SF小説・未来の出来事21 未来の自衛隊 試し読み

童貞では、ないだろうと聞かれた積立金策は、
「実は風俗の女以外には童貞なんだ。君の言う事は正しいのかもしれない。」
と苦笑いをしながら、その美女に答える。美女はホ、ホ、ホと笑うと、
「わたしの体で風俗以外の女性にも童貞で、なくなれるわ。」
と言われた積立金策は、好奇心で目を光らせ、
「君の職業は一体、何なんだ?」
「婦人自衛官です。」
おい、積立、仮眠時間は終わったぞ!起きろーっ!
と耳元で声が大音響・ハイレゾ音源で鳴り響いた。積立金策は(そうか、夢を見ていたんだ・・)と気づいた。・・・・・
 という僕の友人の話です。」
と流太郎は荒堀二尉に話し終わった。荒堀二尉は、
「うん。その女性はロボット女兵士だと思う。積立さんは又、出会うだろう、その女性に。」
と話すと続けて、
「ここでは他にも様々な新兵器を実証実験しているんだ。共和党になってから国防予算を飛躍的に増やせてもらえたからね。文官が我が世の春を謳歌した時代は終わった。共和党には幕僚長だった人も多い。今の防衛大臣は、そして、これからも退官した幕僚長が就任していく。それ以外の防衛体制は、ありえないよ。体験入隊さえしたことのない奴らが長らく、日本の防衛大臣とか古くは防衛庁長官だったからね。
 そんな奴らに軍事の何が分かるというんだ。」
ここで荒堀二尉は激怒を、こらえる表情になると右手の拳を握りしめた。
流太郎は賛同して、
「それで素晴らしい新兵器が大型台風のように開発して行けるのだとしたら、古い時代の日本、2020年代のとかの日本より遥かに進歩して行けますね。」
荒堀二尉は満足げに、うなずくと、
「2020年ころまでは特に日本国民自体が自分たちに都合のいい政治屋しか選んでいなかった。老人福祉を優先してくれるとか、そういうのをね。野党も大したのは、いなかったから同じだけど。朝鮮半島からミサイルが飛んできたから日本国民も目を覚ましたんだよ。それで共和党に支持が集まり、新しい時代を日本が迎えた。」
「朝鮮は一つの国に、なったのに何故、ミサイルを日本に飛ばしたのでしょうか。」
「ああ、あれは操作ミスだったらしい。が、どちらにしても東京の上空まで到達する前に撃ち落とし、日本海に沈められたから大事には至らなかったが。
そこで大朝鮮民国に対しても新兵器を開発している我が自衛隊なのだよ。」
「そうなのですか。教えてもらえませんか。無理ですか?」
「いいや、大丈夫だ。でも、くれぐれも口外は、しないように。」
「公害になるから、ですか。」
「いや、他の誰にも喋って貰いたくない、という事だ。その点は、心に置いておくように。」
「分かりました。重々、焼き肉ジュージュー心がけます。」
荒堀二尉はロボット女兵士たちに、
「君達は隊舎に戻るように。今日の私の指揮は終わりだ。」
横並びに一直線のロボット女兵士は、それを聞いて迷彩服を着ると不動の姿勢で、それぞれが敬礼して足早に巨大な演習場を出て行った。荒堀二尉はスマートフォンのような無線機をズボンから取り出すと、
「矢線三尉、BW砲を搭載したもので、やってくるように。」
と命令した。
演習場内の一角から戦車が現れた。荒堀二尉と流太郎のいる場所から百メートルは離れている。その戦車は時速70kmは、あろうかという速度で流太郎の目の前に出現して急ブレーキで急停止した。
戦車の中から迷彩服を着た男性が現れ、荒堀二尉に直立不動の姿勢で立つと敬礼して、
「BW砲、発射準備完了です。」
荒堀二尉も敬礼すると、
「矢線三尉。それではBW砲の試射を行う。この演習場の中央に向けて発射するように。」
「はい、ただちに試射を行いますっ!!」
矢線三尉は戦車に乗り込んだ。巨大な砲門が左右についている大型の戦車だ。時速100kmは出して走行可能なのだそうだ。
茶色の戦車は右側の砲門の角度を上に向けていく。四十五度の角度で停まると、
バシッと光が炸裂したように砲口から光線が発射された。その光は演習場の中央の空間で停止すると、次第に若い女性の姿に変わっていく。
巨大な十メートルは、あろうかと思われる下着姿の若い女性が現れたのだ!
