sf小説・未来の出来事23 陸上自衛隊・春日学校・虹一号作戦 試し読み

 中国からの女性客を優先して回してもらえるなんて、嬉しい限りだが、それでは工作員としての仕事は捗らない。だが社長の行為を断るわけにもいかずに珍光年は、
「ありがとうございます。がんばりますよ。」
と元気よく即答した。

 陸上自衛隊の春日駐屯地の地下で講義をする元海教官の話に戻ろう。
「・・・という事で防衛大臣の腰野カルコは辞任することに、なった。という事例は君達は小さい子供の頃の話だから知らないと思うが。その盗撮ビデオは情報第三部で鑑賞した後に、業者に出品させた。情報第三部の名前で出品することなど、ありえる話ではない。又、その業者も陸上自衛隊春日学校の情報心理戦対防護必須課程を修了した隊員が作っているアダルト専門の会社から出品する。
収益は陸自で取るわけでなく、春日学校出身の隊員が運営しているアダルト会社の収入になるよ。
防衛女大臣の腰野カルコは無料で出演、中国の工作員青年も無料出演だ。彼らは性器を露出させているしな。時君、何か質問があるか?」
と元海教官は流太郎に質問を振り向けた。流太郎は考えて、
「それにしても凄い話ですね。それでは僕らも、こういう事をしないといけないんですか。」
元海教官は静かな笑顔で、
「なーに。ここまで高度な事は、しなくてよい。盗撮機器の操作も実習の必要は、あるから。君達には、もっと簡単なことをしてもらう。国会議員の暗殺の手伝いとかも頼むかもしれんな。ま、冗談と今は受け取っておいてくれ。
腰野カルコが知りうる自衛隊の情報は大したものではないが、工作員に入手されていいというものでもない。国会議員の中にも他国へ情報を流す輩、それは男女を問わず、いる。愚民が選ぶ政治屋だ。金さえもらえば他国に国家の機密は、どんどん流しているのも、いるからな。
特に中国から大金を貰って、せっせと情報を流す政治屋は国会議員に限らず、都、府、道、県会議員、市会議員の中にも、いるのだ。
それらの輩を暗殺せねばならない、と思わんかね、本池クン。」
と今度は釣次郎に質問が飛ばされた。釣次郎は、
「ええ、まあ、思いますが。まるで小説か映画のような話ですね。」
と答えると元海教官は、
「うむ。そうだなー。でも実際に行ったとしても国防の為だ。売国議員は抹消する必要は、あるよ。これらの調査は情報本部第三部で、おこなっていると少し記憶しておいて外では話さないようにしてもらいたい。という事で、君達への指令は自衛隊情報本部第三部から来ることもあるし、参謀本部から来ることもある。ま、この陸上自衛隊参謀本部も自衛隊の組織図には載せられていないが、実は、この参謀本部が陸上自衛隊の最上部組織なのだ。統合幕僚監部の上に位置した自衛隊の最高機関なのだね。これは政治屋も国民も知る必要は、ないし自衛隊の機密の一つだからだ。
 君達も、この機密は守るように。外の人間に話さないように。
 まず君達に課せられた任務は女体一号作戦、と名付けられている。それと君達にはコードネームが与えられる予定だ。」
釣次郎は思わず、
「コードネームって、なんですか。」
と訊いてしまった。元海教官は、
「おほん。(と咳払いして)こちらが質問をしていいと時間を取らない限り、質問や意見は言わないように。」
と厳重な注意をした。釣次郎は、
「すみません。気を付けます。」
元海教官は、
「よろしい。君達には諜報活動の手伝いをしてもらうのだ。そこから考えても分かりそうな用語だな。時君のコードネームは海、本池クンのコードネームは空である。覚えられないと思うし、ノートに書いておくといい。で、だね。ノートにはコードネームなどと書かずに飲み屋のツケに使う名前と書いてくれ。
このコードネームを使う事に君達は、なる。軍事作戦には大なり小なり暗号は必要だ。昭和の日本の海軍は何故完敗したか。それは暗号をすべてアメリカに解読されたからだ。最後の方は薩摩弁を暗号にして、それもアメリカに解読され、昭和の海軍の行動は筒抜けで知られていたのだよ。
ぽっぽーや、海軍の哀れな最後は暗号にある。ぽっぽーや、とは薩摩っぽ、という軽蔑用語から取られている。薩摩が日本のどの地方かは知っていると思うが、知らなくても調べたまえ。」
 流太郎と釣次郎は電子ノートに自分たちのコードネームを書き付けた。この電子ノートは元海教官の授業に際して二人に手渡されたもので自衛隊特製のモノだ。自衛隊というより情報第三部で使われている。電子書籍を読むためのタブレット型の機器に似ているが、電源を入れて起動すると人差し指で字が書ける。人差し指の大きさで線を引くことにはならず、ボールペンで書く字の大きさになる。
ひらがなから漢字への文字変換機能もあり、漁師だった釣次郎には使い勝手が良かった。
 コードネームも貰って、いよいよ、これから諜報員として活動できるのだと思うと釣次郎と流太郎の胸は気球が空に昇るような期待で膨らんだ。
 休憩をはさんで、次の授業では中国の工作員の見分け方をスライド写真を黒板に投影しての解説を元海教官が、おこなう。
「いずれにしても、これという人相があるわけではない。しかし工作員の顔は一般中国人とは違うので見抜くのに早く慣れてもらいたい。」
元海教官は教卓から眼鏡を取り出して、二人に見せる。
「実はね、この眼鏡を掛けると中国の工作員は即座に見分けられるんだ。レンズに仕掛けがあることは、あるんだが何といってもマイクロコンピューターが内蔵されていて、そのコンピューターが対象人物を工作員かどうか、判断する。
 決定的な事には、この眼鏡から出るごく微弱な電波によって対象人物の脳内を検査し、調べて工作員であるという記憶も調べるんだ。だから間違いなく確定できるよ。」
流太郎と釣次郎は絶句した。
信じられない話だからだ。こんな凄いものを日本で開発したのだろうか。しばらく前に地円の陽元に住む霧沢金之介は異母弟の黒沢金雄に会うために地球に、やってきた。
黒沢の自宅で兄の霧沢は、
「日本の自衛隊にも新兵器は必要だが、大きな戦争もないから緊急の要件ではないと思う。しかし中国の工作員とかは要注意だね。スパイでなければ逮捕も出来ないが、だからこその警戒は必要だと思う。この中国の工作員を見分ける眼鏡を、この前、遊び半分で作ったが成功した。
おまえに上げるから自衛隊に提供して利益を上げろよ。」
と兄らしく語ったのだ。

 元海教官は流太郎に、
「なにか質問があるか。」
と面白そうに聞いたので、流太郎は、
「その眼鏡はサイバーモーメントの発明じゃないかと思いますが。」
と答えると元海教官は、ほお、という顔をして、
「よく知っているな。その通りだよ。つい最近、完成したらしい。サイバーモーメントの製品は、これからも自衛隊で採用予定のものが多数ある。なんとも超科学というか、こんなものを地球人が作れるのかというものが多いらしいなー。て、君はサイバーモーメントと関係した事があるのか。」
「ええ、サイバーモーメントの社長は知っていますよ。」
「そうか。それなら・・・君を通じて自衛隊もサイバーモーメントに要望を出せるだろう。ま、この驚愕的な眼鏡は君達に支給されるし、それでも自分の目で中国の工作員を見抜けるように、なって欲しい。」
三月になって暖かく、暖房もしていない教室だが、時折、少し寒い空気が地下とはいえ窓から入ってくる。
 驚異で脅威の眼鏡の存在を知った二人は心強い気持ちになった。
 情報心理戦防護必須課程に準じた教育が元海一佐によって、時と本池に続けて、おこなわれていった。
元海教官曰く、
「情報戦は実戦よりも多大な影響を対峙した国に与えることが出来る。攻撃は最大の防御とは広く知られた言葉だ。武力による攻撃を上回れる場合がある。これは「ペンは剣よりも強し」としても知られている。陸上自衛隊春日学校では情報心理戦攻撃過程も加えられている。防御の後に攻撃か、攻撃の後に防御か、というのは、それで一つの論題ともなるわけだが、専守防衛というオカマじみた見せかけを取らなければいけなかった日本の自衛隊としては防御の後に攻撃の路線ではあるが、それは実戦部隊の話で、我々情報三部、そして参謀本部からの指令では攻撃が先になることもある。要は武器による攻撃ではないからな。
それで情報心理戦における攻撃を君達にも学んでもらう。ボクシングでも防御しかしていないと、どうなると思う、本池クン。」
「いつかノックアウトされますよ、間違いなく。」
「その通りだ。日本の自衛隊は同盟国アメリカ軍の後方から、ついていく行動となっていた。だが情報第三部は違う。攻撃のための攻撃も、おこなう。
参謀本部も原則的に統合幕僚監部には口出しを平時では、しない。
日本は古い過去に軍隊の経営を間違った。直接的には頭の悪い人間しか海軍に行かなくなった。それが第二次世界大戦の日本の結果となった。それは、そのころにあった制度にも問題がある。御前会議というやつだな。実はね、帝国陸軍でも、これは御荷物というか必要ないものであるばかりか御前が意見もしたし、命令もしたりしたので皇道派以外は、ため息が出るものだったのだ。
 それでだね、英才ではあったが皇道派に近い石原莞爾を二二六事件の反乱部隊の鎮圧に派遣させている。石原が反乱部隊に殺される可能性もあることを分かった上でだ。
 最終的には石原は左遷、そして予備役へと引退していく。これも当時の陸軍に反発したためである。
そして中国への戦争を長引かせることは陸軍の意思では、なかった。公家上がりの近衛首相ら政治屋の意志である。
 文民統制を廃絶した今の日本は昔よりも、戦争のプロである我々に国民は任せて安心、という事なのだよ。
それでも一応、先に攻撃しないのは自衛隊の実戦部隊であるから、先手必勝なのは情報第三部と、さらに上の参謀本部の領域となる。
 君達の授業の態度もいいので参謀本部も期待しているから、大いに頑張ってもらう。机上の空論に終わらないためにも街に出て実践の足慣らし、手慣らしに行こう。」

