ホモ系男子 体験版

 二十四歳の青年、菊川浩二は盆休みとして、郷里の福岡市へ帰ってきている。福岡県の福岡市で、人口は、もうすぐ百五十万人だ。中心から西の早良区西新が、彼の実家「菊川酒店」が、ある場所だ。小さな川から西が西新で、一丁目の商店街の、十階建てのビルの一階に菊川酒店は、ある。そのビルは、菊川ビルという名称で菊川浩二の父、有正(ありまさ)が、先祖代々の貯金で建てたものだ。有正は居間で浩二に向かい合って座り、
「東京は、大変そうやね。地震とか、あるし。」
と何気なく聞くと、缶ビールのプルトップを引いて自分の口に当てる。
「ああ、そうだね。地震は、よく揺れるよ。」
この前の東日本大震災の時に、菊川浩二はAVの撮影中だった。それも女優の中に、勃起したものを入れた瞬間、いきなり地震がグラグラと来たのだ。撮影しているカメラマンが倒れたので、そのシーンは撮り直しになったため、公開はされなかった。
「おまえ、俳優やりよるらしいけど(やっているらしいけど)、まだテレビには出とらんのか(出ていないのか)。」
「なかなか、ね。俳優も多いからなー、今は。」
「それじゃあ、生活は、どうする。」
「アルバイトを、しているよ。」
「ふーん。だめになったら、秀行の手伝いば、せえ(手伝いをしろ)。」
秀行とは浩二の兄で、九州大学法学部を出た後、有名なビール会社に入社して、三年の勤務の後に退社後は、菊川酒店を継ぐべく仕事をしている。
「うん。兄さんは?」
「今日はな、商店街の集まりで、帰りは夜遅くなるとよ(夜遅くなるらしいよ)。」

博多駅から地下鉄で、西新駅まで、そう時間は、かからないが、渡辺通りの近くを通過する時、浩二は昔、通った空手道場を思い出した。その道場の名前は、研心流・空手総本部という。貸しビルの一階に、五十畳ほどの道場がある。エイヤッ、エイヤッと掛け声が、道行く人の耳にも聞こえてくるほどだ。館長の石垣(いしがき)・(・)島(しま)男(お)は、沖縄県出身で、父親の転勤の関係から小学校の時に福岡市に移り住み、高校卒業後は、ボディビルジムのトレーナーをしていたが、空手の全日本選手権で優勝してからは、そのボディビルのジムのオーナーの出資で、中央区渡辺通りに道場を開いた。石垣・島男の空手は父親からの一子相伝のものであった。その道場は最初、あまりにも過酷な訓練を、させたため、三日と持たずに、やめる者が続出したため、今では、その方法は採らずに、各人各様の稽古をつけている。館長の秘儀の一つに
「天井落とし」
なるものが、ある。これは三角とびを発展させたもので、まず壁にジャンプして両脚をつけると、それを蹴って天井に飛ぶ。天井に足を当てると、そこから真下の対戦相手に飛び込んで、手刀か正拳で一撃を決める。
もちろん、天井が低い場合に有効な技だ。体育館のようなところでは、これは使えない。渡辺通りの道場は天井が低いため、高弟達を集めて、その技を披露した。その時、相手を務めたのが、菊川浩二だ。館長が壁に飛んだのは見えたが、それからは浩二には館長の姿は見えなくなった。
「ここだ!菊川っ。」
と頭上で声が、突然したので見上げると、館長の二本の指は、浩二の両眼の一ミリ前で止まっていた。くるり、と空中で回転すると、床に館長は鮮やかに着地した。
「ああ、館長・・・お見事・・・。」
浩二は、それからは言葉は続かなかった。居合わせた高弟も皆、息を呑んでいた。石垣館長は、
「これも、秘儀の一つに、すぎない。他にも、まだ、あるのだ。」
「それを、見せてください!館長!」
皆は、異口同音に懇願したが、
「そのうちに、見せよう。」
と、静かに言い、館長は石垣島の海のように微笑んだ。

そんな、ある日、菊川浩二は館長に、稽古が終わった後、一人だけ呼ばれた。
「菊川くん、今日は別の秘儀を君に教えよう。では、館長室に行くぞ。」
「はいっ。おっす。」
二人は、道場内にドアのある館長室に入った。そこは六畳ほどで、机と椅子くらいしかない。その机の上から、館長はロープを取り出すと、浩二に渡した。そして、
「今から、私が全裸になるから、それで体を縛りなさい。」
と命じた。浩二は戸惑ったが、館長は空手着を上下とも脱ぎ、ブリーフも外すと全裸になった。筋骨逞しい上半身で、腹筋は三段に線が入っている。だらりと下がった男根は、それほど大きくもなかったが。
浩二が、眼を、そらせていると、
「何を、しておるか。早く、縛るのだ。」
「はいっ。おっす。」
浩二は急いで、館長を縛り始めた。館長は、両手を背中に回して、手首を、くっつけている。
「後ろ手に縛ってくれ。」
「おす。」
浩二は館長の手首を、ぐるぐると縛る。
「両脚も、だ。」
「おす。」
浩二が縛り終わると、館長は手足を動かし、
「よく縛れている。さて、」
と呟くと、机の上にある木の板を流し目で見ると、
「菊川、あの板を取って。」
「おす。」
浩二が板を持って来ると、
「こういう状態にすると、敵は必ず近づいてくる。なぶりものに、したい心境でな。そこで。」
そのとたん、館長の、いちもつ、は、ぐぐーん、という感じで、力強く勃起して上を向いた。その膨張率が、すごいものだ。浩二は注視して、しまった。
