SF小説・未来の出来事32 試し読み

 乗り物の中で官能的な描写を読んでいる貴美は頬を赤らめて、周囲を見回すと貴美を気にしている人物は、いなかった。慌てて電子書籍の画面に視線を戻す。
オレは喜悦しているアンドロイド妻の女の奥深くに男性の液体を、もう一度、放ってやった。
 こんな日々を送っているが、妻はアンドロイドなので婚姻届けは出していない。で、配偶者控除も出来ないが、そもそもオレは節税も必要ない。電子書籍のSFものを読むのがオレの趣味だ。今は*知らない星に連れられて*というものを読んでいる。それは・・・
 釣次郎はピラミッドの内部に連れていかれた。そこには水晶で出来た縦長の小屋みたいなものがあり、人間二人は入れる。二人を車に乗せて、ここへ案内してくれた僧侶は、
「その中に入ると他の惑星に瞬間的に移動できる。具体的な場所も入力すれば、そこへ行ける。一度に二人は可能だ。地球人のアンタは何処に行きたいかね?」
釣次郎は地球の時・流太郎が気になった。そこで、
「地球の日本の東京駅に行きたいです。」
と話すと、僧侶は小屋の壁にある機械に情報を入力した。僧侶は歯を見せて笑顔で、
「マリムさんと二人で一日か、その辺り地球の日本の東京に戻りなさい。これはボッダの指示だ。行く行かないは地球人のアンタが決められる。どうするかね?」
釣次郎は、いい息抜きだと思い、
「行きます、喜んで。地球も気になりますし、ぜひ行きます。」
僧侶は最後の入力を終えると、
「それでは中に入るように。マリムさん、あんたもな。」
その小屋の中に入った二人は、すぐに自分たちが何かに運ばれているのを感じた。ハッと思うと二人は東京駅の構内にいた。突然、現れたのに周囲の人達は気づかない。向こうから若い女性が歩いてくる。その女性は釣次郎に気づくと立ち止まり、
「本池釣次郎さんでしょ?もしか、しなくても。」
と呼びかけた。
「そうですが、貴女は、どなた?」
「サイバーモーメントの城川貴美と言います。時流太郎さんの会社に本池さんは、いるのでしょう?行方不明に、なったとか時さんが話していました。その時に本池さんの写真とかも見せて貰いましたから分かったんですよ。」
納得了解した釣次郎は、
「これから何処へ行かれますか、城川さん。」
と尋ねると、
「これからサイバーモーメントの東京営業所に行きますわ。」
そこで貴美は電子書籍を閉じた。東京駅に着いたからだ。ロケットカーを出て、そこからエスカレーターで一階に上がった貴美は快適に歩行していると二人の男性が自分を見ているのに気付いた。
日本人の男性と白人風の男性だ。日本人の男性は貴美に歩み寄ると、
「城川さんですね?」
と話しかけたので、貴美は立ち止まると、
「ええ、そうですが。貴方は?」
と不審げに聞く。話しかけた青年は笑顔で、
「本池と申します。時社長の会社の社員ですよ。時社長に東京駅に城川という女性がロケットカーで到着するから迎えに行って、と連絡がありました。」
貴美はホッと安堵の息をつくと、
「そうでしたの。不審な顔をしてごめんなさいね。」
釣次郎はニコニコして、
「いいえ、こちらこそ驚かせてしまって、すみません。我が社は町田市にあります。電車賃は、こちらで持ちますから。さあ、行きましょう。」
と申し出た。
 東京駅➡新宿駅➡小田急線・新宿駅➡小田急線・町田駅での移動だが夕方五時前なので座席に座れた。貴美を中央にして左右に釣次郎と白人風の男が座る。右にいる釣次郎に貴美は、
「本池さん、遠い惑星から一瞬で東京駅に着いたんじゃないのかしら?」
面食らったのは釣次郎で、
「ええっ?何故、その事を・・・・。」
と絶句した。貴美は、
「電子書籍のSFに書いてあったの。」と云うと左に座っている白人のような男性に、「あなたはマリムさん、じゃないのかしら?」
マリムと呼ばれて白人風男性は、「ぎょえっ、それも男子書籍に書いてありましたか?」貴美は「そうよ。ボッダの指示でしょ?」
