SF小説・未来の出来事20 試し読み

と、いう事で流太郎の脳の一部は人工知能と入れ替えられた。医者は、その場の助手達に、
「手術は成功だ。営業に必要な会話が数千万は組み込まれた会話を記憶する人工知能を移植したんだ。日本初、いや、世界初だ。これで彼も、仕事が上手くいくだろう。」
そう話すと医師達は手術室を出て行った。

 一か月後に退院した流太郎は会社に電話すると、社長の籾山は、
「一か月も休んで、何をしていたんだ?」
ガンガンと大声で聞いてきたので、
「人工知能を入れてもらっていたんですよ、ぼくの脳に。」
と流太郎が答えると、籾山は、
「ほおう、そういう手術があるのか。詳しい話は会社で聴こう。今から出てこい、な?」
「はい、只今から出社します。」
と答えてスマートフォンの時計を見ると、午前十一時だった。
楽しい出勤だった。地下鉄の中は人が少ないし、脳の中は何か変わったような気がする。地下鉄のアイランドシティ駅を出ると、歩いてすぐのビルに株式会社夢春はある。マザーズに上場しているが、有名ではないのはサイバーセキュリティの会社が広く一般に知れ渡ることも、ないからだろう。それでも上場企業は株主様のために進歩する必要がある。
そのために、営業は特に必要とされるのだ。いくら技術があっても、人に知られなければ、何の売り物にもならないからだ。
夢のような春を株式会社夢春は目指している、と、かつて社長の籾山は流太郎に話したことが、あった。
と、こうも、ああも思っていると、もう会社のビル。玄関を入り、エレベーターに乗ると、気が付けば流太郎は社長の籾山の方に歩いているのだった。
異次元感覚は脳の、せいか?籾山の声が、
「おはんにちわ。もう昼前だし、おはようと、こんにちわ、だ。脳の手術を受けたのか。どうだ?調子は。」
「すこぶる快調です。営業脳を移植してもらいましたよ。」
「それなら期待できるなあ。さっそく営業に出てもらいたいんだ。福岡市内の会社も、ようやくサイバーセキュリティの重要性に気づき始めたらしい。だから顧客は容易に獲得できる。そこでだ、今回の営業先だが、店舗を持たずに商品を販売している会社に行ってもらう。ネットショップだよ。行先は、ここ。」
と籾山は名刺を流太郎に手渡した。
株式会社 トイザマス 技術部長 
 尾茂茶瓜子
福岡市東区アイランドシティ・ハイランドタワービル

というのが、その名刺だった。流太郎は、
(おもちゃ・うりこ、と読むのだろうな、この名前は。)と
思いつつ、
「それでは、行ってきます、社長。結果は素晴らしいものに、なりますよ。まるでタヒチの空の海のように。」
と言葉を投げかけると出かけて行った。
それを聞いた籾山は、
(ほうう、少し語彙が豊富になったようだな、時は。手術の効果が出ている・・・みたいだなあ。)
と感心していた。

トイザマスという会社も、株式会社夢春と同じ人工島内にある。ハイランドタワービルの一階が一般的な玩具売り場で、地下一階が大人のおもちゃ売り場だった。地下一階の店の奥に、トイザマスの営業本部や業務部、総務部、そして社長室などがある。
 大人のおもちゃ売り場の入り口から入ると、店の奥に流太郎は進んだ。バイブレーター、オナホールなど、大人のおもちゃが行列のように並んでいる。実店舗の大人のおもちゃの店は無人店舗である場合もあるが、ここは有人のようだ。しかも、若い女性が店員として立っている。客も午前中というのに、かなりいる。大半は年金暮らしの老人だ。それも一人暮らしの男性老人が最先端の大人のおもちゃに目を光らせている。
まるで老人のおもちゃ、の店であるかのようだ。立体映像のDVDの売り場には、多くの老人が立っていた。その一角には大型スクリーンが実物大のアダルト映像を流している。それを数十人の男性老人が取り囲んで見物している。一人の老人が声を上げた。
「すごいなー。まるで目の前で、やっているようだよ、この男女。」
別の老男子が、
「女性器丸見え。でも海外ものには見えんなあ。」
その時、風のように飛んできたのが女子店員だ。映像機の横に立つと、
「みなさん、立体映像を御覧いただき有難うございます。この映像は立体に見えるものではなく、本当に立体化しているのです。実際に映像の画面は平坦では、ありません。スクリーンから映像が浮き出ています。横から御覧ください。」
と解説した。老人男性一同は、スクリーンの真横に移動して見ると、確かに映像は裸の男女を立体に映している。素晴らしい映像技術だ。美人の若い女子店員は続けて、
「これだけではなく、もっと凄い機器もありますよ。」
と話すと、老人男性たちは、
「どんなものだい。見せてくれよー。」
「もっと凄いって、どこが?」
「あんた、もしかしてアンドロイド?」
と口々に声を出した。
女子店員は、
「わたしはアンドロイドでは、ありませんよ。新製品はAVメーカーと提携して作られました。こちらです。」
と話して、スクリーンの隣にある大型映像機を細く白い右手で示した。
その機械の画面は高さ二メートル、幅も二メートルの巨大画面だ。これなら実物大の人間が映るだろう。
奇妙な事に、その画面の真ん中より少し下の辺りに何と!オナホールが、あるではないか!
