SF小説・未来の出来事40 試し読み

流太郎は巨人の森影を見上げると、
「あなたは一体、どこの星の人ですか?」
森影は静かに、
「いえ、地球人ですよ。ただね、他の惑星の人々と交流がありますから、好意的に他の惑星の石を貰う事があります。という訳なんです。」
流太郎は成る程、と思った。それにしても地球外生命体と交流があるのはステキだ。自分にも、そういうツテがあれば苦労しないのに。大きな窓の外には広大な庭が見えている。高台なので能古島の下の方も一望できる。白い犬が走っていて、森影を見たらしく三人のいる部屋の近くまで来た。よく見るとロボット犬なのだ。
天井から床まである窓ガラスを開ければ庭に出られるのだが、森影は尻尾を振るロボット犬に、にこやかに、うなずいただけで外に出なかった。ロボット犬は主人の森影の顔を見ると犬小屋の方に走って行った。流太郎は、
「ロボット犬も電気で動くんですね?」
森影は、
「そうですけど充電の必要なし、空中から電気を取り出して充電します。」
流太郎はアッという顔をすると、
「それは凄い、凄すぎますよ。どこのメーカーが、そんなに凄いロボット犬を作っているのですか?」
「それは勿論、地上には存在しないメーカーです。」
流太郎は、それを聞くと考え込み、
「とすると・・・地球外の星のメーカー。という事ですか?」
「いや、地球内のメーカーですよ。」
「地球内!とすれば地底の・・・。」
森影は胸を張り、腰に手をあて、つま先立つようにした。すると!
森影の身長は三メートルにも伸びたのだ!
天然石卸商の尾呂志一之介は微動だに驚かないが、流太郎にしてみると驚き以外の何物でもないのが森影の身長の変化だ。
 森影は流太郎を見下ろして、
「いや、失礼します。だけど我が家では寛ぎたい。これが私の普段の身長なんですよ。地上世界に行く時には、二メートル位に身長は縮めないと、いけないですからね。」
と話し、ニッと唇を微笑に変動させた。森影は床を軽く踏んだ。すると巨大なソファが一つ、それに向かい合う三人は横並びに座れるソファが床面が開いて下から出てきた。
巨大なソファは森影が座り、
「さあ、その横長のソファに座ってください。」
と右手を差し伸べて誘引する。
流太郎と尾呂志は、その横長のソファに並んで腰かけた。森影は満足げに、
「ゆったりと寛いでくださいネ。云い遅れましたけど、僕は森影底男(もりかげ・そこお)と云います。」
と詳しく自己の名前を告げると流太郎に目配せするような視線を送った。流太郎は姿勢を整えて、
「時・流太郎と申します。冴えない合同会社を運営していますけど、隕石に特に興味があります。」
と一気呵成に火星に行くような勢いで話した。森影底男は目を見開くと、
「隕石!私の本来の住む世界には隕石は、ありません。」
と話すから流太郎は肩を落とした。森影は、
「でもネ、能古島にも隕石が落ちたらしくてサ。見に行ったらデッカイものが私の庭に落下していたよ。直径一メートルはあるから抱えて運ぶのに大変だったが、それは、この屋敷内の倉庫に王者のように置いてあるんダ。」
と語尾が特徴的な話しぶりだ。流太郎は肩を戻すと、
「隕石が欲しい人が、いるんです。ぜひ、見たいものですね。」
「ああ、いいともサ。後で行くとして、ちょっと寛ごう。」
 寛ぎの、ひと時が始まる。
三メートルに変身したというより元の姿に戻った森影底男。わたしの本来、住む世界とは一体、何処なのか?リビングルームというか洋間と呼ぶべき広い部屋で居間というような和室ではない部屋のドアが開くと二メートルの背の高さの二十代の女性がコーヒーらしきものを運んできた。二メートルの身長に見合う胸と尻。大きな瞳に長い睫毛、肩までの黒髪の長さ。彼女はコーヒーカップをテーブルに並べつつ、
「森影の家内で御座います。一風、変わったコーヒーを持ってきましたわ。日本では、というより世界でもウチだけしか提供できないものですわよ。」
と明るく話すと部屋を出ていく。森影夫人も、やはり背が巨大だ。その背の高さで白人女性のようではなく、肌の色は白くても日本人的だった。森影底男は、
「さあ、飲みましょう。きっと驚きますよ、時さん。」
確かに驚きの味だった。
苦みが強くて、しかも味わいのあるコーヒー。何処の産地なのだろうか。流太郎は飲み終わると、
「こんなに味のあるコーヒーは初めてです。何処で採れたコーヒー豆を使っているのですか?」
森影は静かに、
「実は、それは地底で採れたコーヒー豆を使っています。」
と説明した。
流太郎は森影夫人がを出ていくのを見て、
「地底のコーヒー豆。地底に太陽が、あるんですね。」
森影は自分用の三倍は大きなコーヒーカップをテーブルに置くと、
「我々が背が高いのも地底の太陽の有難さです。コーヒー豆だって地上の二倍は、ありますよ。」
コーヒーの木は日本では鹿児島の南の方とか沖縄、小笠原諸島くらいでしか育たないのに地底では楽々と育つという。流太郎は、
「それでは地底は熱帯地方みたいな気候ですか?」
森影底男は片方の眉を上げて、
「ん?すべてが、そうではないですけどね。地上にも南極と北極があるように地底にも温度の差は、あります。ここの能古島から地底世界へ降りられるし、登ってもこられるから便利ですよ。」
流太郎は地底産コーヒーを飲み終わると、
「地底の方から掘り進めたんですね、それなら時間もかかったんでしょう。」
と意見すると森影は、
「いや、そうではなくて最初から坑道みたいなものが通っていました。それをアスファルト舗装などして固めは、しましたけど。」
流太郎は更に、
「日本の地下に地底王国がある。という事ですね?」
「うん、いや、王様は居ませんから王国では、ないんです。私達はムー大陸に居たレムリア人の子孫なんですよ。ムー大陸が沈没するのを事前に察知して、超高速船で脱出して近くにあった、日本列島に上陸した。すると・・・・

 そこは縄文人の住んでいる世界だった。三メートルは平均身長のレムリア人を見た縄文人は驚き、
「巨人が海から上がってきたぞ!」「うわ、本当だ!」「おれたち、やられるぞー」「武器を持ってくるんだー。」「そうしよう」「そうするぞー。」
と口々に叫んだ縄文人は竪穴式住居に戻ると石の斧のようなものや長い竹を手に取って次々に現れたレムリア人に立ち向かっていった。
 縄文人の男の中には竪穴式石室に戻ると半裸の妻の体に興奮して急いで若い妻に、のしかかり硬くなった自分の肉器を深く妻の少し開いた、ほらあなに埋め込み合体すると激しく腰を使って二分で達して妻から離れる。大きく白い両脚を広げて快感の余韻に浸って寝そべっている全裸の妻に、
「武器は、どこだったかな?かあちゃん。」
と尋ねると、
「あんた、もう、やめるの?たべものは、いっぱい、あるじゃない。狩りは少し、あとでも、いいでしょ?」
と色っぽく話すと、両脚を大きく開いて魅惑的な入り口を見せつける。旦那は、
「いや、狩りじゃなくて見知らぬ巨人が来たんだ。それで戦わなきゃ、いけなくなった。」
全裸の妻は立ち上がると大きな白い尻を旦那に見せて石室の奥に行くと大きな竹を地面の穴から取り出して、
「はい、これ。隠しておいたのよ。」
と裸体を夫に向けると竹槍みたいなものを右手で差し出す。すぐに近くに来た夫は、それを受け取り、
「あ、ありがとう。これで巨人を倒さないとオレタチは、やられる。そうなったら、おまえと抱き合い、重なれなくなるから。」
妻は蒸気した桃色の顔で瞳を濡らすと、
「もし、あんたが死んだら永遠にできなくなるよ。だから、もう一度、してくれ。立ったままで。」
と両手を広げて立ち足も広げて誘う。夫は槍を投げ捨てると立ったまま自分の肉器を硬直立させて妻の中に入れた。二人は共に腰を振り、今度は三分で達した。石室の外で男の仲間が、
「おーい、じんべい、なにをやってるー。奥さんと、やってるのかー。はやく、来いよー。」
と叫んだ。じんべいと呼ばれた男は急いで腰布を身に着けると、投げ捨てた竹やりを手にして石室を出る。
まだ半分は立っている、じんべいの肉竿は腰布でも隠せないので仲間は、
「ほー、やってたなー、おまえ、奥さんと。」
と好奇に視線で声を掛けた。じんべいは、
「あー、二度してスッキリだ。おまえも、してきたか?」
「いや、おれは家内はウチにいなかったでな。それより巨人だけど。」
「あー、あの巨人は?ざんぺい?」
ざんぺいと呼ばれた浅黒い顔の男は、
「うん、おれたちが向かって行くと逃げていったよ。森の中にね。巨人なのに足が速い。それは奴らの足も長いし、当たり前だな。」
と向こうの方を見て巨人の逃げ出した姿を思い出すように話した。
 ジンベイは竹やりを握る力を緩めると、
「やる気なくなったな。でも、まだ半分立っている。ザンペイ、おまえの奥さんを、おれたちで二人で可愛がるとか、どうだ?」
ザンペイの妻は色白で細身、それでいて胸と尻は大きく顔は、うりざね顔の美人。村の男は、みんなザンペイの妻に欲情を持っている。ザンペイは、あっさりと、
「ああ、いいよ。最近は妻とのアレをやるのは減ったから、うり子は不満なんだ。このまえ石室に帰ると、うり子が裸で座って自分のアソコに自分の指を入れて、あーん、とか声を出していた。それでも、おれのモノは立たなくてね。その前の夜に、うり子と十回も、したんだ。立たなくても不思議じゃ、ないよな?」
「奥さんと十回も?すごいな、おれは一晩、三回が最高だ。今、二回した。だから、おまえの奥さんの、うり子と一回は、できるよ。」
「ああ、相手が変わると、もっとデキルらしいね。さ、行こうか。うり子は又、自分で指入れてるかもな。」
林の中は昼でも薄暗く、ふたりは裸足でザンペイの石室に向かう。竪穴式住居だから地下に部屋があるようなものだ。実際にザンペイの石室は土を掘った地下室なのだ。そんなに広くは、ない。それで入り口の近くに来ると中の声が聞こえてくる事もある。
ジンベイとザンペイは入り口に立つ。斜め下に降りて行くとザンペイの石室だ。二人は斜めに降りていく。すると、
「あああん、すごいいっ、こんなの初めてっ!」
という艶めかしい声が二人の耳に入った。ザンペイとジンベイは急いで下へ降りていく。二人が見たのは巨人に尻を抱え上げられた全裸のザンペイの妻の瓜子が両脚を広げて両脚先を巨人の男の尻に絡ませ、おもいきり大きな彼女の尻を振り黒髪を振り乱して交合している姿だった。それを見た二人はボーッとなり、うり子の気持ちよさそうに乱れている姿を眺めていたが、夫のザンペイはハッとして竹やりを巨人の男の裸の尻に突き刺す。巨人は、のけぞると
「おおお、痛いっ。」
と日本語ではない言葉で叫ぶと、つながっていた瓜子の裸身を外して尻から血を出しながら穴の外へ駆けのぼり、脱象のように逃げていった。背の高くない縄文人の足では巨人を追いかけられなかっただろう。ザンペイは諦め顔で、斜め上にある入り口を見つめながら、
「追いかけても、もし、あいつに立ち向かわれたら、やられるかもしれない。出ていったから、もう、いい。尻を刺してやったから、もう来ないだろう。」
床には妻の瓜子が美しい裸身を乱れた姿で二人に見せていた。ザンペイは下に寝ている妻の瓜子に、
「うり子。気持ちよかったか?」
と聞く。うり子は閉じていた目を長い睫毛の下で開くと、
「あっ、あなた。見ていたの?気持ちよかった。あなたが、いるのも気が付かなかった位に。」
その次に瓜子は夫の横にいるジンベイに気づくと、股間を両脚で閉じて、
「いやん。ジンベイさんも、いたのね。」
と色っぽい恥じらいの顔を見せる。立ち上がろうとする妻の瓜子にザンペイは、
「おい、そのままで、いろよ。おまえ、ジンベイと、やりたくないか?」
寝たままに戻った瓜子は頬を赤くして、
「やりたいわ。隠す事、ないでしょ?あなた。」
納得顔の夫のザンペイはジンベイを見て、
「やってもいい、と妻は言っているから、さあジンベイ。うり子と、してくれ。」
いつもは布で全身を隠している瓜子の姿しか見ていなかったジンベイは自分の股間の肉器が垂直に近い形で立ち上がるのを覚えた。それを寝そべって見ていた美人の瓜子は涎を垂らしそうな顔で両手を差し出すと、
「ジンベイさん、来てーえっ。」
と色っぽい声で甘えるように誘う。ジンベイは自分の腰布を急いで外すと、うり子の上に乗り、太くて長くなった自分の肉器を大きく足を開いた美人の瓜子の股間の中心に埋め込む。
瓜子は快楽に身悶えし、白い大きな乳房を激しく揺らせて夫の前で二度も頂上に昇り詰めた。
 ジンベイも二度、放出した。ザンペイは終わった二人に、
「うり子の子供がジンベイの子供でも大事に育てるからな。おや、あの光った棒は?」
と寝そべった乱れた裸身の瓜子の近くに細長い棒のような水晶が落ちていた。うり子は寝そべった裸身のまま、それを見て、
「あれは、さっきの大男が身に着けていたものだわ。置いて行ったのね、あの光る透明なものを。」
と話す。ジンベイは瓜子から離れた場所で立ち上がり、腰布を身に着けると、
「うーん。珍しい石だなあ。始めて見るよ、この石。」
と細長い形状の水晶を見て感想を言う。ジンベイは、その水晶に近寄り手に持って持ち上げた。そして、
「そんなに重くは、ないな。先は尖っていないから武器じゃない。うり子、これを、おまえの足の間の穴に入れて見るか?」
寝そべった瓜子は白い両足を大きく開き、
「入れてん、あなた。」
と声を出す。ジンベイは細長い水晶の先を妻の瓜子の竪穴に入れる。
ビリビリ、ビリリーンと痺れる感覚が瓜子の膣内で感じられた。
 瓜子は気絶してしまったのでザンペイは慌てて妻の竪穴から細長の推奨を抜き出した。

 普通の水晶ではなく、レムリア人が加工した水晶である。電気を蓄えられる水晶だったのだ。彼らの船も水晶の電気で動いていた。フリーエネルギー充電装置の水晶である。空間には何処にでも電器は存在するというのを発見していたのがテスラという科学者だ。彼は実は金星で生まれたという。幼児の頃に地球に連れてこられた。長じて偉大な科学者になるがエジソン程、有名ではない。
 レムリア人は水晶を使い、電力を発生させていた。彼らの船は水晶で発生した電気で動くのである。それで、その水晶の形は特殊な比率によって加工した外観を持つ。その形になった水晶は電気を蓄えていくのである。
 石室の床には水晶だけでなく巨人の残した衣服も、散らばっている。それを見たジンベイは、
「あの大男。布だけでなく何枚も服を着ていたな。」
と観察した。瓜子も立ち上がると全身を長い布で隠す。そして、
「あの大男は腰の布だけになると、スゴク大きなモノに、なっているのが分かったの。デッカかったわ、アレ。」
と舌なめずりしながら話した。
 巨人たちは村に再び、来なかった。瓜子も襲われたというより、むしろ自分で誘ったのだ。巨人が石室に降りてくる前に、うり子は石室の外で巨人を見たので誘うように中に入れて自分で大きな布を脱ぎ全裸を見せたのだ。巨人は身を屈めて瓜子に接吻した。それから二人の交合は始まった。
 という流れまでは夫のザンペイは知らなかったのである。村の男たちも妻が殺されないのなら、妻と巨人が交合するのは問題ないと村の集まりで意見が一致した。落日の篝火を囲んで男たちは、
「ザンペイの奥さんだけが巨人と合体したそうだ。」
「ほおを。それは、すごい。美人の瓜子さんだものな。」
「あー、おれもヤリタイよ、瓜子と。ザンペイ、いいだろ?」
と聞かれたザンペイは、
「あー、いいよ。十回、夜に瓜子とした次の日は立たないから、おれのモノ。」
一同は感心した声で、おーーーっ、と声を上げる。ひとりの男は、たき火に手を向けて、
「おれも六回はできる。その分をためて、瓜子としてみたい。いいだろ?ザンペイ。」
ザンペイは自分の頭を掻きつつ、
「ああ。おれが十回、夜に瓜子とした次の日に連絡するよ。狩りのない日にね。」
と答えると、村の男の半分は、
「おれも瓜子と。」「おれもヤリタイ。」「ハメたいぜ、瓜子と。」
と十五人の男はザンペイに申し込んだ。ザンペイは照れ臭そうに、
「順番を決めてくれたら、それでいい。」
と快諾した。