「このように勃起させれば、敵は、これに近づくし、手に握る奴も、おろう。その時に、だ。だが、おぬしの手は傷物に、したくないので、その板を私のペニスのすぐ横に、立てよ。」
「おす。」
浩二は、館長の勃起したもの、の横に板を当てた。
「それで、よし。手を動かすなよ。きえーいっ!」
怪鳥のような叫び声と共に、館長のペニスは横に振れて、板に当たると、パキンッと音がして、その板は真っ二つに折れた。浩二は、
「おおおおお。」
と感嘆の声を、大きく、あげた。さらに館長は、上半身を前に倒すと、ロープに自分の勃起したペニスを強く当てる、すると、それは、ぶつん、と切れた。
「これで、両脚は自由となった。これだけでも、闘えなければ、いかん。が、手は、ね。」
手首のところのロープに、親指をかけると、ぶちっ、と、それも切ってしまった。館長が、
「ふーーむ。」
と呼吸を整えると、館長のペニスは小さくなっていった。ニヤリ、とすると石垣は、
「これを、ナイフペニスの技といい、我が家系に、代々、伝わったものである。鍛錬法は、そのうち教えようと思う。私の代から秘伝は、なるべく公開していくから、楽しみに、な。」
「おす!」
浩二は思わず、その場に片膝を着いて、いたのだった。

その時、浩二の年齢は二十歳だった。先生が、自分を前に勃起させた事について、立膝のままで、
「このような場合、自分は勃起できるか、心配です。」
と、師匠を見上げながら尋ねると、
「なに、女の裸を思い浮かべるのだよ。」
「なるほど。しかし・・・。」
「しかし?」
「自分は空手に強くなりたいために、女と、つきあいませんでした。」
石垣島男は、ブリーフを履くと、
「今の技は勃起しないと、できない。女と、つきあわなくても、アダルトビデオを見れば、よい。」
「は。パソコンは持っています。光ファイバーで、見れます。」
「ならば、ダウンロードも早く、できる。DVDならネット通販で買えば、送料無料で、送ってもらえるぞ。今のパソコンにはDVDプレーヤーは、ついておるからの。実は、私も見ておるのだ。最近では、絵色千佳が、お気に入りだ。さっきは、な、絵色千佳を思い浮かべたのだよ。」
浩二はアダルトは、ちらちら、と見るだけだった。無料サンプル動画だけで、それ以上は見ていない。
「おす。先生、ぼくも勃起のため、DVDを見ます。」
「よろしい。やりなさい。ペニスに自信が、ついたら、報告する事。」
「おす。」
その日は、それで道場は終わりだった。確かに、浩二は中学、高校と空手に明け暮れていた。硬派な男性に女性は近づかない。特に武道関係は、そういえるだろう。最近、法廷で裁かれている柔道の男性も、相手は自分の近くにいる女子柔道部員のみを、相手にしている。浩二だけでなく、同じ空手部員も彼女が、いなかった。浩二の高校には女子空手部も、なかったし、女子柔道部も、なかった。おまけに男子校なので、女子高生を見ることすら、稀だったのだ。学校の空手の部活が終わると、研心流道場に地下鉄で通っていたのは、中学生からで、それで今では石垣館長の高弟の一人に、数えられるように、なっていたのだが、初恋の感情を覚える相手の女性とて、見回しても、いなかった。ただ、一年上の空手部の先輩に、憧れ、とも、つかぬ思いを持っていたのは、浩二は覚えている。その先輩は高校を卒業すると、東京のインターネット関連の会社に就職が決まって、福岡を去った。その先輩の名前を、見川毅(みかわ・つよし)という。その頃の、学校の春休みに、西新商店街で浩二は見川先輩と、ばったり出くわした。
「おす。見川先輩。」
と、挨拶して頭を下げる浩二に、鷹揚に、うなずくと見川は、
「おれ、東京にいくけん(行くから)、お別れかな。菊川。」
「えっ、そうでしたか。ぼく、その事を、知りませんでした。」
「うん。昨日、入社式から帰ってきたとよ(帰って来たんだ)。新宿で、あったったい(あったんだ)。」
「入社、おめでとう、ございます。」
「立ち話も、なんやけん(なんだから)、おれが、おごる。ラーメンを、食いに、いこう。」
「おす。ごちそうに、なります。」
すぐ近くの博多ラーメンの店に入ると、二人はテーブル席で、向かい合って座った。見川は店の主人に
「大盛りラーメンを、二つ。」
と注文すると、浩二の方に向き直り、
「それがくさ(それがね)、インターネット関連の会社よ。売り上げも急進中らしい。」
「すごいですね。ぼくも、その会社に入りたいな。」
「おまえは自分の店が、あるやないか(あるだろうが)。菊川酒店が。」
「でも、ぼくは次男だから、気にしなくても、いいんですよ。」
「そうか。まあ、おれ、メールするたい。おまえのメールアドレスば、教えれ(メールアドレスを教えろ)。」
浩二は携帯電話を取り出すと、メールアドレスを表示させ、見川先輩に見せた。見川は自分も、携帯電話を取り出し、
「なら、ここで送ろう。」
と言うと携帯を操作した。間もなく浩二の携帯に、着信メロディーが鳴った。見川は笑うと、
「見ろよ。メール。」
