sf小説・未来の出来事4 試し読み

福岡市の東区にある人工島!、アイランドシティに野球場ほどの広さを持つゲームセンターが、ある。平日の午前中は人は少ないかというと、そうでもなく年金生活者の老人が、屯していた。このゲームセンターには未成年者立ち入り禁止のコーナーがある。
福岡市にプロ野球球団が無くなったのも、ただ野球を見るよりも、その成人向けゲームに人気が出たため、とも言われている。そこに、貴美はバリノを連れて行った。入り口でバリノの前に立った貴美は、
「クレジットカードで成人か、どうかは認証判断されます。バリノさんはクレジットカードを、お持ちですか。」
と聞く。バリノはズボンのポケットに手を入れ、
「ああ、持っているよ。世界共通のをね。ビットコインじゃ、ダメなのかね。」
「そう、ビットコインカードでも大丈夫ですわ。説明不足で、御免なさい。ビットコインは世界共通の通貨ですものね。」
仮想通貨は日本でも、相当数の種類が出ていたが、それらの大半はビットコインと連動している。
貴美とバリノはビットコインカードで、そのゲームセンターの成人向け入り口を通過した。
二人の目に留まったのは、ダッチワイフのような女性の姿だった。とても人形とは思えない。着ているものは下着だけ。目もダッチワイフや人形のそれとは違う。常に動いているのだ。瞬きもしている。肌の色は白く、両手はダラリと下がっている。透けた下着で乳首と陰毛は浮き出ている。これで入場料を払った甲斐がある、というものだ。身長は百六十センチほどの美女のダッチワイフ、又、ラブドールとも呼ばれるものが進化している。立札には、
この奥には部屋があります。そこに、わたしを連れて行って下さるとドアを閉めて、貴方の好きにしてください。その前に十万円はカード払いで、どうぞ。
と書いてあるではないか。バリノは日本語を読むことも出来るので、
「これは、すごいな。貴美さん、貴女も一緒においで。」
と貴美を誘う。
「ええ、行きます。バリノさん、何処まで、この人形と、されるのか、見たいですわ。」
と貴美は答えた。
バリノがビットコインカードで十万円を支払うと、なんと、そのラブドールは先に立って歩き、部屋のドアを開けたのだ!驚きつつ中に入る二人の後から、ラブドールは入ると部屋のドアを閉め、ウインクした。
その部屋はダブルベッドのあるラブホテル風の部屋だった。ツインの部屋の広さ。窓には赤いカーテンが、かかっている。ラブドールは臀部を左右に振りつつ歩いてくると、バリノの前で立ち止まる。バリノは、
「君はレズは好みでは、ないかね?」
と、そのラブドールに話した。すると、
「いえ、わたしは男の人を好きになるように作られました。女性には興味は、アアリマセン。」
という自動音声の女性のような声でラブドールは答えると、次に、
「わたし、キミ、といいます。」
と話したから貴美は、ビックリした。自分の名前も貴美だからだ。バリノは、
「ほう、貴美さん、同じ名前だね。でも、よく答えてくれるなあ、このラブドール。」
と感想を漏らすと、ラブドール・キミは、
「だってワタシ、大学まで出てますもの。」
と話したではないか!バリノは、
「何処の大学かね。」
「福岡で作られたから、九州大学に通いましたの。福岡市の西の方にあります。文学部でしたのよ。」
と、スラスラっと流れる水のように答えた。
ラブドールが大学に行く時代なのだ。只の夜の愛玩人形と思ってはいけない。でも・・・?バリノは、
「君は歩けるのかね?」と簡易な質問をする。微笑んだラブドール・キミは、
「フルマラソン、できます。福岡市で大昔から行われている福岡市民マラソンにも、毎年出ますから。」
「順位は、どれくらいかね。」
「真ん中より上くらいです。そんなに早くは、ありません。」
「そんな時は、燃料補給をする人が、いるんだろう?」
「いえ、朝、出る前に、わたしのオーナーが充電してくれます。電気自動車と同じ原理なんです。もしもの時は、道路沿いの電気自動車用スタンドに寄って、給電します。セルフなんです、大抵、利用するのは。」
