魔法で性交したら2 お試し

彼女は
  芹が谷公園を出た佐山牙は、ばったりと若い女性に出くわしたが、そのまま行過ぎようとすると、
「佐山君。久し振りね。」
と、その女性は、弾むような声で話しかけてきた。佐山は、その女性を見ると、
「丘さん。また、こんなところで、お会いするとは。」
丘サレナは嬉しそうに、
「わたしの初体験の場所だから。又、いい?佐山君。」
「えっ、公園に入るんですか。まだ明るいですよ。」
「立ち木の陰じゃ、誰も来ないでしょ。そこで、思いっきり。」
「そ、そうですね。」
佐山は、ためらったが、うなずくと、丘サレナに右手を取られて芹が谷公園に入って行った。
 しばらく歩くと、さっきのサングラス二人組みが、もう血のほとんどを出して死んでいたのだが、陽が落ちてきたので丘サレナは気が付かず、そのすぐ近くの立ち木の陰に牙を引っ張った。
 なるほど、通行人には見えない位置だ。
そこで丘は素早くパンティを降ろすと、佐山のズボンのチャックを降ろした。そしてパンツの上から佐山のものを撫で回すと、それはすぐに大きくなって、芋虫のような感覚がした。
それからそれは、パンツの切れ目から突き出てきた。サレナは両脚を開くと、牙のものを自分のジャングルの下に誘い込んだ。牙のものは二回目なので、すんなりと入ったのだ。牙はサレナの柔らかい肉ひだを感じると勢いよく、こすりつけていった。その時、夜空に満月が見えた。佐山牙は、
「丘さん、狼男に変身しますけど、いいですか。」
「いいわ。変身しても、そのまま膣の中で動き回ってね。あっ、いいい。」
サレナは、頭を後ろに、のけぞらせた。牙は満月の明りを浴びて、たちまち狼男になっていった。 サレナはエキゾチックな美女である。佐山との初めての性交の後、その美貌に磨きがかかっていた。
 今、公園の立ち木の陰で、本当に美女と野獣がセックスしている。周りには日も暮れたためか、誰もそこには、いなかった。サレナは、快感の声を噛み殺すのに懸命だ。なにせ牙が狼男に変身した時、牙のペニスにも毛が生えてきたからだ。
 同時に
  狼の剛毛がサレナには感じられた。(わたし、狼とやってるみたい・・・)そう思いながら、サレナは何度も昇りつめた。そのまま十分ほど牙は狼のまま腰を振り続けたが、快感の声をあげるのをこらえる為に、サレナが力を入れた時、同時に彼女は自分の膣を締め付けていた。牙は、それですぐに、
「あっ。丘さん、出ます。」
と言うと、サレナの中に勢いよく精液を、ほとばしらせたのである。その時、近くで倒れていたサングラスの男たちの血の流れもピタリと止まったのである。
 満月に雲が懸かったので、牙は元の、少年から青年に向かう時期の姿に戻り、サレナから離れた。二人は、ゆっくりと下着を元に戻した。暗いけれども真の闇ではないので二人は公園の外へ歩いて行った。サレナは今から、もう一度、牙とセックスしたかったが、彼には一日に二回は無理かな、と思って黙って歩いていると、
「そうだ、丘さん。これからレストランへ行きましょう。フランス料理でもイタリア料理でも大丈夫ですよ。なにせ、今日は臨時収入が入りましたから。」
佐山牙はホクホク顔になった。サレナも嬉しそうに、
「それじゃ、ご馳走になろうかな。町田駅近くには、いい店が、たくさんあるわよ。フルコースでもいいの?」
「ええ、構いません。お好きなところへ。ただ、五万円までに、して欲しいんですけど。」
「五万円も食べないわよ。一万円でも、いいかなっ、てとこ。」
「じゃあ、連れて行ってください。」
「うん、案内するわ。」
二人は仲よさそうに、原町田の商店街へ歩き始めた。芹が谷公園では、さっきの場所でサングラスの男、二人の流した大量の血をカラスが数羽、集まって来て、ぴちゃぴちゃと舐めていた。
 夫は
  田宮可奈は六百坪の邸宅に八王子から帰ってくると、夫は外出からまだ戻っていなかった。
小田急デパートで見かけた、あの女と、まだ一緒なのかもしれない。自分は夫の学校の生徒と関係を持ってしまったのだが、遠い昔に思いを馳せると、こんな自分になるとは思っていなかったなあ。
 普通に一人の男性を愛して生きていくと思っていたのに。わたしには母がいなかった。それでだろうか。
姉は、いたらしいけど。富豪の娘だから、幸せになれると単純に思っていた。芸術家の、あの人をつかまえられたのは、よかったけど、どうも他の女に入れ込んでいる、と気づいても娘のためには、と思っていたのに又、他の女に走ったりすると我慢できない。
 ユナはあの時の・・・だし、又、この前の八王子のラブホテルでも中に出してもらったから又、妊娠したら夫は、なんという顔をするだろう。「この子の顔を見な。」と真一郎に言ってみる。
そう、子供の名は、ミナがいい。でも男の子なら、ミロ・・・って漢字を当てたら・・・実路かな。でも、簡単に妊娠はしないだろう、わたしも歳を取ったし。死んだ姉は子供も、いなかったろう。
「それがいるのよ。」
と、居間のソファに座っていた可奈の耳に声がした。周りを見たが、誰も、もちろんいなかった。(空耳なのね)そう思い直そうとすると、
「佐山牙っていうの。もう青年になるわ。姉のマキよ。天国からの通信、この放送は冠婚葬祭の・・・って、スポンサーは、いないけど、あなたが、わたしの事を考えているのをキャッチしたから、ね。それじゃ、」
記憶にある姉の声だった。
 
親子丼
  岡志大は美術大学を出て、散歩するのを常としている。
町田駅周辺の商店街も彼なりに、美術の参考となった。道行く人々は、そんなに派手な格好をしているわけではない。博多ラーメンの店がオープンしていた。
 福岡市からの出店だ。大学は午前中までだったので、そろそろ空腹を覚えていた。学生向けの食堂など、ないのも町田駅周辺の特徴である。カウンターに座って外の通行人が見える食堂に彼は入った。
券売機で親子丼の券を買い、席に座って外を眺める。すると、この前、関係を持った、出会い系サイトで知り合った、あのルナさんに似た女性が歩いているではないか。
「はい、親子どん、お待たせしました。」
と若いアルバイト女性が、器を彼の前に置いた。
 親子どんぶり、うーん、あれはルナさんの娘さんではないか?あの子とも関係を持てれば、これは親子どんぶりだ。
これは単なる偶然か?はたまた、天の啓示なのだろうか。
 最近知った秘密結社、薔薇の星ではホルス神を礼拝する事を勧めていた。彼は真似事は、してみたが、まだ入会していない。
 スタイルもよく、細身の割には尻が大きいその女性は、その尻を少し、ぷるぷる揺らせながら歩道を歩いて行った。岡は、その歩き方もルナさんに、よく似ていると思ったのだ。
親子どんぶり食べたいな、目の前にある親子丼に自分の眼を戻すと、岡は歩き去った女性の裸の尻を想像しながら、箸で鶏肉を、つまみあげた。
 足の不自由な美しい娘
 手にしたヌードグラビアを机の上に置くと、外へ出て(おれは何か想い出に残るような、そんな一枚の素晴らしい絵を、描かなければなあ・・・)
と、田宮真一郎は、半分まだ勃起したまま、つくづくと思った。
折りしも時刻は夕暮れ時で、空は真っ赤な夕焼け空、女のいない季節は秋へ変わろうとしていたのだ。
(おれの青春も、あの夕焼けと同じように終わろうとしているのか・・・ううん。ちんこだけが、虚しく勃起する)
そう思うと、彼は、下唇をぐっと噛み締めた。彼は未だに絵の世界で成功していないのだが、就職もせずに、もう二十九歳にもなるのだ。
信州の田舎から出てきて、すでに十一年の年月が虚しく流れていた。
その間、細々とアルバイトなどで身を立ててきたが、それは絵の世界とは何の関係もないものばかりで、今は土木関係のアルバイトをやっているのである。
だから収入は割りといいはずなのだが、そう多く働きに出て来ないので、そこそこの収入になってしまうというわけだった。
肝心の絵の方は応募しても、ただ落選だけが待っていた。そんな彼は、昔、信州の赤いりんごを見て絵描きになりたいと思ったのだ。自分のきんたまも、りんごみたいに、なればいいとも思った。