 森の中に逃げ込んだレムリア人たちは、洞穴を発見した。それが地下に続いているのに歩いて行くうちに気づいたのだ。やがて彼らは地底の太陽の光を浴びた。清冽な川が流れて熱帯樹林が繁茂している場所もあり、熟した果実は彼らの口の数よりも多い。レムリア人たちは男女ともに船で日本の縄文時代に上陸していた。
彼らは平和を好み、武器を持たなかった。それで簡単なというより原始的な武器を持った縄文人の男たちから逃げたのだ。瓜子と体を交えた巨人も仲間から外れてザンペイの石室の近くに逃げ込んだのであった。
 縄文人の女の味を覚えた巨人の名はジミルという。彼は森の中で裸体のまま、(あの女は誘って、やらせてくれた。この島国の女はスグに、やらせてくれるらしい。レムリアの女より早く、やらせてくれる。ああ、仲間は見つからないし、しょうがない、しばらく、ここに身を潜めていよう。又、誘う女を見つけたらヤレルわけだが、尻を刺されては、かなわない。今度は用心するか)と反省した。
まさかヤッテいる時に尻を刺されるなんて予想していなかった。背後には視線は届かないものだ。それはレムリア人も同じなのである。
 尻を刺されなければハメ放題だ。ジミルは独身のまま脱出の船に乗った。だから周りは夫婦ばかりで、レムリアの既婚女性は身が固い。それにジミルは美男でもなく女にモテないから独身で、あったわけだ。この島の女はスグに、やらせてくれた。しかも美人ときている。背も高くなくて人形のようだ。軽々と美人を抱え上げて尻を抱いてハメていたら美人の旦那らしい男に尻を刺された。
(よし、対策を練ろう!)
レムリアの脱出船は、まだ海岸に停泊したままだ。ジミルは全裸で豪華客船のような祖国の船に一直線で駆け戻った。股間の太い棒を激しく揺らせながら。
 豪華な脱出船に残してきた、ありったけのジミルの財産は残っていた。レムリア人は人のモノを盗んだりしないのだ。財産と言っても、それは金品や宝石ではなく知的財産と言うか科学製品というものだった。それらは小さな手提げ袋に入るもので、中には服のポケットに入れられるものが多い。ジミルは残してきた衣服を身に纏った。この島の今は夏らしい気候に合わせて海水パンツよりもステテコの方が、この島の男の腰布に似ているために、それを履くと上半身は裸で手提げ袋にレムリアの科学の結晶というべき品々を詰めて下船した。一旦、上陸して島の住人である縄文人に追い立てられた後、彼らレムリア人も豪華脱出船に戻り、所持品や衣服を手にして再び日本に上島して森の洞窟から地底に進んだのだ。
 そのうちの一人は独身者のジミルが居ないのに気づき、
「おや?ジミルが、いないぞ?何処だ?ジミルー!!」
と呼びかけたが応答の声は聞こえなかった。周りの人々も、
「ジミルー!」「おーい、ジミルううううっ!」「返事をしろよー!ジミルー!」と、めいめい叫んだが返事は、ない。立ち止まった一同の長老格の人物が、
「今は地上に出るのは危険だ。我々は武器を持たない。ジミルは殺されたのかも知れない。仕方ない。彼の為に我々みんなが死ぬことは避けよう。」
と決断した。一人の青年が、
「長老。地上人に対抗するために我々も武器を持ちましょう!」
と提案すると長老は深く、うなずくと、
「ああ、そうしよう。我々は平和を好む人種だったから武器は持たなかった。アトランティス大陸の奴らは、いくつかの武器を持っていたのだが、ムー大陸に来る前にアトランティス大陸が沈没したからな。よーし、地底人となる我々も武器を持とう。水晶は万能だ。ワシは少し昔に武器を考案していた。アトランティス大陸の人間が武器を持っているという情報がワシのところに来ていたからな。アトランティス大陸に情報収集装置を発射していたのだよ。それは
アトランティスの無人地帯に着地して好感度アンテナでアトランティス人の話す言語を捉えた。我々はアトランティスの言語を習得して解析できるようになった。

SF小説・未来の出来事39 試し読み

 火星の美女二人は海水浴に来たようだ。火星に海があるなんて信じられない気持ちの岩山岩蔵だったが、その二人の身長は二メートルは超えていて胸の膨らみも、その身長に、ふさわしいものだ。ザザーン!ドパーン!と波の音が聞こえた。二人の美女は海岸から海に入って行ったが水中カメラが二人の海中の裸体を捉えている。
それを地球の日本の福岡市の地下街にあるマッサージの店の中で見ている岩山と特団社長は、うつ伏せでいながら目を見開いた。女性マッサージ師は二人に目にかけるゴーグルを渡し、
「そのゴーグルでは操作不要です。あなた方が見たいと思ったものをズームアップしますよ。」
え?そんな夢のような機械が?と思った二人だが、うつ伏せのまま目に当てて見ると二人は、それぞれ臨む場所を瞬時にして望遠レンズで見るように倍率アップで見れたのだ。
 出会い系サイトの運営者・特団社長は金髪の全裸美女の海中で平泳ぎする、その揺れる白い大きな乳房を。
 市民党の国会議員秘書の岩山は長い黒髪を洋上に浮かべて背泳ぎする、その海面下での彼女の尻、それから海面上に浮かぶ彼女の双乳と股間を。絶景だな、これは!と岩山は思う。
 マッサージ女性は、
「そのゴーグルは脳内の願望を捉えて任意の視点から望遠レンズの倍率を自由に変えます。カメラは火星の海岸と海中に設置されていて電波に似たもので、この部屋まで映像を運んで来ているのですよ。」
うつ伏せの二人は合理的な?説明に納得した。とするのなら彼女も又?岩山は聞いてみる、
「あなたも、もしかして?火星人とかですか?」
彼女は静かに、うなずく。そして彼女は赤い唇を開くと、
「意外に簡単に日本に住めました。住民登録もヨーロッパの国から来ている人の親戚という事で登録しています。知人がヨーロッパに居ますからね。」
との話だ。
 二人は、それぞれ火星の海で泳ぐ海中美裸女の見たい場所に視点を合わせられた。もちろん、彼女らの女性器もタップリと眺められたのである。

 ここで市民党の本部がある東京から福岡市の野党の女性国会議員四十代に同年代の与党・市民党の女性国会議員にメールが届いた話を展開しよう。
 冬奈、春乃です。わたしたち、同じ大学の法学部を出て司法試験に合格して同じ法律事務所で働いていたわよね。だけど人口が減って悪い人も減ったから弁護士なのに仕事が減った。冬奈は故郷の福岡市に帰って市議会議員に立候補して当選、野党に所属して、その次が県会議員、それを十年して次に国会議員に当選したじゃない。わたしは市民党の男性国会議員の秘書を務めて十年後に東京で衆議院議員に立候補して当選した。それで今、お互い四十歳だけど独身で子供も無くて衆議院議員を勤めているのよね?冬奈。だけどさ、市民党の女性議員じゃないと男を手に入れられないと思う。あと十数年、市民党の議員でいて最大派閥に入っていると法務大臣の椅子にも座れるのよ、わたし。それまで、しっかりと男遊びしたいとおもっているのよね、冬奈。どうせ私達、見かけは派手じゃないし美人でもない四十路。金で男を買うのも何だし、ね。だけど男遊びしたいよね?冬奈。
どうなのかしら?冬奈。メール返信してね♪最愛の友、春乃より。

 福岡市中央区に福岡支部がある栄和党の事務所で国会議員の友達の北岬春乃からスマートフォンでメールを貰った夏鹿冬奈は休憩時間にトイレで春乃のメールを読んだ。(春乃ったら男遊びしているみたい。十何年で法務大臣か。それは与党の市民党なら定番のコースなのよね。でも私は野党の栄和党。男遊びも出来ないし大臣の椅子にも座れない。実は私、栄和党の男性国会議員に恋心を持ってしまったけど、その人は妻子持ちなので諦めたわ。春乃は、そんな事は、ないみたいだけど。結婚を考えた男性との数回のセックスしか経験がない私。栄和党の男性議員に独身者は、いないし。でも私、議員なのよね、マスコミだって追いかけないし、自由はある。男遊びかー、してみたいわねー。)トイレから事務所に戻り、窓の外を見ると夕焼けで通勤帰りの背広服の男性社員が通りを歩いていたのを目にした夏鹿冬奈であった。
栄和党の事務所以外にも自分の事務所を持つ冬奈だ。四十歳、牡羊座の血液型はB型。ついでに九星は八白土星と、それは、どうでもいいわけだが。ホロスコープの第七室に星がないために結婚は諦めている冬奈である。三十八になった二年前、冬奈は新しい占いの部屋を訪れた。それは福岡市中央区のマンションの一室で六十歳の女性占い師で眼鏡を掛けて帽をかぶり、ナイスシニアと声を掛けたくなる初老の女性だが机の向こうの椅子には、その老年女性占い師の横にハンサム美男子の男性が座っていた。
 その占い師は冬奈を見て、
「いらっしゃい。私の隣に座っている二枚目君は、私の助手なの。」
と話し、その美青年は機械音で、
「ようこそ、神秘占いの館へ。ボクハAIヲ持って、イマスケド、スベテ占いノ、データ、デス。トナリノ先生ガ打ち込んだンデス。ボクハ下半身はナイノデ、安心シテネ。」
ト自己紹介シタ。
 老女占い師はハンサムAIの背中に出ているデータを見て冬奈に、
「あなた国会議員なのね。結婚は諦めているでしょう。」
とズバーンと占断した。
椅子に座っている冬奈は驚いて、
「そうです。当たりましたわ。なぜ、分かるんですか?」
「それはね、人相から分かるのよ。女性が結婚を諦めると眉毛の位置がね、似たものになるの。あなたの眉毛の位置は、まさに、それね。」
と深遠な人相学の話をした。続けて女性占い師はハンサム君の背中に出ているデータを読むと、
「それにね、女性が国会議員になった、とか、なっている時の人相って、あるのよ。この見方は秘伝で教えられないけど。」
と占断する。
冬奈は益々、驚いて、
「驚きましたわ。人相学って奥深いですね。」
「ええ、そうなのよ。あなたの生年月日を、この紙に書いてみなさいよ。ボールペンは、これ。生まれた場所と時間も書いてね。」
冬奈は急いで母から聞いて覚えていた生年月日と生まれた場所を紙に書いた。占い師は、それをハンサム君の口の中に通すと、
「これで貴女のホロスコープが出てくる。わたしが、それを解説します。」
十秒もかからずに冬奈の誕生日のホロスコープがハンサムAIの背中のディスプレイに出た。星位天球図という円形の図形である。十二の部屋に分かれている。占い師は、
「あなた。七室に星がないわね。あなたは結婚に興味が、ないようよ。」
とズバリンーと指摘した。冬奈は驚き、
「そうなんだと思います。独身ですもの、今でも。」
「でも処女じゃ、ないようね。」
冬奈は、ふふ、と含み笑いをすると、
「ええ、でも経験は少ないです。」
「でも貴女の人相では今後、男性と発展しそうだわ。誕生日だけでなく、あなたの近々のホロスコープを見てみるわね。」
と話すと、占い師はハンサム君の背中のパネルにあるキーボードを動かした。それは現在の冬奈の星の位置を示すホロスコープが出ている。それを見て所々、茶色の髪の老年女性占い師は、
「ふむ。もうすぐ友人からメールが来るみたいね。なにか男の話題かなー。」

 それを冬奈は思い出していたのだ。歩いて自分のマンションの部屋に帰りながら。夏鹿冬奈は自分が所有する分譲マンションの部屋で窓ガラスの外に映っているビルの夜景を見ながらビールとワインを交互に飲み、テーブルの上に置いたスマホを手に取ると北岬春乃から着信したメールを見ると新しいメールが届いたピンピラピン♪という着信音と共に彼女の目につく。
 春乃だよー 明日、市民党の福岡県本部に行くことになったの。国会議員の特権で新幹線フリーパスで福岡まで行く。その後で冬乃と会いたい。どうですか?

夏鹿冬奈としては親友の訪問は是非もなく嬉しい。それで
うん、いいねー。政治的要件が済んだら連絡してね。

 と、返信した。翌日、新幹線で午後に博多駅に到着した北岬春乃は東区馬出にある市民党福岡県本部を訪れた。受付から県本部長の利権田の部屋へ。利権田は初老の男性とは言え、若さを残している容貌、動作を北岬春乃に見せると椅子に座ったまま、
「おう、北岬さん。待っていたよ。将来は法務大臣だと聞いている。福岡県本部へ、ようこそ。」
と歓迎した。
春乃はニコリとして、
「野党の友人を何とかして市民党に入党させようと思うんです。」
彼女の服はクリーム色の上下。利権田は春乃の近くの横長の椅子を右手で示すと、
「座っていいよ、北岬さん。」
着席した彼女に利権田はオールバッグの髪を右手で撫で上げると、
「一人でも多くの議員を市民党に入れる事が重要だ。そうすれば日本の利権は我が党のものになる。北岬君も法務大臣になる前に様々なポストに就く事になると思う。副大臣という椅子もあるしね。与党という政権党で我が市民党は長い間、内閣というものを自由にしてきた。それで利権も取り放題。選挙の時には老人と無智な若者を洗脳すればいいし、老人には全国温泉の旅一週間のパックツアーに無料で行ってもらう。その際に旅行会社に発注するわけだが、ここにもリベートという利権が取れる。
政治資金として献金してくれるのは経団連は勿論だが、旅行会社もある。老人には無料旅行を提供し、それを主催する旅行会社からはバックマージンを取る。こんな旨味のある生活は役人には出来ないからな。選挙で国民から選ばれたんだ。利権、取り放題の政策、総裁はね、経団連のために市民党は働けば、いいと私に本音を漏らしてくれたよ。東京の永田町にある市民党本部でね。
 若者はアニメで、たらしこめば、いい。無料アニメ映画観賞券を後援会を通して市民党支持の若者に送る。その時も又、アニメ制作会社との、やり取りの中で利権を取れるよ。北岬君、君もいずれは党内の重要な仕事に触れると思うが、いかに票を集め、利権を集めるかが大事か、という事だ。どうせ日本人の大半は馬鹿だからな。」
北岬春乃は異な顔をして、
「国民の生活のために働くという党の公約では、ないのですか?」
利権田は気軽に、うなずくと、
「あれは表向きのモノさ。月にも表と裏があるだろ。太陽にも表と裏がある。だから市民党にも表と裏があるんだわさ。ところでな、北岬さん。あんた、男は今、いるのか?」
と私生活、いや私性活について問い正した利権田県本部長の顔は好奇心に満ちてニヤニヤしている。不意打ちという質問に少しは動揺した春乃では、あったが立ち直り、
「いいえ、県本部長。永らく独身、これからも独身の私、だと思います。」
と両手を両膝に乗せて答えた北岬春乃に利権田は、
「それは勿体ないようだねー。ひどく見劣りのする容姿とかなら、ともかく、出る所は出ているようだし、」
と言いつつ、春乃の胸と尻を虫眼鏡のレンズで太陽光を当てたように眺め回し、
「女の体としては申し分ないな。噂の立たないようには、しないといけないが政治家は、それほどマス雀に追われる事は無し、場の設定は我々でも出来る。」
「場の設定?と言いますと?」
「いや、なにね、料亭で会食するなどの場だ。市民党の福岡県連合会には古参の方で女遊びの達人が、いらっしゃるんだ。三万人は女を抱いているらしくてね。いわゆる三万人斬りという訳で、もちろん風俗の女性も入れてらしい。それがねー、その人は若い頃から初老まで東京でav男優だったんだそうだ。av男優って取り上げられなければ、意外と人に知られない。メーカー専属ではないし、顔も美男ではないし、それだけにカメラにも写されることのないAV男優だったらしいよ。六十になって福岡市に戻り、性感マッサージをしているらしい。それと同時に市民党に入党された。入党の際の保証人は私と総裁が、なった。総裁も、その人のavを見てファンらしいのでね。福岡市会議員くらいには、させてあげられるんだが、やはり性感マッサージの仕事の方が、いいらしい。
 それで、その人には市民党の女性議員の性欲を満たすためにマッサージ、その他、要望が女性議員から出ればゴムなしセックスもしている。」
ひやあ、と春乃は思った。そんな人が市民党に、いるんだ。
波口哄笑の利権田は、
「北岬さんも男干ばつじゃないかと思うね。三万人の女を抱いた男にマッサージでも、してもらったら?」
と誘いかけた。
春乃は自分の乳首が幾分、硬直したのを感じて、
「興味ありますわ。四十路ですけど、議員の仕事だけが女の生き方ではないと思います。」
了承のサインを春乃の瞳に見た利権田は両手で、かしわ手を打つと、
「よし、決まりだ。北岬さん、一週間ほど福岡市に滞在していくといいよ。ここの県本部にも泊まれる部屋は、いくつでもあるし。野党議員の友達と会ってきて、市民党に入党するように誘いかけてみたらいい。私のスマホの番号を教えるから・・・。」
という事で、春乃は利権田・県本部長に自分のスマホ番号を教えた。