すごいスタミナだ。むしろ、燃費というより電費のいいラブドールなのだろう。バリノは、これを作った日本の技師に感動して、
「火星にはラブドールは、ないんだよ。必要ないからね。」
と貴美に話す。貴美は、
「そうなんですの。ありそうで、ないのですね。火星には。女性が沢山いるから、とか。」
「そう、いう事かな。ラブドールは地球では女性に不足する場合のためにある。長期航海の船員とか、だけど火星では長旅は、ないといってもいいから。」
バリノはラブドール・キミの前に立つと、ブラジャーを外した。美形の、揺れ動く白い乳房が現れた。
貴美とバリノの目が、キミの桃のような胸部へ移動する。バリノは、それを揉んでみたかったが、貴美がいるので放擲した。キミはバリノの手が自分の乳房を掴まないので、
「あれ、私の胸、魅力ありませんか?」
と聞いてくる。驚くべき事は、キミの表情に悲しみの色が浮かんでいる事だ。つまり、このラブドールは表情筋を持っているかのように作られている。バリノは貴美に、
「驚いたよ。一体、この精巧な人形を誰が作っているのかね?輸入物なのか、貴美君。」
「これは黒沢のサイバーモーメントの子会社、『ラブドールメーカー』が作っています。そこは勿論、福岡市にありますわ。西区の森林地帯に、です。」
ラブドール・キミは返答しないバリノの前で、上半身を屈めると股間を覆う白いショーツを立ったまま、脱ぎ始めた。最も魅力的なのは彼女の表情よりも、その女性器が存在する部分、それを隠すかのような性毛の密生の分布状況、および縮れ具合、大陰唇の成熟したふくらみ、など二十歳の女性が持つものをキミは持っているのだ。
バリノは貴美が、いなければ勃起したかもしれない。貴美はバリノの反応を見ている。時々、バリノの股間に貴美は視線を走らせていた。だがズボンの中心は愛を叫ぼうとは、しない。それで貴美は(自制心が強いのかしら、それとも性的不能?)と思う。
バリノはキミに何もしようとは、しない。ただ、彼の視線はキミの股間を注視している。そして、
「見事なものだ。ラブドールは地球のものを色々と集めていたけど、これは最高級品だよ。顔の表情が動くものは、見た事がない。このラブドールは、小さなコンピューターを内部に持っている筈だ。私が反応しなかった場合も、それに対応するデータを打ち込まれている。今のショーツを脱ぐ行為もね。」
小さなスーパーコンピューターを、キミの頭部の内部に、入れてあるのかもしれない。
そのように説明するバリノを見て、貴美はバリノが自分の性欲を抑えようとしているのではないか、と思ったりもするが、
「ラブドールメーカーでも最高級品を、ここに納品しているのですわ。わたしは女性ですので、それほど興味が、ありませんけれども。」
受け答えする。そして大胆にも、
「バリノさん、ここで、このラブドールを抱かれては、いかがですか。」
と提案した。
「うん、いや、それほど性欲に飢えていないんだ。このラブドールの使用料は中洲のソープランド、よりも安いな。」
「まあ、そうなのですか。わたし、中洲のソープの相場は知りませんわ。それでなのですね、ここは平日の夜とか、休日には行列が出来ているって聞きましたけど。」
突然、それに、キミが答えたので、或る意味で気味が悪いわけだが、
「でも、わたくし、一日に五人までしか相手を勤めませんの。大陰唇の摩耗を防ぐためです。そのようにプログラムされています。機械は何でも、そうなのです。過度な負荷は故障に繋がります。バイクや自動車の制限速度も、そうです、ですので六人を相手にすると、わたくし、動作停止となり、ラブドール技師を呼んでもらわないと、いけなくなります。女性器と乳房の損傷を防ぐためです、一日、五人までの性交相手の人数制限は。二時間も、わたしの、おっぱいを吸い続けた人もいたわ。それで、わたしの乳首は立ちっぱなしでした。」
バリノは興味深そうに、