それ以外は電源の入っていない暗い画面だ。流太郎もの老人たちの、すぐ近くで、その新製品の機器と美人店員を見た。美人店員は、その機器の電源ボタンを押して稼働させたのである。
映像は全裸で立っているAV女優を実物大で映した。彼女の股間は黒い茂みの下に女性器が男性器を受け入れたさそうに待ち構えている。
そのAV女優が画面の中央に移動すると彼女の股間の位置はオナホールが隠す形になる。そのオナホールは・・・女子美人店員が、
「このオナホールは、今、画面に映っているAV女優の女性器から形作られたものです。表面的なものではなく、このオナホールには奥行きがあります。画面の内部に埋め込まれているのです。」
老人達は、
「ほー。それは、いいな。」
「ほんとにな。このAV女優と本当に、やっている気分になれるぞ。」
と感心する。彼らの中にはズボンの股間を少し、膨らませた者もいた。美人店員は笑顔で、
「どうですか、みなさん。試してみませんか。実際に嵌められますよ。」
と勧める。老人たちは皆、照れて、
「そんな事、できるほど若くないよ。」
「若くたって、こんなに人が、いるじゃないか。やりかねるよ。」
美人店員は流太郎に気づくと、目をパチリとさせて、
「そこにいる若い男性の方、やってみませんか?」
と明るい声で誘いかける。
老人連中は自分たちの後ろにいる流太郎に気づくと、
「おー、若いの。もうチンコ立っているんじゃないか?」
「そうだ。若い兄ちゃん、やれよ。タダなんだろう、店員さん?」
と言うので紺色の制服を着た若美人は、
「ええ、もちろん無料ですよ。そこの方、AV出演の経験が、おありのようですが。」
図星、だった。でも、流太郎は、
「いえ、仕事で来たんです。御社の技術部長と、お話しするために、ですよ。」
と抗弁すると美人店員は、
「技術部長の尾茂茶で、ございますね。今、連絡を取りますわ。」
と話すとスマホを取り出して番号を押した。
「あ、尾茂茶部長。売り場の色毛です。今、新製品のモニターをしてもらいたい男性が現れまして。で、その方は今日は仕事で、ここへ来たそうです。尾茂茶部長と営業の話があるからと断られました。尾茂茶部長、構いませんよね?この方にモニターに、なっていただいても。」
尾茂茶部長の声は色毛という美人店員にのみ聞こえる。
ーわたしに社用で・・・と、時さんという人が来られる予定だわ。その方は、時さん、じゃないかしら。」
美人店員の色毛は流太郎を見ると、
「時さんという、お名前でしょうか。そちらの方。」
と訊いた。
流太郎は、うなずくと、
「ええ、時・流太郎といいます。」
色毛はスマホに、
「時さんだそうです。部長との時間は大丈夫ですか。」
「あ、大丈夫よ。サイバーセキュリティは我が社では急を要さない。そこでモニターをした後で来ていただいても、いいわよ。」
と明るい三十代の女性の声が答える。色毛はニンヤリとすると、
「時さん。大丈夫だそうです。モニターをした後での面談という事で。」
「そうですか。いや、でも、みなさん、いらっしゃいますから・・・。リオのカーニバルよりも熱い、この場で、なんて。」
老人たちは、
「恥ずかしがる事は、ないよ。」
「そうだ、そうだ、ここでモニターをやる方が、この会社の君に対する印象も、よくなるぞ。その後で営業をすれば、いい。」
と、もっともな意見に流太郎は、
「そうですね。営業前の別仕事、って感じですか。八月の太陽のもとで裸になる気分です。赤裸々なモニター、赤裸々お、って気分ですね。」
老人の一人は、
「前口上は、もういいから。さっさと脱ぎなさい。」
と重い一言に流太郎は、
「はい、脱ぎます、やります、モニターします。略して頭文字でNYM!」
と答えると手早く服を脱ぎ全裸になった。それを見た色毛は、ぱっ、と思わず両手で自分の目を隠したが、すぐに外すと、
「さあ、大画面の前に、どうぞ。」
と右手を前に出して勧める。
流太郎は大画面に接近していき、映像のav女優は立って両腕を抱いてほしいように差し出している。画面に静止したままだ。それに最接近した流太郎は激しく陰茎を屹立させた。両膝を曲げて、又、伸ばすと流太郎のモノはAV女優の股間にあるオナホールに入っていく。