 それから市民党福岡県本部を出た北岬春乃は五時過ぎにでも友人の夏鹿冬奈に連絡を取ろうと思った。
 栄和党の事務所から出て自分の事務所に戻った夏鹿冬奈は後援会の人達と、なごやかに話し合い、五時に事務所を出た。自宅に向けて百歩も歩くとスマートフォンが鳴る。
「はい、夏鹿です。」
ー春乃よ。今から会わない?冬奈。
「ええ、いいわよ。今、何処にいるの?春乃。」
ー天神地下街に、いる。
「じゃあ、今から歩いて天神地下街に行くわ。天神地下街の、どの辺に、いるの?春乃?」
ー天神駅の改札口から出て、すぐの所よ。
「わかった。それでは待っててね。」
人波が動いているような天神駅周辺で大型スクリーンには日本紅党の桜見党首の顔が映し出されている。それを見て夏鹿冬奈は(インパクトのある方法だわ。音声は出せない事情もあるのだろうけど。)栄和党は資金に乏しく、あの大型スクリーンに広告を出した事はない。
栄和党は貧困層の救済を政策に持っているために政治献金をする会社がないのである。冬奈の家庭も裕福ではなく学生アルバイトというか家庭教師などをやりつつ司法試験に卒業間際に合格するといった苦学力業の生き方をして来た。それが彼女が栄和党に入党する、きっかけでもあった。
 大型スクリーンを視点から外すと、冬奈は地下に降りる階段を降りる時にロボット・苦力(クーリー)の無料サービスを受けた。階段の降り口で人を背負えるように腰をかがめて背中に人を乗せるように両手を後ろに出しているロボットがいる。それに背負われるように乗り、ロボットの首の後ろにあるボタンを押すと背中に乗った人を両手で背負い、階段を降りていく。
階段を降り切るとロボットは背中の手を離し、おんぶしていた人が降りられるようにする。人が降りた後、ロボット苦力は再び階段を登っていく。
 ロボット苦力の利用者が多くないのは子供は利用できないのと階段を降りる速度が遅いためだ。夏鹿冬奈は北岬春乃に後でロボット苦力を教えてあげようと久方振りに今、ロボット苦力に乗ってみたのだ。(まずまずの安定感だわ)と地下街に降りたロボット苦力の背中から降りた冬奈は安堵と共に感慨を持った。
 駅改札口の近くに弁護士時代からの友、北岬春乃が一日万秋の思いで冬奈が来るのを待っていた。春乃は冬奈を認めると右手を振り、
「夏鹿さん、こっちよ。」
と声を出す。四十路にしては若い二人は再会を喜ぶ。夏鹿冬奈は、
「あっちの階段にロボット苦力が、いるのよ。無料で背中に、おんぶしてもらえるわ。」
北岬春乃は好奇心のある目で、
「そんなロボットが、いるのね。とても興味があるけど、今は私、あなたに話があるから。」
と答えると、夏鹿冬奈は納得して、
「そうなのね。それじゃ、ロボットカフェに連れていってあげる。」
二人は天神地下街のロボットカフェ、#ロボ・デ・コーヒー#に入る。
 平日の午後五時過ぎ、店内は賑わうほどの人は、いない。というのは普通の喫茶店の倍の値段のコーヒーをロボットが給仕しに来るからだろう。コーヒーそのものも高給豆を使用しているため、コーヒーマニアしか入らない店だ。ロボットには初期投資が必要だが、その後は電気代だけで済むので混雑するほどの客は不要なのだ。
 夏鹿冬奈と北岬春乃が座ったテーブルにも女性型ロボットが注文を聞きに来た。冬奈は「コーヒー」春奈も「わたしも、コーヒー」と豊満な体型の女性ロボットに注文した。
男性客なら喜びそうな胸と尻の女性ロボットで、ぱっと見た目にはロボットには見えないほどの外見であるし、冬奈と春乃の注文にも、
「承知いたしました。それでは、お待ちください。」
と答えた、その声も機械とは思えないものだった。厨房に戻る女性ロボットの尻は左右に振れてミニスカートの脚も白くて長く細い優美なものだ。冬奈は、
「話って何かしら?」と聞くと春乃は微笑して、
「市民党に冬奈、入党したら、いいわよ。」
と直言した。
夏鹿冬奈は戸惑いの色を目に浮かべると、
「市民党と栄和党では政策が違いすぎるわ。国会議員の給料は同じじゃないかしら。何故、そういう事を勧めるの?」
「女性議員に対する対応も違うのよ。独身の女性議員に市民党では色々な取り計らいがあるわ。男性秘書を二人、市民党から準備してくれる。筋肉質な三十代後半の男性二人が私の秘書に、なった。逞しいのは上半身だけでなくて、下半身、特に股間のナニが凄いのよ。」
と涎を出しそうな顔で春乃は冬奈に話す。冬奈は即座に察して、
「まさか、春乃。男性秘書と・・・???」
春乃は満悦した顔で、
「そう、ね。仕事が終わったら二人の男子秘書と体を交える日が多いかな、最近。」
と性交の記憶を思い出してか春乃の顔は淫蕩な色を浮かべる。
東京・赤坂の議員宿舎で北岬春乃は3Pセックスプレイを男性秘書と繰り広げる。下着になった春乃はベッドの上で四つん這いになり、上半身は背広を着たままの一人の男性秘書、下半身は、もう一人の背広を着た男子秘書の愛欲行為に身を任せる。
一人は春乃の乳房を揉み、キスをして舌を絡め、下半身担当の秘書は春乃の股間の花裂を舐め回した後、
「北岬先生、もう我慢できない。挿入しても、よろしいでしょうか?」
と極度の性的興奮の声音で聞いてくる。春乃は、もう一人の秘書に乳房を揉まれ乳首を指でなぞられた後、乳首を口に咥えられ両眼をトロンとさせて、
「入れて、いいわっ。わたしのパンティを脱がせた後でねっ、はあーんっ。貴方も全裸に、なるのっ。」
「はい、服は全部、脱ぎます!」
と答えた春乃議員の男性秘書は逆三角形の筋肉質の上半身を服を脱いで見せるとズボンを脱ぎ、すでに白いパンツは尖塔のような盛り上がりを見せている。それも手早く男秘書は外すと、モッコリーンと突きあがったビッグサイズの長大棒を先端の亀頭を照準のようにして春乃の後ろから見えている淫靡な花裂に突き込んでいく。
「ああーっ、逞しいいっ。すっごーい。前野君も全裸になりなさい。」
と自分の乳首を吸っている男秘書に呼びかける。その秘書は口を春乃の朱色の乳首から離すと立ち上がり、
「はい、先生。今、すぐ脱ぎます。」
と応えて、ただちに全裸となる。前野と呼ばれた男秘書も既に男の欲棒を最大限に隆起させていた。それを四つん這いで後ろから、もう一人の男秘書に連続的に貫かれつつ春乃は大きな目で見ると、
「前野君のモノも逞しすぎるわ。わたしの口に入れてっ。」
と指示した。前野秘書は、
「はい、先生。どうぞ。」
と春乃の顔の前に極限隆起した欲棒を差し出す。春乃は口を近づけて動物のように前野の欲棒を口に頬張った。
二人の若い男たちの肉欲棒を同時に味わえる喜びに春乃は大きな乳房を揺らせつつ、白い豊満な尻も激しく振っていた・・・。
 二人の秘書は、後ろから春乃に入れている男が、
「先生!もう耐えられません、出してしまいそうなので抜きましょうか?」と歯を食いしばって聞く、春乃は口の中の肉棒を一旦外して、
「中に出していいっ!抜かないでっ!」
と答えると尻を高く上げ、口から外した肉棒の所有者の秘書は、
「乱れている先生の裸を見ているだけで出しそうです」
とベッドに両膝を着いたまま云うので春乃は其の肉棒を口に咥える前に
「中に出しテ。」と答えると夢中で男秘書の欲棒を頬張った。そして、自分の赤い舌を欲棒に絡ませる。後ろの秘書の欲棒には自分の豊満尻を高く突き上げて左右に振る。二人の男秘書は、その動きから来た強烈な快感に、
「あ、行きます、先生。」と後ろの秘書、
「で、でますぅー。」と春乃の口に咥えられている秘書、
は同時に叫んで同時に白烈砲を発射した。

熟女の近未来の性生活

近未来の不動産会社OL

美山響子(よしやま・きょうこ)は、三十歳、不動産会社勤務、独身、身長百五十八センチ、88>59>89のサイズで、通勤はフェラーリで通勤している。
満員電車では必ず、痴漢された。美山響子は男性の好みは限定されていたので、多くの男に触られるなど気分のいいものではない。もちろん、大抵の女性なら痴漢は気分が悪いものだが。それで、二千万円クラスの黒のフェラーリを現金で購入した。
インターネット検索で、フェラーリの販売店を探し出したのだ。フェラーリの公式ホームページから探せる。響子は福岡市なので、福岡の販売店を探すと、一つしかなかった。
2013年も一つだったが、2033年の今もフェラーリの販売店は福岡市にしかない。なにせ、トヨタがレクサスなどの高級車の販売に力を入れたため、高級外車は昔ほど売れなくなっていた。

響子は帰宅すると高級マンションの最上階で、宅配ピザを注文する。
「春吉の美山です。」
「毎度ありがとうございます。」
名乗った後に、間を置くのはピザの店の人間がパソコンから美山の情報を呼び出すためで、これはもう随分昔から行われている。
Sサイズのピザを二枚、注文した響子はフカフカのソファに座った。それから向こうの部屋にいる彼の体を思い出す。彼は料理、洗濯なんてやってはくれないばかりか、自分で歩行するのもままならない体だ。
それでも一昔前の彼のタイプの・・・
ピンポーンと、何十年と変化のないチャイムが鳴った。携帯電話の着信音なんて様々なものがあるのに、ドアのチャイムは何処も同じ、およそ建築関係の人間は発展性がないのだ。それが証拠とはいえるかどうか、日本の大手建設会社の起源は江戸時代の頃で、保守一点張りといえるのかもしれない。
玄関ドアを開けると、男子大学生アルバイトらしい青年が顔を出した。背も高く百八十センチはあり、フットボールでもやっていそうだ。響子は(ピザよりも、この青年の方がおいしそうだわ。)と思ったが、学生では面倒な事も多い。
「お待たせしました、ピザビッグです。」
ズボンと上着が繋がっている、いわゆるツナギの白い制服を着た大学生は
ピザビッグ!おいしさ二万倍。
と文字が印刷された白い箱を響子に手渡した。受け取って玄関脇の棚のところに置くと響子は、代金を払った。その宅配員の視線を胸に感じながら響子は、その男の股間を見ると白い制服に大きく張り出した格好になっている。(勃起しているのかしら)
「丁度、いただきました。ありがとうございます。」
深々と頭を下げた青年の股間を響子は注視していたが、ドアが閉まるまで張り出したものは、引っ込まなかった。

ピザビッグはSサイズも他の宅配ピザより、大きかった。響子の好きなメニューの一つがウインナーピザで、長さ二十センチのウインナーを先に手にとって、男性のペニスを頬張るように口に入れる。
このウインナーピザの注文は独身女性からが最も多かったので、ピザビッグの経営者は、含み笑いをしながら、
「裏メニューを開発しよう。簡単だ。ウインナーを男性器の形にするんだ。それをバイブ版、という形でメニューに載せる。メニューには、未成年のお客様は、このバイブ版は御注文できません、と但し書きは入れるようにする。さっそく、取り掛かってくれ。」
という発案に、開発スタッフが取り組み、できたものはバイブというより食べられるだけに松茸という感じの黒い大きなウインナーだった。
今、響子が口に入れたのは、この裏メニューのバイブ版だった。
(まるで、男の大きなアレみたい・・・。)
響子の舌は、その男性器と同じ形に作られた、というより勃起時の男性器と同じに作られたウインナーの亀頭の部分を舐め回していた。亀頭のカリも舐め回していく。
TANNERの第五段階、の男性器をモデルにしている。すなわち、最終的に成熟した男の性器である。
響子は上着を脱ぎ、シャツも脱いでブラジャーを外すと、TANNERの第五段階である自分の乳房を揉みながら、ウインナーをまるで男性の勃起したペニスにするように舌を這わせていった。
広い食卓に一人で座って、響子はウインナーにかぶりつく、のではなく、しゃぶりついている。
響子の白い大きな乳房はTANNERの第五段階のため、乳輪は後退して見えない。
世間的に見られるAVなどでの乳輪の大きな女性は、TANNERの第四段階であり、完全成熟とはなっていないのである。
空腹は、響子の想像を打ち破った。カリカリとウインナーは、響子の口の中で噛み裂かれる。胃袋から伝達される感覚が、彼女を現実に戻したのだ。
(彼は、寝室にいたわね。ダブルベッドで寝てるけど。わたしがピザのウインナーで、こんな事をしているのは知らないでしょう。)
そもそも、その彼との性生活に不満があるから、ウインナーもビッグサイズのものを求めるようになる。でも、それは彼のモノのサイズが小さいからではない。
ウインナーを食べ終わると、ベッドに寝ている彼のビッグなモノを想像して響子は笑顔を浮かべた。

ピザが入っていた紙の容器をゴミ箱に捨てると、響子は寝室に向った。ドアを開けると、ダブルベッドの片隅で全裸の彼が寝そべっている。響子は彼の股間に真っ先に、眼をやる。ビッグ!ただ、それはまだ固くなっていない。
その彼は、同じ不動産会社の同僚だった。年齢も同じで、三年前に結婚した。半年ほどは薔薇色の結婚生活だった。何が楽しいといって、仕事から帰って夕食を食べ、そのあとにすぐするセックス以外にあるだろうか。彼は大学時代、ラグビーをしていたのでタフだった。
響子を手早く全裸にしてくれて、先に全裸になっていた彼は、すでに怒髪天を衝くという言葉を変えて、怒棒天を向くという趣の姿態だ。
お互い立ったままの彼らは、響子が尻を向けて彼に寄り添う。彼は高く突き出した彼女の尻の間に見える大きな割れ目に、太く長いイチモツを突き入れると、響子の両脚を膝の後ろから両手で抱えて、空中に浮かせた。
駅弁体位の女性が、逆を向いた姿勢になる。駅弁体位の場合、女は男の肩に掴まったりするが、響子の今の体位は背中が彼の胸に密着して両手は空いている。
彼が響子の体を高く持ち上げるようにして、おろすという動作は騎上位を空中で行っている気になり、
「あっ、あっ、あっ。」
という悶え声を響子は止められなかった。空中に座ったまま、彼の雄大なペニ棒が出入りしている。それが、新婚生活で響子が最も好きな時間だった。
響子のマンコは締め付けが強く、セックスを終わった後、彼のペニスを観察するとその皮膚が締め付けられて赤くなっていた。
それ位の締め付けだから、彼も五分と持たないことが多かった。
不動産会社も多種あるのだが、響子の勤めているところは主に賃貸物件の仲介だ。福岡市の中心に近いところにあるので、家賃の高い部屋が多く、したがって仲介を頼みに来る人達も少ない。
平日の昼間など、午前中もだが、客は一人も来ないことが多い。高い家賃を払ってまで福岡市の中心に引っ越したい人達は、東は神戸まで見当たらない巨大商業地の天神でビジネスとか店を考えている人達なのだ。
響子は一人で店にいる事も、しばしばだったので、逆駅弁の夫とのセックスを思いながら指はスカートの中に入れて、パンティの上からマンスジを強くなぞって楽しむ事もある。
不動産の仲介店に行けば、どこでも座っている女性の下半身は見えないようになっている。だから、万一、客が入ってきても響子は指を素早くパンティから離せばよい。
大手建設会社の受付も暇なことが多いし、人も通らない時間が多いと受付の女性はオナニーに耽る事もあるらしいが、響子は店のドアが開く瞬間に手を離して来客用笑顔を向けるので、気づかれた事はない。
響子の夫は営業に回されていたので、部屋も違い、顔を会社で合わせる事もなかった。
それでも、二人が付き合っている事は社内では知れ渡っていた。それは狭い世間というところだろう。響子と彼が、会社の休日にラブホテルに入ったのを見た社員がいたらしい。
休みの少ない不動産会社の休日に、二人はホテルで朝から晩までセックスした。
昼の食事も、そこそこのホテルに泊まるようになってからは、部屋に持って来てもらうようにした。その昼食を受け取る時だけ、彼が衣服を身につけた。大抵は若いホテルマンが、台車で昼食の上に布をかけて持ってきた。その時には、一発は響子の尻の中に射精していたし、入り口から見えないベッドで響子は全裸で寝そべっていた。
不動産会社の休日だから、水曜日、響子の会社も水曜日が休みだ。昼食を食べ終わった二人は、再び全裸で抱き合う。窓のカーテンも締め切っているけど、その外の下の空間では忙しそうに白いカッターシャツを着たサラリーマンが、歩き回っていた。
正常位で挿入しようとした彼に響子は、
「昨日のお客さん、案内した部屋の中で、さりげなくだけど、わたしのお尻をむにゅーと掴んだのよ。」
と告白する。彼の勃起したイチモツは、響子の膣口の前で停止した。
「ええーっ、それだけか。」
「うん、それだけ。」
「よーし。おれがもっと、おまえの尻を愛してやる。」
彼は響子を、うつ伏せにした。大きな二つの乳房が、プルンと揺れる。尻を高く上げた響子の股間には、大きな淫裂の線が彼の眼にイヤラシく映った。潤んだその長い割れ目に、彼は長大なモノを根元まで突き入れた。響子は尻を震わせて、顔を横向けにすると、
「あああ、すっごく、いい。マンコ、気持ちいい。こすって!」
と淫らに悶えた。頬が紅色に染まっていた。不動産会社で働いている時の顔とは、別人のようだ。恐らく、AVに出ても分からないのではないかと、思われる。
この頃のAVはマンネリ化して売り上げも落ちてきていたのだが、テレビに出た、もしくは出ていた芸能人を出演させるという企画で、どうにか持ちこたえていた。狙い目は昔、大人数で歌っていたあの数十人単位のメンバーをどれか一人でもAVに出せば、昔のファンが必ず買うという現象がある。メンバーの二人を同時に出演させて、男優四人と絡ませる。そういう企画ものは、四十万枚もの大ヒットとなった。AVは昔からレンタルされるのが普通で、十万枚も売れれば大ヒットだった。
昔のファンには、たまらないシリーズだった。握手をしたファンは、一人で二枚は買った人もいる。
傑作なのが、この元アイドルグループのシリーズものを三十枚買うと、誰か好きなメンバーとホテルで、しかも高級ホテルで一泊できるというものだった。そのシリーズのDVDに付いている応募券を集めて郵送すれば、東京のホテルまでの往復の旅費まで旅行券がついて好きなアイドルとの夜が過ごせた。大抵は三十過ぎになっていたメンバーが多いけど、その高級ホテルの従業員の話では、そのアイドルと泊まっている客の部屋では一晩中、灯りがついていて、その元アイドルの悶え狂う下品な悶え声が四、五時間続いて聞こえた、とか、朝、その元アイドルが蟹股でヨタヨタとホテルの通路を歩く姿が見られるという。
やはり一晩中、大股開きにさせられて、熱くなったファンのモノを受け入れていると股ずれが起きる事もあるらしい。
元メンバーの中には、結婚しているものもいたけど、旦那公認でそのAVに出ている場合もある。その場合も、応募できるのでシリーズ累計二百万枚の売り上げを記録しつつあるAVのミリオンダラー箱である。
オンデマンドという言葉があるけれども、これ以上に客の要求に応えたシリーズは過去には、なかったろう。
これらのシリーズものの売り上げは、低迷しているCD業界などには垂涎の的ではあったが、彼女等の悶え声だけを収録したCDも大した売り上げには、ならなかった。
彼女達が出るAVをAVB24と称していた。アダルトビデオ部隊24の略だった。

結婚が決まるまで部屋に入れてくれなかった響子の彼、だったが、結婚が決まって、
「おれも包み隠さず、部屋を見せる。」
と男らしく公言するように話すと、薬院という福岡市の中心に近い場所の二十階立ての十五階に住む、彼の部屋に響子は連れて行ってもらった。
神戸の人口を抜いて、名古屋に迫ろうという福岡市でも高層マンションの建築はボツボツだ。それは郊外にまだ、土地があるからである。神戸の人口より少ない頃も、高層マンションを多く作るという発想は福岡市内では、あまりなかった。東京のように完売できるかという心配もあったと思われるが、新築のマンションはすぐに満室になったり、分譲マンションは建築中でも完売御礼が出るのが福岡市である。