釣次郎とマリムは、ほぼ・ほぼ的に同時に、
「ええ、そうです。」と併答したのだ。
電車の窓には流れていく神奈川の風景が見える。遠くに巨大な観音像が見えたりするのが新しい名所らしい。ボッダの事に話題が移った時に見えた白い観音像は偶発的な事象とは思えない。
 最近の日本は神社離れが加速している。コロナウイルスによる神社参拝を離れる人たちも増えるばかりだ。それよりも寺院は人も少ないので参詣客が増えている。ボッダは釣次郎に、これを見せたかったのか。そうではない、と思われるが未だに姿を見ていない釣次郎にとってのボッダであった。釣次郎は貴美に、
「遠い星に何故か覚者のボッダが、います。」
貴美は、どうでも良さそうに、
「ふーん、そうなの。仏教みたいで興味ないわ。」
とアッサリとアサリ貝の殻を捨てるような返答に釣次郎も、それから先を話せない。
町田に電車は到着した。三人横並びで歩けないので貴美は二人の後を追う。駅から歩いて数分の企業の缶詰のようなビルの地下に流太郎の合同会社は、ある。ドアを釣次郎が開けると中で座っていた流太郎が立ち上がり、
「やあ、いらっしゃい。城川さん。」
と待ちかねたように呼び掛ける。わずかながら来客の場合に対応できるテーブルとイスもある。そこへ貴美と釣次郎、マリムを導き、流太郎は、
「サイバーモーメントの黒沢社長から電話が入りましたよ。城川さんを出向社員として働かせて欲しい、とね。どうです?城川さん。」
それを簡素なソファに座って聞いた貴美は目をダイアモンドのように、きらめかせて、
「やりますわ、時社長。待ちに待った町田で始める仕事ですね?」
流太郎は上機嫌で、
「早速ですがホームページを作ってもらいます。あの机にパソコンも、あります。行きましょう、城川さん。」
貴美は手打ちでホームページを作れる。それを流太郎は黒沢社長に教えてもらっていた。HTML言語、CSS、さらにはブログを動かすXMLなどを駆使できる貴美である。
流太郎が大体の構想をWORDに、まとめていた。「出張ホストを手配します」というサイトを作って欲しいのか、と貴美は理解した。流太郎の声が貴美の頭の上から、
「それでは城川さん、よろしくね。早くなくていいから完成してください。」
と春風のように聞こえた。流太郎はソファにいる釣次郎とマリムの前に座ると、
「本池、こちらの方は、どなただ?」
釣次郎は改まると、
「この星の人では、ないんです。地球から遠い惑星の人ですよ。」
流太郎は左程、驚かずにマリムへ、
「ようこそ、お越しくださいました。あ、日本語でスミマセン。」
マリムは、さざ波のように笑顔を広げると、
「いやー、大丈夫ですよ。私は日本語を話せますし、日本の小説も読めますから。」
流太郎は安堵し、
「これは素晴らしい!これから色々と事業を広げたいんですけど、まずは手始めにホスト紹介業を行おうと思っています。コロナウイルス感染の一つの大きな原因がホストクラブに行く事だったりしますからね。店を構えていても女子は誰も来なくなります。
女性のデリバリーヘルスは古い昔からあるのに、デリバリーホストは多くないです。それにホストクラブではホストは酒を注いで、話を聞いたりするだけで女性客と肉体関係に陥る事は、ほとんどないし、出来ないんですね。それをデリバリーホストの場合では、女性客の望みを拡大させようという試みです。
しかし本番は、なしという設定にしなければ、いけないんですね。あ、お名前を御伺いしていませんでした。わたくし、時流太郎と申します。名刺を差し上げます。」
流太郎から名刺を貰うとマリムは、
「ぼくはマリム、といいます。地球と同じような星なんて銀河系にも幾つもありますし、宇宙は銀河系だけではないですから、その辺を地球人は自覚しないと、いけない。
身体能力も地球人は、それほど大したものではないです。僕の星にもホストクラブは、あるし、それにねー。」
マリムは両手を左右に広げると、