 その姿は流太郎や荒堀二尉の位置からは後姿しか見えない。盛り上がった尻とブラージャーの後ろの紐、どちらも白の下着。立体的にも見える若い女性の下着姿。
 荒堀二尉は無線機で、
「彼女を反転させて、我々の方に姿を向けさせろ。」
と命令した。たちまち、その巨大な美女は体を優雅に旋回させると自分の全身を正面から見えるようにした。
 その顔は白く眼は大きく、鼻筋は通って細い眉毛に長い睫毛。巨大な胸は形がよく、ピンクの乳首は透けて見える。股間を覆っている下着も透けていて、巨大な黒の縮れた陰毛が見えるのだ。
細い肩の両側に垂らした両腕の手の平を前面に向けている彼女は、まるで抱かれるのを待っているかのようだ。
 身長十メートルもある巨人すぎる下着姿の美女が流太郎と荒堀二尉の前に立っている。荒堀二尉は流太郎の股間を観察した。そこは少し盛り上がったようだ。荒堀二尉は(よし、これは上出来だ)と内心思った。何故ならば、ここまで巨大な女性に反応する男性も少ないと思われるからだ。
 無線機が鳴り始めたので荒堀二尉は、それを耳に当てて、
「どうした?矢線三尉。」
「大変なことが福岡市内で起こっているそうです、荒堀二尉。」
「大変な事、とは?」
「福岡市内に巨大なUFOが出現しています。」
「それで、どうした。」
福岡市内の中心にある天神という場所はデパートやビルが立ち並ぶ人口密集地だ。天神中央公園という広い緑の公園があり、そこにはブレイクダンスやギターを片手に歌う若者なども集まってくる。
数百人は、つどえる場所なのだが平日でもクリエイティブ志向の若者や、外回りの営業社員の憩いの場だ。そこへ午前中の今でも数十人の人々がいる。突如、天神中央公園の上空に巨大なUFOが現れたのだ。
いきなり黒い影で公園は覆われた。空を見上げた人々は、
「あっ、UFOだ。どでかいぞっ。」
「ここに降りてくるんじゃないのかー!」
「逃げよー。何が起こるか、分からない。」
と叫びだした。
クリーム色の円盤は徐々に降下し始めた。その円盤の直径は天神中央公園の直径の半分は、ある。
急降下した円盤は急停止した、その高さは公園から十メートルの高さだ。
円盤の底部から黄色の光が放出され、その光は公園に届くと消えた。その光の中に三人の女性の宇宙人が立っていたのだ。身長三メートルの全裸の女性宇宙人。黒髪が二人、金髪が一人で、股間の陰毛も、その髪の毛の色のままだ。公園にいた人々は走って逃げだしたが、三メートルの全裸の女性宇宙人も走り始め、背広を着た男性や、私服の若い男らを、つかまえると地面に軽く押し倒した。
凄い力らしい、その全裸美女たちは巨大で形のいい乳房を揺らせつつ、押し倒して馬乗りになった男のズボンを脱がせ始める。女性とは言え宇宙人で力も強く、また彼女達に見つめられると、その甘い瞳に男たちの下半身は、とろけそうになり勢いよく勃起した。ズボンをおろされパンツから勃起した肉棒を出されても、抵抗できない公園にいる男たち。
 三人の巨大な全裸の宇宙人に男三人は、同時に逆強姦された。騎乗位で彼女達を貫かされたのだ。その女性たちの膣自体も三メートルの身長に、ふさわしいものだったが、締りがよく、搗き立ての餅のように柔らかで、すべすべっとして、なめらかに男たちの勃起肉棒に絡みつく。その気持ちのよさは地球の女の三倍は気持ちよかったそうだ。
・・・・という事態が発生しているそうであります。」
と矢線三尉の興奮気味の声が荒堀二尉の耳に報告した。
 荒堀二尉は(・∀・)ニヤニヤすると、
「それから、どうなっている?その裸の女子宇宙人と男たちは。」
