SF小説・未来の出来事11 試し読み

 人間の船長は、
「ああ、そうしてくれ。もうすぐブルネイだと栄部伊社長に報告するんだ。」

 栄部伊社長の船室にはロボットのマネキンのような像がある。そのマネキンロボットが、
「栄部伊社長、もうすぐブルネイです。」
と口を開いて話した。
新作AVを部屋に投影された立体映像で見ていた栄部伊社長は、
「ああ、ありがとう。君の燃料は、まだ、大丈夫か?」
「気にしないで下さい、社長。自分で補給できます。」
「分かっているさ。君の人工知能の会話力を試したんだ。」
「社長の質問に答えられなくなった時は、私の脳を部品交換して下さいね。」
「そうしよう。そうするともさ。」
栄部伊社長は、それぞれ個室にいる三人に同時に連絡が取れるマイクに向かって、
「又、船を降りて観光できる。その前に水上の町が見れるよ。船室の窓から見れるからね、それは。」
と話した。
正午前の十一時位の時間だった。ブルネイといっても、この星の国の名前でパラレルワールドみたいだが、同じ建物があるわけではない。
地球のブルネイと違って、この星のブルネイの建物は鉄筋であり、ガラス張りの家屋も多い。四人を載せているクルーズ船以外にも、観光船は、よく、その水上都市を回る。
四人は船の窓から、その川の上に立っている鉄筋の建物を見ていた。川の底深くに建物を支える四本の大きな、重い鉄の柱が突き刺さっているから、川面の上、三メートルの辺りに住居の一階がある。
流太郎は驚いたのだ。その一階のガラス張りの川の上の家の部屋で男女がセックスをしているのが見えたからだ。
流太郎は(カーテン位、閉めたらいいのにな。丸々、見え放題だよ。男が四つん這いの女を後ろから突きまくっている・・・。)と思いつつ、眺めている。クルーズ船は最低の速度で川を運行し始めた。
流太郎の室内スピーカーから羽目太郎監督の声が、
「時君。今見えている住民のセックスは撮影自由なんだ。」
と楽しそうに話してきた。
「えっ?本当ですか?僕、カメラないですけど・・。」
「住民からの申し出が、あったんだよ。君ぃ、スマートフォンは持ってるだろ?」
「あ、そうか。この星の女性に貰ったものが、あります。」
「それで撮影できるよ。僕も個人的にスマートフォンで撮影している。縦長の画面は後から編集すればいいし。」
水上の家のガラス窓は大きなもので、レースのカーテンも閉めずにセックスに励んでいる住民達は一軒の家だけでは、なかった。クルーズ船が通過する時に見える方向からだけでも、ほとんど全ての民家は朝から性交に励んでいる。今日は日曜らしい。体位も各家で様々で、ガラス窓の前に裸身の女性が外を向いて立ち、少し開いた脚の付け根を見事に勃起した男のシンボルが、若いその乳房の豊満な女のマンコを激しく出入りしている。
生で見れる水上の家の住民の性交図絵だ。愛空美壺も時々、唾を飲み込んで自分の船室から眺めていた。彼女はポーッとすると、自分の股間に手を伸ばして性唇を両側共に右手の二本の指で、なぞると、
「はあっ、あたしもイキそうっ。」
と快美な艶声を洩らし、右手の開いた人差し指と中指で自分の淫芯と淫唇を愛撫する。彼女は大きく股を広げて、長い髪の頭をのけ反らせた。
 水上街ともいえる地帯には消防署もある。が、火事など一度もないらしく、男女の消防署員が梯子車の高い梯子の上でセックスしていた。男が後ろから女の消防署員の捲り上がったスカートの中の降ろされたショーツの上から極太な欲棒を挿入し、制服の上から女子消防署員の乳房を揉みまくっていた。
愛空美壺はクルーズ船の窓をボタンで押して開けると、涼しいそよ風が彼女の黒髪を優しく撫でた。女子消防署員の大きな快感の声が、窓を閉めていた時よりもハッキリと美壺には聴こえた。

