sf小説・未来の出来事37 試し読み

流太郎はガラスの中の裸身の男性たちを見つめながら、
「機械で管理される方が正確では、ありますね。人間なら間違いもありますし。」
と意見を言うと籾山は両手を自分の腰に当てて、
「そうだろう?時も参加してもいいよ、これに。」
流太郎はハッとして、
「この発電システムにですか?」
「ああ、そうだ。体験してみるのも悪くは、ないね。」

 街には左翼が溢れ出す。福岡市でも遂に市民は左翼志向となり左翼思考となりつつある。左翼が勝利となれば、それは正道となり、もはや左翼とは呼ばれなくなるのだ。
福岡市の博多駅地下街にある日本紅党本部は天神地下街にも支部を置いて通行人の関心を惹いた。天神地下街は博多駅地下街の侘しい人の通りの十倍以上の人の流れがある。コロナ閉店した喫茶店の後に日本紅党の支部が姿を顕わした。
喫茶店の店舗を、そのままにしているために内部はガラス越しに見える日本紅党の天神支部だ。外の通行人からは党首の桜見世子の演説が大型スクリーンに映し出されている。中に入ると桜見世子の映像だけでなく声も聴ける。喫茶店と同じ座席があり、そこに座ると外に見えているのとは別のディスプレイに桜見党首の演説が映し出されている。桜見党首の声も聞こえる。セルフ方式でインスタントコーヒーは無料で飲める。カップは紙コップで飲み終わったらゴミ箱にセルフで捨てる。
初めて入った人たちには女性の紅党員が内部の説明をした。
「ようこそ、紅党天神支部へ。」
と挨拶した若い女性党員が続けて、
「利用料金は無料です。コーヒーはセルフで飲んで下さい。飲み終わったらゴミ箱に捨てて外に出てくださいね。」
と明るい笑顔で入場者に話した。
時を経ることなく、日本紅党の天神支部は人で一杯となった。

高野山での修行から福岡市に戻って来た勢快人。福岡市の天神の繁華街で東京の男の友人とバッタリ、ピッタリと出くわした。その友人は、
「勢君、じゃないか!ひさしぶり過ぎるなあ。」
と話しかけた。快人は彼を見て、
「おう、他能見(たのみ)君。ホストは、どうだい?」
「東京では無理っぽくなってね。福岡に来たんだよ。アルバイト的に中洲のホストクラブに出ているけどさ。今、左翼がモテるんだね、福岡でも。」
快人は初耳という顔で、
「そうか?左翼か。ふーん、それならオレも左翼になろうかな。」
「そうだよ。なればモテるし。道で立ち話も、なんだから喫茶店に行こう。」
「ああ、行こう。」
他能見(たのみ)と快人は天神地下街に降りて喫茶店に入る。若い女性サイボーグが軽々とジャンプしながら注文を聞きに来る店で、有名だ。客も昼過ぎでも満席に近い。
他能見と快人が席に座ると女性サイボーグ・ウェイトレスが注文を飛ぶように移動して聞きに来た。二メートルは跳躍しつつ、移動している。その際に彼女のミニスカートは激しく揺れる。他能見は、
「マンゴー・コーヒー二つ。」
と若い女性サイボーグに注文した。彼女は復唱して、
「マンゴー・コーヒー二つ、で御座いますね。畏まりました。お待ちくださーい。」
それから飛ぶように厨房に戻り、数分後に銀の盆にマンゴー・コーヒー二つを持ってきたが、その際はジャンプしてこなかった。
他能見と快人はマンゴー・コーヒーを味わう。他能見は、
「それでね、左翼になるとモテ度が三倍は違うんだ。」
快人は両眼を大きくすると、
「そうかい?それは凄い。」
「だろ?左翼で理論武装する。日本紅党の党首の桜見世子の電子書籍を読むと、いいよ。」
「分かった。桜見さんの党が急進する左翼だね、って事は知っていたよ。」
他能見は快人を見直すと、
「その頭、カツラなんじゃないか?勢君。」
と指摘すると快人は自分の頭に右手をやって、
「ああ、良く見抜いたね。カツラさ。高野山で修行していたからな、おれ。」
他能見は得意そうに、
「剃髪した頭じゃホストは出来ないからね。勢君。」
「そうだ、そうだよ。おや、スマホに連絡が来た。」
