SF小説・未来の出来事8 試し読み

 流太郎と康美は、それぞれが手にしたヘッドフォンのようなものを耳に当てた。ヨハンシュタインは二人に、
「それで、よろしい。目を閉じて。」
と指示する。目を閉じた二人は同じものを見ていた。青い海を、である。白い砂浜、というのは形容詞的なもので、砂は白色のものはなく薄茶色が正確な表現だ。その薄茶色の砂が続く砂浜に、流太郎と康美はいる。自分達の姿を見ると水着になっていた。流太郎は紺色の海水パンツだけ、康美は赤色のビキニだけだ。流太郎は康美のビキニ姿を見るのは初めてだ。そもそも、そういう季節や場所に一緒にいた事がない。
 康美のビキニは極薄で胸の部分は彼女の乳首がハッキリと、浮き出ていた。豊満な康美の乳房はビキニが取れてしまいそうな位な曲線を描いている。二人は砂浜に並んで座っていた。康美の左側に流太郎は座っているので、彼女の左側面からビキニ姿を眺める事になる。日焼けのしていない康美の白い肌は、このまま、ここにいれば少しは灼けるだろう。流太郎が康美の白い肩に右手を回そうとした、その時!目の前の海の水が飛沫を上げ、クジラのような潜水艦らしきものが海面に浮上してきた。その潜水艦の上部が開くと、中から若い女性が体にピッタリとくっついている制服姿で現れ、胸のふくらみを揺らせつつ、
「ようこそ、お二人さん!海底の国、竜宮王国へ御案内します。ここまで、泳いでくるのです。」
と誘った。
 当然の事ながら流太郎と康美は、ためらう。いきなり現れた潜水艦と謎の若い美女、その女性の髪は短く、男性一般の髪の長さだというのも特徴の一つで、しかも赤と黄色に染めている。立ち上がらない二人を見て、その女性は、腰のポケットからピストルのような物を取り出した。それを二人に向けて、
「来ないと撃つわよ!来ても撃つわ。楽に来れるようにね。」
と宣告し、ピストルの引き金を引く。
立ち上がった流太郎と康美に、その謎の美女から放たれたピストルの中身は赤いレーザー光線のようなもので、その怪光線は二人をグルグル巻きにすると一秒よりも短い時間で、二人の体を潜水艦上までワープするかのように移動させた。
潮風の匂いがする潜水艦の上に大きく左右に開いた昇降口が見える。若い謎の美女は、
「私の名はエリオンというわ。さあ、そのエスカレーターに乗って。」
潜水艦なのに下り方向に進むエスカレーターが動いていた。竜宮王国の潜水艦の昇降は階段ではない、というのが豪華な話ではないか。
流太郎と康美は水着のまま、(だって着替える暇は、なかった)オレンジ色の手すりのエスカレーターに乗り、潜水艦の内部へ。エリオンは二人の後からエスカレーターに乗った。
 エスカレーターから降りるとエリオンが二人の先に立って、少し歩くと大きなドアの前に移動した。エリオンは、そのドアの壁に向かって、
「女王様、二人をお連れしました。」
と、お伺いを立てた。若い女王様らしき声が、
「お入り、エリオン。二人を連れて。」
と静かな威厳を持つ響きで指図した。ドアは自動のように左側に開く。その部屋の内部は照明も一段よりも三弾は明るい。部屋の奥に玉座に座った女王は右手に錫杖を持っていた。エリオンは自分の左にいる流太郎と康美に、
「女王様に敬意を示すのよ。わたしのように右膝を曲げて。」
と話すと左足は伸ばしたまま、右足を膝の所で曲げて左足の膝の裏の方に足先をひねった。流太郎と康美はエリオンの動作を真似た。
女王は微笑むと、
「よろしい。右足を戻して。ここは竜宮王国の潜水艦『ウミノソコー』です。博多湾から北に百キロ行った海底に、我が竜宮王国は、あります。」
流太郎は聞いてみる。
「女王様。もしかして、その竜宮王国とは、あの浦島太郎が行った竜宮城の事ですか。」