 元海一佐に伴われて地下から上がり、春日駐屯地を出た二人。正門前に見えるUR、公団団地を見て、右に直角に歩道を曲がって歩いていく。JR南福岡駅から電車に乗り、博多駅という福岡市で一番大きな駅に着く。ここから新幹線も出ている。その新幹線で中国の工作員が福岡市に、やってくる場合もある。それで元海教官は二人を新幹線乗り場の近くまで導いた。元海教官は、
「この新幹線の出入り口も要注意な場所だ。そもそも工作員が最も多い場所は東京だ。福岡市に乗り込んでくる中国の工作員は少ない。それだけに見分けは、つけやすいよ。」
と話す。
 確かに新幹線の降り口から出てくる乗客に中国人らしき人影も見えない。元海教官は、
「次は地下鉄で移動する。行くぞ。」
福岡市営地下鉄は博多駅から乗れる。もちろん地下に降りて切符を買い、列車を待つ。明るい構内には中国語の案内文も見える。工作員を歓迎しているかのようで馬鹿馬鹿しい。通勤時でもないので人は少ない。元海教官は、
「KCIAという韓国の諜報機関員も福岡市に、いるはずだが、中国ほど活動はしていない。福岡市だからだろう。」
 福岡市はアジア人を歓迎している。それだけに工作員天国なのだ。中国人の店は料理店に限らない。それには風俗業も含まれる。福岡市の風俗業は中洲という場所に大体、限定されている。これは何と江戸時代の黒田藩で決めた事だ。黒田五十二万石、筑前・黒田藩以来の伝統なのだ。
そもそも日本全国的に戦国大名の拠点地が、そのまま発展を続けている。福岡市の風俗店は、ポツンと他の場所にもあるが、広がらないで消えていく場合が多い。中州にはビルが立ち並び、その中の大半は飲食店で、それも主に酒を提供する店でスナック、パブと呼び名は色々ある。会員制のスナックもある。
 これらの店も全ては生き残れず、空室も出てくる。元海教官と流太郎、釣次郎は今、中洲の飲み屋ビル街を歩いている。随分と大昔には呼び込みの連中もいたが市の条例で禁止されてからは、呼び込みは消えている。
 飲み屋のビルは高くても六階程度、数十階のビルなどは昔からない。そのうちの一つのビルの一階にある店に元海教官が、
「ここに入るぞ。」
と先導した。「ぃらっしゃいません。」と中国語訛りの女性の声が聞こえた。中国風スナックで風水的飾り物が店内には多い。福とか赤色の配色が多数、見られる。大きな水槽に赤い金魚が数匹泳いでいた。女性店員は赤や紺色、黄色のチャイナドレスで三人が並んで立っていた。中国的美女、キャバクラのようだ。厨房に近いカウンター席の向こうに店の女主人が元海ら三人に気づくと、声をかけたのは、この三十代後半に見える髪の長い中国美女で、もっと若いころはキャバ嬢だったのだろう。この女店主は、
「カウンターの席に、ひと席ずつ間を開けて座ってくださいませんか。そこに、あの子たち三人を座らせます。」
と元海教官に話す。元海は、
「諸君。そのように座りなさい。」
右から元海、流太郎、釣次郎と、それぞれ一席ずつ開けて腰かける。まもなく三人の左席に、赤、紺、黄色のチャイナドレスの女性が座った。香水の甘い香りが元海ら三人の鼻を、くすぐる。元海は左に座った女性の左肩に左手を回すと、
「とりあえずビールを三人分、頼む。」
と注文すると、左の女性の肩から尻に左手を降ろし、その女性の丸い大きな臀部を、ゆったりと触る。元海は機嫌良さそうに、
「時と本池、ここは、おさわりOKなのだ。尻と胸は触っていいんだ。」
と教えた。香港から来たという店の女性たち。マダムは笑顔で、
「お二人さんも、触って大丈夫よ。この三人は彼氏も、まだ、いないし。」
流太郎と釣次郎は、しかし、手を動かさない。元海は、
「香港はアメリカの原爆は落ちないんだろう。」
とマダムに聞く。マダムは、
「ええ、ダイジョブです。北京には落ちましたね。わたしたち、北京から逃げた、あるよ。にじゅ、まん死んだね。でもロサンゼルスに中国のICBM(大陸間弾道ミサイル)に積んだ原爆、おちたよ。ハリウッドの大きな文字は、消滅したのある。」
元海は目の前に出された大ジョッキの生ビールを右手の取ると、左横にいる流太郎たちに、
「さあ、乾杯だ。(グイ、グイと一息に飲んで)、ああ。うまいな。なにせ中国から核弾頭搭載ミサイルを数百発は飛ばしたらしいね。」
「人民解放軍がシュミレーションでアメリカを攻撃する訓練をしていたら、実際の発射ボタンを押してしまったあるの。アメリカも百五十発は撃ち落としたらしいけど五十は爆発、大惨事よ。その大惨事から第三次世界大戦、始まったアルネ。」
「もう三十年も前の話だな。日本は戦争放棄国だから、よかった。今は核攻撃なしにズルズルと続いているな、中国各地にアメリカの軍隊は入っているらしいが。」
「小さな駐留しか出来ていないわ、アメリカは。ベトナムでも結局、引き揚げたしアメリカはね、だからワタシタチ中国人、漢民族負けないのあるよ。モア一杯、ビール飲む?モトウミ、サン。」
「アア、もう一杯、頼む。時君と本池クンも、お代わりで飲めよ、生ビールをね。」
流太郎と釣次郎の隣に座っている中国人キャバ嬢も、
「ママ、わたしもビール飲みたい。」
「わたしもね、ママ。」
と声を上げた。店のママは、
「ああ、あんたたちの分は店で持つわ。はい、ジョッキで飲むあるよ。」
と二人の前に生ビールの大ジョッキを一つずつ置いた。店のママは元海の顔を覗き込むように、
「自衛隊はアメリカに協力していないあるけど、いいの?」
それに対して、胸を反りかえらせた元海は、
「日米安保条約は日本はアメリカ軍を助けなくて、いい、となっているよ。戦争に手助けすることは、戦争に参加していることになる。戦争放棄国は戦争を、しないもんだ。楽なものさ。」
 中国大陸に上陸しているアメリカ軍は五十万人ほど、だ。この大部分は在韓国米軍が移動し、その後にアメリカは韓国に新しい五十万人を上陸させた。ベトナム戦争と同じく、他の国、イギリスやフランスなどは不参戦の戦いなので第三次世界大戦とは呼称しにくい戦いなのだ。
 日本にとっては随分昔の朝鮮戦争と同じような雰囲気が漂い、朝鮮特需があったように中国特需が発生している。なので好景気な世の中、アメリカからに限らず中国からも日本への医薬品などの需要が出ているため、空前の好景気が日本に出現している。
日経平均も十万円を突破している。中国とアメリカの戦争は十五年を経過した。どちらの国も過去のコロナ・ウイルスで一億人以上の死者を出している国だ。コロナウイルスでは全世界の人間は十億人以上の死者が出ている。
中国としてはコロナウイルスはアメリカが持ち込んだ、と信じている人たちもいるために、手違いの核ミサイル発射も無意識的なヤリタイ事をしてしまったのが本当なのかもしれない。
謂わばアメリカのコロナウイルス持ち込みの行為に対する核攻撃と見てもよいのかもしれない。
HOLLYWOOD
の文字を吹き飛ばされた恨みのせいか映画関係者の志願兵が相次いだという話が日本にも伝えられた。
 流太郎の隣に座っているのが赤のチャイナドレスを着た、レンレンという北京出身の中国女性だ。彼女は流太郎に、ビールのおつまみを差し出しながら、
「わたし、レンレンいうね。あなたも兵隊サン?」
と尋ねた。流太郎は、
「いや、ぼくは兵隊じゃないよ。ただの民間人だ。」
「そうなの?あのモトウミさんは陸上自衛隊なんでしょ。」
「そうだよ。でも僕は自衛隊員じゃないんだ。」
「そうなの?じゃあ、自衛隊さんより自由なのね。」
「だろうねえ。朝からビールも飲めるし。」
「モトウミさんも飲んでる。モトウミさんは自衛隊。」
「うん、自衛隊でも特別な部隊さ。だから、いいんだろう。」
「時サン、お酒強いのね。顔も変わっていないし、あたし少し酔ってきたわ。」
レンレンは顔色を赤くしている。釣次郎の隣にいるのは黄色の服のマンマンだ。二十歳くらいで髪は肩よりも下に長い。黄色のチャイナドレスの胸は大きく、肉まんの大きなものが服の中に二つ、おいしそうに入っている感じだ。
釣次郎も大ジョッキのビールを飲んで顔色は、それほど変わらない。マンマンは、するめを釣次郎に差し出すと、
「わたし香港から北京にいた時、この店のママに誘われて日本に来ました。北京でもママは飲食店で主に飲酒する人のための店を、やってたの。福岡は、あったかくて、いいわ。香港みたい、雪は降らないし、降っても積もらないし。お金貯めて、店、出したいです。」
と話すので釣次郎は、
「日本に店を出すの、それとも中国に?」
「中国はアメリカと戦争しているから日本に店、出したい。」
「店を出すのには、お金が、たくさん要るよ。」
「わたし、ここ以外でも働いているから。」
とマンマンは髪を、かきあげながら話す。

 酔いが回ってくると何の話か、いい加減になるものだ。元海教官は、
「そろそろ退店しよう。」
と二人を急(せ)き立てた。地下鉄で博多駅まで行き、地上に出て博多駅から南福岡駅へ、そこから歩いて春日駐屯地に戻ると、又、地下に降りる。そして昼食後、授業が再開された。
 教壇に立った元海一佐は、
「諜報員としては外国語の習得、それも複数の言語は知らなければ、ならない。君達は正規の諜報員ではないので、深く知らなくてもいい。主に中国語は知っておこう。君達の調査する対象は中国人から、となる。女性に限らない。珍光年という中国青年がいる。日本ではホストクラブで働いているが、奴は中国の工作員だ。過去に女性防衛大臣と肉体関係を持ち、日本の国防機密を盗み出そうとした。それは随分過去の話だが、今は女性法務大臣と肉体関係に進んでいるようなんだ。日本の法律事情を手に入れたいのだろう。まだババアとはいえない女性法務大臣だ。ホストクラブに遊びにも行くだろうし、写真週刊誌も大臣を追うほど暇でもないから世間に知られることも、ない。情報第三部では今の女性法務大臣が珍光年と少なくとも三回はホストクラブで酒を飲んでいるのを調べている。防衛大臣ではないために法務大臣の行動は、深くは調べていないようだ。法務大臣だけでなく他の大臣も防衛機密を知ることは出来ないので、女性法務大臣の夜のホストクラブ遊びに立ち入りすぎることは、しないのだが珍光年が、いつ矛先を防衛省に向けるかが重要ではあるから情報第三部も気が抜けないのだよ。
 それで女性法務大臣も追尾している。女性法務大臣の財布の中には情報第三部が仕掛けた特殊なGPSが入っている。それにラブホテルに入ると撮影が始まるという特殊カメラも、そのGPSには付属している。これが秘密兵器の、ゆえんたるものだ。つまりGPSでラブホテルに入ったと認識されるとカメラが回り始めるのだ。赤外線により財布を透かして撮影が始まる。
時君、質問があるかね。」
「はい、元海一佐。法務大臣の財布の中に、どうやって、そのGPSを入れるのですか。」
「いい質問では、ないな。それは君、大臣秘書を通して、やってもらったりと色々だ。具体的詳細は国防機密だな。君達には教えられない事だ。君達が実行することも、ない事だ。で、そのカメラは女性法務大臣がラブホテルに入ったのを捉えて撮影を始めている。」