「三人の男は円盤の中に黄色い光線で裸の女性宇宙人と共に吸い上げられたそうであります。」
と矢線三尉は無線機で答えた。荒堀二尉は、
「その円盤は?何処にいる。」
「上昇して見えなくなったそうです。」
「ふーむ。宇宙人に福岡市の男が三人、連れ去られたか。」
荒堀二尉の無線機に赤いランプが光る。緊急連絡の印である。荒堀二尉は、
「緊急連絡が来ている。切るよ、矢線三尉。」
それから赤いボタンを押すと、
「はい。藤丘一尉、こちらはBW砲の実証中です。。」
と答えると藤丘一位の声が、
「他の部隊は緊急体制に入っている。が、君達は新兵器の実証、実験を続けてよろしい。」
「はい、藤丘一尉、続けます。」
「もっとも、これから君達の出動もないとは限らん。その点は心に留めておいてくれ。」
「UFOに男性三人が連れ去られたそうですね。天神中央公園から。」
「そうだ。大勢の目撃者がいる。ネットニュースには、すぐに配信された。戒厳令などは出ないが、福岡市民、特に男性は又、狙われるかもしれん。昼にスマートフォンでニュースなどを見る人たちは驚くだろう。」
「自分も驚きました。」
「そのUFOの目的は男子を連れ去る事らしい。侵略攻撃などは行わないと幕僚の方では判断されている。
で、だ。君らも帰宅途中は気を付けた方が、いいよ。」
「とはいえ藤丘一尉。相手は我々より遥かに、すぐれた方法を持っているはずです。防御手段など思いつきません。」
「そうだろうな。その時は、その時だ。種馬みたいな男が欲しいだけかも知れんからなー。まあ、連れ去られてみるのも一つの方法だ。帰れることがあったら、その時には報告してほしい。」
「そんなー・・、でも、そうするしかありません。」
「では、勤務を続けるように。」
「はい、続行します。」
無線機を切ると荒堀二尉は、
「UFOからの宇宙人女性による逆レイプ事件が発生したらしい。三メートルの身長の宇宙人女性の美女三人が全裸で現れて、天神中央公園の男性三人を公園内で逆レイプして宇宙船で連れ去ったそうだ。
ここは地下施設のため、UFOが現れることもない。まずは安心だよ。しばらく、ここに泊まっていってもらってもいいよ、時君。どうかね。」
「社長に話してみて了解が取れたら、そうしたいです。でも、僕は今まで色々な星にも行っていますし。」
「そう、かね。宇宙人には抵抗がない気持ちか。」
「そう言えるかもしれません。」
「昼に、なったよ。めしに、しよう。ここの地下にも食堂は、あるから。ついて、きなさい。」
そう話すと荒堀二尉は無線機を再び手に取ると、
「矢線三尉、昼めしの時間だ。一緒に行くぞ。」
と話した。

 地下食堂で昼食を終えた三人だった。主に新兵器開発室で使う食堂なので、それほど広くはない。壁にはビキニ女性のポスターが数多く張り付けてある。荒堀二尉は静かな口調で、
「宇宙人の襲来は今、始まったわけだ。しかも、それは裸の美女たちによる逆レイプなわけだ。何処の星から来たのかも分からないのだからな。」
矢線三尉は、お茶を片手に、
「あのような場合、これから自衛隊が出動するんでしょうか。男たちを連れ去っただけなら、軍隊が攻撃してきた訳でもないです。」
と荒堀二尉に尋ねるように話す。荒堀二尉は、
「そうだな。一種の性犯罪・・・にも、ならないな。男を逆レイプしても女の罪には、ならない。円盤で連れ去ったのは誘拐だから自衛隊の出る幕では、なかろう。われわれは待機的状態に置かれると思う。」
流太郎は訊く、
「宇宙的防衛の能力は日本どころか世界中に、ないですよね、今現在も。」
荒堀二尉は、
「そうだな。」
とポツンと答えた。