女王は頷(うなず)くと
「その通り。大昔は竜宮城と地上の民が呼んでいた。浦島が助けた亀は、わたしの祖先が飼っていたもの。そして、その亀は自然界の生き物の亀ではなくて、人工の亀だった。」
康美と流太郎は同時に、
「人工の亀!ですか?!!」
「そうです。普通の亀が人間に助けられたからといって、竜宮城の女王に報告するものですか。第一、自然界の亀が人間の言語を分かるわけがない。浦島が亀が話すのを聞いたとしても、それは、わたしの祖先が作った人工亀が話したのよ。人類も今ではAIなんてものを多少作っているけど、わたしの祖先は浦島太郎の頃に既に人口の亀、そして、それは人工知能を持つ亀を作っていたのよ。で、それを海辺に送り、わたしの祖先が雇った少年たちに虐めさせた。それを見た浦島が人工亀を助け、海の中へ帰してやった。
 人工亀はビデオカメラを持つ二つの目で、その浦島の行為を記録していたの。竜宮城に戻って来た人工亀の脳内とも呼ぶべき場所に記録されたビデオデータを女王はパソコンのUSB端子に似たものでスクリーンに再生し、浦島の行為を確認したわけよ。ついでに、その当時の竜宮城の女王は人工亀に、
「誰に貴方は助けられたの?亀君。」と聞いた。人工亀は、
「浦島太郎さんです。」と答えたの。人工亀は助けられた後、浦島太郎に、
「ありがとう。あなたの御名前は?」と聞いた。その位の質問は出来るような人工知能を与えられているの。浦島は、とてもビックリして、(亀が喋った)と思いつつ、当時の人間らしく(この亀は神様の御使いかもしれない)と思ったのでしょう、
「ぼくは浦島太郎といいます。」と答えたのよ。その記録は人工亀の脳内にあるビデオデータに記録されていたわ。今も残っているから、あなた達に見せるわね。」
女王は近くに立っている若い豊満な肉体の美女、その女性は色白でビキニを着ていた。胸の部分は赤で彼女の股間を隠すビキニは黒色。彼女の腰の括(くび)れと、それに反比例する豊かな尻の部分、上向きの乳首が浮き出ている張り切った乳房は、ビキニが取れそうな位だ。その臣下に女王は、
「カナミ。浦島のビデオを二人に見せなさい。」と命ずる。カナミは深く頭を下げると彼女の長い黒髪と、豊満な乳房は揺れ動いて、
「はい、女王様。仰せの通りに。」と下命を排して、ビデオ機器らしき所に尻を左右に揺らせながら移動した。セクシーな胸を揺らせつつカナミはビデオをスタートさせる。女王の右横にスクリーンがあり、そこに太古の日本の浜辺が現れた。
 二、三人の少年が砂辺の亀を苛めている。
「やーい、亀。陸に上がったら、のろまだなあ。」
ポンと少年は足で蹴る。もう一人の少年は、
「動けないのかよー、おい、亀。」そう言って、又も足蹴り。あと一人の少年は、
「丈夫そうな甲羅だなあー。」と言いつつ、亀の甲羅を足で踏みつける。亀は頭と両手、両足を甲羅の中に引っ込めて耐えた。そこへ浦島太郎が現れる。なお亀に備えられたビデオカメラは目二つのみではなく、甲羅に頭を引っ込めた時は硬い甲羅の中央に小さなビデオカメラがあり、それで映像を記録する。なのであるから、いくつもの視点が人工亀にはある。このカメラの切り替えが行われるなども、竜宮王国の当時としては驚くべき技術が見られるであろう。
もっとも、この竜宮王国の一族は家臣も含めて実は・・・なのであるけれど、それは後述されるであろう。
 浦島は、「君達は、何をしている!やめなさい。亀を苛めては、いけない。」と強く叱りつけた。
少年たちは浦島太郎が村一番の力持ちであることを知っているので、
「ごめんなさい。もう、しませんから。」