「おれ、画家になるよ。おやじ、おふくろ、いいだろ。何と言ってもおれは行く。」
と、高校を卒業した時、両親にそう宣言すると、すぐに上京して行った。
 だが、有名な美術大学には入れなかったので、誰でも入れるデザインの専門学校へ入学してしまった。
そこを出ても就職口はなく、結局ぶらぶらするはめになった。世間的にも、就職難の時代だったのだ。そして、彼は今に到っているわけ。今では、りんごより女の胸が、いいわけなのだが。
 同じ日、別の場所で、白山吾郎は、赤々とした夕陽をじっと見つめていた。
とても広壮な屋敷の中にいる彼は、夕陽と自分の興した事業を同一視していたのだ。
彼は一代で、とてつもない財産を築いたのだが、現在五十九歳で妻にはすでに先立たれ、一人娘と一人の執事、二人の召使い、と古めかしくいえば、そういう人々と静かな私生活を送っている。
 朝は、執事がボタンを押すと門が開き、国産だが超高級車に乗った彼は自分の会社へと向かうのである。
そして、夕方の4時には屋敷に戻ってくるという毎日を送っている。
 彼はもう自分の事業を拡げていく事に、興味を失っていた。何故かというと、彼には、後継者がいなかったからである。
親族にも後継者として、彼の眼にかなう人間は一人もいない。
 白山吾郎の一人娘の名前は加奈という。二十四歳の彼女は今、仕事もせずに、ぶらぶらしている。彼女は、とある写真の専門学校を出て、就職は、せずに方々を歩き回って撮影に忙しいという日々だ。
 大富豪の娘だからできる生活だが、その写真は、あまり良いものではなく、写真関係の会社は面接に行っても、皆落ちてしまったのも仕方のない事で、それは働く気がないのと理由は他にもある。
 彼女は、とても美しい顔をしていて、それでいて、可愛いいのだが、残念な事に足が、びっこで不自由なのである。
右足を少し引きずるように、してでないと歩けない。これは、生まれつきのものだった。だけど彼女は不自由は感じなかった。何故なら、学校まで歩いたことが、ないのだから。
 召使の若い女性が高級外車で学校へ送り迎えした。
校内では、彼女の顔立ちの際立ったものと、ひねくれていない性格から誰も彼女を悪く扱う者はいなかった。とはいえ、しかし、やはり加奈に彼氏はできなかった。
 今も、まだ彼はいない。父の白山吾郎は、これまでも五回も加奈にお見合いをさせたのだが、すべて二人だけの時間にさせた後で、先方に断られてしまった。
同じ日の別の場所で、夕焼けの見える丘の上に立っている若い女の子がいる。
白山可奈だ。彼女は今日も被写体を探して街を歩いていた。自分の青春をカメラに託す事で、すべての、いやな気持ちを吹き飛ばそうと彼女は思っているのである。
(なんて綺麗な夕焼けなのかしら!あたしの青春って、きっとこれからね。)
彼女は、そう思うと不自由な足を引きずりながら丘を降りた。
しばらく歩くと、可奈は、にぎやかな街中にいた。愛用のカメラは左手に持っている。人通りの少ない道に入った時、向こうから一人の見知らぬ青年が歩いて来た。
彼の髪は、ぼさぼさで、ひげも少し生やしているようだ。だが、可奈は何か光るものをその青年にすぐに感じた。彼女は近づいてくる、その青年を、すかさず撮った。カシャーとカメラは声を出した。
「あ!なにを・・」
その男は小さく声を挙げたが、黙って通り過ぎようとする。それを、加奈は、
「すみません!ちょっと待ってください!ちょっとでいいんです。」
と彼女は、青年を呼び止めると近くに歩み寄った。不自由な右足をひきずりながら。
「ごめんなさい。いきなり写してしまって。失礼ね、わたしって。」
「ああ、ああ、いいですよ。私のような顔でよかったら、いくらでも撮ってもらって。」
その男は、つまらなさそうに可奈を見ると、すぐ立ち去ろうとした。加奈は、
「あの、待って下さい。出来上がったら、あなたに差し上げますわ、このお写真。ですから、ご住所とお名前を、教えていただけませんか?」
すると、その男は、少し笑みを浮かべた。
「へえ、そうですか。それじゃ・・・書きますよ。」
男は、可奈の差し出した高級感の溢れるメモ帳に、ペンでサラサラと書いた。そして、おもむろに言った。
「これでいいですか?これで満足?」
「ええ、ええ、とっても、ありがとうございます。」
加奈は心から、満足げな表情を美しい顔に浮かべた。
「それでは・・・ごきげんよう。」
と挨拶して青年が歩き去っていく姿を可奈は見送っていたが、人にまぎれて見えなくなると彼が書いてくれたメモ帳を見た。(田宮真一郎。練馬区・・・なのね。練馬区なら、昔、お父様と遊びに来たわ。豊島園だったかなー、遊園地。)
一方、田宮真一郎は、加奈と別れて練馬の街を歩きながら思っていた。
(さっきの女、綺麗な顔だったが、あの足じゃな。可哀想に一生独身だろうな。それにしても、おれのアパートに来るのかな・・・そうしたら、やってやるか。
意外と、膣の締め付けはグッドなものがあるかもしれないな。寝転んでしまえば、誰でも一緒さ。)
などと考えていると、眼の前に絵山文房堂の看板が突然見えた。
(画材でも買っとくか。どうもあの女、来そうだし、ただセックスをするだけじゃ能がない。たっぷりはめる前に、絵筆もたっぷり絵の具で濡らして、それからあの女を濡らして、綺麗な顔を悶えさせて・・・)
そう思って、真一郎は店に入っていった。
「いらっしゃいませ。これは、お若い方。」
と、若い男の声がした。見たところ歳は三十才位だが、この店の主人らしい。真一郎は店内を一通り見ると、筆を三本持ってレジに行った。中々広い店ではある。何処か暗めな感じはする。店の主人は、
「ありがとうございます。お客さん、絵を専門に、やってらっしゃるんでしょ?私も色々な方を見てますし。」
「うん、まあそうだけど、売れなくてね。全然、売れなくて、どうしようもないんですね。」
と説明しながら、真一郎が苦笑いすると、
「なーに、これからですよ。あなたはきっと、有名になりますとも。」
と励まして、絵山文房堂の店主は神秘的な微笑を浮かべた。真一郎は、首を傾げながら、
「そうかなあ。そんな事言って、無責任じゃないの。おれが有名に?」
「そうですとも。私が保証しますよ。信じてくださいね。」
その店の主人は胸を張った。店の外に出ると真一郎は、
(おれが有名になる、だとさ。なんて事、言いやがる。お世辞なんて言わなくていいのに。)
と思って、ハハハと笑ったが、何か虚しい気もした。(もしかして、本当に?)
 新入社員
 その次の日、白山吾郎は自社の社長室に一人の若者を呼んでいた。吾郎は手元の履歴書を見ると、
「佐山志郎君、だね。」
と、向かい側に座っている若者に気軽に声をかけた。
「はい、そうです!」
という気合の入った声を佐山志郎は出した。吾郎は、うなずくと、
「朝八時から会社の前で、待っていたそうだね。早朝出勤のやつに聞いたよ。転職が今まで、えーと五回。うちは六回目だね。」
佐山志郎は意を決した顔で、
「御社で骨を埋めるつもりです。もうこれが最後の転職です。」
と答えた。
「そうか。それは嬉しいな。普通と違って君はコンピューター技師として転職していたのだから、余り気にしなくていい。今回のうちの募集は、たった一人だ。君に決めたいんだが、二番目に来た絵森という男とコンピューターの腕比べをしてもらう。それで決めたいのだ。君は不服じゃないだろうね。」
「もちろん、ありません!」
「わかった。十時から早速行う。それまで待っていてくれたまえ、ショールームで。」
「はい、失礼します!」
佐山は元気よく部屋を出て行った。吾郎は深々とうなずくと、秘書に命じた。
「次の人を呼んでくれたまえ。」
 
可奈は、JR池袋駅から不自由な足で歩いて、西武池袋線の普通電車に乗った。
彼女の綺麗な眼は、流れる窓外の風景を見つめている。じっと見ていると、段々と景色が田舎じみてくるのだった。
彼女は富士見台の駅で降りると、西へ二百メートル程歩いて行った。すると、畑も見える中に木造モルタルの三階建てアパートが見えた。田宮真一郎の部屋は、一番西の一階みたいだ。ドアに表札はないから、
トントン!