 五十歳になったばかりの女性法務大臣、しかし彼女は独身だ。大学の法学部を出て、すぐに司法試験に合格し弁護士となり弁護士事務所で働く事、十年、そこから独立開業して多数の法廷に立つこととなった。少子化、そして人口減少という日本の流れの中で悪い人間も減少したので弁護士の仕事は減っていく。四十にして惑わずなどというのは一人の変哲もない中国人の幻想を、かなり昔の日本人さえ理想の人生としていたが、人の一生に理屈を当てはめようとするのはバカ中国人の思考傾向である。四十にして立つ、でもいいではないか。三十にして立つ、のは男として当たり前なのだが、それは閑話休題(さておき)、この弁護士の桜・摩見子は四十にして立った、立候補したのである、いきなり衆議院議員に。
そして初当選後、東京に出て事務所を構える。彼女のビルの部屋の窓からはスカイツリーが見えた。仕事が終わって男性秘書と事務所内にある彼女のベッドで性交する、というわけにもいかず、かといって外出も好まない彼女、桜摩見子(さくら・まみこ)であるからして男性とは縁のない性活とはなる始末。
 五十になる少し前に桜摩見子は法務大臣に選ばれた。そうなると公設秘書は三人、私設秘書を七人置いて丁度いいほどになる。摩見子の場合は公設、私設の秘書すべてを男にした。
これで男日照りの時代は過ぎたのだ。男でも身近に十人の女を置くのは難しい時代に桜摩見子は十人の異性に取り囲まれて仕事をしているのだ。何度も書くことだが大臣の私生活なんて写真週刊誌も相手にしないものなので桜摩見子はヤリタイ放題、文字通りのヤリタイ放題の私性活となった。このうちの二人の秘書は地元に置いておく。だから摩見子は地元に帰っても最低、二人の自分の言いなりになる男を持っている。これに加えて年収・数千万円という給与の支給でホストも何十人でも買えるのである。が万が一、写真週刊誌に狙われたら、その際は私設秘書が上手く処理するのだ。だから一般人には大臣の夜遊びは知られることは、ない。
これは男子大臣も同じこと。ところが、である。自衛隊情報三部は確実に各大臣を追っている。中国の工作員は日本の大臣すべてに近づくことが彼らの任務だ。ハニートラップ、つまり甘い罠をしかければよい、という訳で男性大臣には美女工作員、女性大臣には美男工作員を近づけていく。
それ以外にも、労働者として日本に入国してきた中国人は工作員といってもよい。それを知らない大手コンビニなどは、ありがたやとばかりに店員として働かせてきた。大量の中国人労働者を認めた時点で中国の工作は成功していたのだ。おそらく売国議員によって提案されたものであろう。その辺りを元海一佐は話す。
「中国から来た人間は基本的に全て工作員と思ってよい。彼らは日本を破壊しに来ている。どこかの田舎者が提案した日中友好など、中国人が喜んでいるだけだ。中国に技術支援した大手電機メーカーは、のちに電化製品、特に白物家電で市場を奪われていった。松の名前がついた電機メーカーだ。ここの創業者は、ある国会議員の要請で中国支援を決めたという。これが数十年後の日本の家電メーカーの没落へと繋がっていく。
それだけではなく日本の大学は防衛大学以外は東京大学でさえ共産思想を植え付けられている。それが日本の貧困を招いている、何故なら大学卒の増大が民間企業の年収低下、大企業さえ収入低下を喜ぶ風潮、そして週休二日制、休日の増大と正に中国にとって笑顔の絶えない日本になっていったのだ。
君達は大学には行っていなかったな?」
と元海教官は流太郎と釣次郎を見る。流太郎と釣次郎は、ほぼ同時に、
「はい、行っていません。」
「よろしい。それで、いい。東京の共産汚染は日本で一番、ひどいものだ。コロナウイルスも日本で一番多く感染した場所だ。それで陸上自衛隊としては春日駐屯地の地下に陸上自衛隊・春日学校を創設、運用している。ここには自衛隊の幹部学校を出た尉官のみを入校させているから、現在の君達は入校できない。
五万とあるという言葉があるが、2020の頃でも中国の工作員、別名スパイは日本に五万人はいた、とされている。
さて簡単な中国工作員の仕事を教えよう。彼らは外食産業で働き始める。目的は収入を得るためではなく日本の外食産業を破壊するためだ。信じられないと思うが福岡市でも安いうどん屋などは閉店してしまった。中国人は安く雇用できると浅はかな考えの経営者は大手電機メーカーにも、いた。彼らは安く働く代わりに日本の企業を壊滅に追い込むのが目的だ。
それで奴らの収入も無くなる、と思うだろうが中国の工作員だから例え働いている日本の会社、店が倒産しても金に困ることはない。奴らは収入を得るための労働を、しにきたのではない。たとえ彼らが工作員でなくても大陸の中国人は、みな共産主義だ。彼らは資本主義を悪だと教えられている。それで資本主義国家は悪だと考えている。実際は、どちらが悪なのかは歴史を見れば分かる。
ソ連共産党の崩壊などでだ。
 少し早いとは思うが明日からは二人で街に出てもらう。諜報活動は机上の御話ではないから。
さっき行った店も工作員の店の可能性がある。週に一度は君達二人の、いずれかに行ってもらう。飲み代は、あらかじめ必要以上の額を渡しておく。
映像でも見よう。情報第三部が手にしている女性法務大臣の桜摩見子のラブホテル盗撮編の映像だ。」
教室の黒板に映像が投射され始める。東京都郊外のラブホテル内が映された。桜摩見子の歩調に合わせて映像は揺れている。
カメラは桜摩見子の財布の中に入っているのだ。
無人のラブホテルで男が金を入れると部屋の鍵が出てくる。
8号室の鍵を手にした男は摩見子の腕を取って部屋に連れ込んでいく。部屋に入るとシャワーを浴びに男は行った。シャワーのある部屋から出て来た男は全裸で、棍棒のような肉茎を天井に向けていた。もちろんは皮は向けている。
 摩見子は男の立派な道具を見ると、
「すばらしく太くて逞しい。わたしも裸になるわ。」
と話すと手早く衣服を脱ぎ、下着姿になる。全裸の珍光年は反りかえって固定したかのような勃起棒とユラユラと揺れる陰嚢を見せながら、速歩で摩見子に近づくと彼女を抱え上げてキスをする。
真面目な彼女は男の秘書と肉体関係を持てなかった。ただ精神的に満足していた。それだけに肉体的に満足させてくれる男が現れて、今、摩見子の下着を剥ぎ取り、荒々しく肉の棍棒を自分の中心に、ねじ込んできた、その快感は彼女の予想以上だった。
快感で朦朧となった摩見子はベッドに仰向けに横たわり、両脚を大きく広げて珍光年を迎え入れている。突如、珍光年は腰の動きを止め、摩見子に聞く。
「コロナウイルスが東京で再び拡大した時に、検察官は逃げたのですね?」
「そう、逃げたわ。拘束されていた人たちを釈放して・・・。ん、腰を動かしてよぅー、はさんだだけでも気持ちいいけど。」
珍光年は摩見子の両手と自分の両手を絡み合わせて、
「やります、やります、その前に逃げた検察官の数を教えてください。」
「数?十人以上かな。東京地検特捜部の検事も逃げたわよ。」
と国会で答弁しなかった内容を今、珍光年に貫かれている桜摩見子は洩らした。珍光年は腰を大きく動かして、一度、摩見子の女の洞窟を深く突くと、彼女は目を閉じて、
「気持ちいいっ。あら、一度だけ?」
「検察庁の庁舎からですか?」
「そうよ。庁舎に救急車が来て、倒れた職員を運んでいったけど、救急隊員はマスクと目にはゴーグルをしていたの。その事が庁内に広まると検察官は庁舎から逃げたのよ。」
「ありがとう。摩見子さんの体は素晴らしい。」
と珍光年は摩見子の耳元で囁くように話すと、彼女の耳にハアーッ、と息を吹きかけ、彼女が両脚をすぼめるようにしたので彼は電撃的に腰を前後にメロディカルに動かし始め、何度も摩見子を絶頂に導いた。
 そこで一旦、映像は停止した。明るくなった教室の教壇で元海一佐は、
「こんな具合に女大臣は日本の報道各社も知らない内容の事実を中国の工作員にベッドの上で話している。それにしても財布の中から盗撮しているのに鮮明な映像だった。これはパソコンで見られる映像ファイルで記録されているので、ここにはコピーされたものが送られている。春日学校の授業でも使われているのを今、君達に見せたわけだ。感想は、どうかね、時君。」
と名指された流太郎は、
「ネットニュースで見たことのある大臣だけに、裸で男に激しく突かれている姿には驚きました。国会での冷静な姿勢からは想像も出来ない乱れた姿でした。」
と興奮気味に答える。元海教官は軽く、うなずくと、
「本池クンの感想は、どうだ?」
「法律の大臣のベッドでの姿には驚きました。大臣の女性器もバッチリと写っていましたね。独身だけに若い体なのかと思いました。」

今日は

 今日は巳の日です。巳の日にして、いい事は幾つもありますが、
芸術のようなものを始めるのもいいらしいし、小説を読み始めるのも
いいと思われます。
それで試し読みをアップロードしましょう。

SF小説・未来の出来事22 軍事小説 おすすめ 試し読み

YP33号はロボットらしく、頭をかしげて、
「御嬢様、なんの事でしょう?私には分かりません。」
と言うのだった。
ソープ嬢の赤鳥女子は、
「わたしの名前は赤鳥華子(あかとり・はなこ)っていうの。あなた、わたしを何処で知ったのかしら。」
「ええっ、赤鳥華江さんでは、ないのですか。」
「それは、わたしの姉の名前。姉さんは一人娘だから家に、いつもいて外には働きに行かないわ。わたしは、あの大邸宅を抜けて町に住んでいるの。そうしないとソープで働けないから。」
「ああ、姉妹だったのですね。仕舞いには姉妹と分かる、ですか。」
「おほほ。ロボットにして語呂合わせができるなんて、あなた、中々ね。」
「いえ、それは自由意志を与えられています、少しだけですが。」「そうなの。プレイは、あと一つ体位を変更して出来るけど、する?」
YP33号は最早、愚息が↓縮んでしまい、伸び↑上がらないのを自覚した。あの令嬢の妹というだけで、勃起不能✖となってしまったのだ。ロボットの頭には、そこまでのプログラミング‰がされている。YP33号は、
「もう、できないみたいです。あの御嬢様の妹様と、あれだけの行為を出来たのも、あなたが他人の空似と私の脳が認識したからこそ、できた性行為でした。」
過去を懐かしむような語調で話したYP33号は浴槽を出ると服を身に着け部屋を出ていく。そこで動画は終わった。
 霧沢は釣次郎に、
「面白かったろう、どうかね?」
「ええ、地球ではロボットは、あそこまで進化していないようですよ。」
「もう地球の大気圏内だよ。私の弟の邸宅の屋上に着くと分かる。」
その時、機械音でアナウンスが流れた。
「目的地ニ到着シマシタ。」
UFOの窓の外は郊外の風景を映している。切れ目のない壁が開いた。霧沢は立ち上がると、
「さあ、外へ出よう。地球に着いたのだから。私の弟の屋敷の屋上にね。」
と釣次郎を誘う。霧沢を先頭に外へ出た二人を冬の寒気が歓喜の声を上げるように迎えた。二人とも冬の服を着ているから、寒くはない。!

