を聞きながら、そういえば、那美子にはアイスクリーム位では、返せていない借りが、あるような気も、しだした。頭の中に、ぼんやりと浮かぶ那美子の顔は、最近、次第にOL風でも、なくなっていた。
絵を学んでいるだけあって、浜野は明確に思い描けるが、彼女の顔は日本人離れしている。というのも、父親はインド人だからであるからだが、それが昔、子供の遊びであった「インド人の黒んぼ」というのではなく、色も白いし、では何故かというと、那美子の父親はカースト制度の中ではバラモンであり、祖先はゲルマン人、つまり外国人なのだ。それで那美子の顔も、外国人女性の血が半分入っているような顔立ちとなっている。最初に見たときよりも、次第に外国人女性のような顔になってきている、と浜野は思っていた。日本でも人気のあるタレントなどは、よく外国人の血が入っている事もある。四分の一位が人気が出やすいようだ。で、那美子はハーフだから、かなり日本人離れしてくる。そうなると、取り付きにくい雰囲気も出てきやすいのである。那美子の父親は、日本での金儲けの方をインドのバラモンより、いいものと思い日本に帰化も予定している。彼女のヨガへの傾倒は、父親という精神的背景が、あるのは、言うまでもないだろう。あの心霊写真の頃には、まだ、今より日本人女性らしい顔では、あったのだ。那美子の父親は北インドの出身で、北インドから来たインド人なのですよ。アーリヤ人ということに、なります。
ユナの白昼夢
 人生とは、夢のようなもの、かもしれない。もし、この人生から覚めることがあったら、その時、人は、この世には、いないのだろう。人生が夢だったら、あなたは真面目に生きる気が、するだろうか。出世したい、金儲けがしたい、そんな気持ちの中で生きている事が実は夢だったとしたら。醒めた時、それは多分死後の世界でだろうけど、なんたる茶番劇であったのかと思い出す事も、あるだろう。鳥越敦司の小説でも読んでいた方が、よかったと思う人もいるかも、しれないね。そんなわけで、思うように、ならない人生で人は夢を見る。それが悪夢だったりすると、どうしようもないわけだが、悪夢を見るという事は予知夢であるか、そうでないなら、その人は本当は、その悪夢のような人生を望んでいるのかもしれない。と、すると、ものすごいマゾヒストと思われるのだが、そういう人も少なくないのかもしれない。人生が夢なら預金通帳の残高も夢の又、夢だ。ユナも、お小遣いは、すごくもらっているけれど、思うようには、いかないのが浜野という男なのだ。それで、日曜の午後に自室でウトウトとしていると、白昼夢を見始めた。それが美少女ユナの章に描かれているものなのだが、浜野がユナの父親の田宮真一郎と、会えると希望に輝いた眼を、したところから先のところを見ようとすると、
「その人のねえ、父親は本当は田宮真一郎じゃないのよ。」
と浜野の後ろに立った若い女が言った。剣上エリだ。浜野は、後ろを振り向くと、
「誰ですか、あなたは。」
「わたし?剣上エリって、いうのです。田宮真一郎の本当の娘は、わ・た・し・なのです。」
ユナは思った。いやーーーーーーーーーーっ。と、そこで眼が覚めたのだ。ああ、そうか。まだ、わたし、あの青年に父の事も言っていなかったわね。
 
福岡へ出張
 銀座の画廊、「金月」は、ますます盛況と、なってきたので人手を必要としたが、それは、すぐに見つかった。早手三五郎という町田の美術大学の学生を、時々、金月に絵を出してくれる早手三四郎が紹介してくれたのだ。
「私の甥ですけど、使えると思いますよ。」
と三四郎は電話で話していた。とりあえず、土日祝日は長時間、平日は夕方から、というスケジュールで交通費支給、夕食費別途支給という待遇で時給二千円で、話は決まった。彼なりの知識を顧客に披露する事も条件ではある。
「ま、学生ですけど美大ですから、ある程度、説明は、できると思いますよ。」
早手三五郎はニヤニヤしながら、控え室で説明した。
「そうね、それで、お願いします。では、美野さん、福岡へ出張を、お願いしますわね。」
と画廊の女経営者、緑川鈴代に命じられて美野は、
「ええ、喜んで。何せ故郷ですから。全部、福岡は庭みたいなもんですよ。いい場所に店を出せるようにします。」
と請け負うとニンマリとした。それから、思い出したように、
「あ、私の留守中は、うちのセガレでも、よかったですよ、使ってもらえれば。」
鈴代は、ニコニコとして、
「今回は、もう、この早手三五郎君に、お願いしましたので、この次にでも、お願いしますわ。」
 
上福
 上京という言葉は、今では東京に行く言葉として知られているわけだが、本来は京都に行く場合を上京というのでは、ないだろうか。正確には上東京と言うべきなのではないかと思われるのだが、そうでないと京都に行く場合は上京という言葉は使えなくなるようにも思うのだが。美野一生は時折、福岡に帰る事もあったが、彼の実家は早良区なので、あまり長くいたくはない気持ちを感じて、いつもいた。早良区は埋立地が観光スポットとはいえ、そのかなり近くには拘置所も、あったりして、あまりよい場所とは、いえないのである。今回、美野は出張費を、たんまりと貰っているため、博多駅近くのビジネスホテルに泊まって、金月の福岡店選びに奔走しようと思っている。新幹線が関門海峡を越えた時、九州に入ったわけだが、何と言っても感じられるのは、水に囲まれた島、という感じを美野も感じつつ、北九州の小倉を過ぎて、いよいよ博多駅に到着しても、東京の人混みに比べれば少ない、と思うものだが、ホテルに泊まった、あくる日に天神に行くとドーンという人の多さを感じるのである。博多駅近辺はショッピング街では、ないので人はそんなに多くはいない。博多駅近辺はオフィス街なのだ。買い物は天神で、というのが相場となっているために、ここ天神一点に多くの買い物客は集まるのである。
(これは、やっぱり金月の福岡店は、天神周辺に、せな、いかんなあ。)
美野は天神駅から降りて、そう思った。さて、上福という言葉にしても、福井とか、福島などが、あるので、本当は上福岡とすべきかもしれないが、そうすると埼玉県にある上福岡という地名がクローズアップされるために、使いにくく、なるものなのだ。
 
 福岡市の埋め立て地、近辺
美野は福岡市の西の埋め立て地、近辺をタクシーで走ってみたのだ。運転手は、
「お客さん、東京の人ですねー。」
「ああ、でも出身は福岡市ですよ。」
道路からは韓国風の建築物が見えるのは韓国領事館であり、警察官が数人警備に立っている。
美野が見たのは、風雲、急を告げつつある国の領事館である。
「野球のドーム球場まで、行きますか。」
「いや、百道浜(ももちはま)へ、行ってくれないか。」
「ああ、わかりました。そんなに珍しいところじゃ、ありませんよ。」
タクシーは橋を渡り、百道浜へ走ったが、企業のビルと公団の団地ばかりで、美術館と図書館が、ある以外は福岡タワーが、そびえている。ドーム球場のあるところは、地行浜(じぎょうはま)というところで百道浜と同じく埋立地であるが、樋井川(ひいがわ)という、小さな川で別れている。
 暗号名「タケシマノキムチツブセ」
 美野一生が福岡に出張している時、日韓関係は厚い雲に覆われ始めたようだ。ついに韓国外相までが日本に侮蔑的な言辞を口にした。野田首相としては野田ラインを主張する気もなく、ただ報復外交を展開している有様だが、海上自衛隊では竹島を洋上から攻撃する際の暗号として「タケシマノキムチツブセ」というものを考えているという噂もあり、冗談であるらしいのだが、憲法改正しなければ動けないとしたら情けない話である。この暗号名はキムチが竹島にある韓国の施設を指すものであるだろう。大日本帝国なら、すぐに攻撃態勢に入れたはずなのに、現在は、である。それなりに緊張感も少しでてきた日韓関係で、福岡の韓国領事館も少しは緊張している中、美野は美術一辺倒で政治に興味が無い、ノー天気な人物である。福岡でも、キムチの不買運動が起こっているわけでもないようだが。こういう時に福岡のスーパーでビビンバ丼なるものを売っていたが、日韓情勢を知らないのか、非国民なのか、詳しい事は、そういうものを出しているスーパーの人間を問詰しなければ、わからないのではあろう。
又、陸上自衛隊の基地は福岡市にないために、美野に限らず、ノー天気なのが、福岡市の人間では、あるのだろう。海上自衛隊では、もしかしたら、竹島攻撃作戦の計画に余念が無いのかもしれないが、それは遠い福岡市には伝わらないものだろう。福岡市には海上自衛隊の基地も、ないのであるから。
 
反韓に反感はない
 結局、日韓は友好など持てる国では、ない事は歴史が既に証明している。そういう中で、在日韓国人が生きる道とは、ある特定の職業に限られたのだろう。福岡市在住の薔薇の星メンバー、文・学男も職業を転々とした。日本人の父親が母と離婚しても、彼ら母子は日本国籍だったにも関わらず、学男の中学の友人が家に遊びに来た時、母親が韓国の民族衣装チマ・チョゴリを来て、その友人に菓子とジュースを持って来た為、学校で「文は朝鮮人だ。」という言葉が伝播されていったのだった。その時、文は、いわれもない屈辱感を持ったのだが、それは、(朝鮮人の何が悪いのか)というものではあった。が、しかし。彼は歴史関係を知るにつれて、日本人が韓国人を忌み嫌う理由も、わかったのだ。それは、まず第一に日本の伊藤博文を暗殺した事である。しかも、その行為を国の英雄的な行為として式典まで現在にいたるも続けている事など、ハーフである彼にも許しておけなく感じられるものもある。それで文はマンションの居宅で母に、
「お母さん。ぼくは日本人として生きたいんだ。」
「ああ、そうだよ。おまえも母さんも、日本人さ。」
「じゃあ、ぼくが反韓でも、いいのか。」
「反韓で生きた方が、得のようだね。母さんもチマ・チョゴリは捨てて、しまったよ。キムチも食べるの、やめた。」
学男は笑うと、
「そういえば、最近は辛子明太だね、母さん。」
「そう。わたしたち親子は、福岡の人間に、ならんと、いかんとよ。」
「そうたい。ぼくも韓国は行った事、ないけん、ぼくは別に福岡の人間と、思いよーよ。」
「明太の他にも、「おきゅうと」も食べようね。」
「ああ、あれは、うまかー。」
 
最近は細菌兵器は作られていない
  インターネットにあまり接しなかった美野も、ホテルで退屈したから、何と、そのビジネスホテルは部屋にパソコンが備え付けてあったので、見てみると、ニュースでは尖閣問題が大きく取り上げられている。現在は個人所有の島では、あるけれど、日本人の所有なら日本の領土となるのだ。それを香港あたりの金の亡者が海底に眠っているかもしれない石油資源欲しさに、ワーワー騒ぎ始めているのだ。というのは、そういう事に疎い美野でも、わかった。が、大真面目に日中海上戦争など、アメリカの方でも考えているに到っては事、穏やかではない。そこでもし日中戦争が再び起こってもアメリカはベトナムで使ったであろう細菌兵器は使わないのでは、という事だ。
「最近は、細菌兵器の開発は、していません。」
とアメリカ国防省の話が、あったかもしれない。それにしても福岡の日没は遅い。七時頃まで明るい八月だ。動画共有サイトにアクセスすると、おすすめ動画として、ミンクレディの動画が並んでいた。(へえー、最近はミンクレディか。昔はピンクレディだったけど。)閲覧回数も、すでに50万回は突破している。「ユーオウ」の動画が、今のところ、一番見られているようだ。借金経験のある人も多いせい、かもしれない。
 イージス艦 「あたご」 舞鶴地方隊より出航
  竹島に向けてイージス艦 「あたご」が京都の舞鶴より竹島に出航した。この一隻で竹島の韓国人を追い払おう、というわけだ。インターネットのニュースでは憲法が改正されて、海上自衛隊の発動が可能となった、とアナウンサーが発言しているのを、美野は、ぼんやりと聴いていた。それで美野は海上自衛隊のホームページを検索して見ると、なんと・・・
日本の海上自衛隊の艦船の数は、韓国よりも少ないのだ。
韓国 190隻18.0万t
に対して
日本 149隻44.9万t
しか、ないのだ。これでは単純に考えると、勝てそうもない、という事になる。
戦闘用の航空機に、したところで
韓国 530機に対して
日本 430機しかない。これでは、もしかしたら・・・という事を、美野でも考えないでも、なかった。韓国の大統領の態度の理由は、ここにあるのではないか。日本の軍備が世界第三位というのは、いつの頃の話なのだろうか。これでは日本政府が、弱腰外交を続けるのも当たり前だ、と美野は思った。軍事大国日本は、もはや遠い夢のような昔の話ではないか。戦争放棄しているからといって、このお粗末さは、なんだ。そして日本人の多くは平和ボケ、海上自衛隊の事など考えもしない日々を送っている。
 
日本の海軍力は、数の上では韓国、中国より下 なめられるのは当たり前
  2012年8月24日、美野が見ている海上自衛隊のホームページには、日本とその周辺諸国の軍事力が、数の上だけではあるが載っている。それによると韓国、中国より艦船の数が少ないのは、もちろんの事だが、なんと台湾よりも少ないのには仰天した。こんな馬鹿な・・・おれは美術一筋に生きてきたけど、こんな情けない軍事力の国に、生きてきたなんて・・・安保反対なんて、そんな事が成立していれば、もっと早く日本は周辺諸国の、いずれかにやられたんだろうな。これは日米安保のアメリカの軍事力のおかげ、ではないんだろうか。ただ、おれは個人的にも強くなりたい。どうにかしたい。それは、あの画廊「金月」の経営者、緑川鈴代のためでもあるんだ。でも、どうすりゃいいのか。それにイージス艦 「あたご」だけで大丈夫なのか・・・・と思った時、美野一生は眼を醒ました。夢だったのだ、そもそも竹島問題から海上自衛隊のホームページを見ているうちに眠ってしまったようだ。現実は相変わらずの弱腰外交の日本政府の動きや口先だけのネットの掲示板への書き込みが続いていた。でも、海上自衛隊のホームページを見ると、夢で見たのと同じ軍事力が堂々と載っている。これを知ったら先手攻撃は、しかけられないと一般の人間なら考えるだろうな、おれでも、そうだけど、と美野は思う。
 
弱軍備、日本 ついに竹島から対馬に韓国の手が 平和憲法はそんなに大事なのか 
  美野にとっては、遠い、といっても九州の福岡からだが、竹島より対馬の方が心配になる。で竹島に味を占めた韓国は、次の標的として対馬を狙うんじゃないかと思った。それにしても今年あたり、つまり2012年8月24日あたりに、はっきりしてきた事だ、今までの日本は、この事を、ほとんど国民に知らせようとは、してこなかった。まさか数の上で軍備の力が韓国より劣っていたなんて・・・それは美術一筋の美野一生にとっても、とっても衝撃だったのだ。(学校教育も、なっとらん。今は、どうかしらんけど。)おれも知らんかった。こんなに弱い国だったとは・・・・。美野の頭の中に対馬に韓国旗を翻す若者の姿が思い描かれた。そう、ロンドン・オリンピックでもやった韓国人選手がいたが。それにしても最近の韓流ブームとは何だったのだろう。自国の領土を踏みにじられて、その無法三昧の国の俳優に血道をあげた日本の、ある人々には美野は腹が立って、しょうがなかった。そんなに韓国がいいなら、韓国に消えうせろ、日本の〇〇様ばばあ。そう、美野は思うと、握りこぶしを、ぐいぐいと握り締めた。韓流スターの名を連呼する、ばばあの顎の骨をへし折って、歯を全部、叩き落してくれる、そう思うと美野は博多の町に出て、韓流ばばあ狩り、をしたくなったのだ。
 国民の生活より国益が第一
  全く、と美野は考える。富国強兵は、いつの時代も大事では、ないか、と。自国の軍備力なしに国の発展など、ない。あの憲法など日本が独立国家として認められた時から、不用だったのだ。それを怠けて何十年、ついに隣国に見下されるように、なっていたとは。思うに、韓国のドラマも軍備を数の上では日本より持っている国のドラマだ。これに憧れを持った韓流ばばあ、も無知すぎた。とはいえ、力強いものに魅せられるのは人の常だろう。で、竹島を知った韓流ばばあ、は意見を変えないなら日本人ではない。その辺も知った上で、韓流ばばあ狩り、をしなければならないだろう。少なくとも、その上で韓流ばばあ狩りをするのなら愛国精神の発露である。日本女性なら男子の意見に従うべきだ。それが嫌なら韓国へ行け。まあ、美野の周りには韓流ファンもいないし、画廊「金月」も韓国人の絵はない。緑川鈴代店主も韓国に、ついては何も言った事は、なかった。行った事も、なかったのだろう。美野も韓国には行った事が、ないが、まずそうな韓国料理を食べたいとは思わないし、それも韓国に行かない理由かもしれない。
(おれも五十過ぎだが、日本のために何か、したい。そうしないと、戦没者の英霊は、泣きよるたい。)
美野一生は、日本の現状に男泣きに涙をにじませた。
 石原莞爾中将の霊を呼び出す
  オカルト団体であった「薔薇の星」も、今は宗教法人として認可され、町田市、原町田に拠点を構えているのだが、前と違ってエジプト人、ムハンマド・ガリガーリが入団して、ほどなく代表になるべく、活動中、というところだ。彼はデーモンという精霊を使って、故人の霊を呼びだす事に成功した。領土問題が取り沙汰される日本において、薔薇の星でも、こういう日本の事を探求しようという事になったが、絵山は、
「昔、日本には天才的ともいわれた、陸軍の英才がいました。彼の名前は石原莞爾です。第二次大戦中のサイパンを要塞化するなど、卓抜な見識を持ちながらも、上司である東條英機と折りが合わずに最終的には予備役に、させられた人ですが、この人は満州事変の当初、破竹の勢いで帝国陸軍を進撃させた素晴らしい方です。この石原莞爾中将の霊を、ムハンマド君に呼び出してもらいたいのですが。」
ムハンマド・ガリガーリはニヤリとした。それから、
「おー、やりますよ。簡単です。」
と気軽に、うなずくと、頭にターバンを巻いたエジプトの衣装で、胡坐をかいて床に座ると、手にした香料に火をつけて、小さな炉に投げ込んだ。エキゾチックな香りが漂う。シャンメルも好奇の眼差しで、それを見ている。
「おー、来ました。デーモンに連れられてミスター、いえ、ジェネラル石原が。」
ガリガーリは、白い歯を見せた。
 自衛隊の軍備拡大こそ内需の拡大だ
 目の前の空間を見上げるようにして、ガリガーリは絵山の方を向くと、
「今、いらっしゃっていますよ。質問は、ないですか。」
と片目を、つぶって尋ねる。絵山は、うなずくと、
「石原中将。今の日本の自衛隊は、どんなものでしょう。」
ガリガーリは何かを聞くように耳を傾けている。それから、
「すべてが中途半端だ、と仰っています。」
「やはり、そうでしたか。周辺諸国に比べれば、どうですか。」
「それは勝率五割から六割、だそうです。」
「あ、ガリガーリ君。中将の、お言葉だけで、いいけど。だそうです、は言わなくて、いい。」
「そうします。はい。」
「このまま行けば、日本は軍事的に危ないのでしょうか。」
「その可能性は、ある。なんとなれば、陸軍の数の不足である。いかに精鋭たる人間でも、数には負ける。」
下手な鉄砲も数打てば当たる、という事だろう。最短の結論は日本は軍備を極端に、していない。これは軍需産業の成長という事をも阻害しているのだ。アメリカが戦争に、ちょくちょく行くのは世界の平和のためではない。まあ、表向きは世界の警察のように主張するかもしれないが、実は自国の軍需産業を栄えさせるためなのだ。戦争の動機は、そういうものが、あるので、要は経済が関係している。今の日本の株価などアメリカに比べて、どうだ。アメリカの株には紛れもなく軍需産業の陰がチラついている。そこに全世界の投資家は魅力を感じるのである。
 日本の若者の失業率の霊的原因はこれだ
  なるほど、と絵山も思うのだった。既に日本は平和憲法を盾にしているつもりか、陸上の軍備など無いに等しいような気さえする。海上自衛隊が、もし負けたら・・・と思うと絵山は、背筋が粟立つ思いをした。どうにか、これまで他国の侵攻が第二次世界大戦後になかったから・・・いや、ある。それは竹島に、すでに侵攻されている状態だ。それでも、自衛隊は動かないのである。これをきっかけに、韓国と戦争するのが、いやだ、としか、いいようがない。韓国の大統領の最近のパフォーマンスは日本と戦争をしたいという意思表示なのだ。それを文書で抗議するなど物笑いの種であろう。絵山は、再び尋ねる。
「それでは、軍備増強が必要なのですね。」
「然り。それは最も急を要する。私は霊界にいるのだが、私と同じところに多数の帝国陸軍の軍人は、いて、日本に又、生まれ変わる予定なのだが、すでに今の時代にも元帝国陸軍の軍人は生まれ変わっておるのだ。彼らの望みは祖国を守る軍人になる事が、生きる第一の道だ。しかるに、現在の日本の陸上自衛隊の定員数は、それをはるかに下回るものである。今、平成24年8月27日現在でも、完全失業者の数は288万人である。この中の男子の、ほとんどは帝国陸軍の軍人の生まれ変わりであるから、他の職業を魂は望んでいないのだ。」
 自衛隊の軍備拡大こそ、雇用の創出だ
 その場の一同は、大いに共感した。こと日本の失業問題は、かような霊的背景が原因となっている。思えば明治より富国強兵に勤め、相当な数の帝国軍人を擁していた日本は、二次大戦後、経済一筋のセールスマンになるべく勤めてきたのであるが、そうはいかない霊的事情もある。又、明治以前は武士の時代、このような人達が、もっとも望む職業は軍人であろう。軍人たるべき人達に商業をやるように勧めるのは酷というものである。シャンメルは、
「なるほど、外国では日本の武士の時代は、なかったものね。日本は特殊ですね。石原さんは、外国は、お好きですか。」
「ああ、外国の戦法は役に立ちましたよ。日本は今も外国を手本にすべき事は、多々あるようですね。」
絵山は、
「そういえば、ドイツが世界一の経常黒字国となっていました。日本は最近、どうしようもないです。」
「どんなに不景気の時代でも、金持ちは、いるものだよ。だから高級車やBMWは売れるわけだな。」
「日本も見習わないと、いけませんね。」
「その通りだな。結局、わしは軍事の専門家だが経済は知らんので、この辺で、よいかな。」
「はい。ありがとうございました。」
ムハンマド・ガリガーリの表情も、厳しいものから穏やかな顔へ戻った。それから笑顔で、
「石原莞爾中将は、天国に戻られましたよ。」
 
外国の消費税は19パーセント
 シャンメルは、穏やかな顔で、
「わたしには、戦争の事など、わかりませんが、日本の経済不振は消費税の低さにあります、と思いますよ。」
と語った。絵山の顔は呆然とした後で、
「やはり、日本人は間違っているのは軍備だけではない、という事ですか。」
「エエ、そうですね。日本も、ちゃんと税金は取っていましたけど、それらの、もろもろの税を獲るのを、やめて消費税にしたのに、それは、いつまでも低いままでは税金は取れません。欧州危機というのはギリシャの破綻の予想ですが、ドイツのように収益の上げられる国に破綻は無いわけですからね。そのドイツは消費税は今の日本より高くても国民は誰も何も言わないのです。日本の人の中には、しつこく消費税を上げるのを反対している人達もいるようですが、国が滅んだら日本人も、いなくなります。つまり、亡国への道を進みたい人達が多い、というわけでしょう。」
「なるほど、軍備の弱さと税金の取れない国では、いつか簡単に滅びそうですね。」
シャンメルは、うなずくと、
「そう、ドイツ人は愛国精神が強く、今の日本人には、あまりない人が多い、という事に、なりますか。」
ムハンマド・ガリガーリが右手を上げると、
「エジプトにも消費税は、ありましたし、日本より高かったです。でも、消費税安いから、日本に来たのでは、ないですよ。」
 ドイツは戦争を放棄していない
 シャンメルは小さく笑うと、
「ガリガーリさんが、そういう人でない事は、わかっています。まあ、ジョークでしたでしょうけど。さっきの石原莞爾さんの、お話を聞いて思い出すのは、ドイツでは戦争を放棄していない、という事です。侵略は、しない、としていますが。」
絵山は、憤然として、
「それでは、日本は、いつまで、あの腰抜け第九条とかを持ち続けるつもりなのか、と思いますね。それは日本人の精神の弱体化にもつながり、ひいては経済力にも影響を及ぼすと思います。最近、はやりの言葉に草食系男子なるものが、ありますけど、ぼくは、むしろ草食系国家と言いたいくらいです。」
シャンメルは決然として、
「ホルス神の恩寵を受けるためにも、力強い国づくりが必要です。この国の背景には神道が、あるけれども、その神道が今の戦争放棄憲法を支持するものとするならば、それは、なんという情けないもの、なのでしょうかね。」
「そうですね。そういえば、エジプトも軍事力の無さで・・・。」
と絵山は言いながら、ガリガーリを見ると、彼は、
「ああ、そうです。クレオパトラで終わりです。情けないですが・・・。ホルス神への信仰も、なくなっていき、ローマとの共存だけを考えていたから。何か今の日本みたいですね・・・アメリカとの関係のためには・・というものですか。そのうち女帝なんかになったら日本もエジプトと同じですよ。」
シャンメルは毅然として、
「だから、まず軍備増強は必要なのです。消費税増税も、そのために行われるべきでしょう。二次大戦下の同盟国であったドイツ国の国民としては日本にも又、本当の復活を遂げて欲しいのではないか、と。いや、どうもドイツは日本を冷たい目で見ている、という感じがします。今は、イギリス、フランス、オーストラリア、そしてカナダの人たちの方が日本には暖かいようですけど。カナダに移住希望の日本の富裕な人たちも、います。無論、アメリカもね。ホルス神様は、ドイツより日本に注目されて、おられるのですから。」
 油山の山中で
  美野一生は天神西通りに一つの店舗の空室が、あったのを見つけて交渉したところ、話は決まり、そこに画廊「金月」の支店を出す事に決めようと携帯電話で緑川鈴代に連絡すると、
「美野さんの故郷ですもの。お任せするわ。」
と言われたので、契約金の一部を払って手付けとした。その日、時間が余ったので美野は又、タクシーで福岡市の西南にある油山の麓まで行き、そこで降りて山を登った。かなり登ると福岡市が一望できる。絵に描いたよう、というより写真に撮ったよう、とでもいいたくなる景色が、そこにはある。山道は舗装されていないものも、あり、滝の音が、したので、そちらの方へ足を踏み入れ、樹木の陰になって涼しいところに、何か塚のようなものが、あった。よく見ると、そこには猪神様と祭られている大石が置いてあり、文字は、その石に刻まれていた。その前には、猪の好物であろうと思われるものが並べてあった。美野は立ち止まると、その塚の前で手を合わせた。すると、
(わしは、この山の神じゃ。この猪は、わしの手先となった。眷属である。今、そなたの猪神に対する気持ちは通じた。そなたの思いは強くなりたいのであろう。そこでだ、何かの時にはこう、心の中で呼びなさい。油山の猪神様、とな。)
美野は、はっ、として辺りを見渡したが、誰も居ない。
(わしの姿は、そなたの目には見えんのだよ。今わしが言った事を、忘れるでないぞ。強くならねば、という時には、あの言葉を唱えるのだ。『油山の猪神様』。わかったな。)
(はい、わかりました。)と美野は心の中で答えた。それからは滝の涼しい響きしか、彼の耳には聞こえてこなかった。
 犬神とは違うのか
 
