SF小説・未来の出来事9 試し読み

 静枝はカリスキ氏の舌が自分の唇の中に侵入してきたのを感じると、ウム、ウグと声を洩らしつつ、自分の舌をカリスキ氏の舌に絡め合うのだ。カリスキ氏も又、静枝の舌の感触を自分の舌で味わっている。この聴診器のような部分の内部は人間の皮膚に驚くべく程、似ている。謂わば驚似(きょうじ)とでも表現できる、今までの日本語にはない形容詞が現出する。なにゆえ、驚似という日本語がなかったかというと、驚くほど似ているものが存在していなかったという事だろう。この聴診器様の機器の内部は、それに接したものと同化するという特性を持っている。それでカリスキ氏が舌を当てている部分はカリスキ氏の舌と同化しているのである。その感触を聴診器様の部分から先に出ている紐状のもので、静枝の唇に当てられている聴診器様の内部に転送されている。つまり静枝はカリスキ氏の舌を味わう事になる。のみならず静枝はVR(バーチャルリアリティ)の感覚でカリスキ氏の舌が自分の唇の中に入って来た感覚を味わうのだ。なんと驚くべき機械ではないか。
 次にカリスキ氏は静枝の口に当てたものを彼女の陰部に移動して当てた。自分の聴診器のようなものは口に当てたままで。途端に静枝は自分の女性器がカリスキ氏の舌で舐められているのを感じて、
「ああっ、そんなとこを・・・。カリスキさん、でも、気持ちいい。」
と声を洩らした。
驚くべき事だがカリスキ氏の口に当てている聴診器様の内部は静枝の女性器の皮膚感覚へと変質している。それによってカリスキ氏も直接、静枝のオマンコを舐めている感覚を覚え、自分の股間の屹立したものを益々、硬くしてしまう。遂にカリスキ氏は、
「もう、たまらん!堪えきれない。いくぞー。」
と叫ぶと、自分の口に当てている聴診器様のものを自分の股間に当てた。両手が塞がっているのでカリスキ氏は流太郎に、
「時さん、僕のズボンのファスナーを降ろしてくれ。」
と懇望した。流太郎は急いでカリスキ氏のズボンのチャックを下に降ろす。カリスキ氏は、
「パンツから僕のモノを抜き出してくれよ。」
と再び、懇望するから流太郎は素早くカリスキ氏の棍棒のような物を懇望されるがままに、パンツの外へ出す。カリの太いカリスキ氏の棍棒の先端、つまり亀頭部分に氏は聴診器様の内部に当てた。静枝は、
「ああんっ、入ってきてるわっ、カリスキさんの太いものがっ。」
と頭をのけ反らせつつ、乱れて叫ぶ。
カリスキ氏は腰を前後に振り出すと、静枝は「ああんっ、ああんっ、いくぅー。」
と泣くような声を出す。バーチャルリアリティーとして静枝は自分のオマンコの中にカリスキ氏の極太いモノが出入りしているのを実感した。実際的には二人の間は五十センチは離れているだろう。勿論、二人の性器は直接結合しているのではない。聴診器様の内部は空洞であるが、その部分がカリスキ氏に接している部分が静枝のオマンコに、静枝がオマンコに当てられている聴診器様の内部はカリスキ氏の亀頭や肉の竿に変質している。これが竜宮王国が緑星に提供した機器の最先端な性科学用品らしい。竜宮王国の機器は、もっと、これより先を行くものではあろう。が閑話休題(それは、さておき)カリスキ氏と白花静枝は本当に性交しているように顔を上気させ、二人共、尻を振っている。二人の目は虚ろになり、静枝は赤い彼女の舌を唇から出した。その時、カリスキ氏は、
「もう、限界だ。玄界灘にいなくても、限界・・・でるうっ。」
と叫ぶと、聴診器様の内部にドクッ、ドピュウウッと白い精液を大量に射精した。静枝は長い黒髪の頭を、後ろに反らせるだけ反らすと、「はあうんっ、いいいわぁっ。」