と口々に謝ると、全力疾走で浜辺を逃げて行った。そして亀との会話、後日の竜宮城への招待へと映像が続いた。
流太郎と康美は目を最大限に開いてスクリーンを見ている。さて、いよいよ浦島太郎は竜宮城から自分の村へ帰るのだが。
手には竜宮城でもらった絶対に開けてはならない玉手箱を抱え、自宅に帰った。それを見た隣の家の若い娘は薄着になって浦島の家に行き、
「浦島さん、帰ったの?琴代よ、入ってもいい?」
中から浦島は、
「ああ、いいよ。おいで、琴代。」と答える。
古びた家だ。琴代も実は浦島が消えて百年後の、隣の家の娘なのだ。その家では代々、長女に琴代と名付けていた。浦島は玉手箱を畳に置くと、胡坐をかいた。琴代は浦島太郎の前で薄い着物を脱ぐと、彼女は下着など来ていないから、白い乳房と股間の黒い茂みは浦島には丸見えだった。竜宮城で贅沢な生活をさせてもらっていたが、女性との性的遭遇は一切なかった。それで浦島は自分の股間の道具に久しぶりに大量の血液の流入を感じた。それは琴代が上から見ても、明らかに分かる剛棒で、琴代は浦島の前に膝を着くと浦島の着物を剥ぎ取る。全裸の琴代の前に座った浦島も又、全裸になった。逞しい胸の筋肉、二の腕の力こぶの浦島の肉体は、それよりも力の入った長い肉の筒を琴代の股間に向けていた。
「好きよー、浦島さん。」
琴代は自分から浦島に抱き着き、両方の太ももを大きく広げて浦島の前に腰を降ろす。その時、右手で浦島の剛棒を握り、自分の股間の唇に当てて、その柔らかな秘部に導きつつ座ったのだ。それで二人は結合した。浦島は随分、久しぶりに女陰を自分の剛棒で味わいつつ、琴代は自分で大きな尻を前後や上下に揺り動かし、浦島が手で触ってくれない時は自分で自分の乳房を掴むと、体をのけぞらし、
「あはーん、浦島さあん・・・。」と声を上げた。琴代は、そらせた裸身を元に戻した時、浦島の横に珍しそうな玉手箱があるのに気づいた。豪奢な宝石の散りばめられた玉手箱だ。琴代は自分で尻を振りつつ快楽に溺れていながらも、
「浦島さん、その玉手箱は何、あんっ。」
とたずねる。浦島は、
「これか、これはね、開けてはいけない玉手箱なんだ。竜宮城でもらったものだよ。」
「竜宮城って、なんなの、それ、あん、いい。開けてみたーい、わたしいぃっ。」
琴代は右手を伸ばして玉手箱に触ると、そのふたを開けてしまった。すると、中から薄い煙のようなものが出て浦島の肉体を包む。そのあと!見る見る、又見るうちに浦島の肉体は百歳過ぎの老爺の体に変貌したのだ!琴代は自分の柔らかな女唇の中の浦島の硬い大きなものが、皴ばんだ柔らかくて小さな老翁のものになったのを感じた。眼の前の浦島の顔には皺が沢山出て、彼の背中は曲がり、髪の毛と眉毛は雪でも積もっているかのように真っ白になった。浦島は、
「琴代ちゃん、だから開けてはいけない玉手箱だったんだよ。ほら、おらの硬いものも柔らかくなったし、あれ、抜けたよ、琴代ちゃんの女の穴から。」と呟く。
琴代は浦島のモノが抜けたのに気づいたが、
「ごめん。でも、浦島さん、わたしのおっぱいを揉んで、口を吸ってよ。」
と懇願するから、浦島は琴代にキスして彼女の白い大きな乳房を揉んだ。
 今の竜宮城の女王の声が、
「そこで、止めて。カナミ。」と命じる。スクリーンの映像は静止する。女王は少し顔を赤くしていたが、
「これからは老爺の浦島がダラダラと琴代を愛撫するだけで、琴代の上に乗った浦島は腹上死します。そういう映像を貴方達は見ない方が、いいでしょう。琴代は死んだ浦島の前で四つん這いになり、大きな白い尻を突き出して、さめざめとなくのですが。実は、それは玉手箱にあるビデオカメラが記録していたのです。その映像は遠隔で竜宮城に転送され記録された。ところが琴代が、この後、怒って玉手箱を取り上げて畳に叩き付けたので、当時のビデオカメラだから壊れてしまったのよ。その後は、壊れないビデオカメラを竜宮城でも研究したし、完成もしました。」