美野は犬神様というものは知っていたが、猪神様とは又、と思った。犬神様に祀るのには残酷な儀式が必要だ。
犬を首から上だけ出して、土の中に生き埋めにする。そして餓死する、一歩、手前のところで、ご馳走の載った皿を犬の前に出す。犬は喜んで、それを食べている時に、その犬の首を刎ねるのだ。
その犬の霊は神となって、ご馳走を差し出した人を守護する、とかいう一つの伝説かもしれないし、実話であったのかもしれない。
 だが、猪に対して、それが、できたか、どうかは疑問ではあるし、麻酔銃のようなものが必要ともいえるものだから、単なる猟師が、そういうものを持っているかは、何ともいえないところではある。  
 美野も福岡市の山中に、このようなものが、あるのは初めて知った。とにかく、さっき聞いた言葉を忘れないようにしよう、と彼は元来た道に戻りながら考えた。緑に覆われた油山には、かつて多くの僧房が、あったのだが、今は、ほとんど、なくなっている。これは一時期的に仏教が日本で流行した時代が、あったというもので、やはり、それは長続きは、しなかったという事である。しかし、場の空気というものは長く残るせいか、美野も出家したい気持ちに、とらわれたから、不思議だ。この近くでは油山観音というものがあり、寺としては、そこぐらいだろう。美野も子供の頃から遠足でもよく登った事のある山だけに、今日のさっきの出来事は、今までになかったものだったから、山道を降りながらも、心の中で、何度もあの時の山の神という声を思い出していた。
 
油山の麓近くのカレーショップ
 油山を降りて、しばらく歩き続けた美野一生は、大きな道路沿いに
カレーショップ 与我
と看板が出ていて、インド風な建物が、あるのを見たので信号を渡って、その店を見に行った。玄関前には、カレーのメニューが並べてある。ナン、ラッシー付きランチというのが、写真に、うまそうな料理が写っていたので、美野は、その店に入って見る事にした。木製のドアを開けると、そこにはインドの音楽が流れていて、
「いらっしゃいませー。ようこそー。」
と挨拶したのは、インドの衣装を着た日本人の若い美人女性だった。店内には、シバ神の肖像画やら、女神の彫刻が、置いてあったりする。美野は異国情緒に体の芯までタップリと包まれながら、まだ、人のいない午前中の空いた椅子に座った。て注文を聞きに来たのは痩せた美人のインド人女性だったが、彼女は学生アルバイトのようだ。美野は、
「ランチをお願いするよ、いいかな。」
「はい、わかりましたー。ありがと、ございまーす。」
と、その女性は答えて、すすすーっと調理場へ歩いていく。磁場の違う人間に感じられるのが、そのウェイトレスだが、インド人は磁場が日本と違った場所に住んでいるためかもしれない。椅子に座って店内を眺めていると、与我那美子のヨガ教室は講師を変えて、おこなっております、という張り紙が見える。(与我、那美子ね)と美野は思った。(この店の名前も、与我だけど)
 
福岡市は乱気流 カワイイ区だって?福お菓子のお菓子も、うまいのだ
 
「はあーい。お待たせ、しましたあ。」
 さっきのインド美人ウェイトレスが、美野のランチを手軽に持って来た。ナンとはパンに似たもので、ラッシーとはオレンジジュースみたいなものだった。美野は、このナンをカレーにつけて食べたが、なかなかに、うまい。ナンは砂糖を入れているのか、ほんのりと甘味がある。店内は音楽だけでなく、インド風だ。こういうところに来ると、美野はビジネスホテルで味わえなかった、福岡市の雰囲気を感じた。ビジネスホテルのフロントにせよ、標準語で話すから特に福岡市という感じでは、ないのだが、異国人の店と思われるここが、一つの福岡市なのである。大陸からの文化を受け入れやすいのかもしれない。日韓で、もめているが、アジア太平洋博覧会なんかもやった都市だ。その頃は、まだ竹島も一般の国民は知らなかったわけだが。東京は平穏無事な空気を持っている。何せ江戸ではあるからだ。それに比べれば、福岡市には東京の空気と違った乱気流のようなものがある。それを美野は感じた。東京の画廊の支店の店長もいいけど、どうするか。ま、取りあえずは帰京しようとするか。そう思いつつ、美野が食べ終わると、
「いらっしゃーい。福岡市にカワイイ区が、できたらしいよー。」
と言う声がしたので、すぐ近くを見上げると、背の高い中年の端正な顔立ちをした、白人のようなインド人が立って、白い整った歯を見せている。 
美野は興味を持って、
「カワイイ区って、それは何処に、あるのですか。」
「あー、それはねー、インターネットの中に、あるんだってね、パソコンでニュース見たし、区長は人気歌手グループの一人だよ。」
「なるほど。(やるな、福岡市。)」
「あなたも、区民になれるよ。」
「いや、ぼくは、今回は出張で福岡に来ていてね。ぼくの住所は、東京です。」
なーるほど、と、そのインド人は、うなずいた。そして、
「東京には娘が、行っているよ。カレーショップを町田で開いている。よかったら、そこにも、おねがいしまーす。」
「ああ、町田か。ぼくは亀有だから、遠いな。町田に行って見る事もあるか、と思うけど。」
「東京は特に今、反韓が、でてきているのでしょ?」
「そうだな、あなたは韓流ドラマとか見る?」
「うーん、私は、ぜーんぜん、みないけどねー。」
日本人の死因のトップは癌だ。これは自己の体内で自分を滅ぼす細胞を作り上げるものといえる、それが癌だろう。昨今の韓流ブームとやらも、この癌と同じなのである。何故なら韓国人は反日、それも随分古い世代は、そうではなかったが、今の韓国の若手などは特に反日教育を受けて育っている。そいつらに酔いしれる日本人の一部の人達は、お気の毒ながら自分の国を攻撃している相手を喜んで見ている事になるのである。これらの人達は日本国という大きな体にとっては、癌細胞といえるのかもしれない。やがて、それが増殖して、日本国自体が韓流癌に侵されないように、しなければいけないのだ。 
興味のなさそうなインド人の店主の顔を見て美野は、ほっとした。店主は続けて楽しそうに話す、
「今、日本のあちこちで、やってるねー。ペプシゴキブリマットを踏んだりとか動画共有サイトで、やってたよ。」
「それは、みなければ、いかんなー。」
と美野は答えると、そのペプシゴキブリマットという言葉を記憶した。それから、食べ終わった皿を見ると、
「まさか、韓国の、ものなんか、入っていないだろうなあ。」
「いやいや、全部日本のものよ。香辛料はインドのも、あるけどね。」
「あなたは、インド人よりもドイツ人みたいですね。」
「そうね。私、インドのカーストではバラモンだったんだ。娘にはヨガを習わせたけど。」
「じゃあ、そういう名門の出、ですね。」
「そうね。インドでも、上流階級は日本の電化製品を買うよ。韓国のは安いけど、買わない。」
「安物買いの銭失い、なんていうのは昔から日本にも、ある言葉だけど。」
「韓流なんて、日本人には癌かもさ。」
「韓流癌。初期で治さないと、治らなくなるとしたら大変だ。東京に帰って、まわりに言うよ。インドの事情とかね。」
「私の名刺、あげとくから、私の娘の店に行ったら、これを見せたら、いいよ。」
ドイツ的インド人の店主は、カウンターへ行って、名刺を取ってくると、美野にすっと渡した。
 
性こそ絵の源流
 
田宮真一郎は、もはや、可奈を妻とは思わないのだが、しがらみというものは、中々断ち切れない。それに彼には、コンプレックスが付きまとっていた。それは、あの魔女シャンメルが、渡してくれた魔法の筆や魔術儀式によって自分は有名になれたのだ、という気持ちだ。
 だが、彼は本役英子をハメ描きすることによって又、人気画家とは、なってきた。(おれは、やはりできた。でも、この先、おれがいつかインポになった時、その時が、画家生命の終わりなのだろうか。)と考えもするのだ。だから、それは本役英子との結婚に結びつかない理由だった。あるハメ描き行為の後、真一郎が絵を描き終わると、本役英子は下着をつけながら話しかけた。
「田宮先生、次はコンドームなしで、いいんです。わたし、田宮先生が結婚など、してくださらなくても、いいと思っていますから。」
「い、いや君が、よくても、ぼくとしてはね、子供が生まれたら責任が、あるよ。実を言うと、ぼくはね、今の妻の他にも、子供を産ませた女性がいる。」
「それは・・・偉大な画家としては、必要な条件かも、しれませんわね。ピカソだって、何人もの女性が、いましたわ。」
「あれほどの資産と技量は、ぼくには、ないから、君が妊娠すると、とても面倒は見きれない、ということだ。」
「あら、わたし田宮先生に、面倒を見て欲しいなんて、思っていませんわ。わたし、こう見えても翻訳も、しています。それで、ペンネームで翻訳したんですけど、その作品が日本でも結構、売れて、その印税が入ってきたんです。」
真一郎は感心した顔に、なった。感心は震撼の逆なのかもしれない。
 避妊具なしで
 その後で、真一郎の顔には、ためらいが戻った。しわが少し寄った額に、右手を当てると、
「でも、責任を取れないなんて、それは男らしくないし・・・。」
服をすべて身に纏っても、ふくよかな乳房は、彼女の服の上から見える英子は、
「そんな考え、明治時代の考えですわ。シングルマザーも結構、世の中には多いし、最近は、です。」
「ああ、本当に、いいのかい。それは君と生で、やると性交の感じは違うだろうし、はめ描きで出来た絵も、全く変わってくると思う。」
「そこですわよ、先生。今の絵は、本番といっても、コンドームをつけているアダルトDVDなのかもしれません。」
真一郎は、真昼の空から隕石が落ちたのを、感じたような顔をして、
「あ、それは、すごく的確な表現かも、しれないね。それに男性も歳を取ると、女性を妊娠させにくくなる、とも言えるんだろうけど、・・・。」
「それは、人によって、色々と違うと、わたしは思います。先生は経済の事は、心配なさらなくて、いいんです。わたし、今月中に、ひと財産できて、いますからね。それから、わたしの実家も宝くじが、一等前後賞含めて当たった、と携帯電話で連絡してきました。とても、こういうのって、不思議ですけど。」
真一郎は冥王星を、裸眼で見ようとするように、遠くを見ていたが、
「それじゃ、次回は、そうするよ。子供は娘二人なんだけど、実はこの家にいる娘は、私の子では、ない気もするんでね・・・。」
「あら、それじゃ男の子が、いりますわね。でも、疑惑って、気になっていけませんわ。それは本業にも影響します。」
「ううむ、でも、妻は、もちろん否定は、するけどな。」
 相続人は男の方が
 「もう一人の娘さんって、誰ですか。」
「それはね、・・・あるキャバクラ嬢に、産ませた子供なんだ。時々、会いに行っては、いるけど。」
英子の心の中に、夏の空の入道雲のような羨望が、ムクムクと生まれた。それは、海面に浮きあがった潜水艦の潜望鏡でも、はっきりと見えただろう、というような。
「わたしも、先生の子供が欲しいな。」
「それは次回に回そう。今日は、もう射精は、できないし、写生はできそうだけど、やめとこうかな。」
「デッサンは、できる、ということですのね。画家としては、射精すれば、写生できなく、なるのかしら。」
「語呂合わせとして、それは、とても、うまい!」
ポンと真一郎は感心して、手を打った。
「英子さん、あなたとの子供が、男の子だったら、自分の相続人にしたいよ。」
真一郎は、人差し指を鼻にピタと当てた。そして、英子を、にやにや、しながら眺める。
「それは。嬉しいです、先生。何か男の子が、できる方法が、あるとか、わたし、何処かで知ったような気もしますし。楽しみですね、これからのハメ描き、です。」
「ああ、張り切るとしようよ。張り形のように、張り切ろう。君との子供で、離婚の成立かもね。」
「嬉しいわ。こんな人生って、普通じゃないけど。」
英子は真一郎に飛びつくと、彼の両肩に両手をクロスして回した。最近大きく膨れてきた彼女の乳房が、真一郎の胸から下のところに押し当てられた。
 真一郎は英子のスカートを外し、降ろすと彼女のショーツは薄く、英子の陰毛が黒く鮮明に映っていて、それは真面目な翻訳者としての顔とは正反対の淫らな気持ちを男にそそるような形を見せ、英子のショーツは上に強く引っ張っていたので、彼女の膨らんだ淫唇が割れ目を見せて食い込んでいた。
その割れ目に沿って下から上に真一郎は、舌を這い回らせた。すると、彼女のクリトリスは隆起する。それを舌で感じた真一郎は上目で英子を見ると、彼女は目を閉じて赤い舌を少し出していた。
英子の淫唇は潤みを帯びてきたので、真一郎は彼女のとても薄いショーツを、それは真一郎とハメ描きする時だけに履いてくる、ネット通販で購入した特製のショーツなのだが、それを下にスッと降ろすと英子の淫美な黒い花園と、その下の彼女の性の果実が真一郎に、彼の男性器に突入してもらいたくて、たまらないような顔をして少し淫裂を開いているのだ。
真一郎も同じように自分のズボンとパンツを脱ぎ、下半身は裸となり、立ち上がる前に既に立っていたムスコと共に膝を伸ばすと、英子にキスをして舌を入れ、絡め、右手は英子のマンコを深く愛撫しつつ、少し指先を入れると彼女の熱い液が真一郎の指を濡らした。
細い肩と大きな尻、それを彼の指は、なぞって感じ取った。
英子は背中を撫でられても、
「はっ、あん。」
と声を出す。服の上から見たら英子の乳房はリンゴのような形で、右手で揉むと、
「あ、ふっ。ああん。」
と黒髪を乱して感じる。その時、真一郎の舌は英子の耳たぶを舐めていた。乳房を揉みつつ、耳たぶを舐めるという事が、彼女の息遣いを荒くしていき、英子自らが白い両方の脚を開いて、オマンコも更に開いて、
「真一郎さん、速くっ、英子のオマンコに生のチンポ、入れてっ。」
と耳たぶを赤らめながら恥ずかしそうに誘う。
真一郎は避妊具を、かぶせないナマチンポを野太い亀の頭から、竿の元まで、心地よく差し込んでいった。英子は、滑るような声を上げて、
「はぁぁぁぁっ、ああああん、真一郎さんの生のオチンポって、こんなに素敵なんですねっ、やっぱり、ああっ、生が一番ですっ、英子のオマンコ、突いてっ。一晩中、二十四時間オマンコ、して欲しいっ。はぁん、朝まで生チンポでツキまくられたいぃぃっ。
ああっ、英子のオマンコ宮殿の奥深くまで入ってっ。そう、そこがオマンコ、ナンデス、ああっ、は、あんっ。いくっ、いきはじめましたわん、やあん、いやあっ、いいっ、真一郎先生の愛の勃起チンコは英子を救うっ、二十四時間、朝まで昼でも、生チンポで貫いて、突き上げてぇっ。」
英子は、自分の大きな尻を真一郎の腰と同じ動きで、揺らされつつ、生のチンポをマンコに嵌められたまま、上着を脱ぎ、ブラジャーのホックを頬を赤くさせて外す。
チンコを嵌められた女がブラジャーを外すのを真一郎は、チンコを嵌めたまま見ていたが、ブラジャーを外した時、英子のオマンコに自分のチンコは吸い付かれるような感触がして、ぬくもりと締め付けを、それから感じた。
それから英子は、メロンのような乳房を真一郎に押し付けて、両手を彼の首の後ろに回して、自分から真一郎に唇を重ねると、両脚も彼に密着させ、立ったまま一つになった二人は、同じ生き物のように激しく尻を振らせていた。
  真一郎は、右手の指先で英子の尻の割れ目の上の方から、英子の背中まで、なぞると、そこは英子の性感帯で、彼女はオマンコ、乳房、乳首、唇の次が背中が感じると話していたからだ。
それと同時に、真一郎は突き上げのスピードを速める。英子は目を閉じて、唇を開くと、
「ぁ、ん。は、ん。ああっ、はあっ、」
と甘い性夢に耽るような表情をしているが、それは真一郎の肩の上で、彼には見えない痴女的な彼女の顔だ。
 真一郎は英子の顔が見たくて、姿見の大きな鏡の方に英子の顔が映るように向きを変えた。
それで真一郎は口を開けて、赤い舌を出している英子の顔を見てしまった。正常位のセックスの時も、部屋の照明は落としているので薄暗く、英子の顔はハッキリとは見えなかったが、今は明るいので明確な顔の表情が見える。画家の彼としては、この英子の性的な顔をこそ描きたいのだが、そのまま描くのは出来にくい。
それに今は、英子のオマンコの締め付けが心地よく、真一郎も陶然としてくるのは抑えられない。
英子は目を閉じているから、等身大で映る大きな鏡に投影された自分の顔を見ることは、今は、していないのだ。それで真一郎は、自分の尻の動きを停めた。すると英子は目を開くと、
「先生、止めないで。あっ、鏡に、私の顔が映っています。恥ずかしい・・・。」
鏡には真一郎の後ろ姿、その尻の割れ目と英子の細い両手、白い両脚も映っている。
 真一郎は、英子の尻を抱えると両膝を曲げていって、床に尻もちをつく。それから仰向けに寝そべると、二人の姿勢は英子が真一郎に跨っている姿となり、尻餅をついたときの衝撃が英子のオマンコの中に広がって、その快感も英子の全身に増幅された。
「はっあーん、今度は英子、先生の上に馬乗りになっていますわ。あ、先生の太いものが英子のマンコに入っているのが、ハッキリと鏡に見えるの。すごーい。すごーいわっ。
あっ、先生、いいっ、いいいっ、はーっん。」
英子は荒馬に跨っているように乱れた姿で動く、それは自分で動いているので、馬が飛び跳ねているのとは違うから、英子の性的自発行動としての尻の動かし方だ。
「先生、英子、自分で動いて、お尻を振ってしまいますぅ。淫らな英子。先生、こんな事、してもいいんですかぁ?うあん、はあっ、はあっ、はあっ。」
「いいとも、さ。むしろ、この方が英子君が自分で快感をコントロールできるし、オナニーのように自分で出来て、しかも今は生チンコが入っているし、本当のナマだからだよ。」
「そうですねぇ、英子、本生、好きです。それに何だかドライな、この気持ち、はっ、あっ、感じてます。」
「スーパーにドライな気持ちかね、うん?英子?」
「ええっ、ああっ、マンコ感じて、い、やーーーんっ。」
真一郎は両手で英子の硬くなった乳首を、つまんでムニュッと揉む。
「はぁん、あぁぁぁっ。英子、乳首、感じるぅぅぅ。やあだっ。」
英子の乳首は黒いラベルのように見える真一郎は、酔っているような感覚になっている。結局のところ、それでも愛撫している黒乳首、に見えても英子の乳首は、まだ、濃いピンク色だ。
さっぱりー、したいけど、つまり、射精して、でも、英子はまだ、欲しいのではないか、おれの硬直チンコを。で、聞く。
「英子、出そうだよ、精液。」
「待ってください、先生っ、」
「生徒は先生の言う事を、聞くものだ。」
「いやっ、英子、あんっ、反抗します。あぁぁぁぁっ。」
「鏡を見なさい、英子君。」
「え?あっ、い、や、んっっっっ。は、あーーーーーーーっ。」
その時、真一郎は英子の中に自分の分身液をしたのだ。
英子は、びくっ、びくっと美脚を大きく広げて真一郎に、跨った美裸身を、断続的に快感の波に耐えられないように震わせた。
それは全て、鏡は映しているが、英子は目を閉じ、真一郎は英子の顔を見ているから、二人とも鏡は見ていないのだ。