と促した。浩二がメールボックスを見ると、そこには見川のメールが入っていた。
「確かに、届きました。」
「うーん。便利たい。おれたちの小さい頃は、こげなもん(こんなもの)は、なかったもんね。」
「そうでしたね。」
その時、店主が大盛りラーメンを二つ両手に抱えて二人のテーブルに置いた。見川は、
「沢山、食べろよ、菊川。」
「はい。それでは、いただきます。」
二人は猛烈な勢いで、大盛りラーメンを食べると、見川は、
「替え玉しょうか?」
「はい。お願いします。」
見川は店主に向かって
「替え玉ふたつ。」
と注文した。それも軽く、たいらげると、見川から先に店を出た。外は道行く人も、まだ少なかった。買い物の時間帯では、なかったせいだ。見川は店を出て、少し歩くと立ち止まった。そして浩二の方に姿勢を向けると、右手を差し出して、
「しばし、の別れかな。」
浩二は無言で自分の右手で、見川の手を握った。見川は、握手している手を持ち上げて、自分の顔に近づけると、浩二の右手の甲に口づけた。浩二は、(あっ)と思った。先輩の舌まで、感じてしまったのだ。見川は手を離すと、
「なんか、連絡したい時に連絡くれよ。」
と話すと、浩二の歩いて行く方向とは逆の方へ、軽やかに歩いて行った。浩二より五センチ、背の高い先輩だった。

その時から、浩二は二十歳になるまで、見川先輩にメールを出した事は、なかった。又、先輩からメールが来る事も、なかった。浩二は見川先輩の事をホモではないか、と思ってしまったのだ。先輩の事を思い出す日もあったが、自分としては同性愛には興味は、なかったのだ。空手家として、それは、よくない事だ、とも思う。今日、石垣先生は研心流空手の秘儀を教えてくださった。あれを身につけるためには、勃起力が必要だ。そのためには、女の裸が必要なのであって、男の裸ではない。とは、いうものの、自分は石垣館長のヌードを見てしまった。が、やはり特に何も感じるものはなかった。それは自分が全く、正常な証拠だ。先生は絵色千佳が好きだそうだけど、自分は誰にしようかな。前から気になっていた「つぼみ」のDVDをネットで買うことにした。レンタルビデオなど、利用した事がない。借りて返すのが、面倒なのだ。二、三日すると、「つぼみ」のDVDが届いたので、自分の部屋でノートパソコンに入れて見た。つぼみがヌードになっただけで、浩二は、すぐに勃起した。頭の中が、ぼーっ、と、してきて、自分の右手で、ぐいぐい握ってみた。ノートの紙を引きちぎって、自分の勃起したペニスの横に当てて、それに反動をつけて、勃起したもので叩いてみたが、軽い音を、たてるだけで紙は破れなかった。その代わり、パソコンの画面から、つぼみの喘ぎ声が聞こえると浩二は、それに向かって射精してしまったのである。すぐに、浩二のペニスは萎えていった。
 高校を卒業して浩二は、薬局でアルバイトを募集していたので、そこで働く事にした。就職へ面接にも行ったが、面接で、
「君の、お父さんの職業は?」
と聞かれたので、
「酒屋を、やっています。」
と答えると、面接官は顔を顰(しか)めて、
「お店は、繁盛していますか。」
「ええ、西新にあるのですが、最近、店の周りに大型マンションが多くできまして、店に注文が増えています。」
「それは、とても結構です。採用の場合は、ご連絡します。今日は、どうも、お疲れ様でした。」
面接官は、興味のない眼を浩二に向けた。薄々、だめか、と浩二が予想していたように、その会社から連絡は、なかった。その会社、一社しか応募していなかったので、他の会社に応募する事も、できないまま三月の終わりになった。浩二はネットで、「福岡高額アルバイト」で検索すると、渡辺通りにある薬局で、募集していたのを見つけた。携帯で電話して、問い合わせると、
「ええ、まだ募集していますよ。」
との答えが、耳に返ってきた。
「ぼく、やってみたいんです、そちらのアルバイトを。」
「それじゃあ、面接に来てください。場所は渡辺通り・・・・。」
その店は、空手の研心流本部にも近かった。ただ、地下鉄の入り口とは反対のところに、あったため、気が、つかなかったのだ。浩二はその日の午後、西新から地下鉄で渡辺通りに向かった。地上に出てからは、電話で言われた通りに歩いて行くと、その薬局はあった。
漢方・黒光り
と看板には、ある。ピカピカのガラス扉を開けて入ると、五十歳くらいの、でっぷりと太った中背の男性が、
「いらっしゃい。面接に来た人ですね。」
「はい。菊川浩二と申します。」
「それじゃあ、こちらへ、どうぞ。」
店の奥にあるドアを開けて、店主は浩二を手招きした。その中は、接客用の部屋で、丸いガラスのテーブルに、ふかふかのクッションの白い椅子が四つあった。店主が右手で椅子を指して、
「そこに、気楽に腰掛けてね。」
「はい。」
二人は、正面から向き合う形で座った。履歴書をバッグの中から浩二が取り出すと、店主は、
「さあさあ、それを見せてください。」
と、声をかけると受け取り、
「ほう。特技は空手ですか。それは結構。うちはね、薬局といっても、主に精力剤の店なんですよ。貴方みたいな、逞しい男性は店に必要ですから、即、採用という事で。そうしましょう。」