と快人はズボンのポケットからスマホを取り出してメールチェックをすると、
「呼び出しが来たよ。葬式のね。」
それを聞いて他能見は、
「葬式。かあー、さすが坊さん。登録しておいたの?どこかに。」
「そう、福岡市内の葬儀会社に葬式の出来る僧侶として登録しておいたんだ。」
快人は福岡市南区にある葬儀会社に僧侶の登録をしに行った。面接官はAIロボットで、
「読経ヲ、シテクダサイ。」
と機械音で言うので快人は葬式用の読経をした。それを聞き終わった男性の形をしたロボットは、
「合格デス。ワタシノ頭ノナカニハ読経ノ合否ヲ判定デキル基準ガ打ち込まれてイルノデス。」
と話すのだった。
数万円の葬式も、あるにはあるが、それでは物足りない顧客もいて百万円は出すので葬儀をしてほしいという依頼があり、顧客の望みは真言宗による仏葬だったので快人が呼ばれたのだった。
 他能見といた喫茶店を出て快人は葬儀会社に連絡して天神の車が止め易い場所で、葬儀会社の車を待つことになった。ほどなく霊柩車が現れたので快人は助手席に乗る。運転手は初老の男性で快人に、
「えらく又、若い坊さんだね。でも立派に見えますよ。」
とカツラを取った快人に話した。快人は、
「葬式用の服を着ないと、いけないから城南区の・・。」
「いえ、そこまで行かなくてもウチに坊さんが着る服は用意していますよ。」
と運転手は言うので快人は、
「ああ、それなら、そうしましょう。」
と同意する。
南区にある葬儀会社の建物は広い敷地にあり、セレモニーホールで葬儀が行われる。そこに快人を載せた車は入ると、運転手も快人の後から車を降りて、
「セレモニーホールで葬式が夕方に、ありますよ。それまでに服を着替えて待っていてください。」
と話す。
会社の建物の中に入ると快人は女子事務員に案内されて更衣室に連れていかれた。薄墨色の僧衣に着かえた快人は僧侶の広い待合室でノンビリと腰かけたまま、煙草を吸った。
 黒い制服を着た女子事務員がドアを開けて顔を出すと、
「お葬式が始まりますので、セレモニーホールに、どうぞ。」
と声を掛けた。
葬式用の僧衣を着た快人は煙草を灰皿に捻り潰して立ち上がると女子事務員の後を歩いてセレモニーホールに向かう。
 式場には多数の会社員らしき人達が黒い背広を着て待っている。会社の社長が死んだようだ。遺影も髭を生やした老人男性の顔が写っている。七十代か、と思われる個人の顔だ。
会場は不思議に悲しみの感じられない様相だった。年も死に、ふさわしい年齢の社長であったのだろう。喪主は社長夫人らしい女性が黒い喪服の着物を着て快人を待っていた。老齢の死んだ社長にしては若い、若すぎる未亡人だ。二十代前半に見える女性、それに美人なのだ。快人に未亡人は軽く頭を下げると、
「喪主の榊星です。よろしく、お願いします。」
と低い声で挨拶する。快人は数珠を右手に持って、
「こちらこそ、よろしく。」
と挨拶を返した。
 真言密教の葬式を終えると参加者の大半は会場を出ていった。後は火葬場にマイクロバスで移動して家族、親族らで弔う事になり、そこへは僧侶は同行しない。その移動の前に喪主の若き美人未亡人は快人に、
「今晩、自宅の方に、お越しください。祭壇も設置していますので主人を、もう一度、弔ってもらいたいのです。」
と話す。快人は合掌すると、
「それでは連絡をください。ご自宅の方は私は存じませんので、その辺は、よろしく、どうぞ。」
はた、と気づいた顔で未亡人は、
「ええ、運転手を迎えにやりますわ、御坊様。」
と明るい顔を快人に向けた。

 日没の遅い福岡市でも夜の八時には太陽は姿を消す。城南区の住アパートにいる快人のスマートフォンが鳴る。手にすると快人は、
「もしもし、」
すると若い女性の声が、
「あ、今日は御葬式で、お世話になりました榊星です。今から運転手を迎えに、やりますので拙宅に来てください。」
「ええ、分かりました。場所は、わかりますか、私の住所ですが。」