と誇らしげに可愛らしい胸を反らす女王だ。流太郎は、
「玉手箱にもビデオカメラが付属していたなんて知りませんでした。昔話って簡略化されていますね。」と感心する。女王は、
「それは、琴代とのセックスなんて記述できないでしょ。玉手箱の、その後の話は村人も服を着た琴代の証言で作られたのだから。これはビデオを壊されたので、竜宮城から使者を派遣して、当時の村人に変装させて調査させました。琴代は自分が浦島と性交したとは、村人には話さなかったと証言したのよ。」
康美は感心して、
「昔話って、省略が多いんですね。でも、子供に話したりするものだから、そうしないといけないのかも?」
女王は笑みを浮かべ、
「この場合は琴代は浦島の話が、お伽噺になるなんて想像もしなかったでしょう。自分がセックスしている相手が突然、老人になる事も想像も出来なかったでしょうしね。」
流太郎は、
「本当にビックリしました。そもそも竜宮城に太古から、こんな技術があったなんて驚きです。」
女王は、
「ウフフ。竜宮城で浦島太郎に性的抑圧をかけたのも、わたしの祖先だけどね。そこのカナミはビキニだけど、当時の臣下には十二単の着物を着せていたのよ、だから浦島は竜宮城では女性を認識しなかった。今の女王のわたしは臣下に薄着やビキニを着させています。地球温暖化のせいも少しは、あるのかしら。時君、ね、玉手箱を貴方にも・・・」
流太郎はギクリとする。女王は、
「持たせたいけど、それは今回はしない事にしましょう。エリオン 、二人を元の海岸に戻してあげて。」
「かしこまりました。女王様。」
エリオンは女王に向けて膝を曲げての敬礼をすると、康美と流太郎を女王の部屋から連れ出した。流太郎は疑問を口にする。
「竜宮城には連れて行ってもらえないんですか?」
エリオンは答える。
「何事も女王様の思し召しよ。理由は問わないの。」
潜水艦は海面に浮上した。甲板が開いた潜水艦の上部にエスカレーターで昇った三人は、さっきの海岸を近くに見た。エリオンは二人に、「海の中に飛び込んだら、足が海底に届くから泳がなくてもいいわ。さあ。」
流太郎と康美は青い海に足から飛び込む。二人の足は、ゆっくりと海の浅い底に届いた。二人が振り返ると、潜水艦は既に見えなくなっていた。空からワーンワーンワーンという細かい音がした。二人は空を見上げると、そこには巨大なUFOが空中に静止していた。しかも距離は十メートル上空程度で、横幅が百メートルはありそうな大きさだ。あれが落下したら二人とも即死だ。落下への恐怖に二人は震えんばかりだった。UFOからの黄色い光が二人に照射されると、流太郎と康美は光に包まれて上昇した。一秒以内に二人はUFOの内部に現れていた。かなり広い部屋だった。その奥に玉座のような椅子がある。流太郎と康美は「あっ、あなたは!」と驚きの声を上げた。
 玉座に座っていた女性は若く美しい。長髪の先は彼女の肩の下まである。二人が、さっき会った竜宮城の女王だ。女王は微笑と共に、
「ようこそ。潜水艦からUFOへの移動は、容易(たやす)いわ。UFOを海面下に潜らせると、あのクジラ型潜水艦と接合できる。その接合部から、わたし達はUFOへ移った。これから旅になるから、お二人さん、ゆっくりしていってね。二人用の宿泊部屋も、あるからね。
 わたし達の星は何億光年も地球から離れているけど、二泊三日で到着するわ。スウィフト(註・ガリバー旅行記の作者)も、わたし達の祖先が連れて行ったけど、後に発狂してしまった。今日では、そうならないように注意しています。」