と、手で可奈はノックした。ベルもない玄関である。時刻は朝八時半になっていた。中から、
「はい、誰?こんな朝早くに、もう。」
と声がすると、ドアが開き真一郎が顔を出した。まだ寝呆けた顔だ。加奈は、
「お早うございます。昨日の写真が出来ましたので、持って来たんですよ。」
と言って、にっこりした。それなのに真一郎は無関心そうに、
「あー、あれね。え、もう出来たの。」
「ええ、現像は自分でやりました。自慢じゃないですけど。」
「そう、それは。すごい、です・・・ね。」
真一郎は、又、興味のなさそうな顔をするのだ。だが、可奈は、
(この人は芸術家なんだわ、きっと。だから変わってるのよ。)
と思っていた。彼女は、
「どうぞ。受け取ってくださいね。」
と言って、できた写真を真一郎に手渡した。真一郎は、めんどくさそうに受け取ると、
「ああ、すいませんね。もらっておきましょう。それでは。」
と言いながらドアを閉めかけた。彼女は、慌てて、
「あ、待って下さい。私、こういう者です。」
洒落た名刺を取り出すと、渡した。金色の名刺に
写真家 白山可奈
と印刷してあるのを真一郎は見た。加奈は、
「よろしかったら、又、撮らせてもらえませんか?」
「ええ、まあ・・・、でも、ぼくも忙しいので、わざわざポーズなどは、できませんよ。それじゃ。」
彼は、バタンとドアを閉めた。可奈は所在無げに立っていたが、やがて富士見台駅への道を歩き始めた。
真一郎は、部屋の中で可奈から、もらった写真を見ながら、
(チェッ、それにしてもまあ、下手な写真だ、これは。あ、中にあの娘を入れて彼女を抱いてしまえばよかったんだ。まあ、朝っぱらから、それもなんだけどな。)
と思っていた。一方、可奈は小さな舗道を歩きながら、(今度はあの人を何処で撮ろうかしら?でも、もう会うの、よそうかな、いやがってた、みたいだし・・・)と思って眼を上げると、富士見台駅が見えた。可奈は、駅前で個人タクシーを拾った。乗り込むと、運転手が丁寧に聞いた。
「どちらまで、お越しですか?」
 
真一郎、魔女を助ける
 アパートの六畳の部屋の中で、真一郎は立ち上がると、
「さあ、出かけるか。することないけど。」
と独り言を呟いた。
 今日は仕事は、ないというより、出ないのだ。アパートを出て富士見台の駅まで歩き、西武電車に乗った。
もう9時半なのでラッシュではないが、都心には行く気がしなかった。それで西の方へ行く切符を買った。電車が動き出すと、窓の外は次第に田園風景へと変わっていく。ショルダーバッグの中には、画材が入っている。とある駅に電車が停まると、真一郎はホームへ降りた。遠くに緑の連山が見え、駅の周辺も小山で囲まれている。
 改札口を出ると人影は、余りなかった。眼の前に見える小山を登っていくと、やがて湖が見えた。広い湖だ。ほとりの土手を登ると、風が強く吹いた。ドボーン!と音がした。何だろうと思って、音のした方を見ると、若い西洋の女性の顔が見え隠れしている。
 「HELP!」
大声が聞こえた。外人なのか?と思った真一郎は、急いで近くに駆け寄った。そして、
 「大丈夫ですか?アーユーOK?これにつかまって!」
 急いで真一郎は、右腕を伸ばすと、その女性は、すかさず彼の腕につかまった。真一郎に引かれながら、女は言った。
 「ああ、ありがとう。タスカリマシタ。」
 「いえ、どういたしまして。」
 「私、どういうお礼したら、いいでしょ?」
 「いえ、お礼なんて。いいですよ。」
 「そういうわけには、いかなーいですけど、そうですか。私何か買って来ます。ここで待ってて下さい。」
 眼の青い白人女性は、その場から全身をびっしょりと濡らせたまま、巨乳を揺らせて、小走りに立ち去った。真一郎は、
 「やれやれ、おれも少し濡れてしまった。」
 と呟くと、土手の上でショルダーバッグから画材を取り出した。湖は大きく広がり、まるで大海のようだ。さて、どう描こうかと筆を構えると、真一郎は湖を描くのに迷った。遠くには舟に乗った人々が見える。あれを描けば・・・あれは!二人とも小船の上に立って、男が女の後ろから立ったまま、勃起したモノを入れて腰を前後に振っている。
と、その時、後ろで声がした。
 「おう、あなた、絵を描いているのですね!」
真一郎が振り向くと、さっきの外人女性が白い細い手に缶ジュースを持って立っていた。
 「いや、全然うまく描けないんですよ・・・。」
と、真一郎が、あの子船を見ないようにして、心細そうな声を出すと、
 「そうですか。まあ、これでも飲んで、元気出して。」
外人女性は、買ってきたジュースを真一郎に手渡した。そして、自信タップリに言った。
 「わたしが、うまくなるように、してあげましょう。」
 外人女性は、謎めいて微笑んだ。真一郎は、
 「あなた、絵のプロの方か、何かですか・・・。」
 「いえ、そうではありませんけど・・・ちょっと筆を、かしてください。」
 「どうぞ。」
 真一郎は、その女性に絵筆を渡した。それを受け取ると、その女性は、筆を眼の高さまで上げた。そして、それを不思議な眼で見つめながら、
 「バリスー・リウス・・・。」
と、彼には分からない呪文のような言葉を唱えた。そして、周りを見回すと、誰もいないので、真一郎に近づくと、抱き着いてキスをした。彼女は生暖かい舌を真一郎の唇の中に入れ、彼の舌と、自分の舌をネットリと絡ませ、巨乳を真一郎の胸部に押しつけた。彼女の硬くなった乳首が真一郎に感じられて、かれも直ぐに勃起した。
そのペニスは美人のその西洋女性の濡れたスカートの股間のところにピッタリと当たり、そこが彼女の割れ目の上のあたりで、クリトリスが既に隆起していて、真一郎の鬼頭を愛撫するように纏わりつく。彼女は自分で濡れたスカートをたくし上げて、白い細いショーツ、昔の名称はパンティを右手で膝よりも下に降ろすと、右足を抜き出して、真一郎のズボンのベルトを外し、かれのズボンとパンツを驚くべき速さで彼の膝下まで下げ、股を広げて彼女のピンクの縦長の穴の中に真一郎の肉欲の剛棒を迎え入れていく。
「ハ、アンッ。イイッ、あなたの立ってるちんぽ、いいっ。ううん、イイッ。」
彼女は右手に絵筆を持ち、それの筆先を濡れてピッタリと彼女の肌に、くっついた洋服の上からでもわかる自分の硬く尖っている乳首に当てて、快感を楽しむように、なぞり回した。
真一郎のモノはタコに吸い付かれたような吸引力で、西洋の美若魔女のマンコにクイ、クイ、クイ、と締め付けられるのを感じて、今まで、やった風俗の女とはまるで違ったものを感じ、均整が取れて巨乳で巨尻の美若魔女は、そのマンコも形が可愛らしく、真一郎のモノを咥えて放そうとしない。湖岸より下の木陰でのセックスは初めてだったし、西洋美女との立ったままのマンコも初めてで、湖上の男女も結合しているだろうし、おれも白肌の花の高い美女に抱かれ、美マンコに包まれて、それは何ともいいようのない快感を真一郎の脳内に送り込み、彼女は又、唇を少し開けて舌を出しながら、真一郎の唇に彼女の唇を強く密着させると同時に美巨尻を激しく振った。その電光のような快感に真一郎は西洋の白い美魔女のマンコの中に大容量の精液を今までにない位、強く発射した。
「アッ、ア、ウーーンッ。腰が、とろけそうよっ、ワッタシノ、オマンコ、耐えられなく、いいわーっ。」
と声を抑えて絶叫した。彼女の絵筆を持った右手は少し震えていたが、二人でまだ立って結合したまま、
 「はい、これでいいです。これを使うと、あなた有名になります。あ、はん。あなたのモノ、小さくなるのねー。でも、そのチンポの感触も、いいっ。」
 彼女は自分の乳首のあたりを、もう一度、その絵筆で、なぞってから、それを真一郎に渡すと、ニヤッと色っぽく笑った。それは、そうだ、まだ真一郎の小さくなったチンコは美若魔女のマンコの中だから。
 「そうですか。そうなると、いいんだけど・・・気持ちいいー。」
 そう答えて、真一郎は、苦笑した。その女性は、歳は二十代に見えた。美人コンテストに出てくるような、顔が、それより神秘的な女性だ。真一郎が小さいチンコを抜き取ると、彼女は名残り惜し気に、
 「それでは、頑張って下さいね。さよなら。と言いたいですが。」
と、下を向いて下着をマンコの方に上げて元に戻し、彼女は真一郎に近づくと、
「もちろん、これだけでは、大した事は、ないです。もし、本当に有名になって、お金がたくさん欲しいのなら、ここではなく他の場所で、というよりワタシノ家で他の、儀式してあげるよ。見たところ、とても困っているようですけど、それに、あなたには・・素質ある。」
「何の素質ですか。絵の方?」
「うん、そうだけど、でもあなた一人の力は大した事ないよ。それで他の力は必要。」
「他の力?」
「そうそう、霊の力ね、それと、わたしのマンコ。どう、どちらも興味ある?」
「ええ、まあ・・・あります。あなたのマンコの方に、より多く。」
といっても、真一郎はオカルト的な事に興味はなかった。でも、その女性は、にやっとすると、
「じゃ、私に電話してね。それと、住所の名刺」
と話すと、湖水で濡れた服の中から、プラスティックの名刺を真一郎に渡した。それから、
「あなたとチンコ、待ってるよ。」
と笑顔で、くるりとまっすぐで、腰のあたりは大きくクビレた背仲を向けて彼女は、真一郎から離れていった。
真一郎は、
 (何だか、知らないが・・・)と思いながら、外人女性が性の魔術で扱った絵筆をびっくりとして見て、(これは、今日は、もう、使わないんだがなあ・・・)