「がんばります。なにも、わかりませんが、どうか、よろしくお願いします。」
「うん。アルバイトといっても、うちでは月に、三十万は出します。そのかわり、夜遅くまでの時も、ありますが、いいですか。」
「かまいません。何時まででも。」
「うん。夜遅くまでの時は、次の日は昼からで、いいからね。」
空手道場は、その時は朝、行けばいい。道場は朝早くから、あいている。という事で、浩二は、その店でアルバイトとして働き、かなり貯金も、してきたのだ。 
 その精力剤の薬局、「黒光り」で、平日の夜十一時頃に来た客は、ひょろりと痩せた老人だった。店内に一人立っていた浩二に、
「何か新しいものは、ないかね?精力剤だがね。」
と、穏やかに聞いた。
「これは、どうでしょう。」
浩二が、新入荷した精力剤の箱を出すと、その老人は、
「いいな。これを貰おうか。今までのものは、最近、効かなくってね。」
浩二は、(いい加減、歳だし、普通は、もう盆栽でも、いじって楽しむ歳だろう)と思いながらも、
「ありがとうございます。」
と礼を言って、白いビニールの袋に、それを入れて老人に手渡した。
「これは、いくらかな?」
「丁度、五万円です。」
驚くか、と思って浩二は、その客を見たが、老人は、些かも動じた所はなく、
「ほう、安いもんだな。はい、五万円。」
と、ポケットから蛇皮の財布を取り出して、ぎっしりと詰まっている一万円札を、五枚抜いて浩二に渡した。
「君は、ここでアルバイトかね。」
「ええ。就職が見つからなかったものですから、でも、ここのバイト料は、なかなか、いいですから。」
「そうだろうな。ここは今日、何時に終わる?」
「十二時までです。」
店の時計は、深夜十二時、五分前だった。老人は、それを見て
「あと五分だ。どうだ、これから、わしが、おごりでね、中洲のバーでも行こう。」
「はあ、・・・しかし・・・。」
「なに、つきあってもらうのだから、いくらか君に、小遣いをあげよう。」
金を貰えると知って、浩二の顔つきは、全く一変した。
「もう、あと二分ですけど、五分前には、帰る準備をしていいんです。あ、白根さん。」
店の奥から白衣を着た、三十代の薬剤師らしい男が出てきて、
「これは、舌川さん、いつも、大変お世話になっております。菊川君、帰っていいよ。」
「はい。お疲れ様です。このお客さんに、今から、おつきあいしますので、着替えたら店にもう一度、来ます。」
「ああ、そうかい。大事な、うちのお客様だから、粗相の、ないようにな。」
店の奥に消えて、少しして浩二は普段着に着替えて出てきた。舌川という老人は、
「それでは行くか。菊川君。」
「はい。喜んで、お供します。」
舌川を先頭に、黒光りを出た二人は、人通りの少ない道を歩き始める。九州最大の歓楽街、中洲は、そこから東へ百メートルほどだ。中洲に着くと、まだ人は大勢歩いていた。スナックなど飲み屋が、ほとんどの雑居ビルが立ち並ぶ、その中の一つのビルの最上階、といっても五階だが、そこに舌川は浩二を連れて行く。エレベーターで到着すると、
「いらっしゃいませ。舌川様。今日は、まあ、若いお客様ですか。」
「ああ、いつもの店の奥は、あいとるかね。(あいているかね)」
「はい。今日当たり、舌川様が、お見えになるのでは、と思い、空けておきました。さあ、どうぞ。」
ちょび髭を生やした、長身の黒服の男が店内に案内する。その店の中は、薄暗い光に照明は、されている。一番奥の、四人掛けのテーブルに舌川と浩二は座った。舌川老人は、
「ジンを持って来てくれ、君は?」
と浩二を見る。
「コーラで、いいですけど。」
「遠慮するなよ。ビールでも飲みなさい。おつまみは、適当にね。」
うやうやしく、バーテンの男は頭を下げた。その男がカウンターへ戻ると、舌川は話し始めた。その席は、周りには声が聞こえない作りになっている。
「君は服の上から見ても、いい体をしているな。何か武道でも、やっているようだが。」
「御目が高いですね。空手を少々やっています。」
「そうだろう、と思ったよ。わしの妻がね、空手をやっとるんだ。目付きが似ているし。その妻との夜の交渉が、最近、うまくいかんのだ。」
舌川は苦笑いした。浩二も苦笑いを浮かべそうになったが、こらえた。この老人の奥さんって・・・。
「三十なんだ、今年ね、うちのやつは。」
えっ、それで、と浩二は思う。
「わたしはね、今七十歳です。五年前に今の妻と結婚しましたけど、ここ何ヶ月か、夜の方は、大変、ご無沙汰となっている。君は、ガチムチ系だなあ。」
舌川は、感嘆の眼差しで浩二を見ている。
「ガチムチって、なんでしょうか。」
「いや、筋肉質という事ですよ。それで、精力剤を黒光りで、ここ最近、買っては試して妻と、その・・・ですけど、どれも、すぐ効かなくなってしまう、のですな。そこで、実はね、私はゲイの方も、いけるたちで・・昔、白人男性に、尻にペニスを入れられた時に、自分も勃起していた事が、あったのですよ。」
浩二は呆れた顔をした。舌川は、浩二の顔を舐めるように見ると、
