SF小説・未来の出来事26 試し読み

そこで水馬社長は聞いてみたのだ、カリスマンに。
「阿片と言うものは中毒性や何か人体によくないから世界各国で禁止されているようですが。」
「ああ、その事かい。いずれ問題になるような事は我々は最初からしないよ。その辺は安心していてくれて、いい。」
カリスマンは念を押すような顔をすると、
「せっかくだから外に出てパキナ星を見ていこうよ、水馬君。君とは永続的なビジネスパートナーシップを組みたい。パキナ星は地球の二分の一の大きさで、我々人類の他は植物だけ、とさっき話したね。それを見に行くのは植物園が、いいだろう。」
「それは是非、見せてください。地球の植物とは違うものが多いんでしょうね。」
と水馬宇摩士は関心を目に示す。
「それは違うよ。徹底的に違うものもある。自動車で行こうか。」

 オープンカーに乗ってカリスマンと水馬宇摩士は車道に出た。車輪が無くて地上より浮上し、前進する。それも半重力による推進だそうだ。だから!車道とはいっても地球のようにアスファルト舗装など、されていない。タイヤを必要としないせいだろう。水馬宇摩士は助手席で風を感じつつ、
「これでは車両税なんて要らないですね。路面も傷まないし。」
ハンドルを握っていなくて自動運転させているカリスマンは、
「ハハハ。この星には税金が、そもそも存在しないよ。」
と軽く答えた。水馬宇摩士は不思議そうに、
「では政府は、どうやって運営されるんですかねえ。」
「それがねえ、後払いになっているんだよ。」
「後払い?ですか、一体、それは・・・。」
「うん、政府は一年単位で行政を行なう。それで住民の満足度によって税金を納める額は国民で決めるのさ。」
「それでは税金を払わない人も、いるんでは?」
「いや、いないよ。税金を払わないと水道を止められる。水道代は税金の中に入っているから。」
屋根のない車の助手席での眺めは、郊外から街中に入ったらしい。建物の窓はカリスマンの家の部屋の窓のように上下の高さの幅が狭い。その代り、というか道路を走る車はオープンカーが多いようだ。地球と似た星だが植物が多いせいか酸素が多いらしい。自動車も化石燃料を燃やして走る原始的な車ではないため、二酸化炭素も出るわけがない。車道も歩道も同じような空気だ。
外に出た時は暑く感じた水馬宇摩士もオープンカーの助手席では涼しく感じる。吹いてくる風だけのせいではないようだが?水馬は、
「涼しいですね。エアコンもないのに。」
「うん、後部座席と前の座席を透明な壁で覆ったのさ。それで直射日光を、さえぎっている。ぼくらの頭の上に、その透明の防護シートみたいなものが出ているよ。それで雨が降っても上からは降らない。雨の場合には目の前まで透明な防護シートを降ろすから雨に濡れることはない。オープンカーには標準装備されているよ、この透明な防護シートはね。」
との事だった。
 飛ぶように走る、形容詞ではなく、そんな車だ。地球では考えられない車に水馬宇摩士は乗っているのだ。
 動物のいない星だから動物園はなく、植物園はあるというけれど、一般的には興味を持たれないのではないか、と水馬宇摩士は考えていた。それが植物園の前の駐車場にカリスマンの車が停まり、歩いて二分の場所に植物園の入り口があったが少し行列が出来ていた。入場料はカリスマンが水馬社長の分も払ってくれた。植物園の中に来ている人たちの肌の色は地球で言えば黄色人種のものが多い。カリスマンは室内に籠っていることが多いため、日焼けしないのだろう。パキナ星のあちこちに見られるような植物を植物園に置いていても入場料を払う価値はない。
 入り口を入ると屋根のない場所で、なんと!そこには見上げても見上げきれない高さの樹木が天を目指すかのように地に根を生やしていたのだ!高層建築物のような樹木である。表示板にはパキナ星の言語で説明しているため、水馬宇摩士には分からなかった。カリスマンは日本語で、
「この木は高さ1500メートルは、あるよ。」