 その性魔術の筆は、道具箱の中にしまい、もう片方の手にある名刺は胸のポケットにしまった。(あんな事を言っていたけど、こんなもので有名になるなんて、あーあ、映画やTVじゃあるまいし・・・)と思いながら、真一郎は、持ってきたイーゼルを立てた。さっき、遠くに見えたボートが一隻、彼の方に近づいて来た。(や、あれを描いてみるか)と思って彼は、筆を構えた。すると、ボートに乗っていた人影が立ち上がった。向こうも両手に何かを持って、構えている。若い女性だ。
 「撮ったわよ!田宮さん!」
 と、声が聞こえた。ボートに乗っていたのは、白山可奈だったのだ。彼女のボートは、真一郎の近くまで来た。そこから、彼女は、
 「あなたは芸術家だって思っていましたけど、画家だったんですね。」
 と叫ぶと、ボートの上に立ったまま微笑んだ。
 「いや、画家なんて言われるようなものじゃないよ。」
 と、真一郎は、つまらなさそうな態度を取った。加奈は、
 「でも、こんな処で、お会いするなんて不思議ですよね。」
 「そうかなあ。ぼくは偶然だと思うよ。」
 「よかったら、あたしを描いて下さいませんか?」
 「君を?そうだな、この前、写真を撮ってもらったし、じゃあ一枚描いてみようか。どうなるかな。」
 と応じると、真一郎は、あの性魔術の絵筆を取った。それを使う事で十分後、彼女の湖上の絵は素晴らしく出来上がった。実は、真一郎は、それを、いい加減に描いたのである。
 「はい、出来たよ。ほら、こんなものかな。」
 真一郎は、間近に見に来ている可奈に声をかけた。彼女は、
 「え、もう?そんなに早く、できたのですか。それでは、わたしに見せて下さい。」
 と嬉しそうに言うと、ボートを岸につけて、彼のところへ走って来た。そして、
「まあ、すごく、うまいわ。とても、うまいです。でも、あたし、こんなに綺麗じゃないと思うけどな。」
 「いや、これで、いいと思うよ。とっても君に、似ているのさ。」
 と、彼が説明すると、可奈は低い声で笑った。それから加奈は真一郎を見つめて、
「これから、いつまで、ここで、絵を描くのですか?」
「それは、わからないな。気が済むまで、だろう。」
「あたし、終わるまで待っていても、いいかしら?いいわよ、ね。」
「え、夜になるかもしれないぜ。真っ暗な夜に。」
「いいのよ、構わないわ。深夜になっても。カラスが見えなくなっても。」
というと、加奈は、その場にすらりと尻を地面について、座り込んだ。
彼女の返答を聞いた、真一郎は、(しょうがないな、この女、あの湖上のボートの上の男女は立ったままセックスしていたけど、女は、この女性じゃないのか、)とも思った。それから魔法の筆で三十分位、彼は湖周辺の絵を描いていたが、
「もう、今日はやめだ。終わりにするよ。」
と魔法の筆を措いた。加奈は、
 「あら、もう、こんなに早く帰るのですか?」
 「うん。そうだねー。帰りますよ。カエルが、この辺にいなくても、帰る。」
 というと、彼は、ソソクサと帰り支度を始めた。加奈は尻を揺らせて立ち上がって、
 「じゃあ、あたし、この、ボートを返してこなくっちゃ、いけませんよね。」
 と呟くように言うと、びっこを引きながら湖上の貸しボートの処へ戻った。彼女は尻を見せたが、振り返ると
 「ここで、待っていて、くれますか?」
と彼女は大声で聞いてきた。だが、真一郎は首を横に振って、
 「いや、お先に失礼するよ。さようなら、だね。」
 と即答すると、画材を入れたショルダーバッグをよいしょ、と肩にかけた。
 「そうなのですね。あたし、残念ですわ。」
と聞こえる可奈の声を背中に聞きながら、真一郎は土手を登った。
 登り切って振り向くと、可奈とボートはまだ同じ処にある。彼女と視線が合いそうになるのを避けると、彼は土手を降りた。そして、(あの女と、ここで会うなんて、思わなかったな。しかし、湖上で立ちバックしていた男の姿がボートには見えなかった。他にも湖にボートは出ていたのかもな。)
又、彼は、駅への道をトホトホと徒歩で歩きながら思う。(あの女に写真を撮られたけど、又、おれのアパートに、自分で持ってくるんだろうな・・・まあ、いいか。湖で絵を描いてあげたし・・・今度は、彼女とセックスできるかも。アパートの部屋の中で立ちバックだ。?あのボートに乗せてもらって、おれも立ちバックセックスすればよかったのに、しまった。)
 お見合い
 太陽は、まだ落ちていない夕暮れ時、食堂に座った白山吾郎は娘に優しく話しかけた。
「可奈。あのな、いい話があるんだよ。明日、ある人と会ってみないかね?」
三十畳はあろうか、という広い豪華な食堂である。中世ヨーロッパの貴族のものを思わせるものだ。
父の話を可奈は大きく眼を開けて聞いた。
 「お見合いなのね?あたし、お見合いは、もういい。」
 「いや、そうじゃないけど、レストランで昼にちょっとな。会うだけだよ。」
 「ふうん、それならいいわよ。ダディ。」
 「おや、なんだか乗り気じゃないみたいだな。」
 「そうでもないけどね・・・ね、ちょっと見せたいものがあるのよ。」
 そういうと、可奈は豪華な椅子から立ち上がった。白山吾郎は、
 「ほう、何をだね?」
 「今、持ってくるわね。ちょっと待っててよー。」
と言い残して、彼女は、広いダイニングを出て行った。
吾郎は、給仕をしている若いセクシーな女性に聞いた。
「何なのかな?娘が見せたいものって。」
「さて、なんでございましょうか?わかりませんわ、わたくしには。」
「そりゃ、そうだな。君は知らなくても、いいし。」
と吾郎が、うなずいた時、可奈が何かを手にして入って来た。
「これよ、見てね!お父さん。はいっ。」
可奈は、手に持っているものを父に渡した。
「ほう、どれどれ。なんだい、これは。」
彼は、それを受け取ると、
「何だ、これは絵だね・・・可奈ということは、わかるが、それにしても下手クソな絵だな。」心の中で(これはっ、凄い絵だ。可奈もまた、股までセクシーに描かれて。色っぽいのなんのと、いやあ、素晴らしいっ、)
と答えると、吾郎は、その絵をツッケンドンと娘に返した。加奈は小さく口を尖らせて、
「そんなこと、ないわ、よく描けてるじゃないの。とても芸術的だわ。これはね、ある人に描いてもらったのよ。」
それから可奈は豪華な椅子にとん、と座った。吾郎は、訝しげに聞いた。
「誰だね?そのある人っていうのは。」
「それはね、街で知り合った人なのよ。若手の画家なのよ。すごいでしょ。」
「そうか。それはよかったな。男性か?」
「そうよ。男性です。」
「おまえ、その人を好きになったのか?」
「いいえ。だって、彼は私に興味ないみたいだけど。」
吾郎は、ニヤッと笑って、(安心した。絵などに興味を持ってもらいたくない)
「そうか、そうだね。さあさあ、食事に、しようじゃないか。」
「ええ。そうね。そうするう。」
二人は、キラキラ光る銀のフォークとナイフを手に取ると、豪華なディナーを食べ始めた。
翌日。東京都町田市の朝は、いつものようにやってきた。
吾郎は、いつもの超高級車で外出した。可奈は遅れて朝食を済ますと、自邸を出て行った。昼の十二時に、さる超高級レストランに予約が入れてあるらしい。
それまでに、そこへ行けばいいから。白山可奈は、新たな被写体を求めて街へ出ている。だけど・・・。今日も又、原山町へ行ってみよう。
真一郎と初めて出会った場所へ。と、彼女は心の中でそう言っていた。
原山の駅前でタクシーを降りると、人影はまばらだった。彼女は、真一郎がいた道に入った。今日も彼に会えるかな?
ふと眼を横に向けると、画家のような青年がいる。(真一郎さん!)そう思った彼女は、その青年に駆け寄った。
その青年が顔を向けると、それは全く別人の顔だった。(何だ・・・)可奈は、軽く右足をひきずりながら、そこを通り過ぎた。
何処を歩いても今日は真一郎は、いない。(今日は、いないのね)諦めた彼女は、JR原山駅に入りホームに上がった。
周りの視線を強く感じる。自分の足のせいだと思う。いつもの事で気にしない事ではあるが。実は、彼女の美貌も注目の的なのだけども。
加奈は、すぐに顔を見せた電車に乗った。ドアが閉まっても彼女は座らずに、立って外を見ていた。ホームの人の顔が流れていくその中に、一人の女性の姿が彼女の眼に停まった。
若い魅力的な肉感的な、白い外国人女性・・・何か異彩を放っている人だ。(あ、写真に撮らなきゃ!)と加奈が電光のように思った時、眼の前に田宮真一郎の顔が現れて、流れて行った。
バッグの中のカメラに、可奈が手を触れた時、その二人の姿は、もう、見えなくなってしまった。
 
少し前、JR原山駅のホームを歩いている、真一郎の耳に突然、外国訛りの声がした。
「お早う、ございまーす。魔法の筆と、あなたの筆は元気ですか。」
素っ頓狂な声がした横を見ると、彼にぴったりの距離に、この前の美人外人女性が立っていた。真一郎は、
「ああ、どうも、こんにちわ。お元気そうですね。」
「ええ、あなたのおかげですよ。どう?絵はうまくなりましたか?」
「いえ全然、変わりないですけども。」
「そう?そうですか。あなた、まだ、ほら、あの筆を使っていませんね。」
「あの筆ですか?」
「そう、この前、わたしが祝福してあげた性魔術の筆です。一種のセックス・マジックを、たーっぷり、かけた筆です。」
「そんな、本当ですか。でもセックス・マジックなんて・・・」
真一郎が顔を赤らめると同時に、胡散臭そうな顔をすると、
「いいえ、とにかく、あれを使って下さいよ。特に若い女性を描く時にいいんですよ。今、あなた、誰か女の人、描いています?」
「いや、特に・・・描いていないです。」
「そうですか、残念。まあ、そういう時があったら、ね、使うのよ、性魔術のあの筆を。」
そういって、その外人女性は、右目でウインクした。真一郎が、
 「それでは、あなたは、もしかしたら、魔女・・・」