れは福岡市東区ではないか、釣次郎には予測できる自信がある。何故なら屋上から見える風景は彼が、かつて見た事のあるものだからだ。
 みならず、彼、釣次郎は来たことがある、この辺に、そうだ、まだ幼いころに・・。だから思い出したのだ。

驚きだが、とても愉快な気がする。UFOに乗せられて地球のどこに行くかと思ったら、なんと福岡市ではないか。釣次郎の不安は完全に消去された。
 屋上に一人の中年紳士が現れた。どこか霧沢と似ている。もしかしたら、この人が・・・、彼は霧沢を見ると、
「兄さん!よく来てくれたね。もう少し遅いかと思っていたよ。」
と霧沢に向かって両腕を広げた。霧沢は、
「金雄。元気そうだな。発明を頑張っているか。」
と楽しそうに云う。金雄と呼ばれた紳士は、
「もちろんさ。下に行こうよ。」
「ああ、連れて行ってくれ。」
「そこの貴方も一緒に、どうぞ。」
と釣次郎に手招きした金雄氏であった。
 エレベーターで降りた場所が金雄氏の部屋らしい。社長用の部屋らしい雰囲気を持っている。金雄氏は社長のイスを霧沢に手で示すと、
「兄さん、座ってくれよ。ぼくの椅子に。」
「ああ、いいよ。うん、いつもながらイイ座り心地だ。」
金雄氏と釣次郎は社長のいすに座った霧沢の前の横長のソファに座る。大きな窓の外には鷹が悠然と大空を飛んでいる。
社長の机の上にはパソコン、小山のように積んである書類、何かの試作品のような機器類、コーヒーカップなどがある。霧沢は右手で金雄氏の横に座っている本池釣次郎を示すと、
「地球から来ていた漁師の本池クンだ。本池クン、私の兄の黒沢金雄、株式会社サイバーモーメントの社長だ。」
と自分の兄を紹介した。
 黒沢は釣次郎を横目で見て、
「おお。漁師なのかい、君は?」
と好奇心を示す。釣次郎は右横の黒沢に、
「はい。漁師ですけど、小説を読みます。SFが好きなんですよ、ぼく。」
とハキハキ・テキパキと答える。黒沢は即座に、
「それなら漁師などやっているより、ウチに来て働かないか。自衛隊からの注文が多くてね。馬の足でも借りたいくらいなんだよ。」
と釣次郎に申し出る。
釣次郎は最近、福岡市の湾内では漁獲高が減っていたので、
「漁師を廃業する予定でした。仕事をさせてください。」
と即応したのだった。二人を見ていた霧沢は満足げに、
「金雄。そちらだけでは新兵器の開発プランですら間に合わないだろう。こちらからも提案してやるよ。」
と激励する。
「ありがとう。兄さん。母は先週、死んだ。」
霧沢の顔は、それを聞くと少し哀愁を漂わせて、
「それは悲しいだろう。しかし、私の母ではないし・・・。」
と言葉を濁すと黒沢は、
「そうだね。僕らは父さんが同じで母親は違うものね。兄さんの母は地円の陽元人だろう。」
「そうだよ。まだ生きている。地球人より地円人の方が長生きだね。三倍は生きれるよ。おれたちの共通の父も、まだ現役で働いているからな。」
「そうだったね。父さんは時々、地球に来て僕に会いに来るよ。でも母さんが生きていた頃も、そんな具合に時々しか地球に来なかったから母子家庭となっていたんだ、うちは。」
「ふむ。それを申し訳なく思っていたらしいから、金雄の母さんには兆単位の資産を送っているはずだ。スイスをはじめにして世界各国に資産を分散させ、仮想通貨もあるはずだよ。そうだろ。」
「そうなんだ。それで僕はね、大学院を出てから働いたこともなくアルバイトさえ、したことが無い。有り余る研究費を母さんから貰い、パソコン関係の特許を取った後は会社を作ることが出来た。恵まれた生き方をしてこれたよ。」
「それは、よかった。おれも働いたことは、ない。自分の趣味を仕事にしているし、だれにも雇われたことはないな。」
ここで霧沢は本池釣次郎の方を向くと、
「漁師だそうだけど、君は親の仕事を継いだのだろうね。」
と尋ねたので釣次郎は、
「ええ、父からの仕事をやっています。漁船一つで漁をしていますよ。」
と答えると霧沢は、
「ふーむ、それならロボット漁業も、していないだろうね。」
釣次郎は初耳の話に、
「ロボット漁業ですか?ええ、第一にロボットなど持っていませんし。」
霧沢は、
「地円の漁業はロボットが行っているものが多いよ。人魚型ロボットが海中に飛び込んで、海水中に網を張る。魚の多い場所までは網を広げないけど。漁獲を見込める領域まで海中を泳いでいく。
人魚の形で足は無く、尾ひれがあるから魚も安心して逃げないようだ。彼女の目は暗い海中でも光って見えるのだよ。地球の漁業は古来と、あまり違いはないだろう。」
と話す。釣次郎は、
「ええ。そういえば、そうなります。それでサイバーモーメントでモニターとして働ければ、と思っていますから、今は。」
と自分の胸中を語った。
黒沢は自信に満ちた表情で、
「防衛費は国家予算の30%になったから、うちに送られてくる仕事も豊富にある。兄さん、貴重な人材を有難う。」
「いや、おれの功績じゃないよ。知り合いの若い女性が連れて来たんだ。」
「そうか。不思議な巡り合わせだな。丁度、うちに若い人材が欲しいと思っていたんだ。兄さん、この件についての御礼は必ず、する。」
「そうかい?それじゃ、期待しておくよ。私は地円に帰るから。」
と話すと霧沢金之助はサイバーモーメントの社長のイスから立ち上がった。
 霧沢金之助が乗り込んだUFOは瞬時にして黒沢と本池釣次郎の視界から消えた。地円の陽元に帰っていったのだ、サイバーモーメントの社長の黒沢金雄の父は地円の陽元人だった事が判明したのだ。道理で頭のいい黒沢である。
黒沢の母、金子(かねこ)は新興財閥の一人娘で過去の時代的な表現では深窓の令嬢という形容が成り立つかもしれない。その財閥はインターネット関連の会社を複数×複数と増大させていった時代の先駆け的な会社だった。金子には自分用のパソコンを与えていた両親だ。彼女は幼いころからパソコンを触り、インターネットに接していた。小学校のころから通学は黒色の車で運転手が送り迎えしてくれた金子だった。その広い車内の後部座席で金子は、ゆったりとシートに背中をもたせて窓の外は見ずに左手に持ったスマートフォンでネットサーフィンを楽しむ。福岡市の中心に近い場所の小学校から大学まで一貫して進学できる教育機関に金子は通っていた。その通学手段は運転手付き自家用車だ。男女共学だが私立の小学校で入学者も少ないのは九州の福岡県福岡市なので珍しい話ではない、やはり富裕層の世帯が少ないのが一番の原因で教育熱心な親も少ないせいだ。福岡市には中学、高校と進める私立の学校は女子専用というものも二校あるし、中、高、大と進学できるキリスト教系の学校もあるが、小学校から大学までという教育施設は21世紀になってから創設された。
 そこから金子の自宅までは片道で自動車でも三十分は要する。所要時間三十分は窓の外に見える同じ風景よりもスマートフォンで好きなサイトを見て回るのが金子には面白い。
そういう通学を続けて今は大学に入り、二年目になって成人式を迎えた。この十三年間というもの運転手は同一人物で金子には必要な言葉しか喋らない。深く帽子をかぶっていて、顔は良く見えないが運転手の声は若い男性の声だ。金子は運転手は気にならなかったのだ。それは運転が凄くうまくて文句のつけようのないものだからだ。交通規則に違反することも一度もない模範的な運転手。だから金子は運転手に何か言ったことは実は、ない。それでも成人になる前から女性としては発育してくるし、運転手が男性らしいのは少し気にはなる金子では、あった。自分の胸は大きくなってきたし、乳首の感度も鋭いものを感じる。股間の黒の茂みは中学三年生で生えそろったし、その頃、生理も始まったが、運転手は気にならなかった。自宅に到着すると運転手は、
「御嬢様、着きましたよ。」
と簡潔に声を後部座席の金子に送ってくれる。そして、その声は金子が何か言いたくなるような声音でもなく、
「ありがとう。」
と一言、話すと後部座席の横のドアは金子が手を触れなくても横に開いた。
金子は理系の学部で生物学を学んでいた。同級生の男子は皆、眼鏡を掛けた真面目な青年ばかりで、金子には好意は持っても恋愛対象にはならなかったらしい。それで私的な会話を同級生の男子と小学一年生の時から交わしたことのない金子だった。
金子の母はインターネット関連の会社で働いていて金子の父と出会ったのだが男性と気軽に交流することの多い女性で、金子が十歳になるまでは父以外の男性とも交流を持っていた。それが、どの程度であったのか金子には知る由もない。そういう母は金子が成人した時は四十歳で、父は四十五歳だ。和服を着た金子の母は日本風の居間で金子に、
「金子。あなた男の人と交際したことないでしょ?」
と彫りの深い笑顔で訊いたので金子は、
「ええ。ないわよ。なんで、そんな事を聞くの?」
二人とも立ったまま、会話をしている。母は、
「わたしが十九歳のころには父さんと知り合って付き合い始めたのよ。その前に、ネット通販でバイブレーターを買って試していたのよ。そしたら或る日、電車の中で父さんと知り合いになり、休日には父さんの車で福岡市郊外にドライブしてね。色々な場所で夕陽を見ながらキスをしたものだわ。」
「ふーん。そうなの。それで十九で私を身ごもったのね。」
「そうなるわ。できちゃったわ、どーしよー結婚よ。私も父さんも会社員だったけど違う会社だったから、社内恋愛では、ないのね。」
「そーかー、それで?」
「だから、あんたもさ、わたしを見習って早く結婚したら?どうなのよ、って話なの。」
「そういう事ね。でも、大学の勉強は私には面白いものなの。周りの男子も勉強好きな真面目な人ばかりで。」
「母娘って似ているのよ。勉強より男を捕まえなさい。母さんがバイブレーターを買ってあげようか。」
「そうね、買ってもらってもいいけど。でも、ふつーさー、そんな話をするの?母が娘に。」
「普通、しているかもよ。わたし、あんたの子供、つまり私の孫の顔が早く見たいのよ。あんた私の一人娘だもの。わたしたち夫婦で働いて大金持ちになったけど、わたし大金には余り興味がないから孫に全部上げたいから。あんたも早く相手を見つけなさい。」
「って、命令するの?わたしに。」
「命令は、しないけど。勧めているだけ、だけど。あなたは私より美人だし、胸もお尻も大きくなったわ。そっか。」
と話すと金子の母は右手の人差し指と親指を合わせてパチン、と弾いて音を立てると、
「美人は敬遠される昔からの日本の風土。あんたを美人に産んだ私が悪いのだわ。ごめん、金子。」
「何も謝らなくてもいいわよ、母さん。それに別に異性で悩んでいる訳でもないもの。」
「異星で異性に悩んだら?」
「え、何のこと、それ。」
「地球外の星を異星というわね。その星の異性、つまり自分と別の性別の男性に恋をするの。」
「そんなのー、SFじゃないの、母さん。」
「いえ、いえ。その位の気持ちを持ってほしいの、母さんは心配でね、金子が一生独身でいたら、どうしようかって悩んでいる事もあるから。」
「独身だとしてもウチは、お金あるでしょ。わたし、一生困らないはずよ。」
「それは、そうだけど。一般的には晩婚の日本だから焦らなくても、いいわよ、金子。」
「ええ、もちろん、そうするわ。でも、頑張ってみようかな?」
母の琴音は娘の頑張る発言に同意した顔で無言になり、金子は自由奔放な身動きで自分の部屋へ行く。窓の外には小さな山が見え、紅葉の季節だ。山の麓の林が秋を主張していた。母には、あのような強気の発言をしたが、金子は実は男性との出会いを熱望していた。一人で自分の部屋にいる時は頭の中に、その出会う男性像を思い、見えない絵筆で理想の男の姿を描いてみる。いっそ日本人離れした男性がいい、と思うと彫りの深い顔に目は青で…、いや、行き過ぎかな、そうだ瞳の色は茶色がいい、鼻筋が真っすぐで高く、髪は短くなくてもいいし・・・
 幼いころから親しんだノートパソコンはテレビのない部屋で何でも娯楽を提供してくれる。理想の男性の顔を画像を組み合わせて作ってみるのも金子の最近の楽しみの一つだ。金子はプログラミングも出来るので写真画像のソフトを作って自分で楽しんでいる。が、写真は現実的すぎて、どうも自分の理想の顔は作れない。幻想の方が理想の男性像を作りやすいのだ。それで金子は目を閉じて、その理想の男性を思い描くこともあるし、目を開けたまま白昼夢のように、その男性を見ることもある。どちらにしても若い男性で知的で容貌の整った白おもての顔の人。(日本人には中々、いなさそうだけど。)と金子は思う。それが段々とハッキリ、金子の心の目に見えてきた。
バイブレーターって、母さんが言っていたわ、よし検索しよう。金子は心の目を閉じてノートパソコンで検索する。
一番上に出てきたのは、
最新バイブレーターを御紹介
というサイトだ。それを金子はクリックする。
何人かの人気AV男優の顔が掲載されていて、その男優の男根から製作したバイブレーターを売っていた。金子の理想の男性の顔には程遠すぎるAV男優の顔だが、無理にも一人を選ぶと、そのバイブレーターを買い物かごに入れる。そして清算した。注文完了!即日配達で、つまり今日、届く!東京ではないのに地方都市の福岡市でも今日、届くのだ。ネット通販も進化したものだ。
 その日の夕方に金子が大学から帰ると母が玄関に立って右手に小包みを持っていた。母の琴音はニヤリとすると右手を肩の高さまで上げて、
「これは大人のおもちゃでしょ。」
と訊いてくる。金子は、
「ええ、そうよ。母さんがバイブレーターの話をしていたから。」
「それじゃ、バイブレーターなのね?」
「ええ、そうです。御明察のとおりよ、母さん。」
「それなら、中を見ていいかしら?どうせ、あんたの御小遣いは私が出しているんだから。」
「ええ、でもスグに持ってきてよ。」
「はい、はい。すぐに二階のあんたの部屋に持ってきますよ。」
二人の母娘は玄関から、それぞれの部屋へ散開した。
 二階の部屋に入ると金子は椅子に座り、(もう届いたわ。AV男優、今唐達蔵(いまから・たつぞう)のペニスのバイブレーターを見て母さんは何を思うのかしら?)
母の琴音は自分の部屋の和室で(富裕な家らしく、夫人の部屋もある)娘の金子に送られてきた大人のおもちゃの小包みを開いた。中から出てきたのは茶色の男性器の平常時の長さのモノ。白い紙には、
この度は弊社の製品をお買い上げいただき誠に有難うございました。
AV男優の今唐達蔵の男性器を再現したシリコン製のバイブレーターです。このバイブレーターの特質は勃起する事。女性の肌を感知すると勃起を始めます。お客様が女性の場合は手の指で触っただけでも勃起し始めるでしょう。その他のもっと女性らしい部分で接触した場合は完全勃起までの時間は短くなるように設定してあります。
唇、乳房、乳首、そして女性器そのもの、などなど色々な部位で、お試ししてみては、いかがでしょうか。
 という説明文だった。もちろん、それ以外にも、その会社の住所やサイトおよびメールアドレスなども記載されている。琴音はビニール袋に入っているバイブレーターを取り出した。が、何の変化もない。(あれ?勃起しないわよ。あ、そうか。電源を入れていなかった。ん、充電すれば、いいのね。)ACアダプターでバイブレーターを充電する琴音。充電は十分と短い時間で済んだ。再びバイブレーターを細い指で握る琴音は手の中に膨張してくるバイブレーターのバイブレーションを感じた。(大きくなってきた。硬いわ・・主人のよりも、すごくなりそう。)
完全勃起したバイブレーターは亀頭の張りも十分だ。琴音は椅子に座ると足を大きく開き、熱さえある、そのバイブレーターを自分の中心に持っていく。