 結局、ブルネイには上陸せずにクルーズ船は先に向かった。栄部伊社長の話では日本の本社に急用が出来たらしい。ブルネイの東にあるパプアニューギニアの南の海上を進むと、南の先の海上にオーストラリアが見えた。
更に東へ進むと、ソロモン諸島を抜けてから、北西に進路を変えた。
栄部伊社長の声が、
「鹿児島の桜島が見えるよー。」
と、みんなの部屋に告げた。なるほど窓の外には白い煙を上げている島が見える。が、それは数分の事。クルーズ船は全速力に近い速度で九州の西側の海を北上し始めた。
 やがて長崎の海を通過して、佐賀県の唐津辺りにクルーズ船は辿り着くと速度を落として、ゆったりと航行を始めた。
だが、しかし、ここは地球の日本ではなく、他の惑星の陽本なのだ。流太郎は船室のマイクで栄部伊社長に質問した。
「今は唐津の海上と思いますけど、地名は、それでいいんですか。」
船室のスピーカーが栄部伊社長の返答を伝える。
「そうだよ。地名はね、陽本は地球の日本と全く同じなんだ。」
「この惑星の名前は、一体、なんというんですか。」
「ああ、やはり陽本語では地球で、いいんだ。」
「でも別の惑星でしょ。」
「そうだね。何万光年は離れている。我々の科学でも地球には行けないね。だけど竜宮王国のUFOに乗せてもらって、私も地球の日本に行った事は、ある。」
流太郎は、その話しに驚き、
「で、どうでした、日本は。」
「あー、AVの卑下は続いているようだね。それはオマンコ行為主体の製作にも原因は、あるだろう。陽本のAVはオマンコ一本鎗では、ないから陽本の基幹産業にも為りえたのだよ。」
そういうものだろう、と流太郎は思った。栄部伊社長は続けて、
「陽本のAVの映像テクニックは、普通の映像より遥か雲の上まで違いがある。100K映像も間近さ。」
うーん、うなるような映像だ、と流太郎は思う。
「その100K映像も我がAVパラダイスの映像技術部で開発したものだ。なお、次は101k映像を開発中なんだ。」
と得意げに話す栄部伊社長である。

 クルーズ船は博多港に到着した。陽本の地名は地球の日本と、ほぼ同じだ。ただ地名は同じでも外観は全く違う。それに陽本の博多湾には空に浮かぶ島の愛高島が、ない。
豪華クルーズ客船を降りた四人は、港に隣接したコンビニに入った。栄部伊社長は先導してコンビニの成人向けコーナーに三人を連れて行く。そこを見ると社長は、
「あったぞ。我が社の最新作が。」と言いつつ指で示した所は、地球のDVDを十六分の一位にしたサイズの大きさが棚に並んでいた。流太郎は、
「随分小さいですね。DVDも、ここまで小さいとスマホでも見れそうな気がします。」
と意見を云うと栄部伊社長は、
「そうだ、その通り。これはスマホで見れるDVDだ。だから、これを装填できるタイプのスマホが今、陽本で売れている。そのスマホも我がAVパラダイスSUで作っている。SUはセックス・ユーティリティーの略ではあるけれど、陽本の携帯業界ではナンバーワンとなった。それもSUが我が社の子会社になり、AVを年齢制限なしに誰でも見れるようにしたのが発展の原因だった。
それにSUは元々、スーパー・ユーティリティーという社名の略語だったけど、我が社の子会社になってからはセックス・ユーティリティーを社名にしている。」
流太郎は、
「未成年には、いいんでしょうかねえ、その社名。」
と聞いてみると、社長は、
「ああ、大丈夫だ。政治屋を抱きこんで国会で法案を通させてある。それに陽本は無修正は当たり前。地球の日本から来た君には説明しておかないとね。」