SF小説・未来の出来事38 試し読み

市民党員の岩山岩蔵は彼女が、いない。それは何故だか彼にも分からなかった。国立大学の法学部を卒業して一流商社の角紫(かどむらさき)で百貨店向けの営業を見習いとして先輩社員に同行中だ。研修中だが給与は、いい。それでも何故か女性との縁がない、(政治家になれば女を抱けるはずだ)と彼は思ったのだ。それで保守政党の市民党に入党したら事務局で茶色の封筒を渡され、今開けて見ると
ソープとファッションヘルスの利用回数券だった。(やはり、な!市民党の国会議員になるためには多くの女を知らなければ、いけない、抱かなければ、いけない。その手始めにソープ・・・福岡市では愛高島にしかソープはない。北九州に行けば地上にソープは、ある。どんな利用券だろう?)岩山岩蔵が眼を近づけて見ると、
全国共通ソープ・ファッションヘルス利用券
全国の加盟ソープ・ファッションヘルスの各店舗で、ご利用になれます
と説明書きがあり、北海道から沖縄までの加盟風俗店の店名と住所が載っていた。(これが市民党の力だ!女を抱くために国会議員になる、その願望を叶えてくれるのが保守政党の市民党だ。翼賛政治の伝統を復活してアメリカの子分で、在り続けるという世間には公表しない市民党の政策も教えてもらったけど、そんなのは女を抱ければ、どうでもいいんだな。北九州のソープ・・・)岩蔵はスマートフォンのネット検索で早くも北九州市小倉北区の船頭町にあるソープ店舗を見つけた。
知られているようで知られていないかもしれないが小倉のソープは福岡市の愛高島のソープより安い料金なのだ。市民党の福岡県本部は東区にあるために小倉はタクシーで行き、ソープを利用している古参の市民党員もいるという。福岡から小倉へタクシーとは運賃も跳ね上がるが、岩山岩蔵も、その手を使い小倉北区の船頭町へ行き、
降り際に余計に料金を払って、
「お釣りは、いいよ。ぼくは市民党員です。」
と先輩に指導された通りの遣り方を踏襲した。タクシーの中年男性運転手は驚きの目で、
「これは、どうも有難うございます。選挙では市民党に入れますよ。これだけのチップ・・・女房にも市民党に投票させますから、はい。」
と礼を言う。
岩山はソープの入り口で、
「やあ。可愛い娘は、いるかい?」
と気軽に尋ねた。黒服は揉み手をすると、
「これは、ようこそ、おいでくださいました。可愛い娘は、沢山いますよ。十代も続々入店。パンデミックで仕事のない女性、客室乗務員も入店です!」
これは異な話。客室乗務員は福岡市に住んでいるはずだが?店内に入ると岩山は、
「客室乗務員は福岡市の空港の近くに住んでいるんだろう?北九州市小倉北区のここまで来るか。」
黒服は鼻の下の黒ひげを人差し指で撫でると、
「ええ。福岡市のソープは愛高島に移動しました。そこへ行く面倒さと福岡市内では客室乗務員だと知られていたりするので、もし、お客さんが自分を知っていた場合、というのもあるらしいですね。愛高島に行くより小倉北区の船頭町の方が来やすいんです。」
岩山はウムと、うなずき、
「回数券を使っていいんだね?ここは。」
と念を押すと、
「はい、勿論でございます。と、いたしますと、お客様は市民党の党員の方ですね?」
「ああ、そうだよ。入党祝いに貰ったんだ、利用券をね」
黒服は腰を低くすると、
「ありがとうございます。全国ソープ・ファッションヘルス共通利用券は市民党党員の皆様にだけ発行されているのです。」
と、うやうやしく話した。
 岩山にしても初めてのソープでは、なかった。まだ愛高島に移動していなかった中洲のソープには月に一度は通っていたのだ。大学生時代の話で、その金を稼ぐために家庭教師もしていた岩山岩蔵である。国立大学の現役学生という事で家庭教師の需要は、福岡に幾らでもあった。中洲のソープでマットプレイをソープ嬢に、してもらっていた岩山岩蔵は即立ちした竿を握られて、
「国立大学の学生さんじゃないかしら?お客さんは。」
とマットの上で横に寝ているところを顔を近づけられて
聞かれる。岩蔵は亀頭が破裂しそうなほど膨らむのを感じて、
「いいや、私立大学ですよ。親父から貰った小遣いで来たんだ。」
ソープ嬢は意外な顔で岩蔵の肉竿を、しごきながら、
「そーなの。わたし、人を見る目は鋭いと思っていたのよ。意外だわね、お客さん、頭も良さそうなのに。」
早めに岩蔵はイキそうになるのをコラえると、
「ああ。そとづらは当てにならないよ。もうハメさせてくれ。」
ソープ嬢は右手の動きを止めて、
「それなら騎乗位でイク?」
「ああ、お願いします。」
マットの上で性器を交合させる二人。ソープ嬢の鮮やかな腰の振り方に岩蔵は一分で射精したのだった。

 次の日、岩蔵(国立大学の学生の頃の)は大学の講義を終えて、家庭教師の仕事をしに東区の豪邸へ向かった。父親は実業家として成功しているが古くから続く豪商一族であるという。
そこの一人娘の家庭教師を岩蔵は頼まれている。父親は岩蔵に古めかしくて畳敷きではあるが洋風の椅子に腰かけて、
「あなたも、さあ、どうぞ。腰かけてください。ブランド物のヨーロッパの直輸入のソファです。いやあ、なんというか一度ね、今、はやりのAI家庭教師をレンタルしましたけど、娘も成績が上がらないし、このままでは大学には入れなくなりそうかなという状況でした。三か月前に貴君が来てからは娘の成績も上がり始めましたよ。予備校には行かせないでウチの仕事をやらせていますが、フルタイムで働かせるわけには、いかない。岩山さんが来る前には仕事を終わらせています。きのう十九になった娘の愛夢(あいむ)です。おう、愛夢、岩山さんが来たヨ。自分の部屋に行って、教えてもらいなさい。」
応接間に姿を見せた振り袖姿の愛夢だ。愛夢は両腕を組むと着物の袂が揺れて、
「はーい。岩山さん、行きましょう、私の部屋へ。」
岩山岩蔵は立ち上がると後ろ姿の愛夢の尻を見ながら、ついていく。着物を着ていても尻の大きなことが隠せない愛夢だ。左右に揺れる愛夢の尻。長い廊下を歩くから岩蔵はタップリと男を誘うかのような愛夢の尻を着物の上からでも眺めて彼女の部屋に入る。
豪邸なだけに娘の部屋も十畳はある。大きな机の上に大きなノートパソコンが開いていた。
愛夢が椅子に座ると着物の上からでも分かる大きな胸の盛り上がりが岩山岩蔵の視界に入る。岩蔵は立ったまま、
「この調子だと、どの国立大学でも合格しますよ。僕としては教えることは、もうないのでね。明日は試験だね。頑張って受けに行こうよ。何か質問は、ありますか?」
愛夢は上目遣いで岩蔵を見上げると、
「市民党について教えてください。」
と聞いた。岩蔵は、
「ん?市民党?知らないな。大学入試には出ませんよ。」
部屋の中にはドアがあり、それが開くと愛夢とそっくりの女の子が洋服姿で出て来た。彼女は岩蔵に、
「こんにちわ。わたしが本物の愛夢よ。最初の授業を受ける時から、そこにいるロボットのわたしと入れ替わったの。」
とズボンを履いて立ったまま告げた。
岩蔵は信じられない顔で、
「それでは。ココに座っているのはロボット?」
ロボットの愛夢はニコニコして、
「そうです。わたしは御嬢様そっくりに作られたアンドロイド。今度、御嬢様の代わりに大学の入学試験を受けに行くし、合格したら大学にも行きます。」
岩蔵は、
「それにしても・・・どこの会社が君を作ったんだい?」
ロボットの愛夢は、
「わたし、半分以上は人間です。脳内は人工がほとんど、ですけど。会社はサイバーモーメントですわ。わたし、御嬢様と同年同月同日に生まれました。」
岩蔵は半分納得した顔で、
「双子って訳ですね。よく似ているものな、あなた方は。」
半アンドロイドの愛夢は、
「ただし母は違うんです。わたしの母は愛人ですの。だから日陰の身で、わたしも母と同じ境遇ですけど贅沢もさせてもらっています。それに本名も御嬢様と同じ名前の愛夢で戸籍に届け出ています。」
岩蔵は理解した顔で、
「なるほど。それにしても脳内は人工ですか。どうして又、そんな事に?なったんですか?」
「あ、それは。・・・・。」
アンドロイド愛夢は少女の頃、崖から転落して脳を全て損傷した。脳死の状態なのを全て人工知能に移し替えることで生きて行けるようになったのだ。岩蔵は興味深い顔で、
「そうですか。ほんじゃあ、これから大学生活ですね。確かに貴女は頭が良すぎると思いましたよ。記憶力が特にねえ。」
アンドロイド愛夢は表情を変えずに、
「褒められて喜ばなければ、と考えますけど。それは巧くプログラムされていないですね。ですので私、感情表現が稚拙なのだと思います。土台、人工知能は完璧では、ありません。」
それにしても和服姿のアンドロイド愛夢の胸は大きく、時折、魅惑的に揺れる。身体は生身の女性なのだ。岩蔵は、
「通学は和服では目立ちすぎますよ、念のためにね。」
と忠告するとアンドロイド愛夢は、
「それは分かります。近代国家日本の成立と共に日本人女性の服装が暫時、着物から洋服に変遷していくのは歴史的事実として厳然と残っているのは欧米諸国との明確なる違いであるという事が出来ますね?先生。」
「そうですね。服は気を付けましょう。貴女は魅力的ですから。」
と岩蔵は言うと立っている本物の愛夢を見た。
すると、いつの間にか本物のというか、百パーセント人間の愛夢は、いなくなっていたのだ。ドアの向こうに行ったのだろう。

 アンドロイド愛夢が着物を着ているのは自宅の中だけだ。国立大学の試験を合格して快晴となって通学する事になる。岩山岩蔵の家庭教師の仕事は終わった。と同時に岩山は総合商社の角紫に就職して市民党に入党する。福岡市議会の半数を占める市民党、日本紅党は、これから一議席を狙う。
 岩山岩蔵は会社が終わると市民党の手伝いに走り、又しても女との出会いは無くなっていく。老舗の一流商社の角紫(かどむらさき)では新入社員には残業も長時間、させる事がある。そんな時は岩山はスマートフォンで、
「すみません、今日も会社の残業で市民党に来られなくなりました。」
と市民党の福岡県本部(福岡市東区馬出)に電話する。岩山の電話は県本部長に繋がり、
「いいよ。仕事が一番だから。岩山君にも、いずれ市民党公認の立候補者に、なってもらうけど、それまでは仕事を頑張ってください。」
との返事だった。本部長は固定電話を置くと、
「福岡一区から当選した女性議員の妻駄伊井代は旦那とのアレは、しばらくないらしいな。」
と目の前の男性秘書に話す。五十代の男性秘書は好色そうに、
「妻駄は清楚に見えて男好きなんですよ。旦那は七十の市会議員、市民党ですよね。」
本部長は六十代らしく、
「ああ、そうだ。時々、女性秘書に手淫を、してもらっていると本人から聞いたよ。それで妻の伊井代には立たないんだろうな。」
「秘書は二十代の美人。伊井代は三十五、でしたっけね?本部長?」
本部長は、うなずくと、
「伊井代という妻が清楚でも三十路だからな。衆議院議員選挙で当選したのは伊井代の美貌のせいだと言われている。ま、市民党公認の妻駄伊井代だから最初から当選確実だった。昔の腐敗した保守政党のように金で自滅しては、いけない。その辺は君も覚えて置け。新たな資金源はビットコインもあるからな。」
と示唆する市民党福岡県本部長だ。
男性秘書は、
「分かっております。カジノを福岡市に誘致できれば市民党の利権になりますよね?本部長?」
「ああ、もちろんだとも。カジノ経営者には市民党の、うま味を知ってもらう。」
「金と女、ですね?本部長?」
「あー、そーだ。いつの世にも、その二つで政権は取れるし、市民党は日本の政権を取っている。東京本部は、おとなしくしているけど裏ではカジノや国策企業と癒着して東京の芸者は意のままに動かせるし、タレントのバカ女は全部、市民党の金を渡してある。」
「潰れていないテレビ局の馬鹿どもにもでしょ?本部長?」
「あー、そーだ。東京のテレビ局は日本一の馬鹿がやっているから金と女で、どうにでもなるさ。選挙の時は市民党に有利になるように番組を作らせ、金を渡す。馬鹿プロデュサーには神楽坂の美人芸者でオマンコ攻めすれば市民党の思いのままだ。」
「東京の芸者のオマンコは市民党が抑えていますからね、本部長。」
「それに国立大出と商工会議所、経団連もな。日本の庶民なんて表を入れさせるのは簡単だよ。テレビで煽ればいいし。」
「落ちぶれたテレビ局が欲しいのは金ですよね?本部長。」
「そうだ。それにプロデューサーは女で、どうにでもなる。日本のテレビ局は、その程度のものだからな、大昔からな。」
「市民党の前に長く続いた保守政党も、そうしていたんですかね?本部長?」
本部長は煙草を取り出すと口に咥えて、電子ライターで火を点けると、スパー、ふーっと紫煙を吐き出し、
「だろうかな?どの程度かは知らないが、金と女の政治の世界。男とセックスレスの女性議員には当て馬を、つけてやってオマンコさせては、いただろう。男欲しさに保守政党に入るなんて昔の常識だろう。」
中年秘書は淫猥な笑みを浮かべて、
「女性議員も議員宿舎で男とヤリタイ放題でしょ。男と遊べるから国会議員になる、なんて例もあるそうですね。」
本部長は深く煙草を吸うと、
「市民党の女性議員は特に、そういう例も多い。そのために選挙戦は必死で戦う。それで今は妻駄伊井代が福岡一区では当選しても旦那との夜の政治がねー、不満だとさ。」
「なーるほど、ですねー。妻駄議員の性欲を満たしてあげないと爆発するかもですよね?本部長。」
市民党福岡県本部長は煙草を右手に挟んで、身を乗り出すと、
「おまえ、どうだ?妻駄とハメまくっては?」
「えっへっへっへ。でも、遠慮しておきます。なんかネット記者が、うろついているみたいですからね、近頃。」
と答えると中年男性秘書は頭をゴリゴリと掻いた。福岡県本部長は再び煙草を深く吸うと遠くを見る目で何かを考えていた。
 
 総合商社・角紫の仕事で岩山岩蔵は背広を着てアンドロイド愛夢のいる豪邸に営業に行く事になった。接客の為の広い応接間から出てきたのは清楚な女性だ。三十路では、あるが仄かな色気も感じられる。礼儀正しく部屋の中に御辞儀をすると、扉を閉める。応接間の隣の部屋が待合室で、今、岩山岩蔵は待合室のソファに座っていた。出て来た清楚な三十路女性は白の上着に白のスカートで、白いハンドバッグを持っていた。座っている岩山を見ると、
「次の方ですね。どうぞ。入れますよ。」
と国会議員の風格で話した。
岩山は会釈して、
「ありがとうございます。もしかして貴女は市民党の方ですか?」
清楚三十路は目をパチリンとして、
「ええ、そうです。国会議員の妻駄伊井代です。よろしく、お願いしますね。」
と深く頭を下げると黒髪を揺らせて部屋を出ていった。僕も市民党に入りました、と言おうとした矢先に妻駄伊井代に通り過ぎられたのだ。(やはり市民党の党員、しかも国会議員か。おれにも見る目が出来て来たな。ん、応接室に入ろう。)扉を開けて中に入るとアンドロイド愛夢、それに愛夢の父親である唐竹割太郎(からたけ・わりたろう)が鼻髭を伸ばして座っていた。彼は岩山を見ると、
「やあ、お待たせ。さっきの女性の話が長くてね。まあ、ソファにかけなさい。」
焦げ茶色のソファに座ると岩山は、
「あの人、国会議員なんですよ。妻駄伊井代議員。」
と話を持ち掛けると唐竹割太郎は豪快に、
「ワハハハ。知っているさ。市民党への献金を依頼しに来たんだ。ま、いくらか献金するさ。政治資金規正法内の献金だから鼻紙程度だけどね。」
と話すと膝に乗って来た白猫を抱えて猫の頭を撫ぜてやる。岩山は身を乗り出して、
「僕も市民党に入党しました。唐竹さん、よろしくお願いします。」
「そうか。それは、いいな。市民党に頼めば官公庁の仕事も楽に手に入る。妻駄伊井代議員にも少し頼んでみた。もちろん献金をスマホ決済した後でね。」
 唐竹割太郎も市民党議員に献金していた。それは驚く事では、ない事実だ。唐竹は白猫の背中を撫ぜて、
「岩山君も市会議員になればワシも君に献金するよ。福岡市役所の奴らを動かすためにもな。政治家というより日本の政治家の旨味は利権と女だ。福岡ソープランド連合会も市民党に政治献金しようと働きかけている。それだけは腐敗と堕落の市民党でも拒否しているという話だ。風俗を見下さなければ自分たちが、いい恰好できないしな。それに市民党ではソープに行かなくても女性議員に手を付ければ、いい。とワシは聞いたよ。妻駄伊井代議員も市民党の福岡県本部長が味見する予定だそうだが、広島でマスコミに知られているから福岡では、というところらしいね。妻駄伊井代議員のセックスレス性活は一年になるらしい。旦那が七十だし、立つものも立たなくても老人として看過されてもいいからな。」
と詳しく話してくれた。
無言だった岩山は、
「愛夢さんはアンドロイドでしたね。アンドロイドでない愛夢さんは大学に行くのですか?」
白猫の目が光った。カメラのレンズのようだ。唐竹割太郎は、
「アンドロイド愛夢の役割は終わった。異母の愛夢は大学に行かせる。アンドロイド愛夢にはウチの仕事を覚えてもらう。最近一年間は逆の態勢だった。という事で、どちらの愛夢も今、ここには居ないよ。角紫の社員として来たのなら何か勧誘でも、してみるといい。」
初めての営業だけに岩山岩蔵は話を切り出すのに苦労した。クラウドファンディング、そう、それを話すのだ。
「実は弊社ではクラウドファンディングを始めました。出資していただける方を募集しております。」
白猫は主人の膝から降りてテーブルの下に行き、岩蔵の脚の近くに来て座る。彼の股間を見上げる白猫。唐竹割太郎は、
「ほお。クラウドファンディングねえ。いい企画だな。で、それは、内容は、どんなものかな?」
「博多湾に大型船を常時停泊させてホテルにするというものがあります。出資者様にはホテルオーナーと、なっていただき安定した宿泊収入を得ていただくというものです。」
唐竹割太郎は両眼を大きくして、
「面白いけどパンデミックで旅行客は制限される時があるよなー。」
「それは、そうですが宿泊だけでなく賃貸としても貸し出せば、いいわけです。」
「なるほど。家賃収入だね。それは面白い。船の上での生活だ、安く貸してあげたいね。」
博多港と呼ぶべき場所は特に決まっていない。人工島のアイランドシティも北側は海に面している。岩山岩蔵は営業車でアイランドシティの新たに出来た船着き場に案内した。
韓国へ行くクルーザー船も、ここから出港する。そこに巨大な船が停泊していた。豪華客船だが役目を終えた船舶のようだ。その船に岩山と唐竹割太郎は乗り込む。船室も多数、あるらしい。廊下を歩きつつ岩山は、
「この船室の何室かを所有出来ます。既に何人かのオーナーさんが現れました。民泊施設として使っていますよ。」
確かに船室の何室かは民泊の表示がドアに張り付けてある。唐竹は船内のあちこちを貪欲に見渡して、
「外国人に貸せば儲かりそうだ。すぐ近くの船着き場には韓国からの旅行者も来るんだろう?」
「ええ、大人数で訪日してきますよ。彼らの悩みは宿泊場所ですね。ホテルにすれば、儲かります。」