「いや、呆れるのも、もっともです。でもね、今のわたしには、妻を満足させたい、という思いが、ありますから。どんな事でも、やってみたいという気持ちですよ。妻はフラストレーションを空手で発散していますが、乳首は立っているし、私は立たないし、で情けない思いをしていますな。」
「それで、ぼくに、そのう、何が、できるのですか?」
「まあ、一杯。やりたまえ。」
注文した酒類が、盆に載せられてきたので、舌川は浩二にビールを勧めた。大きな皿に、ピーナッツや枝豆、アーモンドが山盛りになっている。
「それでは、いただきます。」
浩二はジョッキに注がれたビールを、ごくごく、と飲み干す。舌川は手を打って、
「いい飲みっぷりだね、君。おつまみも、やってくださいよ。全部、今日は、私のおごりだから遠慮せずに、ね。」
「それでは、こちらも、いただきます。」
枝豆を、浩二が口に入れると、
「この後ね。私と一緒に春吉(はるよし)のラブホテルに、行ってもらいたい。」
「ええっ!」

体験版・SF小説・未来の出来事49

ソフトランディング、玉金玉男はプレミアム・ファーストクラスの客も服を身に着けただろうと想像していたら旅客機は停止した。国内線のゲートを出ると玉金玉男は息子の硬一郎の顔と、他には見知らぬ若い男女の顔が見えた。
玉金玉男は彼らに近づくと、
「やあ、歓迎してくれて有難う。硬一郎、あの人たちは新進民主党の福岡支部の人達だね?」
「ああ、そうだよ。支部長の砂下桃代さんと、新党員の成頭友見君。」
砂下桃代と成頭友見は玉金玉男に頭を下げた。玉金玉男は、
「よろしくね。玉金玉男です。ビデオの仕事をしています。成人向けですけどね。」
と話すと白い歯を見せた。玉金硬一郎は、
「父さん、フレッシュアイランドまでは市営地下鉄しかないんだ。」
「ああ、それなら地下鉄で行こう。」
四人は地下へ降りて地下鉄に乗った。車中で四人とも座席に座れたが玉金玉男は、
「福岡の地下鉄って清潔感があるね。なかなかな乗り心地だ。」
と感想を言う。ほどなくフレッシュアイランドの地下鉄の駅に到着した。四人は降りるとエスカレーターで地上に出て改札口を通ると八月の太陽が四人を眩しく迎えた。そこから歩いて遠くないのが新進民主党の福岡支部だ。そこへ四人は入る。玉金玉男は既に新進民主党の党員だ。四人が車座に座れるソファでアイスマンゴーティーを飲んだ玉金玉男は、
「AV出演特例法を国会に出してくれるよな、硬一郎。」
と話しかけた。玉金硬一郎は、
「うん、それでAVの撮影、公開が早くなるというものですね。法律の専門家に相談している所ですよ。デジタル署名だけで本人が希望すれば撮影の即配信も可能になるという。」
玉金玉男は苦笑いして、
「四か月も撮影の公開を遅らせられたんじゃ、手に入る出演料も先延ばしだからな。生活困窮者の支援ためにもAV出演特例法は必要だ。」
「民民党の平空党首も賛成しています。市民党も賛成多数らしいので、いけるみたいですよ。」
「そうか、市民党も賛成か。そいつは、いい。AV業界活性化のためにも、いい法案だから。」
と話すと又、玉金玉男はマンゴーアイスティーを、うまそうに飲む。格差社会は益々広がり生活困窮者も増えている日本だ。OLの風俗副業も増えている。玉金硬一郎は、
「困窮している人を救うのが優先です。AVで救われる人達がいるんですからね。」
と党首らしく宣言した。玉金玉男は、
「いや全く、その通りだ。それでだ、成頭友見君というのは君か?」
と成頭友見の方を向いて話しかけた。成頭は、
「ええ、そうです。」
と答える。玉金玉男は成頭友見をジックリと見ると、
「うん、合格だ。」
成頭は訳が分からずに、
「何の事でしょうか?」
「いや、私ともなればね、どの位の女性経験があるのかは一目見て分かるんだよ。それは、それとして硬一郎、私のプロダクションの福岡支社を借りるまで成頭君に研修とか、したいんだが、ここを使ってもいいか?」
「ええ、構いません。会議室など今のところ、使っていませんから、そこを使ってください。」
「おお、いいな。そこにしよう。案内してくれ、硬一郎。」
という事で玉金党首は会議室に父親の玉男と成頭を連れていった。
コの字型のテーブルの並びに座椅子が並んでいる。玉金党首は、「それでは。」と話すとドアを閉めた。
玉金玉男は中央に座ると、近くの席に成頭を座らせて、
「いや、ご苦労さんだ。私はAVプロダクションの社長をしている玉金玉男と言います。」
「新進民主党に入党したばかりの成頭と申します。」
「仕事は、なにをやってるの君。」
「市場調査の仕事とかです。」
「それでは金になるのかな。」
「まあ、満足しています。」
「副収入が欲しくはないかな。」
「それは欲しいですよ。」
「それではウチの仕事がある。それはAV男優の仕事なんて安いものだ。目線を隠せば、いいとはいえ・・・。もちろんAV女優より遥かに目立たないとはいえ画面の中には他にはAV男優しかいないからAV男優の体を見ずに済ませる事はできない。それなのに安い報酬で働いているのはAV女優の体を楽しんでいるからだよ。ぼくも、そうだったんだがね。AV制作会社は他にも仕事は、ある。だから君は男優以外の仕事をしてもらう。いいかな。」