するとAV女優は画面の中で、それを感じているかのような表情になった。観衆の老人たちは、
「おおーっ。」
と声を上げる。
「まるで若い男とセックスしているような顔をし始めたぞ。」
「兄ちゃん、腰を振れようっ。」
「激しく、腰を動かしてーっ、それえっ。」
老人の囃し立てる声を聴いて、流太郎は腰を振ってみた。その腰の動きにつれて締りに強弱をつけるav女優のオナホール。それと同時に画面のav女優も快楽を感じている顔になる。つまり画面のav女優は流太郎の腰の動きに反応しているから、過去に撮影された映像ではないのだ。現在の動きに反応して快感を顔に表す、などは凄い技術である。流太郎は何度か射精しかけたが、それを止めて十分間、腰を振って動きを止めて硬直したままの肉竿を抜いた。老人たちは、
「おーい、もう、やめか。」
「もっと、もっと、突きまくれよー。」
と声を上げたが、流太郎は観衆に尻を向けたまま、素早く下着と服と背広を着ると、くるりと姿勢を老人に向けて、
「それでは、みなさん。失礼しまーす。後は、みなさんでav女優と楽しんだら、どうですか。オナホールの締りの強弱感が絶妙ですよ。八月の太陽の光と五月の爽やかな微風のような体験が出来ます。」
と言うなり、鮮やかな足取りで、その場を去った。奥の部屋の壁に行きつくと、一つのドアが
社員以外の立ち入りは出来ません
と表示されていた。
そのインターフォンのボタンを押すと、
「はい、技術部です。」
と若い女性の声がしたので、流太郎は、
「こんにちわ。サイバーセキュリティの件で、お伺いしております、時と申します。」
答えると、
「ドアを開けますので、お通りください。」
スルーッとドアが開く。
中に入った流太郎は、そこに三十代の眼鏡を掛けた白い上着に灰色のスカートの女性が立っていて、
「ようこそ、時さん。技術部長の尾茂茶です。面談室に入りましょう。」
と話した。時は喫煙室よりも広い面談室に尾茂茶部長の後から、ついて入る。テーブルをはさんで二人は向かい合って座ると、尾茂茶部長の目がキラリと輝いた。彼女は微笑すると、
「うちも顧客が増えてきましたのでサイバーセキュリティが、とても必要になってきました。
それで、そちらのセキュリティー技術で、お願いしたいと思いますのよ、もう、そう決めましたので、話さなくても結構です。」
営業話術は要らないのか、と流太郎は思いつつも、
「なぜ、そう決断されたのでしょう?」
と小刀急入で聞いてみる。尾茂茶部長は、
「それはね。さっきの貴方の行動ですよ。うちの最新鋭のavオナホールに果敢に挑戦してくださった、その熱意を見ると、その会社が分かります。それに、しっかりと勃起されていたしね。銀行でも太古から『朝マラ立たぬ者には金を貸すな。』と言うくらいですし。
だから商談無用ですの。」
なるほど、そういう事か、と流太郎は思った。しかし、何か言わなければ。で、
「もう収穫の済んだ十月の空に残る強い日差しを感じる気がしますが、私として、これで貴社との契約を終え、帰社できます。後で社長の籾山がBDF(ビジネス・ドキュメント・フォーマット「註・株式会社・夢春で開発されたもの。」)ファイルを送りますので、それに記入してください。」
と今後の手続きを説明した。尾茂茶部長は生真面目な顔を緩めると、
「そのファイルは社長に社内のパソコンで転送しますよ。契約が早く終わったから、貴方には時間があるわね。開発中の我が社の商品を見て欲しいのよ。ぜひ、見ていってもらえませんか。」
「ええ、喜び勇んで見させてもらいます。今日は一日、契約の為に時間を取ってもいい、との社長の指示でしたので、十一月の太陽が姿を消すまで、でも構いません。」
「よかった。それでは、ついてきて下さいな。」
面談室を出ると、彼らは別の部屋に入った。その部屋は広くて複数の男女社員が商品の開発や点検をしているようだ。大人のおもちゃ、も大小取り混ぜて並んでいる。大きなモノとしては椅子やソファ、小さなものは小型ローターなどだ。