 数日内に唐竹割太郎は豪華客船の数室を買い占めた。そのうちの一つにパーティ会場のような大広間もある。さっそくの祝日、そこでパーティが開かれている。
 市民党・衆議院議員・妻駄伊井代議員を囲む夕べ
という垂れ幕が会場に掛かり、立食形式での会場となっている。三十人ほどの入場者がいて、背広を着た男性が手に手にワイングラスを持っている。会場の中央に白服の妻駄伊井代議員が立って、白い手袋をして激励に来て握手する入場者に応えていた。建設会社の社長らしき男性は右手に麦酒の大ジョッキ、左手に焼き玉蜀黍(とうもろこし)を持ち、妻駄の前に立つと左手の焼き玉蜀黍を口に咥えて左手で妻駄伊井代議員と握手した。その手を外すと口に咥えた焼き玉蜀黍を持ち、
「妻駄さんの別荘建築はウチに、お任せください。」
と、だみ声で話しかける。

sf小説・未来の出来事37 試し読み

流太郎はガラスの中の裸身の男性たちを見つめながら、
「機械で管理される方が正確では、ありますね。人間なら間違いもありますし。」
と意見を言うと籾山は両手を自分の腰に当てて、
「そうだろう?時も参加してもいいよ、これに。」
流太郎はハッとして、
「この発電システムにですか?」
「ああ、そうだ。体験してみるのも悪くは、ないね。」

 街には左翼が溢れ出す。福岡市でも遂に市民は左翼志向となり左翼思考となりつつある。左翼が勝利となれば、それは正道となり、もはや左翼とは呼ばれなくなるのだ。
福岡市の博多駅地下街にある日本紅党本部は天神地下街にも支部を置いて通行人の関心を惹いた。天神地下街は博多駅地下街の侘しい人の通りの十倍以上の人の流れがある。コロナ閉店した喫茶店の後に日本紅党の支部が姿を顕わした。
喫茶店の店舗を、そのままにしているために内部はガラス越しに見える日本紅党の天神支部だ。外の通行人からは党首の桜見世子の演説が大型スクリーンに映し出されている。中に入ると桜見世子の映像だけでなく声も聴ける。喫茶店と同じ座席があり、そこに座ると外に見えているのとは別のディスプレイに桜見党首の演説が映し出されている。桜見党首の声も聞こえる。セルフ方式でインスタントコーヒーは無料で飲める。カップは紙コップで飲み終わったらゴミ箱にセルフで捨てる。
初めて入った人たちには女性の紅党員が内部の説明をした。
「ようこそ、紅党天神支部へ。」
と挨拶した若い女性党員が続けて、
「利用料金は無料です。コーヒーはセルフで飲んで下さい。飲み終わったらゴミ箱に捨てて外に出てくださいね。」
と明るい笑顔で入場者に話した。
時を経ることなく、日本紅党の天神支部は人で一杯となった。

高野山での修行から福岡市に戻って来た勢快人。福岡市の天神の繁華街で東京の男の友人とバッタリ、ピッタリと出くわした。その友人は、
「勢君、じゃないか!ひさしぶり過ぎるなあ。」
と話しかけた。快人は彼を見て、
「おう、他能見(たのみ)君。ホストは、どうだい?」
「東京では無理っぽくなってね。福岡に来たんだよ。アルバイト的に中洲のホストクラブに出ているけどさ。今、左翼がモテるんだね、福岡でも。」
快人は初耳という顔で、
「そうか?左翼か。ふーん、それならオレも左翼になろうかな。」
「そうだよ。なればモテるし。道で立ち話も、なんだから喫茶店に行こう。」
「ああ、行こう。」
他能見(たのみ)と快人は天神地下街に降りて喫茶店に入る。若い女性サイボーグが軽々とジャンプしながら注文を聞きに来る店で、有名だ。客も昼過ぎでも満席に近い。
他能見と快人が席に座ると女性サイボーグ・ウェイトレスが注文を飛ぶように移動して聞きに来た。二メートルは跳躍しつつ、移動している。その際に彼女のミニスカートは激しく揺れる。他能見は、
「マンゴー・コーヒー二つ。」
と若い女性サイボーグに注文した。彼女は復唱して、
「マンゴー・コーヒー二つ、で御座いますね。畏まりました。お待ちくださーい。」
それから飛ぶように厨房に戻り、数分後に銀の盆にマンゴー・コーヒー二つを持ってきたが、その際はジャンプしてこなかった。
他能見と快人はマンゴー・コーヒーを味わう。他能見は、
「それでね、左翼になるとモテ度が三倍は違うんだ。」
快人は両眼を大きくすると、
「そうかい?それは凄い。」
「だろ?左翼で理論武装する。日本紅党の党首の桜見世子の電子書籍を読むと、いいよ。」
「分かった。桜見さんの党が急進する左翼だね、って事は知っていたよ。」
他能見は快人を見直すと、
「その頭、カツラなんじゃないか?勢君。」
と指摘すると快人は自分の頭に右手をやって、
「ああ、良く見抜いたね。カツラさ。高野山で修行していたからな、おれ。」
他能見は得意そうに、
「剃髪した頭じゃホストは出来ないからね。勢君。」
「そうだ、そうだよ。おや、スマホに連絡が来た。」
と快人はズボンのポケットからスマホを取り出してメールチェックをすると、
「呼び出しが来たよ。葬式のね。」
それを聞いて他能見は、
「葬式。かあー、さすが坊さん。登録しておいたの?どこかに。」
「そう、福岡市内の葬儀会社に葬式の出来る僧侶として登録しておいたんだ。」
快人は福岡市南区にある葬儀会社に僧侶の登録をしに行った。面接官はAIロボットで、
「読経ヲ、シテクダサイ。」
と機械音で言うので快人は葬式用の読経をした。それを聞き終わった男性の形をしたロボットは、
「合格デス。ワタシノ頭ノナカニハ読経ノ合否ヲ判定デキル基準ガ打ち込まれてイルノデス。」
と話すのだった。
数万円の葬式も、あるにはあるが、それでは物足りない顧客もいて百万円は出すので葬儀をしてほしいという依頼があり、顧客の望みは真言宗による仏葬だったので快人が呼ばれたのだった。
 他能見といた喫茶店を出て快人は葬儀会社に連絡して天神の車が止め易い場所で、葬儀会社の車を待つことになった。ほどなく霊柩車が現れたので快人は助手席に乗る。運転手は初老の男性で快人に、
「えらく又、若い坊さんだね。でも立派に見えますよ。」
とカツラを取った快人に話した。快人は、
「葬式用の服を着ないと、いけないから城南区の・・。」
「いえ、そこまで行かなくてもウチに坊さんが着る服は用意していますよ。」
と運転手は言うので快人は、
「ああ、それなら、そうしましょう。」
と同意する。
南区にある葬儀会社の建物は広い敷地にあり、セレモニーホールで葬儀が行われる。そこに快人を載せた車は入ると、運転手も快人の後から車を降りて、
「セレモニーホールで葬式が夕方に、ありますよ。それまでに服を着替えて待っていてください。」
と話す。
会社の建物の中に入ると快人は女子事務員に案内されて更衣室に連れていかれた。薄墨色の僧衣に着かえた快人は僧侶の広い待合室でノンビリと腰かけたまま、煙草を吸った。
 黒い制服を着た女子事務員がドアを開けて顔を出すと、
「お葬式が始まりますので、セレモニーホールに、どうぞ。」
と声を掛けた。
葬式用の僧衣を着た快人は煙草を灰皿に捻り潰して立ち上がると女子事務員の後を歩いてセレモニーホールに向かう。
 式場には多数の会社員らしき人達が黒い背広を着て待っている。会社の社長が死んだようだ。遺影も髭を生やした老人男性の顔が写っている。七十代か、と思われる個人の顔だ。
会場は不思議に悲しみの感じられない様相だった。年も死に、ふさわしい年齢の社長であったのだろう。喪主は社長夫人らしい女性が黒い喪服の着物を着て快人を待っていた。老齢の死んだ社長にしては若い、若すぎる未亡人だ。二十代前半に見える女性、それに美人なのだ。快人に未亡人は軽く頭を下げると、
「喪主の榊星です。よろしく、お願いします。」
と低い声で挨拶する。快人は数珠を右手に持って、
「こちらこそ、よろしく。」
と挨拶を返した。
 真言密教の葬式を終えると参加者の大半は会場を出ていった。後は火葬場にマイクロバスで移動して家族、親族らで弔う事になり、そこへは僧侶は同行しない。その移動の前に喪主の若き美人未亡人は快人に、
「今晩、自宅の方に、お越しください。祭壇も設置していますので主人を、もう一度、弔ってもらいたいのです。」
と話す。快人は合掌すると、
「それでは連絡をください。ご自宅の方は私は存じませんので、その辺は、よろしく、どうぞ。」
はた、と気づいた顔で未亡人は、
「ええ、運転手を迎えにやりますわ、御坊様。」
と明るい顔を快人に向けた。

 日没の遅い福岡市でも夜の八時には太陽は姿を消す。城南区の住アパートにいる快人のスマートフォンが鳴る。手にすると快人は、
「もしもし、」
すると若い女性の声が、
「あ、今日は御葬式で、お世話になりました榊星です。今から運転手を迎えに、やりますので拙宅に来てください。」
「ええ、分かりました。場所は、わかりますか、私の住所ですが。」
「ええ、葬儀会社に問い合わせていますよ。それでは。」
電話が切れる。
それから一分もしないうちに玄関ドアが叩かれた。快人は立ち上がると「はーい。」と声を出して玄関に行く。玄関の外では「運転手ですー。」という呑気な中年男の声がした。ドアを快人が開けると、帽子をかぶった中年のタクシーの運転手に似た男性が丸ブチの眼鏡顔で、
「こんばんわ。社長に言われて、お迎えに上がりました。勢さんですね。」
「ええ、今、社長さんから、お電話がありましたよ。」
「うちの社長は気が早いんで、私には少し前に車で迎えに行くように言われました。さあ、行きましょう。」
「服を着ます。追善供養のための僧服を。」
「あ。そうですね。お待ちします。」
快人はドアを閉めると部屋に戻り赤色の僧衣を着るとドアを開けて、
「さあ、行きましょうか。運転手さん?」
運転手は眼鏡をズリ上げると、
「おー、坊さんらしくなりましたね。下に車は停めています。」
白のスポーツカーに二人は乗り込んだ。城南区から南区の女社長の邸宅までは、そんなに遠くはなかった。南区でも郊外で、近くには牧場や乗馬クラブがある裕福な地帯に未亡人の、というか美亡人ともいうべき若い女社長の邸宅は周りを圧するように建っていた。運転手は行く途中で、
「うちの社長は秘書だったんですけど、頭のいい女性なので社長室長から常務、専務、副社長になりましてね。副社長の時に先日、なくなった社長の後を継いで社長になったんです。結婚して一週間でしたよ、最初の社長が死んだのは。」
とハンドルを握りつつ後部座席の快音に話した。快音は、ゆったりとして、
「そうなんですね。若い女性に夜、頑張り続ければポックリと死ぬこともありますよ。うちの実家では親父が、よくそういう葬式を見て来たと話していましたから。」
と語った。運転手は、
「あ。そうなんですか。金のある男性は決まって年寄ですよ。でも体は、もう、あんまり元気は、ないし・・・着きましたよ、お坊さん。」
低速で車は走行すると自動で開く門の中に滑り込む様に入る。緑の樹木が建ち並ぶ大邸宅だが日没後なので邸内の明かりでしか様子は、うかがえない。車から降りて運転手に玄関まで案内された快人は玄関ドアが開いて女未亡人社長が玄関に立っているのを見た。女社長は洋服に着替えていた。微笑顔の彼女は、
「ようこそ、さあ、お上がりください、お坊様。」
と話した。
長い廊下を若い女社長の歩くと左右に揺れるミニスカートの豊かな尻を見ながら快人は歩いて行く。季節も六月の半ばで外は既に初夏の陽気だ。左の部屋のドアを開けて若い未亡人は立ち止まり、
「この部屋ですわ、お坊様。」
室内には巨大な仏壇があった。檜の香りのする仏壇だ。高さは二メートルは、ある。日本一巨大な仏壇は高さは6.5メートル、幅は3.8メートル、奥行きが2.5メートル、重さは2トン、という福岡県八女にある。が、これは個人所有のものではない。材料費は3500万円である。それに対して女未亡人が今、快人に見せた仏壇は個人所有のものだ。内部は金色に輝いている。長い髪で顔は半分隠れている未亡人は、
「この仏壇の金色の部分は純金なのです。24Kで金メッキでは、ありません。故人が既に所有していました。死ぬのが分かっていたのかな、と思いますよ、わたし。」
そこで顔に掛かった長い黒髪を右手で払いのけると美しい若い女性の顔が快人に見えた。快人は、
「こんなに素晴らしい仏壇は私も今まで見た事が、ありませんでした。真言宗の宗旨ですね、この仏壇は。」
左から不動明王、真ん中の本尊は大日如来、右は弘法大師・空海の順に掛け軸が掛かっている。その下の段には故人の位牌があった。快人に問われて未亡人は、え?という顔で、
「そうなのですね。わたし仏壇の事は分かりません。ただ故人が葬式は真言宗で挙げてくれ、と言っていたものですから葬儀会社には真言宗の御坊様を、と手配しました。」
快人は長い裾の両手を合わせて、
「ありがとうございます。これも確かな御縁で、ございます。」
と僧侶らしく頭を下げる。若い未亡人は笑顔で、
「勿体のう御座いますわ、お坊様。お顔を上げてくださいな。」
快人は両手を離すと頭を上げた。
それから巨大な仏壇の前に行くと敷いてある金色の座布団の前に正座した快人は仏壇に備え付けの鐘をチーン!と鳴らすと、十三仏真言を唱え始めた。十三仏とは不動明王から始まり虚空蔵菩薩まで十三の存在の事で、十三の真言を唱えて追善供養とするものだ。
それほど長いものでは、ない。それが終わると快人は立ち上がり、
「これは、お布施は要りません。無料です。それでは。」
と帰りかけると未亡人は快人の腕を抑えるような口ぶりで、
「待ってください、お坊様。今のは大変ありがたい御供養でした。ですが・・・。故人の遺言が、ございます。」
快人は片方の眉を上げて、
「ゆいごん、と申しますと?」
「ええ、それは・・・・。」
美しい未亡人は衣服を手早く脱ぎ始めた。驚く快人、でも止めるいわれは、ない。下着姿になった未亡人は服を着ていた時には見えなかった大きい乳房と幅広い下腹部を見せている。上に引き上げられた股間の白布は彼女の窪みを見せていた、つまりスジが浮き出ていて薄い布は美未亡人の股間の黒い茂みまでクッキリと顕わしてしまっていたのだ。快人は息を呑むと、未亡人は近づいてきて快人の両肩に自分の細い腕を回して顔を近づける。甘い香りが快人の鼻腔に侵入した。未亡人と快人の顔は、ほぼ同じ位置にある。二十センチの距離に近づいた二人の顔、快人は、
「あなたの下着姿を私に見せろ、というのが故人の遺言ですか?奥さん。」
美未亡人は甘い息をフーッ、と快人の鼻に吹きかけて、
「その程度では、ありませんわ。わたし、佐紀奈(さきな)と言います。主人は仏壇の前で坊さんとセックスしてくれ、と遺言しましたのです。」
「なんと、そうなんですか!珍しい遺言ですね。でも実行した方が、いいでしょう。」
美未亡人の佐紀奈はベットリと口紅の付いた自分の赤い唇を快人の唇に重ねた。先に彼女の赤い舌が快人の唇の中に入り、二人の舌はもつれあう様に絡み合う。仏壇に立てかけてある遺影の個人の目が光った。それを見た快人は唇を離すと、
「遺影の目が光りましたよ。奥さん。」
抱き合ったまま美未亡人の佐紀奈は、
「ふふ。ランプに、なっているの、遺影の目はね。それが凄い発明らしくて幽体が宿るとランプが点くというのね。ただ故人の幽体か、どうかは分からないのよ。でも多分、主人の幽体だと思う。まだ、この辺をさまよっていると思うわ。遺言通り、セックスしましょ。」と話した。
佐紀奈は快人に掛けた細い両手を離すと白のブラジャーとパンティを艶めかしく脱いだ。黒い股間の剛毛が快人の目に飛び込んでくる。快人も僧衣を脱いだ。なんと、僧衣の下は下着も身に着けていない快人だった。それには佐紀奈も驚いて、
「袈裟の下には身に着けていなかったのね、坊さん。」
快人は坊主頭を右手で触り、
「暑すぎる日は、こうしています。僧衣は帯で強く縛れば落ちることは、ないですからね。」
と話す快人。彼の股間のモノは垂直に隆起している。それを見て佐紀奈は、
「もっと立っても、いいのよ。この角度だと五十代の人ね。」
「奥さんを、もっと抱けば自然と反り返りますよ。」
二人は硬く抱き合い、佐紀奈の白い丸い乳房は快人の平らな胸で潰れそうになる位に形を変えた。佐紀奈の股間の剛毛地帯に快人の隆起した肉棒が当たる。佐紀奈は股間を広げたので快人は彼女を抱き抱えて、ゆっくりと挿入していく。
遺影の故人の瞳がオレンジ色に変化した。幽体の視線が興奮し始めたのを表しているらしい。故人の遺影は未亡人、佐紀奈の白い背中と大きな尻を見ている位置にある。その白い尻の中に快人の巨肉棒が這入り込んでいくのが遺影の写真の位置でもハッキリと見える。佐紀奈の豊満な尻を荒々しく掴む快人の両手。
すんなりと結合した二人だ。
ところが快人は異様な感覚に捕らわれた。自分の体内に霊体が入り込んで来た、という感覚を生まれて初めて感じたのだ。おそらくは美未亡人の故人となった夫の霊では、ないか。快人は自分の意志や気持ちとは別に、柔らかな若い未亡人の体を抱いて腰の振り方まで操られている気がした。
そのために彼女の亡き夫は若い妻に遺言していたのだ。その部屋の隅にはダブルベッドが、ある。それは部屋に入った快人は気づかなかったのだが、未亡人と立ったまま性器を結合させた状態で快人は向きを変え部屋の隅にあるダブルベッドに未亡人・佐紀奈の裸身を運んだ。それも快人が意図したものではなく憑依されて美未亡人の亡き夫が行なっているものらしい。快人としても、どうする事も出来ない。佐紀奈の全裸の上に乗り、自分の意志とは違う腰の振りをしてしまう快人に美未亡人は快人の裸の背中に爪を立てて、
「あっ、あなた!あなたの腰の振り方だわっ、ああっ、あああっ。」
と亡き夫との性行為を思い出した未亡人・佐紀奈は自分でも柔らかく大きな白い尻を快人の腰の動きに合わせて激しく振るのだ。彼女は三十分、故人の夫の霊に憑依された快人の性器に貫かれ続けて黒髪を振り乱し、背中を反らせると、
「アンドロメダ星雲に行くーっ!」
と叫んで、がっくりと裸身を弛緩させた。その時に強く性器を締め付けられた快人も多量の白液を大放出して終了したのだった。
未亡人から離れてダブルベッドの上に横たわる快人、
「奥さん、どうも僕は御主人の霊に乗り移られた気がします。」
佐紀奈は閉じていた眼を開くと乳房を揺らせて快人の方を向き、
「ほんとに、そうだわ。まるで主人と交わっているようだったわ。仏壇の前でセックスしてほしい、という遺言は、そのためだったのね、多分。」
と白い肌をピンク色に、ところどころ染めている佐紀奈は、そう答えた。快人は上半身を起こすと、
「今日は、これで失礼します。よろしいですか?」
「ええ。又、何か必要な時には連絡させてもらうけど、いいかしら?」
「ええ、勿論ですよ。いつでも、連絡下さい。」
下着を着ていなかった快人は袈裟を身に着けて邸宅を出た。
スマホアプリでタクシーを呼べるのは随分昔からの話だ。
 城南区田島の安アパートに戻った快人は今日の貴重な体験を、これからに活かそうと考えた。ただ、すぐに実行できるものではなく、或る技術も必要だ。それは、それで学び実践体得するのみである。
 そしてサイトで公開すれば、よい。快人も無料のサイトではなくドメインを取り、自分のサイトを持っている。ブログ形式なら日本語入力だけで出来ていくので快人はネット上の友人にブログ作成ソフトをインストールしてもらい、密教ブログサイトを作っているのだ。
未亡人の悩み相談を受け付けています
 必ずや解決するでしょう。特に性の悩みを当方は得意なものと、しています。
と快人が投稿すると、五分以内に応募が届いた。
 ”福岡市内の二十代の未亡人です。夫の喫茶店を今は自分が引き継いで経営しています。出張で悩み相談に来てくれるという事なので、ぜひウチに来てもらえませんか?」
快人はメールで、
「電話番号を送ってください。」
とスマホのメールアドレスを喫茶店の未亡人に送った。すぐに未亡人からメールの返信が届き、快人は、そこへスマホをかけた。
「もしもし、悩み相談の快楽和尚です。」
と話すと若い未亡人女性が、
「快楽和尚!お待ちしております。今日は喫茶店は休みの日なんです。住所を言います・・・・。」
「・・・・、ああ、博多港が見える場所ですか。」
「ええ、天神地下街の店から歩いて五百メートル程ですわ。」
「天神地下街は能古島まで続いているんでしょう?」
「ええ。でも店は能古島には、まだ出店していません。博多港の近くの地下街に店は、あります。大陸からの旅行客も多く来ますので店は繁盛していますよ。二十四時間喫茶で夜は女サイボーグに任せていますから。」
との事だった。