融資を勧める彼の姿は勇士のよう
  美野が、いない時に、又南関東銀行の郷が来た。緑川鈴代は美野から電話で、福岡市の天神の西通りに、いい物件が見つかった、と連絡を受けて、彼に緊急に郵便局を通して、その資金を振り込む必要があったのだが、百万円ほど足りなかった。来月の末には入る予定だったが、来月を待つわけにも、いかない。渡りに船、とは、よく言ったもの、今なら乗るならタクシー、というところだろうか。郷冠太は、
「それは担保が必要に、なります。百万円とはいえ、無担保融資は、できかねます。ただし、・・・。」
融資を勧め始めた彼の姿は、勇士のような雄姿だった。
「個人的には、私が、なんとか都合を、つけても、よろしいのですが。」
鈴代の眼はキラッと輝いた。大きな胸も、その融資の希望で揺れ動いた。
「本当ですのかしら。それなら、今すぐにでも、融資して欲しく思います・・・。」
「わかりました、ありがとうございます。それでは、今から、さっそく、御融資の手続きは取らせていただきます。まずは、この書面に、ご記入、ご捺印ください。」
 郷は銀行の融資書面を拡げた。鈴代は、よく見もせずに、それにサインをし、印鑑を細い指で押した。、カーンと音を立てるくらいに強く押した。
「ありがとう、ございます。それでは、今から当行に戻りまして、それでは、さっそく、ご指定の口座に、お振込みをいたします。」
郷は、そう告げると深々と頭を下げた。それから一時間後に、希望の百万円は、鈴代の郵便局の口座に振り込まれた。
 担保は色々
鈴代は携帯電話して、
 「あ、美野さん?郵便局に行って、お金を確かめて。そして、おろして、不動産業者に、それを持っていって頂戴。」
鈴代は、パソコンで郵便局の口座の残高を見れる。画廊も一応、客人が、あまりいない時間に控えの部屋で、百万円の入金を確かめたのだ。
「わかりました。不動産は天神の業者です。ぼくが、急いで持っていきましょう。」
美野の自信に満ちた声が鈴代の耳に、ファンファーレのように響いた。
 その日は画廊の閉店まで、あっという間もなく、終わったと鈴代には感じられた。早手三五郎と本役英子は終わりまで、いてくれたが、田宮真一郎の絵は早々と売り切れたので、途中から客は画廊にに入っても、すぐ出て行く事が多かった。早手三五郎は、軽く手を上げると、
「それでは、緑川さん、これで失礼します。又、明日に。明日は、すぐに来る気が、しますけど。」
本役英子は静かに、控えめな感じで、
「お先に失礼します、店長。」
と店長の前のところで、黒髪の頭を下げた。二人が画廊から出て行って、二分程すると、がらっとドアが開き、
「こんにちわ。融資は、うまくいきましたね。」
と笑顔の声がした。それは、郷冠太、であるが彼は、私服だった。
「まあ、ありがとうございます。無担保なのに、どう、お礼をしたらいいかと、考えて思いますのよ。」
「お礼は、ですね、いいですけどね。これから、夜の街は、どうですか。夜の街へ郷とゴー、なんて、」
「いいですわねえ。それでは、高級レストランにでも、行きません?わたしのおごりですわ、もちろん。」
「ありがたく、ご馳走に、なりましょう。」
 利息は私が払います
 町田駅から歩いて、五分のところに「クイーン・メアリー」という高級ホテルがある。経営者は英国人なのだが、そのためイギリス人らしいサービスにれている。一階はホテルの受付と、誰でも入れるレストランがあるが、高級レストランだから、それなりの人達しか入らない。ランチは二千円、ディナーは三千円、である。このレストランに入ったら、時間帯によって、そのいずれかを選ばないといけない。外の入り口にも、そのような張り紙が、してある。ただ、経営者の母国の料理は世界一まずい、という評判のイギリス料理になるため、そこは他の日本の高級ホテルから高給で引き抜いた腕利きの料理人を揃えてはいる。郷のおすすめ、という事で、銀座よりも町田の、このレストランが、いいという話から鈴代も興味を持った。中に入ると、デラックスムードだ。テーブルに着くと真っ白なテーブルクロスが、かかっていて、若い男性ウェイターも上下、白の制服を着て現われる。鈴代は、ゆっくりと寛ぎながら、
「ディナーふたつね。」
「かしこまりました。ドン・ペリニオンも、ご用意いたして、おりますが。」
郷は、ごうごうと眼を輝かせて、
「緑川さん、代金は私のおごりですよ。君、ディナーを二つ持って来て。」
「はい、ありがとうございます。それでは、お待ちくださいませ。」
鈴代と郷は、向かい合って座っていた。郷は、
「ここは、時々、お客様と、ご一緒するんです。お医者様や、中小企業の経営者の方たちが多いですけど。」
「それは、とても羽振りのいい方たちね。わたしも、これから、そうなりたいな。」
「緑川さん、緑川さんなら、楽勝で、なれますよ。融資の利息は、ぼくが払ってもいい。」
「え、え、え?本当に、ですか。それは冗談でしょ、郷さん。」
「いえ、冗談なんて、銀行員のぼくには職務的にも言えません、今日、これからの展開仕第では、という事です。」
鈴代は郷の眼を、深く覗き込んだ。そこには、真面目な銀行員の眼しか存在しなかったが。
 お食事の後には
 日本式ディナーが整然と並べられると、鈴代は、
「全部、今日は、わたしのおごりです。わたし、別に人として驕った人間じゃないと思いますけど、この場は喜んで、おごりますわよ。」
「そうですか。お酒は、ぼくの振るまい酒ですよ。緑川さんは、もしかして、このお酒を毎日飲んでいるとか。」
「ドン・ペリニオンでしょ。まさか、反対からなら笠間。わたし笠間さんじゃありません。」
「そうでしょう、安心しました。まあ、私も融資の労を取れて、光栄です。」
「ええ、ええ、乾杯しましょう。我々の明日に対して。」
鈴代は右手で優美なグラスを高くかかげた。郷も無骨な右手で持ち上げると、
「乾杯です。我々の今夜に、そして、それから、に。」
そう語ると、鈴代のグラスに自分のグラスをチャンと音を立てて、乾杯した。それから鈴代は、とても、おいしそうにドンペリをゴクゴクと飲み続けた。そうすると、ふらりと彼女の体は左右に揺れた。郷は、四角な顔を丸くしたような表情で、
「緑川さん、なんだか、大丈夫じゃないようですね。深い酔いが、もうきてますか。」
「きてますわね。もちろん、わたし、服きてます、なんて。」
「あはははは。食事の方を続けて、されてください。これから夜は、ずっと長いんです。」
郷は中肉中背の四角い顔で、手は長くて足は短い。で、その手で鈴代の料理の皿を彼女に近づけた。
「ええ。食べ、ます、わっと。ワットって何かの発明をした人だったのかな。うん、うまいな。わたしも料理は、うまくなりたいんだけど。」
鈴代は、それから一気にディナーを食べ終わった。郷は一口、以上先に食べ終わって鈴代が食事を終えるのを待っていた。そう、ドン・ペリニオンは少しも飲まずに、自分の分は全て鈴代のグラスに注いでいた。
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 鈴代が意識を取り戻して、ハッと気がつくと、ここは?
 「あら。郷さん。遅れて、すみません。」
酔眼の鈴代は、それでも、自分の方が食べるのは遅かった事に気づいていた。郷は笑顔で、
「いえ、何、そんな事は、気にしないでください。私の方が空腹だったと思います。でも、空腹でも服は食べませんけど。食う服、なんて、あまり面白くないですね。」
「おほほほほ。面白いですわよ。今のわたしにはドン・ペリニオンが倒れたって、おかしいくらい。」
「ああ、ドン・ペリニオンが、まだ残っていますよ、緑川さん。」
「あら、ほんと、もったいないわ、高価な豪華な飲み物ですもの。」
鈴代は、それをに、まるで火星に行くように、堪能した顔で飲み干した。鈴代の目の前は、まるでメリーゴーランドに乗っているようにグルグル、クルクルと回り始めた。郷は、
「大丈夫ですか、安心して、立てますか、緑川さん。」
「ええ、ただね、頭の中が回っているだけ。」
と答えながら鈴代は、そろりと立ち上がったが、すこしフラリとした。郷は急いで、彼女の横に来ると、
「私に、どうか、つかまってください。」
「そうするわね。ちょっと肩を片方、失礼します。」
郷の左肩に、もたれかかりながら、鈴代はレジまでのように歩いた。そこで財布を出そうとすると、郷は、
「あ、いいえ。私が、これは、払います。緑川さん、手つきも危なっかしいですよ。後から、この代金は、いただいても、いいですし。」
そう申し出るが早く、ポケットから黒い財布を出して、大枚をレジに置いた。それから強く、胸を張ると、
「つり、は、いいよ。釣り、は、いい夜(よ)にすれば、最高の夜釣り、だってさ。今も夜。つりは、いいよーに、して。」
レジの若い女性は、じっと笑いを、こらえた顔で、
「今晩は、どうも、夜の、おつりも、ありがとうございます。又、是非、ご来店下さる事を、心の谷底の方から、お待ち、いたしております。」
と謝辞を述べると、深く頭を自分の膝のところまで下げた。千鳥足の鈴代と勇み足の郷は、銀ピカの高級レストラン店を出て行った。そこで、鈴代の意識は途切れていった。・・・・・気がつくと、郷の顔が、自分の目の前にあった。しかも、自分は何故か寝ている。その姿勢で、郷に唇を吸われているのだ、強く。
 性交と成功の法則
  だが、まだ鈴代の意識は、酔いが回ってきたりする。これは夢かもしれない。郷は裸だった。そして自分も全裸なのに気がついた。郷の男くさい匂いが鼻をつく。郷は舌を自分の唇の間に入れてきた。鈴代は、それに自分の舌を絡め合わせる。久し振りの男の感触。浜野貴三郎とは、いつ、性交しただろうか。わたしが成功していってから彼とは性交していない。それは女実業家の成功の法則なのかもしれない。逆援助していたのは、まだ暇が、あった時だ。ホテルに行く暇もない忙しさでは、逆援助遊びも空想の世界のようなものになっていた。それで鈴代は、しばらくぶりの男の感触を楽しんだが、自分の腹の上で郷のペンシルがマジックインキのように変化するのを感じたので、郷を横に組み伏せると、
「郷さん、これ、どういう事?」
「どういうも、こういうも、緑川さんに、『部屋に入って、無理やりのように強姦して』、と言われましたよ。」
「わたしが、そんな事、いつ、言ったのかしら?」
「ええ。部屋に入った途端、緑川さんは、ベッドに倒れこむと、そう言いましたから、だから、こうなったんです。担保は僕が百万円、個人で南関東銀行へ、入れています。ここで、あなたと性交できれば、利息は僕が払いますから。」
「それは、わたしの成功のためにも性交が必要なわけね。」
「ははは。うまい事、おっしゃいますね。ぼく、強姦願望が、あったんで、あなたに言われた時、すぐに勃起してしまいまして、それから、あなたの服を全部脱がせて自分も脱ぐと、一応収まってたんですが、今は又、チンコは元気です。」
郷は反り返ったものを、グイと鈴代に向けた。鈴代は右手で、それをと、
「わたしには被強姦願望が、あったのかも、しれないわね。引き寄せの法則かしら。好きにしていいわ。マンコ。」
「マンコなんて、興奮するなあ、マンコやります。いや、やるぜ、緑川。おとなしく、してろよ、おまえのマンコを貫いてやるぜ。」
と荒々しく口調を変えると、郷は鈴代の口を片手で塞いで、片手で彼女の両脚を大きく引き広げた。
「おう、たまんないな、おまえのマンコ。いくぜ、鈴代。」
彼女は声を立てられない。郷は極限までに膨張したものを、鈴代の足の間のマンコの入り口に突き込んだ。鈴代は酔いと違った快感に裸身を任せた。郷は力強く、立ちチンコの反復運動を続けていった。
 フォトン・ベルトと同じ
  鈴代は思えば、郷はコンドームを、つけていない。しかし、今更この快美感を中断したくもなかった。それで郷が激しく突きまくるのに自分の尻が協調して、大きく揺れ動いているのを楽しんでいたのだ。自分が、あえぎ声を上げると郷は腰の運動を早めた。それと同時に郷は、
「あっ、いきます。いや、いくぞっ!」
と叫ぶと鈴代の中に、たっぷりと白いシャワーを浴びせた。郷の張りつめた肉体の一部は、ゴム風船が、しぼむ様に縮んでいった。郷は、そこで、
「しまった。コンドームをつけて、いませんでしたね。」
と鈴代に冷や汗を浮かべたような顔で聞いた。鈴代は、まだ郷の小さくなったものを自分の中に感じながら、
「妊娠しても心配、ないわ。わたしは、お金は持っています。」
「それじゃあ、融資の件は、どうして・・・。」
「会社の資金と個人資産は違うでしょ。個人資産を新しいお店に注ぎ込まなかった、という事だわ。」
「なるほど。わかります。それは、無論、分かります。」
「その時が来ても、心配は、いらないわよ。フォトン・ベルトと同じ、じゃないかしら。」
「ああ、来てみれば分かる、という事ですね。あ、緑川さん、ぼくの体重は重くないですか。」
「平気だけど、全然、重くないわよ。ニュートンの法則なんて感じないわ。」
「ぼくが体勢的に、なんだか、疲れてきました。」
郷は鈴代からチンコを外して、離れて、仰向けになって、フォトン・ベルトを考えた。
 一晩明ければ
  鈴代は酔いが又、回ってきて眠ってしまい、郷も、よく知らないフォトン・ベルトを考えるうちに意識を失った。翌朝になれば、白い光が入り込んできて、二人は眼を醒ました。二人のいる部屋はホテルの最上階だったので、カーテンも閉めなかったのだ。町田の街並みが、よく見える高さだった。二人は黙って服を着ると、郷から、
「おはようございます。緑川さん。」
「おはようさま。何か、夕べの出来事が、絵に描いた嘘のようね。」
「いえ、利息は、きちんと僕が払いますので、その点は、ご心配なく。」
「そうだったわねー。又、おいで、くださいな。わたしの銀座の画廊の方へ。」
「ええ、もちろんです。又、ぜひ、なんとしても、お伺いします。」
「今日の朝食も、あのレストランで、する?」
「すみませんげと、ぼくは、急ぎますから、銀行の近くででも、早く出す店で、すませますよ。例えば、すき家の朝ごはんの、たまごかけ朝食とか、でも。」
「そしたら、わたしも銀座で食べる事に、するわね。ホテル代ぐらい出しますわよ、それくらい。」
「いえ、それも、全部、僕が持ちますよ。」
二人はピンクの扉のエレベーターで、一階に降りた。フロントで郷が会計を済ませると、レストランの扉が開いて、颯爽と西城秀一が出てきた。西城は郷に気づくと、
「おはよう、郷。この方が、あの、銀座の画廊の経営者の方?」
「あ、西城先輩。おはようございます。そうです。昨夜、商談が長引きましたので、こちらのホテルにお泊まり戴いて、会計は私持ちと、させていただきました。」
「それは、熱心だね。まあ、融資を、ご利用いただいたのだから、やれるだけ、やって。」
と、ここまでは郷の耳にだけ、聞こえるように話すと、緑川鈴代の方を向いて、
「はじめまして。わたくし、南関東銀行、町田支店の副支店長を勤めさせていただいております、西城と申します。この度は、どうも、ありがとうございました。」
「いえ、こちらこそ。これから、お世話になりますわ。」
鈴代は雪が夏に振ったように、涼しげな顔だ。
 ラッシュアワーは
  町田駅で郷と別れてから、すぐに鈴代は電車に乗らなかった。今は、まだ通勤ラッシュだからだ。銀座と違った町田の雰囲気には学生が多い事も、醸し出されるのであろう。その代わり、東京の他の場所のように、芸能人や財界人が町田に住んでいる事は、ほとんどない。鈴代の画廊、「金月」にも芸能人が来たことは、なかったのだが。町田から銀座に行くには、新宿から地下鉄に乗ってもいいし、渋谷から地下鉄でもいい。ただ、それぞれ私鉄は小田急か東急という違いは出る。どちろもラッシュアワーでなくても、人はいつも多く乗っている。鈴代は、すき家では時間を潰しにくい事を知っていたし、牛丼専門店は、ほとんどが男性客のために入りにくくもあった。そこで、モーニングセットをやっている喫茶店を駅近くの通りで見つけたので、そこに入って時間を潰した。少しして、その店に一人の公務員風の若い男性が入ってくると、鈴代の席の近くに座ってモーニングセットを注文すると、手にした電子書籍を見始める。それはパチンコ関係の電子書籍だった。店のマスターは五十歳くらいの髭を生やした男性で、
「どう?あきさん、最近パチンコの方は。」
と右手で、サンドイッチを皿に載せながら、その男性に聞いた。
「ああ、釘さえ読めれば勝てるよ。ただ、駅前は渋いね。まあ、おれは、生活には困っていないから。マスターも、パチンコをマスターしたら?」
「そうだね。マスタード要る?」
「ああ、入れてよ。辛いのが、いいんだ。最大限に、よろしく今日も。」
「あいよ。ここがパチンコ店の近くで、よかったよ。知り合いやら友達の店は、この不況で結構、つぶれたね。ラーメン屋とかも、だけど。」
「おれたちパチプロに、不景気は、ない。万が一の時でも、女が、いるから。」
「伽場(きゃば)ちゃん、だろ、時々、来るよ。あきさんの話を、していくから。」  
情報商材で
「あ、彼女、おれが、ここに来る事を知っているなんて。」
「そうじゃないけどさ、市川朱夫っていえば、あきさんだろ。」
「ああ、名前をネ、出したんだ彼女は。」
「そう、元公務員の夫が、いるって。」
朱夫はニヤついた。彼らは町田市役所に入籍していた。でも、結婚式は挙げなかったのだ。お金が無いからというのではなく、誰かに見られたいわけでも、なかったからだ。その入籍の日に二人でお祝い事をした。宅配ピザの最上等のものを取り寄せて、ロマネ・コンティで乾杯した。伽場倉子(きゃばくらこ)は、その後で、
「あきちゃんが、パチンコで稼いでくるから、嬉しいな、最近。」
と眼を細めて、彼の顔を見る。
「何も、しないわけにもいかない、と思ってパチンコの電子書籍や、インターネットでパチンコの情報商材なんか買って研究したらさ、段々と大当たりになったんだ。」
「情報商材って高いんでしょ。何か、詐欺めいたものも、あるとかいうわよねえ。」
「それは昔の話らしい。ぼくは、運が、よかったんだろう。情報商材も、まともなものしか、残らないって事だ。」
「そうなの。あきちゃん、ネット始めたの、遅かったもんね。」
「そう。何事も、早ければいい、ってものでもないんだな。運がいいのは、君をつかまえたのも、そうだな。」
「うまいこと、言うわね。うん、運が、いい、か。なんて面白かった?」
「まずまず、さ。あのね、情報商材の中にはキャバ嬢でナンバーワンを取る方法、なんてのもあるよ。」
「それ、いいわね。わ・た・し・だってナンバーワンになりたいもの。」
 夫を愛せば
)))))))))))))))))))))))))))))))))))))))))))))))))))))))
 「あきさん、ほら、モーニングだよ。ぼんやりとして、彼女の事を考えているのかい、今。」
はっ、と追想から元に戻った朱夫は、目の前のサンドイッチを見ると、手にとって口いっぱいに頬張って、トマトの味を感じると、あの日のパーティのピザのトマトの味を思い出す。
「なんか又、昔の事を思い出そうとしている顔だね、あきさん。」
「いや何、トマトの味が、うまくって印象に残る。これは入籍記念の味だ。」
「最愛の妻との結婚記念の味、でしょう、ね、あきさん。」
「妻を愛せば、妻愛だ。夫を愛せば夫愛(ふあい)なんてあまり言葉には、ならない。あ、夫に愛で。ふにあいだよ。つまり、夫に愛を持つ妻は、ふにあい、つまり不似合い、似合わないという事なのかな。」
マスターは微笑して、皿をタオルで磨きながら、
「そうだね。日本人女性は、夫に愛なんて、持っていないかもしれませんやね。やー、いえね、うちの家内も、私を愛しちゃいないようでさあ。」
緑川鈴代は、それを聞くと、飲んでいたコーヒーカップをカチャリンコン、チャンとソーサーに置いた。そーさー、彼女は反対の意思表明をしてみたわけだ。マスターは鈴代を見ると、
「いえ、お客さん。これは一般論、いや、特殊なケースの日本人女性の話です。うちの家内は、ボディビルを、やっていますから。」
そう弁明すると、店のマスターは、両手で筋肉を盛り上げるようなポーズをした。ボディビルダーが、するようなポーズを。
 日本人女性の特質 
 マスターのポーズを見て、鈴代は吹き出しそうになるのを、うじて、こらえると、
「いえ、今のお話、居間で、されました?」
マスターは顔を困惑の表情にすると、
「居間では、いまだ、かつて、なく、していないですよ。実は私、恐妻家なんですから。」
「わたし、独身だから、よくわかりませんの。日本女性が夫を愛しているか、どうかを個人的経験として言えませんから。」
「はあ。そのうちに、おわかりになると思いますよ。最近は晩婚型になっていますからね、日本女性の一般は。」
「うーん、そう。別にわたしは、結婚願望も全然、なかったんですよ。」
「願望は、なくても昔は結婚していましたね、早めに。日本人女性は、ですね。それは、させられていた、というべきか。」
「ああ、江戸時代なんかは、そうですわね。それが、続いていたのが長いから、日本人女性には自立というか、そういう意識も持ちにくいのかも、しれませんわね。」
「おっしゃる通り、だと思いますよ。それでも、お客さんは経営者のように、お見受けしますが。」
「ま、鋭いですわね、その観察。一応、わたくし、銀座で画廊を、やっておりますの。」
店のマスターは、好奇心を、ありありと、海のように顔に広げると、
「それは、いいですねえー。ウチの店にも、実は、何か絵を飾りたかったんですよ。それも複製じゃないのを、できれば、名作を、ですねー。」
鈴代は機敏な動作で、胸ポケットから名刺入れを取り出して、一枚、マスターに差し出すと、
「画廊は金月、といいます。住所と電話番号は、名刺に書いておりますわ。」
「いや、これは、どうも。だったら、そのうちに行きますよ。絵、一つで店の運も変わる。え、本当かい?なんて。」
淡い微笑を浮かべると、鈴代は、
「それでは、よろしく、お願いします。とりあえずは、お勘定を、お願いしますわ。」
 フリーターなんて
  そうこう、するうちには、日は流れていき、美野は帰ってきたので、又元通りの日々となった画廊「金月」で、あったのだが、やはり美野を福岡市店の店長にする事を鈴代は決めた。
 それで二人で福岡市を訪れ、店を開店させるつもりだ。今度は二人、画廊に穴が開く。それでも鈴代は、お客さんに接する事は外して、いきつつあったため、美野の代わりは今度は美野の息子に来てもらう事にした。美野は頭に手をやると、
「これは恐縮です。息子が卒業したら、こちらに就職するようにさせます、どうですか。」
すると鈴代は、
「それは、とても嬉しいですが、アートの方には進まないわけですか。」
「いやもう、私譲りの才能の無いやつです。画家になろうなんて、平安時代に戻っても、なれそうな、やつじゃありません。それは元学芸員の私には、よくわかります。無謀な夢を追って、苦労するより堅実な道を、行けばいい、と昨日、晩飯の後で説教すると本人は、
『それも、そうだね。学芸員より画廊の方が、金は稼げるんじゃない。』
なんて言いました。まあ、その通りなんですが。多少、むかつきましたけどね。それで、こちらの事を、あいつに昨日、話していたんです。」
「それは、ありがとうございます。早手って子は、まだアートに向かいたい意欲が、ありありでしたから、うちとしてはアルバイトのみ、という風に考えていたものですから。」
「最近の若者はフリーターなんて、やって得意がっているのもいますけど、将来きっと後悔しますよ。芸術家はもちろん、最近は俳優にもなれる人間なんて、わずかなものでしょう?その俳優でさえ、テレビの崩壊で、仕事は、ますます、なくなるわけですから、甘い夢より、しっかりとした生活が大事なはずだけど、そんな夢にしがみついて、俳優とか歌手を目指す若者も多いみたいですね。」

魔法で性交したら3 お試し

二人はすぐに外車に乗った。外車が発進すると、カーステレオから水川マキの新曲「ダンシング・ミッドナイト」が流れて来た。それを耳にした真一郎は、
 「いい曲ですね。いつ聞いても中々いい。声が可奈に、どこか似ているような気が、してくるんですが、気のせいかな。」
と言って、再び耳を傾けるのだった。
♪真夜中の二人 サンバとタンゴが二人の間を狂わせた・・・結末は、いいこと、いっぱい、ふたりで、おっぱい、たっぷりと♪
 「そうかしらねー。わたしは興味ないけどね。声も似た人って顔より多いんじゃないの。音楽は興味ないから、かしら。」
 と言って鈴華は左手の方を見ると、車を左手に寄せて、きいーっと止まらせた。
 「この店なのよ。待ちに待ったでしょう。奥さんを治せるんだもの。」
 そこには、救体漢方薬店と古びた看板があった。二人は店の中に入り、心臓病に効く薬を鈴華に教えてもらって、すぐに真一郎は、それを、購入した。その店を出て車内に急いで戻ると、真一郎は、
 「ぼく、ここなら分かりますよ。今度は自分で行きますから、緑川さんは、これからは来なくてもいいです。」
 「あっ、そうね。それが一番だわよ。だって、わたしは所詮、他人ですもの。」
 と明るく言うと、鈴華は外車を急発進させた。車内のスピードメーターが、ぐんぐんと上がって来る。真一郎は、
 「あれ、緑川さん、方向が違いますよ。僕の自宅へ行く道とは正反対だ。」
 「ええ、知っているわよ。実はね、もう一つ教えておきたいところがあってね。田宮さん、お時間、大丈夫ですか?」
 「ええ、まあ・・・・・・大丈夫ですけど。何か不安だなあ。て、気もします。」
 やがて外車は東京郊外へと抜けていった。小さな山が見えてきたが、鈴華の車は、その山を上に登り始めた。真一郎は、
 「ああ、緑川さん、景色の、いいところなんですか?そこは。」
 「ええ、もちろんですとも。あなたの芸術のためにも、いいと思ってね。前から考えて、いたの。」
 外車は山の中腹に、さしかかった。そこに城のような建物があった。真一郎は、
 「ホテル・マウンテンストップか。一体、こんな処に来るやつら、いるんですかねえ?」
と、ずけずけと聞いた。鈴華は、それには答えず、又、アクセルを踏むと、車は、そのホテルにすーっと入って行った。
 「緑川さん!そこ、ラブホテルですよ!入っちゃ、いけません。」
真一郎は大声を上げた。鈴華は優しく微笑んで、
 「いいじゃないの。ちょっと休んでいくのも。構わなくない?」
そう言いながら、鈴華は足を大きく開いて見せた。鈴華の真っ白な太ももの肌が真一郎を魅惑した。鈴華は外を飛び回っているせいか、顔などは陽に焼けている。いつも、そんな鈴華しか知らなかったので、鈴華の素肌を知った今、真一郎の眠れる性欲が頭を擡げてきた。(いや、だめだ!)鈴華はドアを開けて外へ出る時、真一郎の太股を触っていった。その時、電気のような感覚を真一郎は感じた。(行かなきゃな!)かつてない快美感を触れられるだけで、感じてしまうなんて!素速く助手席のドアを押し開けて、真一郎は鈴華の後に続いた。無人のモーテルだった。鈴華は鍵を取り、中に入る。モーテルの防犯カメラが上の方に見える。もしかしたら、部屋の中に盗撮用カメラが隠してあったりして。と、真一郎は、そんな事を思ったりしたが、どうでもいい気になった。部屋に入ると、十畳はあるケバケバしい例のような感じだが、水槽に金魚が泳いでいるのは、どういう事だろう。鈴華を見ると既にブラとパンティだけになっている。白い裸身に近い姿だ。鈴華は、
 「これから先は、あなたが脱がせてね。さあ、どうぞ。」
 そう言った時の彼女の顔は、二十三、四才に見えた。真一郎は思わず頷くと、近づいてブラジャーの後ろのホックを外して、パンティをおろした。胸の膨らみといい、眼を狂わすアンダーヘアといい、それも正しく二十三、四才の、しかも処女のようだった。真一郎は、手を鈴華の下着から外すと、
 「緑川さん、もしかして、まだ男とは・・・セックスしていないんじゃないですか?」
 「あら、そんな事、どうでもいいじゃない。早く来てペニスをはめて!」
 鈴華は両腕を大きく広げた。真一郎が彼女を抱くと、肌の感触も二十代そのものだ。口を重ねると、鈴華の舌が、にょろっと入ってくる。その柔らかさにイキそうになったが、彼女は、
 「まだ射精したらダメよ!後、三時間は二人で愛し合うのよ!まだ、ちんこも入れていないくせに。」
甘ったるい若い女の声で鈴華が言う。こんな彼女を今まで見た事が、なかった。こんなにも女性は変わるものだろうか。汀の近くの海面に浮かぶボートに乗っているような陶酔の中で、セックスの三時間は過ぎてしまった。それにしても、こんなにいいセックスをしたのは近頃なかった事だった。それはもちろん可奈のせいだが。ぐんぐん真一郎が腰を動かしていると、鈴華は部屋の時計を見て、
 「あら、時間が来たわ。おしまいにしてよ。おまんこは、おしまい。」
 「あ、ま、まだイっていないのに。じゃあ、おまんこ、やめます。」
真一郎は鈴華の上で残念そうに言うと、彼女は、
 「それは、この次にしてよ。い・く・のは。結構、持つのね、あなたって。タフだわ、ちんこも名筆って、ところだわ。」
 と、あっさりと言った。真一郎は、まるでイソギンチャクのような鈴華の膣と体から離れた。すると、すぐに彼のペニスは小さくなっていった。真一郎は、
 「あれ?もう終わるんですか。もう一回戦は、できますけど。」
 「そうね、今日のオマンコは、ここまでよ。次は四十六手に貴方のチンコでチャレンジしましょうよ。まず次のオマンコは、騎上位からね。」
 そう言った鈴華の声は再び、三十代の女性の声に戻っていた。急いで服を着ると鈴華は、
 「それでは、帰りましょう。あなたは、もう、わたしのものだわ。」
 そう言うと、彼女は真一郎の腕とチンコを両手でぐっと掴んだ。モーテルを出て、車は東京郊外から都心の青山へと走っていった。緑深い青山の自宅の高級マンションの前で、真一郎は車を降ろしてもらった。彼は、
 「今度は、いつ会えますか?楽しみですね、近い内に。」
と車の外で鈴華に聞いていた。ハンドルに手をかけて鈴華は、
 「そうね、来週ぐらいかしらね。それまで、ちんこも、もっと鍛えていてよ。」
と言って微笑むと、手を振って車を発車していった。エレベーターで上がってマンションの玄関のドアを開けると、妻の
 「もう、遅かったわね。一体、何処に行っていたの?」
 という難詰する声がして、玄関口で可奈は、じーっと真一郎を見つめていた。真一郎は平静を装って、
 「漢方薬の店に行ったついでに、仕事の事で、打ち合わせをしていてね。それで遅くなったのさ。」
と彼は、可奈から目を逸らせて答えた。可奈は不審そうに、
 「ふーん、そう。いつもと違ってあなたの顔の血色がいいから、どうしたのかなと思ってね。」
 「何、仕事が好調なんだよ。それは緑川さんに絵の売れ行きを聞いたから、わかったんだけどね。」
 「そうだったの。あたしが、あなたのためを思って、夜の生活を控えて・・・うっ。」
と可奈は突然、呻くと、左胸をしっかり押さえた。
 「可奈、おい大丈夫か?!買って来た薬で・・・・・すぐ出すからな。」
真一郎は、手にした紙包みの中から漢方薬を取り出すと、可奈の口に含ませ、台所からコップに水を入れて持って来た。それを可奈は、ゴクンゴクン、フーッと飲み干した。それから、彼女は、いくらか落ち着いた表情をした。真一郎は、
 「さあ、無理をしないで、今日は、もう寝ていろよ。心臓に負担がかかるぞ、色々、心配すると。」
 彼は可奈の両肩を軽く叩いた。可奈は、こくりとうなずくと、
 「ええ、そうね。じゃあ、そうするわ。あたし、何も考えない方が、いいのかもね。」
 と呟く様に言って、ベッド・ルームへ一人で歩いていった。それから真一郎は、深夜まで絵を描いていたが、ベッドに入った時、可奈は、もう寝ていた。眼を閉じてから、真一郎が考えたのは鈴華の魅惑的な裸身だった。あの体、日焼けしていない部分が真っ白で、可奈よりも脂肪が、ついていて柔らかくて、しかし、アンダーヘアーは、かなり濃い目だった。いきりたった自分のものを突き入れると、彼女のオマンコは、ぴったりと、くっついて、それは煽動したのだ。ああ又、早く入れたい・・・ちんこを入れたい・・・
と真一郎は思うと、パジャマの股間は既にテントを張っていた。何故か、寝ていた可奈が寝返って、右手で真一郎の勃起したものを上から触れたが、可奈は眠ったままだった。その時、却って真一郎のものは小さくなっていった。(え、逆効果か、可奈の手は・・・)
 
入会すれば
  翌日、可奈には病院に行かせる事にして、真一郎はブラりと街中に出た。折から風の強い日で、枯れ葉が彼の顔に何回も当たった。思い当たって、真一郎は友を訪ねる事にした。
 練馬の見慣れた街角も、今日は何処か違って見えた。店の前に立つと、
 本日閉店
 (何だ、休みか。せっかく来たのに。こんな日に限って。)
 真一郎は、店の裏口の方を見た。すると、絵山が出てくるではないか。何か急いでいるようで、彼は真一郎には気付かなかった。(後を追ってみよう)真一郎は、尾行の原則に法って絵山について行った。(あ!)タクシーに絵山は乗ったのだ。そのあと、うまい具合にタクシーは来なかった。十分程、真一郎は、その場に立ち竦んでいたが、バスさえ通らなかった。(しまったなあ)これじゃあ、どうしようもないから、気の向くままに歩く事にした。その時、タクシーが向こうからやって来たので、手を挙げて停めた。黄色のタクシー、注意しなくていいか?乗り込むと、
 「お客様、どちらまで参りましょうか?」
 「あ?ああ、乃木坂にあるヒルサイド・センターまで。」
 ヒルサイド・センターは、様々なイベントを行ったり、貸しホールで企業や団体が使用したりするが、喫茶店や映画館もある巨大ビルで、一九九八年六月に堂々と東京都内に落成したものである。タクシーの運転手のドライブ・テクニックは見事なもので、先行く車をスイスイと追い抜いていき、車の揺れも感じさせない。昼前だから、そう車列もないのでヒルサイド・センターには、程なく着いた。
 「ありがとうございました。又の、ご利用を、お待ちしております。」
と礼を言って、深々と頭を下げる運転手を尻目に真一郎は、ヒルサイド・センターの正面玄関から入って行った。広い吹き抜けのエントランス・ロビーだ。中央に噴水があるのは、何か南国を思わせる。(ちょっと、ここで座っていくか)真一郎は、たくさん並んだ椅子の一つに腰掛けた。クッションが快い。何故か、ウトウトしかけてハッと眼を開けると、パリッとした黒のズボンが目の前にあった。ズボンの上の方で、声が急に話した。
 「真一郎さん。眼を開けてくださいよ、私です。」
  「絵山さん!びっくりしたよ、ここに、いるなんて。」
 眼の前には、正装した絵山が立っていた。タキシードである。真一郎も立ち上がって、
 「どうして、ここにいるんですか?あなたとは無関係な建物だと思っていました。」
 「これから、我々の集まりが、ありましてね。それより真一郎さん、さっき私の店に来たでしょう?」
 「なんで、それを知っているんです?」
 「気づいていたんですよ。それでも知らないふりをして、タクシーに乗った。それから、タクシーの中で、あなたを呼んだんです。」
 「ぼくを呼んだ?どうやって、呼んだんですか。聞こえなかったけど。」
 「そうでしょう。ここに来るようにね、呼びました。何か知らないけど、ここに来たくなったでしょう、真一郎さん。」
 「そう言えば、そうみたいな・・・・・気もするけどね。」
 「じゃあ、成功でしたね、私の呼びかけは。それでは、いきましょうか。」
 「何処へ行くんですか、絵山さん?」
 「勿論、我々の集まりにですよ。司祭も、私たちを待っていますから。お楽しみに。」
 何か疑問と不安と好奇心が心の中で、ない混ぜになった真一郎は、とにかく絵山のあとをついて行った。絵山はサッサと歩いて行く。エレベーターに乗って、十三階で降りて、四つ目の右側の部屋が、そうだった。コンコン。と絵山がノックする。やがて、ドアが開いた。十二、三才位の髪の長い少女が、ドアノブを持っていた。少女は、
 「司祭、フラテル絵山と、お客さんです。」
 「おー、さあ、早く入りナサイ。中へ。」
 と、中で大きな声がした。絵山の後に真一郎が入ると、その少女がドアを閉めた。眼の大きな女の子だ。部屋にいる外国人女性を見ると、真一郎は、
 「あっ!あなたは・・・・・。」
と思わず、声を出してしまった。外人女性はにっこり笑って、
 「オー、来ましたか。湖の時、以来ですねー。でも、何かとニュースでは知っていますよ、有名になった事もね。」
その部屋の一番奥に座っているのは、シャンメル・フォンフォンだった。真一郎と性魔術を行い、魔法の絵筆を授けた若き美しい魔女、だったのだ。
 紫のマントに頭の上には、王冠が載っている。部屋の机の左右に五人ずつ座って向かい合っている。それは机をくっつけたもので、その上には何やら魔術の道具らしきものが置いてある。シャンメルは、威厳のある声で、
 「フラテル絵山と、一緒に座りなさい。田宮さん。」
 それを聞いた真一郎は、すぐ、絵山と向かい合って座った。シャンメルは立ち上がって、
 「それでは、今カラ儀式を行ナイマス。今日ハ天王星ノ日ダカラ、ソノ星ノ神二呼ビカケマショウ。」
 と呼びかけると、皆は机の上にある本を取って、朗誦し始めた。
 「ホック・マンス・スプレンド・ツーイ・ボール。」
 まごつきながらも、真一郎も皆の声に合わせた。
「スプレンド・ツーイ・・・・。」
それが延々と繰り返されていく。何か異様な雰囲気が部屋の中に漂っていった。
 「ホック・マンス・スプレンド・ツーイ・・・・・。」
 五分程、合唱するようにすると、パン!と机を叩く音がして、皆は一斉に止めた。シャンメルが合図したのだ。それから、彼女は、
 「ヨロシイ。ソレでは、今から新入会者の入会式を行ナイたいと思いマスが、皆サン、ドウデスカ?」
 「賛成!」「異議なし!」「やりましょう」といった声が、あちこちでした。シャンメルは、立ったままで、
 「ソレデハ、田宮サン、アナタハ、コノ会ニ、入会スル気ハ、アリマスカ?」
と真剣に問いかけた。
 「あります。お願いします。ぜひ、やってみたいです。」
真一郎も、すぐに立ち上がった。それを見て、絵山が満足そうに肯く。シャンメルは、
 「ソレデハ、コチラへ。来るのです。」
言われるまま真一郎は、シャンメルのところへ歩み寄った。シャンメルの後ろには祭壇みたいなものがあったが、アタッシュケースを広げたものであることが分かる。ここは貸しホールで、最近は宗教団体にホールを貸さないところも多い。表のプレートには、「中世外国の詩の研究会」とあった。アンク十字のようなものも見られるが、男神像らしきものが中央に立っている。それは、それだけのものであると真一郎は思ったのだが、次の瞬間、そこから磁力のようなものが流れて来るのを感じた。
 「頭ヲ下ゲテ!下げなければ駄目です。」
 真一郎は、頭を下げた。その時、物凄い圧迫感が頭にかかってくるのを感じた。
 「うわあ、いやだ!やりたくない、こんなの、いやだーっ。」
彼は元の姿勢に戻ると、ドアに向かって一目散に走り出した。
 「待チナサイ!田宮サン!何故、やめるのです。あなたには呪いが、かかっているのですよ。それを解くには、あのままの姿勢で・・・」
シャンメルの美声が、彼を追ってきたが、それを振り払うようにドアを開けて、真一郎は外へ出た。(あんな、あんな事、してもらって、どうなるんだ。)(俺は今、幸せじゃないか)(オカルトみたいなものには興味は、ないんだ)真一郎は、ヒルサイド・センターの中を走って出て行った。人々の視線が彼に集まったが、それにも気づかなかった。
 とても落胆した表情でシャンメルが、
「逃ゲテ行ッタワネ。もう、呪いは解けないかもしれない。妹の・・・」
と呟いた。さっきの少女が部屋のドアを閉めた。シャンメルは悲嘆にくれた表情で、
 「モット、ヨクシテ、アゲタカッタノニ・・・・・これから、地獄が始まるよ、彼に。」
 
何のDVD?
 