と言いかけた眼の前から、その女性は、ふいに消えていた。周囲を見渡したが、美人魔女は、もう何処にも見えなかった。もっとも、そのあたりに割と人が多くなってきていたせいもあった。真一郎は、(若い女を描く時に性魔術の筆、ねえ・・・)そう思って眼を斜め前にやると、こっちに歩いて来る若い女性に、あ、と気がついた。
(あれは!白山可奈・・・?だったな。)だが、しかし・・・。その歩き方は実に、まともなものなのだ。スイスイと滑るようにこっちへ、やって来る。そうか、彼女、足が治ったんだろうか?あれは現代医学の勝利だな。とするうち、すぐ近くに彼女が来たので、
 「お早う、白山さん。お久しぶりに、お会いしますね。」
と、張り切って声をかけてみた。しかし、彼女はムッと黙って通り過ぎて行く。なんだ、人違いか?でも、こんなに似た人間が、いるものか・・・。
 「ちょっと!ちょっと待って下さい!白山さん。」
 真一郎は、その女を追って、タタタッと駆け出した。そして、すぐに追いつくと、
 「あの、初めまして、ぼく、絵を描いているんです。モデルになってもらえませんか?」
と声を元気よく、かけた。その女は立ち止ると、真一郎をジロッと見た。そして、
 「失礼だけど、いくら出してもらえるの、そのモデルの件で?」
と、真一郎を見下すように聞いた。
 「いくらって、その・・・、それは、まだ・・・決められませんが。」
 「あたし、プロのモデルなのよ。だからね、わたし、お金なしじゃ、動かないわ、そんなものには。」
と冷たく彼女は答えを投げると、又、歩き出そうとした。
 「待って下さい、よ。あなた、白山可奈と言う人を知っているでしょう?」
 と、真一郎は聞いた。
 「白山可奈ですって?知らないわ、そんな人。あたしの名前は水川マキよ。あんた、知ってる?わたしの名前。」
 「いえ、知りません全然。あっ・・・ちょっと、いや、ちょっとじゃなくて、たくさん待って!!」
 真一郎は、必死で彼女を引き止めようと思ったが、その女は素早く走って行ってしまった。
 
白山可奈が超高級レストランに、定刻より十分早く着くと、そこには父と一人の青年が、悠々と座って待っていた。
白山吾郎は、可奈に目の前の席を目線で示すと、
 「おう、早かったじゃないか、可奈。まあ、そこに座れよ。」
その青年は、ぬっくと立ち上がって、一礼した。そして、
 「わたくし、佐山と申します。初めまして。」
と歯切れよく自己紹介したので、彼女は、
 「あ、わたし、白山可奈です。初めまして、こちらこそ、どうぞ。」
 と挨拶すると、軽く黒髪の頭を下げた。吾郎は、
 「まあ、まあ、可奈、座りなさい。」
 可奈は、二人が座る席の前に、ゆっくりと座った。吾郎は、
 「彼が、今、自己紹介するよ。さあ、佐山君、自己紹介しようかい。」
 とニコニコと促した。青年は姿勢を正して、話し始めた。
 「わたくし、コンピューターの方を専門に、やっております。佐山志郎です。入社して、まだ間もないのですが、これから一生懸命、頑張らせてもらいます。」
 その青年の眼は、らんらんと輝いている。可奈が静かに黙っているので、吾郎は、
 「どうしたんだ、可奈?お前も、さあ、自己紹介をしなさい。」
 と話すと、少し不服そうな顔をした。可奈は、
 「はい。私、写真の方を少しやっています・・・白山可奈と言います。」
 「え、写真ですか。ぼくも写真には、とても興味がありますよ。」
 佐山は、にんやりと微笑んだ。吾郎は、うむうむ、と、うなずくと、
 「おう、そうかね。そいつは、よかったじゃないか、可奈。今度、何処かに、だなー、この佐山君と一緒に、写真を撮りに行ったら、どうだね?」
 「ええ、そうですね・・・。」
 「佐山君は、どうだ、どうだね?」
 「ええ、はい、喜んで、わたくし、お供いたします。」
 佐山は、にんまりと嬉しそうにする。その時、三人のテーブルに、とっても豪勢な料理が運ばれて来た。吾郎は、
 「まあ、まあ、まずは、食事にしようじゃないか。」
と眼を、とても細めた。それから三人は、シーンと無言で食事をした。アフターコーヒーを飲んでから、吾郎は、
 「おっと、もう時間がないな。こんな時間だって、どんな時間かって、ところだけどな」
とモソモソと呟くと、シャンっと立ち上がった。可奈と佐山も、それに続いて立ち上がる。外に出ると、吾郎と佐山は待っていたタクシーに乗った。
 車内で手を挙げた吾郎の姿が、見る見る、見なくても遠ざかっていく。可奈は、一人で歩き出した。ここは若者の街、吉祥寺だが通り過ぎる誰にも、可奈は興味を感じないのだ。その時、向こうから若い白い外人女性が歩いて来た。
 
尻の穴を
 
(これは!あの人。)JR原山駅のホームに見たあの白人外人女性だ。
(あら、しまったわ!今、わたし、カメラを持ってないのに・・・出たのね、白人さん。)
見合いの席にカメラを持っていける訳もないだろう。どうしようもない思いで可奈が立っていると、
 「これは、これは、おー。お嬢さん、いいタイミングでした。すみませんが、あのお寺を、バックにして、あなた、シャッターを押してくれませんか?」
と、その若い外人白人女性の方からニコヤカに可奈に話しかけてきたのだ。20代に見える白人美人女性で、手には高価そうなカメラを持って、それを可奈の方に、はい、どうぞ、と差し出している。
 「え、ええ、喜んで、わたし。今から撮らせていただきます。」
 可奈は、嬉しそうに、そのカメラを受け取ると、ファインダーをじっと覗いた。その女性の背景には古い寺が見える。観光のために日本に来たらしい外国人女性らしく見える。前に見た時の、あの不思議な感じは何処にも、なかった。それで、(この前は、どうして、あんな風に不思議に見えたのかしらね?)と思っていると、
 「お嬢さん!おじょーさん、もう、撮っても、とっても、いいんじゃありませんか?そして、写真の出来栄えは、とってもいい、にしましょう。」
 「はい、それでは、いきますー。ニッコリと笑って!はい、チーズとパン。あれ?パンは、いらないか。」
 カシャーッ、とカメラのシャッターが機械音を立てる。キチンと美白人女性の図柄は、綺麗に背景に、おさまっただろうか?可奈が、じっとカメラを持っていると、美若の外人女性が近づいて来た。そして、にこにこして、こう言った。
 「そのカメラ、ポラロイドですから、すぐ、できまーす。」
 「えっ! ?本当に、みたいですね。」
 ジーッと突如のように音がして、カメラから現像された写真が出て来た。美外人女性は可奈から自分のカメラを受け取ると、
 「さて、出来ました、よ。一体、どんなものに、なったですかね、たのしみ。」
と話すと、綺麗に現像された写真をカメラから抜いた。そして、
 「いや、まあ、何とも、これはユニークですね。お嬢さん。」
 と話して、美外人女性は楽しそうに微笑むと、可奈に、その、できた写真を手渡した。それを手に取って見た可奈は、
 (しまったなあ・・・もう、失敗!!)と思わず思って、それを考えた。その写真は、何と下の方に美外人女性の顔だけが小さく写り、その後ろ中心に大きく寺が入り、その上は、青い空が大きく場を占めている。加奈は、頭を下げて、
 「どうも、すみませんでした。こんな、つまらないものを撮ってしまって。どうも、ごめんなさい。」
と急いで謝ると、その美外人女性は、白い手を左右に大きく振って、
 「いえいえ、どうもありがとうね。わたっしの国に持って帰って、とても大事にしますよ。あなたのようにね、チャーミングな人には、日本で初めて会いました、わたし。わたっしに記念に写真を一枚、あなたを撮らせて下さい。」
と、なごやかに提案した。
 「ええ、い、いいですわ。どうぞ、なんでも、お願いします。」
 「それじゃ、あなたも同じ処で撮りましょう、ね。さっき、私がいた処に今から行って下さい。」
可奈は、右足を引きずりながら、そこへ行く。美外国人女性は、微笑むと、
 「じゃあ、じゃあ、撮りますよー。はい、スライスチーズ。」
 可奈は、それを聞いて、思わず笑った。心地よく撮影されて、それから可奈は、美外人女性の処へ近づいて行った。美白人女性は、出て来たポラロイド写真を取ると、可奈に優しく手渡して、
 「どう?どうですか?これは、写真は、出来栄えは。」
 「ええ、ほんとに、とてもよく撮れてるのですね。何だか、かんだか、私じゃない、みたいです。」
 出来たその写真は、遠近感、構図とも、申し分のないものだった。美白人女性は、にっこりして、
 「では、これは、どうぞ、あなたに差し上げますよ。」
 「うわあ、とっても、ありがとうございます。わたし、大事にしますわ、記念に取っておきますから、いつまでも。」
 「アリガトウ。お嬢さん、でもー、アナタノ、お名前はナント、イイマスカ?」
 「私、白山可奈と、と、いいますの。」
 「私は、シャンメル・フォンフォンと、いいます。どうですかー、今から、私の家に来ませんか、よかったらネ。」
 「ええ、よろしかったら、わたし、ご一緒に行きたいですわ。」
 「それじゃあ、行きましょうね。ご一緒に。」
 シャンメル・フォンフォンは、可奈を見て又、ニッコリした。二人は、それから吉祥寺の駅へ歩いて行った。可奈は、雲のような疑問を聞いた。
 「あなたの、おうちって、ここから、とても遠いところなのですか?」
すると、シャンメルは、美肩をすくめて、
 「いえいえ、二つか三つ先ですよ。東小金井の田舎に、ありますですよ。」
電車の切符はシャンメルが二枚、買ってきた。二人が吉祥寺のホームに出ると、すぐに電車が走って来た。シャンメルは、
 「さあ、乗りましょうか。わたしたち、行くのでーす。」
 と誘われて、可奈も駆けて来た電車に乗った。電車が、いつものように走り出すと、窓の外は次第に夢見るような田園風景に変わっていった。電車が三つ目の駅で停まると、シャンメルは可奈に突然、言った。