 この福岡市中央公園の男子の円盤誘拐から防衛省内に宇宙防衛庁が発足した。とはいうものの、宇宙防衛装備は貧弱なものである。空飛ぶ円盤を発見しても攻撃を開始しない限り、静観していなければ、ならない。それに空飛ぶ円盤は視界から消えてしまうものもある。
 今のところ男子三人が円盤に連れ去られただけだ。それ以降、一週間たっても例の円盤は現れてこない。大規模な被害が出ない限り真剣に行動する事もないのが防衛関係の仕事だろう。
 この事件は世界的に有名となっていった。円盤の出現と逆レイプ、そしてレイプされた三人の男性が黄色い光で円盤に吸い上げられるのをスマートフォンで撮影していた人たちも、その場にいたからだ。
その動画を動画共有サイトやSNSに投稿したりしたため、土砂降りの雨のように世界中に拡散された。
Fukuoka ufo
という言葉は全世界で知られることになった。

 午後からの巨大地下演習場では空からの護衛機による作戦が展開された。
荒堀二尉は、これをABD作戦と呼ぶ。グオオーンという凄まじいエンジン音と共に巨大演習場の上空に三機の護衛機が現れた。三機とも急降下すると何かの物体を次々に演習場の中央地帯に落としていく。その後、三機は演習場の外へと飛び去った。
 ネット裏ではなくネット前に立っていた荒堀二尉、矢線三尉、流太郎の三人である。その爆撃を見た流太郎は、
「爆弾では、ないみたいですね。爆発しません。」
と声を上げた。荒堀二尉は微笑して、
「爆発物では、ない。あそこまで行くぞ。」
と二人に声を掛ける。
少し駆け足で荒堀二尉が走り出したので、残ってはならないと二人も走り出す。
爆弾ではない何物かが落ちた場所に三人は辿り着いた。流太郎は落下しているものを見て、
「あっ、これは・・・。」
と声を出してしまった。なんと、そこに落ちていたのはカラーのアダルト雑誌で、表紙は全裸ヌードで美女が椅子に座って大開脚している。その股間には黒の陰毛と、その下の開いた女性器が無修正で写し出されている。
荒堀二尉は両手を腰に当てると、
「ABD作戦とはAはアダルト、Bはブック、Dはドロップの略語で、つまり、これらのアダルト雑誌を敵陣地の最前線に落とす作戦だ。」
と声も高らかに宣言した。
矢線三尉もエロ雑誌の前に立つと、
「これは凄いな。ヨーロッパの女性、から朝鮮、中国、日本の女性も写っていますね。十種類の雑誌みたいですが、日本の女性のオールヌードは日本国内に落下させるのですか。」
と質問した。荒堀二尉は得意げに、
「これらは、その一部でね。全世界各国の若い美女のフルヌード、大開脚して女性器丸見えの雑誌を新兵器開発室で製作している。日本国内に落下させるのは、ありえない話だけど、敵が日本に上陸してきた場合、それは第一に沖縄である。その場合、これらのエロ雑誌を沖縄の海浜に落下させる計画なんだ。」
矢線三尉は感心して、
「マンコは剣よりも強し、ですか。驚いたなあ。」
と発言した。荒堀二尉は、
「これを開発しているのは世界でも我が国だけだ。最前線の兵士たちは性欲が頂点にまで抑えられているから、これを見たとたんに勃起する奴も多いだろう。それから日本の自衛隊は軍事作戦を展開する。」
と話す。矢線三尉は荒堀二尉の顔色を覗うように、
「この雑誌のどれか一つを貰ってもいいですか。」
「ああ、いいよ。これはサンプルだから写真も鮮明度が落ちる。ただし、古本屋には売らないでくれ。」
と荒堀二尉は念を押した。矢線三尉は腰を屈めつつ、
「ありがとうございます。どれに、しようかな。」
と声を出した。荒堀二尉は、
「どれか一冊にしておけ。珍しいのは中国の美女のマンコでは、ないか。」