 一目散に青山のマンションに帰った真一郎は、先に可奈が帰って来ているのに気がついた。可奈がソファから立ち上がって、
 「あなた、一体どうしたの?青い顔しているわよ。こんな顔、見るのは初めてだわ。」
と驚くように指摘すると、真一郎の顔を、まじまじと覗き込んだ。真一郎は、ごほんと咳払いすると、
 「いや、何でもないよ。久し振りに、ちょっと走ったら、急に息切れが、してね。」
 「まあ、それは、いけないわ。慣れないことを、急にしないでね。あなただけの体じゃ、ないんですもの。」
 「ああ、そうだね。それより病院の方は、どうだったの?検査結果は良かったのか。」
 「ええ、別に心配は、ないっていう事ですって。ただ、激しい興奮は、しないようにすれば、だんだん良くなって、いくそうよ。」
 「そうか、それは良かったな。刺激や興奮が、ないようにしなきゃ、いけないね。」
 だが、これから一週間後に起こる出来事を、今の二人は今、知る由もないのだ。
 次の日も真一郎は、鈴華とホテル・マウンテンストップへ車で行った。その日は、とうとう、真一郎はイッてしまった。その後で鈴華は、
 「明日も来ない?もっといっぱい、射精できるわ。ちんこ、大丈夫でしょ。」
と二十代の笑顔で淫らに聞いた。
 「ええ、もちろん。ちんこ、オッケーですよ。鈴華さん。あなたの、あそこは、とても滑らかだ。」
湧き起こる活力を感じている真一郎は、すぐに即答した。鈴華は艶やかにベッドの上で笑って、
 「明日は、もう少しイクのを遅らせられるかなー。もっと、ちんこを味わいたいんですものね。いいかな。」
と聞くとすぐに、真一郎の小さくなったものを右手でさっと触った。
 「あっ、もちろんです。頑張ります。意志の力で射精は、伸ばせるはずです。」
 「うん、あなたのちんこ、少し硬くなっているわよ。射精を伸ばす事、それも画家の修行の一つだわ。」
 「そうですね。今日は、この辺かもしれません。ちんこの筋肉痛もあるんですよ。」
 「ええ、そうだわね。湿布薬でも貼れば、いいんじゃない?今度、持って来ておくわ、ちんこの湿布薬。」
右手を名残惜しそうに、真一郎のちんこから離すと、鈴華はショートカットの髪を、ささっと整えた。
 
 その時、一方、ウルフマン佐山は、キャンメルのマンションの部屋を訪れていた。
 「オヤ、マア、お変ワリなく。あなた、何か逞しくなったようね。」
椅子に座ったキャンメルは、動かしていた手を止めて、佐山を見上げた。佐山は笑うと、
 「いえね、もう、こうなっていまして。これを、ご覧下さい。」
と唐突に言うと、ズボンを、たくし上げて見せた。何と、そこは空間になっていた。アメリカのマジシャン、カッパフィールドのマジックみたいに、ズボン下の向こうの場所が見えたのだ。キャンメルは、もちろん、絶句した。佐山は、
 「もう、両足は、ないんですよ。段々、下腹部の方まで、来ましたね。そのうち僕の体は、全部、無くなるでしょう。」
 だが、佐山の顔は豪快に笑っていた。そして、
 「これで、いいんです。彼女も同じように、なってきているんですから。でも、その前に子供は産もう、と思っているみたいです。」
 
   その時、水川マキはマンションの自室で、赤ちゃんを突如、出産した。
   「オギャー!」
それは、女の子だった。自力で一人で出産したのだ。幽霊に難産はない。
 
キャンメルは、佐山に、
   「ソレハ、ソレハ。マキは私の娘ですから。これから霊界に行ッテモ、ヨロシクネ。二人で仲良く暮らすのですよ。」
   それからキャンメルは、静かな笑みを浮かべて佐山を見つめた。
 
   真一郎は、それから連日、鈴華とマウンテン・ストップに行っていた。セックスに励んで帰ってくると、可奈は日に日に元気になっているので、彼は良心の咎めは感じなくなっていった。可奈は見るからに元気そうに、
   「あなた。あの薬のおかげで、良くなっていってるみたいよ。とても、体の調子がいいの。」
   「それは、よかったな。緑川さんに感謝しなくちゃ、いけないよ。おれたち二人の恩人だな。」
   そう言って、真一郎は微妙な表情をしたが、可奈は、それに全く気づかず、
   「本当よねえ。今度、緑川さんが来たら、よーく、お礼を言っておくわ。あなたからも、よく言っといてね。会うんでしょ、又。」
   「ああ、言っとくよ。もちろんだとも、常識だ、そんな事は。」
   それは、マウンテン・ストップのベッドの上で、という事になるのかも知れない。そう思うと、真一郎は苦笑しそうになった。そういう風に一週間は流れた。もちろん、真一郎は鈴華にはお礼を言ったが、それはギャラリー銀月の店内で、であった。それを聞いた鈴華は、
   「それは、よかったわ。漢方薬でも、いろいろあるらしいけど、専門家が教えてくれたものだから、確かなのね。」
 と語ると、親切そのものの笑顔を見せたのだった。
その翌日、青山のマンションで、可奈が今日も薬を飲もうと思った時、玄関のチャイ
  ムが鳴った。可奈は、インターフォンのところへ行き、
   「どなたですか?」
   「あ、緑川です。いつも、お世話になっています。」
   「ああ、どうぞ。いらっしゃいませ、今、開けますわ。」
  可奈は、鈴華に直接、お礼を言える、何か料理でも作って出そうかしら、と楽しく考えていた。その時、真一郎は遠出していた。可奈は玄関を開けて、緑川鈴華を招じ入れた。鈴華は、大きな赤いバッグを手に持っている。リビングに二人で座ると、可奈は、
   「本当に、どうも、ありがとうございます。お陰様で、体の調子は、よくなっていっていますわ。」
  鈴華は笑顔で、うなずくと、
   「それは、よかったですね。今日はね、奥さん、ちょっと見せたいものが、ありましてね。」
   「何ですの?あたしちょっと、お茶を持ってきますわ・・・・・・。」
  と言って立ち上がりかけた可奈を鈴華は、両手で制止して、
   「いいんですのよ。DVDを見るのが、終わってからの方が、いいと思いますよ。」
   そう言って彼女は、バッグからDVDを取り出した。可奈は、
   「どんなDVDなんですか?もしかして健康にいい、とか。」
   「もちろん、そうですわよ。テープをデッキに入れてもよろしいかしら?」
   「あ、私が、やります。その位、させてください。楽しみですね。」
   可奈は鈴華からDVDテープを受け取ると、DVDデッキに入れた。黒い画面が、次には、とある一室を映し出した。そこに出てきた二人は全裸だ。やがて二人は抱き合って、ベッドに転がり込む。激しく動く、男の動きの中で、二人の顔が画面に映った。真一郎と鈴華だ!!!可奈の表情が、いきなり、暗黒の雲のように真っ暗になった。そして、
      「何よ、これ・・・・あなた達は、こんな事をして、そして、わたしに見せてくれるのね。」
   と苦しそうに言うと、可奈は心臓に両手をぴたっと当てた。それから、
   「うっ、苦しい。こんなもの見せて、あたしを・・・・許さない・・・・許さないわ・・・・緑川・・・。」
   ビクッと可奈の体が動くと、ドタン、とその場に倒れてしまった。鈴華は近寄って、可奈の左胸に右手を当てた。可奈の心臓は、すでに止まっていた。即死である。その時、チェロの陰鬱なメロディーが室内に流れてきた。(何処かで、チェロを弾いているわね)そう思うと、うなずいて赤いバッグを取り、DVDデッキからDVDを取り出してバッグの中に入れると、鈴華は、ゆっくりと歩いて外へ出て行った。
   それから三時間後、真一郎が青山のマンションに戻ってきた。リビングに入ると、
   「可奈、どうしたんだ?玄関、開いているじゃないか、おい・・・・。」
  最後まで言わずに、真一郎は、はっと息を呑んだ。悔しそうな苦悶の表情を浮かべて、可奈は、そこに倒れていた。
   「しっかりしろ、おい!生きているんだろう、死ぬんじゃないぞ!」
   真一郎は、可奈を、しっかり揺さぶったが、その体は既に冷たくなっていたのだ。
 
絵はどうなる?
 
  練馬の絵山の店で
   「絵山さん、もう妻は死んでしまったよ。やっぱり心臓だった、原因はね。」
  ぽつんと、真一郎は語った。絵山は本当に驚いて、
   「え、何ですって!?奥さんが、ですか。まだ、お若いのに・・・・・それは残念です。」
   「心臓が、とても弱かったんだ。それで、今日の午後に・・・・死にました。明日、妻の葬式を、やるんです。よかったら、来て下さい。」
   「じゃあ、今晩は、お通夜じゃありませんか。よかったら、今から参加させて下さいよ。」
   「そうですか。それは有難いです。では、お待ちしています、絵山さん。」
   「ええ、それは、参りますとも。もしかしたら、いえ、お気を強くしていてください。」
   それを聞くと真一郎は、軽くうなずいて店を出て行った。それから真一郎は、銀座のギャラリー銀月へ行った。自社ビル内にある豪華な応接室で、緑川鈴華は真一郎に楽しげに話した。
   「まあ、田宮さん。お顔色が悪いわよ。どうしました?」
   「実は妻が死にましてね・・・・それで、だと思います。」
   「まあ、そうだったの。それは・・・。今日、お会いした時は、でもまだ、お元気そうだったわ。ほんとに、わからないものね。」
   「そうですか。妻と、会っていたんですね。でも、とうとう心臓で・・・・妻は冷たくなってしまって。」
   真一郎は、しゃくりあげそうになった。鈴華は無表情な顔で、
   「それは、お気の毒にね。あたしの漢方薬も無駄だったみたいね。医学も、あてには、ならないし。」
   「緑川さん、明日、妻の葬式をします。よかったら・・・・是非、おいでください。」
   「ああ、明日はねえ、あたし、パリに発つのよ。それで二、三日、帰って来ないわ。だから、あなたとベッドに入るのも・・・。」
   悲しみと性欲の入り混じった表情で、真一郎は、
「パリ、そうですか。では、今晩のお通夜だけでも・・・・少しだけで、いいですから。」
   「ごめんなさいね、ほんとに。今日の夜、乗るのですもの。だから、また、そのうち・・・・・に。お悔みは、いたしますわ。」
   「そうですか、わかりました。折角、色々と、お世話していただいたのに・・・・こんな事に妻が、なってしまって。」
   「いいのよ、そんな事、気にしなくても。わたしこそ、何のお役にも、立てなかったわね。真一郎さん。」
   そこで、鈴華は急に明るい顔で、
   「元気と精力を出してね。可奈さんが、いなくなっても、あたしが、いるじゃない。激しいセックスには、不自由しないわよ。」
   「う、うん。そ、そうですね。そういえば、可奈は、もう、セックスは、だめでしたから・・・」
   曖昧に頷くと、真一郎は、その部屋を出て行った。
 
その夜、7時になると、青山の真一郎のマンションのインターフォンが突然、鳴った。
   「はい、どなたですか?」
   「ああ、こんばんわ、ぼくは絵山です。」
   「ああ、どうぞ。絵山さん、お待ちしていました。」
  玄関のドアを開けると、絵山と、その後ろにシャンメルが立っていた。二人とも黒い喪服を着ている。真一郎は、ぎょっとしたが、話す、
   「どうぞ、どうぞ。この前は・・・・・お世話になりましたね。おかげて有名には、なれましたが。」
   「気ニシナイデ、いいのです。魔術は効くのですよ。当然なのです。」
   それから真一郎は、二人を可奈の死体のところへ導いた。棺に入ったその顔は、まだ苦い苦悶の表情を浮かべていた。それを見た途端、シャンメルは、
   「マア!コレハ・・・妹ガ、ヤッタンダワ・・・・・なんて、ひどいことを、したのかしら。」
   と、ため息をつくと、白い両手を天に向けて上げた。真一郎は顔色を急激に青色に変えた。そして、
   「妹ですって? それは、どういうこと、ですか?」
   「それは、話セバ長クナルのよ。デモ、大丈夫です。わたしが、可奈ヲ、救ウのですから。」
   何故、この美若魔女は、可奈の名前を知っているのだろうと、その時、真一郎は不思議に思ったが、多分、絵山からでも聞いたのだろうと思い直した。その時、黙っていた電話が、急に呼びかけた。ルルルルル・・・・・・・。
   「はい。もしもし。今、忙しいんですけどね。」
   「あー、田宮さんかね?すまん、まあ、少し時間をワシに、くれないか。」
   「はい、僕は田宮ですが。あなたは、どなたですか。」
   「ワシは宮谷ですよ。美術評論家のね。」
   「ああ、これは、どうも先生。とても、ご無沙汰しております。」
   「どうもじゃなくて、大変だよ。あなたから最初に買った絵ね、奥さんの。あの肖像画の顔が変わっているんだよ。前は微笑んでいたろう?それがねえ、今は、とても苦しげな表情になっているんだ。どうしたんだろうねえ。寒気のする怪奇な話だ。」
   真一郎は、又、ぎょっとしながら、
   「妻は今日、突然、死にましたのですが。」
   「それだ!それで、こんなになったんじゃ、ないのかね。こんなオカルトみたいな事は、今までワシは信じなかったが、どうもそれ以外、考えられんからさ。」
   「それは、何とも言いかねます。わたしは、オカルトは、わかりません。」
   「でも、気味が悪いから、あんた、引き取ってくれんか。肖像画の代金は、返すから。」
   「いえ、私は、もう、その絵は、持ちたくないのですが・・・・それは亡き妻を思い出しますので・・・・。」
   「そうか。それじゃあ、緑川さんに、引き取ってもらおう。ちょっと、今、電話を、かけてみるよ。待っていてくれ。」
   カタリと受話器を置く音がした。別の部屋にでも行ったらしい。やがて、戻ってくる足音がして、
   「やあ、お待たせしたね。彼女が絵を引き取ってくれるそうだ。明日、来るってね。」
   「それは、よかったですね。安心しました。」
   「あんたも銀月に行ったら、見せてもらいなさいよ。凄い顔なんだ。今にも血が出てきそうな・・・・・うっ、うっ、ぐえっ!!!」
  その時、バタンと受話器が落ちる音がした。
   「宮谷さん!どうなさいました?宮谷さん!!」
  そのまま三十秒程、真一郎は電話の応答を待っていた。だが、さっぱり電話は応答がない。
   「これは大変だ!よし、電話するぞ。」
  真一郎は一旦、受話器を置くと、また取り上げて電話番号を素早く押した。
「もしもし、鈴・・緑川さんですか?こちらは田宮です。宮谷さんが、大変らしいですよ。今からすぐ、宮谷さんのところへ、行ってもらえませんか?」
   「もう、これから出るところなのよ。その事は、警察に言っておくわ。」
  ガチャン、といきなり電話は切れた。二人の方に眼をやると、魔女シャンメルが可奈の額に手を当てて、何やら呟いていた。
   「何をしているんですか?そんな事をして一体・・・」
  仁王立ちになって、真一郎は聞いた。
   「・・・・・ヨッテ、汝ノ眠リハ、モウスグ解カレン事ヲ。」
  そこでシャンメルは手を離し、すらりと立ち上がった。そう厳かに言い終わると、彼女はコックリと頷いて、
   「サア、フラテル絵山、行キマショウ。これでいいのです。」
  二人は、軽い足取りで出て行った。真一郎は、声をかける間もなく、茫然としていた。
 苦悶の肖像画
   鈴華から連絡を受けた警察が、宮谷氏の自邸に来ていた。明かりは点いているのに、ベルを押しても全く応答がない。
   「宮谷さん!いないのですか。警察です、入りますよ!」
   見るからに屈強そうな若い警察官三人が、宮谷家の玄関ドアに思いっきり体当たりした。すると、すぐにドアは呆気なく開いた。そこに血の匂いが、ぷーんと漂ってきた。その匂いのする方へ、警察官全員は急いだ。これは寝室からだ!中に入ると宮谷老人は、どたりと倒れていた。口のところから何かが、飛び出ている。
   「ウッ!これは。あれでは。」
  最初に近づいた警官が、吐きそうになった口を押さえた。宮谷老人の口から出ていたもの、それは心臓だったのだ。血がどくどくと、その心臓から流れ出ていた。
 
   可奈の葬式も形どおり終わり、時は、すぐに流れていった。真一郎は、依然、人気画家だった。ギャラリー銀月も、ビルをもう一つ、持つようになった。
  真一郎と鈴華の肉体関係は、山の上のラブ・ホテルから都内の高級ホテルに移った。マスコミは芸能人は追うが、画家などは、あまり追わない。ただ、真一郎のマンションの前には記者らしいのが、ウロウロしている事もあった。それで、なかなか鈴華も真一郎のマンションに入れなかったのだ。そんな或る日、リビングでパソコンを広げた真一郎はネットニュースの社会面に次のような記事を見た。
   エリートサラリーマンと人気歌手が蒸発?
       さる二十三日、人気歌手水川マキさん(21)と夫、佐山志郎さんのマンションに近所の人の通報を受けて、警察官数人がマンションのオーナーから鍵を借りて入ったところ、明かりが昼というのに点いたままで、寝室のベッドの上にはペアルックのパジャマが並んで置いてあった。二人には一才にもならない女児がいたが、二十日の日、都内のある施設に預けられていた事が判明した。警察では二人の行方を捜しているが、今のところ手がかりはない。
   パソコンを閉じた真一郎は、(何処かで聞いたことのある名だな、佐山って。水川マキは、知っているけど)とボンヤリと思った。
   可奈がショックで死んでから、一年経過した日に、緑川鈴華と真一郎は結婚した。魔法の筆で描いた可奈の肖像画は、宮谷氏の遺族が、ギャラリー銀月に売った。鈴華が中々、購買に応じなかったので、絵の値段は捨て値同然だった。宮谷氏が死んだ日、氏から来てくれ、と電話があった時に、鈴華は行くと言った後でパリ行きを思い出したのだが、その時、電話は既に切れていた。         あの絵は、可奈の顔の表情が、あまりにも凄い顔になっているので、画廊にも置けず、鈴華は自宅マンションの押入れの中に入れていた。
  真一郎との新婚旅行はヨーロッパ周遊で一ヶ月ほど行っていたが、帰って来てから真一郎のマンションに、鈴華は荷物を運ぶ事になった。無事、荷物を運び終わった鈴華に真一郎は、
   「おい、あの絵は、どうした?亡くなった可奈の肖像画だよ。何処にも見えないんだ。」
   と聞いた。鈴華は新妻の表情で、
   「ああ、可奈さんの、あの絵ね?」
   「うん。そうさ、何処か知っているかい。」
   「ええ、それはね、ここよ。ここに、あるの。」
   そう、どうでもいいように言うと鈴華は、一つのダンボール箱を開けた。そして、
   「これよ。気味が悪いので、ここに、しまっておいたのよ。あなたも見たくないはずだわ。こんな顔は。」
   「うーん、凄いなあ。初めて見たよ。こんな顔をして死んだんだろうなあ。可哀想に。」
   「さあね、どうかしら。あたしが、知るはずは、ないじゃないのよ。もう、あなたも、忘れた方が、いいわよ。」
   「でもねえ、これ、おれのアトリエに置いておくよ。だって、いつでも初心に帰りたいから、そのためにね。」
   「そうね、そうか。そういうんならね、そうしても、いいわよ。」
   (捨てて、しまえば、よかった)と鈴華は苦々しく思った。その晩、いつものように二人はベッドを共にした。
   二人のマンションの寝室の窓ガラスに掛かったカーテンを開けて、そこで二人は、おまんこする。部屋は高い階で、窓の外には森が見えて、起業のビルが見えるが、そのビルの照明は落ちていて暗く、誰もいないらしい。
  鈴華は、その窓ガラスの前に立って、丸い大きな白い尻と背中を真一郎に向けて、ぐっと尻を突き出すと、肛門の下の長い淫裂が少し開いて真一郎の太い肉欲棒を咥えたがっているように見える。すでに彼女は全裸で、夫の真一郎は遅ればせながら服を脱ぎ、パンツを捨てて立つと同時にムスコも立たせた。
  鈴華の尻から見える柔らかなピンクの裂け目に、見た途端、彼は全身の血をムスコに与えたらしい。
  真一郎は鈴華に後ろから密着すると、彼女の背中にキスして、乳房を両手で揉み、揉みとリズムをつけてモミながら妻になった彼女の淫膣に男のシンボルマークを突き入れた。
 鈴華は頭と背中をのけ反らせると、
「ああっ、ああっ、はぁっ、すごいいっ。」
と息を乱す。信一郎のシンボルマークは彼女のオマンコの中の奥の細道を激しく行ったり、来り、しているのだ。その擦られる感覚、柔らかい自分の膣内を固いもので擦られるという、処女だった真面目な彼女には、これが今までのどんな感覚よりも快感で、しかも、新婚旅行でパリの森の中で真一郎と野外セックスをした時に、夫に背中を向けて、樹木に両手をつくと、お尻を高く上げ、自分のオマンコを差し向けた時、その時はスカートを履いていたけど、夫は、それを、たくし上げて、ズボンの中から自分の太くなったモノを入れてくれた、その快感を思い出して、今、夫婦の寝室で再び、鈴華は行っているのだ。
がしがしっ、と真一郎からマンコを突かれながら彼女は、
「はぁん、はぁん、はぁん、いい、いい、いい。」
と鼻にかかった悶え声を出し続ける。自分で顔を後ろに捻って、キスをおねだりするようにするから、夫は口づけて舌を入れ、絡み合わせて、彼女の両手首を自分の両手で抑える。
鈴華は真一郎の、ものになった気がした。可奈に勝ったのだ。唇を彼が離すと、鈴華は聞く。
「ねえ、あ、はんっ。可奈さんのオマンコと、わたしのオマンコ、どっちが、気持ちいいの?」
「それは、鈴華のオマンコの方かな。みみず万匹っとこだ。それに、そうめんの感覚がして気持ちいい。」
夫のその言葉に鈴華はオマンコを連続的に締め付けた。すると真一郎は、
「ああっ、駄目だ、でるう。」
 愛の交歓が終わった後で、鈴華は真一郎に、もたれかかると、
「ねえ、幽霊なんて信じる?あなた。わたしは、信じないけどね。」
「さあ、分からないなあ。今まで、ぼくも見た事もないし、見たら信じるかも。」
「そう、あたしが死んだら、全裸で幽霊になって出てきて、あげようかなあ。それで、あなた、信じたら、どうなの。」
「よせよ、変な話。そんなの、まだ、ずーっと先のことだろう。全裸で幽霊なんて、ヘアヌードの女幽霊か。それは興奮できそうもない事を言うものじゃないよ。」
   「あは、そうね。いや、うふん、そうよ。それより、もう一回、ちんこ入れて、これから、セックスできるの?」
   「ああ、やれるさ。すぐに、びんびん立ちだよ。ちんこ、見てくれないか。」
   「うふふ、どれなの?どんなに、なっているのかしら、あなたのちんこ。」
   そう淫らに言うと、鈴華は真一郎の股間に右手を当てた。その途端、それは、みるみる硬くなっていった。鈴華は、ぺろりと舌なめずりして、
   「すごーいわ。とっても、元気いいのね。天井に向かって反り返っているわ。あたしのオマンコの中に、早く入れて。」
   「よし、いくぞお。たっぷりと、マンコで味わってくれよ。」
   真一郎は元気な自分のものを、鈴華の濃い目のヘアーにあてた。
   「あっ、感じるわっ。もう、早く入れてよー。そこはヘアーよ。」
   可奈の肖像画は、二人が激しくセックスを始めたベッドの上端の台の上に立てかけてあった。
   「あっ、オマンコ、あはん、に入ったわ。すごーい、いいっ。」
   そう叫ぶように声を上げると、鈴華は炭のような黒髪を振り乱して、淫美に、のけぞった。その時、肖像画の可奈の表情は苦悶の表情から悲しみで溢れた表情になったが、我を忘れてセックスに励む二人は、その奇怪な変化に気づかなかった。
 抜け出して
  翌日、鈴華の乳房を目の前に見て起き上がった真一郎は、湘南海岸の方まで絵の写生に行った。
   海の絵を描くつもりである。鈴華は今日が画廊の休日だったので、マンションの部屋の中を掃除しようと思い立って、まずアトリエに行った。二人のマンションは新宿にある。そこで、まず彼女の眼が、いったのは、あの可奈の絵だった。
   「あああああ・・・・・。」
   鈴華は思わず声を挙げていた。絵の可奈の顔が苦悶の表情から、穏やかな顔に変わっている。(あなたも、ここに来たら落ち着いたのね)鈴華はそう思った。と鈴華の耳の中で声がした。(そうじゃないわよ)えっ!?鈴華が、きょろきょろしていると、(こっちよ)
  突然、絵の方から声がした。鈴華が見ると、何と絵の中の可奈は微笑んでいるではないか。これは一体・・・・・・・・。
   (今、わたしが笑っているのはね、あなたを殺せるからなの。驚いた?)
  そう言うと、可奈の口唇の両端は、もっと上の方に曲がった。
   「いやあっ!こんなのって、あり得ない話だわ。こわいいっ。」
  鈴華は大声を出すと、その部屋を出ようとした。
   (待って。逃げられると思うの?あなたは罪を償うのよ。私が刑罰をあげるわ。)
   その声がすると同時に、鈴華の身動きが、ぴくり、と停まった。
   (ね、わたしから逃げられると思うの?それは無理よ。さあ、楽しんでね。)
   その声が聞こえると同時に、鈴華の体は金縛りにあったように、びくとも動けなくなっていた。
   「く、苦しい。苦しくって死にそうだわ。助けて・・・」
   と叫びながら、鈴華は左胸に手を当てた。
   「あああ、し、心・・・・・・臓が。破裂しそうだわ。」
   (ふふふ、あなたは、わたしを、そんな目にあわせたのよ。一緒じゃないの、これで、おあいこ。)
   「う、うぐっ、ぐわっ!!ぐえっ。何かが喉を上がってくるみたいな、あああっ。」
  という凄まじい呻き声と共に、鈴華は口から自分の心臓を吐き出して、その場にどしんと倒れた。フーッという風のようなものが、可奈の肖像画から巻き起こった。何か薄青い幽体のようなものが、絵から出て来ると鈴華の体の中に入った。すると、ピクピクッと彼女の体が動いたかと思うと、手を伸ばして自分の血まみれの心臓を掴み、口の中へ入れた。そして、ゆっくりと立ち上がった。それから鈴華は、おほほ、と笑った。すると、その顔が、だんだんと変わっていったのだ。そして、ついに、その顔は元気な可奈の顔になった。と、同時に鈴華の体型も可奈のものになっていた。その時、玄関の方から、
   「ただ今。帰ったよ。海の絵は上出来だ、やっほーい。」
   と声がして、真一郎が帰って来た。鈴華の返事が、なかったからだろう、鍵を開ける音がした。ドアが開いて、
   「何だ、出かけたのか。おーい、鈴華、絵を見てくれよ、今すぐに。」
  と真一郎は甘い声で言うと、彼の足は、アトリエへと向かった。見るとアトリエの扉は開いていた。突如、声がした。
   「お帰りなさい。あなた。あたし、可奈よ。」
  その声を聞いた真一郎は、その場で飛び上がりそうになった。そして、すっくと立っている可奈を見ると、真一郎は自分の眼を疑った。しばし、呆然とすると、それから、
   「幽、幽霊なのか、おまえ。この世に未練が、あるのはわかるが・・・」
  彼が、やっと、発した言葉がそれだった。
   「馬鹿ね、触ってみてよ。あたしの肉体を。胸を揉んでみて。わかるはずだわ。」
  その声は、いまだに忘れない、あの明るい可奈の声だ。真一郎は、可奈をぐいと抱き寄せた。ほんのりとした体温を感じた。幽霊ではない。そのまま、
   「あの女は何処へ行った?鈴華、いや、旧姓、緑川は。」
   「さあ、何処かに出て行ったみたいよ。あたしも、見なかったわ。結婚してたのね。」
   そう言うと可奈は、いたずらっぽく笑った。真一郎は、
   「もう、戻って来ない方が、いいな。あの女より、可奈の方がいい。」
   「ええ、戻って来ないわよ。そんな気がする。」
   真一郎は、そこで可奈を、ゆっくりと離した。
   「でも、どうやって?・・・・・生き返れたんだ。信じられない、夢なのかな、これは。」
   「幽界にね、シャンメルさんが来てくれたのよ。それで、生き返りの術を教えてもらったわ。だから、こうして・・・・・。」
   「そうだったのか。もう、心臓は大丈夫だろうね?また、漢方薬が必要になるんじゃないか。」
   「ええ、大丈夫よ。全く別人のようになったの。自分の体も変わったから。」
   「それは、良かった。では、心置きなくセックスが出来る。楽しみだね。」
   その時、ピンポーンとチャイムが鳴った。真一郎は、忌々しそうに玄関に行って、ドアを開けた。絵山の顔が見えると、
   「やあ、もう、お戻りですね。可奈さんは。わかって、いますよ。」
  と、にこやかに言った。その後ろには、シャンメルが神秘的に立っていた。真一郎の後ろには、可奈が、ぴったりと寄り添っていた。シャンメルは、
   「お帰り、可奈。魔術の成功です。わたしも、これを確信していたよ。」
   そう言うと、手を振った。可奈は、にっこり笑うと、
   「ただ今。シャンメルさん。これで、二度も助けてもらいましたわね。何とお礼をすればいいか、今、考えています。」
   真一郎は、絵山に、
   「魔術ですか、これは。ぼくは、とても信じられませんけれど。」
  と聞いた。絵山は爽快な顔をして、
   「ええ、そうなんです。死人を生き返らせる方法は、あるのですよ。バビロニアの魔術です。」
 