 「ここですよ、もう、着いた。さあ、降りましょう。」
 二人が電車を降りると、東小金井駅のホームは、いい花の香りがした。可奈は、
 「とても、いいところですね、この辺は。」
 「そうねー。でも、少し不便ですねー。いなか、ですねー。」
シャンメルは困ったという、ゼスチュアをした。それから、二十分も歩いただろうか。大きな家が立ち並ぶところに、二人は来た。その中に周りの大きな家より、少し大きな洋館が見えた。シャンメルは、
 「あれですよ。あれが、わたしのウチですよ。」
 と、その宏大な洋館を、白い指で指差して言った。茶色のレンガの家だ。青銅の鉄門の中に入ると、家よりも、その中庭の方が広かった。シャンメルは、
 「どうして、日本の家は、庭の方が狭いんでしょうねえ。だから、ウサギ小屋?」
 と言ってニヤッと笑った。その訳は、知っているみたいだが。シャンメルは玄関のカギを開け、靴のまま二人は中に入った。シャンメルは、
 「私は靴を脱ぐのが面倒臭くて。ここでは、その必要は、ありません。」
 と説明しながら両手を拡げた。日本の習慣に慣れていないということであるが、あちらでは、靴のままが一般的な風習である。玄関を入って、すぐ右の部屋が応接ルームだった。シャンメルは、
 「そこに座って、待っててね。今に、いいもの、持ってくるから。」
 と、応接部屋にある黒いソファを指して、出て行った。何という鳥なのだろう、多分、ダチョウの剥製が壁際に置いてあった。白い壁に古いランプも掛かっている。中世ヨーロッパ、そういう感じに可奈は、もんわりと包まれた。もっとも、可奈の広壮な屋敷も中世ヨーロッパ風とはいえ、そこには日本的なものも残っているのだが、ここは美外国人女性の持ち物だから、日本的なものは、何もなかった。やがて、シャンメルが閉まっていたドアを開けた。そして、
 「お待たせー、しましたー。」
 と軽く言うと、両手に高級紅茶と高級お菓子の乗った盆を持っていた。それをテーブルに置くと、
 「さあ、どうぞ、どうぞー。さあ、召し上がれ。これ、おいしいよー。」
 「それでは、少しも遠慮なく、いただきます。」
 可奈は小皿のクッキーを、つまんで、美しい口の中に入れた。ああ、ヨーロッパの味と香りだ。シャンメルが、真に同情に堪えない顔で話した。
 「お嬢さんは、とてもチャーミングなのに、でも、足が悪いのね。」
 「ええ、いいんです、それ。もう、生まれた時からだから、あきらめているんです。わたし、別に困りもしないから、何ともありません。」
 「そおう、かしら?あなた、まだ、独身でしょ?」
 「そうですけど、わたし。それが何か、どうして、いけませんの。」
 「いえいえ、その足じゃ、難しいんじゃないかなって、わたし、思って、ね。あなたが結婚するのは。」
 「わたし、結婚しなくても、生きていけますわよ。現代って、男女、雇用均等なんですから。」
 「そりゃ、そうだけどさ、他にも色々ね、困るでしょ、あなた。でも、あなた、安心してよ。私が、その足を治してあげるから。」
 「えっ! は?治すって、もしかして、あなたは、お医者さんなのですか。」
 可奈はシャンメルの顔を、まじまじ、まじまじ、と見つめた。シャンメルは、とても気楽な顔をしている。可奈は、
 「やっぱり、シャンメルさんは、お医者さんだったんですか、しら?」
 「そうねえ、別にわたし医療を職業にしていないけど、人は治せるのよ。まあ、何でもって訳には、それは、いかないけどね。」
 「それは・・・現代のお医者さんも、専門が色々あって、ですか・・・それは、治せる分野も治せない分野も、あると思います。」
 「私はね、わたしが治したい人しか、治さないのよ。勝手なようだけどね。」
 それから、シャンメルは自分で、うなずいて見せた。可奈は、
 「でも、治すって、どういう方法で、ですか?私、たくさんのお医者さんに見てもらったわ。超一流の人達ばかりにです。でも、治りませんでした、私の右足は不治なのだと思うの。」
 「そんな、やり方じゃないのよ。ところでさ、あんた、代償を払う事は、できる?」
 「え?代償って、どんなものを、ですか?」
 「それはね、恥じらいを捨ててもらわなきゃ、駄目なのよ。」
 「恥じらい?あたし、恥知らず、じゃないんですけども。」
 「そう。それは、そうね。でも、あなた、まだ、処女でしょ?何となく、わたし、そんな気がしてね。」
 「ええ。それは仰るとおりだわ。あたし、まだ、男性の方と、お付き合いした事もないのです。」
 可奈は、少し顔を赤らめると、うつむいた。シャンメルは励ますように、
 「でもね、処女を捨てるって事じゃないのよ。それは、これから、あなたの彼氏がしてくれる事だからね。そうじゃなくて、アヌスを貸すのよ。」
 「アヌス?なんですか、それは。もしかして、膣の事ですか、何語なのかしら。」
 「そう、あなた知らないのね。ふふふ、それは、お尻の穴ね。あなたの、お尻の門よ。」
 「えっ、きゃー、お尻の穴?ですか。でも、一体、誰に貸すんですか?」
 「それは、これから分かるわよ。どう?やって見る?難しい事じゃないのよ。考えるより、実行ね。」
 「でも、あたし、そんな事、した事ないからなあ・・・。できるかしら。何だか、怖いな、とっても。」
 「大抵の人は、そうね。でも、それをしないと、あなたの足は治らないわよ。いつまでも。」
 「ええー、信じられない気がします。そんな事で治るなんて。それでは、医学って何なのでしょう。」
 「そうでしょうね、それはね。いいわ、見ていて。これから、不思議なものを見せるわね。」
 シャンメルは、立ち上がると、ダチョウの剥製の方を向いた。そして、何か呪文のようなものを唱えると、手招きするような手振りをした。すると、どうだろう!ダチョウの剥製が歩いたのだ。一歩、二歩、三歩、ゆっくりと。
 「とまれ!」
 シャンメルは、剥製に性急に命令した。そのとたんに、ダチョウはピタと停まった。可奈は、
 「! ?・・・何ですか?これは。何か、ダチョウに仕かけでもあるんですか?」
と、驚いて叫んだ。彼女は全く、度肝を抜かれたようだ。シャンメルは、
 「これは、魔術よ。ダチョウは、ただの剥製です。剥製は、歩かないわよねー。」
 「・・・・・・。」
 「見た通りよ。私は魔術によって、あなたの足を治してあげるわ。」
 「それは、どんな魔術ですか?あたし、どきどき、してきたわ。」
 「それは、これから、あなた、わかる。どう?あなた、やる?やるわよねー、あなた。」
 可奈は、ためらった様子を、しばらく見せていたが、テーブルを挟んだシャンメルの美顔を見て、
 「ええ、やってみますわ。あたし、それ。」
と固い決意を表した。シャンメルは満足げに、うなずいて、
 「よろしい。それでは、魔術を始めましょう。」
 と高らかに宣言すると、彼女は、ツツツ、と、部屋の入り口のところまで行った。そして、手招きして、
「さあ、おいで。あちらの、魔術の部屋へ。」
 魔術儀式で
  それから、二人は長い廊下を歩くと、別の部屋へ入った。そこは、キリスト教の礼拝堂のように見えるが、十字架を背負ったキリスト像は、ない。シャンメルは、部屋の中央にある祭壇に向かうと、立ててある二本の蝋燭に静かに火をつけた。
次に、お香のようなものを、手につまむと、置いてある儀式の受け皿に入れて、変わったライターで火をつけた。とてもいい香りが、部屋にフワフワと漂う。シャンメルは、可奈の方を厳かに振り返った。その顔は、今までとは違った、とても神秘的な顔だ。そして、シャンメルは厳かに言った。
「これから、マルバス様の力を借ります。貴女の脚は、マルバス様が、治してくださるのです。」
シャンメルに、おいで、と手招きされて、可奈は祭壇に恐る恐る、近寄った。シャンメルは両手を合わせると、
「おお、偉大なるマルバス様。どうか、彼女の不自由な右足を治してください。」
と請い願って、深々と美黒髪の頭を下げた。可奈も思わず、同じように頭を下げてしまったのだ。その時、不気味な祭壇の蝋燭の炎が上方に、三十センチ位も伸びたように見えた。可奈は、
「!!!!!!!!!」
と、声にならない声を上げてしまった。シャンメルは確信的に、
「マルバス様は、私の願いを、こころよく聞き入れてくださいました。これから、裏の小屋で、その儀式を行います。さあ、わたしに、ついてきて。」
 先に優雅に歩き始めたシャンメルに、可奈は、トコトコとついていく。その祭壇室を出て、再び長い廊下を歩き、勝手口のようなところから、広い裏庭に出た。緑の大樹が庭を取り囲むように豊かに、おい茂っている。外からは、ここはまず、見えないだろう。その庭の真中に小屋があった。それは、山小屋ともいえるものだった。シャンメルは、
 「ここですよ。ここで治るのですよ、貴女の足は。」
 と、優しく話すと、その小屋のピカピカ光るドアノブをグイと握った。
彼女の後に入った可奈は、そこに色々な動物が、いるのを見た。猫や烏、鶏など。その中に一匹の大きな山羊が、いた。可奈は感嘆したように、
 「ずい分と色々、様々な動物を飼っていらっしゃるんですねえ。」
 「まあね。日本じゃ、あまり多くは飼えないけどね。」
 「今流行の、アニマルヒーリングとか、なんですか?」
 「そう言えば、そうかもね。うん、使い方は色々よ。」
 「ふーん、興味深いなあ、と、わたし思いますわ。」
 シャンメルはフフフと笑うと、いきなり、山羊に向かって来るように手招きした。すると、どうだろう、その山羊はダチョウの剥製みたいに、こっちへ、ゆっくりと、やって来るのだ。
 「よし、そこで。とまりなさい。」
 彼女は、山羊を身振りでも制止して、その山羊の動きを止めた。それから、おもむろに可奈の方を向くと、