と云う。地球の日本の山でも1500メートルは高い山だろう。パキナ星の植物の生命力には驚かされてしまう。カリスマンは続けて、
「この木の樹齢は千年に、なるらしい。」
パキナ星の人の寿命は五百歳らしい。水馬宇摩士にとっては晴天の驟雨だった。それから屋根付きの部屋に入っていくが、天井の高い植物園だ。
直径10メートルのスイカのようなものが展示されている。高さも十メートルは、ある。水馬社長は、それを見て、
「西瓜の和菓子が何人分作れるか分かりませんね、カリスマンさん。」
と右横のカリスマンに話す。ゆったりとした表情でカリスマンは、
「あの果物は、この植物園でだけ栽培しているんだ。いずれ市場に出るが、価格はね、普通のあれ、地球の名称は西瓜、と同じ値段だ。これを見るためにパキナ星の、あらゆる場所から見物に来るよ。
ぼくらパキナ星人が富裕なのも実は、ここにある。食べ物に不自由しないのさ。働かなくても生きていける。」
「本当ですか、夢みたいですね。」
「政府で生活費を支給してくれる。でも、それより働いた方が収入はいいから遊んでいる人間はパキナ星には、いないよ。所得税は払わなくて、いいし。」
「うわーを。それでは天国ですよ、ここは。」
「地球は地獄に近いだろ?太陽の恵みが乏しいから、それで地球には貧困が生まれるのさ。庶民から税金を取らないと政府が成り立たないものね。地球のどこででもなく確か産油国の何処かも無税だったんじゃないかな、地球の。」
「産油国は太陽の恵みが、あるんですねー。日本は石油は出ないし。」
「そうだ、だから働いて金を稼ぐしか、ない。」
小さな石油の貯蔵タンクのようにも見える緑色の巨大な果実。飽きずに眺めていたい水馬宇摩士だったが、ふと、聞いてみたいのが、
「もしかしてパキナ星の人には癌はないのでは、と思いまして。」
「ああ、いい質問だ。癌に限らずパキナ星人には病気が起こらない。千歳、いや二千歳まで生きられるのが普通だ。」
「それでは老人になって生き続けるという人生ですか。」
「いや違う。老化は死ぬ五十年前から始まる。千歳で死ぬ人もいる。」
その話に感銘を受けた水馬社長は口を閉ざした。カリスマンは歩き始めたので水馬宇摩士も随行する。
 高さ四メートルの樹木が向かい合うかのように立っている。その樹木の半分の高さ、二メートルほどの地点に一方の樹木に人間の陰茎のようなものが二十センチほどの長さで垂れ下がっていた。
もう一方の樹木の半分の高さには人間の女性の陰部に相当する割れた部分があったのだ。
だが何気なく見たのでは気づかないし、水馬宇摩士も通り過ぎようとしたのだが、カリスマンが立ち止まったので水馬も急停止して、
「カリスマンさん、どうしました?」
「あ、ああ。あの一対の樹木なんだが、夫婦木と言われているんだよ。」
「夫婦木?ですって?何でしょう、それ。」
「フウフキ、では分からないだろうね、メオトギ。と言えばいいかな。」
「めおとぎ、ですか。目を研ぐんですか?あの木に目があるんですかねえ。目を、どうやって研ぐんでしょう。」
「研磨ではないんだよ。カップルだ、男女のね、これで分かるだろう。」
「ああ夫と妻、ハズバンドとワイフですね。(水馬は目を凝らして二つの木を見ると)ああ、すごいなあ。あれは人間の男女の性器に似ていますねえ。でも、それだけでしょ?」
「いいや、違う。おい、始まるよ。」
と楽しそうに声を上げるカリスマン。
男性の陰茎のような垂れ下がったものを露出している樹木のそれが、まるで人間の男性の性器のように太くなり勃起するかのように屹立したのだ。その先端は亀頭のような形状をしているが、それは伸びに伸びて一方の向かい合わせて立っているような真ん中に女性の陰部の形状を持つ樹木の、その部分に伸びていく。すると!
その樹木の陰茎に呼応したかのように女性の陰部に似ている、その部分は少し開いたようだ。それに、そこが樹液で濡れたようになる。
男の樹木ともいえる、その陰茎に似た部分は女の樹木らしい、その陰部の穴に突入したのだ!