ニヤリと、そこで笑った栄部伊社長である。社長は手に出来る限りのミニDVDを持ち、レジに立っている若い女性アンドロイドに手渡したのだ。
陽本のコンビニ店員は、すべてアンドロイドらしい。コンビニを出てタクシーに乗った四人だが、流太郎は、さっき見た光景から起こる疑問を口にする。タクシーの助手席に座っている栄部伊社長に、
「コンビニの店員もアンドロイドだったですね。手の動きも器用なモノでした。社長に包装されたDVDを手渡して、「ありがとうございました。」と、お礼を言いつつ見せた笑顔も、並の僕らの日本女性よりは綺麗だったです。ところで、それなら失業者が増えませんか。陽本では?」
博多港からタクシーは東区に向かっているようだ。栄部伊社長は、
「ああ、その点は地球人の君には気になるね。でも、地球だって農耕に従事していた人達が他の産業に移行したように、わが陽本でもだね。そのような産業への移行が、行われた。何処に移ったと思う?時君。」
「あ、ええ。分かりません、今のところ。」
「AV産業に移行したんだ。お陰でAV女優にも男優にも不足はないどころか、陽本の最高学府に入学するより難関な競争倍率になっている位だ。というのもね、陽本で最も初任給の高い産業はAV制作会社で、具体的な社名を上げるとAVパラダイス社の初任給が陽本では一番高い。
それでね、大学生が就きたい職業の一番にAV制作会社とはアンケートには答えていないけど、大卒の応募者を他の業界と比べると、やはりAV制作会社が一番多いんだよ。だからアンケートには、嘘をついているわけだ。陽本経済新聞のアンケートだったけどね。陽経と略して呼ばれているけどね。もちろん紙で発行は、されていないよ。全部デジタルで、のみだ。陽本の経済は陽経新聞で分かるけど、記者の中にはアンドロイドも、いるらしい。」
そうなのか、と流太郎は思った。で、その感想を伝える。
「それで日本の輸出の基幹産業にAVは、なったわけですね。」
「それだけでは、ないと思うが、まあコンビニにも仕事が無くなった女子大生とかが、よく応募してくれるしね。それから家庭教師もアンドロイドを雇う家庭もあるから、大学生のアルバイトも減っているからね。・・・。」

 家庭教師はアンドロイド
 陽本ではロボット産業は家庭教師用アンドロイドを開発した。広い邸宅の場合、買い取って自宅に置いておいてもいいが、その場合、一括払いとなり、高額な価格となる。
大抵の場合、宅配形式の家庭教師アンドロイドの配達と回収が多くの家庭で希望されている。
これら家庭教師アンドロイドは下半身は、彫刻の胸像の下の部分が台になっているように、腕も足もないタイプのモノだった。それを宅配し、二時間後とか三時間後に回収する軽トラックが走り回っている。そうした中でAVパラダイス社は何と、手足のついた、しかも歩ける、手も動かせる家庭教師アンドロイドを開発、販売したのだ。
女性版は家庭教師・ミス・スタディと名付けられたが、ラブドールを身体としている。で、まだ長距離を歩いたりする事は出来ないので宅配形式で運ばれているが、家庭内では歩ける力を持っている。AVパラダイス社としては、その家庭教師アンドロイドが長時間持つように原子力発電タイプを開発中だ。ともあれ、ミス・スタディの体は洋服を着ていても魅力的だ。歩く時はプルン、プルンと大きな尻を左右に振って歩くし、乳房も揺らせている。目は大きく睫毛も長い。
 茨山家では二浪して二十歳になっても受験勉強をしている長男の針摺(はりす)のために、家庭教師アンドロイド、ミス・スタディを頼んだ。