尾茂茶部長は流太郎を案内しつつ、説明する。円形の置物に人間の両腕のようなものが付いている機器が、あった。それを指さしつつ尾茂茶は、
「これはパイズリ・マシーンです。今は一番、その高さを縮めていますけど、上に伸ばせば高さは二メートルにもなります。やってみますわね。」
尾茂茶は、その機器の円形の部分にある一つのボタンを押した。すると、スーッと縦長の竿みたいなものが、それに付いた両腕と共に上に伸びていき、両腕の位置は一メートル五十センチほどの高さになる。
 尾茂茶部長は別のボタンを押した。すると、たちまち二本の手は女性を背後から抱くような形になると、次に乳房を揉むような手になると、実際に豊乳を揉むような動きを始めた。なるほど、パイズリ・マシーンだ。流太郎は感嘆の声で、
「すばらしい!これは、まだ研究開発中ですか?」
と尋ねると、尾茂茶部長は、
「そうね、今、色々な生身の女性を使って研究中ですけど、簡易版は安い価格でネット通販に出しています。BOPISで買う女性が多いのよ。」
「BOPIS・・?」
「バイ・オンライン・ピックアップ・イン・ストアの英語の頭文字を採ったものね。オンラインでネットで買って、コンビニのような店で受け取るという形の事。」
「ああ、日本でも店置きとかいうアレですね。あれなら女性にも買いやすいでしょう、大人のおもちゃは。」
「それで簡易版では満足されない御客様が増えてきたのよ。もっと性能のいい高級な、大人のおもちゃが欲しい、と。」
室内に若い女性の悶えるような声が響いた。
「あ、ああーっ、あん。」
流太郎は思わず声がした方を振り向くと、椅子に座った上半身全裸の若い女性が、パイズリ・マシーンに後ろから、ふくよかな白い乳房を揉まれているのだった。流太郎は慌てて顔を尾茂茶部長に戻す。尾茂茶部長は眼を細くして、
「ああやって、うちの研究員が自分の体でパイズリ・マシーンの性能向上を実験して研究しています。時さん、あなたはAVに出演した経験が、おありのようだけど。」
と話した。流太郎は耳に、さっきの女性が、
「ああん、ああん。」
と、すすり泣く様な声を出して感じているのを聞きながら、
「ええ、ありますよ。あくまでも副業として、ですけどね。」
尾茂茶部長は深く、うなずくと、
「副業が本業になる人もいますよ。」
と意味ありげな言葉を口にする。続けて尾茂茶部長は、
「うちでも男の研究員は必要です。」
「どういう意味で、ですか。もしかして、この私を・・・。」
「パイズリ・マシーンは機械ですわ。人間の男の貴方に研究員の若い女性の胸を揉んでもらって、その感覚をパイズリ・マシーンの手の感触と比較してもらうとか、必要になります。よろしかったら、時さん、どうですか。もちろん報酬は差し上げます。若い女性の乳房を揉んで、お金が貰えるなんてAV以外には、ないと思いますわ。うちの会社はAVよりも高い報酬にします。どう?」
なるほど、いい仕事だ。しかし、それに、のめり込むと本業が疎かになりは、しないだろうか。流太郎は、耳に時々、聞こえてくる若い女性の研究員がパイズリ・マシーンに乳房を揉まれて悩ましげな声を上げるのを聞きつつ、
「考えさせてください。お返事は、そのうちに、します。」
と返事をした。
尾茂茶部長はニッコリすると、
「ここ以外の場所でも他の製品の研究は進んでいます。少し歩きましょう。」
次の場所では机に座った女性研究員が小さな小指の先ほどの物体を、いじって調整などをしているようだった。
尾茂茶部長は、その女子研究員の傍らに立つと、
「静野(しずの)さん、開発商品名「JV」はテストで使われていますが、その結果は良好ですよ。」
と話しかけると、その研究員の静野は顔を上げて尾茂茶部長を見ると、
「よかった。こんなに小さいのですもの。わたし、自分でも試しましたし、気づかない位でした。」
と喜んで話す。流太郎は分からないので、
「尾茂茶部長、何の話か分かりません。よろしければ、説明してください。」