 そこで二人の意識が白昼夢から現実に戻った。ヨハンシュタインは、「お目覚めかな。いい夢を見たようだね、お二人さん。」
と話しかけてくる。手術台のようなベッドに寝そべった二人は、視線を天井からヨハンシュタインに移すと、ヨハンシュタインは、
「起き上がっていいよ。どのような夢だった?」
流太郎「竜宮城の女王に会いました。」康美「あら、わたしも同じものを見たわ。」
ヨハンシュタインは、「二人共、同じ白昼夢を見るようになっている。そういう異星人の発明した機械だ。竜宮城か。なるほど。私は、この機械を竜宮星の女王から下賜したのだよ。数億光年も離れた距離にある、その竜宮星は数千年前に地球に到達できる科学を持っていた。その女王の話によると、博多湾の北の海底に竜宮城を建設したらしい。したがって浦島太郎は博多湾沿岸に住んでいた漁民なのだそうだ。何はともあれ、ドイツから来た私にとっては驚きの昔ばなしさ。まだ色々な異星人から貰った機械があるのだが・・・。それは又、これからの機会に。」
窓の外の太陽は既に消えていた。時刻は日没後の時間を迎えている。流太郎と康美はUFO研究センターを辞去した。大通りへ向かう小道には人は二人以外、いなかった。突然!空から赤い光が降り注ぐと流太郎と康美は上空に静止する巨大なUFOに吸い上げられて行った。

 それは、さっき流太郎と康美が寝転んで見た白昼夢の巨大なUFOそのもので、その内部に運ばれて立った二人は目の前に、あの女性が座っているのを見た。そう、竜宮城の女王だ。女王の笑顔に二人は抵抗する気持ちを失った。女王は語る。
「今から、わたしたちの星に向かいます。何億光年か地球より離れているけど二泊三日で移動するからね。最速なら五時間で移動できるけど、船酔いならぬ円盤酔いをされても困るから。」
キューンと上昇するような感覚が二人には感じられた。円盤が上昇して地球の大気圏外へ移動した。それでも円盤の室内には塵一つ動いていない。二人の上昇感覚は錯覚なのだろうか。女王は、
「あなた方の耳の中に、さっき一部のレーザービームの塊を残しています。これが今の円盤が上昇するかのような感覚を引き起こしたのですよ。」と説明する。
二人は納得するが、しかし?このままでは。女王は続けて、
「大丈夫よ。わたし達の星に着くまでには、その赤い塊は消えてしまうから。わたしの背後の壁を見なさい。」
女王の背後の壁は白色だったが、巨大な窓が開くように左右に動くと、ガラス張りのように円盤の外の光景が見えた。宇宙空間だ。まるで星だらけの夜空、宇宙には、こんなに星があるのか。
女王は、
「太古の昔、我々の星でも戦争をしました。それは自分達の星の中ではなく、他の星とです。地球人類は大陸間弾道弾などを誇りにしているようですが、我々の星では星間弾道弾を完成させ、他の知的生命体の星を攻撃したのです。
 それに成功して多くの星を植民地ならぬ植民星にしたのですよ。ある時、その星間弾道弾の着弾地点を誤り、その星に大洪水を巻き起こしてしまった。以来、その星は大量の水を放出し続けています。おかげで我々の祖先も、その星には移れず、それ以来、星間弾道弾の使用は控えています。もう、十以上の植民星があるのですもの。わたし達も満足しないといけません。わたし達の民は、それら植民星からの貢ぎ物で生活しています。地球も我々の植民星にする予定でしたが、星間弾道弾の使用を中断している今は、その予定は中断しています。地球は本当は我々の星の植民星になった方が、いいのですよ。そうなれば百以上もの国を一つに、してあげられるし、労働の代わりに食べ物は買わなくていいように、してあげられる。