とカリスキ氏の射精を本当に受け止めたかのように感じていた。現実にといえば、カリスキ氏の精液が聴診器様の内部から紐を通して静枝のオマンコに当てられた聴診器様の内部に転送される事はなく、ただ、その液体の感覚を静枝のマンコに伝えるだけでは、あるのだが。この辺も、その機器の地球から見れば最先端と思えるもので、液体が身体にかかる感覚を再現させるという、すぐれた代物だ。軽い電子ビームのようなものが聴診器様の内部に出てくる。それが射精された感覚と同じものとなるのだから、驚きだろう。
更に驚きなのは、こういう思わぬ射精の場面を想定されて作られているのか、カリスキ氏の射精された精液は除湿機能で綺麗に消えていた。それにより聴診器様の内部をティッシュで清掃する必要は微塵もないという便利さだ。カリスキ氏は、まだ快感の余韻に浸っている静枝に自分の聴診器様の内部を見せて、
「大丈夫、安心していい。僕の精液は君のオマンコの中に放出されてはいないから。」
と解説した。静枝は閉じていた両眼を開けると、
「なんだ、バーチャルリアリティーだったんですね。でも本当にセックスしているみたいだったわ。カリスキさんって、とってもテクニシャン。腰の降り方がうまいんですもの。わたし、何回も星の彼方にイキました。」
と告白した。カリスキ氏もパンツを自分のモノにかぶせて、静枝にショーツの端から滑り込ませて当てていた聴診器様のものを取り出すと、
「僕も何度もイキそうなのを堪(こらえ)えたよ。本当に君のオマンコに入れている気分だった。」
と打ち明けると、後ろを向き、流太郎と籾山田を散見した。籾山田の顔は半ば呆然、半ばは驚きの表情だった。流太郎の顔は唖然としていた。籾山田は、
「挿入せずに白花君を絶頂に導いたのには驚いたよ。実は私の女房とは私は、夜の営みが随分と御無沙汰なんだ。カリスキさん、よかったら私の女房とも、してくれないか?その聴診器のようなもので。」
と流太郎には驚きの提案をした。カリスキ氏は聴診器様のものをズボンのポケットにしまうと、
「福丘市の職員として、それは出来ない相談です。でも、困っている市民を助けるのも我々の役目。奥さんを抱けるのなら、いただきます。」
と眉毛一つ動かさずに返答した。籾山田は満足げに、
「それは、よかった。私も自分の女房が自分以外の男に抱かれるのを見たかったんだ。それではね、女房の居る部屋に案内する。」
と話すと、長い廊下を歩きだす。方向としては、牧場へ向かう向きとは正反対の向きに。一番奥の部屋のドアを籾山田が開けると、三人は籾山田を先頭に中へ入る。高級ホテルのスイートルームのような部屋だった。窓際のデスクに一人の女性がパソコンに向かっていたが、籾山田達が入ってくると顔を三人に向けて、
「あら、いらっしゃい。あなた、この方たちは?御客さんなの?」
と人妻に見えない初々しさのある美人顔で問いかける。籾山は、
「ああ、そうさ。それもね、おまえには、いい人になりそうなんだよ。」
睫毛の長い籾山の妻は、その睫毛をパチパチと動かすと立ち上がり、
「こんにちわ。ようこそ、おこの島牧場へ。」
と両手を自分の股間に当てて挨拶した。真っ白な肌で両方の瞳は緑色、紛れもない緑本人だ。西洋梨のように下半身が、ふくらんでいるが彼女の首筋は細く、髪の毛は茶色だ。籾山田は妻に歩み寄ると、
「紹介するよ。私の妻で、美秋子(びあきこ)という名前だ。旧姓は春野田(はるのだ)だけど、それは、どうでもいい事だったかな。美秋子、あちらの紳士の右側がカリスキさんだ。」
カリスキ氏は右手で自分の前髪を撫でつけると、
「初めまして、奥さん。カリスキです。」