と云うと、尾茂茶は流太郎の方を向き、白い研究服の背を伸ばすと胸を張り、
「よろしい。話しましょう。実は我々は隠密な行動を取る仕事も依頼されます。その中には対立する企業を潰す、というものも、あるのです。具体的な会社名などは申し上げられませんが、こういう事です・・・・・

 某大企業のビルの一階には受付の女子社員だけが長い時間を、そこで待機している。
そこに対抗企業の依頼したカメラマンが、指定された時間に遠くから望遠レンズのカメラで、受付の女性(もちろん、若い美人)を動画撮影し始める。その会社は、あらかじめ訪問者の時間を受付の女子社員に知らせているから、いつ来訪者があるかを受付の女子社員は知っている。
その時間まで、二時間は誰も今日は来ないのだ。
受付の女子社員は座ったまま、ぽーっとした目で会社の壁を見つめていた。すると、いきなり彼女は、
「あっ、はあっ、」と、声を出してしまい、思わず口を手で押さえた。
彼女の股間には超小型のバイブレーターが白いパンティの上で振動を始めていた。それを指で確認した彼女は、
(なによ、これ?こんなもの、下着のアソコに着けたりしないのに。)と訝しがったが、心地よいバイブレーターの振動は彼女の淫部に伝わってくるので、又、思わぬ嬌声を上げないとも分からない。それで彼女は口に手を当てて、両脚をモジモジさせながら女子トイレに駆け込むと、個室に入り、股間を探った。ブーン、ブーンと心地よい振動がするので彼女は口を抑えて、快感の声を漏らさないようにした。すぐ外さなければ、このバイブレーターを、と思いながらも二十分は、それをつけたままにして彼女は快感を楽しんだ。それから、それを股間の下着から外すと、まだバイブレーターは動き続けている。
どうやって止めたらいいのか、彼女には分からない。スイッチも見当たらない。ゴミ箱もトイレの中にはないので、彼女は便器の中に、その動き続ける超小型のバイブレーターを捨てると、水で流してしまった。
何もなかったような顔をして受付に戻ると、彼女は椅子に座った。
会社内の誰にも彼女の行為は、ばれなかった。ほっとして帰宅した独身の彼女はワンルームマンションの部屋でパソコンを起動させる。YOUMANKOを帰宅後に第一に閲覧するのが習慣となっている。それを見て、彼女は驚いたのだ。腰を抜かした、というよりマンコがぬけそうだった。何故なら新着動画に自分が写っていて、しかも、それは会社の受付に居る時、今日のもので、あの超小型バイブレーターが振動を始め、彼女が思わず声をあげた姿が音声と共に動画に映し出される。それで終わりではなく、彼女が女子トイレに入り、しばらくバイブレーターを外さずに、つけたまま立って快感に溺れているのを女子トイレの天井からカメラは、その淫らな尻の動きなどを捉えていたのだ。
その映像は彼女の姿だけではなく、その大企業の玄関から写し始めているので会社名は最初に映される。それで視聴者は、その会社の受付という事が分かるのである。
 たちまちネットで評判になり、その大企業の顧客は減り、対抗企業の売り上げは増大した。この撮影を依頼したのが、その対抗企業なのは書くまでも、ないだろう。
 女子社員は懲戒免職になったが、その大企業の信頼の回復は遅いと思われる・・・・
という、その超小型のバイブレーターはウチの製品で、今、ここの部署で更に小型化にするのを進めているんです。」
と尾茂茶部長は話した。流太郎は、
「でも、どうやって、その小型バイブレーターは受付の女性の股間に取り付けられたのでしょうか。」
と質問すると尾茂茶部長は、
「それは企業秘密で言えませんわ。ただ、取り付けはウチでは、ありません。」
 では、実際は、どうだったのだろうか。それは痴漢の達人が受付の彼女に朝の通勤電車の中で巧みに彼女の股間の下着に取り付けてしまったのだ。
そして、ある時刻になると超小型のバイブレーターが始動するように設定されていた。これを流太郎に尾茂茶部長は話さずに、次のように言う。
「時限始動バイブレーターと我々は、この超小型のバイブレーターを呼んでいます。」