「そうですねー、あ、これか。」
矢線三尉は表紙が中国美女の大開脚、オマンコ丸出しのものを拾い上げた。そして、
「中国はポルノ禁止だから撮影は困難だったでしょう。うわあ、中国の女のオマンコを見るのは初めてです。」
と感想を漏らしたので、荒堀二尉は、
「香港の女性を採用したよ。香港映画にも出ているそうだ。」
「中国人向けには最高ですね、これ。」
と矢線三尉。荒堀二尉は、
「その通りだ。時君には申し訳ないが、これらの雑誌を差し上げられない。なにせ、武器だからね。」
と流太郎にダメを押した。

 博多湾の海岸線は、かなり長い。その沿道でマラソン大会が行われたりしている。国際的なマラソンの歴史は福岡市では古くからある。その沿道は大きな道路で、もっと北に行くと博多湾の海に面した場所がある。小さな漁船が並んで停泊している場所も一個所ではなく、博多湾を北に取り囲むような地形の、あちこちに見られる。
 漁業に携わる人達も少なくなり、一人で船に乗り漁をしている若者も多い。本池釣次郎も、そんな若者の一人だ。年齢は二十歳、高校を出て最初は親に連れられて漁に出ていたが、二年たつ今、一人で船に乗って海産物を採集している。
 漁師の朝は、とびきり早い。午前四時には船に乗る。本池釣次郎は福岡市西区の小戸という海に面した場所に住み、午前三時半に起きて船に乗るのだ。
イカの墨みたいに黒い闇の中を明るいライトをつけた小さな漁船が博多湾に出ていく。本池釣次郎の乗った船だ。二年も漁をして逞しい体の釣次郎は身長は180センチはある。
 彼は沖に出て投げ網をした。遠くの灯台に明かりが灯(とも)っている。それで真の闇ではないし、釣次郎の乗っている漁船は強い光を発しているので、彼の手元は昼のように明るかった。
 投げ網だけではなく、釣り竿で針に餌を付けて暗い海に投げる。トッポーン!という音を立てて餌の付いた釣り針は醤油のような海面を潜(もぐ)った。
 しばらく待ったが、今日は魚が餌に掛かってこない。いつもなら、もうウキが動くのに。
手ごたえの無さにボンヤリとして沖を見る釣次郎の目に驚くべき光景が見えたのだ。
 暗い海上の上を一人の美女が全裸で歩いてくる。それだけでも釣次郎は腰が抜けるように驚いたが、その美女の髪の毛は膝まである長さで、その白い裸体を薄い黄色の光が覆っているのだ。幽霊か?幽霊に違いない、と釣次郎は思った。もう、その裸女は目の前、五メートルに近づいてきていた。
 幽霊ではない、と釣次郎は思いなおした。何故なら彼女の裸体は白いが透明ではないし、おいしそうな果実のような二つの乳房はプルプルと蠱惑的に揺れている。それにしても彼女は女神のように海の上を歩いてきたのだ。だから人間とは思えない。
 口を開く事も出来ない釣次郎の目前、二メートルに迫った海の上を歩く美女はス~っと空中に浮き上がると、釣次郎の船の上に着地した。釣次郎の右横だ。動けないでいる釣次郎に全裸の美女は、
「驚いても無理は、ないわね。でも、わたしは妖怪でも超能力者でもない。今、あなたが見た海上の歩行は貴方にも出来るのよ。訳は後で話すから、とりあえずはセックスしましょう。」
と話して釣次郎に近づく。
 釣次郎は、その女性の身の回りに輝いていた黄色い光が消えて今は船の明かりで見える姿となっているのに気付く。釣次郎は座ったまま、彼女の方を向き、
「一体、あなたは人間なのですか。」
と訊いた。
「人間だから安心して。」
彼女の手は釣次郎の股間に伸びた。柔らかな手が釣次郎の少し張ったズボンの上から彼の肉息子を掴み、それから、それをパンツの中から引き出すと、釣次郎を仰向けに倒して、海上を歩いてきた美女は釣次郎と裸体を重ねた。