転落と復活
  真一郎と可奈はそれから、新宿のマンションを引き払い、郊外の町田市へと引っ越した。何故なら、新宿のマンションは、可奈がとても嫌がったからだ。
  町田市とは、具体的には町田市高ヶ坂である。近くに芹ケ谷公園があって、国際版画美術館がある。可奈の実家がある森野にも一キロほどのところである。真一郎は、これからは楽しい生活になると信じていた。が、しかし、折からの世界的大不況のせいか、真一郎の絵は売れなくなっていった。又、美術評論家の宮谷氏の死去も彼の絵を強く推薦する人がいなくなった原因だ。それでも、過去の蓄えで二人は生活していたが、何分にも可奈は大富豪の娘、浪費する事は何とも思っていないし、それに彼女は真一郎の才能を信じていたため、浪費する事も彼の創作のためだと信じてもいたからである。不思議な事に、可奈が生き返ってから、真一郎の絵には前にあった癒しの力が、なくなっていた。それを所有していた人達も、それを実感したのだ。ギャラリー銀月の女主人、緑川鈴華が死んでしまったのも、真一郎の絵が売れなくなった理由の一つである。可奈の浪費癖と真一郎も、これから先も絵は売れるだろうという予測からの一緒になっての浪費は、十億円あった貯金を五千万円にまでしてしまった。そんなある日、真一郎は貯金通帳を見て、
   「もう、これだけか。後は、あんまりないな。可奈、贅沢はやめようよ。」
  と、相変わらず、高価な買い物をする可奈に忠告して言った。
   「そうねえ、でも、あなたの絵、又、売れるわよ。だから楽天的で、いてよ。」
   そう言って、可奈は携帯電話を取り出すと、
   「いい方法が、あるわ。魔女のシャンメルさんに、頼めば、いいじゃない。あたし、電話をするから。」
   「そんな事したってな・・・・・。」
   そういう真一郎の声を聞かずに可奈は、シャンメルに携帯電話をかけた。
   「もしもし、シャンメルさん?お久し振りです。可奈です。実は、真一郎さんの絵が売れなくなって・・・えっ?本当ですか?やっぱり魔術で!・・・・はい、行きます。は?真一郎さん一人で?わかりました。じゃあ、伝えます。よろしく。」
   可奈は、携帯電話を切ると、真一郎を希望に満ちた目で見た。
   「シャンメルさんが魔術で、又、絵を売れるように、してくださるんですって!」
   「本当かな、でも・・・もう、それしか、ないかもな。もともと、あの魔法の筆のおかげだと思うよ、おれの絵が売れたのは。」
   真一郎は、そのアトリエの部屋で、そう呟くと二、三回うなずいた。
  
  町田駅は、JR横浜線と小田急線が一緒になったところだ。駅は二階の高さの通路を通って、乗り換えられる。そこを行きかう人々の数は、新宿駅を思わせるほどだ。シャンメルの屋敷は東小金井にあるため、新宿駅から中央線に乗って、真一郎は電車に乗っていた。車中で、少し遠くにいた、若者達が、真一郎に気づくと、一人の青年が、ひそひそ声で、
   「おい、田宮真一郎じゃないか。あいつも、結局は詐欺師だったのかな。」
  すると、もう一人の青年が、
   「最近、そんなのばっかだよ。もう、売れないさ、あいつの絵。何の面白みも、ないもの。」
  真一郎は、それにも気づかず、髭も、かなり生やして、呆然とした感じで座席に座っていた。
  やがて東小金井の駅を降りて、真一郎はシャンメルに携帯電話で屋敷の場所を聞きながら、歩いていき、やがて、その玄関についた。彼がベルをリンリンと鳴らすと、しばらくして、シャンメルがぬっと現れた。真一郎は、希望の光を彼女の背後に感じていた。シャンメルは、にこやかに、
  「前に、もっと売れたければ、連絡しなさいと言ったでしょ。早くすれば、よかったのにね。もう結構、落ちぶれたようね。」
  シャンメルは、また、とても日本語が、うまくなっていた。彼女は優しく手招きをして、
  「さあ、お入りよ。魔術で復活させてあげるからさ、あんたの絵を、ね。楽しみだろ。」
  それから、二人は祭壇室へ行った。シャンメルは、真一郎を見ると、
  「あなた、ここ初めてね。緊張しなくてもいいよ。」
  そこには、香の煙が、もうもうと立ち込めていた。真一郎は、ゴホンと咳払いすると、
  「ええ。特にぼくは、怖いとも思いません。」
  「そう。あなたを前よりも、もっと、有名にしてあげますよ。ただし、あなたは、何らかのものをビフロウス様に捧げる事になりますが、それは大丈夫ですね?」
  「何らかのですか?もしかして、それは魂とか、ですか?」
  シャンメルは首を、すぐに横に振って、
  「いえいえ、それは、ありません。あなたも寿命どおり生きられます。魂なんて悪魔が欲しがるものです。」
  「では、ぼくは何を捧げれば、よいのですか?もしかして、ぼくの性的能力とか?インポになればいい、とかですか。」
  「それは、私にも、わからないのです。ビフロウス様が、お決めになる事ですから。私には、何とも言えません、今のところは。」
  というと、シャンメルは、背筋をしゃんと伸ばした。真一郎は、少し迷っていた。でも、どーせ、おれには絵の才能なんか、なかったんだ、なら、毒も食らわば皿までだ、と思うと、
  「もちろん、ぼくは、かまいません。何だって、いいです。捧げられるものなら何だって、差し上げます。だから、よろしくお願いします。」
  とシャンメルの神秘的な眼を見て、決然と言った。
  「おー、よろしい答えです。では、それでは始めます。まず、あの祭壇に礼拝するのでーす。」
  真一郎は、その祭壇に向かって深々と頭を下げた。シャンメルは、近くにあった模造の西洋の刀を取ると、
  「ビフロウス様、どうか、この青年に、お力をおあたーえ下さい。」
  と懇請して、真一郎の両肩を剣で一度ずつ、叩いた。その時、祭壇にあった二本の蝋燭の炎が、ぱっ、
  と上に十センチ程、伸びた。シャンメルは、それを見ると、
  「ビフロウス様は、了承されました。これで、よろしい。これで又、あなたの絵は売れますよ。」
  と確信的に言って、深く、うなずいた。いささか、拍子抜けした顔で真一郎は、
  「え、これだけで、いいのですか?もう、終わりなんですか。なんだか、短すぎて。」
  「ええ、あなたが来る前に、長い儀式は、すませていましたからねー。」
  「そうだったのですか。あ、あのー、お礼は、いくらすれば・・・よろしいんでしょう。」
  「おー、よろしいのです。これで、あの時、湖で、おぼれかかった、わたっしを助けてくれた御礼が出来ましたからね。」
  「そうですか。それでは、ありがたく、お礼なしという事で。」
  シャンメルは、にやっと笑うと、
  「ガンバッテネ。お礼はビフロウス様に差し上げてください。私は神様の召使です。」
  と言った。
  真一郎が向きを変えようとすると、シャンメルが、
「お礼はいいけど、二人で楽しみましょう。」
と色気のある声で誘った。
真一郎が彼女を見ると、すでにシャンメルは白いブラジャーとショーツだけに、なっていた。二十五歳のような、その魅惑する体に、とても真一郎は抵抗できなかった。
「シャンメルさん。ぼく、体で、お礼します。」
というが早く、彼は服を全部脱ぎ、パンツも降ろしてしまった。
彼のものは既に硬直していた。それはシャンメルも同時に全裸になっていたからだ。彼女のアンダーヘアは黒、目は茶色がかって、
乳首の色はピンクだ。彼らの身長は同じくらいで、立ったまま祭壇の前で固く抱き合って密着すると、キスを長く続けた。
彼女の乳首が真一郎の胸板に当たる。それが柔らかくて気持ちよく、シャンメルは大きく足を開くので、真一郎は彼女の、ぷりんとした豊満な尻を抱きつつ突き上げるように挿入する。
「オー!イイワッ、アフッ、オマンコ、キモチイイ。」
どこか神秘的な彼女が今は性的な女、そのもので、真一郎と彼女は膝を屈伸させて立ちセックスを堪能する。その両膝の屈伸は深くて、先導するのはシャンメルだ。真一郎は美若魔女の彼女に合わせて膝を屈伸する。
「アン、アンッ、ハ、アアアーンッ。ヤアン、アン、ハァ、ハァ、イイッ。」
二人は二十分、その体位で結合して、動いていたが、
白い美若魔女は唇を開けると、
「アッ、アッ、アッ、アッ、イクワァ、イクノー、シンイチロウ!イッショニ、イクワヨー。」
彼女は柔らかく締めていた自分の美マンコをグイグイグイと徐々に強く締め付けて信一郎の男肉棒を耐えられなくした。
「あっ、シャンメルさん、出ます、出ますー。」
ぴっ、ぴっ、と真一郎は目を閉じて快感の高みにいる美若魔女シャンメルに持てる限りの男の液体を捧げて行った。
その日は、それからすぐに、真一郎は町田市高ヶ坂のマンションに帰った。部屋に戻ると可奈が嬉しそうに、
  「さっきね、美術ジャーナルの編集長さんから電話があって、絵を一枚描いて欲しいって。」
  「ほんとか、でもやっぱり、創作意欲が、ないんだけどなー。どうしよう。」
  「わたし、を又、描いたら、どうなのかしら?そしたら、きっと、売れるわよ。やってみてよ。お願い。」
  「よし、そうだな。そうしようか。それで、おれが復活できるのなら。」
  すぐに真一郎は、可奈に色々とポーズを取らせると、
  「よし、そのまま、じっとして。今のポーズが、いいよ。セクシーだね、何だか。」
  と話して近づくと、電燈を薄暗い方に切り替えて、デッサンを始めたのである。
 
成功とキャバ嬢
 
 一週間後に完成した、その絵は、それは鬼気迫るようなものだった。それも、そのはず、何故なら、緑川鈴華の肉体が変化して今の可奈が、あるのだから。携帯電話一本で、美術ジャーナルの編集長は、真一郎のマンションに飛んできた。そして、出来上がった絵を見て、
  「これは、凄いっ。田宮さんっ、あなたは、やはり天才だ!少しのスランプが、あっただけですよ。」
  と感嘆するように言ったのである。最新号の美術ジャーナルに載った田宮真一郎の絵は、一つのブームを巻き起こし、インターネットでも話題となった。某掲示板でも、スレッドが立てられたほどだった。
   天才画家、田宮真一郎 復活
  というスレッドには、多くの書き込みが寄せられた。その絵はなんと一億円で、某IT企業が買い取り、自社のウェブサイトのトップページに飾った。成功と勝利感に酔う真一郎には絵の注文が、たくさん来た。練馬の絵山文房堂も今は、インターネットで画材を販売している。ある日、真一郎の携帯電話に絵山から祝福の電話があった。
  「もしもし、真一郎さんですか、わたし見ましたよ、新作の絵を。あれは、すごいですね。やはり天才だ、あなたは。見事な出来栄えですね。」
  「いえ、何ね。やっぱり、シャンメルさんの、おかげですよ。魔術を、かけてもらいましたよ、又。」
  「ああ、祭司長ですか。今度、うちの教団も新宿に自前の施設を建てるんですよ。教団の規模も、大きくなってきていますから。」
  「それは、素晴らしい。あの魔女も相当な人、なんでしょうね。お金を集めるくらい、なんて事は、ないんでしょう。」
  「それはね、信徒数が十万人に、なりましたんでね。よかったら、来ませんか。真一郎さん。」
  「えー、考えておきます。そのうち、是非とも伺いますよ。ぼくも、信者になろうかな、と思っていますよ。」
  真一郎は再び、仕事が忙しくなっていたので、教団の事など、どうでもよかったのだ。世間では、不況風が相変わらず吹いていたが、シャンメルの教団に入った人達は、みんな成功していた。それが、口コミとなって、シャンメルの魔術結社「薔薇の星」は、その勢力を広げていた。薔薇の星の信徒の中には、大企業のトップや政治家の名前まで、見られるようになったほどであった。
  一方、田宮真一郎の絵は、前と違って癒しではなく、持った人が開運する、成功するという現象が起きた。それを聞きつけたネット通販も、やっている開運グッズ会社が、真一郎に絵を依頼し、その仕事も真一郎は、引き受けて、やはり同じ様な結果が出たのである。
  やがて、日本の社会の広い範囲で真一郎の絵と、魔術結社、薔薇の星のブームが起こった。政府も予想しなかった事ではあるが、好景気が訪れようとしていた。新宿の都庁に用がある場合、そこから、そう遠くはない、薔薇の星の教団本部へ訪れてから帰る人達も増えてきた。真一郎は、時代の寵児となり、貯金も百二十億円となっていた。可奈は再び、贅沢三昧の生活を送っていた。美食の毎日で、可奈は次第に太っていき、ついには二重顎の顔となった。そんな可奈を見て、次第に真一郎は可奈に対する性欲を失っていったのである。それで、夜の営みが週三回から、一回、そして二週間に一度、ついには月に一度、という一説によれば平均的日本人(?)の回数とは、なっていた。それでも可奈は、真一郎を愛していたし、セックスだけが夫婦の愛ではない、とも思っていた。真一郎も、絵の制作に打ち込んでいたので、性欲は、しばらく感じなかったのだが、開運グッズ会社の社長の接待を新宿のキャバクラで受けているうちに、店に出てきたナンバーワンのキャバ嬢、エミに眠っていたものを呼び起こされたのだ。それでも、真一郎は可奈に悪いと思い、それを抑えたのである。
   そのキャバクラのエミは店の入り口から出て、
  「じゃあ、先生、又、いらっしゃってね。お待ちしていますわ。」
  「あ、ああ。又、近い内に来るよ。きっと。」
  大酒に酔った真一郎が、そう返事をすると、開運グッズ会社社長の吉内三太は、
  「ああ、又、来るよ、おれが連れてくる。田宮先生、そうしますよ。いいですね?」
  と、どら声で答えた。それを聞いたエミは、にっこりとした。
  キャバクラが終わって深夜、エミは相模大野の自宅まで小田急線で帰る。駅近くのマンションには、よくある話だが、エミのヒモが待っていた。玄関をエミが開けて、
  「ただいま。帰ったわよ、ちゃんと掃除したの?」
  と言うと、
  「ああ、しましたよ。早かったね、エミさん。」
  と、ヒモの市川明夫が答えた。彼の年齢は二十五歳、エミは二十一歳だ。エミは片エクボを作ると、
  「そうかな。今日ね、画家の田宮真一郎先生が、うちの店に来たのよ。すごいじゃないの、ねえ。」
  と誇らしげに話すと、明夫は興味深そうに、
  「あ、あの。有名な人ね。実際に会ったわけですね、もちろん、すごいなあ。」
  と、いい加減そうに応えて、台所に行きながら、
  「今から電子レンジで暖めてくるね、今日の料理。とっても、おいしいよ。」
  エミはハンドバッグを、いつもの場所に置いた。明夫が、自分で作った料理をお盆に載せて持ってくると、
  「さあ、食べてね。ぼくの自慢の手料理だよー。」
  と言った。エミは黙って食べながら、心の中で田宮真一郎の事を考えていた。(あの人、奥さん、いるのかしら・・・?)
  二人は食事を終えると、明夫が後片付けして、すぐに先にベッドに入ったエミの横に、服を脱いで、もぐった。パジャマになっていたエミを見ると明夫は、
  「エミちゃん、脱がせてもいい?いいんでしょ?」
  エミは答えなかったが、明夫はエミのパジャマを脱がせ、ブラジャーとパンティも外した。形のいいエミの乳房が現れると、明夫は、ゆっくりと吸った。エミは少し感じながらも、(田宮真一郎さんに抱かれたいな・・・)
  と思っていた。そのうち明夫はエミを全裸にすると、自分もパンツを脱ぎ捨てて、
  「エミちゃん、いくよ?いいかな。」
  と自分とペニスの両方とも、ベッドの上に立たせていた。エミは綺麗な両脚を大きく広げると、
  「早く来なさいよ。エミが、いい、って言うまで突き続けてね。」
  「はーい。」
  明夫が、ちんこを挿入した時、エミは田宮のペニスを想像していた。そう想像すると、今までの明夫とのセックスと違った快感を感じ始めた。
「あ、あん、いいっ。」
 明夫の逸物はヒモをしているだけあって、野太くて、エミのマンコには十分なものではあったが、明夫そのものに何か、飽き足らないものを感じつつも母性本能とでもいうべきものが、彼との生活を実現したのだろう。
久しぶりにセックス開始から可愛い悶え声を出したエミを、上から明夫は見つめて、
「感じた、エミさん、ぼくも、いいよ。」
と受け答えつつ、プロのヒモの腰の使いに入る。と同時にエミの乳首を吸い、首筋を舌でなぞり、耳たぶを軽くしゃぶる。彼女のまぶたも舌を這わせ、ちんこの毛をエミのマンコの毛と密着させて、腰を回転させるようにする。激しく腰を明夫が動かすと、エミの美巨乳は、大きなプリンのように、おいしそうに揺れ動く。
エミは画家の田宮に、今の明夫のセックスをして欲しいと思うと、明夫が何だか田宮真一郎に見えてきて、自分でも尻を上下に振り、
「はあっ、あーん、あっ、気持ち、いいっ。」
と美乳房を乳首を立てて揺らせながら、キャバクラでの礼儀正しさとは全く違った淫なる乱れをして、口を開けて赤い舌を長く出した。
 
美術学生
 
   高ヶ坂のマンションに帰った真一郎は、二重顎の可奈を見て、心の中でエミと比べて、なんだか、ものすごく幻滅した。可奈も少し前までは、エミと同じ痩せ型の体型だった。キャバクラで見たエミは、やせていても胸は、しっかりと、ふくらんでいた。帰りに見た腰のくびれのラインを思い出して、真一郎は勃起しそうになった。可奈は不満げに、
  「何で、ぼんやりと、しているの?何か女性の事を考えているみたいだわ。もしかして、あたし以外の女の事かしら、ねえ?」
  と詰め寄りながら、聞いてきた。真一郎は、意志の力で勃起を自制すると、
  「あ、いや、次の絵の事を考えていてね。そのモデルを想像の世界で見ていたんだよ。君以外を、この僕が考えるわけは、ないじゃないか。」
  と説明すると、パジャマに着替えてベッドに入った。可奈は、
  (又、今晩も駄目なのかしら。この人、性欲減退なのでは。全然、勃起しないし。)
  と思って、パジャマに着替えてベッドに入り、真一郎の股間に手をやったが、それは小さくなったままだった。それどころか、真一郎はもう、スヤスヤ、と寝ていたのである。
  その晩、ベットでエミを突きまくりながらも、市川明夫はエミの様子が、いつもと違う事に気がついた。しかし、
  (気のせいかな?)と思いながら、フィニッシュしたのだった。その瞬間にエミは田宮真一郎の精液を想像していた。
 
 それから、ひと月が過ぎた。真一郎は相変わらず、絵の制作に、とても忙しくて、ついに可奈との夜の営みは二ヶ月もなく過ぎていた。その頃、真一郎は、請われるまま、本町田にある美術大学で非常勤講師をしていた。そのクラスの中に、一人、傑出した才能の若者がいた。今年、二十二歳になる小島政治という名の青年で、九州は熊本から出てきていたのである。真一郎は、自分に才能が、ない事は分っていたが、人の才能は素直に認める方で、小島政治の絵を教室のみんなの前で褒めた事もある。何か神秘的な絵を描くので、ある日、真一郎は授業が終わった後で、小島に、
  「君、魔術結社に興味ないかい?君の絵は神秘的だ。結社に興味が、あれば紹介したいのだがね。」
  と興味深げに聞くと、
  「ありますたい、先生。ぼくは、なんでん興味の、あっけど、魔術とか特に、ありますとです。」
  と方言交じりに答えた。背は大柄で丸い顔をして、眼鏡をかけているその姿は、見た目は田舎者そのもので、
  クラスの女性は誰も彼を見向きもしなかった。真一郎は笑顔で、
  「じゃあ、連れて行ってあげよう。絵の進歩にもきっと、役立つと思うよ。」
  と言うと、携帯電話で絵山に連絡を取った。それから、放課後、真一郎と小島政治は新宿のシャンメルの魔術結社「薔薇の星」に行き、小島は、すぐに入会式を受けた。一人の青年の才能を伸ばして上げられれば、と真一郎は思っていた。そうやったりする事で、キャバ嬢エミを忘れたかったのだ。立ったままの帰りの小田急線の電車の中で小島は、 
  「先生、よか団体ば紹介してもらって、うれしかです。ほんとに、ぼくは、幸運です。」
  と、とても感激していた。真一郎も嬉しそうに、
  「そうか。よかったな。君の成功は、ぼくの喜びだからね。頑張りたまえ。」
  と言うと、満足げにうなずいた。窓外の景色は、町田へと変わった。二人は、JR横浜線に通じる道の前で、
  別れた。朴訥な感じそのもので、原町田の街のほうに歩いていく小島の後姿を見ながら、真一郎はエミの事は忘れていた。
 
 姉の魔女シャンメルとは全く違って、キャンメルは、魔術結社に人も大して集められずにいたし、入会しても、やがて全員やめていった。失意の中、キャンメルは銀座を引き払い、町田へ移り、町田駅の小田急デパートのあるところで占い師として何とか生計を立てていた。ある日曜日、相模大野から町田にショッピングに来たエミは、小田急デパートで占いのコーナーに謎めいた中年の外人女性を認めた。それは、キャンメルだったのである。エミは立ち止まると、
  「あの、見てもらえません?あたし、自分の運命を知りたいんです。」
  と、キャンメルに聞いた。キャンメルは、うなずくと、
  「ああ、どうぞ、座ってください。わたし、透視も、できるのですよ。」
  と、上手な日本語で答えた。エミが前に座ると、
  「ははーん。あなた、男の人の悩み、ありまーすねー。最近ですかね、今の男性とは別に。」
  「えっ?わかりますか?そうなんです、どうしたら、いいんでしょう?最近、ずっと悩んでいたんですけど。」
  若美魔女キャンメルの心の眼は、エミの心の中を見ていた。そこにキャンメルは真一郎の姿を見た。
  (田宮真一郎!おおお、田宮が見える。いるのだ、田宮は。)
    キャンメルは、ウルフマン佐山が死んでしまったので、右腕を失った感じだった。田宮真一郎は、わたしの呪いが、かかったはずなのに、未だ名声を保っている。おかしい・・・・、姉が?助けたのか?と思いに耽っていると、
  「どうなんでしょう?もう、おわかりなのでは、ないですか。」
  と、待ちきれずにエミが問いかけた。
  「あ、あー、あなたの思いのままに。したほうがいい、よ。」
  「思いのままに、ですって?じゃあ、あたしが今、思っている人の方へ行ったほうが、いいって事ですか?」
  キャンメルは、にやりと笑って、
  「そーよ。その通りです。その人も、あなたの事を思っていますから。」
  エミは晴れ晴れとした顔で、
  「ありがとう。よかったわ、そうします。とても嬉しいです。」
  と言うと、お金を置いて立ち上がった。キャンメルは、慌てて、
  「ちょと、待ってよ。まだ・・・言う事が、あるのに。」
  と言いかけた時は、エミの姿は、もう、人混みの中で見えなくなっていた。
 