と自己紹介する。カリスキ氏は、こっそりと口の中で生唾を飲み込んだ。超絶的な美人だ!まるで冷凍睡眠から目覚めたような籾山田の妻、若妻の美秋子。人妻には見えないから倫理的な問題意識もない。中年の籾山田に対して妻の美秋子は二十代半ばか前半に見える。美秋子の服装は上下とも白で、下着も恐らく白色だろう。美秋子はカリスキ氏に微笑むと、
「初めまして。カリスキさん。ここは私の私室でダブルベッドも、あそこにありますわ。」
と部屋の隅を美秋子は白い指で示した。そこには白のベッドカバーが掛けられた柔らかそうなダブルベッドがある。カリスキ氏は咄嗟に(あのベッドで、この美人を抱ける。)と思うと、又、口中に湧いた生唾を飲み込む。
流太郎は別の視点から春野田美秋子を見ていた。籾山田が地球では株式会社夢春の社長の籾山に、そっくりなのと、その妻の美秋子は地球の籾山の妻の美秋に梨二つなほど似ている。西洋梨のような、その姿態もだ。地球の籾山の妻の旧姓は確か、春野だっただろう。こういうのをパラレルワールドと、いえそうだ。美秋子は流太郎を見ると、
「あら、仕事の方は、いいの?時田君。」
と問いかけた。流太郎は、
「は?私は、こちらで仕事は、していませんが。」
「あら、ごめんなさい。うちの従業員の時田に、貴方がそっくりなものですから、ねえ、松助さん。」
と自分の旦那の方を顧みる。籾山田松助は、
「時田は牧場で働いているよ。この人は時さんといって、地球から来たんだ。」
「あら、そうだったの。そういえば目も黒ね。いえ、時田の目も黒いんです。地球からじゃ、なかったわよね?時田は。」
籾山田松助は、それに答えて、
「地球じゃなかったよ、時田は。それよりカリスキさんとセックスしたくないか?美秋子。」
美秋子は恥ずかし気に、
「いやーね、あなた。時さんも、いるし、ね?時さん。」
と言いつつ流太郎を見る。流太郎は、
「それは構いません。奥さんさえ、よろしければ僕は、ここで見させてもらいます。」
旦那の松助は、
「美秋子。時さんも、ああいっているんだ。おまえとは二年も、してないし、すまないと思っている。」
美秋は照れて、
「うふ、そんな事、ここで言わなくても。でも、あなたの前で、わたし他の男の人に抱かれていいの?」
カリスキ氏は、
「奥さん、素肌と素肌を密着させる事を考えると問題意識もあるでしょう。けどね、あなたと私が指先さえ触れることなくセックスをするというのはバーチャルですが可能ですよ。」
と申し出た。美秋子は納得しない顔で、
「バーチャルに?仮想現実って事?空想の世界に耽るとか、そういう事ね。二人で裸になってベッドに座り、おたがいの性器を見ながら・・・というような事かしら。」
「いえー、そんな全裸になるなんて、そこまでしなくても、いいんです。奥さんは下着まででも十分です。」
「下着をつけたままでセックスできるの?」
「それは仮想現実ですから。」
カリスキ氏は美秋子に歩み寄ると、ズボンのポケットから聴診器様のものを取り出した。美秋子は、それを見ると、
「いやーだ、お医者さんごっこね、それを使って。」
「いえいえ、これを、こうやって。」
カリスキ氏は聴診器の片方を美秋子の唇に、片方を自分の唇に当てた。途端に美秋子はカリスキ氏にキスされた気分になる。カリスキ氏が唇を聴診器様のものから離すと、美秋子はカリスキ氏の唇が自分の唇から離れるのを感じた。彼女は残念そうに、
「もうキスをやめるのね。つまらないわ。」
カリスキ氏は、しかし、
「奥さん、僕は、どうも駄目みたいです。」
と乗り気ではない様子だ。きょとんとした籾山田夫妻にカリスキ氏は続けて、
「さっきね、受付嬢の人と・・・。」
美秋子は、
「白花さんね、彼女と・・・?」