SF小説・未来の出来事36 試し読み

それでも答えなければ、と喜須江は思い、
「暇では、ありません。」
と答えてみた。美青年は諦めずに、
「それでは、いつ、暇になりますか?」
と聞いてくる。
喜須江は少し微笑むと、
「さあ、ね。先の予定は分からないものヨ。」
美青年は納得して、
「そうですね。それでも今は貴女は暇そうに見えましたから。」
と、なおも食い下がった。
地下街の明るさで見ても大変な美青年だ。喜須江は、
「あなたは左翼の人ですか?」
と聞くと、美青年は微笑して、
「そうですとも。僕は左翼ですよ。あなたは?」
「分からない。日本紅党に入ろうかな、と思っているの。あなたは紅党に入っていますか?」
「いえ、まだ、これからです。」
「それでは今までの左翼の人ですか?」
「そう、ですね。場所がね、ここでは、ないんだけど。」
喜須江は美青年が福岡市の人間ではないと類推した。自分も東京から福岡に来ている。もしかして、この美青年は東京から?喜須江は上を見上げて、
「ここではないって、東京からですか?」
「いいえ、東京では、ありません。もっと、いいところです。」
喜須江はドヨーンと意識が旋転するが、
「もっといいところって、日本ではないんですね?」
美青年は笑みを浮かべると、
「日本では、ありませんよ。しかし、日本に近いといえば近いです。私に、ついてくれば分かりますよ。楽園です。」
日本に近い場所にある楽園。バリ島、とか、そういう島なのか、と喜須江は思いを馳せた。かといって、この青年に簡単に随行しても、いいものかなと喜須江は考えていた。黙っている喜須江に、
「おや?楽園というのに興味は、ないんですか?貴女の生活は既に楽園生活?」
そうではない、と喜須江は思う。で、
「楽園生活には程遠いです。男性との縁もないみたいですから、わたし。」
その反応に気を好転させたらしい美青年は、
「それは今日で終わりにしましょう。貴女の予定も、ある。名刺を差し上げます、貰ってくださいね。」
と胸のポケットから名刺を出して喜須江に渡した。薄い金属で出来た名刺。この名刺が、のちに喜須江の運命を変転させていくのだが、今の喜須江には軽い金属の名刺にしか思えなかった。
愛野道男(あいの・みちお)
ウェブ・コンサルタント
 その他、IT関連の御相談に乗ります。ホームページ制作からサイバーセキュリティ、クラウドファンディングも、お任せください。
という名刺の内容だった。電話番号と住所も書いてある。が、なんと住所は空に浮かぶ島の愛高島ではないか。喜須江が名刺から顔を上げて見ると美青年は、いつの間にか、いなくなっていた。
 美青年はIT関連の人間だったのだ。自分もネット記者だし、と喜須江は軽い金属の名刺を手にして思う。地下街の遠くを見ても美青年は見えなくなっていた。
喜須江はズボンのポケットに美青年、愛野道男の金属名刺を入れると立ち上がり、地下街を歩いていく。驚異的に長い地下街で、この地下街は福岡市の中心的繁華街の天神地下街に続いている。そのためには長い工事期間が必要だった。
数キロに亘る地下街としては日本一の長さだろう。福岡市営地下鉄の駅と隣接する事で地下鉄の駅を降りると地下の商店街に、すぐ出られるというものだ。喜須江が歩いていても地下鉄の駅に近くなると人通りが多いのに喜須江は気づいた。
「福岡ぶらぶら探訪記」という連載ものを社会部デスクに頼まれている伴野喜須江だ。歩行にしても相当な距離を歩いていると実感する喜須江。博多駅と天神駅を地下で繋ぐという道のりは運動としても、かなりなものがある。
 天神駅の地下街に近づいた時に喜須江は快音を見つけた、と思ったのだ。背広姿ではないので、それだけ目立つ姿の快音だ。その辺は小さな噴水広場があり、そこに快音らしき男が立っている。だが・・。喜須江の視線を受けて、快音は喜須江を見たが何の変化も顔には見せなかった。喜須江は(おかしいわね、勢君。)と思って、彼との距離が三メートルの所で「勢君。」と呼びかけてみた。
快音らしい男は初めて目を瞬かせ、
「はい。僕は勢ですが、貴女は、どなたでしょう?」
と答える。喜須江は、
「わたしよ。忘れたの?伴野です、同級生の。」
「ええ?僕の同級生に伴野なんて人は、いませんでしたね。」
との返答に喜須江は、
「記憶喪失しているのかしら。博多超ビッグホテルの地下に勢君は泊まっていたわよね?」
「は??え?あそこには泊まっていませんよ。僕は天神駅の安いビジネスホテルに泊まっていました。人違いでは、ありませんか?」
世の中には似た人は数人はいると言われている。勢快音に似た人も、いても可笑しくはない。それに、ここは福岡市だ。とうとう快音を見失った喜須江。快音は一体、どこに消えたのか?と錯綜とした思いに捕らわれた喜須江であったが、それにしても快音と、よく似ている男性で年齢も近そうだ。それでも最後の望みを賭けて喜須江は訊いて見る。
「勢快音君、ではないのですね。失礼しました。」
と話して喜須江は立ち去ろうとした。すると、その男は、
「ああ。待ってください。勢快音は僕の兄の名前ですよ。僕は兄の一つ下の弟です。昔から人には、よく似た兄弟、と言われています。貴女は快音の同級生の方ですね。失礼しました。」
と話して白い歯を見せた。
立ち去ろうとした足を止めた喜須江は、
「そうだったの。快音君の弟さん。今、ここで何をしていますか?」
快音の弟は、
「待ち合わせですよ、女の人とね。詳しくは話せませんが、撮影するんですよ。その辺で勘弁して下さい。」
と話す。喜須江は遠慮がちになり、
「それは失礼しました。プライベートな待ち合わせでしたのね。東京から、ここまで、その撮影のために来たの?」
「ええ。スマホ一つでSNSで出会い、彼女も意気投合しましたから撮影させてくれるんですよ、という事ですけど。」
快音と梨ふたつのように似ていて双子みたいな男だ。それでも喜須江は、
「お邪魔だったわね、わたし。」
「いいえ、兄さんの彼女なら問題ないですよ。」
「あら、わたし快音君の彼女じゃないのよ。」
「そう?ですか。まあ、いいや。兄と親しい人なら邪魔とは思いません。兄の世話には随分と、なりましたから。」
「あなたも得度していますか?実家は御寺ですものね。」
快音の弟は自分の右手で自分の頭を撫でると、手を降ろして、
「ああ、剃髪もしました、そう、得度も。でも坊さんの資格を取る修行には行っていないんです。カメラの専門学校に行きました。動画も撮ります。」
と意外な経歴を披歴した快音の弟だ。彼は目を開くと、
「初めまして。快音の弟で快人(かいじん)と言います。」
と名乗る。喜須江は、
「はじめまして御挨拶します、伴野喜須江です。」
快人は、
「伴野さんは何を、なさっていますか?職業は。」
道行く人たちは二人を気にも留めない。喜須江は、
「ネット新聞記者なんです。それで東京から福岡へ。博多駅の地下街から、ここまで歩いてきました。長い地下街ですねー、ここは。」
快人は、うなずくと、
「日本一らしいですよ。地下街としては。プロ野球も福岡市に又、球団が出来ましたね、そして去年は日本一でした。」
「うん。そうね。日本一の多い福岡市だわ。SF福岡に取材に行こうと思っているのだけど。」
「それは、いいですね。SFは僕も読みますよ、電子書籍で。伴野さんも読みますか?SF?」
「時々、読みますわ。普通は恋愛ものの小説を電子書籍で読みます。」
「ははあ。伴野さんは独身ですね。違いますか?」
「ええ、独身よ。まだ二十三歳ですもの。」
「あ、来ました。ぼくの待ち人が。そうだ、取材しませんか?伴野さん。僕が撮影しているのを。」
長身のモデル風美女が勢快人の近くに歩いてきて立ち止まる。その美女は快人に、
「お待たせ。お話し中に割り込んだみたいですね。」
と端正な顔に静かな微笑みを浮かべて話した美女だ。快人は右手を上げると、
「やあ。待ちませんよ。この女性はネット新聞記者の方で、僕の撮影を取材してくれるんだって。」
と喜須江の返答を待たずに取材敢行を決めた口ぶりだ。喜須江は異としないのだろう、無言でいる。モデル風美女は納得した顔で、
「それは、ありがとうございます。ぜひ、取材してください。」
と楽しそうに話す。喜須江は二人に、
「それでは、取材する事にします。どこで撮影を行なうのですか?」
快人が、
「海辺に行きますよ。今日は風も穏やかだし、那珂川を東に渡って海の方に北に行けば博多港です。そこからは韓国の釜山に行く船も出ています。歩いて数キロはあるのでタクシーで行きましょう。」
三人は地上に出てタクシーに乗った。
喜須江を前の席に、快人とモデルは後部座席に乗る。快人は、
「博多港まで。」
と、AIを搭載した若い男の風貌のロボットに言う。ロボットは、
「博多港ですね。毎度、ありがとうございます。」
と答えたが、操作も何もしない。
博多港、という言葉に自動運転車に備えられたナビが反応して自動的に博多港を目指してタクシーは発進したのだ。
タクシー自体に行先を判断して出発できる機能が、あるらしい。喜須江の視界はビルと歩道の人の流れ、から川を渡り左折した車からは海に近づいていくのが塩の匂いで感じられた。
博多港に着いたので三人はタクシーを降りる。料金は快人がスマホ決済していた。人通りの少ない場所に快人は二人を連れていく。軽い潮風がモデルの長い黒髪を揺らせている。快人はモデルに、
「そこで腰に片手を当てて。」
とポーズを取らせてデジタルカメラで撮影した。港には大型貨物船が悠々と停泊している。カモメは、いない博多港だ。カモメの食べ物が、ないのだろう。博多港には鳩やカラスも来ない。それは、わびしい港であることを示している。そういう港には船に乗る人以外、人が集まる事もない。どうして、そうなのか。
博多港には公園がなく、緑の樹木もないのである。今、モデルは海面まで五メートルの場所で快人の指示通り、色々とポーズを取っている。快人はモデルにデジタルカメラを構えたまま、
「次は水着になろう。服は伴野さん、お願いします。」
長髪、長身のモデルは、そこで服と長いスカートを脱いで水着になった。黒の水着はビキニで低い高さの股間の逆三角形のものだ。胸の部分も少ない面積なので彼女の乳房の白い肌が大幅に露出している。それはモデルの尻の部分も同じだ。
人通りのない場所だけに撮影も、やりやすい。快人はビキニになっているモデルに、
「そこのベンチに座って。はい、両脚を大きく広げて。」
と指示する。
モデルは言われた通りにビキニ姿でベンチに腰かけ、大開脚した。快人はデジタルカメラを写真撮影だけでなく、同時に動画として撮影していくというモードに設定している。普通のデジタルカメラでは写真撮影と動画撮影は同時に出来ない。それが同時に出来るという今までにないデジタルカメラを快人は持っている。
伴野喜須江はモデルの衣服を腕に下げて持ちながら、大胆なモデルのポーズに少し驚いた。快人はデジタルカメラに当てた眼を離さずに、
「次はベンチの上で四つん這いになって、お尻をカメラに向けて高く持ち上げよう。」
言われた通りにモデルはビキニ姿でベンチに四つん這いになり、顔を後ろに向けると大きな桃のような尻を高く持ち上げた。
快音はカメラを向けたまま、
「よし、いい構図だ。尻の割れ目が半分、見えるくらいパンツを下げて。」
モデルは左手で股間を覆うものをズリさげて、半尻が見えるようにした。快人は、
「よーし、いいよ。すぐに持ち上げて尻を隠そう。よし、この辺で一旦、停止する。次の場所に行くまで休憩しよう。伴野さん、モデルの服を彼女に返してあげて下さい。」
言われた通りに伴野喜須江はモデルの服を彼女に渡した。手早く服を身に着けるモデルだ。ウーッ、ドクドクドク、港の汽船が音を立てた。モデルの水着姿は乳首が浮き出ているものであった。開脚した時には股間の縦筋もクッキリとしていた。それを伴野喜須江はシッカリと見ていたのである。
 三人で並んでベンチに腰かけて休憩する。快人が真ん中で両隣りに服を着たモデルと伴野喜須江だ。快人の右隣が喜須江で、喜須江は海を見ていた目を快人に向けると、
「勢さんは政党は何処を支持するの?」
と気楽な感じで質問する。快人は、なごやかな様子で、
「日本紅党ですよ。この前、日本紅党のオンライン演説会をネットで見たけど、党首の桜見さんが公約を色々としていました。それで今度の選挙は日本紅党に投票しようか、と思っているんですよ。」
話した。
喜須江はモデルに、
「モデルさんは、どうですか?政党の支持する所なんて、ありますか。」
と尋ねると、服を着ても大きな胸を隠せないモデルは、
「わたしも日本紅党に投票しますよ。わたしもオンライン演説会をネットで見ました。大胆なモデル活動も認めてくれる日本紅党なんだな、って思ったわ。」
潮風は優しく吹いている。喜須江は日本紅党の躍進を思った。快人に向けて喜須江は、
「勢さんは実家が、御寺ですよね。そちらの方は、やらないのですか。」
快人は自分の長めの髪を潮風に揺らせて、
「うん、兄さんが跡を継ぐと思いますよ。僕は自由に、させてもらっています。写真と動画の専門学校を出て、アルバイトで貯めた資金でインドに行きました。そこでジャイナ教と出会い、修行僧になったんです。ジャイナ教は仏教とは随分違うと思いましたよ。
 菜食なのは、いいんですがね。服を全く着ないで人の前に姿を見せるんです。股間にも何も当てないんですよ。」
と話すので、喜須江もモデルも(きゃっ)という顔をした。喜須江は、
「それではヌードのまま、でいる、という事ですね?快人さん。」
快人は愉快そうに、
「そうです。それは露出狂ではなくて、何も持たないという事を示す為なんです。財産とかは勿論、服も持っていない事を体で示すんですよ。それで裸のまま、托鉢に行くんです。底の深い皿を持って富裕な食べ物をくれる屋敷に行くんですが、インド南部なので気候は暑いし裸でいる事には心地よさがあります。股間も何もしませんし。チンコと金玉を揺らせて歩く事になります。」
そこでモデルと喜須江は顔を赤くした。
快人の裸体で歩行する姿を二人は想像してしまったのだ。実際に南インドで快人は裸体でいる修行をしていたのだから。それにしても一般的にパンツとズボンで男性器は固定されているから、歩いたところで股間の揺れは感じないものだが、それに戸外にいる場合でもプールや海岸では海水パンツを履いているために性器の揺れは感じないものだ。裸体の快人は初めて戸外で自分の性器の揺れを感じたのだろう。快人は港の風を吸い込むと、
「いつもは、その屋敷の勝手口みたいなところに行って、カレーやフルーツを貰っていました。老女の召使みたいな人に、たっぷりと皿に食べ物を入れてもらいましたよ。老女は僕の股間は別に気にせずに親切に食べ物の布施をしてくれました。
それが或る日、そこの勝手口に行くと出てきたのは若い女性で、その屋敷の娘のようでした。その日は、とても暑い日で娘らしい女性もビキニで出て来たんです。全裸の僕を見ても、その娘は驚かずに準備してきた大量の食品を僕の皿に入れてくれました。大きな胸の娘で尻も大きいらしい。水着の胸の部分は乳首が突き出そうな様子でした。僕は、その娘が近くにいるのを見て半勃起してしまったんです。
それでも富裕な屋敷の娘は僕の股間を気にしないでいてくれましたけどね。」
喜須江とモデルの女性は沈黙を続ける。快人は宙を見つめて回想し、
「やはり修行が足りないんだな、と思いましたよ。いずれは人が通る道沿いで全裸で対応しなければ、ならなくなるんです。道行く信者に全裸で、お祓いもしないといけなくなる。そこで僕はジャイナ教をやめて、日本に戻りました。」
と述懐する快人。
 中年のインド人が三人の前に現れた。白い衣を、身につけただけの、その男性は快人に、
「ここにいるのは分かっていた。快人君、久しぶりだ。」
快人はニッコリして、
「グル。よく私の居場所が分かりましたね。」
快人のジャイナ教の師らしい。グルは、
「それは瞑想して君を突き止めたよ。私は何も持っていない。」
と語ると白い衣を右手で取る。
そのグルの全裸の姿が現れた。男性器も丸だしだ。喜須江と女性モデルは両手で目を隠す。
五秒ほど全裸を示すとグルは白い衣を再び身に纏い、
「それでは快人君。しばらく私は日本にいる。ただ、日本でジャイナ教を広めるつもりはない。ジャイナ教を修行したければ又、インドに来るのだ。それでは快人、さらばだ、しばし。」
と話すと速足で港のフェリーの発着口がある建物へ歩いて行った。喜須江は両手を目から離すと、
「すごい先生ですね。いきなり裸を見せるんですもの。結構、大きな竿でしたわ。目を隠す前に、よく見ましたもの、わたし。」
と話した。
快人は心静かに、
「あれも修行なんですよ。若い女性に自分の裸を見せて、何も持たない事を示すと共に、勃起もしない事を見せるんです。師の竿は微動だにしていませんでした。」
と快人は解説する。女性モデルも両手を目から離すと、
「わたしも少し、あの先生の竿と玉を見ましたわ。あんなに大きいのに、女性に使わないなんてと思うわよ。」
と異見を述べるが、快人は、
「性交をしないのが修行僧の決まりです。先生は修行僧になる前に大勢のインドの女を抱いたらしいですよ。二千人位のインド女性と朝晩、やっていたそうです。」
女性モデルは大いに納得して、
「それでは。もう飽きてしまったのかな、女には。」
快人は、
「そうだね。休憩は、もういいだろう。海に潜ろうか、それでは。」
と云うと立ち上がった。
 快人に附いていった二人は近くにスキューバダイビングが出来る店があるのを目にする。快人は受付の前で二人に、
「費用は全部、僕が出す。伴野さんも、どうですか?」
と云うと、次に伴野喜須江の顔を見た。喜須江は、
「ええ、やりますよ。スキューバダイビングって、やってみたかったんです。」
 三人は更衣室で着替えて、服を別の場所のロッカーに入れた。酸素ボンベも軽量のもので作られているために背負いやすい。店の入り口とは別の所に海に面した飛び込める場所から快人を先頭に三人は博多湾に飛び込んだ。
 博多湾の浅い水中だが三人の足が海底に届いて立てる浅さではない。快人を先頭に海中を泳いでいく。しばらく泳ぐと先頭の快人は停止すると女性モデルも泳ぎ止まる。快人は海中でデジタルカメラを手にして構えたではないか!
モデルは魚のひれのような足に付けた靴を動かしつつ、ビキニを外し双方の白い乳房を海中で披露した。
快人はデジタルカメラで撮影を開始している。次にモデルは股間の薄くて短い覆いを下にずらす、彼女の黒い恥毛が海中に揺れ動く。海中ヌード撮影を快人は実行した。
快人はデジタルカメラを海中に手放すと自分のスキューバダイビング用の水着を前のジッパーを降ろして外した。酸素ボンベは背中に背負ったまま快人は海中で前面は全裸となって立っている姿勢になる。それからデジタルカメラを手にすると白い巨乳と黒の股間を露わにしている美人モデルを丹念に撮影する。ボクボクボクと口の辺りから泡を出しつつ快人は平泳ぎの姿勢で裸身に近い美女を撮影していくのだ。伴野喜須江は酸素ボンベの存在を忘れてしまうほど海中にいるのを実感せず、二人の裸体を熱心に見つめ続ける。美女モデルは水中用のゴーグルを目に当てているし、快人や喜須江も、それは同じだ。被写体としての美人モデルも次第に大胆なポーズを繰り広げていくようだ。
海中というものは無重力状態に似ているため、思いのままに身体を動かせるのだ。それでモデルは仰向けになった状態になり、海の中で両脚を大きく広げた。その際に、股間のビキニを両膝までズリさげて、M字開脚と呼ばれる姿勢を取る。それで海の中だけに美女の股間の中心にある開いた貝のような場所は神秘的な態様を示している。一般的に公開するのにはボカシのような修正が必要であるが、喜須江は紅党党首の桜見総統が、ー公約の一つとして、女性器を隠す必要のない法律を作ろうと思っているの・と話していたのを思い出した。無修正の解禁を桜見総統は考えていたのだ!勢快人はマスターテープを持ち続けるだろう。そうすれば、いつの日か桜見総統が政権を取れば女性器の無修正が解禁される時が来る。その時には勢快人は堂々と今、撮影している美人モデルの海中の無修正ヌードを公表できる。