キャバクラで
   開運グッズ会社社長の吉内三太は、真一郎が最近、自社の仕事に、あまりすぐ応じてくれない事に気づいた。
(何やってんだか、ったくもう・・・全然、絵を描いてくれないんだから。)
  それから、社長室のデスクを軽く叩くと、
  (よし、あの手でいくか、あれしか、ないかな、へへへ。)
  それから携帯電話を取り出すと、真一郎に、かけた。やがて通じると、
  「もしもし、田宮先生ですか、「きらめく開運」の吉内です。今晩、どうです、キャバクラなんて、え?今日は先約が?それは残念です。」
  その頃、真一郎は美術学生の小島政治と夜の新宿にいた。小島が魔術結社「薔薇の星」の金星の儀式に真一郎を誘ったので、それに参加した後の事だ。その儀式は壮麗なものだったが、真一郎は、あまり関心がなかった。儀式が終わると絵山が、
  「真一郎さん、どうです、これから夜の街は?」
  と笑顔で聞くと、横から小島が、
  「今日は、ぼくが田宮先生を案内しますので、残念ですが。」
  と、真一郎の腕を取った。絵山はうなずいて、
  「そうですか。それでは、又。新宿は眠らぬ街ですしね。」
  それから結社の建物を出て、真一郎と小島は、ぶらぶら歩いていくうちに、飲み屋街へと来てしまっていた。真一郎は、小島を見ると、
  「小島君、変なとこに来たね。引き返そうか。君は、こんなところは興味ないだろ。」
  と言うと、小島は真面目な顔をして、
  「よかとです。先生、ぼくはキャバクラというものが見たくて、それでアルバイトしていました。先生には、いつもお世話になっているので、今日は、ぼくに、おごらせてください。」
  「いいよ、いいよ。気にしなくても。そんな事より、君が、もし堕落してしまったら、申し訳ないものな。帰ろうよ。」
  「いや、ぼくは絵のためです、キャバクラを見たいのは。それに、ぼくみたいな顔じゃ、おんなんこは相手に、してくれんけん、問題なか。」
  そういうと、小島は真一郎の手を引いた。真一郎は仕方ないという顔をした。二人は少し歩くと、小島が、
  「愛の花束、て書いてありますね、ここに入りましょう。先生。」
  と誘うと、真一郎の手を引いて、その店に入った。店のマダムが、歓迎の両手を広げて、
  「まあ、いらっしゃいませ、ようこそ。お二人様ですわよ。」
  と出迎えたが、店内に客の姿は、まばらだった。小島は、まごまごしながら、
  「この先生のために、店で一番の女の子を呼んでください。」
  と、マダムに頼んだ。マダムは、にっこりうなずくと、
  「一番奥に行って、座って待っていて、くださいませね。あとから、すぐに来ますから、失礼。」
  真一郎と小島は、マダムに言われたとおりの所へ、行って座った。真一郎は、
  「大丈夫か、小島君。ここは高いのだぞ、こんなところは、どこでも。」
  「何、大丈夫ですよ、先生、まかせんですか。」
  と言って、眼鏡を上に持ち上げた。やがて来たのは、エミとナンバーツーの女、マリだった。エミは田宮を見ると、
  「まあ、田宮先生、お久しぶりです。次は、いつ来て下さるのかと思っていましたわ。」
  と喜びを隠さずに言った。それを見て、小島は、
  「なんだ、先生、お知り合いだったんですか。それなら、教えてくれれば、いいのに。」
  真一郎は、右手を髪に当てると、
  「まあね。仕事の関係で来たことが、あったんだ。自分じゃ、来ないもの。」
  バーテンが酒を持って来た。それを並々とエミはグラスに注ぐと、真一郎に渡した。実は真一郎はエミの姿態に、ぐらぐらしていたのだが、(酔えば忘れる、これも可奈のためだ)と、思って、一気に飲み干した。エミは、
  「わあ、先生、お強いんですね。じゃあ、もう一杯どうぞ。」
  と又、なみなみとついだ高級酒を真一郎に渡した。それも真一郎は一気飲みした。すぐに、くるくると酔いが回り始めた。最初はエミは真一郎に、マリは小島に対面していたが、そのうち、エミが、
  「ね、席変わりましょうよ。」
  と言うと、真一郎の横に来た。小島は、酔っ払って立ち上がって、
  「いや、気がつかんやった、変わりましょう。先生のためですたい。」
  と言って、席をマリの横に移動すると、それまで、いかにも仕事らしく酒を小島に注いでいたマリが、
  「え、小島さん、九州の人?なのねー。」
  「あー、熊本ですたい、酔って、すまんです、言葉が・・・出て、しもうてから。」
  と小島が、だらしなく言うと、マリは笑って、
  「実はね、わたしもね、熊本なのよ。だから、わかるから、心配しないでね。」
  と言うと、小島にウインクした。小島は少し驚いて、
  「そーね。そしたら気ば、つかわんで、よかたい。あんた、どこな。」
  「山鹿なのよ。あなたは、どこね。」
  「あー、おれ、熊本市内たい。」
  「そう、何してるの?今は。」
  「おれ、今、美術大学に、いっとーもんね。」
  「へー、偉かね。今度、あたしんち、来る?」
  「おー、よかよ。来て、ゆっくり話しば、しよーか。」
  マリは、携帯電話を出すと、小島に見せた。それから、自分の電話番号を携帯電話の画面に出すと、
  「はい、電話番号よ。ここに、かけて、いーけんね。」
  小島は照れくさそうに、
  「おれ、携帯ば持っとらんとよ。どけんも、ならんたいね(どうにも、ならない)。」
  「そう、じゃあ、こうするかな。」
  マリは、ポケットからメモ帳とペンを出すと、走り書きして小島に渡した。それを受け取った小島は、
  「わー、初めてたい。おなごから、こげん、してもらうとは(おんなから、こんなことを、してもらうのは)。どきどき、してきた。」
  それから、盛んに真一郎に酒を注いでいるエミに、
  「あ、先生に、この店で一番よか、いや、いい酒を持ってきてくれんですか。」
  と、酔眼で言った。エミは、うなずくと、
  「わかった。じゃあ、ロマネコンティ持ってくるわね。」
  と言って、立ち上がった。マリと小島は仲睦まじく話し合っていて、エミを見ていない。エミは、ふらふらしている真一郎のズボンのポケットに手を入れると、彼の携帯電話を抜き取った。それから小走りに化粧室に行くと、ドアを閉めて、真一郎の携帯番号を画面に出して、洗面台に置き、それから自分の携帯電話を取り出して、その番号をメモに入力した。
  エミがロマネコンティ、通称、ロマコンを片手に、席に戻って来ると、
  「お待ちどおさま。とっておきのお酒よ。とっても高いのよ。」
  と言って、真一郎の横に座り、ロマコンを真一郎のグラスに注ぐと、
  「どうぞ。飲んでくださいね、先生。」
  それから、小島に向き直ると、
  「小島さんも、いかがですか?高級酒を体験して見たら。」
  「いや、ぼくは、いーとです。先生のための、お酒やけん。」
  と、ふらふらとしながら断って、手を横に振った。真一郎がロマコンを飲み干して、さらに、ふらふらになった時、エミは素早くスカートのポケットの中から真一郎の携帯電話を彼のズボンのポケットに入れた。真一郎は、ふいと腕時計を見ると、
  「あー、もう十一時だよ、帰ろうか、小島君。今日は、気持ちよく酔っ払ったよ。」
  と、へべれけ、になって喋って、立ち上がった。小島は、
  「そうします。先生。結構、時間のたつの、の早かですね。」
  と素直な態度で真一郎に同行した。帰りのレジで、マダムが、
  「それでは、お会計は十万円になります。」
  と、にこやかに言うと、小島はズボンのポケットから財布を出して払った。真一郎は、
  「いいのかい?君、こんな大金を出しても。」
  「いやー、大丈夫ですよ、先生。さあ、行きましょう。」
  二人は、キャバクラ【愛の花束】を出た。出掛けに、
  「また、いらっしゃってね、きっとー。」
  「ぜひ、お待ちしていますわー。」
  と、いう呼びかけの声を朦朧として聞きながら。

 

魔法で性交したら2 お試し

彼女は
  芹が谷公園を出た佐山牙は、ばったりと若い女性に出くわしたが、そのまま行過ぎようとすると、
「佐山君。久し振りね。」
と、その女性は、弾むような声で話しかけてきた。佐山は、その女性を見ると、
「丘さん。また、こんなところで、お会いするとは。」
丘サレナは嬉しそうに、
「わたしの初体験の場所だから。又、いい?佐山君。」
「えっ、公園に入るんですか。まだ明るいですよ。」
「立ち木の陰じゃ、誰も来ないでしょ。そこで、思いっきり。」
「そ、そうですね。」
佐山は、ためらったが、うなずくと、丘サレナに右手を取られて芹が谷公園に入って行った。
 しばらく歩くと、さっきのサングラス二人組みが、もう血のほとんどを出して死んでいたのだが、陽が落ちてきたので丘サレナは気が付かず、そのすぐ近くの立ち木の陰に牙を引っ張った。
 なるほど、通行人には見えない位置だ。
そこで丘は素早くパンティを降ろすと、佐山のズボンのチャックを降ろした。そしてパンツの上から佐山のものを撫で回すと、それはすぐに大きくなって、芋虫のような感覚がした。
それからそれは、パンツの切れ目から突き出てきた。サレナは両脚を開くと、牙のものを自分のジャングルの下に誘い込んだ。牙のものは二回目なので、すんなりと入ったのだ。牙はサレナの柔らかい肉ひだを感じると勢いよく、こすりつけていった。その時、夜空に満月が見えた。佐山牙は、
「丘さん、狼男に変身しますけど、いいですか。」
「いいわ。変身しても、そのまま膣の中で動き回ってね。あっ、いいい。」
サレナは、頭を後ろに、のけぞらせた。牙は満月の明りを浴びて、たちまち狼男になっていった。 サレナはエキゾチックな美女である。佐山との初めての性交の後、その美貌に磨きがかかっていた。
 今、公園の立ち木の陰で、本当に美女と野獣がセックスしている。周りには日も暮れたためか、誰もそこには、いなかった。サレナは、快感の声を噛み殺すのに懸命だ。なにせ牙が狼男に変身した時、牙のペニスにも毛が生えてきたからだ。
 同時に
  狼の剛毛がサレナには感じられた。(わたし、狼とやってるみたい・・・)そう思いながら、サレナは何度も昇りつめた。そのまま十分ほど牙は狼のまま腰を振り続けたが、快感の声をあげるのをこらえる為に、サレナが力を入れた時、同時に彼女は自分の膣を締め付けていた。牙は、それですぐに、
「あっ。丘さん、出ます。」
と言うと、サレナの中に勢いよく精液を、ほとばしらせたのである。その時、近くで倒れていたサングラスの男たちの血の流れもピタリと止まったのである。
 満月に雲が懸かったので、牙は元の、少年から青年に向かう時期の姿に戻り、サレナから離れた。二人は、ゆっくりと下着を元に戻した。暗いけれども真の闇ではないので二人は公園の外へ歩いて行った。サレナは今から、もう一度、牙とセックスしたかったが、彼には一日に二回は無理かな、と思って黙って歩いていると、
「そうだ、丘さん。これからレストランへ行きましょう。フランス料理でもイタリア料理でも大丈夫ですよ。なにせ、今日は臨時収入が入りましたから。」
佐山牙はホクホク顔になった。サレナも嬉しそうに、
「それじゃ、ご馳走になろうかな。町田駅近くには、いい店が、たくさんあるわよ。フルコースでもいいの?」
「ええ、構いません。お好きなところへ。ただ、五万円までに、して欲しいんですけど。」
「五万円も食べないわよ。一万円でも、いいかなっ、てとこ。」
「じゃあ、連れて行ってください。」
「うん、案内するわ。」
二人は仲よさそうに、原町田の商店街へ歩き始めた。芹が谷公園では、さっきの場所でサングラスの男、二人の流した大量の血をカラスが数羽、集まって来て、ぴちゃぴちゃと舐めていた。
 夫は
  田宮可奈は六百坪の邸宅に八王子から帰ってくると、夫は外出からまだ戻っていなかった。
小田急デパートで見かけた、あの女と、まだ一緒なのかもしれない。自分は夫の学校の生徒と関係を持ってしまったのだが、遠い昔に思いを馳せると、こんな自分になるとは思っていなかったなあ。
 普通に一人の男性を愛して生きていくと思っていたのに。わたしには母がいなかった。それでだろうか。
姉は、いたらしいけど。富豪の娘だから、幸せになれると単純に思っていた。芸術家の、あの人をつかまえられたのは、よかったけど、どうも他の女に入れ込んでいる、と気づいても娘のためには、と思っていたのに又、他の女に走ったりすると我慢できない。
 ユナはあの時の・・・だし、又、この前の八王子のラブホテルでも中に出してもらったから又、妊娠したら夫は、なんという顔をするだろう。「この子の顔を見な。」と真一郎に言ってみる。
そう、子供の名は、ミナがいい。でも男の子なら、ミロ・・・って漢字を当てたら・・・実路かな。でも、簡単に妊娠はしないだろう、わたしも歳を取ったし。死んだ姉は子供も、いなかったろう。
「それがいるのよ。」
と、居間のソファに座っていた可奈の耳に声がした。周りを見たが、誰も、もちろんいなかった。(空耳なのね)そう思い直そうとすると、
「佐山牙っていうの。もう青年になるわ。姉のマキよ。天国からの通信、この放送は冠婚葬祭の・・・って、スポンサーは、いないけど、あなたが、わたしの事を考えているのをキャッチしたから、ね。それじゃ、」
記憶にある姉の声だった。
 
親子丼
  岡志大は美術大学を出て、散歩するのを常としている。
町田駅周辺の商店街も彼なりに、美術の参考となった。道行く人々は、そんなに派手な格好をしているわけではない。博多ラーメンの店がオープンしていた。
 福岡市からの出店だ。大学は午前中までだったので、そろそろ空腹を覚えていた。学生向けの食堂など、ないのも町田駅周辺の特徴である。カウンターに座って外の通行人が見える食堂に彼は入った。
券売機で親子丼の券を買い、席に座って外を眺める。すると、この前、関係を持った、出会い系サイトで知り合った、あのルナさんに似た女性が歩いているではないか。
「はい、親子どん、お待たせしました。」
と若いアルバイト女性が、器を彼の前に置いた。
 親子どんぶり、うーん、あれはルナさんの娘さんではないか?あの子とも関係を持てれば、これは親子どんぶりだ。
これは単なる偶然か?はたまた、天の啓示なのだろうか。
 最近知った秘密結社、薔薇の星ではホルス神を礼拝する事を勧めていた。彼は真似事は、してみたが、まだ入会していない。
 スタイルもよく、細身の割には尻が大きいその女性は、その尻を少し、ぷるぷる揺らせながら歩道を歩いて行った。岡は、その歩き方もルナさんに、よく似ていると思ったのだ。
親子どんぶり食べたいな、目の前にある親子丼に自分の眼を戻すと、岡は歩き去った女性の裸の尻を想像しながら、箸で鶏肉を、つまみあげた。
 足の不自由な美しい娘
 手にしたヌードグラビアを机の上に置くと、外へ出て(おれは何か想い出に残るような、そんな一枚の素晴らしい絵を、描かなければなあ・・・)
と、田宮真一郎は、半分まだ勃起したまま、つくづくと思った。
折りしも時刻は夕暮れ時で、空は真っ赤な夕焼け空、女のいない季節は秋へ変わろうとしていたのだ。
(おれの青春も、あの夕焼けと同じように終わろうとしているのか・・・ううん。ちんこだけが、虚しく勃起する)
そう思うと、彼は、下唇をぐっと噛み締めた。彼は未だに絵の世界で成功していないのだが、就職もせずに、もう二十九歳にもなるのだ。
信州の田舎から出てきて、すでに十一年の年月が虚しく流れていた。
その間、細々とアルバイトなどで身を立ててきたが、それは絵の世界とは何の関係もないものばかりで、今は土木関係のアルバイトをやっているのである。
だから収入は割りといいはずなのだが、そう多く働きに出て来ないので、そこそこの収入になってしまうというわけだった。
肝心の絵の方は応募しても、ただ落選だけが待っていた。そんな彼は、昔、信州の赤いりんごを見て絵描きになりたいと思ったのだ。自分のきんたまも、りんごみたいに、なればいいとも思った。
「おれ、画家になるよ。おやじ、おふくろ、いいだろ。何と言ってもおれは行く。」
と、高校を卒業した時、両親にそう宣言すると、すぐに上京して行った。
 だが、有名な美術大学には入れなかったので、誰でも入れるデザインの専門学校へ入学してしまった。
そこを出ても就職口はなく、結局ぶらぶらするはめになった。世間的にも、就職難の時代だったのだ。そして、彼は今に到っているわけ。今では、りんごより女の胸が、いいわけなのだが。
 同じ日、別の場所で、白山吾郎は、赤々とした夕陽をじっと見つめていた。
とても広壮な屋敷の中にいる彼は、夕陽と自分の興した事業を同一視していたのだ。
彼は一代で、とてつもない財産を築いたのだが、現在五十九歳で妻にはすでに先立たれ、一人娘と一人の執事、二人の召使い、と古めかしくいえば、そういう人々と静かな私生活を送っている。
 朝は、執事がボタンを押すと門が開き、国産だが超高級車に乗った彼は自分の会社へと向かうのである。
そして、夕方の4時には屋敷に戻ってくるという毎日を送っている。
 彼はもう自分の事業を拡げていく事に、興味を失っていた。何故かというと、彼には、後継者がいなかったからである。
親族にも後継者として、彼の眼にかなう人間は一人もいない。
 白山吾郎の一人娘の名前は加奈という。二十四歳の彼女は今、仕事もせずに、ぶらぶらしている。彼女は、とある写真の専門学校を出て、就職は、せずに方々を歩き回って撮影に忙しいという日々だ。
 大富豪の娘だからできる生活だが、その写真は、あまり良いものではなく、写真関係の会社は面接に行っても、皆落ちてしまったのも仕方のない事で、それは働く気がないのと理由は他にもある。
 彼女は、とても美しい顔をしていて、それでいて、可愛いいのだが、残念な事に足が、びっこで不自由なのである。
右足を少し引きずるように、してでないと歩けない。これは、生まれつきのものだった。だけど彼女は不自由は感じなかった。何故なら、学校まで歩いたことが、ないのだから。
 召使の若い女性が高級外車で学校へ送り迎えした。
校内では、彼女の顔立ちの際立ったものと、ひねくれていない性格から誰も彼女を悪く扱う者はいなかった。とはいえ、しかし、やはり加奈に彼氏はできなかった。
 今も、まだ彼はいない。父の白山吾郎は、これまでも五回も加奈にお見合いをさせたのだが、すべて二人だけの時間にさせた後で、先方に断られてしまった。
同じ日の別の場所で、夕焼けの見える丘の上に立っている若い女の子がいる。
白山可奈だ。彼女は今日も被写体を探して街を歩いていた。自分の青春をカメラに託す事で、すべての、いやな気持ちを吹き飛ばそうと彼女は思っているのである。
(なんて綺麗な夕焼けなのかしら!あたしの青春って、きっとこれからね。)
彼女は、そう思うと不自由な足を引きずりながら丘を降りた。
しばらく歩くと、可奈は、にぎやかな街中にいた。愛用のカメラは左手に持っている。人通りの少ない道に入った時、向こうから一人の見知らぬ青年が歩いて来た。
彼の髪は、ぼさぼさで、ひげも少し生やしているようだ。だが、可奈は何か光るものをその青年にすぐに感じた。彼女は近づいてくる、その青年を、すかさず撮った。カシャーとカメラは声を出した。
「あ!なにを・・」
その男は小さく声を挙げたが、黙って通り過ぎようとする。それを、加奈は、
「すみません!ちょっと待ってください!ちょっとでいいんです。」
と彼女は、青年を呼び止めると近くに歩み寄った。不自由な右足をひきずりながら。
「ごめんなさい。いきなり写してしまって。失礼ね、わたしって。」
「ああ、ああ、いいですよ。私のような顔でよかったら、いくらでも撮ってもらって。」
その男は、つまらなさそうに可奈を見ると、すぐ立ち去ろうとした。加奈は、
「あの、待って下さい。出来上がったら、あなたに差し上げますわ、このお写真。ですから、ご住所とお名前を、教えていただけませんか?」
すると、その男は、少し笑みを浮かべた。
「へえ、そうですか。それじゃ・・・書きますよ。」
男は、可奈の差し出した高級感の溢れるメモ帳に、ペンでサラサラと書いた。そして、おもむろに言った。
「これでいいですか?これで満足?」
「ええ、ええ、とっても、ありがとうございます。」
加奈は心から、満足げな表情を美しい顔に浮かべた。
「それでは・・・ごきげんよう。」
と挨拶して青年が歩き去っていく姿を可奈は見送っていたが、人にまぎれて見えなくなると彼が書いてくれたメモ帳を見た。(田宮真一郎。練馬区・・・なのね。練馬区なら、昔、お父様と遊びに来たわ。豊島園だったかなー、遊園地。)
一方、田宮真一郎は、加奈と別れて練馬の街を歩きながら思っていた。
(さっきの女、綺麗な顔だったが、あの足じゃな。可哀想に一生独身だろうな。それにしても、おれのアパートに来るのかな・・・そうしたら、やってやるか。
意外と、膣の締め付けはグッドなものがあるかもしれないな。寝転んでしまえば、誰でも一緒さ。)
などと考えていると、眼の前に絵山文房堂の看板が突然見えた。
(画材でも買っとくか。どうもあの女、来そうだし、ただセックスをするだけじゃ能がない。たっぷりはめる前に、絵筆もたっぷり絵の具で濡らして、それからあの女を濡らして、綺麗な顔を悶えさせて・・・)
そう思って、真一郎は店に入っていった。
「いらっしゃいませ。これは、お若い方。」
と、若い男の声がした。見たところ歳は三十才位だが、この店の主人らしい。真一郎は店内を一通り見ると、筆を三本持ってレジに行った。中々広い店ではある。何処か暗めな感じはする。店の主人は、
「ありがとうございます。お客さん、絵を専門に、やってらっしゃるんでしょ?私も色々な方を見てますし。」
「うん、まあそうだけど、売れなくてね。全然、売れなくて、どうしようもないんですね。」
と説明しながら、真一郎が苦笑いすると、
「なーに、これからですよ。あなたはきっと、有名になりますとも。」
と励まして、絵山文房堂の店主は神秘的な微笑を浮かべた。真一郎は、首を傾げながら、
「そうかなあ。そんな事言って、無責任じゃないの。おれが有名に?」
「そうですとも。私が保証しますよ。信じてくださいね。」
その店の主人は胸を張った。店の外に出ると真一郎は、
(おれが有名になる、だとさ。なんて事、言いやがる。お世辞なんて言わなくていいのに。)
と思って、ハハハと笑ったが、何か虚しい気もした。(もしかして、本当に?)
 新入社員
 その次の日、白山吾郎は自社の社長室に一人の若者を呼んでいた。吾郎は手元の履歴書を見ると、
「佐山志郎君、だね。」
と、向かい側に座っている若者に気軽に声をかけた。
「はい、そうです!」
という気合の入った声を佐山志郎は出した。吾郎は、うなずくと、
「朝八時から会社の前で、待っていたそうだね。早朝出勤のやつに聞いたよ。転職が今まで、えーと五回。うちは六回目だね。」
佐山志郎は意を決した顔で、
「御社で骨を埋めるつもりです。もうこれが最後の転職です。」
と答えた。
「そうか。それは嬉しいな。普通と違って君はコンピューター技師として転職していたのだから、余り気にしなくていい。今回のうちの募集は、たった一人だ。君に決めたいんだが、二番目に来た絵森という男とコンピューターの腕比べをしてもらう。それで決めたいのだ。君は不服じゃないだろうね。」
「もちろん、ありません!」
「わかった。十時から早速行う。それまで待っていてくれたまえ、ショールームで。」
「はい、失礼します!」
佐山は元気よく部屋を出て行った。吾郎は深々とうなずくと、秘書に命じた。
「次の人を呼んでくれたまえ。」
 
可奈は、JR池袋駅から不自由な足で歩いて、西武池袋線の普通電車に乗った。
彼女の綺麗な眼は、流れる窓外の風景を見つめている。じっと見ていると、段々と景色が田舎じみてくるのだった。
彼女は富士見台の駅で降りると、西へ二百メートル程歩いて行った。すると、畑も見える中に木造モルタルの三階建てアパートが見えた。田宮真一郎の部屋は、一番西の一階みたいだ。ドアに表札はないから、
トントン!
と、手で可奈はノックした。ベルもない玄関である。時刻は朝八時半になっていた。中から、
「はい、誰?こんな朝早くに、もう。」
と声がすると、ドアが開き真一郎が顔を出した。まだ寝呆けた顔だ。加奈は、
「お早うございます。昨日の写真が出来ましたので、持って来たんですよ。」
と言って、にっこりした。それなのに真一郎は無関心そうに、
「あー、あれね。え、もう出来たの。」
「ええ、現像は自分でやりました。自慢じゃないですけど。」
「そう、それは。すごい、です・・・ね。」
真一郎は、又、興味のなさそうな顔をするのだ。だが、可奈は、
(この人は芸術家なんだわ、きっと。だから変わってるのよ。)
と思っていた。彼女は、
「どうぞ。受け取ってくださいね。」
と言って、できた写真を真一郎に手渡した。真一郎は、めんどくさそうに受け取ると、
「ああ、すいませんね。もらっておきましょう。それでは。」
と言いながらドアを閉めかけた。彼女は、慌てて、
「あ、待って下さい。私、こういう者です。」
洒落た名刺を取り出すと、渡した。金色の名刺に
写真家 白山可奈
と印刷してあるのを真一郎は見た。加奈は、
「よろしかったら、又、撮らせてもらえませんか?」
「ええ、まあ・・・、でも、ぼくも忙しいので、わざわざポーズなどは、できませんよ。それじゃ。」
彼は、バタンとドアを閉めた。可奈は所在無げに立っていたが、やがて富士見台駅への道を歩き始めた。
真一郎は、部屋の中で可奈から、もらった写真を見ながら、
(チェッ、それにしてもまあ、下手な写真だ、これは。あ、中にあの娘を入れて彼女を抱いてしまえばよかったんだ。まあ、朝っぱらから、それもなんだけどな。)
と思っていた。一方、可奈は小さな舗道を歩きながら、(今度はあの人を何処で撮ろうかしら?でも、もう会うの、よそうかな、いやがってた、みたいだし・・・)と思って眼を上げると、富士見台駅が見えた。可奈は、駅前で個人タクシーを拾った。乗り込むと、運転手が丁寧に聞いた。
「どちらまで、お越しですか?」
 