「この機械でセックスしてしまって。それで、もう出すものがないみたいで。そうなると男が立たない、というやつでして。」
美秋子はハハハ、と笑い、
「なるほどね、白花さんにだと全部、出してしまっても可笑しくないわ。でも、わたしの体は火照って、しょうがないわ。松助さん、だめなの?今は?」
旦那の松助は、
「今も無理みたいだよ。時さん、君、どう?僕の家内の美秋子と、するのは?」
と打ち水を振るように問いかけてくる。流太郎は美秋子が、あまりにも地球の籾山の妻、美秋に似ているので抵抗はある。それで答えられないでいると、美秋子は流太郎に近づいて彼の股間を右手で触った。まだ流太郎のそれは充血していなかったが、美秋子の柔らかい白い指先が自分の睾丸と陰茎を握るように動かさないので、ついに激しい血流が流太郎の股間に集結した。美秋子は自分の手の中で大きくなった流太郎の息子に、
「すごいわ。若いのね。主人のより硬くて大きいわ。時さん、わたしと、しましょ。」
カリスキ氏は聴診器様のものを流太郎に渡した。それを受け取った流太郎は、
「これなら奥さん、問題ないですよ。」と云うと、
聴診器を自分の口に、もう一つのそれを美秋子の唇に当てた。二人は即座にキスし合っている感覚を覚える。流太郎は、(なんて柔らかで気持ちいいんだ、奥さんの唇は)と感じ、美秋子も、(男らしい唇ね・・ウットリするわ)と眼を細める。籾山田松助は妻の美秋子が従業員の時田とキスしているような気分になる。二人のバーチャルキスは二十分を超えた。流太郎のズボンの股間は今や、破れんばかりの勢いになっている。カリスキ氏は二人の傍から、
「時さん、もう、そろそろ奥さんとベッドへ行って。」
と指導する。
流太郎は一旦、聴診器様のものから自分の口を外し、美秋子を見た。美秋子も唇を聴診器様のものから外すと流太郎の右手を左手で握り、ダブルベッドへと連れて行く。
美秋子はベッドのそばで流太郎の手を離すと、彼に向き合い、服を脱いでいった。流太郎も美秋子と向き合った。白い上着の下は何と黒の下着を美秋子は身に着けていた。彼女はブラジャーを抱きかかえるように両手で握る。すると!黒色だったブラジャーは透明になったのだ。美秋子が両手をブラジャーから離すと、そこには豊満な果実のような彼女の乳房がハッキリと見えていた。なにせ透明なブラジャーだ。ツンと尖った美秋子の赤い乳首も見える。美秋子は次に、股間のショーツに陰部を隠すように両手を当てる。そして両手を外すと、その股間のショーツも透明となっていた。黒々とした美秋子の陰毛は、かなり多い。流太郎は美秋子の透明な下着姿を上から順番に見ている。もはや全裸に等しい美秋子だった。彼女は、
「タッチすると透明になる下着なのよ。地球には、こんなものは、ないでしょ?」
「ええ、ないです。こういった方面に地球の科学は進歩しません、ようです。」
「そうでしょ。それで男は性欲を失いがちかな、主人にも見せたくて。ね、あなた、どうだった?」
と松助を振り返る美秋。松助は、
「よかったよ。少し息子がびくっとしたかな。」
「よかった。今晩、あなたの前で見せてあげる。聴診器みたいなものでバーチャルセックスなんて、わたしには好まれないものね。それよりリアルに近いセックスがしたいの。」
美秋子はベッドわきのタンスから何かを取り出した。それはクマのぬいぐるみだった。それも分厚いぬいぐるみで、美秋子は、それを流太郎に手渡し、
「服を着たままで、このぬいぐるみを着て、わたしとベッドでセックスしましょ。」
と微笑む。それを身に着けた流太郎は顔は、ぬいぐるみの目だけが空洞になっているから外も見えるが、肝心の男根の部分も厚いぬいぐるみで覆われている。さっきまで元気に隆起していたものも、今は萎びてしまった。それで、