「ええ、葬儀会社に問い合わせていますよ。それでは。」
電話が切れる。
それから一分もしないうちに玄関ドアが叩かれた。快人は立ち上がると「はーい。」と声を出して玄関に行く。玄関の外では「運転手ですー。」という呑気な中年男の声がした。ドアを快人が開けると、帽子をかぶった中年のタクシーの運転手に似た男性が丸ブチの眼鏡顔で、
「こんばんわ。社長に言われて、お迎えに上がりました。勢さんですね。」
「ええ、今、社長さんから、お電話がありましたよ。」
「うちの社長は気が早いんで、私には少し前に車で迎えに行くように言われました。さあ、行きましょう。」
「服を着ます。追善供養のための僧服を。」
「あ。そうですね。お待ちします。」
快人はドアを閉めると部屋に戻り赤色の僧衣を着るとドアを開けて、
「さあ、行きましょうか。運転手さん?」
運転手は眼鏡をズリ上げると、
「おー、坊さんらしくなりましたね。下に車は停めています。」
白のスポーツカーに二人は乗り込んだ。城南区から南区の女社長の邸宅までは、そんなに遠くはなかった。南区でも郊外で、近くには牧場や乗馬クラブがある裕福な地帯に未亡人の、というか美亡人ともいうべき若い女社長の邸宅は周りを圧するように建っていた。運転手は行く途中で、
「うちの社長は秘書だったんですけど、頭のいい女性なので社長室長から常務、専務、副社長になりましてね。副社長の時に先日、なくなった社長の後を継いで社長になったんです。結婚して一週間でしたよ、最初の社長が死んだのは。」
とハンドルを握りつつ後部座席の快音に話した。快音は、ゆったりとして、
「そうなんですね。若い女性に夜、頑張り続ければポックリと死ぬこともありますよ。うちの実家では親父が、よくそういう葬式を見て来たと話していましたから。」
と語った。運転手は、
「あ。そうなんですか。金のある男性は決まって年寄ですよ。でも体は、もう、あんまり元気は、ないし・・・着きましたよ、お坊さん。」
低速で車は走行すると自動で開く門の中に滑り込む様に入る。緑の樹木が建ち並ぶ大邸宅だが日没後なので邸内の明かりでしか様子は、うかがえない。車から降りて運転手に玄関まで案内された快人は玄関ドアが開いて女未亡人社長が玄関に立っているのを見た。女社長は洋服に着替えていた。微笑顔の彼女は、
「ようこそ、さあ、お上がりください、お坊様。」
と話した。
長い廊下を若い女社長の歩くと左右に揺れるミニスカートの豊かな尻を見ながら快人は歩いて行く。季節も六月の半ばで外は既に初夏の陽気だ。左の部屋のドアを開けて若い未亡人は立ち止まり、
「この部屋ですわ、お坊様。」
室内には巨大な仏壇があった。檜の香りのする仏壇だ。高さは二メートルは、ある。日本一巨大な仏壇は高さは6.5メートル、幅は3.8メートル、奥行きが2.5メートル、重さは2トン、という福岡県八女にある。が、これは個人所有のものではない。材料費は3500万円である。それに対して女未亡人が今、快人に見せた仏壇は個人所有のものだ。内部は金色に輝いている。長い髪で顔は半分隠れている未亡人は、
「この仏壇の金色の部分は純金なのです。24Kで金メッキでは、ありません。故人が既に所有していました。死ぬのが分かっていたのかな、と思いますよ、わたし。」
そこで顔に掛かった長い黒髪を右手で払いのけると美しい若い女性の顔が快人に見えた。快人は、
「こんなに素晴らしい仏壇は私も今まで見た事が、ありませんでした。真言宗の宗旨ですね、この仏壇は。」
左から不動明王、真ん中の本尊は大日如来、右は弘法大師・空海の順に掛け軸が掛かっている。その下の段には故人の位牌があった。快人に問われて未亡人は、え?という顔で、
「そうなのですね。わたし仏壇の事は分かりません。ただ故人が葬式は真言宗で挙げてくれ、と言っていたものですから葬儀会社には真言宗の御坊様を、と手配しました。」