 夜の七時、夕食を食べ終えた茨山針摺は受験勉強に取り掛かろうとしていた。その時、部屋のドアがノックされる。針摺の部屋は六畳で空中浮揚した机と同じく、空中に浮揚した薄型のベッドがある。これらは永久反重力装置によって、永久に宙に浮いたままなのである。
これらの反重力製品は陽本でも一般普及しているわけではない。超金持ち層だけが持っている贅沢品である。ドアのノックの音は柔らかなものだった。それに対して針摺は、
「はい。なんですか?開けていいよ。」
と答えた。
木星の扉が開くと、そこにはモデル並みの美女がスラリと立っているではないか、しかもミニスカートに薄い上着で。その上着の薄さは彼女の、ふっくらとした形の良い乳房を浮き上がらせ乳首まで見えるほどだ。彼女が何も言わないので針摺は、
「どちら様ですか。お初に、お目にかかりますが。」
と椅子に座ったまま、聞いた。彼女は紅の唇を開くと、
「今日から私、貴方の家庭教師になったミス・スタディと言います、よろしくね。」
ミス・スタディは右目でウインクした。針摺は、(なんだ、家庭教師だったのか)と思うと、
「ぼく、数学が苦手なんです。よろしく、お願いします。」
と不得意教科を打ち明けた。ミス・スタディは部屋に入り、ドアを閉めると針摺に近づき、
「私、得意なのは数学だわ。国語は苦手かな。」
「外人だから陽本語は苦手なのですか。」
「いえ、そういう訳ではないわ。ミス・スタディっていうのは通称名。名壷(なこ)って研究所の人が名付けてくれたけど。」
「研究所で働いているんですか。名壷さん。」
「そうね。それより勉強、始めようか。」
「はい、お願いします。」
陽本では高校の教科書も電子書籍である。実は、この電子書籍のリーダーもAVパラダイスの子会社が製作している。社名は「陽本電子書籍ツール株式会社」では、あるが。それをタップして机の上に開いた針摺の背中に覆いかぶさるようにして名壷は豊満な若い体を近づけた。針摺の鼻は彼女の甘い香りを嗅ぎ取った。名壷の右手は針摺の股間に伸びていた。
そこは硬く張り上がったズボンがあり、彼女の右手は、その伸び切ったモノを感じて、
「キミ、元気よく立ってるわよ。ここ。」
と針摺の勃起した筒をズボンの上から軽く握った。針摺は慌てて、
「すみません。名壷先生の匂いと、あっ、それから、おっぱいと乳首が背中に当たってます。」
「うふ。可愛いわね。これじゃ勉強できないわよね。私とセックスしましょ。そうすれば頭もスッキリして、勉強できるわよ。」
名壷は自分から服を脱ぎ始めた。案の定石通り、彼女はノーブラ、ノーショーツだったのだ。肌はミルクのように白く、形のいい乳房は乳首が上向きに尖っていた。腰の上のクビレも彼女の尻の大きさを目立たせる。密生している股間の陰毛は、ところどころ縮れていて、黒いそれは、でもその下の彼女のピンクの縦の女唇を隠してはいなかった。男の亀頭を咥えたくて待っているような、その形は二十歳の受験生、茨山針摺の男の伸縮棒を最大限に伸長させたのだ。
その美裸体を露わに針摺に正面から見せながら、驚くほどの素早さで針摺の衣服と下着を脱がせた。
それから名壷は机に向かって座っている全裸で勃起している針摺に跨ると、自分の右手で彼の膨れ上がった亀頭と硬度を最大限に持つ肉竿を右手で握ると、自分の愛欲の洞窟に沈めて行った。
名壷は深く針摺の剛棒に貫かれ、
「あふん、いいっ、すごーい。」
と叫ぶと、首を斜めに傾け、両手を彼の両肩に掛けて、桃色のスイカのような尻を振り始めた。
針摺は強く柔らかく締め付ける名壷先生の女窟を男の中心棒で感じると、もう堪らなくなり、
「いきます、名壷先生っ。」
と叫ぶと、大量に美女家庭教師の愛欲の洞窟に自分の授精可能液を放出した。