「ええ、できる範囲で、やらせてもらいます。」
「よし、決まったよ。これ以上は、ここを使う訳には、いかない。外に出よう。」
会議室を出て玉金硬一郎や白俵金二郎、砂下桃代らの視線を浴びると玉金玉男は、
「成頭君を連れて外に出てくるよ。それでは。」
と右手を敬礼するように挙げると新進民主党の福岡支部を出て行った。玉金玉男は成頭友見と並んで歩きながら、
「福岡市の繁華街は天神と中洲なんだな?実は福岡には初めて来たんだけど。」
「ええ、買い物には天神、遊びは中洲ですよ。中州には酒を飲む店、風俗の店、ソープランドがありますからね。」
「そうなのか。中州、とか、すすき野とか聞いただけでね。歓楽街って処だね。」
夏も盆過ぎとなると少し涼しい風が二人を包む。成頭は、
「ええ。どんな不況でも中洲は消えません。それだけ風俗は強いって事ですね。」
タタタタタタタタ、上空に音がした。自衛隊のヘリタクシーだ。何しろフレッシュアイランドには陸、海、空の自衛隊の基地があるのでヘリコプターだけでなく護衛機も離着陸を繰り返している。F-2A/B支援戦闘機という古くからあるものも使われている。名称変更せずに改良は続けられたものである。玉金玉男は上空を見上げると、
「ここには自衛隊の基地まであるのか。」
「陸、海、空と基地があります。」
「珍しいね。何かの時には安心だ。まっすぐ歩くと何処へ出るの?」
「北天神の北ですね。北天神という地名はないですけど。そこから少し南へ行くと天神の北の方ですよ。」
二人は倉庫街のような所に来た。船からの荷物を一事的に保管するのに適した場所だ。博多港は少し東にあるが第二博多港が出来たので急速に発展している地域らしい。
少し南へ行くと巨大な商業ビルが立ち並んでいて、人の行き来も煩雑になった。若い女性も多く歩いている。玉金玉男は若い女性に視線を向けると、
「スカウトできそうな女性も見られるぞ。成頭君、スカウトしてきてくれ。」
「えっ、AV女優候補をですか?僕は、そんな事、した事ありませんから・・・。」
と弱気で固辞する成頭に玉金玉男はズボンのポケットから細長い機器を取り出すと成頭に手渡して、
「これはAV女優探知機だ。今はまだAV女優でなくても、そうなる可能性の女性を探り出す。探り当てると振動するので、すぐに分かるよ。さあ、行きなさい。これは仕事で報酬も出すからね。」
と玉金社長に励まされて成頭は一歩先へ出た。日傘を差して和服を着て歩く若い女性と成頭が擦れ違った時、手にした機器が振動した。その女性こそAV女優になる可能性のある事を機器が教えてくれた。日傘で顔は見えなかったが、首から下の動きは若い女性のものだったので、成頭は態勢を変えると日傘をさした女を追い始めた。着物を着た女性など滅多にいないのは昔からなだけに追うのは簡単だった。デパートの中に入った彼女は日傘を外した。日本髪に結っていない長髪の肩より下まである黒髪、横顔は清楚な美人。エスカレーターで上に行くので成頭は、そのすぐ後ろのエスカレーターに乗った。彼女が降りたのは食堂街。すべてのフロアは和食、洋食、中華、インド、メキシコ、イタリア、フランス料理店などだ。ゆっくりと歩いて飲食店を見ていった彼女は、あんみつなどを出す日本和菓子の店に入った。
服装だけでなく食べ物の好みも和風らしい。成頭も何気なく、その店に入る。和服美女は四人が座れるテーブルに一人で座った。成頭は彼女の席の斜め前に立ち、
「ご一緒しても、よろしいですか?よろしければ代金は僕が払います。」
と申し出たのだ。若妻風の顔の美女は、
「ええ、構いませんわ。わたしの食事代など気にしないでください。」
と爽やかに答えた。成頭は彼女の前の座椅子に座ると、
「初めまして。わたくし、市場調査の仕事をしております。この度は女性が使用する下着についてのアンケートです。簡単な質問ですが、お答えいただけた場合、少なからぬ謝礼を差し上げます。」
「というと、どの位の謝礼ですか?」
と答えつつ彼女はタブレットで黄金あんみつを注文していた。成頭は、
「大学新卒者の初任給ほどです。」
「いいわね。時間が、かかっても大丈夫そうよ。」
「有難うございます。時間は、そんなに、かかりません。この店の中ではアンケートをしにくいので、食事に専念されてください。私は抹茶など注文します。」
それから二人の注文したものがテーブルに運ばれてきた。
細長く盛り上がった黄金あんみつを美妻は半分ほど食べて、
「ここで出来るだけ、アンケートしてみてよ。」
と挑発するように話す。成頭は、
「それでは。下着を付けない方が、いいと思う時は、いつでしょうか?」
若美妻は微笑むと、
「暑い夏の日ね。外出すると日傘をさしても暑いし。という事で今日は下着を、つけていないのよ。着物だと分からないものよ。」
と大胆な発言をした。成頭の視線は若美妻の胸の辺りを彷徨った。彼女の股間はテーブルの下だ。成頭は右手を軽く上げると、
「ちょっと失礼します。」
と席を立つとトイレに向かう。誰も居ないトイレでスマートフォンを取り出すと電話を掛けた。