税金だって無料にしてあげられます。時君、何か質問がありそうね。いいわよ、わたし、女王が答えますから。」
流太郎は立ったまま、
「税金なしで、大丈夫ですか、国は。」と質問する。女王は、
「ええ、もちろんです。地球という国の公務員を無くすのです。軍隊は一番初めに解体させ、竜宮星の軍隊を駐留させますから。地球防衛軍という名称を付与します。又、政府組織は竜宮星から送る要人で運営しますからね。地球の民から税金なんて取りませんわよ、おほほ。」
女王の顔は二十代半ばの美女、それは外観から見えるだけで実際の年齢は二人には分からない。色白で目は濃い緑色だ。彫りが深く鼻が高い女王は、
「労働時間だって一日に四時間で、いいようにしてあげられるわ。冬季と夏季には一週間の休みを与えます。だからこそ、わたし達の植民星の住民は不満を言わないの。それどころか、彼らは感謝しているわ。それでね、余った時間は何をしているかというと、・・・エリオン、ビデオを見せてあげて、二人に。」
「はい、女王様。御意のままに。」
室内にエリオンは見えないのに、壁から彼女の声がした。女王は二人に、
「後ろを向きなさい。」と命じる。二人が体を反転させると、彼らの目の前の壁がスクリーンになっていた。すぐに映写が始まり、立体映像だった。植民星の優雅な生活という文字が空間に浮かぶと踊りを踊るように動いた。映像は或る都市を映していた。タワーマンションが見える。それも二百階は、ありそうな巨大なものだ。昼の三時らしい。会社が終わったらしく、背広に似たものを着た男性が大勢、その超巨大タワーマンションに帰宅している。エレベーターは、すし詰めに近い、とはいえ、ゆとりはある空間だ。その内の一人の中年男性をカメラは追っている。四十代ほどだろうか。黄色人種で日本人と中国人のハーフみたいな、その男性は玄関を開けて帰宅すると、
「ただいまー。今日から竜宮星の植民地政策が始まったよ。労働時間は四時間になった。」
玄関に出迎えたのは二十代半ばの女性で、その男の妻らしい。
「ほんとー、なの?今から夜まで大分、時間があるわね。どうしよう。」
と妻は答える。
背広とネクタイを脱ぐと男性は、
「急に暇になってもなー、する事がない。」
「まだ、三時だし。今からセックスも、どうかと思う。わよね?」
「ナサリーナ(妻の名前らしい)、いい考えだ。今すぐ、セックスしよう。」
「ええ、ASAP。」
「なに?えーえすえーぴー?」
「やだわ、あなた。知らないの?AS SOON AS POSSIBLEアズ スーン アズ パッセブル(可及的速やかに)っていう意味だわ。」
「ああ、そうか。おれの息子もASAP、なーんて。ね」
その夫婦は全裸になった。夫は
「この前は二か月前か。セックスは。」
「いいえ、三か月前だと思う。残業続きだったもの。」
そこは玄関なので二人は寝室へ行く。タワーマンションの百五十階からの展望は、遠くの海まで見える。ナサリーナは寝室のカーテンを閉めようとした。夫は、
「開けたままで、いいよ。外から見る人もいないしね。」
と妻の後ろから話すと、妻の右手を止める。日焼けした妻の背中と尻。妻の乳房を後ろから夫が揉んでやると、彼女は目を閉じて気持ちよさそうだ。その乳房の後ろの背中はビキニの跡が日焼けしていない。もちろんナサリーナの尻も水着で日焼けしていない。そのビキニの形が妻の白い肌で残っている。その妻の、形よく横に張り出した尻に夫の性器は勢いよく立ち上がり、二人は二心同体となった。夫にとっては勤務中に帰宅して妻とセックスをしているような気分もする。妻のナサリーナは、今、後ろから自分の洞窟に入れているのが夫ではない誰かだと空想すると、今までと違った快楽を感じるのだ。夫のハルキンは一時間も妻と結合を続けたのち、