「一人につき二時間は相手をするのかね。」
と聞くと、ラブドール・キミは、
「そうです。だから十時間の性労働ですけど、わたしには処女膜は、ありませんでしたし、そう、最近、わたしを製作したラブドールメーカーは、処女膜付きのラブドールを開発中だとか。それで、その完成後の商売に於ける得失について検討中なんだそうです。それは人間の女性が処女膜を失う際に感じる苦痛、それが喜びに変ずるため、その現象を引き起こした相手の男性に対する心理的な従属意識を起こす、とはいえ、女性により、処女膜を捧げた男性に生涯の貞潔を誓う女性の圧倒的な減少が、かなり前の日本で起こっていた事なども研究課題となっています。要はヒーメン(処女膜)をラブドールに付帯させる事が、顧客サービスの向上になるか、という事らしいです。」
それを聞いてバリノは、
「なるほどね。昔、というより大昔の日本人女性が、大半、そうであったような処女性のラブドールなら、一人の顧客に従属してしまうという懼れだな。だが火星にはラブドールは、ないから、私には良く分からないな。君の体は十分に鑑賞した。それでは。貴美さん、行こうか。」
「はい、そうした方が、いいみたいですわ。」
二人はラブドールには見えない女性(!)を、そのままにして、部屋を出た。
火星人バリノとしても、ラブドールよりは目の横にいる城川貴美の方に興味がある。貴美も処女である気がする。さすれば、わが男根を貴美のヒーメンに貫通なさせしめば、彼女は我に従属せん、とは前時代的な発想であろうか。さは、さりながら、かなり昔の日本のAVですら処女喪失をAV男優と、という例はある。それはバリノも日本の歴史として火星の学校で、『日本AV史』の講座で受講した。
そうだっ!とバリノは考えつく。今まで日本のAVは火星に密輸という形が黙認されてきたが、関係各庁に連絡して許認可事業として始めよう、火星での日本のAV販売を始めるのだ。
だが餅は餅屋、AVはAV屋だ。それに火星には地球にはない、すごいものがある。それを輸出してみよう。それは、そのうち明らかにするが。
AV屋については、すぐに解決する。バリノの知り合いの若い医師は日本のAVを持ちうる限り、持っている。とはいえ、ほぼ、ほぼ、過去のものになってしまうのは致し方ない。貴美はバリノを見て、
「ぼんやりしていますわ、バリノさん。あそこの長椅子に腰かけると、無料で花火が見れますわ。」
「あっ?ああ、そうだね。ゲームセンター内に大きな池があるなあ。あの池の向こうに花火が見えるのか。」
二人は並んでソファのような長椅子に座って、疑似夜空を眺めた。バリノの思考は先ほどのAV好きの医師、ミタリーに戻っていく。
火星ではAVなどは作られていない。それは火星人男性が聖人君子だからではなく、火星人女性の数が多いのだ。それで一夫多妻を認めているが、それでも、そう何人でも妻には出来ない。そのような事情から火星では性産業は皆無に等しい。
そういう中で独身医師ミタリーは地球の医者と違って経済力もない。そのため、結婚もしてない、それが百五十年も続くとなると地球の、それも特に日本のAVに興味をエベレスト山のように持っても不思議な事では、なかろう。
そんな医師ミタリーをバリノは、自分の医院で働くように誘ったが、ミタリーは、
「独立開業医の方が自由だから。それに親の遺産で、あと百年は自分の食い扶持なんて持っていますよ。暇な時は日本のAVを見て右手を動かしていますし。」
とスッキリした顔で答えるのだった。ミタリーは美形の男性、日本の格言に「色男、金と力は、なかりけり」に該当するわけだが、火星には女性が多いため、プレイボーイでもある。それに飽き足りずに、余暇は日本のAVで、というわけだ。少々古いとはいえ、日本のアダルトビデオ、アダルト動画に該博な知見を所有する医師、ミタリーである。妹がミタリーにはいて、ミタリーナという。関西弁の「見たりーな。」とは発音が似ているとはいえ、英語と日本語の発音以上に相違はある。だから関西弁で「ミタリーナ」とミタリーの妹に云っても通じないであろう。