 「あなた、ここで服を脱ぐのよ。」
と厳かに命じた。
 「えっ!服を脱ぐの!?ここで、ですか。」
 「そうです。それからでないと、儀式は始められませんからね。」
 「・・・・・・。だって・・・。」
 「誰にも見られる訳じゃありませんよ。私だけ、ですからね。私は女ですから。安心して脱ぐ。」
 可奈はシャンメルの顔を見ると、うなずいて上着のボタンに手をかけた。シャツとスカートを脱ぐと、白いブラジャーとパンティだけになった。
 「さあ、それも脱ぎなさい。早く、降ろしてしまいなさい。」
 シャンメルは、白い顎を、威丈高に、しゃっくった。可奈は、しぶしぶ白いブラジャーを外していった。小ぶりだが形の良い彼女の乳房が現れてくる。ピンクの乳首が見える。それから彼女は、白いパンティに手をかけるとスーッと下に降ろしていった。それほど濃くないデルタだった。
 「それで、よろしい。とても綺麗な体ですね、やはり。」
 シャンメルは、満足げに、うなずいた。可奈は女同士という事からか、二つの秘所を隠しもしないでいる。シャンメルは大山羊にススと歩み寄ると、山羊の股間に、彼女の手を伸ばした。その手は、すでに山羊の巨大なペニスをグっと掴んでいる。やがて、その手は左右に激しく動き始めた。
 「・・・・・・?」
 可奈は、そのシャンメルの手の動きを、じっと見つめている。
 「よし、これで、よし。おー、いい子ちゃん、山羊ちゃん。」
 シャンメルは、手を山羊のペニスから外すと、立ち上がった。
 「さあ、あなた、この山羊のペニスを見て下さい。」
 シャンメルは、可奈に手で、その場所を教えた。
 「まっ!あっ・・・・・・」
 可奈は、すぐに絶句した。巨大な山羊のペニスが、そこにあったからだ。黒々と、それは、いきり立っている。
 「これを、あなたのアヌスに捧げるのです。覚悟は決めていますね?!」
 「でも、・・でも、こんなものを・・・・・・私の・・・お尻の穴に入れるなんて、それは・・・!」
 「なに、大丈夫ですよ。何とも、ないです。あなたは、大便は、しますでしょう?」
 「え、ええ・・・・・・。」
 「ではね、その時の感じを思ってもらえば、いいのですよ。それは、そう長くは、ありませんから。」
 「でも、だって、山羊の・・・・・・ちんぽ、いえ、ペニスなんて、ねえ。」
 「あなたは、その足を治したいとは思わないのですか?」
 「それは、ぜひ、治したいと思いますけど・・・。」
 「じゃあ、すぐ四つん這いになってね。」
 「ええっ!?えっ。」
 「さあ、早く。四つん這いに、なるのでーす。」
 可奈は、もちろん、ためらってしまった。しかし、何十年と、味わった足の不自由な苦い思いを、色々と思い出していた。それが、これから消えるとしたら、どんなものだろう、と思った。
 「さあ、早くしなさい。四つん這いに、なりなさい。」
 シャンメルの言葉は、可奈を自在に操った。彼女は、無意識のうちに、その場に両手をついていた。シャンメルは、誇らかに宣言するように指示した。
 「あなたの、お尻を空高く、高く上げて!!」
 その言葉のままに、可奈の腰は空の方を向いた。その時だっ!彼女は、自分の背中に動物の重みをグワーンと感じると、彼女の肛門に、びりびりびり、と鈍痛が走っていった。
 「ああ、痛っ!わーっ、痛いわー。」
山羊のペニスが、彼女の尻の穴に入ったのだ。それは熱を帯びていて、可奈の尻の中を自由に動いた。それは、いちじく浣腸より、大きな感じがする。
 「うっ、ううう。痛いなあーっ。」
 可奈は、ますます呻いていった。段々、山羊のペニスの、その動きは小刻みに、リズミカルになっていく。可奈は、生まれて初めて感じる感覚に陶酔して、我を忘れそうになってしまう。グングングンと、速くなった山羊のペニスの動きが一瞬、停まった。
 「あっ!いやんっ。」
 可奈の肛門の中に、山羊の精液がドっと放出されたのだ。その時、ガサッと大きな音がした。不審そうに横を見た可奈は、その山羊の頭が床に落ちているのに気づいた。後ろを振り向くと、シャンメルが、大なたを構えていた。光る刃物から山羊の血が、ポトポトと、したたり落ちている。
 「山羊の首を・・・シャンメルさん、切り落としたんですね。」
 うつろな眼で、可奈がシャンメルに聞くと、その山羊が横倒れに、どう、と倒れた。シャンメルは、ニッコリと、うなずくと、
 「シェール・ペーテル・ポー・シェッグ・ポー・パーラ。」
と、とても大きな声で叫んだ。それから地面に落ちた山羊の頭を両手で持つと、可奈の足の上に持って行き、その生暖かい鮮血を、たらした。シャンメルは、山羊の頭から血が落ちて、血がなくなるまで持っていなければ、ならなかった。最後の一滴が、ポトンと可奈の足の上に落ちると、シャンメルは、
 「さあ、立ちなさい。そして、歩くのです。」
と冷静に促した。すっと立ち上がった可奈は、両足を動かしてみた。可奈は衝撃的に思った。
 (歩ける!歩けるんだわ。うわあ、あたし、自由に歩けるのー。)
 何とも軽やかに、彼女の両足は身軽なステップを踏んだのだ。
 「シャンメルさん!あたし、信じられないです、こんなのって!」
可奈は、ワクワクとした喜びに満ち満ちて、そう大きな声で叫んだ。
 「はい、魔術は成功しましたよー。とっても、よかったですねー。」
 と朗らかに答えると、シャンメルは、彼女の白い顔に、ふふと快心の笑みを浮かべた。
 
生まれ変わった彼女
 田宮真一郎は、広い公園のベンチで頭を上げると、
「おっと、つい居眠りしてしまった。今日も快晴、いい天気。」
と、独り言を呟いた。(そうそう、あの性魔術の筆を、使ってみるか・・・)彼は、あの美外人女性が、とても奇妙な、性的な事をした絵筆をズボンのポケットから取り出して、握った。(でもなー、今日は、描く物がないなー。若い女だったっけ。又、今度、と・・・・・・)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 
 場所が変わって、時刻は午後六時に、なっていた。白山吾郎と佐山は、それぞれ社長室にいる。吾郎は、
 「どうかね、うちの娘は・・・いいと思うだろう?」
 と佐山に聞いた。
 「はい、お嬢さんは、とても素晴しい方だと思います。」
 佐山は、かしこまって両手を膝の上に載せて答えた。吾郎はニコリとして、
 「素晴しい、か。うちの娘はね、君も見た通り、右足が不自由なんだ。それは、生まれた時からでね。今まで何度も、お見合いをさせたが、すべて全部断られてしまったよ。
あの子の足のせいだろう、ね、多分。」
佐山は、真面目な表情を変えずに、
 「そんな、そんな事は、ちっとも問題じゃありません。それは、確かにマイナスですが、でも、お嬢さんは、それ以外が全部プラスだから、合計すると非常にプラスですよ。」
 「ははは、その表現は、とても面白いなあ。そんな事を、言ってくれたのは、ただ君だけだよ。では、それではウチの娘と、つき合ってもらえるかね?」
 「それは、私は喜んで、お付き合いさせていただきますが、お嬢さまの方は・・・。」
 「それは、おれの方から聞いとくよ。うん、ところで佐山君。今から、一杯やりに行かないか?」
と誘うと、吾郎は、コップをグイとあおる仕草をした。佐山は、即座に、
 「はい、お供します。何処へでも。」
 と即、答えた。それを聞くと、満足した吾郎は立ち上がった。佐山も遅れずに続いて、立ち上がる。二人は自社ビルを出ると、近くにあるバーへ入っていった。その店内は、さ程広くはない。その店の一番奥のテーブルに、二人は向かい合って座った。やって来たコンパニオンに、高級ウイスキーとイカの塩辛を注文した吾郎は、佐山に、
 「まあ、娘をよろしく頼むよ。お願い、この通り。」
と頼み、片手を自分の顔の前に出して、佐山を拝むようにした。佐山は少し驚いた顔で、
 「それでは、もう、まるで私が、お嬢さまと結婚するみたいですね。」
 「おれは、そう願っておるのだ。そういうのは、いけないかな。」
 「それは、でも、それは、お嬢さまの気持ち次第ですよ。」
 「うん、うん、そうだな。そうだとも。そういうことだ。」
 「あの、社長、すみません、あの、ちょっとトイレに行きたいのですが。」
 「ああ。行ってきたまえ。まあ、のんびりと放尿をな。」
 少し慌て気味に佐山は、化粧室へ行った。その時、女性用のドアが開いて、いきなり若い女性が現れた。彼女を見て、佐山はアアっと、声を挙げた。
 「あっ、お嬢さん!」
 だが、その女性は佐山をチラリと見ると、スッとその場を通り過ぎて行った。佐山は、その女を振り返ったが、尿意を我慢しきれず化粧室に入った。三分後、出て来た佐山は店内を見渡すと、さっきの女を捜した。だが、あの女は全然、店の中には、いない。席に戻ると、佐山は吾郎に聞いた。
 「社長、お嬢さんに似た人が、トイレから出て来ましたけど、ご覧になりました?」
 「ああ、見たよ。よく似ていたけど、可奈とは違ったな。」
そう答えると、吾郎は、何故か苦いコーヒーのような顔をした。佐山は、
 「そうでしょう。私は、すっかりお嬢さまと間違えてしまいました。」
 「気をつけないと、いかんな。そういうことに、これからは、ね。可奈は君の嫁さんになる人だよ、自分の嫁さんを間違えては、困るから。」
 吾郎は、又、苦いコーヒーを味わったような笑いを浮かべた。
それから自邸に車で帰ると、吾郎は若い女中から、
 「あの、まだ、お嬢さまが、お帰りになって、おりませんけれども。」
と慌ただしく言われた。
 「何、まだ帰っていない、と?あいつ、何処へ行くか、君に言っていなかったのか?」
「はい、お嬢様は、わたしに何も言われませんでした。」