「地球とは規模が違うんですよ。ホストの活動のね、行動半径というか行動範囲というかね、ぼくの星のホストは遠距離出張もしますし、それに他の星にデリバリーホストとしてUFOで行きますよ。太陽系だって地球以外は、金星と火星で交流が行われています。彼らの認識では地球人は野蛮、という事で交流したがらないようですよ。
特にアメリカ人なんて地球防衛軍なんて構想するけど文明が発達している星が地球を征服するのは簡単です。彼らは武器を考えるけれど、我々の星では一つの惑星を爆発させるだけの爆弾がありますし、それに武器なんて核爆弾や水素爆弾でなくても、いい。コロナウイルスのようなものでも、いいんですからね。我々の星には生物兵器は豊富にある。それでも惑星侵略のためには使わないんです。
コロナウイルスより強力な細菌だって最近じゃなく、百年以上前から開発していますね。本当に惑星侵略をしたいのは地球人、特にアメリカ人かもしれないけど、子供の火遊びは危険ですよ。月の裏側からも攻撃されてアポロ計画は頓挫したらしいですね?」
と背広姿の流太郎に問うマリム、流太郎は、
「いえ、知りません。まあ地球の科学文明は太陽系内でも遅れているのだとは思いますけど。」
マリムは我が胃を満たしたように、昔風なら我が意を得たように、
「それ、それ、それです。アインシュタインは光速が一番早い、と考えていたし、それ以外のものを考えられなかったので宇宙での航行が進まずにいるのが地球です。他の惑星では光速を超えた移動手段を持っているという事実を認めれば地球人は特に科学者は物凄い劣等感を持たないと、いけない。その劣等意識を持ちたくないが故のUFO否定にも、なるんですよ。」
流太郎は沈思話考に及び、
「私も他の惑星の科学は理解できません。けれども、それより稼がないと生きて行けません。これは地球規模での経済構造ですし。」
マリムは静寂感を表して、
「本当に、そうだね。労働して金銭を得て税金を納める。それで自治体や国が運営されるのが地球です。我々の星では労働は必要ではないので嫌々ながら働いている人は、いませんよ。」
流太郎は簡単に感嘆して、
「素晴らしい星ですね。労働のない世界なんて、まるで見たことのない夢の世界のようです。」
突如、部屋が動き始めた。わずかな揺れが感じられる。地震か?そうでは、ないようだ。地震とは左右に揺れるものだか、これは一方向に引っ張られていく動きなのである。地下にある部屋が何処に引っ張られるのだろう。
 流太郎、貴美、釣次郎の顔は緊張感で引き締まる。マリムは平然とした様子だ。異星人のマリムには動ずるべき事態では、ないのだろうか。例えて言えば地下鉄の動きのようなものを、四人は感じている。段々、速度が上がっていくようなのだ。地下鉄に乗っても、その揺れに慣れるように三人も落ち着きを見せ始めた。マリムは変わらぬ落ち着きぶりだ。
マリムは流太郎の話しかけに答えて、
「ええ、地球とは資源の違いが凄くあります。地球とは豊かな国ではない。例えば水道水にしても日本では有料です。電気、ガスもタダでは、ないし。これが我々の星では全て無料。食べ物もレストランに行かなければ無料で貰えます。」
地下鉄に乗っている気分になった貴美はパソコンを打つ手を止めて、
「どうして無料なんですか?」
好奇の目で問いかけた。マリムは生徒に教える教師のように、
「農家に国家が収入を与えています。地球と違って悪天候が続いたり、雨が降らない事が続くような事態にも、ならないのです。つまり、常に豊作、毎年が豊作、海では大漁の日々です。漁業の人達と農業の人達は、それぞれが収穫したものを物々交換します。
要するに金が回る事が少ない。ボッダは、その超能力の凄さで人々から寄進を受け、広大な土地も彼に捧げられました。
ボッダは働く必要なく、信者の寄進により生活しています。それは地球の宗教法人も似ていますが、ボッダには個人で手に入れるものも、お金が要らないので税金も掛かりません。