快人は長い裾の両手を合わせて、
「ありがとうございます。これも確かな御縁で、ございます。」
と僧侶らしく頭を下げる。若い未亡人は笑顔で、
「勿体のう御座いますわ、お坊様。お顔を上げてくださいな。」
快人は両手を離すと頭を上げた。
それから巨大な仏壇の前に行くと敷いてある金色の座布団の前に正座した快人は仏壇に備え付けの鐘をチーン!と鳴らすと、十三仏真言を唱え始めた。十三仏とは不動明王から始まり虚空蔵菩薩まで十三の存在の事で、十三の真言を唱えて追善供養とするものだ。
それほど長いものでは、ない。それが終わると快人は立ち上がり、
「これは、お布施は要りません。無料です。それでは。」
と帰りかけると未亡人は快人の腕を抑えるような口ぶりで、
「待ってください、お坊様。今のは大変ありがたい御供養でした。ですが・・・。故人の遺言が、ございます。」
快人は片方の眉を上げて、
「ゆいごん、と申しますと?」
「ええ、それは・・・・。」
美しい未亡人は衣服を手早く脱ぎ始めた。驚く快人、でも止めるいわれは、ない。下着姿になった未亡人は服を着ていた時には見えなかった大きい乳房と幅広い下腹部を見せている。上に引き上げられた股間の白布は彼女の窪みを見せていた、つまりスジが浮き出ていて薄い布は美未亡人の股間の黒い茂みまでクッキリと顕わしてしまっていたのだ。快人は息を呑むと、未亡人は近づいてきて快人の両肩に自分の細い腕を回して顔を近づける。甘い香りが快人の鼻腔に侵入した。未亡人と快人の顔は、ほぼ同じ位置にある。二十センチの距離に近づいた二人の顔、快人は、
「あなたの下着姿を私に見せろ、というのが故人の遺言ですか?奥さん。」
美未亡人は甘い息をフーッ、と快人の鼻に吹きかけて、
「その程度では、ありませんわ。わたし、佐紀奈(さきな)と言います。主人は仏壇の前で坊さんとセックスしてくれ、と遺言しましたのです。」
「なんと、そうなんですか!珍しい遺言ですね。でも実行した方が、いいでしょう。」
美未亡人の佐紀奈はベットリと口紅の付いた自分の赤い唇を快人の唇に重ねた。先に彼女の赤い舌が快人の唇の中に入り、二人の舌はもつれあう様に絡み合う。仏壇に立てかけてある遺影の個人の目が光った。それを見た快人は唇を離すと、
「遺影の目が光りましたよ。奥さん。」
抱き合ったまま美未亡人の佐紀奈は、
「ふふ。ランプに、なっているの、遺影の目はね。それが凄い発明らしくて幽体が宿るとランプが点くというのね。ただ故人の幽体か、どうかは分からないのよ。でも多分、主人の幽体だと思う。まだ、この辺をさまよっていると思うわ。遺言通り、セックスしましょ。」と話した。
佐紀奈は快人に掛けた細い両手を離すと白のブラジャーとパンティを艶めかしく脱いだ。黒い股間の剛毛が快人の目に飛び込んでくる。快人も僧衣を脱いだ。なんと、僧衣の下は下着も身に着けていない快人だった。それには佐紀奈も驚いて、
「袈裟の下には身に着けていなかったのね、坊さん。」
快人は坊主頭を右手で触り、
「暑すぎる日は、こうしています。僧衣は帯で強く縛れば落ちることは、ないですからね。」
と話す快人。彼の股間のモノは垂直に隆起している。それを見て佐紀奈は、
「もっと立っても、いいのよ。この角度だと五十代の人ね。」
「奥さんを、もっと抱けば自然と反り返りますよ。」
二人は硬く抱き合い、佐紀奈の白い丸い乳房は快人の平らな胸で潰れそうになる位に形を変えた。佐紀奈の股間の剛毛地帯に快人の隆起した肉棒が当たる。佐紀奈は股間を広げたので快人は彼女を抱き抱えて、ゆっくりと挿入していく。
遺影の故人の瞳がオレンジ色に変化した。幽体の視線が興奮し始めたのを表しているらしい。故人の遺影は未亡人、佐紀奈の白い背中と大きな尻を見ている位置にある。その白い尻の中に快人の巨肉棒が這入り込んでいくのが遺影の写真の位置でもハッキリと見える。佐紀奈の豊満な尻を荒々しく掴む快人の両手。