その瞬間、女の樹木は全身を震わせるような動きを見せた。上部にある枝葉を震わせて、それは快感を顕わしているような女性の樹木の姿だ。男の樹木の男性器は女の樹木の性器の中に出没、出る、入るを繰り返す。まるで向かい合わせて立った男女の性交のような動きだ。
来園者は少ないし、大人しかいない。木が交合するなとどは水馬宇摩士には考えたこともない現象だ。しかも、よく雌の樹木を見ると腰の辺りが横に広がって人間の女性のようなのだ。それにしても立っている樹木とは思えない程、柔軟な腰の動きを見せる夫婦木だ。男の樹木の性器のような部分は幹の方向に対して直角の角度で隆起している。やがて男木は腰を激しく連続して振り続けると、その動きを止めた。どうも人間で言えば射精したらしい。水馬は、
「果てましたね。ああいう樹木は精液のような樹液を放出するのですか。」
カリスマンは苦笑いすると、
「いや、大量の花粉を放出するんだ。その点は植物だね。女の木には、あの穴の中に雌しべが、あるんだよ。それで種子が結実したら、あの陰部が開いて夫婦木の種子がバラまかれる。この星で進化した植物として大昔より研究されてきた夫婦木だ。まるで人間のようだし、それに彼らの交わりは地球の動物のような春と秋ではない、一年中だ。神様が作ったような樹木だね。」
「そうですね、あっ!」
雌の木の股間に相当する部分の穴から雄の木の長く硬いものが柔らかく平常時の寸法に戻り、引き抜かれると以前のように男の木の股間にダラリと垂れ下がった。その亀頭に相当する部分には発射した花粉が大量に残っていた。
カリスマンは微笑むと、
「地球にはない植物は沢山、ある。あの若い美人の女性展示員に頼めば面白い事をしてくれるよ。」
と水馬に話すと、夫婦木から五メートルも離れて立っている赤い上着と赤色のスカートを履いて白いベレー帽をかぶって係員のように立っている美人にカリスマンは近づいた。カリスマンに気づいた女性展示員にパキナ星語で何かを話すカリスマン、彼女は少し頬を赤らめると、うなずき、夫婦木に近づいていった。男の木に接近すると彼女はダラリと下がっている陰茎のような部分を白い柔らかな右手で握った。すると!男の木のソレは固くなり、上に陰茎を向け始めたのだ!そして勃起角度は直角ではなく、自分の幹に近づくほど、そそり立った。美人展示員が握った手を巧みに動かして、男の木の陰茎部分を愛撫するように擦(こす)ると、二分で大量の花粉を放出した。それからダラリと垂れ下がる男の木の股間のモノだ。
展示員はパキナ星語で何かを説明した。カリスマンは、
「人間の若い女性の手で握られて、こすられて花粉を出すと男の木は次の日まで花粉を出したり勃起しないそうだよ。彼女は、この星の高等植物研究所の所員で、今は体験的に、ここで働いている。」
水馬は、その神秘的な瞳の若い美人と目が合ったので黙礼すると、彼女も少し金髪の頭を下げた。目は灰色がかった黒色の瞳の睫毛の長い美女で胸も勢いよく張り出している。
 彼女は地球人の水馬を見ても珍しい顔を見るような目をしなかった。その地点からカリスマンと水馬は先に進んで行った。パキナ星は、その星の太陽に、地球と地球の太陽との距離より短いという。その影響の成果として進化した(?)植物が生まれるのかもしれない。
 植物が展示されていない広い場所は円形のソファが、いくつもの場所にある休憩所のような所らしい。カリスマンは無人のソファに腰かけると、
「水馬君、座ってくれ。」
と話しかける。水馬宇摩士が言われた通りにカリスマンの横に座るとカリスマンは、