真一郎、魔女を助ける
 アパートの六畳の部屋の中で、真一郎は立ち上がると、
「さあ、出かけるか。することないけど。」
と独り言を呟いた。
 今日は仕事は、ないというより、出ないのだ。アパートを出て富士見台の駅まで歩き、西武電車に乗った。
もう9時半なのでラッシュではないが、都心には行く気がしなかった。それで西の方へ行く切符を買った。電車が動き出すと、窓の外は次第に田園風景へと変わっていく。ショルダーバッグの中には、画材が入っている。とある駅に電車が停まると、真一郎はホームへ降りた。遠くに緑の連山が見え、駅の周辺も小山で囲まれている。
 改札口を出ると人影は、余りなかった。眼の前に見える小山を登っていくと、やがて湖が見えた。広い湖だ。ほとりの土手を登ると、風が強く吹いた。ドボーン!と音がした。何だろうと思って、音のした方を見ると、若い西洋の女性の顔が見え隠れしている。
 「HELP!」
大声が聞こえた。外人なのか?と思った真一郎は、急いで近くに駆け寄った。そして、
 「大丈夫ですか?アーユーOK?これにつかまって!」
 急いで真一郎は、右腕を伸ばすと、その女性は、すかさず彼の腕につかまった。真一郎に引かれながら、女は言った。
 「ああ、ありがとう。タスカリマシタ。」
 「いえ、どういたしまして。」
 「私、どういうお礼したら、いいでしょ?」
 「いえ、お礼なんて。いいですよ。」
 「そういうわけには、いかなーいですけど、そうですか。私何か買って来ます。ここで待ってて下さい。」
 眼の青い白人女性は、その場から全身をびっしょりと濡らせたまま、巨乳を揺らせて、小走りに立ち去った。真一郎は、
 「やれやれ、おれも少し濡れてしまった。」
 と呟くと、土手の上でショルダーバッグから画材を取り出した。湖は大きく広がり、まるで大海のようだ。さて、どう描こうかと筆を構えると、真一郎は湖を描くのに迷った。遠くには舟に乗った人々が見える。あれを描けば・・・あれは!二人とも小船の上に立って、男が女の後ろから立ったまま、勃起したモノを入れて腰を前後に振っている。
と、その時、後ろで声がした。
 「おう、あなた、絵を描いているのですね!」
真一郎が振り向くと、さっきの外人女性が白い細い手に缶ジュースを持って立っていた。
 「いや、全然うまく描けないんですよ・・・。」
と、真一郎が、あの子船を見ないようにして、心細そうな声を出すと、
 「そうですか。まあ、これでも飲んで、元気出して。」
外人女性は、買ってきたジュースを真一郎に手渡した。そして、自信タップリに言った。
 「わたしが、うまくなるように、してあげましょう。」
 外人女性は、謎めいて微笑んだ。真一郎は、
 「あなた、絵のプロの方か、何かですか・・・。」
 「いえ、そうではありませんけど・・・ちょっと筆を、かしてください。」
 「どうぞ。」
 真一郎は、その女性に絵筆を渡した。それを受け取ると、その女性は、筆を眼の高さまで上げた。そして、それを不思議な眼で見つめながら、
 「バリスー・リウス・・・。」
と、彼には分からない呪文のような言葉を唱えた。そして、周りを見回すと、誰もいないので、真一郎に近づくと、抱き着いてキスをした。彼女は生暖かい舌を真一郎の唇の中に入れ、彼の舌と、自分の舌をネットリと絡ませ、巨乳を真一郎の胸部に押しつけた。彼女の硬くなった乳首が真一郎に感じられて、かれも直ぐに勃起した。
そのペニスは美人のその西洋女性の濡れたスカートの股間のところにピッタリと当たり、そこが彼女の割れ目の上のあたりで、クリトリスが既に隆起していて、真一郎の鬼頭を愛撫するように纏わりつく。彼女は自分で濡れたスカートをたくし上げて、白い細いショーツ、昔の名称はパンティを右手で膝よりも下に降ろすと、右足を抜き出して、真一郎のズボンのベルトを外し、かれのズボンとパンツを驚くべき速さで彼の膝下まで下げ、股を広げて彼女のピンクの縦長の穴の中に真一郎の肉欲の剛棒を迎え入れていく。
「ハ、アンッ。イイッ、あなたの立ってるちんぽ、いいっ。ううん、イイッ。」
彼女は右手に絵筆を持ち、それの筆先を濡れてピッタリと彼女の肌に、くっついた洋服の上からでもわかる自分の硬く尖っている乳首に当てて、快感を楽しむように、なぞり回した。
真一郎のモノはタコに吸い付かれたような吸引力で、西洋の美若魔女のマンコにクイ、クイ、クイ、と締め付けられるのを感じて、今まで、やった風俗の女とはまるで違ったものを感じ、均整が取れて巨乳で巨尻の美若魔女は、そのマンコも形が可愛らしく、真一郎のモノを咥えて放そうとしない。湖岸より下の木陰でのセックスは初めてだったし、西洋美女との立ったままのマンコも初めてで、湖上の男女も結合しているだろうし、おれも白肌の花の高い美女に抱かれ、美マンコに包まれて、それは何ともいいようのない快感を真一郎の脳内に送り込み、彼女は又、唇を少し開けて舌を出しながら、真一郎の唇に彼女の唇を強く密着させると同時に美巨尻を激しく振った。その電光のような快感に真一郎は西洋の白い美魔女のマンコの中に大容量の精液を今までにない位、強く発射した。
「アッ、ア、ウーーンッ。腰が、とろけそうよっ、ワッタシノ、オマンコ、耐えられなく、いいわーっ。」
と声を抑えて絶叫した。彼女の絵筆を持った右手は少し震えていたが、二人でまだ立って結合したまま、
 「はい、これでいいです。これを使うと、あなた有名になります。あ、はん。あなたのモノ、小さくなるのねー。でも、そのチンポの感触も、いいっ。」
 彼女は自分の乳首のあたりを、もう一度、その絵筆で、なぞってから、それを真一郎に渡すと、ニヤッと色っぽく笑った。それは、そうだ、まだ真一郎の小さくなったチンコは美若魔女のマンコの中だから。
 「そうですか。そうなると、いいんだけど・・・気持ちいいー。」
 そう答えて、真一郎は、苦笑した。その女性は、歳は二十代に見えた。美人コンテストに出てくるような、顔が、それより神秘的な女性だ。真一郎が小さいチンコを抜き取ると、彼女は名残り惜し気に、
 「それでは、頑張って下さいね。さよなら。と言いたいですが。」
と、下を向いて下着をマンコの方に上げて元に戻し、彼女は真一郎に近づくと、
「もちろん、これだけでは、大した事は、ないです。もし、本当に有名になって、お金がたくさん欲しいのなら、ここではなく他の場所で、というよりワタシノ家で他の、儀式してあげるよ。見たところ、とても困っているようですけど、それに、あなたには・・素質ある。」
「何の素質ですか。絵の方?」
「うん、そうだけど、でもあなた一人の力は大した事ないよ。それで他の力は必要。」
「他の力?」
「そうそう、霊の力ね、それと、わたしのマンコ。どう、どちらも興味ある?」
「ええ、まあ・・・あります。あなたのマンコの方に、より多く。」
といっても、真一郎はオカルト的な事に興味はなかった。でも、その女性は、にやっとすると、
「じゃ、私に電話してね。それと、住所の名刺」
と話すと、湖水で濡れた服の中から、プラスティックの名刺を真一郎に渡した。それから、
「あなたとチンコ、待ってるよ。」
と笑顔で、くるりとまっすぐで、腰のあたりは大きくクビレた背仲を向けて彼女は、真一郎から離れていった。
真一郎は、
 (何だか、知らないが・・・)と思いながら、外人女性が性の魔術で扱った絵筆をびっくりとして見て、(これは、今日は、もう、使わないんだがなあ・・・)
 その性魔術の筆は、道具箱の中にしまい、もう片方の手にある名刺は胸のポケットにしまった。(あんな事を言っていたけど、こんなもので有名になるなんて、あーあ、映画やTVじゃあるまいし・・・)と思いながら、真一郎は、持ってきたイーゼルを立てた。さっき、遠くに見えたボートが一隻、彼の方に近づいて来た。(や、あれを描いてみるか)と思って彼は、筆を構えた。すると、ボートに乗っていた人影が立ち上がった。向こうも両手に何かを持って、構えている。若い女性だ。
 「撮ったわよ!田宮さん!」
 と、声が聞こえた。ボートに乗っていたのは、白山可奈だったのだ。彼女のボートは、真一郎の近くまで来た。そこから、彼女は、
 「あなたは芸術家だって思っていましたけど、画家だったんですね。」
 と叫ぶと、ボートの上に立ったまま微笑んだ。
 「いや、画家なんて言われるようなものじゃないよ。」
 と、真一郎は、つまらなさそうな態度を取った。加奈は、
 「でも、こんな処で、お会いするなんて不思議ですよね。」
 「そうかなあ。ぼくは偶然だと思うよ。」
 「よかったら、あたしを描いて下さいませんか?」
 「君を?そうだな、この前、写真を撮ってもらったし、じゃあ一枚描いてみようか。どうなるかな。」
 と応じると、真一郎は、あの性魔術の絵筆を取った。それを使う事で十分後、彼女の湖上の絵は素晴らしく出来上がった。実は、真一郎は、それを、いい加減に描いたのである。
 「はい、出来たよ。ほら、こんなものかな。」
 真一郎は、間近に見に来ている可奈に声をかけた。彼女は、
 「え、もう?そんなに早く、できたのですか。それでは、わたしに見せて下さい。」
 と嬉しそうに言うと、ボートを岸につけて、彼のところへ走って来た。そして、
「まあ、すごく、うまいわ。とても、うまいです。でも、あたし、こんなに綺麗じゃないと思うけどな。」
 「いや、これで、いいと思うよ。とっても君に、似ているのさ。」
 と、彼が説明すると、可奈は低い声で笑った。それから加奈は真一郎を見つめて、
「これから、いつまで、ここで、絵を描くのですか?」
「それは、わからないな。気が済むまで、だろう。」
「あたし、終わるまで待っていても、いいかしら?いいわよ、ね。」
「え、夜になるかもしれないぜ。真っ暗な夜に。」
「いいのよ、構わないわ。深夜になっても。カラスが見えなくなっても。」
というと、加奈は、その場にすらりと尻を地面について、座り込んだ。
彼女の返答を聞いた、真一郎は、(しょうがないな、この女、あの湖上のボートの上の男女は立ったままセックスしていたけど、女は、この女性じゃないのか、)とも思った。それから魔法の筆で三十分位、彼は湖周辺の絵を描いていたが、
「もう、今日はやめだ。終わりにするよ。」
と魔法の筆を措いた。加奈は、
 「あら、もう、こんなに早く帰るのですか?」
 「うん。そうだねー。帰りますよ。カエルが、この辺にいなくても、帰る。」
 というと、彼は、ソソクサと帰り支度を始めた。加奈は尻を揺らせて立ち上がって、
 「じゃあ、あたし、この、ボートを返してこなくっちゃ、いけませんよね。」
 と呟くように言うと、びっこを引きながら湖上の貸しボートの処へ戻った。彼女は尻を見せたが、振り返ると
 「ここで、待っていて、くれますか?」
と彼女は大声で聞いてきた。だが、真一郎は首を横に振って、
 「いや、お先に失礼するよ。さようなら、だね。」
 と即答すると、画材を入れたショルダーバッグをよいしょ、と肩にかけた。
 「そうなのですね。あたし、残念ですわ。」
と聞こえる可奈の声を背中に聞きながら、真一郎は土手を登った。
 登り切って振り向くと、可奈とボートはまだ同じ処にある。彼女と視線が合いそうになるのを避けると、彼は土手を降りた。そして、(あの女と、ここで会うなんて、思わなかったな。しかし、湖上で立ちバックしていた男の姿がボートには見えなかった。他にも湖にボートは出ていたのかもな。)
又、彼は、駅への道をトホトホと徒歩で歩きながら思う。(あの女に写真を撮られたけど、又、おれのアパートに、自分で持ってくるんだろうな・・・まあ、いいか。湖で絵を描いてあげたし・・・今度は、彼女とセックスできるかも。アパートの部屋の中で立ちバックだ。?あのボートに乗せてもらって、おれも立ちバックセックスすればよかったのに、しまった。)
 お見合い
 太陽は、まだ落ちていない夕暮れ時、食堂に座った白山吾郎は娘に優しく話しかけた。
「可奈。あのな、いい話があるんだよ。明日、ある人と会ってみないかね?」
三十畳はあろうか、という広い豪華な食堂である。中世ヨーロッパの貴族のものを思わせるものだ。
父の話を可奈は大きく眼を開けて聞いた。
 「お見合いなのね?あたし、お見合いは、もういい。」
 「いや、そうじゃないけど、レストランで昼にちょっとな。会うだけだよ。」
 「ふうん、それならいいわよ。ダディ。」
 「おや、なんだか乗り気じゃないみたいだな。」
 「そうでもないけどね・・・ね、ちょっと見せたいものがあるのよ。」
 そういうと、可奈は豪華な椅子から立ち上がった。白山吾郎は、
 「ほう、何をだね?」
 「今、持ってくるわね。ちょっと待っててよー。」
と言い残して、彼女は、広いダイニングを出て行った。
吾郎は、給仕をしている若いセクシーな女性に聞いた。
「何なのかな?娘が見せたいものって。」
「さて、なんでございましょうか?わかりませんわ、わたくしには。」
「そりゃ、そうだな。君は知らなくても、いいし。」
と吾郎が、うなずいた時、可奈が何かを手にして入って来た。
「これよ、見てね!お父さん。はいっ。」
可奈は、手に持っているものを父に渡した。
「ほう、どれどれ。なんだい、これは。」
彼は、それを受け取ると、
「何だ、これは絵だね・・・可奈ということは、わかるが、それにしても下手クソな絵だな。」心の中で(これはっ、凄い絵だ。可奈もまた、股までセクシーに描かれて。色っぽいのなんのと、いやあ、素晴らしいっ、)
と答えると、吾郎は、その絵をツッケンドンと娘に返した。加奈は小さく口を尖らせて、
「そんなこと、ないわ、よく描けてるじゃないの。とても芸術的だわ。これはね、ある人に描いてもらったのよ。」
それから可奈は豪華な椅子にとん、と座った。吾郎は、訝しげに聞いた。
「誰だね?そのある人っていうのは。」
「それはね、街で知り合った人なのよ。若手の画家なのよ。すごいでしょ。」
「そうか。それはよかったな。男性か?」
「そうよ。男性です。」
「おまえ、その人を好きになったのか?」
「いいえ。だって、彼は私に興味ないみたいだけど。」
吾郎は、ニヤッと笑って、(安心した。絵などに興味を持ってもらいたくない)
「そうか、そうだね。さあさあ、食事に、しようじゃないか。」
「ええ。そうね。そうするう。」
二人は、キラキラ光る銀のフォークとナイフを手に取ると、豪華なディナーを食べ始めた。
翌日。東京都町田市の朝は、いつものようにやってきた。
吾郎は、いつもの超高級車で外出した。可奈は遅れて朝食を済ますと、自邸を出て行った。昼の十二時に、さる超高級レストランに予約が入れてあるらしい。
それまでに、そこへ行けばいいから。白山可奈は、新たな被写体を求めて街へ出ている。だけど・・・。今日も又、原山町へ行ってみよう。
真一郎と初めて出会った場所へ。と、彼女は心の中でそう言っていた。
原山の駅前でタクシーを降りると、人影はまばらだった。彼女は、真一郎がいた道に入った。今日も彼に会えるかな?
ふと眼を横に向けると、画家のような青年がいる。(真一郎さん!)そう思った彼女は、その青年に駆け寄った。
その青年が顔を向けると、それは全く別人の顔だった。(何だ・・・)可奈は、軽く右足をひきずりながら、そこを通り過ぎた。
何処を歩いても今日は真一郎は、いない。(今日は、いないのね)諦めた彼女は、JR原山駅に入りホームに上がった。
周りの視線を強く感じる。自分の足のせいだと思う。いつもの事で気にしない事ではあるが。実は、彼女の美貌も注目の的なのだけども。
加奈は、すぐに顔を見せた電車に乗った。ドアが閉まっても彼女は座らずに、立って外を見ていた。ホームの人の顔が流れていくその中に、一人の女性の姿が彼女の眼に停まった。
若い魅力的な肉感的な、白い外国人女性・・・何か異彩を放っている人だ。(あ、写真に撮らなきゃ!)と加奈が電光のように思った時、眼の前に田宮真一郎の顔が現れて、流れて行った。
バッグの中のカメラに、可奈が手を触れた時、その二人の姿は、もう、見えなくなってしまった。
 
少し前、JR原山駅のホームを歩いている、真一郎の耳に突然、外国訛りの声がした。
「お早う、ございまーす。魔法の筆と、あなたの筆は元気ですか。」
素っ頓狂な声がした横を見ると、彼にぴったりの距離に、この前の美人外人女性が立っていた。真一郎は、
「ああ、どうも、こんにちわ。お元気そうですね。」
「ええ、あなたのおかげですよ。どう?絵はうまくなりましたか?」
「いえ全然、変わりないですけども。」
「そう?そうですか。あなた、まだ、ほら、あの筆を使っていませんね。」
「あの筆ですか?」
「そう、この前、わたしが祝福してあげた性魔術の筆です。一種のセックス・マジックを、たーっぷり、かけた筆です。」
「そんな、本当ですか。でもセックス・マジックなんて・・・」
真一郎が顔を赤らめると同時に、胡散臭そうな顔をすると、
「いいえ、とにかく、あれを使って下さいよ。特に若い女性を描く時にいいんですよ。今、あなた、誰か女の人、描いています?」
「いや、特に・・・描いていないです。」
「そうですか、残念。まあ、そういう時があったら、ね、使うのよ、性魔術のあの筆を。」
そういって、その外人女性は、右目でウインクした。真一郎が、
 「それでは、あなたは、もしかしたら、魔女・・・」
と言いかけた眼の前から、その女性は、ふいに消えていた。周囲を見渡したが、美人魔女は、もう何処にも見えなかった。もっとも、そのあたりに割と人が多くなってきていたせいもあった。真一郎は、(若い女を描く時に性魔術の筆、ねえ・・・)そう思って眼を斜め前にやると、こっちに歩いて来る若い女性に、あ、と気がついた。
(あれは!白山可奈・・・?だったな。)だが、しかし・・・。その歩き方は実に、まともなものなのだ。スイスイと滑るようにこっちへ、やって来る。そうか、彼女、足が治ったんだろうか?あれは現代医学の勝利だな。とするうち、すぐ近くに彼女が来たので、
 「お早う、白山さん。お久しぶりに、お会いしますね。」
と、張り切って声をかけてみた。しかし、彼女はムッと黙って通り過ぎて行く。なんだ、人違いか?でも、こんなに似た人間が、いるものか・・・。
 「ちょっと!ちょっと待って下さい!白山さん。」
 真一郎は、その女を追って、タタタッと駆け出した。そして、すぐに追いつくと、
 「あの、初めまして、ぼく、絵を描いているんです。モデルになってもらえませんか?」
と声を元気よく、かけた。その女は立ち止ると、真一郎をジロッと見た。そして、
 「失礼だけど、いくら出してもらえるの、そのモデルの件で?」
と、真一郎を見下すように聞いた。
 「いくらって、その・・・、それは、まだ・・・決められませんが。」
 「あたし、プロのモデルなのよ。だからね、わたし、お金なしじゃ、動かないわ、そんなものには。」
と冷たく彼女は答えを投げると、又、歩き出そうとした。
 「待って下さい、よ。あなた、白山可奈と言う人を知っているでしょう?」
 と、真一郎は聞いた。
 「白山可奈ですって?知らないわ、そんな人。あたしの名前は水川マキよ。あんた、知ってる?わたしの名前。」
 「いえ、知りません全然。あっ・・・ちょっと、いや、ちょっとじゃなくて、たくさん待って!!」
 真一郎は、必死で彼女を引き止めようと思ったが、その女は素早く走って行ってしまった。
 
白山可奈が超高級レストランに、定刻より十分早く着くと、そこには父と一人の青年が、悠々と座って待っていた。
白山吾郎は、可奈に目の前の席を目線で示すと、
 「おう、早かったじゃないか、可奈。まあ、そこに座れよ。」
その青年は、ぬっくと立ち上がって、一礼した。そして、
 「わたくし、佐山と申します。初めまして。」
と歯切れよく自己紹介したので、彼女は、
 「あ、わたし、白山可奈です。初めまして、こちらこそ、どうぞ。」
 と挨拶すると、軽く黒髪の頭を下げた。吾郎は、
 「まあ、まあ、可奈、座りなさい。」
 可奈は、二人が座る席の前に、ゆっくりと座った。吾郎は、
 「彼が、今、自己紹介するよ。さあ、佐山君、自己紹介しようかい。」
 とニコニコと促した。青年は姿勢を正して、話し始めた。
 「わたくし、コンピューターの方を専門に、やっております。佐山志郎です。入社して、まだ間もないのですが、これから一生懸命、頑張らせてもらいます。」
 その青年の眼は、らんらんと輝いている。可奈が静かに黙っているので、吾郎は、
 「どうしたんだ、可奈?お前も、さあ、自己紹介をしなさい。」
 と話すと、少し不服そうな顔をした。可奈は、
 「はい。私、写真の方を少しやっています・・・白山可奈と言います。」
 「え、写真ですか。ぼくも写真には、とても興味がありますよ。」
 佐山は、にんやりと微笑んだ。吾郎は、うむうむ、と、うなずくと、
 「おう、そうかね。そいつは、よかったじゃないか、可奈。今度、何処かに、だなー、この佐山君と一緒に、写真を撮りに行ったら、どうだね?」
 「ええ、そうですね・・・。」
 「佐山君は、どうだ、どうだね?」
 「ええ、はい、喜んで、わたくし、お供いたします。」
 佐山は、にんまりと嬉しそうにする。その時、三人のテーブルに、とっても豪勢な料理が運ばれて来た。吾郎は、
 「まあ、まあ、まずは、食事にしようじゃないか。」
と眼を、とても細めた。それから三人は、シーンと無言で食事をした。アフターコーヒーを飲んでから、吾郎は、
 「おっと、もう時間がないな。こんな時間だって、どんな時間かって、ところだけどな」
とモソモソと呟くと、シャンっと立ち上がった。可奈と佐山も、それに続いて立ち上がる。外に出ると、吾郎と佐山は待っていたタクシーに乗った。
 車内で手を挙げた吾郎の姿が、見る見る、見なくても遠ざかっていく。可奈は、一人で歩き出した。ここは若者の街、吉祥寺だが通り過ぎる誰にも、可奈は興味を感じないのだ。その時、向こうから若い白い外人女性が歩いて来た。
 