すんなりと結合した二人だ。
ところが快人は異様な感覚に捕らわれた。自分の体内に霊体が入り込んで来た、という感覚を生まれて初めて感じたのだ。おそらくは美未亡人の故人となった夫の霊では、ないか。快人は自分の意志や気持ちとは別に、柔らかな若い未亡人の体を抱いて腰の振り方まで操られている気がした。
そのために彼女の亡き夫は若い妻に遺言していたのだ。その部屋の隅にはダブルベッドが、ある。それは部屋に入った快人は気づかなかったのだが、未亡人と立ったまま性器を結合させた状態で快人は向きを変え部屋の隅にあるダブルベッドに未亡人・佐紀奈の裸身を運んだ。それも快人が意図したものではなく憑依されて美未亡人の亡き夫が行なっているものらしい。快人としても、どうする事も出来ない。佐紀奈の全裸の上に乗り、自分の意志とは違う腰の振りをしてしまう快人に美未亡人は快人の裸の背中に爪を立てて、
「あっ、あなた!あなたの腰の振り方だわっ、ああっ、あああっ。」
と亡き夫との性行為を思い出した未亡人・佐紀奈は自分でも柔らかく大きな白い尻を快人の腰の動きに合わせて激しく振るのだ。彼女は三十分、故人の夫の霊に憑依された快人の性器に貫かれ続けて黒髪を振り乱し、背中を反らせると、
「アンドロメダ星雲に行くーっ!」
と叫んで、がっくりと裸身を弛緩させた。その時に強く性器を締め付けられた快人も多量の白液を大放出して終了したのだった。
未亡人から離れてダブルベッドの上に横たわる快人、
「奥さん、どうも僕は御主人の霊に乗り移られた気がします。」
佐紀奈は閉じていた眼を開くと乳房を揺らせて快人の方を向き、
「ほんとに、そうだわ。まるで主人と交わっているようだったわ。仏壇の前でセックスしてほしい、という遺言は、そのためだったのね、多分。」
と白い肌をピンク色に、ところどころ染めている佐紀奈は、そう答えた。快人は上半身を起こすと、
「今日は、これで失礼します。よろしいですか?」
「ええ。又、何か必要な時には連絡させてもらうけど、いいかしら?」
「ええ、勿論ですよ。いつでも、連絡下さい。」
下着を着ていなかった快人は袈裟を身に着けて邸宅を出た。
スマホアプリでタクシーを呼べるのは随分昔からの話だ。
 城南区田島の安アパートに戻った快人は今日の貴重な体験を、これからに活かそうと考えた。ただ、すぐに実行できるものではなく、或る技術も必要だ。それは、それで学び実践体得するのみである。
 そしてサイトで公開すれば、よい。快人も無料のサイトではなくドメインを取り、自分のサイトを持っている。ブログ形式なら日本語入力だけで出来ていくので快人はネット上の友人にブログ作成ソフトをインストールしてもらい、密教ブログサイトを作っているのだ。
未亡人の悩み相談を受け付けています
 必ずや解決するでしょう。特に性の悩みを当方は得意なものと、しています。
と快人が投稿すると、五分以内に応募が届いた。
 ”福岡市内の二十代の未亡人です。夫の喫茶店を今は自分が引き継いで経営しています。出張で悩み相談に来てくれるという事なので、ぜひウチに来てもらえませんか?」
快人はメールで、
「電話番号を送ってください。」
とスマホのメールアドレスを喫茶店の未亡人に送った。すぐに未亡人からメールの返信が届き、快人は、そこへスマホをかけた。
「もしもし、悩み相談の快楽和尚です。」
と話すと若い未亡人女性が、
「快楽和尚!お待ちしております。今日は喫茶店は休みの日なんです。住所を言います・・・・。」
「・・・・、ああ、博多港が見える場所ですか。」
「ええ、天神地下街の店から歩いて五百メートル程ですわ。」
「天神地下街は能古島まで続いているんでしょう?」
「ええ。でも店は能古島には、まだ出店していません。博多港の近くの地下街に店は、あります。大陸からの旅行客も多く来ますので店は繁盛していますよ。二十四時間喫茶で夜は女サイボーグに任せていますから。」
との事だった。