SF小説・未来の出来事35 試し読み

快音は探偵に同意の顔で
「行きますよ。何処へでも。」
と答えた。探偵の少し後ろから快音青年は追うように歩いていく。新宿駅から少し歩いた場所は酒場の多い通りになり、探偵と快音はアルコールの匂いを鼻に感じつつ停止することなく歩き続けた。日没が近い空の模様は闇の到来を感じさせる。
 スナックやバーと言った雰囲気の店が並ぶ通りの一軒の店の前にフロックコート姿の探偵は立ち止まると快音に顔を向けて、
「この店の中に貴方が探している女性が居ます。でも一見の男性はダメなので、ここで待っていて下さい。」
と言い残して、その店の中に入って行った。快音は眼で店の名を確認すると、百合の奇跡という店名だ。もしかして?もしかするのだろう。フロックコートの探偵は店内から一人の女性と共に現れたのだ。彼女は伴野喜須江の面影を残していた。伴野喜須江は派手な化粧をして、いかにもバーの店員らしい。伴野は快音を見ると驚かずに、
「勢君、お久しぶり。あなたホストの仕事を、しているんでしょう?」
と聞いてくる。フロックコートの探偵は右手を軽く上げると、
「では、私はこれで失礼します。」
と言い置いて、その場を立ち去った。快音は伴野喜須江に、
「ああ、そうだよ。ホスト稼業をしているよ。君はレズバーで働いているんじゃないのか?」
「ええ、働いているけどレズという訳でもないの。今、仕事中だから、これで。」
とレズバーの店内に戻ろうとする喜須江に快音は、
「せっかく会えたのに、それはないだろう。君のスマホの番号を教えて欲しい。」
と呼びかけると喜須江は、
「それより勢君の番号を教えてくれたら、こちらからスマホするわ。」
と意外と上機嫌な伴野喜須江だ。快音はズボンのポケットから財布を取り出すと、財布の中から名刺を取り出して喜須江に手渡した。
喜須江は感心して手にした名刺を見ると、
「名刺まで持っているのねー。うん、後から連絡するわ。」
と放言してレズバーに戻った。
男子禁制のレズバーらしい。探偵はコネを持っているのだろう。関係者以外の男は入れないレズバーだ。まるで尼寺では、ないか。
快音は入れない店だが店内には、どのような客が来ているか。小人数制らしく客単価を上げなければレズバーとしても経営は難しい店だという。
 その日は福岡市に帰る事を中止して快音は実家に帰った。都内のホテルに泊まる必要は、ない。住職の父親は葬式に出ていて不在だった。広めの自室の中で椅子に座り、快音は果たして伴野喜須江は連絡をくれるのだろうかと思いを馳せてみる。
 深夜0時に快音のスマホが鳴った。まだ寝ずに起きていた快音はスマホを取ると、
「もしもし。」
「伴野よ。まだ、起きていたのね、勢君。」
「ホスト稼業で見に着いた習慣さ。今、どうしている?」
通知設定で電話している伴野喜須江の電話番号は分かったのだ。
「今、終電でマンションの自分の部屋に戻るところよ。」
「ああ。仕事が終わったんだね、もう。」
「明日、休みになったの。何か勢さんとの縁を感じてね。彼氏もいない五年間だった。それで、ではないんだけどレズバーで働く事になって、実は、わたし・・・。」
そこで言葉をとぎらせる伴野喜須江に快音は、
「実は、どうしたんだあ?」
と声を大きく放つ。
「明日、話すわ。水天地公園にしましょう。朝、十時にベンチで待っているわ。丁度、私たちの実家から半分ずつの距離にある、あの公園で。」
水天地公園とは高い杉が林立した丘の麓にある大きな池の周囲の土地だが市の中心部からは遠くて人は滅多に来ない場所だ。明日は平日なので猶更、誰も来ない場所だ。快音は、
「ああ、あの公園の近くで分かれたんだったね。高校卒業前に。」
又、捨てられるのか、との絶腸の思いが快音の脳裏に光を伴って、よぎる。
「そうそう、それでは明日。」
と喜須江の声が告げるとスマホは通話切れとなる。