「こういう植物園にも展示できない危険な植物も、この星、パキナ星には、ある。吸血植物などが、そうだ。」
「吸血植物?ですか。信じられない植物ですね。」
「ああ。地球には、ないだろうからね。この星にも動物が誕生した時期は、あったらしい。四つ足の動物は化石として出土する地域もある。だが・・・。」
「どうなったんでしょうか、その動物たちは。絶滅?したんですか。」
「うん、絶滅している。それは吸血植物のカーキュラに、やられてしまったらしい。近くで寝ている動物に自分の蔓を巻き付けて、その動物の血を吸うのだ。しかも動物の首に蔓が巻き付けられて、まず、それで動物は窒息死するし、ほとんどの血を吸い取られてしまう。抵抗する暇もないまま、この星の動物は死んでいった。」
水馬は茫然として、
「そんな危険な植物は駆除されたんでしょう?この星では。」
カリスマンは首を横に振ると、
「それがね、駆除しきれていないんだよ。地球のライオンやトラでも絶滅させては、いないだろう?」
「ええ、そうですね。そういえば、そうです。」
「吸血植物カーキュラを絶滅させると、この星の生態系に良くない影響を与えると考えられている。野生の植物だし、動物みたいに移動するわけでは、ないからね。パキナ星の小学校で吸血植物カーキュラを危険なものとして図入りで教えているから、人が行かない野原に行ってもパキナ星の人間ならカーキュラを、すぐに分かるんだ。」
「教育されているほど危険な植物なんですね、カーキュラは。」
「そうだなー。だから、この星も行きたいところなら何処でも行けるわけではないんだ。ごく稀にではあるけれど幼児がカーキュラに殺されているという事も数年に一度は起こっている。その場合は、もしかしたら親が自分の子供をカーキュラのそばに置くというのも考えられるから、とはいえ、この星には警察が無いんだよ。」
「警察がないなら犯罪天国ではないですか。」
「それが犯罪なんて殆ど起こらない星だから警察はない。裁判所は、あるよ。検察庁もあるし弁護士もいる。ただ警察は、ないね。」
「それなら平和な星ですね。」
「そうだね、一つの国しかないし。それに一つの大陸しかないから過去に戦争をした事もないよ。」
「どういう大陸なんでしょうか、この星の大陸は。」
「ああ。この星も地球と似た球体なんだけれど、地球で言えば北極のあたりに広い大陸がある。その他は全て海だよ。」
「それでは魚とかは?いるんですか。」
「そうだ、魚類は動物では、ないからね。海産物は豊富すぎるよ。この星の人口は十億人程度。余った海産物は植物の、特に野菜の肥料にしている。それに魚介類も大きくてね。体長が一メートルの海老が一番小さなエビだ、というエビデンスがある。五メートルや十メートルの海老も採れる。地球の海老とは少し違うが、よく似ているし、おいしいよ。だから食べ物の値段は安いんだよ。
地球の経済格差の元は貧困な食料にあると思う。少ないから値段が上がる。宝石も、そうなんだけどね。鰻でも地球のウナギは数が少ないから、高価になるけどパキナ星のウナギは多い上に体長が五メートルはあるから、こちらの鰻丼はコメよりもウナギの方を分厚く載せているよ。地球の日本で鰻丼は、その逆と思うよ、ぼくはね。」
「その通りで、ございますよ、カリスマンさん。でもカリスマン様とは中国で、お会いしましたが。」
「ああ、そうだったね。中国のウナギ料理には、しゃぶしゃぶ、もあったな。日本では、うなぎの、しゃぶしゃぶ、は皆無だろうよ。」
「そうですな。私も知りません。それを日本で、やれば・・・。」
「成功しないだろう。君は中国に和菓子を出すのが望みなんだろ?