 船の出すポンポンポンポンという音を聞きながら、釣次郎は自分の上で裸体を動かす女神のような女性の性技に圧倒されて、何度も男の精を解き放たれてしまった。
 太陽が水平線に頭の上部を、そのうち出すであろうと思われる薄明かりが海面を照らし出した時、釣次郎の上に乗っていた女神のような裸女は体を離して立ち上がった。
彼らの上空に丸い巨大なUFOが現れていた。そのUFOの底部から黄色い光が、まっすぐに下降して寝たままの釣次郎と立っている女神的美女を包括すると、彼らを円盤内に引き上げていった。

 本池釣次郎が消出した漁船は、やがて海上保安庁に発見された。人の乗っていない漁船が博多湾に漂流していたのだ。数百年前に起こったマリーセレスト号事件のように、この話は世界的に有名になっていくのだが、真相を解明した人物は誰も出なかった。
 本池釣次郎は遠い別の太陽の太陽系内にある地球と、同じような環境の惑星にUFOで連れ去られたのだった。
 円盤内では釣次郎を逆レイプした美女は宇宙服のようなものを身に着けた。縫い目のない服だ、そういうのをシームレスというのは割と知られている言葉で、服を着た美女は全裸の時とは別人のような知性溢れる眼差しで、
「あなたもチンコをパンツの中に、しまいなさい。」
と釣次郎の股間に注意した。
 服装を正した釣次郎は好奇の目で、
「あなたは日本語が、うまいので宇宙人には見えませんよ。顔も日本的美人だし。」
と云うと、
「日本語は勉強しやすい環境にあったの。」
「どういう事ですか。」
「円盤は着陸するわ。私の星に。着いた後で又、話すから。」
その星の大気圏に突入したらしい。空から眺めた、その星は地球と双子のように、よく似ていた。
 しかも日本列島に似た島が見える。違う点は、といえば朝鮮半島が大陸と切り離されていて、福岡県と接続しているところだろう。
長靴の形に似ている朝鮮半島は地球の場合、九州と朝鮮半島の間に対馬が、ある。しかし、その星では対馬はなくて、朝鮮半島の一部が福岡県と地続きになっている。
朝鮮半島の下部の横の広がりは福岡県の幅よりも広いので、そのまま接続は、そもそも出来ないのだ。
 その星の朝鮮半島の上部は海になっている。地球の場合は朝鮮半島の上部は中国とロシアに接している。中国に接している部分が地球の朝鮮半島の大部分で、ロシアとは、ほんの一部が接しているにすぎない。では、その星の朝鮮半島の上部の中国とロシアに接している場所は、どうなっているのか、というと、海になっている。
 それが見えたので釣次郎は、
「朝鮮が日本に、くっついた地形ですね。地球とは違うな。」
と話すと、その星の女性は、
「あれも元々は地球の朝鮮半島と同じように日本とは海で離れていたのよ。それを地形変動兵器で強引に我が国に接続させたの。その前に我が国は地球の朝鮮半島に、あたる国を武力制圧していました。それでも海で離れているため、統治が上手くいかないので、地形変動兵器で朝鮮半島を大陸から切り離し、わが国に接続させたんです。これには、この星の全ての国々は驚きました。
地球にも、ないでしょ?そんな兵器は?」
「ええ、ありえないです。貴女の国の名前も日本ですか。」
「いいえ、陽元(ようげん)といいます。意味の似た名前だけどね。それでさ、我が国の言葉も地球の日本と同じ言葉だよ。ほぼ、同じ。国の名前だけが少し違うのよ。びっくりした?」
「びっくり、しゃっくり、ぼったくり、ですー。」
「はい、わたしの家の屋上に着いたわ。降りようか。その前に、あなたの名前は、釣りをしていたから釣次郎とかじゃないの?」