 全ての国民はベーシックインカムを貰いますので、失業しても困りません。」
と鮮やかに説明した。釣次郎は、
「なんだ、本当に天国みたいですね。今の日本も格差が激しくて、その癖、公務員、特に国会議員の給料は高いですよー。」
と話す。
流太郎が右手を高く上げると下に降ろし、
「それを紅党党首の桜見党首が変えるらしい。日本の政治家なんか国民とか呼んで普通に生きている人々を見下しているだろう。特権階級とでも思っているみたいにな。それを選挙で選ぶから、こうなっているんだ!」
怒りを爆発させようとした流太郎、その時に室内の揺れは止まった。流太郎は出入り口のドアに行くと、ドアを開く。地下鉄の駅のホームのような光が室内に入って来た。マリムは流太郎の後ろに立ち、
「外に出ましょう。ビルの地下室の廊下とは違いますよ。」
マリムは何かを何故、知っているのか。
全員、外へ出た。確かに町田駅近くのビルの地下とは違う。マリムに似た男性が歩いてくると、
「ようこそ、ここは八王子市の高尾山近くにあるビルの地下です。実は町田のビルの所有主には数百億円の謝礼を払い、了解してもらっています。時さんも事前に知らされていたでしょう?」
と流太郎に念を押す。
流太郎は思い出すように、
「ええ、そういえば聞いていました。私の会社の部屋だけを家賃を下げる代わりに突然、移動する事もある、という話でした。何か分からなかったけど賃料が下がるのなら、それでいいと思っていましたが、しかし、こういう移動とは思いもよらない移動でしたね。一体、これは・・・?」
その辺りはビルの地下らしいが部屋があるのは、移動してきた流太郎達の部屋だけで白壁と白い床面の廊下がある。
マリムが流太郎の方を向くと、
「実は、このビルは我々の星が所有しています。ですので八王子の地下から町田の地下までトンネルを掘って、時さんが借りている地下室の底部の裏側にリニアモーターカーの底部にあるものを取り付けて、ここまで運べるようにしました。」
と説明した。流太郎は憤り、
「何か勝手じゃないですか。ま、部屋の賃料が下がっているから文句は・・・でも、我々も業務中ですよ。」
マリムはニヤとすると、
「ちょっと驚いて、もらいたかったのですよ。我々の星の科学および技術力の高さに、ね。業務の邪魔といっても静かに移動して、会話の妨げにも、ならなかったのではありませんか。」
流太郎は渋々、
「そういえば、そうです。そうだ、せっかくだから、こちらのビルを見学してもいいですか?」
マリムは鷹揚に、
「ええ。でも廊下と部屋だけで、部屋はロックされていますから入れませんし。それより屋上に行きましょう。」
三人は同時に、うなずく。
エレベーターで屋上に上がると、そこには中型とでもいうべき白い外観のUFOが、居座っていた。
マリムは三人に、
「私の星に来ませんか。無理には連れて行きません。。」
と誘う。
流太郎は貴美と釣次郎に、
「オレは乗ってみる。君達は、どうするかい?」
と二人の顔を見回すと、貴美は面白そうに、
「わたしも乗りますわ。」
と賛意を示し、同じように好奇の目の釣次郎も、
「僕も乗りますよ、時社長。」
と同意したのだった。
マリムに続いてUFOに乗り込んだ三人は半円形のソファをマリムが示し、
「そちらへ、おかけください。」
と教唆する。
飛び上がった感じもしないがUFOはビルの屋上から飛び上がったのだ。瞬間移動、という表現が適切だろう。
数分以内に見知らぬ惑星に到着した。外に出た四人。釣次郎は、
「ここはボッダが居る星だ!」
マリムは、
「みなさんを御案内します。地球での経済活動に興味を持たれたボッダが皆さんに会いたいそうです。」
UFOが到着したのは広い庭で枯山水のような趣きの場所も見えるが森林が半円形で建物を囲んでいる。日本の寺院というよりもインドの寺院に似ている。白い外観の建物の上部は流線形で先端は空に向けて尖っている。宝殊の形、涙滴、涙の形と形容できる。