「奥さん、もう全然、立っていませんよ。これでは何にも、なりません。」
「そーお?じゃあ、わたしが、こうすれば?」
美秋子はダブルベッドに仰向けに寝そべると、流太郎に向かって膝を立てて大きく美脚を広げた。彼女の陰部も口を開いた。透明下着なので、それは流太郎にも見えるが自分がクマになったようで、一向に息子は立たない。美秋はベッドに起き直ると、ベッドわきのテーブルからリモコンのような物を取り出す。それを彼女は指で操作した。と、どういう事だろう。
流太郎の脳内に強い電流のような物が走り抜けた。流太郎は、ものを云おうと思ったが、言語は全て忘れていた。とにかく何か叫びたい。ウォーッ、ウォーッと彼は叫んでいた。
 近くにいるカリスキ氏と籾山田は呆気に取られた表情で、夫人の美秋子は透明の下着姿でベッドに座って笑っている。彼は自分の脳内がクマになったと感じた。それは、ぬいぐるみの頭部の内部に、まず電流が走ったような感覚があり、それから言語を失ったような感覚と人間の理性を亡くしたような気持ちになった。眼の前にいるのは透明の下着を身に着けた美人妻だ。クマとしての自分には何の興味もなかった。さっきまで自分は、この美人妻の裸体に近いものを見て下半身の陰茎をあらんばかりに立てていたのだが。
クマ、クマ、クマだ、こんな場所には仲間のクマは、いるはずがない。この外に出よう。きっとクマが、いるはずだ。できればメスのクマに巡り合いたい。クマになった流太郎は施設の玄関に駆け出す。クマになったといっても、ぬいぐるみの中の肉体は人間のままだ。
 施設の玄関に飾ってある高価そうな大きな焼き物の壺を流太郎は右手に取ると、それはカップラーメンのお湯を入れていない状態の重さに感じられた。ウオーッイッ!流太郎は奇怪な叫びをあげると、玄関ドアに、その焼き物の壺を投げつけた。ガシャン!と大音響をあげて壺は細かく割れて落ちた。ドアノブをぬいぐるみのクマの手で開けると流太郎は牧場へ出た。牛、牛、牛の群れが見える。クマなんて何処にも、いないじゃないか。当たり前だ。牧場にクマを飼っている奴など、どの世界にいるんだ。少し先の柵の向こうに森が見える。あの森の中にはクマが、いるかもしれない。クマの流太郎は二本足で走った。ぬいぐるみではないと遠くから見て、そのクマの走り方を見た人は驚いただろう。クマの流太郎は柵を跨ぎ越え、昼なお薄暗い森へと走り入った。
 森の中に一匹のメスのクマがいた。人間の流太郎なら恐怖を覚えるだろう。しかし、今の流太郎の意識はオスのクマなのだ。人間の意識は失っている。そのメスクマは縫いぐるみの流太郎を見ると、オスのクマと思ったらしく、自分の前足を木の幹に掛けて尻を高く突き出した。メスクマは性器を見せている。流太郎は勃起した。すると、それに連動して縫いぐるみの性器を覆っている部分も拡張、拡大したのだ。それでクマの、ぬいぐるみのそれも立身した。そうだ、立身挿入だ!流太郎はメスクマに、のしかかると縫いぐるみで覆われた自分の挿入の道具をメスクマの生殖器に突入させた。獣姦という意識は流太郎には、なかった。メスクマも縫いぐるみのクマとは思っていないようだ。二匹は大木を揺らすほど腰を振った。クマの意識になった流太郎は射精への緊張が人間の時より早い事など、比較する記憶もなく、おっ、という間に射精してしまった。

 施設内では牧場主の籾山田の妻、美秋子が自分の透明になった下着を再び両手で軽く触れると、透明な水着は白色になり、彼女の股間を覆うショーツも彼女の黒き陰毛は反映しなくなった。乳首も同様に見えなくなる。美秋子は手にしたリモコンを操作して、ニヤリと笑みをこぼした。籾山田は、