「あ、成頭です。アンケート調査に応じてくれました。アンケートをする場所を用意して貰えますか。」
―あ、いいよ。うまくいったね。場所を決めたら連絡するよ。
と玉金玉男は落ち着いて回答してくれた。
席に成頭が戻ると美若妻は黄金あんみつを全部、綺麗に平らげて消滅させていた。成頭は座ると、
「ここでのアンケートは限られたものになりますので、別の場所に移動しましょう。」
「そうね。もっと落ち着ける場所が、いいわ。」
二人は店を出てデパートを出た。
少し歩くと車道にマイクロバスが現れて、二人の横に停車した。最前部の席のドアが開いて、顔を出したのは玉金玉男、
「おーい、成頭君と御婦人さん。乗りなさいよ、この車に。」
と呼び掛けた。
黄色のマイクロバスの後部のドアが開いた。美若妻は成頭に、
「乗ってもいいのかしら?」
と日傘をさしたまま聞く。成頭は頷くと、
「ああ、あの人は社長さんですよ。乗りましょう。」
と促すと美若妻は日傘を畳んで車内に進んだ。成頭も乗り込むとマイクロバスのドアは閉じられた。玉金玉男は二人の方を向いて立ち、手招きして、
「近くに来て座ってね。若奥さん、初めまして。」
と声を掛ける。
美若妻と成頭は玉金玉男の近くの席に来て座る。美若妻は斜め前の玉金に、
「初めまして。よろしく、お願いします。」
と和服姿で応えた。玉金玉男は、
「こちらこそ、よろしく。」
と話すと前を向いて座る。玉金は運転手に、
「では例の場所に向かうんだ。」
若い男の運転手は、
「了解です。スタートします。」
と答えると運転ナビを操作して、マイクロバスは自動運転に切り替わって発車した。北九州市に向かって走り出したのだ。箱崎、香椎を通り過ぎ、和白を抜けて福岡市外に出ると段々と田舎の風景へと変貌するが高層マンションが並び立っているのは大昔と違い、福岡市に接する糟屋郡に郊外型建築物が現れている。それでも北九州市への国道を走っていくと開発の遅れたノンビリとした田舎の展望が目に見えてきた。若美妻は、
「随分と田舎に来ましたね。わたしは福岡市を出る事は、ほとんど無いですから。」
と感想を発言した。玉金玉男は、
「これからが楽しみですよ。」
若美妻は、
「北九州市に行くからですか?」
玉金玉男、
「いえいえ、そうではなくて・・・なあ、運転手君。」
運転手はハンドルを握らず、
「そうですね。楽しみです。」
マイクロバスの走行は突如、北へと向かった。国道よりも田舎の道を北へ進むと松林、それは古い大昔の元寇防塁の跡でもある横に長い松の景勝地が見えてきた。人影どころか幽霊さえ見当たらない砂浜へマイクロバスは突入した。美若妻は、
「海水浴地でも、ないみたいですけど。」
と自分の思いを口に出す。玉金玉男は、
「だから誰も居ないので、いいんですよ。運転手君、車を停めて。」
「はい、合点でサー。」
波打ち際近くで停車したマイクロバス。玉金は、
「奥さん、下着のアンケートです。よろしいですか?」
と助手席のような位置から顔を美若妻に向けて聞く。美若妻は、
「はい、いいですよ。わたし着物を着る時は下着をつけてない事が多いし、今も下着なしですわ。」
玉金玉男は両眼に炎を燃え上がらせ、
「それは、いい習慣です。暑い日には、特にその方がいいですよねー。」
と話しかけると美若妻は黙って、うなずく。「奥さん、撮影したいな。外に出ませんか?」と玉金が誘うと、
「ええ、」
と日傘を持った美若妻、運転手を残して三人はマイクロバスを降りた。
暑い日差しの中、日傘をさす美若妻に玉金玉男は、
「奥さん、ここで着物を脱いで全裸になったら、新卒大手銀行員のボーナス位だしますよ。」
美若妻は少し驚いて、
「えっ、撮影って・・・。もしかして貴方はAVの・・・。」
玉金玉男は優雅に身を屈めると、
「そうなんです。わたしAVプロダクションの社長をしています。貴女に声を掛けたのは私の会社の新人社員でスカウトマンを、させたんです。」
美若妻は不思議に微笑み、
「いいでしょう。前払いで貰いたいな。」
玉金玉男は砂浜を踏みしめて美若妻に近づくと、
「いいですよ。スマホ払いで送金します。」
美若妻は日傘をさしたままスマートフォンを取り出すと自分の銀行口座情報を玉金玉男に見せた。玉金は喜びの顔で、
「それじゃ、そこに振り込みますよ。」
と話すと自分のスマートフォンを取り出してネットバンキングで美若妻の口座に振り込んだ。
美若妻は即座に振り込まれた大金に大喜びで、
日傘をさしたまま着物を脱いでいく。はらり、はらりと和服が落ちると白い裸身は胸の果実と股間の黒闇を隠さずに露見した。腰のクビレと尻の大きさを前から見ても感じさせる。
玉金はスマートフォンのカメラで美若妻を動画撮影している。立って動かない全裸身の美若妻の周囲を動いて撮影する玉金玉男の視界に彼女の白い裸身の後ろ姿、尻の割れ目がクッキリと見えた。後ろから抱きしめて挿入したい思いにかられた玉金玉男だったが、やがて元の位置に戻ると正面から美若妻の裸身を撮影して彼女の乳房と股間をそれぞれズームアップして撮影すると、