「ええ、ええ、当たりです。本池釣次郎と、いいます。」
「わたし、銀河無量子(ぎんが・むりょうこ)よ。この星は陽元語で地円、といいます。さ、わたしに、ついてきて。」
銀河無量子が円盤の壁の前に立つとドアが開いた。彼女の尻の後ろから本池釣次郎が外へ出ると、太陽の光が注いだが、地球に降り注ぐ光とは微妙に違うものを釣次郎は感じていた。そらを見上げた釣次郎は、太陽が二つ並んでいるのに気付いた。地球でも同じように、太陽を直接見ることは無理なのだ。それでボンヤリと二つの輝きを釣次郎は見たのだ。
 地円という星に来るなんて、夢でも幻でも考えることも平凡な漁師の釣次郎には、なかった事だ。
プルン♪プルンと大きな尻を左右に振りながら歩き、色気を発しつつ歩く銀河無量子は二十代前半に見える美女。宇宙服はピッタリと彼女の体に装着されているので、尻の割れ目までが浮き出ている。
 ビルの屋上のような場所が彼女の自宅の屋上らしい。その片隅に下へ降りていく階段があった。階段を降りて、すぐ白色のドアがある。それを開けると銀河無量子は、
「中に入るわよ。」
と釣次郎を振り向いて話した。
 その部屋の中は円形の壁と窓を持っていた。四つの角があるのが普通の部屋だ。その角が無くて円で囲まれていて、窓もすべて繋がっていて円形で部屋を取り囲んでいる。体を一回転させれば360度の全ての窓の外から外の景色が見える。
 白い椅子が釣次郎の方に移動してきた。立っている釣次郎の背後に回ると、その椅子は停止した。銀河無量子は、
「客を探知すると自動的に移動する椅子よ。客人が座れる位置まで来ると自動的に停まるの。私は、しばらく立って話すから、あなたは、その椅子に座りなさい、釣次郎君。」
と話して右手の中指と親指でパチン、と音を立てた。催眠術にかかったように釣次郎は後ろも見ずに座ってみると、丁度の位置に自動客人探知椅子は、あった。尻もちを床につくのでは、という懸念も幾分あった釣次郎は、
「いやあ、ピッタリと座れる位置に来ていましたよ。驚きです、これ。」
と正に異星人を見る目で銀河無量子に話すと、
「機械だから間違いないわ。それは、この陽元という国でも高価だから一部の人達しか買っていない椅子。太陽光で充電されるから電気やら、その他のエネルギーは必要ないの。地球の日本も陽元のように発展して欲しいわ。でも、それは無理な話かもね。」
太陽光は、その部屋の全方位的に差し込んできている。銀河無量子は豊かな胸を張ると、
「ここは地球の朝鮮半島のソウルなのよ。私の父は朝鮮県知事をしているわ。父は今は県知事としての仕事で出ているから、この部屋も使えるのね。
父は陽元陸軍大将で、朝鮮方面軍司令官だったけど退官後は県知事になっているわ。」
と話した。
釣次郎は快適な椅子の座り心地を感じつつ、
「選挙で選ばれたんですか、県知事に。」
「いいえ。選挙なんて、ありません。朝鮮方面軍の司令官が退官後になる役職が陽元の朝鮮県知事なのです。朝鮮方面軍は陸軍の兵士だけで二百万人も、います。そのほとんどは陽元人です。朝鮮人は志願しても徹底的に調べ上げ、陽元に絶対服従の人間だと証明されない限り朝鮮方面軍には入隊させません。
 陽元国陸軍は陽元国内に四百万人。中国の満州に二百万人。」
なにか古い時代の地球の日本に似ているようだ。釣次郎は歴史は詳しくない。それで彼は、
「中国の満州?中華人民共和国に、そんな場所は・・・て、それは地球の話ですね。地円にも中国があり、満州があるんですか。満州って、どの辺にあるんですか。」
「それは地球の古い時代の中国と同じ場所ですよ。中国の東北地方です。陽中戦争で陽元が勝利を収めたので、台湾と朝鮮半島と満州が陽元の領土になりました。」