「何をしたんだ、美秋子。」と聞く。
「クマのぬいぐるみを着た時さんの意識を人間に戻したわ。さあ、外に出ていった時さん、どうなるのかしら?」

 メスクマの前に立っている時流太郎は、意識がクマから人間へと戻った。その途端に目の前に尻を出しているメスクマの姿に恐怖を覚えた。(クマ、だ。こわい。さっきまでは怖くは、なかったのに。)
ただ、メスのクマは気持ちよさそうで、流太郎に襲い掛かってくる気配もない。彼は、そーっと後ろを向くと、ゆっくりと歩き出した。森は、すぐに出た。施設へ帰ろう。牛は流太郎を気にしてもいない。おそらく、ここの牛はクマに襲われた事など一度も、ないのだろう。
立身挿入してしまった。立身挿入?本来の言葉は立身勃起だろう。いや、立身出世だったかな、と流太郎は思惟しつつ、立身勃起という言葉から連想される形態学的なイメージを脳内に沸き上がらせんと試みようとした刹那、施設の入り口は目の前だ。流太郎は美秋子の透明な下着姿を回顧的に想起してしまい、その想起により勃起を惹起されるのでは、と著しく懸念をしたが、さっきの自身の液体放出により、時間の経過が短いために再勃起は現状としては起こってこなかった。
玄関にあるインターフォンから美秋子の声が、
「おかえりなさい、時さん。今、ドアは開くから。」
と聴こえたら、ドアが開いた。中に入って、廊下を一番奥の部屋まで流太郎は歩いた。美秋子のスイートルーム風の部屋のドアは、流太郎が来るのを待っていたかのように自動で開扉した。
 中に入ると牧場主の籾山田が、
「お帰り。君は一時的にクマになったようだね。」
と声を掛けて、ねぎらう。
流太郎はクマのぬいぐるみを脱ぎ捨てると、
「なんだか全く分かりません。自分が人間でなくなり、本当のクマの意識になっていました。さっきはメスのクマと、いや、なんでもありません。」
因みにであるが地球の福岡市の能古島にはクマは、いない。パラレルワールドみたいでも、そういう違いはあるのだ。カリスキ氏は、
「もうすぐ日が暮れるから、おこの島から帰ろう。おこの島には宿泊施設は、ないからね。」
二人は牧場を出て、船着き場まで歩いた。カリスキ氏のスマートフォンが鳴ったようだ。「はい、もしもし。何?地球人女性を連れている?よし、行くよ、今から。」
と答えて通話を切るとカリスキ氏は流太郎に、
「福丘タワーに又、行くから。」
その時、二人の後ろから若い女性の声がした。
「お二人さん!待ってください!」
それは、おこの島牧場で乳搾りをしていた城谷輝美だった。輝美は今は作業着ではなく、私服を着ている。流太郎には益々、輝美は城川康美に似て見えるのだ。輝美は、
「福丘タワーに私も行くんです。連れて行ってください。」
と頼み込むので、カリスキ氏は、
「ああ、いいよ。一緒に行こう。」
三人揃って船に乗り、福丘タワーの近くの船着き場に船が着くのは十分後だった。
福丘タワーの玄関近くに一組の男女が、いた。カリスキ氏、流太郎、城谷輝美と続いて歩いていくと輝美は、
「流一郎さん!待ったかしら?あれ、その人、誰なの。」
と、その男性に声を掛ける。流一郎は、
「やあ、輝美。この人は地球から来た女性だよ。名前を城川康美さんといってね。迷子になったから、僕は、さっきカリスキ氏に電話したんだ。」
流太郎は流一郎という、その男が自分に、そっくりすぎるのを感じた。まるで、そこに鏡があり、自分を映しているような気分だ。だが言わなければ、
「城川君。見つかって、よかった。心配しすぎたよ、本当に。」
康美は、
「時さんも無事で、よかったわ。」
と微笑む。
カリスキ氏は、「その男性は僕の部下なんだ。広いようで狭い福丘市で、よかった。」