流太郎は、
「それでは時限爆弾よりも女性にとっては恐ろしい話ですね。」
と云うと尾茂茶部長は、
「そうかも、しれないわね。誰が取りつけたかも分からないし、その受付の女性は風俗で働いているらしいわ。AVにも出るかもしれないそうよ。」
恐るべし時限始動バイブレーター!尾茂茶部長は平然と、
「これを、いずれはアメリカに輸出する予定でもあるの。武器の輸出には、ならないと思うけど使い方によっては女性大統領の失脚にも成功すると思うし。」
と述べるのだった。おお、トイザマスは新たな日本の輸出産業になるのだろうか。流太郎は、
「日本でも女性議員の失脚にも使えますね。」
「フフフ。女性タレントにも使えるわよ。時さん、芸能事務所に売り込む営業をしてみませんか。」
「そういう営業は出来かねますよ。さすがに。」
尾茂茶部長はテーブルの上にあるスティックタイプの砂糖みたいなものを取り上げると、
「時さん、これ、何だか分かるかしら。」
「それ、なんですか?ぱっと見れば、コーヒーに入れる砂糖みたいですけど。」
尾茂茶部長は、その棒状のものの包みを破り中身を出した。それは粉ではなく固まった砂糖のようなものだ。
テーブルにある水の入ったコップを尾茂茶部長は取り寄せると、その砂糖の細長い棒状の塊のようなものを、そのコップの中に入れる。すると、どうだろう、それは膨らみ始めると十八センチの長さの男性の勃起した陰茎になった。まるで本物の陰茎のようだ。尾茂茶部長は、
「これもバイブレーターの機能を持っています。名付けて『インスタント・バイブレーター』です。もうすぐ売り出しますけど。ネット販売で億箱になりそうよ、これは。」
と嬉しそうに語った。感心した流太郎は、
「すごいですね。大流行しますよ、きっと。持ち運びにも便利だし。」
と称賛すると尾茂茶部長は、
「海外にも持って行けるわ。見かけはスティックタイプの砂糖にしか見えないから。ね?」
「ええ、そうですね。うちの新入女子社員に教えようかな。」
「そうしてくれると嬉しいわ。販売手数料は払いますから。」
株式会社夢春では今年、一人の女子社員を採用したのだ。川中志摩子という名前である。突如、女子研究員の快美感のある声が、
「あっあっ、いくーっ。」と聞こえたので流太郎は、そちらを見ると女子研究員は時限始動バイブレーターでアクメに達したらしく、気持ちよさそうに大きく白い足を開いて椅子に座ったまま脱力していた。
尾茂茶部長は、その女子研究員に、
「花見沢さん、次は『インスタント・バイブレーター』の方も、試してみてください。」
と指示する。花見沢研究員は、
「はい、部長。あまりにも気持ちいいので、少し休憩していいですか。」
「ええ、もちろんよ。インスタント・バイブレーターの方は戸外で試してほしいの。了解しましたか?」
「はい、部長。研究所の外に出て、試してきます。」
股間から時限始動バイブレーターを取り出した花見沢は元気よく立ち上がり、ステックタイプの包みを手に取ると部屋の出口に歩いていった。
 尾茂茶部長は、
「花見沢さんは喫茶店のトイレで試したりしているのです。」
 その花見沢は、すでに喫茶店のトイレで洗面台の水道の蛇口をひねり、インスタント・バイブレーターを流れる水に当てると、すぐに個室に駆け込む。
彼女は立ったまま、男性の陰茎そのものに見えるインスタント・バイブレーターを膝まで下着を降ろして露わになった陰部に当てた。音も出さずにバイブレーターは始動した。研究所で流太郎が見たものよりも高品質なバイブレーターは音も立てない。(あ!感じる、気持ちいいっ、声が出そう)そう思った彼女は左手でハンカチを取り出すと、口に当てた。(これで、いわ。消音ハンカチなのですもの。あっ、あっ、あーん!)彼女は思い切り声を出したが、消音ハンカチによって、その快楽に悶える媚声は誰にも聞こえないものとなった。
 この消音ハンカチはサイバーモーメント社の発明品だ。

尾茂茶部長は流太郎に向き直ると、