「陽元帝国ですね。天皇は?いますか?」
「陽元には地球の日本のように天皇は、いません。痔民党という愚かな政党が天皇らしき人物を祭り上げようとしましたが、共和党の多数反対により否決されました。陽元も地球の日本と同じ共和党という名前の政党が与党です。」
「痔民党って・・・自由民主党ですか。」
「そうです痔有眠主党ですよ。」
「うわあ、日本の野党の名前ですね。議席は三ぐらいしかない、という。」
「こっちの痔民党は二議席ですよ。笑いで受けたくて政党の名前も痔有眠主党と、つけたらしいわ。」
「自由民主党という名前が笑えるんですかね。」
「だって痔が有る眠りを主にする党なのよ、おかしくないかしら?」
「痔がある?眠り?」
困惑する釣次郎を見て銀河無量子は白板に電子ペンで大きく、
痔有眠主党
と書いた。それを見た本池釣次郎は笑い出し、腹を抑えて、
「その漢字の党だったんですね。おかしいや、それは。受けますよ、笑える。」
銀河無量子は、咳をオホンとして、
「陽元には天皇も歴史上に居ませんから、帝国という名は、どうかというわけ。地球の日本史を勉強した痔有眠主党の議員が発議したらしいのよ。笑いは取っても否決されました。天皇なんて陽元には要りませんから。」
なるほど、と釣次郎は、うなずき、
「日本でも今度、共和党で天皇制を廃止する発議が、ようやく出ましたよ。賛成多数で国会を通過すると思います。宮内庁と神社庁を、まず廃止しました、天皇の給料も昔の四分の一に、してましたが、それで税金で天皇の給料を払わなくても、よくするらしいです。」
銀河無量子は微笑みを浮かべ、
「地球の日本には私、詳しくないのよ。でもね、そもそも地球の日本には五千年前にも人々は、いましたし、国に似たものも、あったと思う。アラハバキの神様を信仰していたのが古代の日本です。
神武天皇は存在したか、どうかは不明ですよ。陽元では、そのようなものは存在していなくて天皇家もありません。それでも釜穴幕府や下戸時代は、あったのね。」
「釜穴幕府?下戸時代?」
「そう、です。釜穴幕府はオカマが開いた政府で、下戸幕府は酒を飲めない人たちが下戸という土地に開いた政府ですよ。でも日本と違って下戸幕府は二十年で討幕されました。
下戸城に大量の酒を放って大政奉還したのよ。その時から陽元の歴史は共和党が開いてきた。日本とはずいぶん違うけどね。
アメリカからベリーという人が来て鎖国を解き、陽元も共和党で国造りしてきました。
釜穴幕府が存在した釜穴は地球の鎌倉と同じ場所にあります。新宿のオカマが別荘とか引退した後の家を持つのが釜穴らしいのね。」
へえええっ、と釣次郎は驚きの表情だ。日本史よりも面白い。銀河無量子は興に乗った様子で続ける、
「アラハバキの神様あたりの話に戻りましょう。これは地球の日本の歴史の話。朝鮮半島は、そもそも日本人が移り住んで支配していたのです。三国史記という朝鮮の歴史書にチャンと記されているのですよ。そもそも神武天皇が日本を統一したとされる年は小さい国が日本には、あちこちにあったとか。で、怪しげな話になりますから。それと天照大神も怪しげな話では、ありますわ。太陽を神様だと信仰していたものが天照大神なのよ。それや、これや、あれやと日本の歴史はオカシナものばかり、我が星の陽元には神話は、ありません。
地球の世界各国でも王権神授説とかファラオは太陽神の子孫とか色々と権威付けを、おこなっています。
 陽元は地球の日本と似ていてパラレルワールドと誤解されそうだけど、実は結構な範囲内で違いがありすぎるみたいね。