ミタリーナも独身の美女だ。西欧の美女を百倍位綺麗にすると、ミタリーナとなる、そういう形容で想像されたい。目の色は緑色、それは兄のミタリーも同じだ。
バリノはスクリーンに映る花火を見つつ、
(ミタリーにラブドール・キミの事を教えてやりたい。)と思うのだった。
 花火は立体的なものとはいえ、火星の映像技術に比べれば、つまらないもの、なのでバリノは、アレを日本に火星から輸入する事を考える。(ミタリーは妹も一度、使った事がある、と言ったな。それについてはミタリーに聞くことにしよう、帰星後に。)数分で火星に戻れるので帰星という表現も何かと思われるが。
 貴美に連れられて美少女ゲームの大型版など、あったがロリコン趣味のないバリノには興味が、なかった。それで、
「もう、いいから、出よう。」
と貴美にバリノは語った。
それでも時間というものは早く過ぎていた。外は冬空で雪が降りそうだ。バリノは空を見上げて、太陽の位置を見ると、
「貴美さん。昼食に行きなさい。私は、あの森林みたいな公園で待っているから。」
と自分の意思を伝える。貴美はバリノをチラリと見ると、
「寒くないですか、バリノさん。アイランドシティ地下街は暖房が強いですわ。それに食事・・・。」
「火星から携帯食を持ってきているよ。地球の食べ物は日本に限らず苦手だ。」
「栄養価が、あまりないからですねえ。」
「それは、そうだな、味覚の違いさ。火星の農作物も進んでいる、という事だ。地球では農業は何千年の昔から、あまり変わりがないだろう。それより、ひとまず君は食事へ行きなさい。」
「はい、一時には戻りますわ。」
 バリノは遠ざかる貴美の背中を見送ると、森林のような公園に入った。火星の樹木より生育の悪いものだ、とバリノは思う。火星では砂漠と森林と、はっきりと対比できる樹木の生息頒布なのだ。
バリノにとっては殺伐とした風景なので、木製ベンチに腰掛け、コートの中からタブレットパソコンのようなものを取り出し、操作する。画面にミタリーの顔が映る。ミタリーにもバリノの顔が見えるらしい。バリノは火星語で、もちろん火星語といっても複数の言語があるのは地球と同じだ。むしろ、地球の言語が火星と同じように複数ある、と言うべきかもしれない。周囲に人もいないので、
「やあ、ミタリー、寝るところじゃなかったのかい?」
イタリア人みたいなミタリーの顔が答える。
「まだまだ、これからだよ。さっきまで急患を執刀していたからね。これから遊ぶんだ。」
「それは、この場合、よかった。地球まで来ないか?」
「空飛ぶ円盤は所有していないんだ。まだまだ富裕層とは言えないからね。」
「私のを貸すよ。私の家へ来て、私の執事に連絡してくれ。執事には私から電話しておくから。」
「そう?それなら、行くよ。バリノさんの地球位置情報は、今もぼくの携帯に出ているよ。日本、かな、それも福岡市東区のアイランドシティの公園だろう?」
「そうだ。日本時間の午後一時までに来れるかい?」
「やってみるよ、行けそうだ。それでは。」
バリノは携帯を切ると、火星の自宅の執事に電話した。
「ああ、ラソー君か。今から私の後輩のミタリーという男が来るから、円盤のカギを渡してくれ。」
「かしこまりました、旦那様。それだけで、よろしいので?」
「それだけだよ。よろしく、な。」
「夜食前の仕事、でございます。速やかにミタリー様、御到着後に実行いたします。」
バリノは携帯通話を止め、ズボンのポケットに入れると、ゆったりとしたコートの中から携帯食を取り出すと、乾燥マンゴーと牛肉、豚肉、鶏肉を混ぜ合わせた乾パンらしきものを食べる。火星にも牛や豚は、いるのだ。ただ、地下で飼育されている為、決して地球からの探査船では見つけられない。火星の地表から大量の水が無くなる前に、火星人は家畜を地下に移動させておいた。それにより、地上で生活する者は地下の家畜の肉を購入する事になる。