「はい、大成功です。一度、着物を着てください。」
と声を投げた。
近くで成頭友見は美若妻の裸身を正面から見続けて股間の男棒は半立ちとなっている。美若妻は和服を着ながら成頭の膨らんだ股間をチラチラと見ていた。玉金玉男は、
「よし、マイクロバスに戻りましょう。半立ちの成頭君も。」
成頭としては股間の肉身を統禦できないままバスの座席に戻った。玉金玉男は二人が自分の後ろの席に戻ったのを見て
「それでは運転手君、出発だ。」
運転手はアクセルを踏んだ。マイクロバスは前進して海水に入って行く。すぐに海の中を走り出したマイクロバスに成頭と美若妻は驚きの声を上げる。成頭は、
「玉金さん、水中も走れるバスなんですね。」
玉金は得意げに、
「ああ、自社のバスなんだ。メーカーに特注した。海中セックスの撮影が出来るからね。」
と答える。
博多湾の海底を潜行するマイクロバスの窓の外に河豚のような小魚が泳いでいる。沖合一キロの海底でマイクロバスは停車した。玉金玉男は立ち上がって後ろを向くと、
「奥さん、ここで成頭と絡んでくれたら、さっきの十倍は払います。貴女の横の男が成頭です。」
美若妻は、
「それなら絡ませて下さい。わたし、彩代(あやよ)と言います。名前も知らない女性と交わるのも何ですわよね。ソープとかなら、それでもいいかもしれないけど。」
と話すと右隣の成頭を見てニッコリとした。女の色香が成頭に振りかけられた。それだけで成頭友見は少し勃起したほどだ。玉金玉男は満足げに、
「とりあえず脱いでくださいな、彩代さん。」
と呼び掛ける。
彩代は素直に和服を脱いでいった。ほどなく立ち姿の彩代の全裸が現れる。玉金玉男は彩代に近づいて本格的なカメラを始動させた。スマートフォンのカメラでは限界があるのだ。裸身の彩代の背景には海中が映った構図となっている。玉金は、
「よし、成頭君も脱いで。」
と気楽に指示、成頭が全裸になる時間は速かった。成頭の肉筒は全勃起に近い。彩代が片手で肉筒を握ると全勃起となった。玉金玉男は、
「後ろに移動しよう。」
三人でマイクロバスの後部に移動すると真っ赤なシーツのダブルベッドが据え付けてあった。玉金玉男は、
「それではダブルベッドに二人で入って、好きなようにしていい。カメラは私が撮る。」
と開始の支持をした。成頭と彩代は全裸で向き合うと抱き合い、口づけた。そのまま成頭は彩代を横抱きに抱いてダブルベッドに優しく寝かせる。
正常位→騎乗位⇒後背位と十分ごとに体位変換した。それも成頭の誘導ではなく、彩代が裸身を動かしての体位変更だった。熟れた乳房を震わせながら彩代はセックスに貪欲だった。物静かな和服姿とは違い、二十代前半の女性の動きに後背位で遂に成頭は耐えられなくなり装着したコントドームの中に欲望液を射出してしまった。彩代は頂点に昇り詰める途中だったので、
「ああっ・・・もう少し我慢してくれたらいいのに・・・。」
と不満を漏らした。
二人は接合を外してダブルベッドに仰向けに横たわる。
玉金玉男はニヤリと笑うと撮影を停めて、
「いい動きだったね。奥さん、三十路と思うけどセックスとなると二十代前半だ。旦那が年下とか?ですか?」
両脚を広げて横たわっている彩代の股間は未開地の緑地のような恥毛の密集で彼女は陰唇を震わせて、
「いやん、主人は八十歳で、もう八年はセックスしていません。」
と恥じらった。玉金玉男はニヤニヤして、
「八十歳でなくとも旦那とセックスレスな女性は、いますよ。御主人は財産家なのでしょうね?」
「ええ、世界中に別荘を持っています。今は暑いからカナダの別荘に行っていますわ。」
「奥さんを同伴せずに、ですか。」
「ええ。会社は専務に任せていますけど、何か非常事態が起こった場合は私が対処します。専務が私に電話かメールしますので。」
「ほう。それでは代理社長みたいですね。」
「そうなんですの。主人はカナダにも若い女を連れていっています。」
玉金玉男は好奇心のある目を全裸の彩代に向けて、
「奥さん以外の若い女には勃起するのですかね。」
「現場を見ていないから分かりませんけど、もしかしたら勃起しているのかもですわね。でも立たなくても女と遊べますわよね?」
「ええ、それは、そうです。はい。」
「十八歳の高校中退のモデルの女の子をカナダのモントリオールの別荘に連れていっているのですわ。福岡市天神にあるモデルの派遣会社は主人が経営しています。それも今、私が面倒を見てあげているのですけど。」
「ふうん、モデルクラブですね。若くて綺麗な子が一杯いるはずですねえ。」
「十八歳の女子高生を二十人位連れて貸し切りにした温泉の大浴場で一緒に入るんです。プールみたいな温泉で主人を取り囲んだ裸の若い女子高生の股間の陰唇を温泉に潜ってキスして回ったりします。私は、それを物陰から撮影させられましたものですわ。二十人位の温泉水の中に立っている女の子の股間にキスするには一人一人、もぐっては顔を上げないと息が持ちません。社長からオマンコにキスされると、いい仕事を貰えるからって、みんな楽しそうに全裸で温泉大浴場の大浴槽内で臍から上は温泉から出して形のいい乳房を揺らせて待っています。」