「これから先は部外者の時さんには、お見せできないものも沢山、あります。我が社の営業員として働いてもららったり、モニターになってもらうなどの実績次第ではトイザマスの最新のおもちゃの研究開発も、もっと見れるように出来ますよ。今日は、これで終了です。時さんの携帯電話番号は分かっていますから、連絡をしますね。」
と話した。

 会社に帰るのは歩いてで、よかった。株式会社夢春があるビルまでは、すぐに戻れた。社長の籾山松之助は頼もしそうに、
「おう。契約は取れたようだな。時。」
「ええ、うまくいきましたよ。すごい大人のおもちゃの会社でしたね。」
「そんなに凄かったのか。東証一部上場も出来そうな会社だが、東証が認めてくれそうにないために未上場らしいよ。」
「そんな株の話は、分かりませんけど、裏社会とも繋がっているような部分もありました。」
「それは、あるだろう。そもそも上場企業というか東証一部の会社にはスパイが多く入社しているなんて話は百年前からあるよ。」
「百年前と云うと、えーと、2000年代か、その辺ですね。」
「うん、そうだ。うん、そう、運送もね、最近はペガサス運送計画なんて話を聞いた。」
「ペガサス運送計画。なんですか、それ。」
「今、宅急便はヘリコプターでも運んでいるがね。これを二頭立ての馬車みたいにして、二頭の羽の生えた馬、ペガサスに空中まで引かせる。というものさ。」
「そんな馬は伝説の話でしょう?どこかに、いるんですか、空を飛ぶ馬なんて。」
「いるかもしれないけどな、その二頭の羽の生えた馬は機械なんだよ。」
「なーるほど、ですね。ロボットも馬タイプのものがある、というのは知っていますが。」
「そうだ。よし、これから小倉競馬場に連れて行ってやるよ。」
「今から、いいんですか、社長。」
「もちろんだ、あ、川中志摩子君、我々の留守中は、よろしく頼むよ。」
と呼びかけられた女子社員は、視線をノートパソコンから社長と時に移すと、
「はい、行ってらっしゃいませ。」
と明るい笑顔で答えた。純朴な女性の二十歳なのが川中志摩子である。

 どのように人口が増えても競馬場が出来ないのが福岡市なのだ。競輪場も建設は、されない。モーターボートのみが海沿いにあるのみである。北九州市には小倉ボート、若松ボートなど複数あるのに、福岡市にはモーターボートは一か所のみである。
これは福岡市の方針で、そうなっているようだ。ギャンブル施設を多く置かない方針なのだろう。
 小倉競馬場までは社長の籾山が運転する車で向かっている。流太郎は助手席だ。小倉駅前には日本には数少ないカジノがある。籾山は車の操縦を自動に切り替えて、煙草を右手で吸いながら、
「光半導体で、この車のコンピューター部分は動いているから、電力は少しでよくなる。時、おまえは車を持っているか?」
「持っていませんよ。ドライブする趣味もないので。」
「そうだろうな。この百年で車を持たない若者が増え続けた。タクシーはロボット運転手を使い、運賃を激安にした。だから、だろう、車を買って持つよりタクシーの方が安い、という考えだな。そういえば、この前にサイバーモーメントの社長の黒川さんの邸宅に行ったら、運転手はロボットで自分の車を運転させていたよ。
はるかな昔には運転手という金持ちに付き物の職業もなくなりつつ、あるらしいね。」
車の内部にも八幡の淀んだ鉄のような匂いが入ってくる。流太郎は、
「女中というのも、そうですね。今はメイドロボットが普及していますし、一億円のメイドロボットや十億円のメイドロボットも、ありますよ。」
と製鉄所が醸し出す濁った空気を鼻で感じつつ答えると、籾山は笑って、
「それには、こういう話があるよ。・・・・
とある大富豪の家には四十代の妻と一人娘がいて、メイドロボットが一台ある。ある、というより、いるという方が適切かな。その大富豪はカジノ運営、もちろん日本のカジノで大儲けした。ま、日本もカジノの設置場所を増やすらしいが、とにかく、まだまだ独占的な事業が日本での、いや、世界の大抵の場所のカジノが、そうだけど。
それでね、その大富豪は七十代というんだ。妻との夜の活動も数年は行われていなかったらしい。