 二階にいる金子は母の琴音が中々、階段を上がってこないので、
ノートパソコンを起動するとメールが届いている。
 貴女を探していました
という件名で、本文は、
生物学者の会合で日本に来ています。貴女の大学の先生から生物学に熱心な人がいるという事で、紹介してもらったのです。ひまな時にでもメールください。星頼北男(ほしより・きたお)と言います。
(ほしより・きたお、って変な名前だけど、日本人みたい。海外に住んでいるのかな。)と思うと俄然、好奇心が沸点に到達する勢いで跳ね上がる。それと同時に条件反射のように金子の両手の指は、返信メールを打っていた。
こんにちわ
メールをありがとうございます。今、ひまなんです。ぜひ、お会いしたいと思います。
 それを送信すると五分もしないうちに返信が来た。
迎えに行きますよ
貴女の自宅の住所も教えてもらっています。今から車で行きますので、自宅にいるなら待っていてもらえませんか。
 それを見て金子は返信した。
待っています
自宅にいますから。
 一分後に門の外に車が停まる音がした。金子は下に降りると、母の部屋から、
「ああ、すごいー。」という甘えるような声がした。多分。バイブレーターを使っているんだ、と金子は思ったが玄関を開けて外に出ると門の外に白い大きな車が停車していた。玄関の鍵を掛けると身をひるがえして金子は門の外に出る。白い車の運転席が開くと、中から背の高い好男子が現れた。金子は思わずア!と叫んでいた。その好男子の顔は、自分がパソコンの画像ソフトで作成した理想の男性の顔、そのものなのだ。神秘学でいうところの引き寄せの法則が働いたのだろうか。驚いている金子を見ると、その男性は笑顔で、
「星頼です。メールしたんですよ。ドライブしましょう。乗りませんか。」
と優しい声で誘う。金子は逆らう意志など爪のかけらほども持っていず、
「乗りますわ。どこへでも連れて行ってください。」
と答えると白い車の開いたドアから助手席に乗り込んだ。
 運転席に星頼も戻ると助手席の金子に、
「行きたいところ、ありますか?」
「え?海でも見たいです。」
「それなら第二アイランドシティに行きましょう。」
「アイランドシティの隣の新しい人口島ですね。うわあ、行きたかったんですよ。」
星頼北男は運転席の前にあるタブレット型のようなパソコンに似た画面に出ている地図のある地点を指で押す。そこが福岡市の第二の人口島、第二アイランドシティだ。それから自動運転のボタンを押した。アクセルが自動で下に下がると車は快適に発進した。自動運転の開始、人間の目と違って自動運転の車の目であるカメラは前後左右についている。それを同時に捉えられるのが人間の目よりも優れている点だ。車の自動運転より二つの目で判断して運転する人間の自動車操縦の方が、より危険性があるのは核爆発を見るより明らかだ。
シートベルトも発車前に自動で運転席と助手席の二人に絡みつき、嵌め込まれた。助手席の窓から金子が見る風景は車の窓も大きいので、街路樹の緑が印象的だ。第二アイランドシティの隣に浮かぶ福岡市最初の人工島のアイランドシティの上空に浮かぶ愛高島は今でも世界最大の謎とされているが、これは火星人によって作られた巨大なUFOであるのだ。その事実は知られてはいないが、地円の陽元人などは知っている。
 金子の目に人工島の上に浮かぶ不思議な島の愛高島が映った。金子は、
「わたし、まだ一度しか愛高島に行ってないんです。子供のころ、両親に連れられてヘリコプターで行きました。」
と言葉を運転席の星頼に投げる。
それを聞いた星頼北男は気軽に、
「あの島には着陸許可が要ります。この車では行けませんよ。」
「えええっ?この車は空を飛べるんですか?」
「ええ、もちろん。だから、あの島の近くまで飛んで空中で停止しましょう。そこからの眺めは超絶景ですよ。大絶景かな。」
「でも、とても目立つのでは?空に浮かんだ車なんて。」
「あ、いや。ある電磁波を車の周りに張り巡らせれば、人間の目には見えなくなります。スイッチを押すだけで。」
と云うと星頼は右手の人差し指で運転席の一つのボタンを押した。突兀として二人が乗っている白い自動車は空に躍り上がったのだ。後ろを運転していた車の運転手は、
「なんだ、前の車は!消えてしまったぞ!」
と大声を上げた。後部座席の会社の同僚は、それを聞いて、
「消える車なんて、ないだろう。頭は大丈夫か。」
「大丈夫だよ。やはり見えなくなって、戻ってこない。」
「何かの錯覚だろう。気にするな。これから重要な商談だぞ。取引先に今のような話は絶対にするなよ。」
「ああ、わかったよ。黙っておこう。」
その時、星頼北男と黒沢金子を載せている車は愛高島の近くで空中に停車していた。星頼北男は、
「金子さん、窓の外から下を見てください。」
金子は大きな窓ガラスを通して見える博多湾と、二つの人口島が見えるのを信じられない気持ちで、
「夢を見ているのかしら、わたし。車がこんなにも高い空中に浮いているなんて。」
「これこそ最高のデートスポットです。今、後部を変えるから。」
と話すと星頼北男はハンドル近くのボタンを押す。すると後部座席が広がり、それは縦にも横にも広がったのだ。後部座席は折りたたまれて床からダブルベッドが、せりあがってきて止まった。両側と後ろの窓には赤いカーテンが現れ、ベッドの横には小型の冷蔵庫まで出てくる。それで、まるで後部座席はラブホテルのように変貌したのだ。星頼北男は、
「金子さん。後ろの座席を見てください。」
金子は後部座席を振り向き、あっと息をのむような顔をした。そして、
「いつの間に、こんなに変わったのかしら。最初は、こんなものは、ベッドなんてなかったのに・・・。」
「今、変えたんですよ。金子さん、ぼくは貴女の理想の容姿と思うのだけど、そうかな。」
「そうなのよ。わたし驚いています。自分で画像ソフトで描いた男性像と貴方が生き写しなくらい似ているんですもの。」
星頼北男は勝者の自信を見せて、
「金子さん、後ろに行きましょう。そして僕らは好きなことが出来る。」
「椅子があるわ。窓の外に出るの?」
「いや、椅子は今から引っ込めます。」
星頼北男の指がボタン一つで、二人の座席の背もたれを下部にしまいこんだ。
星頼北男は金子を横抱きに抱くと、後部にある広い部屋へ運び、ダブルベッドに金子を横たえた。
金子は手早く全裸にされ、星頼北男は自分も全裸になる。金子は、さっき見たバイブレーターよりも星頼北男の股間に、ぶらさがったものが勢いよく立ち上がるのを見て、次に北男の美顔が自分の顔に近づくと自分の唇と北男の唇が重なり、自分の柔らかな太ももは広げられて北男の、そそり立つものが自分の洞窟の中に入るのを感じ、その甘美な感覚に忘我の状態となっていった・・・。

 それから二時間は二人は快楽の世界にいたが、北男とて二時間連続して立たせていたものも、ゆっくりと平時の状態に戻った。その間、三回は放出させて持続させていたから見事なものだ。四回目の金子の中への放散により、満足したように萎えていったのだ。北男は自分の横に寝そべっている金子に、
「驚いたかな?こんな展開に。」
と訊くと目を閉じていた金子はパチと両目を開き、
「いえ、理想的な成り行きです。もしかしたら、すぐ妊娠するかも。」
「ああ、それは私の望みでもあるよ。実は私の顔は、本当は今の顔ではない。」
と告白するように話した星頼北男だ。金子は困惑して、
「本当の顔?って、なに、それ、どんな顔?」
「こういう顔なんだ。そら。」
北男は自分の顔に両手を掛けると、顔の皮を剥ぐような動作をした。するとマスクが剥がれたように、北男の顔は別人の顔が現れた。その顔は科学者の顔、というべき顔で、さっきまで金子に見せていた甘い美男の顔では、なかった。
金子の心臓はギクリ、とした。別人の顔とは言え、悪い顔でもない。金子は、
「びっくりしたけど、なぜ、そういうマスクを着けていたの?」
「それはね、君の理想の顔を変顔マスクに作ったんだ。私は地球人ではない。地円という星の陽元という島国から来た。本当の名前は霧沢という姓だ。霧沢無次郎と(きりさわ・むじろう)いうのが本名さ。地球の日本人の名前みたいだが、そもそも地円から太古の昔に地球に来た我々の先祖が日本の女性と性交して産ませた子供は今の日本人に多数いる。君の理想の男性像についてはUFOから君のパソコンにハッキングして、その顔を見ていたから、それをスキャンして変顔マスク生成機に送れば、地球のパソコンの印刷みたいに変顔マスクが出来上がる。それを自分の顔に装着すれば、君には君の理想の男性の顔が見えた、というものだよ。」
金子は成る程、と思った。すごい科学的な機械だ。UFO?やっぱりだわ、地球の科学じゃないもの。星頼北男、本当の名前は霧沢無次郎の男は、
「金子さん、これからの生き方は貴女の自由だ。他の男と結婚するのもよい。ただね、わたし霧沢無次郎は貴女の生涯を地球の誰よりも裕福に暮らせる資産を送り続けることを約束しよう。どれどれ、ちょっと確認させてくれ。」
と彼はベッドの脇の台にある体温計のようなものを手にすると、金子の陰毛のあたりに接触させた。すぐに外すと、その体温計のようなものをジッと見た霧沢は、
「よし。妊娠している。男の子が生まれるだろう。その子には金雄と名付けたらいい。でも、これは提案だから金子さんが名付けてもいい。」
「金雄にしますわ。私の名前と似ているし。」