その時、又、カリスキ氏のスマートフォンが鳴る。
「はい、あ、これは、どうも。いえ、大丈夫です。二人共、無事でした。ええ、わかりました。」
とカリスキ氏は答えた。通話を切ると流太郎と康美に、
「浜辺へ行こうか。潮風が涼しい。」
歩いてすぐのところが白砂の海辺だ。波は低く、緑色の海。と、その洋上に円盤が突如、現れた。青い光線が空中に静止した円盤から出ると、流太郎と康美は、その光に包まれて円盤の内部へと消えた。
カリスキ氏は右手を高く上げて、円盤に向けて振る。

 円盤の内部にはアフロディナ女王が玉座に座っていた。竜宮王国の絶対的女王だ。女王は、
「どうでした?緑星は、訪問してみて?」
と二人に御下問なさった。
流太郎は、
「驚きの連続でした。まるでパラレルワールドみたいでしたよ。」
アフロディナ女王は得意げな顔で、
「私の指示で緑星は地球に似せたのよ。これから訪問する星は、それとは違った惑星。何かあっても、わたしが手を回して助けてあげられるのは何処の星でも同じ。だから安心していていい。」
「クマのぬいぐるみには驚きましたね。あれも竜宮王国の発明品ですか?」
「もちろんよ。緑星も科学は地球と同じレベル。私達の関与なしには進化できないわ。あのぬいぐるみは、ね。DNAレベルで人間をクマに変えられるという、ぬいぐるみ。緑星の富裕層の一部にしか輸出していないけど。おこの島牧場の牧場主の夫人が持っているなんて、知らなかった。」
アフロディナ女王は流太郎達の行動を逐一、観察しているのだろうか。だとすれば安心していいのか、それとも不安になるべきか、流太郎は迷った。しかし、地球を離れて何万光年かもしれない宇宙にいる今、アフロディナ女王は本当の女神のような存在だ。次に行く星には何が待っているのだろうか。
円盤の窓の外の景色は星々から緑の草原に変わった。もう着陸したらしい。アフリカのようには見えない。気候的にも暑くない。それは熱気は円盤内に、すぐは入ってこないと流太郎は思う。アフロディナ女王は二人に、
「この星に降りて楽しむのよ。危険はあっても大丈夫。さあ、行きなさい。」
円盤の側面が開く。流太郎と康美は円盤の外に出た。二人にも、ためらいはあったが、アフロディナ女王のゆとりのある威厳に気圧(けお)されたようだ。
この星にも酸素はあった。地球と全く同じ大気だろう。地球と全く同じ星が宇宙には、いくつも存在しても不思議ではなく、むしろ当たり前なのではないだろうか。地球が大宇宙で、たった一つだけある星と考える方が狂気じみている。そして地球人類だけが宇宙で唯一、知性を持ち文明を発展させてきた、などという事など、あり得ないのだ。
ただ、流太郎が空を見上げると秋の日差しであり、太陽は二つ、並んで小さく輝いている。アフロディナ女王が乗った円盤は目に見えない速度で空へと消えていた。別の方向からバサバサバサッと大きな鳥の羽ばたくような音が聞こえた。流太郎と康美が、その音に目を向けると巨大な鷹が二羽飛んできて、その太くて鋭い足の爪で二人を掴む。流太郎に一羽、康美に一羽の巨大な鷹が、二人を空中に運び上げると空を低く、飛んでいく。二人は足元を見ることが、できない。五十メートルは上空にいるのだ。遠くに見えるのは小さな都会の街並みで、今、二人が運ばれているのは、その郊外らしい。
 鷹は降り立った。その前に二人を広大な邸宅の庭に降ろした。何かしら、その建物は研究所の持つ雰囲気である。しかも大企業の所有するような上品な外観だ。庭には数本の樹木があり、鷹二羽は、その樹木の枝に飛び移った。