もっとも野生の牛、鶏に近い鳥、その他の動物は火星の少ない水と緑のある地帯で生息している。
一時前、五分になる頃、貴美が小走りに公園に戻ってくると、
「バリノさん、お待たせしましたか?」
とベンチに座ったバリノに聞いた。
「いや、待ったほどではないね。」
その時、空から白色の円形UFOが貴美の後ろに降り立つ。バリノには見えたが、貴美は気づかない。それほど音もなく着陸したのだ。
バリノは、にやつくと、
「火星から、後輩が来たよ。後ろを見てごらん。」
と貴美に呼びかける。
振り返った貴美の目に反映されたのは、イタリア人みたいな顔の若い男性と、その背後の着地した空飛ぶ円盤だった。その男、ミタリーは貴美を見て右手を挙げると、
「はーい、初めまして。僕も火星人なんだ。バリノさんと親しいのかい?」
と流暢な日本語で話しかけて来た。貴美は、
「え、ええ、割とですけど親しくさせてもらっています。でも、それはビジネスでの、お付き合いですわ。」
「それなら僕も、そのビジネスの仲間入りをさせて欲しい、いいかい?」
「ええ、もちろんですわ。わたしが力になれれば。」
それにしても、ミタリーの円盤は、あのまま公園に待機させておくのだろうか。ミタリーは、
「あの円盤を空中で待機させておこう。地球人の不可視の光線領域に円盤を置けば、いいから。」
と貴美に分かるように説明すると、ズボンのポケットからリモコンを出してボタンを押す。すると円盤は垂直に上昇して、貴美の目には見えなくなった。2017年頃だって日本の上空には沢山の空飛ぶ円盤が飛行していたはずだ。地球人には見えない形で。
軽やかに動くミタリーを見てバリノは、
「地球の重力は火星の三倍なのに、元気がいいね。」
と感心するから、
「時々、地球に来てますよ。日本は初めてだけど。アメリカでなら、何人もの女と一晩で肉体関係を持てたけど。ん?日本語のモテるっていう言葉、肉体関係を持てる、という意味なのかな。女にモテるというけど。まあ、それより、日本は楽しみだね。日本語は話せるように家庭教師に来てもらったから。日本人のね。」
ある日本語教師の話
 私、東京で外国人相手に日本語教師をしていました。三十代、独身、当たり前ですか、大学の文学部を出ましたけど仕事がなくて。それで日本への留学生やら、外国からの商社マンなどに語学教室で雇われて、日本語を教えていました。給料は高くなく、サイバーセキュリティとかの仕事が花形の世の中、文学部出なんて、せいぜい学校の国語の教師がオチとされています。
マンションの屋上に出て、私は夜空の星を眺めながら、
「どこかに、いい仕事が、ありませんか、神様。」
と懇願するように願ったのです。すると、私の頭の中で、
(いい仕事あるよ、私が連れて行こう。)
と声がするではありませんか。
「えっ、どこです?貴方は神様ですか。」
と尋ねると、
「ここだよ、目の前に現れるから。」
と声がしたと同時に、私の目の前に小型のUFOが出現して、マンションの屋上に着陸しました。
中から現れたのはイタリア人みたいな男性で、
「火星で私の日本語の先生になってくれ、そうしたら、うまいものを食べさせてやるし、いい女も抱かせてやる。」
と励ますように話してくれます。信じられないし、夢かなと思っていると、
「私は神様ではないよ。火星にはね、人間の思考を拾い上げる機械がある。それでUFOの中から、マンションの屋上に一人でいる君を見た。そこでだ、その思考解読機の照準を君に合わせたら、君が(どこかに、いい仕事が、ありませんか、)と願っている事が分かったのさ。」
明快な答えです。それで、
「それなら、どうか、私を火星に連れて行ってください。日本語を教えます。」
と頼むと、
「よし、決まりだよ、円盤に乗ろう。」
と誘われ、火星に行きました。そこで豪華な食事を食べさせられ、いい女、といっても地球の日本人でした、と毎晩、夜の楽しみを満喫して、朝と昼、その火星人が仕事がない時に日本語を教えました。