尻の穴を
 
(これは!あの人。)JR原山駅のホームに見たあの白人外人女性だ。
(あら、しまったわ!今、わたし、カメラを持ってないのに・・・出たのね、白人さん。)
見合いの席にカメラを持っていける訳もないだろう。どうしようもない思いで可奈が立っていると、
 「これは、これは、おー。お嬢さん、いいタイミングでした。すみませんが、あのお寺を、バックにして、あなた、シャッターを押してくれませんか?」
と、その若い外人白人女性の方からニコヤカに可奈に話しかけてきたのだ。20代に見える白人美人女性で、手には高価そうなカメラを持って、それを可奈の方に、はい、どうぞ、と差し出している。
 「え、ええ、喜んで、わたし。今から撮らせていただきます。」
 可奈は、嬉しそうに、そのカメラを受け取ると、ファインダーをじっと覗いた。その女性の背景には古い寺が見える。観光のために日本に来たらしい外国人女性らしく見える。前に見た時の、あの不思議な感じは何処にも、なかった。それで、(この前は、どうして、あんな風に不思議に見えたのかしらね?)と思っていると、
 「お嬢さん!おじょーさん、もう、撮っても、とっても、いいんじゃありませんか?そして、写真の出来栄えは、とってもいい、にしましょう。」
 「はい、それでは、いきますー。ニッコリと笑って!はい、チーズとパン。あれ?パンは、いらないか。」
 カシャーッ、とカメラのシャッターが機械音を立てる。キチンと美白人女性の図柄は、綺麗に背景に、おさまっただろうか?可奈が、じっとカメラを持っていると、美若の外人女性が近づいて来た。そして、にこにこして、こう言った。
 「そのカメラ、ポラロイドですから、すぐ、できまーす。」
 「えっ! ?本当に、みたいですね。」
 ジーッと突如のように音がして、カメラから現像された写真が出て来た。美外人女性は可奈から自分のカメラを受け取ると、
 「さて、出来ました、よ。一体、どんなものに、なったですかね、たのしみ。」
と話すと、綺麗に現像された写真をカメラから抜いた。そして、
 「いや、まあ、何とも、これはユニークですね。お嬢さん。」
 と話して、美外人女性は楽しそうに微笑むと、可奈に、その、できた写真を手渡した。それを手に取って見た可奈は、
 (しまったなあ・・・もう、失敗!!)と思わず思って、それを考えた。その写真は、何と下の方に美外人女性の顔だけが小さく写り、その後ろ中心に大きく寺が入り、その上は、青い空が大きく場を占めている。加奈は、頭を下げて、
 「どうも、すみませんでした。こんな、つまらないものを撮ってしまって。どうも、ごめんなさい。」
と急いで謝ると、その美外人女性は、白い手を左右に大きく振って、
 「いえいえ、どうもありがとうね。わたっしの国に持って帰って、とても大事にしますよ。あなたのようにね、チャーミングな人には、日本で初めて会いました、わたし。わたっしに記念に写真を一枚、あなたを撮らせて下さい。」
と、なごやかに提案した。
 「ええ、い、いいですわ。どうぞ、なんでも、お願いします。」
 「それじゃ、あなたも同じ処で撮りましょう、ね。さっき、私がいた処に今から行って下さい。」
可奈は、右足を引きずりながら、そこへ行く。美外国人女性は、微笑むと、
 「じゃあ、じゃあ、撮りますよー。はい、スライスチーズ。」
 可奈は、それを聞いて、思わず笑った。心地よく撮影されて、それから可奈は、美外人女性の処へ近づいて行った。美白人女性は、出て来たポラロイド写真を取ると、可奈に優しく手渡して、
 「どう?どうですか?これは、写真は、出来栄えは。」
 「ええ、ほんとに、とてもよく撮れてるのですね。何だか、かんだか、私じゃない、みたいです。」
 出来たその写真は、遠近感、構図とも、申し分のないものだった。美白人女性は、にっこりして、
 「では、これは、どうぞ、あなたに差し上げますよ。」
 「うわあ、とっても、ありがとうございます。わたし、大事にしますわ、記念に取っておきますから、いつまでも。」
 「アリガトウ。お嬢さん、でもー、アナタノ、お名前はナント、イイマスカ?」
 「私、白山可奈と、と、いいますの。」
 「私は、シャンメル・フォンフォンと、いいます。どうですかー、今から、私の家に来ませんか、よかったらネ。」
 「ええ、よろしかったら、わたし、ご一緒に行きたいですわ。」
 「それじゃあ、行きましょうね。ご一緒に。」
 シャンメル・フォンフォンは、可奈を見て又、ニッコリした。二人は、それから吉祥寺の駅へ歩いて行った。可奈は、雲のような疑問を聞いた。
 「あなたの、おうちって、ここから、とても遠いところなのですか?」
すると、シャンメルは、美肩をすくめて、
 「いえいえ、二つか三つ先ですよ。東小金井の田舎に、ありますですよ。」
電車の切符はシャンメルが二枚、買ってきた。二人が吉祥寺のホームに出ると、すぐに電車が走って来た。シャンメルは、
 「さあ、乗りましょうか。わたしたち、行くのでーす。」
 と誘われて、可奈も駆けて来た電車に乗った。電車が、いつものように走り出すと、窓の外は次第に夢見るような田園風景に変わっていった。電車が三つ目の駅で停まると、シャンメルは可奈に突然、言った。
 「ここですよ、もう、着いた。さあ、降りましょう。」
 二人が電車を降りると、東小金井駅のホームは、いい花の香りがした。可奈は、
 「とても、いいところですね、この辺は。」
 「そうねー。でも、少し不便ですねー。いなか、ですねー。」
シャンメルは困ったという、ゼスチュアをした。それから、二十分も歩いただろうか。大きな家が立ち並ぶところに、二人は来た。その中に周りの大きな家より、少し大きな洋館が見えた。シャンメルは、
 「あれですよ。あれが、わたしのウチですよ。」
 と、その宏大な洋館を、白い指で指差して言った。茶色のレンガの家だ。青銅の鉄門の中に入ると、家よりも、その中庭の方が広かった。シャンメルは、
 「どうして、日本の家は、庭の方が狭いんでしょうねえ。だから、ウサギ小屋?」
 と言ってニヤッと笑った。その訳は、知っているみたいだが。シャンメルは玄関のカギを開け、靴のまま二人は中に入った。シャンメルは、
 「私は靴を脱ぐのが面倒臭くて。ここでは、その必要は、ありません。」
 と説明しながら両手を拡げた。日本の習慣に慣れていないということであるが、あちらでは、靴のままが一般的な風習である。玄関を入って、すぐ右の部屋が応接ルームだった。シャンメルは、
 「そこに座って、待っててね。今に、いいもの、持ってくるから。」
 と、応接部屋にある黒いソファを指して、出て行った。何という鳥なのだろう、多分、ダチョウの剥製が壁際に置いてあった。白い壁に古いランプも掛かっている。中世ヨーロッパ、そういう感じに可奈は、もんわりと包まれた。もっとも、可奈の広壮な屋敷も中世ヨーロッパ風とはいえ、そこには日本的なものも残っているのだが、ここは美外国人女性の持ち物だから、日本的なものは、何もなかった。やがて、シャンメルが閉まっていたドアを開けた。そして、
 「お待たせー、しましたー。」
 と軽く言うと、両手に高級紅茶と高級お菓子の乗った盆を持っていた。それをテーブルに置くと、
 「さあ、どうぞ、どうぞー。さあ、召し上がれ。これ、おいしいよー。」
 「それでは、少しも遠慮なく、いただきます。」
 可奈は小皿のクッキーを、つまんで、美しい口の中に入れた。ああ、ヨーロッパの味と香りだ。シャンメルが、真に同情に堪えない顔で話した。
 「お嬢さんは、とてもチャーミングなのに、でも、足が悪いのね。」
 「ええ、いいんです、それ。もう、生まれた時からだから、あきらめているんです。わたし、別に困りもしないから、何ともありません。」
 「そおう、かしら?あなた、まだ、独身でしょ?」
 「そうですけど、わたし。それが何か、どうして、いけませんの。」
 「いえいえ、その足じゃ、難しいんじゃないかなって、わたし、思って、ね。あなたが結婚するのは。」
 「わたし、結婚しなくても、生きていけますわよ。現代って、男女、雇用均等なんですから。」
 「そりゃ、そうだけどさ、他にも色々ね、困るでしょ、あなた。でも、あなた、安心してよ。私が、その足を治してあげるから。」
 「えっ! は?治すって、もしかして、あなたは、お医者さんなのですか。」
 可奈はシャンメルの顔を、まじまじ、まじまじ、と見つめた。シャンメルは、とても気楽な顔をしている。可奈は、
 「やっぱり、シャンメルさんは、お医者さんだったんですか、しら?」
 「そうねえ、別にわたし医療を職業にしていないけど、人は治せるのよ。まあ、何でもって訳には、それは、いかないけどね。」
 「それは・・・現代のお医者さんも、専門が色々あって、ですか・・・それは、治せる分野も治せない分野も、あると思います。」
 「私はね、わたしが治したい人しか、治さないのよ。勝手なようだけどね。」
 それから、シャンメルは自分で、うなずいて見せた。可奈は、
 「でも、治すって、どういう方法で、ですか?私、たくさんのお医者さんに見てもらったわ。超一流の人達ばかりにです。でも、治りませんでした、私の右足は不治なのだと思うの。」
 「そんな、やり方じゃないのよ。ところでさ、あんた、代償を払う事は、できる?」
 「え?代償って、どんなものを、ですか?」
 「それはね、恥じらいを捨ててもらわなきゃ、駄目なのよ。」
 「恥じらい?あたし、恥知らず、じゃないんですけども。」
 「そう。それは、そうね。でも、あなた、まだ、処女でしょ?何となく、わたし、そんな気がしてね。」
 「ええ。それは仰るとおりだわ。あたし、まだ、男性の方と、お付き合いした事もないのです。」
 可奈は、少し顔を赤らめると、うつむいた。シャンメルは励ますように、
 「でもね、処女を捨てるって事じゃないのよ。それは、これから、あなたの彼氏がしてくれる事だからね。そうじゃなくて、アヌスを貸すのよ。」
 「アヌス?なんですか、それは。もしかして、膣の事ですか、何語なのかしら。」
 「そう、あなた知らないのね。ふふふ、それは、お尻の穴ね。あなたの、お尻の門よ。」
 「えっ、きゃー、お尻の穴?ですか。でも、一体、誰に貸すんですか?」
 「それは、これから分かるわよ。どう?やって見る?難しい事じゃないのよ。考えるより、実行ね。」
 「でも、あたし、そんな事、した事ないからなあ・・・。できるかしら。何だか、怖いな、とっても。」
 「大抵の人は、そうね。でも、それをしないと、あなたの足は治らないわよ。いつまでも。」
 「ええー、信じられない気がします。そんな事で治るなんて。それでは、医学って何なのでしょう。」
 「そうでしょうね、それはね。いいわ、見ていて。これから、不思議なものを見せるわね。」
 シャンメルは、立ち上がると、ダチョウの剥製の方を向いた。そして、何か呪文のようなものを唱えると、手招きするような手振りをした。すると、どうだろう!ダチョウの剥製が歩いたのだ。一歩、二歩、三歩、ゆっくりと。
 「とまれ!」
 シャンメルは、剥製に性急に命令した。そのとたんに、ダチョウはピタと停まった。可奈は、
 「! ?・・・何ですか?これは。何か、ダチョウに仕かけでもあるんですか?」
と、驚いて叫んだ。彼女は全く、度肝を抜かれたようだ。シャンメルは、
 「これは、魔術よ。ダチョウは、ただの剥製です。剥製は、歩かないわよねー。」
 「・・・・・・。」
 「見た通りよ。私は魔術によって、あなたの足を治してあげるわ。」
 「それは、どんな魔術ですか?あたし、どきどき、してきたわ。」
 「それは、これから、あなた、わかる。どう?あなた、やる?やるわよねー、あなた。」
 可奈は、ためらった様子を、しばらく見せていたが、テーブルを挟んだシャンメルの美顔を見て、
 「ええ、やってみますわ。あたし、それ。」
と固い決意を表した。シャンメルは満足げに、うなずいて、
 「よろしい。それでは、魔術を始めましょう。」
 と高らかに宣言すると、彼女は、ツツツ、と、部屋の入り口のところまで行った。そして、手招きして、
「さあ、おいで。あちらの、魔術の部屋へ。」
 魔術儀式で
  それから、二人は長い廊下を歩くと、別の部屋へ入った。そこは、キリスト教の礼拝堂のように見えるが、十字架を背負ったキリスト像は、ない。シャンメルは、部屋の中央にある祭壇に向かうと、立ててある二本の蝋燭に静かに火をつけた。
次に、お香のようなものを、手につまむと、置いてある儀式の受け皿に入れて、変わったライターで火をつけた。とてもいい香りが、部屋にフワフワと漂う。シャンメルは、可奈の方を厳かに振り返った。その顔は、今までとは違った、とても神秘的な顔だ。そして、シャンメルは厳かに言った。
「これから、マルバス様の力を借ります。貴女の脚は、マルバス様が、治してくださるのです。」
シャンメルに、おいで、と手招きされて、可奈は祭壇に恐る恐る、近寄った。シャンメルは両手を合わせると、
「おお、偉大なるマルバス様。どうか、彼女の不自由な右足を治してください。」
と請い願って、深々と美黒髪の頭を下げた。可奈も思わず、同じように頭を下げてしまったのだ。その時、不気味な祭壇の蝋燭の炎が上方に、三十センチ位も伸びたように見えた。可奈は、
「!!!!!!!!!」
と、声にならない声を上げてしまった。シャンメルは確信的に、
「マルバス様は、私の願いを、こころよく聞き入れてくださいました。これから、裏の小屋で、その儀式を行います。さあ、わたしに、ついてきて。」
 先に優雅に歩き始めたシャンメルに、可奈は、トコトコとついていく。その祭壇室を出て、再び長い廊下を歩き、勝手口のようなところから、広い裏庭に出た。緑の大樹が庭を取り囲むように豊かに、おい茂っている。外からは、ここはまず、見えないだろう。その庭の真中に小屋があった。それは、山小屋ともいえるものだった。シャンメルは、
 「ここですよ。ここで治るのですよ、貴女の足は。」
 と、優しく話すと、その小屋のピカピカ光るドアノブをグイと握った。
彼女の後に入った可奈は、そこに色々な動物が、いるのを見た。猫や烏、鶏など。その中に一匹の大きな山羊が、いた。可奈は感嘆したように、
 「ずい分と色々、様々な動物を飼っていらっしゃるんですねえ。」
 「まあね。日本じゃ、あまり多くは飼えないけどね。」
 「今流行の、アニマルヒーリングとか、なんですか?」
 「そう言えば、そうかもね。うん、使い方は色々よ。」
 「ふーん、興味深いなあ、と、わたし思いますわ。」
 シャンメルはフフフと笑うと、いきなり、山羊に向かって来るように手招きした。すると、どうだろう、その山羊はダチョウの剥製みたいに、こっちへ、ゆっくりと、やって来るのだ。
 「よし、そこで。とまりなさい。」
 彼女は、山羊を身振りでも制止して、その山羊の動きを止めた。それから、おもむろに可奈の方を向くと、
 「あなた、ここで服を脱ぐのよ。」
と厳かに命じた。
 「えっ!服を脱ぐの!?ここで、ですか。」
 「そうです。それからでないと、儀式は始められませんからね。」
 「・・・・・・。だって・・・。」
 「誰にも見られる訳じゃありませんよ。私だけ、ですからね。私は女ですから。安心して脱ぐ。」
 可奈はシャンメルの顔を見ると、うなずいて上着のボタンに手をかけた。シャツとスカートを脱ぐと、白いブラジャーとパンティだけになった。
 「さあ、それも脱ぎなさい。早く、降ろしてしまいなさい。」
 シャンメルは、白い顎を、威丈高に、しゃっくった。可奈は、しぶしぶ白いブラジャーを外していった。小ぶりだが形の良い彼女の乳房が現れてくる。ピンクの乳首が見える。それから彼女は、白いパンティに手をかけるとスーッと下に降ろしていった。それほど濃くないデルタだった。
 「それで、よろしい。とても綺麗な体ですね、やはり。」
 シャンメルは、満足げに、うなずいた。可奈は女同士という事からか、二つの秘所を隠しもしないでいる。シャンメルは大山羊にススと歩み寄ると、山羊の股間に、彼女の手を伸ばした。その手は、すでに山羊の巨大なペニスをグっと掴んでいる。やがて、その手は左右に激しく動き始めた。
 「・・・・・・?」
 可奈は、そのシャンメルの手の動きを、じっと見つめている。
 「よし、これで、よし。おー、いい子ちゃん、山羊ちゃん。」
 シャンメルは、手を山羊のペニスから外すと、立ち上がった。
 「さあ、あなた、この山羊のペニスを見て下さい。」
 シャンメルは、可奈に手で、その場所を教えた。
 「まっ!あっ・・・・・・」
 可奈は、すぐに絶句した。巨大な山羊のペニスが、そこにあったからだ。黒々と、それは、いきり立っている。
 「これを、あなたのアヌスに捧げるのです。覚悟は決めていますね?!」
 「でも、・・でも、こんなものを・・・・・・私の・・・お尻の穴に入れるなんて、それは・・・!」
 「なに、大丈夫ですよ。何とも、ないです。あなたは、大便は、しますでしょう?」
 「え、ええ・・・・・・。」
 「ではね、その時の感じを思ってもらえば、いいのですよ。それは、そう長くは、ありませんから。」
 「でも、だって、山羊の・・・・・・ちんぽ、いえ、ペニスなんて、ねえ。」
 「あなたは、その足を治したいとは思わないのですか?」
 「それは、ぜひ、治したいと思いますけど・・・。」
 「じゃあ、すぐ四つん這いになってね。」
 「ええっ!?えっ。」
 「さあ、早く。四つん這いに、なるのでーす。」
 可奈は、もちろん、ためらってしまった。しかし、何十年と、味わった足の不自由な苦い思いを、色々と思い出していた。それが、これから消えるとしたら、どんなものだろう、と思った。
 「さあ、早くしなさい。四つん這いに、なりなさい。」
 シャンメルの言葉は、可奈を自在に操った。彼女は、無意識のうちに、その場に両手をついていた。シャンメルは、誇らかに宣言するように指示した。
 「あなたの、お尻を空高く、高く上げて!!」
 その言葉のままに、可奈の腰は空の方を向いた。その時だっ!彼女は、自分の背中に動物の重みをグワーンと感じると、彼女の肛門に、びりびりびり、と鈍痛が走っていった。
 「ああ、痛っ!わーっ、痛いわー。」
山羊のペニスが、彼女の尻の穴に入ったのだ。それは熱を帯びていて、可奈の尻の中を自由に動いた。それは、いちじく浣腸より、大きな感じがする。
 「うっ、ううう。痛いなあーっ。」
 可奈は、ますます呻いていった。段々、山羊のペニスの、その動きは小刻みに、リズミカルになっていく。可奈は、生まれて初めて感じる感覚に陶酔して、我を忘れそうになってしまう。グングングンと、速くなった山羊のペニスの動きが一瞬、停まった。
 「あっ!いやんっ。」
 可奈の肛門の中に、山羊の精液がドっと放出されたのだ。その時、ガサッと大きな音がした。不審そうに横を見た可奈は、その山羊の頭が床に落ちているのに気づいた。後ろを振り向くと、シャンメルが、大なたを構えていた。光る刃物から山羊の血が、ポトポトと、したたり落ちている。
 「山羊の首を・・・シャンメルさん、切り落としたんですね。」
 うつろな眼で、可奈がシャンメルに聞くと、その山羊が横倒れに、どう、と倒れた。シャンメルは、ニッコリと、うなずくと、
 「シェール・ペーテル・ポー・シェッグ・ポー・パーラ。」
と、とても大きな声で叫んだ。それから地面に落ちた山羊の頭を両手で持つと、可奈の足の上に持って行き、その生暖かい鮮血を、たらした。シャンメルは、山羊の頭から血が落ちて、血がなくなるまで持っていなければ、ならなかった。最後の一滴が、ポトンと可奈の足の上に落ちると、シャンメルは、
 「さあ、立ちなさい。そして、歩くのです。」
と冷静に促した。すっと立ち上がった可奈は、両足を動かしてみた。可奈は衝撃的に思った。
 (歩ける!歩けるんだわ。うわあ、あたし、自由に歩けるのー。)
 何とも軽やかに、彼女の両足は身軽なステップを踏んだのだ。
 「シャンメルさん!あたし、信じられないです、こんなのって!」
可奈は、ワクワクとした喜びに満ち満ちて、そう大きな声で叫んだ。
 「はい、魔術は成功しましたよー。とっても、よかったですねー。」
 と朗らかに答えると、シャンメルは、彼女の白い顔に、ふふと快心の笑みを浮かべた。
 
生まれ変わった彼女
 田宮真一郎は、広い公園のベンチで頭を上げると、
「おっと、つい居眠りしてしまった。今日も快晴、いい天気。」
と、独り言を呟いた。(そうそう、あの性魔術の筆を、使ってみるか・・・)彼は、あの美外人女性が、とても奇妙な、性的な事をした絵筆をズボンのポケットから取り出して、握った。(でもなー、今日は、描く物がないなー。若い女だったっけ。又、今度、と・・・・・・)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 
 場所が変わって、時刻は午後六時に、なっていた。白山吾郎と佐山は、それぞれ社長室にいる。吾郎は、
 「どうかね、うちの娘は・・・いいと思うだろう?」
 と佐山に聞いた。
 「はい、お嬢さんは、とても素晴しい方だと思います。」
 佐山は、かしこまって両手を膝の上に載せて答えた。吾郎はニコリとして、
 「素晴しい、か。うちの娘はね、君も見た通り、右足が不自由なんだ。それは、生まれた時からでね。今まで何度も、お見合いをさせたが、すべて全部断られてしまったよ。
あの子の足のせいだろう、ね、多分。」
佐山は、真面目な表情を変えずに、
 「そんな、そんな事は、ちっとも問題じゃありません。それは、確かにマイナスですが、でも、お嬢さんは、それ以外が全部プラスだから、合計すると非常にプラスですよ。」
 「ははは、その表現は、とても面白いなあ。そんな事を、言ってくれたのは、ただ君だけだよ。では、それではウチの娘と、つき合ってもらえるかね?」
 「それは、私は喜んで、お付き合いさせていただきますが、お嬢さまの方は・・・。」
 「それは、おれの方から聞いとくよ。うん、ところで佐山君。今から、一杯やりに行かないか?」
と誘うと、吾郎は、コップをグイとあおる仕草をした。佐山は、即座に、
 「はい、お供します。何処へでも。」
 と即、答えた。それを聞くと、満足した吾郎は立ち上がった。佐山も遅れずに続いて、立ち上がる。二人は自社ビルを出ると、近くにあるバーへ入っていった。その店内は、さ程広くはない。その店の一番奥のテーブルに、二人は向かい合って座った。やって来たコンパニオンに、高級ウイスキーとイカの塩辛を注文した吾郎は、佐山に、
 「まあ、娘をよろしく頼むよ。お願い、この通り。」
と頼み、片手を自分の顔の前に出して、佐山を拝むようにした。佐山は少し驚いた顔で、
 「それでは、もう、まるで私が、お嬢さまと結婚するみたいですね。」
 「おれは、そう願っておるのだ。そういうのは、いけないかな。」
 「それは、でも、それは、お嬢さまの気持ち次第ですよ。」
 「うん、うん、そうだな。そうだとも。そういうことだ。」
 「あの、社長、すみません、あの、ちょっとトイレに行きたいのですが。」
 「ああ。行ってきたまえ。まあ、のんびりと放尿をな。」
 少し慌て気味に佐山は、化粧室へ行った。その時、女性用のドアが開いて、いきなり若い女性が現れた。彼女を見て、佐山はアアっと、声を挙げた。
 「あっ、お嬢さん!」
 だが、その女性は佐山をチラリと見ると、スッとその場を通り過ぎて行った。佐山は、その女を振り返ったが、尿意を我慢しきれず化粧室に入った。三分後、出て来た佐山は店内を見渡すと、さっきの女を捜した。だが、あの女は全然、店の中には、いない。席に戻ると、佐山は吾郎に聞いた。
 「社長、お嬢さんに似た人が、トイレから出て来ましたけど、ご覧になりました?」
 「ああ、見たよ。よく似ていたけど、可奈とは違ったな。」
そう答えると、吾郎は、何故か苦いコーヒーのような顔をした。佐山は、
 「そうでしょう。私は、すっかりお嬢さまと間違えてしまいました。」
 「気をつけないと、いかんな。そういうことに、これからは、ね。可奈は君の嫁さんになる人だよ、自分の嫁さんを間違えては、困るから。」
 吾郎は、又、苦いコーヒーを味わったような笑いを浮かべた。
それから自邸に車で帰ると、吾郎は若い女中から、
 「あの、まだ、お嬢さまが、お帰りになって、おりませんけれども。」
と慌ただしく言われた。
 「何、まだ帰っていない、と?あいつ、何処へ行くか、君に言っていなかったのか?」
「はい、お嬢様は、わたしに何も言われませんでした。」
「困ったな。まさか、あいつ、危険な目に会っているわけじゃないだろうが・・・・・・。」
 吾郎は、ぐっと強く腕組みをした。高級そうな柱時計の長針は、夜の十一時をピタッと指していた。彼は、玄関脇の居間に入って、
 「ちょっと、コーヒーを持って来てくれ。」
と、付いてきた若女中に命じた。
「はい、かしこまりました、急いで。今すぐに、苦くないコーヒーを作らせて、いただきます。」
すぐに高価なコーヒー豆を液体にして、女中がカップに作って持ってきてから、そのままダラダラと一時間が過ぎた。だが、可奈はまだ、帰って来ないのである。
 「おかしいな、おかしな話、お菓子な話?いや、どうしたのだ?一体全体、これは。何か、何処かにある。」
 と独り言を洩らすと吾郎は、娘を待つのを、ようやく、あきらめて自分の寝室へ帰った。
 
 こちらは、魔女シャンメル宅だ。可奈は、広い庭で、そこら中をステッフ゜しながら、 
「魔術って、とても素晴らしいですね。とーっても、素晴らしい。」
とシャンメルに、すごく嬉しそうに話しかけた。シャンメルも又、上機嫌で、
 「ええ、その通りですね。でもね、魔術は、これだけでは、ありません。あなたが毎週一回でも、ここへ来てくれれば、ワタシ色々教えますよ。」
 「本当ですか!それは、うれしいなー、わたし、毎日でも、ここに来たいくらいですわよ。」
そう答えて、可奈は上へ高く高く、ジャンプした。スカートがめくれて、可奈の白いパンティが見えた。
 
 翌朝八時頃、吾郎がダイニングに入って来た時、玄関の方で、
 「ただ今。今、帰りましたわ。」
と声がした。あれは可奈の声だ。若女中は、それを聞いて、慌てて玄関へ走った。そして可奈を出迎えると、
 「お嬢さま、お帰りなさいま、あれっ!」
と大声で叫んだ。それを聞いた吾郎は、籐の椅子から立ち上がると、
 「何だ!?一体全体、どうしたのかね。」
と尋ねる声を出した。と、その時、ダイニングルームに可奈が、元気よく入って来た。吾郎は、
 「おう、お帰、あっ、おまえ・・・その、足は、よくなったのか。それとも、おまえは可奈では、ないのかな?」
 「もちろん、わたし、可奈よ。まいダディ、どうです、びっくりした?」
 「ああ、もちろんだよ、だが一体、どうして、どうやって・・・・・・・おまえの足が、こんなに綺麗に、すっきりと、晴れ渡った富士山の雄姿のように、治ったのだ。」
 「それはねー、それは、これからホイホイ話すわ。ねえ、立水さん、紅茶とトーストを持ってきてよ、お願い。」
 「はい、お嬢様、かしこまりまして御座います。」
 若い女中の立水は、驚いた顔のまま、キッチンへ行った。吾郎は、もう落ち着きを取り戻した顔で、
 「びっくりしたよ、とても。おれは、まさか、あいつが・・・いや、何でもない。」
 それから、不自然に取り繕った顔をした。そして、身を乗り出すと、
 「まあ、この訳を、話してくれないか、可奈?おまえが、知っているのならね。」
 「ええ、ええ、話すわ。だけどね、紅茶が先ですわよ。」
 可奈は、豪華な椅子に綺麗に座ると、父に向かって、にっこりと微笑んだ。その場の空気は今までとは、ドキャーンと変わった。
 
彼女の絵が出来た
  その時、田宮真一郎は、東京、練馬の絵山文房堂にいた。店の主人、絵山好三は、
 「いらっしゃい、おや、田宮さん。珍しいですね。お元気そうで、何よりです。」
と親切な感じで声をかけたのだった。
 「やあ、久しぶり。今日は見せたいものがあるんだ、これだよ。」
 真一郎は、ポケットの中から一本の奇妙な絵筆を取り出した。絵山は、
 「何だ、うちの筆ですね?この前、田宮さんが買っていったものだ。」
 「そうだよ。だけど、この筆は、ぼくが有名になる筆になったんだ。」
 絵山は、白い歯を見せて笑って真一郎を見た。頭がおかしくなったんでは、という眼をしている。
 「それは、それは。ちょっと貸して下さい。あっ、本当だ。これはね、何かの力が入っていますよ。」
 「そうだろう。いやいや、調子を合わせてくれなくてもいいよ。どれ。」
と、渡した魔法の筆を絵山から、もぎ取ると、
 「それじゃ、又ね。今度は、ぼく、有名になっているかなー。」
 と冗談のように言って真一郎は、その店を出て行った。それから街を歩きながら、(今日は何処へ行こうかな?風景なんて描いたって面白くないな。そうだ、人物を描こう。モデルさえ良ければ・・・)と、都合のいい事を考えながら人と、すれ違っている。するとその時、真一郎の眼に一人の女性が映った。(あれだ!あれこそ、おれが描きたかったものなんだ!)と心の中で、真一郎は大きく叫んだ。その女が近くに来た時、(なあんだ、)と、真一郎は溜め息をついていた。(水川マキじゃないか)だが、その女は真一郎を見ると、
 「田宮さん!わたしです。」
と彼を呼んで、立ち停まった。(えっ!?)真一郎は、ぎょっとした顔をした。
 「田宮さんでしょ?あなたは田宮真一郎さんですねー。」
 その女は、美しい声で真一郎に聞いてきた。真一郎は、まごついた顔で、
 「そ、そうだけど、あなたは水川マキさんじゃ・・・・・。」
 「いいえ、違うわ。私は、白山可奈ですよ。」
 「ええっ!!!あの、足が不自由な、いや、不自由だった・・・。」
 思わず真一郎は、とても大きな声を上げてしまった。通り過ぎた通行人が全員、彼を振り向いて行った。真一郎は、
 「だって、前とは全然・・・、あなたが、あの写真の可奈さん?本当かなあ。」
可奈は、微笑んで、うなずくと、
 「そうなのよ。あたし、変わったでしょう。わたしの父だって、びっくり、していたわ。わたしの足が、こんなに自由に、なったんですもの。」
 「一体、どうしてなのか・・・?こんな事が、どうして起きたんだろう。」
 「それはね、これから、お話しするわね。でも、こんな処じゃ、なんだから、ですよ。他へ行きませんか。」
 「そうだねー。よかったらさあ、ぼくのアパートに来ませんか?ここから、歩いて、すぐだから。」
 「そうしましょうよ。それが一番いいこと、です。」
二人は並んで、とっても仲良さそうに、歩き始めた。だが、可奈は以前のように、びっこを引いてはいない。それどころか、どうして!とても流麗な歩き方だ。真一郎の方が、ともすると遅れそうになる。道行く人は、いちいち、可奈を見て通り過ぎて行く。それ程、彼女は美しいのだ。十分ほど歩くと真一郎が、
 「ここだよ。むさ苦しいけど。君、覚えているかな。」
 と指差すと、木造モルタルのアパートが、二人の眼前にあった。可奈は嬉しそうに、
 「覚えていますよ。さあ、中に入りましょうよ。」
 「あ、そうだね。そうそう、その通り。」
 と答えると、真一郎は自分の部屋の玄関に行き、鍵を開けた。そして、ゆっくり可奈を振り返ると、
 「さあ、どうぞ。お入りください。」
 「まあ、ありがとう。お邪魔します。」
 「別に誰もいないよ。気にせずに入ってよ。」
 と軽く言って真一郎が笑った時、ビューッと音がして、背中に羽のついた小さな子供みたいなものが、二人の間を通り過ぎて行った。可奈は、
 「あれっ、何なのかしら、あれ?真一郎さん見えました?、いまの?なんか、羽の生えた小さな子供が飛んで行ったけど。」
 と、とても不思議そうに聞いた。二人が周りを見渡すと、さっきのあれは、もう何処にも見えなかった。真一郎は、
 「うん、何なんだろう?キューピットみたいだったけど、もちろん、あんなものは、ぼくの部屋には置いていないし・・・・・。」
 と言いながら、ドアを開けた。彼は、
 「中で、何かしてたのかなあ・・・。」
と言いつつ、可奈と二人で部屋に入った。彼の部屋に入った可奈は、部屋を見渡すと、
 「まあ、さすがに芸術家の部屋だわ。何かこう、違いますね、普通とは。」
 「何、きたないだけさ。でも、何も変わっていないなあ。さっきのやつは、何も、ここでは、していないみたいだよ。あのキューピット。」
 と話しながら真一郎は、部屋の床に散らばった絵の具を片づける。そして、
 「その辺に座っていいよ、今、何か食べ物と飲み物を持ってくる。」
 「あ、待って。それは、今じゃなくて、いいのよ。あたし、のどは渇いていないから、田宮さん、気にしないでよ。」
 「そうかあ、よし、じゃあ、ぼく、君の絵を描いてみたいんだけどなー。」
 「ええ、いいわよ。もちろん、わたし、喜んでポーズを取ります。どんなポーズでも。」
 「でも、どうやって、君は足を治したの?是非、それを知りたいねー。」
 「それはね、或る外人の女性に、魔術で治してもらったの。とても、とても、とてもそれは、信じてもらえないと思うけど。」
 「ああ、とても、信じられないね。そんなの、ただの偶然かも知れないよ。それは、よくわからないけど、あっ、そうだ!ぼくもね、何やら変な外人の女性に、奇妙な事をしてもらったんだ。」(フフフ)
 「奇妙な事なの?何ですか、それは、どう、奇妙な事なのかしら。」
 「えっとねー、湖に落ちた、その人を助けたらね、ぼくの絵筆に何か奇妙な呪文を唱えて、これで、あなたは有名になります、って言ったんだ。」
 「え?え?え?、どの筆なの?、わたしに、見せてもらえるかしら?」
 「ああ、いいよ。これだよ。この筆さ。これが、その魔法の筆。」
 真一郎は、机の上から一本の奇妙な筆を取って、可奈に手渡した。
 「これが、その魔法の筆なのね?。ねえ、これで、あたしを描いてくださらないかしら?」
 「おう、そうしてみるかあ。やってみるよう。」
 真一郎は、可奈から魔法の筆を受け取ると、そばにあるイーゼルを抱えて持って来た。それから、
 「白山さん、両手を頭の上に、組んでくれないかな?」
 「こうかしら?これでいいですかぁ?」
 「そうそう、そうだ。その感じで、動かないでねー。」