「おおナサリーナ!カフカが海の中に沈んでいく!」
と訳の分からない言葉を発すると、男のクリームソーダを妻の股間の秘口内に勢いよく、ぶちまけたのだ。それを膣内に感じた妻のナサリーナは、
「ああっ、ハルキンっ、谷の底に落ちるぅっっっ。」
とソプラノの美しい響きで快美感を発した。ハルキンは小さくなったムスコをナサリーナのムスメ(膣内)から離して、彼女の首の後ろに優しくキスをすると、
「とっても、よかった。竜宮王国の植民星になって幸せだよ、ぼくたち。」と話すと、妻のナサリーナは目を開けて、
「カフカって、なんなの?」
「ああ。カフカって地球という星の文学者だよ。凄く昔のね。」
「そのカフカが海の中に沈んだの?」
ナサリーナは窓の外に向けた裸体を室内の夫に向けた。昼間の光に妻の股間の黒い茂みは平日には初めて見たものだ。妻の恥毛は逆巻き、縮れている。ハルキンは、
「別に意味は、ないさ。カフカが海に沈んだら思うだろう気分だったのかもしれない。それより、ぼくの股間をみてごらん。」
ナサリーナは視線を夫の顔から股間に移す。
「まあっ。もう元気なのね。今度は立ったまま、来て。」
ナサリーナが両脚を立ったまま開く。恥毛の下の赤い口も開いた。その時、ホ~、ホケキョウ!と玄関のチャイムが鳴る。このタワーマンションでは標準装備で玄関チャイム音は鶯の鳴き声となっている。ハルキンは黒いパンツだけ履くと玄関へ行き、
「はーい。」と答えると、インターフォンから、
「ムラナミさん、郵便局です。」
ドアを開け、ハルキンは郵便物を受け取った。この星の郵便局員の配達の制服は緑色だ。男性局員はハルキンの股間を見ると、
「ムラナミさん、おっきいですね、あそこ。」
「おれの名前はムラアミだよ。ムラナミでは、ない。」
とハルキンは抗議する。
「すみません。失礼しましたー。」
郵便局員はリュックを背負った背中を曲げて、謝るとドアを閉める。タワーマンションの書留は多いため、リュックに入れて配達している。玄関はオートロックだ。ハルキンは寝室に戻ると、妻のナサリーナは、まだ全裸のままでベッドに腰かけている。ナサリーナは、
「書留なの?それ。」
「ああ、そうだよ。でも、あれが終わった後で、よかった。そういえば平日の昼だもの。郵便局員は来るよなあ。開けてみるか、書留。」
ハルキンは薄茶色の大きな封書を手で破いた。中から出てきたのは、数種類のコンドームだ。ハルキンは思い出した様に、
「ああ、そうそう。お試し価格のコンドームを頼んでいたよ。進化したコンドーム。亀頭にだけ被せるタイプ。更に今、開発中の亀頭の先端の小さな穴だけを覆うタイプ。尿道口を覆うわけだ。」
と手に取って、それらのコンドームを眺めながら妻に話す。ナサリーナは、
「亀頭にだけなら亀頭冠に引っ掛ければ、いいけど。」
「ああ、亀頭のカリにね。」
「尿道口だけなら射精したらコンドームは外れないのかしら。」
「それが最先端のコンドーム技術によって、装着されたままなんだ。どうも、この尿道口タイプのものは長く伸びるらしい。縦に伸びるので、女性としては膣の奥にさらにペニスが進む感覚を味わえる。らしいな。」
「子宮に直接、当たったりして。大丈夫、かしら?」
「その辺はね、子宮を傷つけないように、今度は横に広がるんだって。」
「まあ、ほんとに。だったら、すごいわ。あなた、そのコンドーム。わたしにも触らせてよ。」
ナサリーナはベッドの隣に座ってパンツだけ履いている夫のハルキンから尿道口だけを覆うタイプのコンドームを手に取る。そして、