 マリムが先導する玄関は開いていてボッダが四人を出迎えた。ボッダは背の高い筋肉質の男性で肩幅が広く、顔色は褐色で目は緑色だ。静寂に見えた顔は活火山のような動きのある容色に変化すると日本語で、
「みなさん、ようこそ!私がボッダです。」
と明るい声で話した。とても千歳の年齢には見えず、五十代にみえる外貌だ。白色の袈裟に似た服を身に纏い、身軽な動きで四人を手招きすると、
「さあ、中に入って歓談しましょう。」
開かれた扉の向こうは、広い空間でドアが多数並んでいる。その中の一つのドアを開けてボッダは四人を室内に入れた。
講義室のような部屋で黒板ではなく白いプラスチックの板があり、教壇のようなものの後ろにボッダは立ち、四人は最前列の椅子に座る。ボッダは、
「授業ではないので気楽にしてください。私は立って話をします。」
と丁寧な喋り方だ。釣次郎はボッダが予想していたよりも優しく、謙虚に見えた。緑色のボッダの瞳は静かな湖上のような趣きがあり、どこにも見ることの出来ない光がある。
それにしてもボッダが日本語を話すとは流太郎も思わなかった。ボッダは流太郎に、
「時さん、あなたは会社を作ったばかりだが、これから成功するだろう。」
と話したのだ。流太郎は横に座っているマリムを見ると、
「ボッダに話されたんですか?私の事を。」
「いいえ、話していませんよ。」
とマリムは答える。それではボッダの超能力か。流太郎は、
「ボッダ様。私の思考から読み取られたのでしょうか?」
と尋ねるとボッダは、
「君のアストラル体にある脳の部分を読めば分かる。何よりも君は事業を考えている。しかも思考というのは言語を元に行われる事が大半だからホスト・デリバリーを考えているのも分かる。色々とホストを募集すると、いいだろう。私も君のデリバリー・ホスト業を応援したい。」
と明快に答えた。貴美も釣次郎も驚きと賛美の目でボッダを仰ぎ見た。ボッダは貴美と釣次郎を見ると、
「城川さんと本池君、のアストラルの思念も私には読めるからね。貴方方の名前も分かるんだ。もちろん私も日本語を数十年は学習したから、あなた方の名前が分かるのだがね。」
とスラスラーンとの御言葉だった。
一層、驚く貴美と釣次郎。釣次郎は思わず、
「ボッダがデリバリーホストを応援してくださるなんて予想外でした。」
と目を四角にしたよう表情で云うと、ボッダは静顔小笑して、
「男女の性欲を否定しているのは地球に生まれたブッダだが、私はボッダだ。性欲を否定はしない、それどころか推奨する。禁欲をさせるのは、より性の活動に活力をもたらす為だ。私は二万人以上の女人を抱いた。というと抽象的だな。二万人以上と性交した。その多くは美女ばかりだったのだ。現在も妻は十人、愛人は五十人と昔より少ないが、毎日、性愛の相手に事欠く事はないよ。それも地球的に見て若い完熟した美人ばかりでね。もちろん、私の宗教で修行に励んでいる女性ばかりだ。釣次郎君が訪問していた、あの広い寺院内に私の妻と愛人は住んでいる。
諸君らも性欲を亢進させなさい。活力なき人間を作り出すのが地球の仏教だ。あの寺院では女性修行僧の方が多くて、禁欲の期間を満了した修行僧は寺院内で結婚する。あの寺院内には結婚した修行僧の男女が住む僧房がある。寺院内には産婦人科の病院はないが、日本の昔の産婆の資格を持った女性層がいるので、寺院の外に出て出産する必要は、ない。
という事で、なにか質問があるなら自由に挙手するように。」
と話すとボッダは長い髪を掻き揚げた。
流太郎は右手を上げる。ボッダはニンマリすると、
「時さん、どうぞ。質問しなさい。自衛隊の事か?」
図星、当たり彗星だった。流太郎は動揺を抑えると、
「そうです、さすがボッダ様。良く、お判りで。」
「それ以上は分からないから、質問を続けるように。」
「はい。こちらの星は他の惑星を攻めに行くような構想は、ないんですかねー。」