「困ったな。まさか、あいつ、危険な目に会っているわけじゃないだろうが・・・・・・。」
 吾郎は、ぐっと強く腕組みをした。高級そうな柱時計の長針は、夜の十一時をピタッと指していた。彼は、玄関脇の居間に入って、
 「ちょっと、コーヒーを持って来てくれ。」
と、付いてきた若女中に命じた。
「はい、かしこまりました、急いで。今すぐに、苦くないコーヒーを作らせて、いただきます。」
すぐに高価なコーヒー豆を液体にして、女中がカップに作って持ってきてから、そのままダラダラと一時間が過ぎた。だが、可奈はまだ、帰って来ないのである。
 「おかしいな、おかしな話、お菓子な話?いや、どうしたのだ?一体全体、これは。何か、何処かにある。」
 と独り言を洩らすと吾郎は、娘を待つのを、ようやく、あきらめて自分の寝室へ帰った。
 
 こちらは、魔女シャンメル宅だ。可奈は、広い庭で、そこら中をステッフ゜しながら、 
「魔術って、とても素晴らしいですね。とーっても、素晴らしい。」
とシャンメルに、すごく嬉しそうに話しかけた。シャンメルも又、上機嫌で、
 「ええ、その通りですね。でもね、魔術は、これだけでは、ありません。あなたが毎週一回でも、ここへ来てくれれば、ワタシ色々教えますよ。」
 「本当ですか!それは、うれしいなー、わたし、毎日でも、ここに来たいくらいですわよ。」
そう答えて、可奈は上へ高く高く、ジャンプした。スカートがめくれて、可奈の白いパンティが見えた。
 
 翌朝八時頃、吾郎がダイニングに入って来た時、玄関の方で、
 「ただ今。今、帰りましたわ。」
と声がした。あれは可奈の声だ。若女中は、それを聞いて、慌てて玄関へ走った。そして可奈を出迎えると、
 「お嬢さま、お帰りなさいま、あれっ!」
と大声で叫んだ。それを聞いた吾郎は、籐の椅子から立ち上がると、
 「何だ!?一体全体、どうしたのかね。」
と尋ねる声を出した。と、その時、ダイニングルームに可奈が、元気よく入って来た。吾郎は、
 「おう、お帰、あっ、おまえ・・・その、足は、よくなったのか。それとも、おまえは可奈では、ないのかな?」
 「もちろん、わたし、可奈よ。まいダディ、どうです、びっくりした?」
 「ああ、もちろんだよ、だが一体、どうして、どうやって・・・・・・・おまえの足が、こんなに綺麗に、すっきりと、晴れ渡った富士山の雄姿のように、治ったのだ。」
 「それはねー、それは、これからホイホイ話すわ。ねえ、立水さん、紅茶とトーストを持ってきてよ、お願い。」
 「はい、お嬢様、かしこまりまして御座います。」
 若い女中の立水は、驚いた顔のまま、キッチンへ行った。吾郎は、もう落ち着きを取り戻した顔で、
 「びっくりしたよ、とても。おれは、まさか、あいつが・・・いや、何でもない。」
 それから、不自然に取り繕った顔をした。そして、身を乗り出すと、
 「まあ、この訳を、話してくれないか、可奈?おまえが、知っているのならね。」
 「ええ、ええ、話すわ。だけどね、紅茶が先ですわよ。」
 可奈は、豪華な椅子に綺麗に座ると、父に向かって、にっこりと微笑んだ。その場の空気は今までとは、ドキャーンと変わった。
 
彼女の絵が出来た
  その時、田宮真一郎は、東京、練馬の絵山文房堂にいた。店の主人、絵山好三は、
 「いらっしゃい、おや、田宮さん。珍しいですね。お元気そうで、何よりです。」
と親切な感じで声をかけたのだった。
 「やあ、久しぶり。今日は見せたいものがあるんだ、これだよ。」
 真一郎は、ポケットの中から一本の奇妙な絵筆を取り出した。絵山は、
 「何だ、うちの筆ですね?この前、田宮さんが買っていったものだ。」
 「そうだよ。だけど、この筆は、ぼくが有名になる筆になったんだ。」
 絵山は、白い歯を見せて笑って真一郎を見た。頭がおかしくなったんでは、という眼をしている。
 「それは、それは。ちょっと貸して下さい。あっ、本当だ。これはね、何かの力が入っていますよ。」
 「そうだろう。いやいや、調子を合わせてくれなくてもいいよ。どれ。」
と、渡した魔法の筆を絵山から、もぎ取ると、
 「それじゃ、又ね。今度は、ぼく、有名になっているかなー。」
 と冗談のように言って真一郎は、その店を出て行った。それから街を歩きながら、(今日は何処へ行こうかな?風景なんて描いたって面白くないな。そうだ、人物を描こう。モデルさえ良ければ・・・)と、都合のいい事を考えながら人と、すれ違っている。するとその時、真一郎の眼に一人の女性が映った。(あれだ!あれこそ、おれが描きたかったものなんだ!)と心の中で、真一郎は大きく叫んだ。その女が近くに来た時、(なあんだ、)と、真一郎は溜め息をついていた。(水川マキじゃないか)だが、その女は真一郎を見ると、
 「田宮さん!わたしです。」
と彼を呼んで、立ち停まった。(えっ!?)真一郎は、ぎょっとした顔をした。
 「田宮さんでしょ?あなたは田宮真一郎さんですねー。」
 その女は、美しい声で真一郎に聞いてきた。真一郎は、まごついた顔で、
 「そ、そうだけど、あなたは水川マキさんじゃ・・・・・。」
 「いいえ、違うわ。私は、白山可奈ですよ。」
 「ええっ!!!あの、足が不自由な、いや、不自由だった・・・。」
 思わず真一郎は、とても大きな声を上げてしまった。通り過ぎた通行人が全員、彼を振り向いて行った。真一郎は、
 「だって、前とは全然・・・、あなたが、あの写真の可奈さん?本当かなあ。」
可奈は、微笑んで、うなずくと、
 「そうなのよ。あたし、変わったでしょう。わたしの父だって、びっくり、していたわ。わたしの足が、こんなに自由に、なったんですもの。」
 「一体、どうしてなのか・・・?こんな事が、どうして起きたんだろう。」
 「それはね、これから、お話しするわね。でも、こんな処じゃ、なんだから、ですよ。他へ行きませんか。」
 「そうだねー。よかったらさあ、ぼくのアパートに来ませんか?ここから、歩いて、すぐだから。」
 「そうしましょうよ。それが一番いいこと、です。」
二人は並んで、とっても仲良さそうに、歩き始めた。だが、可奈は以前のように、びっこを引いてはいない。それどころか、どうして!とても流麗な歩き方だ。真一郎の方が、ともすると遅れそうになる。道行く人は、いちいち、可奈を見て通り過ぎて行く。それ程、彼女は美しいのだ。十分ほど歩くと真一郎が、
 「ここだよ。むさ苦しいけど。君、覚えているかな。」
 と指差すと、木造モルタルのアパートが、二人の眼前にあった。可奈は嬉しそうに、
 「覚えていますよ。さあ、中に入りましょうよ。」
 「あ、そうだね。そうそう、その通り。」
 と答えると、真一郎は自分の部屋の玄関に行き、鍵を開けた。そして、ゆっくり可奈を振り返ると、
 「さあ、どうぞ。お入りください。」
 「まあ、ありがとう。お邪魔します。」
 「別に誰もいないよ。気にせずに入ってよ。」
 と軽く言って真一郎が笑った時、ビューッと音がして、背中に羽のついた小さな子供みたいなものが、二人の間を通り過ぎて行った。可奈は、
 「あれっ、何なのかしら、あれ?真一郎さん見えました?、いまの?なんか、羽の生えた小さな子供が飛んで行ったけど。」
 と、とても不思議そうに聞いた。二人が周りを見渡すと、さっきのあれは、もう何処にも見えなかった。真一郎は、
 「うん、何なんだろう?キューピットみたいだったけど、もちろん、あんなものは、ぼくの部屋には置いていないし・・・・・。」
 と言いながら、ドアを開けた。彼は、
 「中で、何かしてたのかなあ・・・。」
と言いつつ、可奈と二人で部屋に入った。彼の部屋に入った可奈は、部屋を見渡すと、
 「まあ、さすがに芸術家の部屋だわ。何かこう、違いますね、普通とは。」
 「何、きたないだけさ。でも、何も変わっていないなあ。さっきのやつは、何も、ここでは、していないみたいだよ。あのキューピット。」
 と話しながら真一郎は、部屋の床に散らばった絵の具を片づける。そして、
 「その辺に座っていいよ、今、何か食べ物と飲み物を持ってくる。」
 「あ、待って。それは、今じゃなくて、いいのよ。あたし、のどは渇いていないから、田宮さん、気にしないでよ。」
 「そうかあ、よし、じゃあ、ぼく、君の絵を描いてみたいんだけどなー。」
 「ええ、いいわよ。もちろん、わたし、喜んでポーズを取ります。どんなポーズでも。」
 「でも、どうやって、君は足を治したの?是非、それを知りたいねー。」
 「それはね、或る外人の女性に、魔術で治してもらったの。とても、とても、とてもそれは、信じてもらえないと思うけど。」
 「ああ、とても、信じられないね。そんなの、ただの偶然かも知れないよ。それは、よくわからないけど、あっ、そうだ!ぼくもね、何やら変な外人の女性に、奇妙な事をしてもらったんだ。」(フフフ)
 「奇妙な事なの?何ですか、それは、どう、奇妙な事なのかしら。」
 「えっとねー、湖に落ちた、その人を助けたらね、ぼくの絵筆に何か奇妙な呪文を唱えて、これで、あなたは有名になります、って言ったんだ。」
 「え?え?え?、どの筆なの?、わたしに、見せてもらえるかしら?」
 「ああ、いいよ。これだよ。この筆さ。これが、その魔法の筆。」
 真一郎は、机の上から一本の奇妙な筆を取って、可奈に手渡した。
 「これが、その魔法の筆なのね?。ねえ、これで、あたしを描いてくださらないかしら?」
 「おう、そうしてみるかあ。やってみるよう。」
 真一郎は、可奈から魔法の筆を受け取ると、そばにあるイーゼルを抱えて持って来た。それから、
 「白山さん、両手を頭の上に、組んでくれないかな?」
 「こうかしら?これでいいですかぁ?」
 「そうそう、そうだ。その感じで、動かないでねー。」