それでダラリと力を失った針摺のモノだったが、名壷の滑るような膣壁に緩急自在に締められると、又、勢いづいて硬直させてしまった。

 四人を乗せたタクシーは東区のアイランドシティに入った。流太郎の知る限り、ここは地球の日本の福岡市東区の人口島、アイランドシティと本当に良く似ている。とはいえ、何処か少しの違いは、ある。
それは福岡市のアイランドシティは企業のビルは少なくて、住宅としてのマンションが多い。ここは、その逆で企業のビルが、ほとんどのようだ。それで看板が多く目につく。それに独創的なビルが多い。Uの逆の形のビル。Ωオメガの字に近い形のビルも見えた。
高層ビルは百階は、ありそうだ。もしかするとAVパラダイスの本社も、ここにあるのでは???と想起する流太郎。栄部伊社長に、
「AVパラダイスの本社は、この人口島にあるんですか?」
と訊くと、
「その通りだ。もちろん最初は君達の星の日本と同じように、AV制作会社は包京にあった。君達の星の東京だね。まあ包京と書くと包茎とも読めるけどね。だもんで、包茎では、いかん皮の向けた亀頭を持とう、という事で、ではないと思うが、うちの親父が福丘市で創業したのがAVパラダイスなんだ。おっ、着いたよ。本社にな。」
タクシーは百階建てのビル、壁面はマジックミラーのような外壁のビルの前に停まった。栄部伊社長を先頭に四人は本社ビルに入る。一階総合受付には総合案内のコーナーがあり、若い女性が全裸で座っていた。でも、彼女はアンドロイドだ。
流太郎は、それは目で見て分かったのだ。栄部伊社長は流太郎の視線を追うと、
「あまり高度な女性アンドロイドを置くと、受付には置けないね。それで少し性能の悪い、外見もアンドロイドと分かるような女性ロボを置いている。だが、それは飽く迄、外見だ。人工知能の方は地球の人間のIQ180位は、あるかな。受付は会社の顔だからね。生身の女性を置くより安上がりになる。それは会社としての経費としては、時間をかけて取り戻すんだが、ボーナスも払わなくて、いいし。原子力エネルギーと電気の二つの動力で動いてくれる。そのうち原子力エネルギーだけにする予定だけど。エレベーターが降りて来た。乗ろうか。」
四人どころか十人は乗れそうな大きな広いエレベーターだ。それがマジックミラーの外壁に沿って上昇するので、高くなると海が見える。クジラが潮を吹いている姿が流太郎には見えた。そのクジラが海面から跳び上がったのだ。ものすごく大きな波が、その周りに起こる。流太郎は、
「イルカ並みですね。」
と感想を伝えると、羽目太郎監督は、
「イルカクジラという名前だよ。クジラにイルカのDNAを混ぜた実験的な新しい哺乳動物で、福丘湾から出ていく事はない。」
「へえ、何故ですか。」と流太郎。
「餌を定期的に福丘市で、やっているのさ。」と羽目太郎監督が単純明快な回答をした。
百階は社長室だけなのでエレベーターが開くと、すぐに社長室に入る事となる。しかし、そこは意外に小さな部屋だった。ビルのフロア全ての広さほどは、ない。その代りドアが幾つも見えるので部屋が沢山あるのだろう。
凹の字型のソファがあり、三人は、そちらに座り社長は凹の字型の前面にあるソファに座った。栄部伊社長は話し始める。
「このフロアはスタジオもあれば、ゲストルームもある。福丘市は陽本の地理的中心ではないので、泊りがけで来るAV女優、男優が泊れる場所があるよ。ドアには、それぞれの部屋の特徴を示す名称が記載されている。そのドアを入ると、そこは豪華なホテルだった、というものさ。」
流太郎と愛空美壺は、ひどく感心したようだ。社長は続けて、
「羽目太郎君も自宅に帰らず、この階にある、ここから行けるホテルに泊まり続けて仕事を時々してもらったりする。なあ、羽目君。」