庭というより研究所の敷地内らしい。建物の側面のドアが開いて、白い研究服を着た三十歳位の男性が現れた。地球のサイバーモーメントの黒沢金雄社長が若くなったような顔だ。二人に近づくと、その研究員は、
「ようこそ、我が宇宙生物研究所へ。」
と何と日本語で話したのだ。流太郎は、
「巨大な鷹に連れられて、ここへ運ばれました。助けてください。」
「ええ、もちろんです。でも、あの鷹は我々が飼育しています。研究所近くで不審な人物を見たら、あの鷹は、ここへその人物を連れてくるようになっています。私は所長の銀田(ぎんだ)といいます。」
「私は地球人で時、といいます。UFOから降ろされたんですよ、自分達の意志とは関係なく、。」
「ほ、そうですか。あなた達は恋人同士には見えないが。」
銀田は康美と流太郎を眺める。康美は、
「恋人同士では、ありません。それが何か問題でも?」
「いや、何ね。問題は、ないけど。この星の人口は一億人位で、国というものは一つしかなく、食べ物に不自由は、しません。あの鷹を見ても解ると思うけど。地球という星は食糧問題など、あるでしょう?」
流太郎は地球を思い出しつつ、
「ええ、ありますよ。アフリカなどでは食べ物がなくて、内戦が続いています。でも、それが他の大陸に飛び火する事は、ないんです。
アフリカ諸国は貧困なため戦力も十九世紀程度の装備だったりします。アフリカ人同士が殺し合って、今、アフリカの人口は1000万人位で。百万人位に減ればいい、なんて予測する学者もいますよ。」
「うむ、そんなものでしょう。ここは宇宙生物研究所ですから、貴方方を研究したいんですよ。我々の先祖は日本人であり、この国は日本語です。我々の先祖はUFOによって連れ去られ、この星で降ろされました。ただ、ここは地球の日本列島のような島国ではなくて、横長の大陸です。
 日本の伝承で「神隠し」なるものが、あるが、あれは全てUFOに連れ去られているのです。」
流太郎と康美は簡単に感嘆し肝胆、相照らされてしまう。銀田は流太郎に近づくと名刺を渡した。
宇宙生物研究所・所長 銀田金玉留
流太郎は、それを手にして、
「ぎんだ・きんたまる、さんですか。」
「いや、そうは読まないでください。かねたまる、と読みます。」
「ああ、そうですね。きんたま、と読むとマズイですかね、この星でも。」
「そうだね、きんたま、は、この星でも男性の睾丸の意がありますからね。親が名付けてくれた名前ですけど、少しは、その辺も考えてくれたらいいのに、金が貯まるようにっていう親の希望でした。」
康美は無関心さを顔に出していたが、本当は笑いたさそうだった。流太郎は、
「その親御さんの望み通り、こんな施設を建設出来たわけですね。」
「あ、いいえ。これは国の施設ですよ。私は国家公務員ですから、金は多くは貰えません。地球の日本の国家公務員より安いものです。ただね、この星では食料が安い。フリーエネルギーに近いもので動力を提供している国ですから電気代も安いし、ガス代も安い。これは、後ほど説明しましょう。とりあえず、研究所の中に入りましょう。あなた方を解剖するわけでも、ないので心配なく。ここから逃げようとしても、又、あの鷹に襲われますからね。」
銀田所長は二人を施設に入れた。
白壁と天井と床も白の施設内だ。廊下は広く幅がある。「天狗の部屋」とパネルに表示してあるドアの前で銀田は立ち止まると、二人に、
「これは、まず見ていった方がいい。」
と話すと、ドアノブを捻って開けた。銀田の後に続いて入った二人が見たものは下着姿の天狗で、二人いた。男女の天狗がガラス張りの向こうに、いた。天狗がいる部屋は六畳は、あるだろう。それを見物できるように、なっている。銀田は、
「マジックミラーだ。向こうから、こちらは見えない。」
と説明した。