「ん?んんん?この手触り。ゴムというより人間の肌、それも男性の肌だわ。それに特定すると、亀頭の感触が手に感じられるわ。これ、すごいわー。」
ハルキンは妻を横目で見て、
「それは普及版だよ、だから一般的な男性の亀頭の肌感触だ。さらに凄いのは、この会社、オーダーメイド版もある。頼めば、その男性の亀頭と、そっくりの肌の、まあ亀頭の部分は肌とは言えないかもしれないけど、亀頭の肌触りだね、それをコンドームに再現できるんだよ。」
ナサリーナは特大変に驚いて、
「ええええっ!??だったら、ハルキン。あなたの亀頭の感触も、このコンドームに再現できるのね?」
「そうさー、ただね。お金は、かかるよ。それなりに。安月給のオレでは今のところ、無理かな。部長は愛用しているらしいよ。その尿道口のみ覆うタイプのコンドームをね。」
「部長さんも、産児制限に気を使っていらっしゃるのね。で、で?部長さんのは、そのコンドーム、オーダーメイドなの?」
「らしいよ。ボーナスの一部で作らせたそうだ。なにせねー、作るモノがモノだけに、写真で自分の亀頭を取ってインターネットでメールで送るわけにも、いかない。だから直接、この会社に行って、そこの女子社員に亀頭を触ってもらって。もちろん個室で、らしいけど、その女子社員が部長の亀頭の感触を思い出しながら、それをコンドームに再現したそうだ。それを使ったら、部長の奥さんは大喜びで、
『あなた、とても、よかったわ。薄いコンドームなんてものとは全然、違ったわ。まるでコンドームを着けない時のセックスのようだった。あなたが射精した時は、それが長く伸びて子宮に少し当たって、とても気持ちよかったのよ。』
と感謝されたって、さ。」
ナサリーナは期待感で乳房を揺らせると、
「竜宮王国から来月、コンドーム手当、が出るらしいわよ。今朝のネットニュースで見たの。」
「そうなのか。いいぞ、竜宮王国。我が国では開国以来、一度も、そんな手当はなかった歴史がある。」
「出産庁に申請すれば貰えるわ。来月は婚姻届けを出している夫婦にだけだけど、再来月からは未婚でもカップルなら貰えるんですって。」
ハルキンは思案顔で、
「カップルも出産庁に申請するのか?」
「いいえ。出産庁に行くのではなく、カップルは各地方の保健所でコンドームを貰えるのよ。再来月には各保健所にカップルのためのコンドーム交付室が設けられるそうなの。もちろん、そのためにはカップルで保健所に行かなければ、ならない・・・・・・

 再来月になった。ハルキン夫婦のタワーマンションの地下に住む、そこは分譲ではなく賃貸だが、あるカップルは二十代で収入も低いため、コンドームを保健所に貰いに行くことになった。
ハナリンとユータンのカップルである。ユータンは二十五歳の男性、ハナリンは二十一の女子で、同棲生活を送っている。超巨大タワーマンションの地下五階ともなると家賃も安い。B502号が二人の愛を育む同棲の場所だ。
ハナリンは地球のスマートフォンに似た携帯で、ネットニュースを見ると、
「竜宮王国より未婚のカップルにもコンドーム支給、なんですって。」
パートナーのユータンに話しかける。ユータンは痩せた背の高い二枚目の青年だ。彼は優しく、
「それは、すごい。なにせ、この国のコンドームって、やたら高くて買えなかったよな、ハナリン。」
「そーねー。妊娠したら、どうしよーって感じ、をいつも持ちながらセックスするのも気が気じゃないって感じ、がするもの。」
「おれも射精する度、びくびくするよ。もし妊娠したら、おろさないといけないし。」
「そーよねー。そんな事したら水子になってしまって。水子の祟りって怖いらしいわ。」
「まったく、もー。そんなものは、ないだろうけど堕胎の費用が高いもんな。」