社長は向き合った場所に座った羽目太郎に目線を向けた。
「そうです。どんな高級ホテルのスイートルームよりも豪華で、本当に有難いですよ、社長。」
社長は、
「いや気に入ってくれて、何よりだ。作っておいて、良かった。時君と愛空さんも泊まって行って、いい。愛空さんには宿泊費を渡すより、その方が、こちらとしても、いいしね。時君は金も持っていないだろう。地球の通貨は使えないしなあ。」
と流太郎の方を向く。流太郎は、
「アイジさんに貰ったクレジットカードは使えませんよ。もう、二度と会わないかもしれないです、アイジさんには。」
栄部伊社長はポンと強く両手を叩くと、
「時君にはウチの専属男優になってもらう。それで生活の心配というか寝る所は、あるしな。マンションに一人住まいするまでは、ここのフロアのホテルに泊まっていいから。気に入ったAV女優との交際は自由だよ、ウチはね。」
と励ますように話す。
 地球から何万光年も離れた惑星でAV男優として働くようになった流太郎。地球での社長、籾山松之助は今、どうしているだろう。サイバーモーメントの黒沢社長は?それに日本は?地球は?どうなったのだろうか。

 籾山松之助は流太郎が、いなくなってからは右腕を失ったような不便さを感じていた。そんな或る日、サイバーモーメントの黒沢社長からパソコンに電話が鳴った。大昔のスカイプに似たものだが、付属装置なしで話せるのだ。それに対応したパソコンの新製品をサイバーモーメント社で開発したというので、昨日、籾山は自分の机の上に届いた箱から開いて、そのパソコンを設置していた。
 ♪ルルル、♪ルルルとノートパソコンが通話が届いた事を知らせる。籾山は、その電話を使うためのノートパソコンのボタンを指で押した。するとパソコンの画面に黒沢社長の椅子に座った姿が映り、
「おはよう、籾山君。どうだね、我が社の開発した新しいパソコン電話は。」
「素晴らしいですよ。画像も鮮明度が違いますね。」
「その鮮明度を、もっと感じられるよ。」
と言い放った黒沢社長の姿は椅子に座ったまま、パソコンから飛び出すと籾山の目の前の空間に停止した。椅子の軸足は床に接しているので、その場に黒沢社長が座っているように見える。籾山は(立体映像だろう。初めて見た。)と思い、
「いや、驚きました。ノートパソコンから社長が飛び出てくるとは。」
「パソコンの画面から映像を投射できる。私の体を触ってご覧。映像だと分かるよ。」
籾山は椅子から立ち上がり、黒沢社長に近づくと、その胴体に触れてみたが籾山の手は、そこを潜り抜けた。籾山の手は奇術のように黒沢社長の腹の中に入っている。籾山は手を抜いた。投射された映像の黒沢社長は笑い、
「わはははは。こちらには何の感覚も感じないね。もし、痛みなどを感じたら、それこそ大変だ。社外では君だけに見れる我が社のサイトを教えよう。URLは・・・。」
黒沢はアドレスを教えた。
籾山はノートパソコンに近づくと、日本製のブラウザを立ち上げ、黒沢に教えてもらったアドレスをキーボードで打ちこむ。すると今まで見た事のないサイバーモーメントのページが出て来た。
火星旅行が出来るサングラス
という製品がある。新商品だ。サングラスをかけると、火星に行けるのだろうか。テレポーテーションするとかして。籾山は、いたく興味深そうに、その黒のサングラスを眺めて、
「火星旅行の疑似体験ですね、黒沢さん。」
と質問した。部屋の中にいる黒沢の映像は、