 服を着た二人は前部の座席に戻ると、霧沢無次郎は下界に車を降ろし、金子の自宅まで送った。

 サイバーモーメントの社長黒沢金雄は社長室で本池釣次郎に、
「わたしの母は数か月前に死んだ。私の名前の金雄は異星人である父が提案したものである、と母には聞いていたが・・・そして兄もいることも。さっき君と来た霧沢さんが僕の異母兄なんだ。サイバーモーメントの発明品の多くは、あの兄の発案が多いのさ。とても優しい兄さんだ。母は結婚せず、独身をとおした。それは男性の稼ぎなしに、母も働く必要がなく生きていけたからだ。その資産は私の実の父である地円から送られてきていた。」
本池釣次郎は、
「すごすぎる話ですね。僕も地円に連れ去られて、それから、ここに来たんです。」
黒沢は社長のイスから身を乗り出すと、
「そうだったのか。それまでは一漁師としての生活を送っていたわけだ。」
と語りかける。釣次郎は、
「そうなりますが、でもSF小説を読むのが好きで、漁師なんて退屈な毎日と思っていたんですよ。」
「そうだろう、そうだろう。漁業は少しも進歩しなかったからな。海に囲まれた国としては変な話だ。それではサイバーモーメントに入社、という事で、いいな?」
「それは・・・僕も完全に漁業を捨てられません。家が代々、引き継いできた職業なので・・・。」
「それでは、まずはアルバイトみたいなものでもいい、か。」
「そうです、それなら出来ますよ。」

 陸上自衛隊の第四師団がある春日市は福岡市の南にある。外から見ても、その地下に広大な敷地があることは分からないだろう。その敷地は地上の三倍とも言われるが、今なお造営中だ。ジープで荒堀二尉に連れられて本池釣次郎は正門から陸上自衛隊春日駐屯地に入った。荒堀二尉はジープを降りると、
「まずは、やらなければならない事がある。それを、まず、やりに行こう。」
と話した。釣次郎は訳も分からずに、
「はい、お願いします。」
と答えると、颯爽と制服を着て歩いている荒堀二尉に遅れじと、ついていく。建物は多く、何が何やら分からない釣次郎は、その中の一つの兵舎に入った。荒堀二尉がドアを開けると、その中は白い服を着た隊員がいて釣次郎を見ると、
「今から調べるから、こっちに来るように。」
と話した。そこは医務室のような部屋だった。白衣を着た、その隊員は、
「その椅子に座って。上着とシャツを脱ぐ。」
と指示し、上半身を露呈した釣次郎の胸に聴診器を当てた。
「うん、異状ないよ。あとは体重と身長を計る。」

SF小説・未来の出来事21 未来の自衛隊 試し読み

童貞では、ないだろうと聞かれた積立金策は、
「実は風俗の女以外には童貞なんだ。君の言う事は正しいのかもしれない。」
と苦笑いをしながら、その美女に答える。美女はホ、ホ、ホと笑うと、
「わたしの体で風俗以外の女性にも童貞で、なくなれるわ。」
と言われた積立金策は、好奇心で目を光らせ、
「君の職業は一体、何なんだ?」
「婦人自衛官です。」
おい、積立、仮眠時間は終わったぞ!起きろーっ!
と耳元で声が大音響・ハイレゾ音源で鳴り響いた。積立金策は(そうか、夢を見ていたんだ・・)と気づいた。・・・・・
 という僕の友人の話です。」
と流太郎は荒堀二尉に話し終わった。荒堀二尉は、
「うん。その女性はロボット女兵士だと思う。積立さんは又、出会うだろう、その女性に。」
と話すと続けて、
「ここでは他にも様々な新兵器を実証実験しているんだ。共和党になってから国防予算を飛躍的に増やせてもらえたからね。文官が我が世の春を謳歌した時代は終わった。共和党には幕僚長だった人も多い。今の防衛大臣は、そして、これからも退官した幕僚長が就任していく。それ以外の防衛体制は、ありえないよ。体験入隊さえしたことのない奴らが長らく、日本の防衛大臣とか古くは防衛庁長官だったからね。
 そんな奴らに軍事の何が分かるというんだ。」
ここで荒堀二尉は激怒を、こらえる表情になると右手の拳を握りしめた。
流太郎は賛同して、
「それで素晴らしい新兵器が大型台風のように開発して行けるのだとしたら、古い時代の日本、2020年代のとかの日本より遥かに進歩して行けますね。」
荒堀二尉は満足げに、うなずくと、
「2020年ころまでは特に日本国民自体が自分たちに都合のいい政治屋しか選んでいなかった。老人福祉を優先してくれるとか、そういうのをね。野党も大したのは、いなかったから同じだけど。朝鮮半島からミサイルが飛んできたから日本国民も目を覚ましたんだよ。それで共和党に支持が集まり、新しい時代を日本が迎えた。」
「朝鮮は一つの国に、なったのに何故、ミサイルを日本に飛ばしたのでしょうか。」
「ああ、あれは操作ミスだったらしい。が、どちらにしても東京の上空まで到達する前に撃ち落とし、日本海に沈められたから大事には至らなかったが。
そこで大朝鮮民国に対しても新兵器を開発している我が自衛隊なのだよ。」
「そうなのですか。教えてもらえませんか。無理ですか?」
「いいや、大丈夫だ。でも、くれぐれも口外は、しないように。」
「公害になるから、ですか。」
「いや、他の誰にも喋って貰いたくない、という事だ。その点は、心に置いておくように。」
「分かりました。重々、焼き肉ジュージュー心がけます。」
荒堀二尉はロボット女兵士たちに、
「君達は隊舎に戻るように。今日の私の指揮は終わりだ。」
横並びに一直線のロボット女兵士は、それを聞いて迷彩服を着ると不動の姿勢で、それぞれが敬礼して足早に巨大な演習場を出て行った。荒堀二尉はスマートフォンのような無線機をズボンから取り出すと、
「矢線三尉、BW砲を搭載したもので、やってくるように。」
と命令した。
演習場内の一角から戦車が現れた。荒堀二尉と流太郎のいる場所から百メートルは離れている。その戦車は時速70kmは、あろうかという速度で流太郎の目の前に出現して急ブレーキで急停止した。
戦車の中から迷彩服を着た男性が現れ、荒堀二尉に直立不動の姿勢で立つと敬礼して、
「BW砲、発射準備完了です。」
荒堀二尉も敬礼すると、
「矢線三尉。それではBW砲の試射を行う。この演習場の中央に向けて発射するように。」
「はい、ただちに試射を行いますっ!!」
矢線三尉は戦車に乗り込んだ。巨大な砲門が左右についている大型の戦車だ。時速100kmは出して走行可能なのだそうだ。
茶色の戦車は右側の砲門の角度を上に向けていく。四十五度の角度で停まると、
バシッと光が炸裂したように砲口から光線が発射された。その光は演習場の中央の空間で停止すると、次第に若い女性の姿に変わっていく。
巨大な十メートルは、あろうかと思われる下着姿の若い女性が現れたのだ!
 その姿は流太郎や荒堀二尉の位置からは後姿しか見えない。盛り上がった尻とブラージャーの後ろの紐、どちらも白の下着。立体的にも見える若い女性の下着姿。
 荒堀二尉は無線機で、
「彼女を反転させて、我々の方に姿を向けさせろ。」
と命令した。たちまち、その巨大な美女は体を優雅に旋回させると自分の全身を正面から見えるようにした。
 その顔は白く眼は大きく、鼻筋は通って細い眉毛に長い睫毛。巨大な胸は形がよく、ピンクの乳首は透けて見える。股間を覆っている下着も透けていて、巨大な黒の縮れた陰毛が見えるのだ。
細い肩の両側に垂らした両腕の手の平を前面に向けている彼女は、まるで抱かれるのを待っているかのようだ。
 身長十メートルもある巨人すぎる下着姿の美女が流太郎と荒堀二尉の前に立っている。荒堀二尉は流太郎の股間を観察した。そこは少し盛り上がったようだ。荒堀二尉は(よし、これは上出来だ)と内心思った。何故ならば、ここまで巨大な女性に反応する男性も少ないと思われるからだ。
 無線機が鳴り始めたので荒堀二尉は、それを耳に当てて、
「どうした?矢線三尉。」
「大変なことが福岡市内で起こっているそうです、荒堀二尉。」
「大変な事、とは?」
「福岡市内に巨大なUFOが出現しています。」
「それで、どうした。」
福岡市内の中心にある天神という場所はデパートやビルが立ち並ぶ人口密集地だ。天神中央公園という広い緑の公園があり、そこにはブレイクダンスやギターを片手に歌う若者なども集まってくる。
数百人は、つどえる場所なのだが平日でもクリエイティブ志向の若者や、外回りの営業社員の憩いの場だ。そこへ午前中の今でも数十人の人々がいる。突如、天神中央公園の上空に巨大なUFOが現れたのだ。
いきなり黒い影で公園は覆われた。空を見上げた人々は、
「あっ、UFOだ。どでかいぞっ。」
「ここに降りてくるんじゃないのかー!」
「逃げよー。何が起こるか、分からない。」
と叫びだした。
クリーム色の円盤は徐々に降下し始めた。その円盤の直径は天神中央公園の直径の半分は、ある。
急降下した円盤は急停止した、その高さは公園から十メートルの高さだ。
円盤の底部から黄色の光が放出され、その光は公園に届くと消えた。その光の中に三人の女性の宇宙人が立っていたのだ。身長三メートルの全裸の女性宇宙人。黒髪が二人、金髪が一人で、股間の陰毛も、その髪の毛の色のままだ。公園にいた人々は走って逃げだしたが、三メートルの全裸の女性宇宙人も走り始め、背広を着た男性や、私服の若い男らを、つかまえると地面に軽く押し倒した。
凄い力らしい、その全裸美女たちは巨大で形のいい乳房を揺らせつつ、押し倒して馬乗りになった男のズボンを脱がせ始める。女性とは言え宇宙人で力も強く、また彼女達に見つめられると、その甘い瞳に男たちの下半身は、とろけそうになり勢いよく勃起した。ズボンをおろされパンツから勃起した肉棒を出されても、抵抗できない公園にいる男たち。
 三人の巨大な全裸の宇宙人に男三人は、同時に逆強姦された。騎乗位で彼女達を貫かされたのだ。その女性たちの膣自体も三メートルの身長に、ふさわしいものだったが、締りがよく、搗き立ての餅のように柔らかで、すべすべっとして、なめらかに男たちの勃起肉棒に絡みつく。その気持ちのよさは地球の女の三倍は気持ちよかったそうだ。
・・・・という事態が発生しているそうであります。」
と矢線三尉の興奮気味の声が荒堀二尉の耳に報告した。
 荒堀二尉は(・∀・)ニヤニヤすると、
「それから、どうなっている?その裸の女子宇宙人と男たちは。」
「三人の男は円盤の中に黄色い光線で裸の女性宇宙人と共に吸い上げられたそうであります。」
と矢線三尉は無線機で答えた。荒堀二尉は、
「その円盤は?何処にいる。」
「上昇して見えなくなったそうです。」
「ふーむ。宇宙人に福岡市の男が三人、連れ去られたか。」
荒堀二尉の無線機に赤いランプが光る。緊急連絡の印である。荒堀二尉は、
「緊急連絡が来ている。切るよ、矢線三尉。」
それから赤いボタンを押すと、
「はい。藤丘一尉、こちらはBW砲の実証中です。。」
と答えると藤丘一位の声が、
「他の部隊は緊急体制に入っている。が、君達は新兵器の実証、実験を続けてよろしい。」
「はい、藤丘一尉、続けます。」
「もっとも、これから君達の出動もないとは限らん。その点は心に留めておいてくれ。」
「UFOに男性三人が連れ去られたそうですね。天神中央公園から。」
「そうだ。大勢の目撃者がいる。ネットニュースには、すぐに配信された。戒厳令などは出ないが、福岡市民、特に男性は又、狙われるかもしれん。昼にスマートフォンでニュースなどを見る人たちは驚くだろう。」
「自分も驚きました。」
「そのUFOの目的は男子を連れ去る事らしい。侵略攻撃などは行わないと幕僚の方では判断されている。
で、だ。君らも帰宅途中は気を付けた方が、いいよ。」
「とはいえ藤丘一尉。相手は我々より遥かに、すぐれた方法を持っているはずです。防御手段など思いつきません。」
「そうだろうな。その時は、その時だ。種馬みたいな男が欲しいだけかも知れんからなー。まあ、連れ去られてみるのも一つの方法だ。帰れることがあったら、その時には報告してほしい。」
「そんなー・・、でも、そうするしかありません。」
「では、勤務を続けるように。」
「はい、続行します。」
無線機を切ると荒堀二尉は、
「UFOからの宇宙人女性による逆レイプ事件が発生したらしい。三メートルの身長の宇宙人女性の美女三人が全裸で現れて、天神中央公園の男性三人を公園内で逆レイプして宇宙船で連れ去ったそうだ。
ここは地下施設のため、UFOが現れることもない。まずは安心だよ。しばらく、ここに泊まっていってもらってもいいよ、時君。どうかね。」
「社長に話してみて了解が取れたら、そうしたいです。でも、僕は今まで色々な星にも行っていますし。」
「そう、かね。宇宙人には抵抗がない気持ちか。」
「そう言えるかもしれません。」
「昼に、なったよ。めしに、しよう。ここの地下にも食堂は、あるから。ついて、きなさい。」
そう話すと荒堀二尉は無線機を再び手に取ると、
「矢線三尉、昼めしの時間だ。一緒に行くぞ。」
と話した。