「ええ、ええ。左様で御座います、カリスマン様。秘密の成分を、よろしく御指導のほどを。」
「ああ。分かっているともさ。それはタダって訳には、いかない。しかしだ。地球の貨幣を貰っても仕方がない。金貨とかなら若干の価値は、あるけどパキナ星の金の埋蔵量は地球の十万倍は、あるし人口は地球の何十分の一だろう。金(かね)の価値は、それほどないし銀や銅も同じだね。それより創造的なものに価値があるからね、この星は。」
「はあ。わたくしどもの和菓子も創造的といえば創造的ですが。」
「いや、それも自然にあるものを加工しただけだからね。真に創造とはいえない。地球という星は大宇宙を作られた神様からすれば、恵の少ない星なんだよ。地球では金、すなわちゴールドが価値が高いのも埋蔵量が少ないからだ。キリストが何と叫ぼうと大宇宙を創造された創造主は地球を恵の少ないものとして作られた。我々の星、パキナ星は創造主の恵みは、もっとある。地球は寧ろ、ユダヤ人が信奉する宗教のようなものが生きるのに、ふさわしい。
すなわち、だね。物質の方が価値が高いのだよね。古い地球の世界では人が住める星は自分たちのいる所だけ、という発想だった。天動説だった。後は天国や地獄を考えた。神様は地球だけを、つまり人間が住める星として、作られたと考えたのだ。
なんという狭い発想だろうか。キリスト教は、その狭い発想の範囲内にあるのだ。大宇宙はキリストが考えたよりも遥かに、遥かに広大だ。我々の星にはキリスト教も仏教もない。地球の宗教は何もない。パキナ星は海には魚が多すぎて漁師は何時でも楽に大漁になる。雨の少ない年もないので米や小麦粉、その他の野菜が不足する事もない。野菜は例年、余っている。金(きん)が楽に取れる砂漠もある。金が豊富すぎると値段が高くならない。
ダイヤモンド。これもパキナ星には地球のガラス玉と同じくらい、ある。ルビー、サファイヤ、エメラルド、なども大量に採掘出来る星なので、それらの地球の宝石は、この星では珍しくないのだ。
では、われわれパキナ星人にとって珍しいものは、なにか。他の惑星の人間、地球人もそうだが、それも左程、珍しいものではなくなった。さっきの美人展示員が君を見ても平然としていたのを見たね。
 そういう訳で君、水馬宇摩士・君には或る所に行き、或る人に会って或る事をしてもらう。そうすれば対価が得られるので、それを私への謝礼にしてもらいたい。」
というカリスマンの話だ。
水馬宇摩士には良く分からなかったが、
「はい、そうします。それで御役に立てれば、と思います。」
と答えておいた。
カリスマンは立ち上がると、
「植物園は残りもあるけど、外に出よう。出口も入り口の近くだから。」
二人は最短の道で植物園を出た。車輪のない車でカリスマンが向かったのは企業のビルが立ち並んだようなオフィス街のような場所。
日本のオフィス街との違いはパキナ星の企業ビルには、それぞれ広い駐車場があり、そこには車輪のない車が停車している。地上に停車できない場合は地下にも駐車場がある。
カリスマンが停車させた駐車場の企業ビルは三階建てで、ガラス張りの入り口を入ると受付嬢が赤いベレー帽をかぶって受付の場所に座っていた。カリスマンは彼女の方に歩いていくと水馬も後を追った。パキナ星の言葉で話すカリスマンに対して受付嬢もパキナ星語で答える。彼女の肌の色は地球の白人より白い。氷のような肌の色だ。透明ではない氷の部分の白というべきだ。
カリスマンは後ろを振り向くと、
「最上階だ、エレベーターで昇ろう。」
エレベーターも反重力で動いているのか、瞬間的な移動だった。エレベーターを降りるとカリスマンは目の前にある部屋のドアへ行き、立ち止まった。そのドアの上部は広いパネルのような部分で、そこに何と部屋の中にいるらしい金髪で三十代らしき女性の顔が映った。その女性にはカリスマンが見えたようだ。ドアは右に移動して開いた。二人が入ると、その女性は近づいてきて、
「お待ちしていましたわ。カリスマンさん、と地球の方。ミズウマさんね?どうぞ、よろしく。」
地球の北欧の女性をさらに色白にしたような事務服を着たパキナ星の女性は右手を水馬に差し出した。握手をして感じられたのは暖かな手だ、という感触を水馬は感じた。ドアに自分の顔を映すのはパキナ星の独特の習慣だろうか。色々と不思議な思いの水馬の顔を見て、その女性は、
「アヌンと言います、私。日本に住んでいたこともあって、日本語は得意です。スウェーデン人という事でパスポートも持っていたし、コンビニでバイトをした事も、あります。地球に降りる前に日焼け機械で肌を焼いてから日本に降りたので、異星人には見られませんでした。東京に行って或る業界で仕事をしていましたけど、今は、それは言わない事にします。まずは先に水馬さんの和菓子が中国で成功してからの話です。成功しますよ、あなたは。水馬さん、又、会いましょう。」