「そうだよ。サングラスの中に火星の風景や建物が映る。この前、火星人のパリノさんにUFOで火星に連れて行ってもらった時、撮影したものなんだ。欧米の人間は冒涜的なほど宇宙を、そして、その星について妄想的科学の世界に浸らせている。哀れな日本人は、それを愚直にも信じ込んでいる。何せキリスト教の耐えがたいまでの捏造も欧米の人々は信じているから、地球という星の外にある世界なら、どんなものでも信じるだろう。火星は砂漠でないと彼らには困るんだよ。どうしてだか、それが分かるかな、籾山君。」
「さあ?何故ですかねー。」
「アメリカの先行利益のためさ。地球の殆どの人達が火星は砂漠だけ、と思い込んでいる間にアメリカで大量に人を火星に送っては、住めるところを領土にしてしまうんだ。と考えられるね。」
「なるほど。日本が行ける時には火星は、すべてアメリカの領土とか。」
「火星人がいるから、すべては無理だけどね。その問題はパリノさんに訊いてみるのも、いいかもしれない。」
「パリノさんに電話出来るのは黒沢社長だけじゃないですか。」
「君は、まだパリノさんに電話した事は、ないのか。」
「それ専用の携帯電話を持っていませんからね。」
「じゃあ今度、パリノさんに伝えておくよ。ところでね、東京では、ひどい事になっている。」
「ほう。何がですか。」
「ダークフォースが現れたんだ。地球侵略をもくろんでいるらしい。どうも土星人らしいがね。」
黒沢社長の話は、こうだ。
 東京都知事に選ばれた中年の男性は新宿の御釜バーで長いこと働いていたミスター・ドーターという中性子。その男は丸で中性子爆弾のような破壊力を持っているという。
今や東京は日本のオカマのメッカでもある。草食系というよりオカマ系男子の増大は全国一で、男性同士の結婚も日本一の都市、いや世界一であるという。実はオカマのカップルには利点がある。それは男女のカップルには、ないものだ。どういうものかというと、男女のカップル、それは元来、普通は男女、なのだが、ホモカップルの場合、気分次第で男役と女役を逆転できるという事なのだ。
つまり昨日まで女としてのオカマが、ある日突然、男になり、男だった方が女になることが出来るという点にある。又、両方とも女で、いたい場合はレズカップルのようにもなれる。男女の逆転は、一方の男が自分の尻の穴を提供すれば、いい。そうやって首都、東京の男性同士の結婚は増えて来たのだ。
ミスター・ドーターの場合も同棲男性に対して男になったり、女になったりした経験を持つ。
ミスター・ドーター四十歳、戸籍の上では一応、男性。は都知事に就任すると同時に髭を生やし始めた。お釜バーの店の経営は人に任せたが、どこかナヨナヨとした態度や動作は残っているので、ヒゲで男らしく見せようというのだ。
 こんな彼、ミスター・ドーターは政界に打って出る気は、さらさら、なかった。或る日、新宿の店に来た、暗い顔つきの宇宙人みたいな顔の男、その男は山高帽を被り、眼を半分ほど、その帽子で隠してカウンターに座り、となりに座った店の可愛い若いオカマの尻を撫でながら、
「マスター、あんた都知事になる気は、ないかい?」
と尻山益男(しりやま・ますお)に聞いてきたのだ。尻山益男とはミスター・ドーターの本名である。店の源氏名がミスター・ドーターであったわけではなく、彼(?)は愛愛と言うのが源氏名だった。益男は肩より下まで伸ばした髪に右手を当てながら、
「ま!だって、あたし、オカマですもの。立候補したオカマなんて、いませんわ、今まで日本で。と思いますけど。うっふん。」
と自己の矜持を誇るかの返答だ。茶色の背広の上下の宇宙人みたいな背の高い山高帽の男は、
「それは昔や大昔の話だろ。今の日本は、オカマでいっぱい。だから、と言うか、特に東京は多いのさ。それで選挙に当選するというのは数の力で質ではないよ。又、良識あるインテリジェントがオカマを嫌いとは限らないさ。」