 地下食堂で昼食を終えた三人だった。主に新兵器開発室で使う食堂なので、それほど広くはない。壁にはビキニ女性のポスターが数多く張り付けてある。荒堀二尉は静かな口調で、
「宇宙人の襲来は今、始まったわけだ。しかも、それは裸の美女たちによる逆レイプなわけだ。何処の星から来たのかも分からないのだからな。」
矢線三尉は、お茶を片手に、
「あのような場合、これから自衛隊が出動するんでしょうか。男たちを連れ去っただけなら、軍隊が攻撃してきた訳でもないです。」
と荒堀二尉に尋ねるように話す。荒堀二尉は、
「そうだな。一種の性犯罪・・・にも、ならないな。男を逆レイプしても女の罪には、ならない。円盤で連れ去ったのは誘拐だから自衛隊の出る幕では、なかろう。われわれは待機的状態に置かれると思う。」
流太郎は訊く、
「宇宙的防衛の能力は日本どころか世界中に、ないですよね、今現在も。」
荒堀二尉は、
「そうだな。」
とポツンと答えた。

 この福岡市中央公園の男子の円盤誘拐から防衛省内に宇宙防衛庁が発足した。とはいうものの、宇宙防衛装備は貧弱なものである。空飛ぶ円盤を発見しても攻撃を開始しない限り、静観していなければ、ならない。それに空飛ぶ円盤は視界から消えてしまうものもある。
 今のところ男子三人が円盤に連れ去られただけだ。それ以降、一週間たっても例の円盤は現れてこない。大規模な被害が出ない限り真剣に行動する事もないのが防衛関係の仕事だろう。
 この事件は世界的に有名となっていった。円盤の出現と逆レイプ、そしてレイプされた三人の男性が黄色い光で円盤に吸い上げられるのをスマートフォンで撮影していた人たちも、その場にいたからだ。
その動画を動画共有サイトやSNSに投稿したりしたため、土砂降りの雨のように世界中に拡散された。
Fukuoka ufo
という言葉は全世界で知られることになった。

 午後からの巨大地下演習場では空からの護衛機による作戦が展開された。
荒堀二尉は、これをABD作戦と呼ぶ。グオオーンという凄まじいエンジン音と共に巨大演習場の上空に三機の護衛機が現れた。三機とも急降下すると何かの物体を次々に演習場の中央地帯に落としていく。その後、三機は演習場の外へと飛び去った。
 ネット裏ではなくネット前に立っていた荒堀二尉、矢線三尉、流太郎の三人である。その爆撃を見た流太郎は、
「爆弾では、ないみたいですね。爆発しません。」
と声を上げた。荒堀二尉は微笑して、
「爆発物では、ない。あそこまで行くぞ。」
と二人に声を掛ける。
少し駆け足で荒堀二尉が走り出したので、残ってはならないと二人も走り出す。
爆弾ではない何物かが落ちた場所に三人は辿り着いた。流太郎は落下しているものを見て、
「あっ、これは・・・。」
と声を出してしまった。なんと、そこに落ちていたのはカラーのアダルト雑誌で、表紙は全裸ヌードで美女が椅子に座って大開脚している。その股間には黒の陰毛と、その下の開いた女性器が無修正で写し出されている。
荒堀二尉は両手を腰に当てると、
「ABD作戦とはAはアダルト、Bはブック、Dはドロップの略語で、つまり、これらのアダルト雑誌を敵陣地の最前線に落とす作戦だ。」
と声も高らかに宣言した。
矢線三尉もエロ雑誌の前に立つと、
「これは凄いな。ヨーロッパの女性、から朝鮮、中国、日本の女性も写っていますね。十種類の雑誌みたいですが、日本の女性のオールヌードは日本国内に落下させるのですか。」
と質問した。荒堀二尉は得意げに、
「これらは、その一部でね。全世界各国の若い美女のフルヌード、大開脚して女性器丸見えの雑誌を新兵器開発室で製作している。日本国内に落下させるのは、ありえない話だけど、敵が日本に上陸してきた場合、それは第一に沖縄である。その場合、これらのエロ雑誌を沖縄の海浜に落下させる計画なんだ。」
矢線三尉は感心して、
「マンコは剣よりも強し、ですか。驚いたなあ。」
と発言した。荒堀二尉は、
「これを開発しているのは世界でも我が国だけだ。最前線の兵士たちは性欲が頂点にまで抑えられているから、これを見たとたんに勃起する奴も多いだろう。それから日本の自衛隊は軍事作戦を展開する。」
と話す。矢線三尉は荒堀二尉の顔色を覗うように、
「この雑誌のどれか一つを貰ってもいいですか。」
「ああ、いいよ。これはサンプルだから写真も鮮明度が落ちる。ただし、古本屋には売らないでくれ。」
と荒堀二尉は念を押した。矢線三尉は腰を屈めつつ、
「ありがとうございます。どれに、しようかな。」
と声を出した。荒堀二尉は、
「どれか一冊にしておけ。珍しいのは中国の美女のマンコでは、ないか。」
「そうですねー、あ、これか。」
矢線三尉は表紙が中国美女の大開脚、オマンコ丸出しのものを拾い上げた。そして、
「中国はポルノ禁止だから撮影は困難だったでしょう。うわあ、中国の女のオマンコを見るのは初めてです。」
と感想を漏らしたので、荒堀二尉は、
「香港の女性を採用したよ。香港映画にも出ているそうだ。」
「中国人向けには最高ですね、これ。」
と矢線三尉。荒堀二尉は、
「その通りだ。時君には申し訳ないが、これらの雑誌を差し上げられない。なにせ、武器だからね。」
と流太郎にダメを押した。

 博多湾の海岸線は、かなり長い。その沿道でマラソン大会が行われたりしている。国際的なマラソンの歴史は福岡市では古くからある。その沿道は大きな道路で、もっと北に行くと博多湾の海に面した場所がある。小さな漁船が並んで停泊している場所も一個所ではなく、博多湾を北に取り囲むような地形の、あちこちに見られる。
 漁業に携わる人達も少なくなり、一人で船に乗り漁をしている若者も多い。本池釣次郎も、そんな若者の一人だ。年齢は二十歳、高校を出て最初は親に連れられて漁に出ていたが、二年たつ今、一人で船に乗って海産物を採集している。
 漁師の朝は、とびきり早い。午前四時には船に乗る。本池釣次郎は福岡市西区の小戸という海に面した場所に住み、午前三時半に起きて船に乗るのだ。
イカの墨みたいに黒い闇の中を明るいライトをつけた小さな漁船が博多湾に出ていく。本池釣次郎の乗った船だ。二年も漁をして逞しい体の釣次郎は身長は180センチはある。
 彼は沖に出て投げ網をした。遠くの灯台に明かりが灯(とも)っている。それで真の闇ではないし、釣次郎の乗っている漁船は強い光を発しているので、彼の手元は昼のように明るかった。
 投げ網だけではなく、釣り竿で針に餌を付けて暗い海に投げる。トッポーン!という音を立てて餌の付いた釣り針は醤油のような海面を潜(もぐ)った。
 しばらく待ったが、今日は魚が餌に掛かってこない。いつもなら、もうウキが動くのに。
手ごたえの無さにボンヤリとして沖を見る釣次郎の目に驚くべき光景が見えたのだ。
 暗い海上の上を一人の美女が全裸で歩いてくる。それだけでも釣次郎は腰が抜けるように驚いたが、その美女の髪の毛は膝まである長さで、その白い裸体を薄い黄色の光が覆っているのだ。幽霊か?幽霊に違いない、と釣次郎は思った。もう、その裸女は目の前、五メートルに近づいてきていた。
 幽霊ではない、と釣次郎は思いなおした。何故なら彼女の裸体は白いが透明ではないし、おいしそうな果実のような二つの乳房はプルプルと蠱惑的に揺れている。それにしても彼女は女神のように海の上を歩いてきたのだ。だから人間とは思えない。
 口を開く事も出来ない釣次郎の目前、二メートルに迫った海の上を歩く美女はス~っと空中に浮き上がると、釣次郎の船の上に着地した。釣次郎の右横だ。動けないでいる釣次郎に全裸の美女は、
「驚いても無理は、ないわね。でも、わたしは妖怪でも超能力者でもない。今、あなたが見た海上の歩行は貴方にも出来るのよ。訳は後で話すから、とりあえずはセックスしましょう。」
と話して釣次郎に近づく。
 釣次郎は、その女性の身の回りに輝いていた黄色い光が消えて今は船の明かりで見える姿となっているのに気付く。釣次郎は座ったまま、彼女の方を向き、
「一体、あなたは人間なのですか。」
と訊いた。
「人間だから安心して。」
彼女の手は釣次郎の股間に伸びた。柔らかな手が釣次郎の少し張ったズボンの上から彼の肉息子を掴み、それから、それをパンツの中から引き出すと、釣次郎を仰向けに倒して、海上を歩いてきた美女は釣次郎と裸体を重ねた。
 船の出すポンポンポンポンという音を聞きながら、釣次郎は自分の上で裸体を動かす女神のような女性の性技に圧倒されて、何度も男の精を解き放たれてしまった。
 太陽が水平線に頭の上部を、そのうち出すであろうと思われる薄明かりが海面を照らし出した時、釣次郎の上に乗っていた女神のような裸女は体を離して立ち上がった。
彼らの上空に丸い巨大なUFOが現れていた。そのUFOの底部から黄色い光が、まっすぐに下降して寝たままの釣次郎と立っている女神的美女を包括すると、彼らを円盤内に引き上げていった。

 本池釣次郎が消出した漁船は、やがて海上保安庁に発見された。人の乗っていない漁船が博多湾に漂流していたのだ。数百年前に起こったマリーセレスト号事件のように、この話は世界的に有名になっていくのだが、真相を解明した人物は誰も出なかった。
 本池釣次郎は遠い別の太陽の太陽系内にある地球と、同じような環境の惑星にUFOで連れ去られたのだった。
 円盤内では釣次郎を逆レイプした美女は宇宙服のようなものを身に着けた。縫い目のない服だ、そういうのをシームレスというのは割と知られている言葉で、服を着た美女は全裸の時とは別人のような知性溢れる眼差しで、
「あなたもチンコをパンツの中に、しまいなさい。」
と釣次郎の股間に注意した。
 服装を正した釣次郎は好奇の目で、
「あなたは日本語が、うまいので宇宙人には見えませんよ。顔も日本的美人だし。」
と云うと、
「日本語は勉強しやすい環境にあったの。」
「どういう事ですか。」
「円盤は着陸するわ。私の星に。着いた後で又、話すから。」
その星の大気圏に突入したらしい。空から眺めた、その星は地球と双子のように、よく似ていた。
 しかも日本列島に似た島が見える。違う点は、といえば朝鮮半島が大陸と切り離されていて、福岡県と接続しているところだろう。
長靴の形に似ている朝鮮半島は地球の場合、九州と朝鮮半島の間に対馬が、ある。しかし、その星では対馬はなくて、朝鮮半島の一部が福岡県と地続きになっている。
朝鮮半島の下部の横の広がりは福岡県の幅よりも広いので、そのまま接続は、そもそも出来ないのだ。
 その星の朝鮮半島の上部は海になっている。地球の場合は朝鮮半島の上部は中国とロシアに接している。中国に接している部分が地球の朝鮮半島の大部分で、ロシアとは、ほんの一部が接しているにすぎない。では、その星の朝鮮半島の上部の中国とロシアに接している場所は、どうなっているのか、というと、海になっている。
 それが見えたので釣次郎は、
「朝鮮が日本に、くっついた地形ですね。地球とは違うな。」
と話すと、その星の女性は、
「あれも元々は地球の朝鮮半島と同じように日本とは海で離れていたのよ。それを地形変動兵器で強引に我が国に接続させたの。その前に我が国は地球の朝鮮半島に、あたる国を武力制圧していました。それでも海で離れているため、統治が上手くいかないので、地形変動兵器で朝鮮半島を大陸から切り離し、わが国に接続させたんです。これには、この星の全ての国々は驚きました。
地球にも、ないでしょ?そんな兵器は?」
「ええ、ありえないです。貴女の国の名前も日本ですか。」
「いいえ、陽元(ようげん)といいます。意味の似た名前だけどね。それでさ、我が国の言葉も地球の日本と同じ言葉だよ。ほぼ、同じ。国の名前だけが少し違うのよ。びっくりした?」
「びっくり、しゃっくり、ぼったくり、ですー。」
「はい、わたしの家の屋上に着いたわ。降りようか。その前に、あなたの名前は、釣りをしていたから釣次郎とかじゃないの?」
「ええ、ええ、当たりです。本池釣次郎と、いいます。」
「わたし、銀河無量子(ぎんが・むりょうこ)よ。この星は陽元語で地円、といいます。さ、わたしに、ついてきて。」
銀河無量子が円盤の壁の前に立つとドアが開いた。彼女の尻の後ろから本池釣次郎が外へ出ると、太陽の光が注いだが、地球に降り注ぐ光とは微妙に違うものを釣次郎は感じていた。そらを見上げた釣次郎は、太陽が二つ並んでいるのに気付いた。地球でも同じように、太陽を直接見ることは無理なのだ。それでボンヤリと二つの輝きを釣次郎は見たのだ。
 地円という星に来るなんて、夢でも幻でも考えることも平凡な漁師の釣次郎には、なかった事だ。
プルン♪プルンと大きな尻を左右に振りながら歩き、色気を発しつつ歩く銀河無量子は二十代前半に見える美女。宇宙服はピッタリと彼女の体に装着されているので、尻の割れ目までが浮き出ている。
 ビルの屋上のような場所が彼女の自宅の屋上らしい。その片隅に下へ降りていく階段があった。階段を降りて、すぐ白色のドアがある。それを開けると銀河無量子は、
「中に入るわよ。」
と釣次郎を振り向いて話した。
 その部屋の中は円形の壁と窓を持っていた。四つの角があるのが普通の部屋だ。その角が無くて円で囲まれていて、窓もすべて繋がっていて円形で部屋を取り囲んでいる。体を一回転させれば360度の全ての窓の外から外の景色が見える。
 白い椅子が釣次郎の方に移動してきた。立っている釣次郎の背後に回ると、その椅子は停止した。銀河無量子は、
「客を探知すると自動的に移動する椅子よ。客人が座れる位置まで来ると自動的に停まるの。私は、しばらく立って話すから、あなたは、その椅子に座りなさい、釣次郎君。」
と話して右手の中指と親指でパチン、と音を立てた。催眠術にかかったように釣次郎は後ろも見ずに座ってみると、丁度の位置に自動客人探知椅子は、あった。尻もちを床につくのでは、という懸念も幾分あった釣次郎は、
「いやあ、ピッタリと座れる位置に来ていましたよ。驚きです、これ。」
と正に異星人を見る目で銀河無量子に話すと、
「機械だから間違いないわ。それは、この陽元という国でも高価だから一部の人達しか買っていない椅子。太陽光で充電されるから電気やら、その他のエネルギーは必要ないの。地球の日本も陽元のように発展して欲しいわ。でも、それは無理な話かもね。」
太陽光は、その部屋の全方位的に差し込んできている。銀河無量子は豊かな胸を張ると、
「ここは地球の朝鮮半島のソウルなのよ。私の父は朝鮮県知事をしているわ。父は今は県知事としての仕事で出ているから、この部屋も使えるのね。
父は陽元陸軍大将で、朝鮮方面軍司令官だったけど退官後は県知事になっているわ。」
と話した。
釣次郎は快適な椅子の座り心地を感じつつ、
「選挙で選ばれたんですか、県知事に。」
「いいえ。選挙なんて、ありません。朝鮮方面軍の司令官が退官後になる役職が陽元の朝鮮県知事なのです。朝鮮方面軍は陸軍の兵士だけで二百万人も、います。そのほとんどは陽元人です。朝鮮人は志願しても徹底的に調べ上げ、陽元に絶対服従の人間だと証明されない限り朝鮮方面軍には入隊させません。
 陽元国陸軍は陽元国内に四百万人。中国の満州に二百万人。」
なにか古い時代の地球の日本に似ているようだ。釣次郎は歴史は詳しくない。それで彼は、
「中国の満州?中華人民共和国に、そんな場所は・・・て、それは地球の話ですね。地円にも中国があり、満州があるんですか。満州って、どの辺にあるんですか。」
「それは地球の古い時代の中国と同じ場所ですよ。中国の東北地方です。陽中戦争で陽元が勝利を収めたので、台湾と朝鮮半島と満州が陽元の領土になりました。」
「陽元帝国ですね。天皇は?いますか?」
「陽元には地球の日本のように天皇は、いません。痔民党という愚かな政党が天皇らしき人物を祭り上げようとしましたが、共和党の多数反対により否決されました。陽元も地球の日本と同じ共和党という名前の政党が与党です。」
「痔民党って・・・自由民主党ですか。」
「そうです痔有眠主党ですよ。」
「うわあ、日本の野党の名前ですね。議席は三ぐらいしかない、という。」
「こっちの痔民党は二議席ですよ。笑いで受けたくて政党の名前も痔有眠主党と、つけたらしいわ。」
「自由民主党という名前が笑えるんですかね。」
「だって痔が有る眠りを主にする党なのよ、おかしくないかしら?」
「痔がある?眠り?」
困惑する釣次郎を見て銀河無量子は白板に電子ペンで大きく、
痔有眠主党
と書いた。それを見た本池釣次郎は笑い出し、腹を抑えて、
「その漢字の党だったんですね。おかしいや、それは。受けますよ、笑える。」
銀河無量子は、咳をオホンとして、
「陽元には天皇も歴史上に居ませんから、帝国という名は、どうかというわけ。地球の日本史を勉強した痔有眠主党の議員が発議したらしいのよ。笑いは取っても否決されました。天皇なんて陽元には要りませんから。」
なるほど、と釣次郎は、うなずき、
「日本でも今度、共和党で天皇制を廃止する発議が、ようやく出ましたよ。賛成多数で国会を通過すると思います。宮内庁と神社庁を、まず廃止しました、天皇の給料も昔の四分の一に、してましたが、それで税金で天皇の給料を払わなくても、よくするらしいです。」
銀河無量子は微笑みを浮かべ、
「地球の日本には私、詳しくないのよ。でもね、そもそも地球の日本には五千年前にも人々は、いましたし、国に似たものも、あったと思う。アラハバキの神様を信仰していたのが古代の日本です。
神武天皇は存在したか、どうかは不明ですよ。陽元では、そのようなものは存在していなくて天皇家もありません。それでも釜穴幕府や下戸時代は、あったのね。」
「釜穴幕府?下戸時代?」
「そう、です。釜穴幕府はオカマが開いた政府で、下戸幕府は酒を飲めない人たちが下戸という土地に開いた政府ですよ。でも日本と違って下戸幕府は二十年で討幕されました。
下戸城に大量の酒を放って大政奉還したのよ。その時から陽元の歴史は共和党が開いてきた。日本とはずいぶん違うけどね。
アメリカからベリーという人が来て鎖国を解き、陽元も共和党で国造りしてきました。
釜穴幕府が存在した釜穴は地球の鎌倉と同じ場所にあります。新宿のオカマが別荘とか引退した後の家を持つのが釜穴らしいのね。」
へえええっ、と釣次郎は驚きの表情だ。日本史よりも面白い。銀河無量子は興に乗った様子で続ける、
「アラハバキの神様あたりの話に戻りましょう。これは地球の日本の歴史の話。朝鮮半島は、そもそも日本人が移り住んで支配していたのです。三国史記という朝鮮の歴史書にチャンと記されているのですよ。そもそも神武天皇が日本を統一したとされる年は小さい国が日本には、あちこちにあったとか。で、怪しげな話になりますから。それと天照大神も怪しげな話では、ありますわ。太陽を神様だと信仰していたものが天照大神なのよ。それや、これや、あれやと日本の歴史はオカシナものばかり、我が星の陽元には神話は、ありません。
地球の世界各国でも王権神授説とかファラオは太陽神の子孫とか色々と権威付けを、おこなっています。
 陽元は地球の日本と似ていてパラレルワールドと誤解されそうだけど、実は結構な範囲内で違いがありすぎるみたいね。