と持ち掛ける。益男は、
「そうですね。うちにも学者の先生や作家さんも来ますわ。」
「だろう?ま、作家は良識あるとは言えないかもしれないがね。世の中の常識は覆されるためにあるんだ。アメリカだって大昔、既に黒人の大統領が出ている。そんなのアメリカ開国当時や黒人を奴隷として扱っていた当時には全く考えられなかった事だ。東京都知事にオカマが当選するというのも不思議じゃあない。私達で君を応援する事に決めたんだ。そんなに応援しなくても君は都知事に当選するのは確実と、我々のコンピューターは結論を出しているのさ。」
益男は、この宇宙人みたいな山高帽の男をマジマジと見ると、
「そう・・かも、しれない・・という気がしてきたな。そういえば都内には特に隠れオカマとか隠れニューハーフ?が、いるんですって。とある某有名大学の学長さんも二刀流だとか、聞いたもの。」
「そうだろ?宮本武蔵も二刀流だけど、あっちの方も二刀流だったのでは、という話もある。伊織という養子だか弟子だかは忘れたけど、伊織の尻の穴に自分の一刀流を嵌め捲っていたらしい。」
「そうでしたかー、大昔の剣豪・武蔵。あたしも武蔵の長い竿で尻をついてもらいたいナ。」
夢見る瞳の益男に宇宙人の風貌の男は、
「まるでマスターは娘のようだから、ミスター・ドーターと呼ばせてもらうよ。」
「まあ、嬉しい。素敵なニックネームね。」
このミスター・ドーターが都知事になって、何をおこなっていったのかなどは、その場の誰もが、いや都内の誰もが想像もしなかった事であろう。
ミスター・ドーター、都知事に当選!とネットニュースの一面に載ったのは、それから数か月の後の話だ。対立候補に大差の票を着けてのトップ当選だった。
 ミスター・ドーターは東京都の条例を新しく作り、施行した。同性愛に批判的な記事を出した出版社及び、その国会議員を即日、逮捕させたのだ。東京地方検察庁で起訴された、それらの輩の面々は東京地方裁判所で有罪判決が下り、懲役三年の実刑となり起訴猶予は、なかったのである。というのも当然乍ら陪審員は、すべて同性愛者だったのだ。東京高等裁判所に再審を請求するものの、すべて却下されたのであった。こうしてミスター・ドーターの都政は始まったのである。

・・・。」投影された映像の黒沢社長は語る。
「そんなわけで東京出張の際は気を付けた方が、いい。東京都の条例は他の地方にはない魅力的なもので、いっぱいになっている。」
と皮肉で語るのだ。籾山は警戒するような表情で、
「気楽に東京の街を歩けないようですね。」
と投影されている黒沢社長の映像に答える。
「それは、そうだな。それに、だねー。尻山益男氏はニューセックス党を結成したらしい。」
「そうなんですかー。ニューセックス、ニューハーフではなくて。」
「ああ、ニューハーフなんて、もう古いんだよ。尻の穴を掘られたい時もあるけど、女のマンコも突きたい時がある。そんな人達はニューハーフではなくて、ニューセックスなんだろうなー。」
ニューセックスのオナニーはユニークなものだ。パソコンでデジタルなグラビア美女のフル・ヘアヌードを見る。完全な性転換をしていないので、彼(?)のチンコは立つ。次にパソコンの画面に、もうひとつのウインドウを立ち上げて、筋肉モリモリの男の写真画像を最大幅で見ると、自分の右手は指を揃えて尻の穴に差し入れる。
「あおっ、いい。」
その筋肉モリモリマンに犯されているところを想像するのだ。そして自分の右手の指を尻の穴に出し入れする。チンコは立てたまま。時々、左手で勃起チンコを、しごきつつ、右手は激しく尻の穴を出入りしている。