 翌日の目覚めは早く、快音は本堂で父と共に朝のお勤めをすると食事をして外出する。破天荒な息子の行動にも口を挟まない密教僧の父だ。これから息子の快音が初恋の女性と会いに行く事も知らぬ父である。
 父に行く先を断らずに実家を飛び出した快音の足は水天地公園へと向かった。約束の十時前に公園に入るとベンチに座っていた伴野喜須江は、うつむいていた顔を上げて、
「おはよう、勢君。早く来たね。」
と声を快音の耳に届けた。快音は彼女の前で立ち止まると、
「体の方が勝手に動いて、ここに来たんだ。自分でも、よく分からないよ。」
と話すと喜須江はベンチから立ち上がり、空を見上げて、
「あ、来たわよ。あれ。」
と空中を右手の人差し指で指し示したのだ。
薄い白の円形のUFOが出現している。青の光がUFOから発射されて、二人は青色の光と共にUFOに吸い上げられて行った。
 UFO内に取り込まれた二人は私服を着た二人の背の低い男性に対面する。その異星人らしい一人の男性は二人に、
「ようこそ、船内へ。我々はプロキシマbから来た者です。地球人は我々を簡単には信じません。そこでネット新聞記者の伴野喜須江さんに連絡を取り、今日、下にある公園の上空に来たんですよ。」
と説明した。
ネット新聞記者の伴野喜須江?レズバーで働いているのでは?と快音は思う。喜須江は戸惑っている快音を見ると、
「レズバーは潜入取材のために入店して働いているのよ。本職はネット新聞の記者です。高校を卒業して会社で働きながら、ネット通信大学を受講して卒業した後でネット新聞に入ったの。」
と詳しく伴野喜須江は話してくれた。
それは納得しても今は異空間ともいえる空飛ぶ円盤の内部にいるし、小柄な二人は明らかに地球の人間ではない。快音は一応、
「分かった。だけど、この宇宙から来た方々とは伴野さん、あなたは、どういう関係があるんだ?」
それには小柄な宇宙人の一人が快音に歩み出て、
「伴野さんが我々の地球への活動を手伝ってくれるのには最適の女性だと判断したんです、日本ではね。そのために我々は日本の上空から良い波動を出している人々を、この円盤内の機器から検出しました。無線電波を探り出すのと同じなんですが、地球の科学では数千年先に発見できるかどうか、でしょう。
とにかく、それで伴野喜須江さんを見つけ出したので、遅からず彼女に交信をしたんです。最初は夢の中に交信しました・・・」
・・・・・・・************************************
レズバーでの勤務から近くのマンションの部屋に戻った喜須江はシャワーを浴びて寝るだけの生活を続けている。喜須江の体はシャワーを浴びている姿からも豊満である事が分かるのだが、着やせする体型なのかレズバーでも喜須江は攻められたい願望を持つ女子から話しかけられる事も多い。
喜須江はネット新聞記者としての仕事のために潜入取材でレズバーで働いているので本物のレズではないから彼女の体も豊かな体でも不思議はない。
 誰もいない部屋でもあるし喜須江は全裸でシャワーを浴びた浴室から出てくると洗面所に吊るしてあるバスタオルで白い体を拭く。その際に彼女の胸や尻は悩ましく振動する。彼女の体は胸部と臀部以外は寧ろ痩身とも言えるほど細い体型だ。彼女の陰部の上は黒い逆三角形の密毛地帯で、それは彼女が気に入った男を即勃起させる形状であるのは間違いなく言える事だ。
快音は十八歳の喜須江の姿しか知らないし、彼女の全裸は見た事もない。それで、その魅力は未だに知らない快音なのだ。バスタオルで全身を拭くといっても喜須江は自分の手を使って拭いているのではなく、全自動バスタオルで自分のシャワーで濡れた裸体を拭かせている。この全自動バスタオルはマイクロコンピューターを内蔵している。それで、まず始めは全自動バスタオルに喜須江の体を学習させる必要がある。
 そのため喜須江は全自動バスタオルの隅にある作動スイッチを押して、手動で全裸の自分の体を従来のように拭いていく。二、三分もすると彼女は魅惑的な白い裸身を拭き終わるのだ。それは女性に限らず男性でもバスタオルで濡れた体を拭く行為に変わりはないのだが、この一回の動作で全自動バスタオルは喜須江の体を拭く距離と時間を学習してしまう。
次回からは喜須江は全自動バスタオルの作動スイッチを押すだけで、自分の手を使うことなく全自動バスタオルが自発的に彼女の体を全身隈なく拭いていく。
喜須江は最初に全自動バスタオルを自分の左乳房に掛ける。すると、そこから初めて全自動バスタオルは彼女の裸身を拭きつつ移動していく。喜須江の左乳房が終わると右の豊満な乳房をユサユサと拭き、それが終わると下に降りて彼女の臍や下腹部を拭き、それから黒の逆三角形地帯を拭くと、喜須江の股間も丁寧に拭いていく。彼女の女性器も丹念に拭く。それは全自動バスタオルが喜須江のバスタオルで全身を拭く動作を学習した通りの動きなのだ。
つまり喜須江はバスタオルで最初に自分の左乳房、そして次に右の乳房、みぞおちから臍のあたり、下腹部から股間、女性器の順に拭いてくのが日常の無意識的な動作だった。
それから全自動バスタオルは彼女の大きな尻、それからナダラカナ背中、細い首回り、左手、右手、それから急降下して彼女の左足、そして右足の表側、それから彼女の右足の裏側と左足の裏側を拭くと白い柔らかな喜須江の皮膚を上昇して最初の左の乳房に戻ると全自動バスタオルは停止する。
 喜須江は左乳房に戻った全自動バスタオルを右手で取るとハンガーに掛けて(全く便利だわ、この全自動バスタオルは。サイバーモーメントの製品って信じられないほど素晴らしい。他にも買いたいものがあるけど結構な価格だわ。でも貯金して買おうっと、ね。)
それから全裸のまま彼女はベッドへ行き、時には布団もかぶらず全裸のまま仰向けになって寝る。両脚を大きく開いて寝る事もある喜須江だ。
その日も喜須江は、すぐに入眠した。夢の中で地平線が見えそうな草原に彼女は立っている事に気づいた。しかも全裸で大草原にいる喜須江だ。初夏の季節らしく全裸でいる事は彼女には心地よい気温だった。彼女の肩の高さまで伸びている草に囲まれているため、その外からは彼女の全裸は見えないはずだ。
草の生えていない空間は広い公園位の面積があるが、そこには誰も見えないので取り敢えず喜須江はホットした。
 それも束の間、上の空に気配を感じた喜須江は上空を見上げた。そこには白い円形のUFOが空中に難なく制止していた。そのUFOは目に見えない速さで急降下して喜須江の前、五メートルの距離に着陸した。そのUFOの前面が開くと中から一人の小柄な男性が出て来た。肌は黄色で日本人の肌色の、その男は私服を着ている。黒い目なので宇宙人には見えない男は喜須江に歩み寄ると、喜須江は自分の全裸に気づき、右手で陰部を左手で乳房を隠した。
男は平静な微笑みを浮かべると、右手に持ったものを喜須江に差し出して日本語で、
「心配しないでください。この布を貴女の体に当ててみて貰えますか。」
と薦めるのだ。喜須江は左手で、その布を宇宙人らしき男から受け取った。ポロリンと彼女の乳房は魅惑的に揺れて男に見られたが、宇宙人は冷静に動じない。
喜須江は貰った布を乳房に当てて男に見えないようにした。すると!その布は伸びていき、彼女の乳房を両方とも覆うと、更に下へ行き彼女の下腹部から太ももの上まで伸びてミニスカートの位置で停止した。そして彼女の後ろの方も、その布は伸びて薄茶色の布は喜須江のツナギの衣服のようになったのだ!
 宇宙人のような男は柔らかな印象で、
「さあ!UFOの中へ行きましょう。お話しする事が、あります。」
と誘いかけた。
喜須江は言われた通りに着陸した円盤の中に入ると、そこで聞いた話は、
「これは貴女の夢の中なんです。明日、貴女が働いているレズバーの前にいますよ。貴女の仕事が終わった頃にね。」
そこで喜須江は目が覚めた。
今の夢を鮮明に覚えていた喜須江は夕方になるとレズバーへ出向き、仕事が終わった夜の十二時にレズバーの外に出ると夢の中で見たUFOの中で話していた一人の小柄な男性が店の前に立っているのに気付いた。小柄な男は明瞭な日本語で、
「伴野さん、こんばんわ。御機嫌、いかがですか?」
喜須江はビックリして立ち止まると、
「あなたは、もしかして・・・?」
「ええ、貴女が夢の中で見たUFOの男です。二十四時間喫茶が、そこにありますね?」
とレズバーの斜め前を指さす小柄な宇宙人。喜須江は、うなずくと、
「ええ、ありますわ。」
宇宙人は確信的に、
「話は、あの中でします。もちろん、会計は私が払いますからね。」
と話し、二十四時間喫茶店に喜須江を連れて行った。そこで男は様々な事情を話し、伴野喜須江は協力する事を確約した。//////////****************************************
 円盤内の小柄な男は、
「そういう訳で伴野さんは我々に様々な情報を提供してくれる事になりました。」
と快音に話すと、続けて、
「勢さん、貴方にも情報の提供を願いたいのです。」
と懇請するので、快音は、
「そうですか、いや、ありますよ。つい最近、経験した事だけども・・・。」
快音は総務省の審議官のキャラリンの話をした。それにはネット新聞記者の伴野喜須江も双眼を光らせたのだ。喜須江は、
「それは新しい接待の、やり方だわ。極東映像からは誰も宴会に出ずにホストに接待させたのだからね。」
と一刀に断じた。
小柄な宇宙人は興味深そうに、
「なるほど。日本の役人は接待で、どうにでもなるようですね。ハハハ、これは面白い。うん、我々も日本の官僚と言う連中を動かしてみたくなりましたよ。極東映像より以上の接待が出来ると思うけど、考えてみましょう。」
と話を開陳した。
その後は美女の宇宙人が出て宇宙ドリンクとでも称すべき飲み物を三人に手渡した。円形のソファを指さして小柄な宇宙人は、
「座って飲みましょう。この飲み物は容器も食べられますよ。」
と話すとソファに座り、一気飲みする。
そして容器も軽々と食べてしまった黒髪、黒い眼の宇宙人だ。
伴野喜須江と勢快音も同じように飲んだ後、容器も食べてみると軽く噛めば崩壊する菓子で出来ているようだ。
 小柄な宇宙人は容器を食べ終わると、
「プロキシマbの科学を使えば日本にとって喜ばしい現象を起こせますよ。ただ今の政府に喜ばしい事を起こしてもね・・・。」
と話した。
伴野喜須江は期待に満ちた目で、
「それでは政権が変わったら、実行してくれるのですね。エリマリンさん。」
と宇宙人に呼びかけた。彼の名はエリマリンだったのだ。エリマリンも希望に満ちた目で、
「ほう、そうですか。変わる前でも、やりましょう。その政党を我々が支持できると評価したならね。」
伴野喜須江は胸を張り、
「連絡してみます。心当たりがありますから。」
と即答した。
エリマリンは期待している顔で、
「それでは地上に戻って活動してください、伴野さん。」
と話した。
円盤は水天地公園に着陸して快音と伴野喜須江は円盤から降りた。円盤は急浮上して二人の見上げた空には晴天以外の何物も見えなかった。喜須江は快音に、
「わたし、福岡に行くわ。九州の福岡に。」
と告げた。快音は、
「そうなのかい。いや実は僕も福岡に戻らないとね。出張で東京に来ていたんだ。」
喜須江は眼を円形にすると、
「そうなの。今は福岡市で働いてるの、勢君。」
「福岡で働いていますよ、だから戻るんだ。」
「それでは一緒に行かない?リニアで、すぐだわ。」
「行こう。しかし、何故、福岡へ?」
「それは、そのうちに分かるわ。ともかく水天地公園を出たらタクシーで東京駅へ。」
と喜須江に言われて二人は公園を出ると車道には空飛ぶタクシーが地上を走っていたので喜須江が右手を上げて呼び止めた。
 二人は空飛ぶタクシーの後部座席に乗る。ほどなく回転翼を車の真上に出したタクシーはヘリコプターに変わり空へ上昇した。
 東京駅前に空飛ぶタクシーが停車できる空間がある。ビルの屋上に作られた駐車場に快音と喜須江の乗った空飛ぶタクシーは着陸した。そこからエレベーターで地下に降りて地下道から東京駅に着くとリニアモーターカーの乗り場へ切符を買って二人は急いだ。
 博多への時間は長く暗い地下を走るのだ。新幹線より早いとはいえ退屈な旅。だが一人ではなく二人なので話は幾らでも出来る。快音が窓際で喜須江は通路側に座る。リニアは動き始めた。快音は前を向いたまま、
「心当たりのある政治家って誰なんだい。」
と喜須江に聞いてみる。
「それは福岡に着いてからの楽しみにしていてよ。」
福岡市に、そんな期待の政治家がいるのだろうか。外の景色は漆黒で、それは不安や期待のない世界を暗示しているようでもあった。初恋の女性とリニアで同席している快音、それは予期せぬ出来事であったが、福岡で王家富富(おうけ・ふふ)という若き女社長との出会いから喜須江との再会に繋がったのであった。人生は何が契機となるかは分からない。もう諦めていた伴野喜須江が今、自分の隣に座っている。化粧品など身に着けていない喜須江は若い女性の持つ芳香やフェロモンを発散している。快音には、それが感じられて心地よく何かを話しかける気も出てこない。福岡の政治家よりも隣にいる喜須江の方が快音にとっては大事だ。ネット新聞・・・そうだ!喜須江はネット新聞記者なのだ。それを話の芽にして・・・と快音は口を開くと、
「伴野さん、ネット新聞って収入源は広告だろう?」
とチラと横目で喜須江を見て話しを向けると、喜須江は、
「それが主かも知れないけど他にも、あるらしいわね。書いて欲しい記事を書くというサービスも、あるのが昔から続いている新聞社とは違う所かな。他にも、あるらしいけど入社して数年では私には教えてもらえないし。」
と答えたのだ。快音は、
「そうか、書いて欲しい記事とは依頼される事だなあ。」
と持ちかけると喜須江は、
「そうみたいね。詳しくは分からない。」
と答え、そこで会話は再び途切れる。快音は、
「福岡で働くのはネット新聞の為なのか?」
喜須江は軽く、うなずくと、
「福岡のレズバー取材も、しているわ。その他の取材もあるから・・今回は、そちらの方が重要ね。」
「その他の取材・・・何なんだ、それは?」
「ひまなら勢君、わたしに同行してみる?」
「ああ、そうしたいね。暇を取れそうだな。」
伴野喜須江は今は社会人なのだ。
快音は稀に実家の寺院の法事を手伝う事を除けば、ホスト、性感マッサージ、などを働いてきた。それも社会に必要な仕事なのだが世間的には冷ややかな目で見られる職業ではあるのだ。
喜須江は当然の事ながら、それに話を向ける。
「勢君、勢君の仕事を知りたいな。何をしているの?」
「デリバリーホストを今は、しているよ。」
「デリバリーホストって?実家の御寺では何も言われない?」
「ああ。密教は性欲を肯定するしオヤジも『どんな職業でも、やり方では菩薩の修行になる』と言うので風俗業で働くのも認めてくれる。それが、この前に福岡の機械製造メーカーで社員的に働く事になったんだ。」
「おめでとう!勢君。立派な社会人ね。」
「風俗で働いていても立派な社会人だろう?」
「そうね、わたしも取材とは言えレズバーで働いているし。」
二人は座席の手もたれに載せている手を近づけて触れあった。初めて触る喜須江の左手は滑らかでスベサラとした感じがある。
大胆にも快音は、しっかりと喜須江の左手を自分の右手で握りしめると喜須江は頬を赤くした。
 前の席の座席の背面はスマホによるクレジット決済でスクリーンが現れる。快音は喜須江の左手を握ったまま、
「前の座席で映像を見よう。君の前の席の背面をスクリーンに出来る。」
と話すと喜須江の手を放して快音はスマホを取り出して、リニアのサイトにアクセスし、喜須江の前の座席の背後にスクリーンを出して映像を見る課金をクレジット決済した。
これで映像が見れる。快音は喜須江に、
「ヘッドフォンも出て来ているから、それを耳に付けた方がいい。」
と進言した。確かに黒色のヘッドフォンを取り出せる。喜須江は、それを手に取ると耳に当てた。スクリーンの下にタッチパネルのようなものがあり、それを喜須江が指で操作すると映像が流れ始めた。

SF小説・未来の出来事34 試し読み

 自分の社員寮のマンションの部屋に帰った快音は、一階のコンビニで買った弁当を食べると早めに寝ようと思ったが、明日の事を考えると眠れなくなった。ノートパソコンに彼の視線は漂着した。机の椅子に座り、ノートパソコンを起動させるとネットサーフィンを始める。
とはいっても自分に関係したサイトしか見ない快音だ。実家の寺のサイトには快音の人生相談のコンテンツもある。毎日、返信すると約束していない無料のものだけにパソコンも持たずに全裸で福岡市に移動させられた快音としては小安堵感をもって今、相談内容を閲覧していられる。それらの悩みに、いくらか返信すると自分が関りを持つホストゴーのサイトを見た。なんと日本紅党のバナー広告が出ているではないか。格差社会を無くします 日本紅党 桜見世子
 不思議な政治広告だ。時社長は日本紅党から広告費を受け取っているのだろう。それで、ひとまずは安泰なのか。明日、ホストの仕事を頼まれた人物も巨額な報酬をくれるというからホストゴーは広く顧客を求めるよりも少人数でも出費を多くしてくれる人に標的を定めたという事なのだろうと快音は思う。
 紅党の桜見世子という人も大胆な事をする・・・と思いつつ、快音は寝支度を整え、ベッドに転がり込んだ。
 翌日は七時に起床してコンビニで買ったカップラーメンに水を入れると電子レンジに押し込み、三分に設定して、チンとなって出来上がったカップラーメンをベッドの横のテーブルで食べた。
お湯の要らないカップラーメンは便利で、いい。
 社員マンションを出て博多駅まで歩いていく途中に(あ、サイバーモーメントに今日は欠勤する事を伝えていなかった)と気づいたので丁度、見えてきた公園に入ると総務課に
本日は欠勤します
とメールを送った。博多駅から電車で南福岡駅へ行くと、そこから歩いて三分のホストゴーの事務所へ入った快音は、すでに社長の時と専務の本池釣次郎が出社しているのを知った。快音は、
「おはようございます。」
と挨拶をすると流太郎が、
「おはようさん。あと二十分で指名された場所に行ってもらう。朝からではあるけど、酒は向こうで用意するという話だ。二十代の女性で社長らしい話しぶりだよ。前金で君の口座には振り込まれている。サービスに勤めれば、それ以上の報酬をもらえるか、どうかは分からないけど頑張ろう、快音君。」
と話を開陳した。
続けて流太郎は快音に、
「そこのソファに座っていい。」
と話すと、緑の長椅子を指さす。

 運転手は本池専務で車での移動は三分ほど、快音は70階建ての
高層マンションの入り口の前で降ろされた。釣次郎は運転席から、
「ここの最上階に住んでいる女性だよ。玄関も三つあるらしいけど、どの玄関の呼び出しを押しても、いいらしい。では、がんばって。快音君、夕方には迎えに来るから。」
と励ましと応援の送り出しだった。
 見上げても最上階は目が届かない位置に快音は立った。なんと、その建物は十階までが複合商業施設で色々なテナントが入居している。デパートに似ているが、少し違うビルだ。
 社員寮のビルの二階も、まだ全部見ていない快音。ここは十階までがデパートのようなものだ。午前九時なので、まだ開店していない。エレベーターは何基もある。住居用の11から70のエレベーターも五基は見られた。そのうちの一つの住居用のエレベーターで快音は最上階へ向かった。
1から11まではテナント抜きで上昇するため、時間がかかるが、それからは住居だけの階になる。朝の九時なので出勤や通学の為のエレベーター利用は、ないので各階止まらずに70階まで連続上昇だ。
 最上階で開いた扉から快音は70階に勇み足で出る。そこはホテルのような壁と廊下だった。エレベーターの正面にはドアがある部屋は皆無だった。左に曲がって廊下を歩くと玄関ドアが快音の目に着いた。
 快音がインターフォンのボタンを押そうとすると、男の声で、
「はーい、お待ちください。」
と告げられ、ドアが開いた。玄関の中で待っていたのは黒い背広を着た日焼け顔の大男。とにかく快音は、
「ホストゴーから参りました。快乱と言います。」
と挨拶すると大男は、
「はい、聞いていますよ。社長が待っています。靴は脱いで上がってね。」
と説明した。快音はブーツのような靴を外して玄関に上がり、大男の背中を追った。廊下は横幅も広い。壁には絵画が所広しと飾られている。
大男が一つの扉を開くと、
「社長。デリバリーホストの野郎が来ましたぜ。」
と報告する。
中は応接室みたいな広い部屋の真ん中の長椅子に腰かけているのは着物を着た若い女性で、その人物こそ快音を呼んだ女社長なのだろう。大男に、その女性は、
「ご苦労。お前は下がっていい、下桂(しもかつら)。」
と鈴の音を振るような声で命じる。
大男は深く一礼すると扉を閉めた。部屋の出入り口近くに立っている快音を見ると女社長は手招きして、
「まあ、まあ、こちらに来て座ってね。」
と呼びかける。
半円形で背もたれのあるソファだ。横並びに五人は座れる。それが空間を置いてUの字と逆Uの字を向かい合わせた形で配置されている。快音は向かい合ったソファの空いている空間から入ると、その円形のソファに女社長に向かい合って座る。二人の間には強固なプラスチックのテーブルがある。
 着物が似合う女社長は白い肌で赤い唇を開くと、
「ここは父の応接室だったの。ホームバーみたいに、あそこには酒類が並んでいるでしょ。」
と白い人差し指で指した方向を快音が目で辿ってみるとウイスキー、ジン、ラム酒の瓶が整列していた。女社長は続けて、
「あの辺にコップもあるから取って来てね。」
と快音に言う。快音は立ち上がり、数本の酒瓶と二つのコップを銀色の盆に載せてテーブルまで運んで置いた。快音は、
「どの御酒にしますか?」
と聞くと着物社長は、
「そうね。まず初めにアナタが好きなものを飲んでいいわよ。」
と両手を自分の胸の前に組んで答える女社長。
快音はジンの酒瓶を手に取ると、
「いただきます、それでは。」
とコップに注ぎ、グイと飲んだ。強烈な酔いが回ってくる。その変化を女社長は楽しんで、
「強いのねー。そのジンは普通なら、もっと酔うものなの。」
と笑顔で話す。快音は目を少し虚ろにして、
「うーん、そうですか?ホスト稼業で慣れたんでしょう。社長も一杯、」
「いえ、わたしは飲まないのよ。父と違って全くダメなの、お酒は。」
と意外な返心だった。心を返した答えだ。快音は、
「そうなんですか?それでは僕だけ酔っていいんですか?」
「ええ、どうぞ。貴方の頭の毛。それは、もしかしてカツラ?」
「もしかしなくてもカツラですよ、よく分かりましたね。」
「髪全部が真っ黒だから。自然の髪とは違うのね。」
酔いが回ってきた快音。顧客に答えなければ、ならない。
「ボクの髪がカツラだと気づいたのは、アナタだけですよ。社長さん。」
女社長は快音に、
「もっと飲んでくださいな。アナタの酔った顔は面白いもの。」
と更なる飲酒を強く促す。
快音は又、一杯のジンをコップに注ぐと飲み干すのだった。相当な泥酔というか沼の中に居るような沼酔を感じる快音だ。
 部屋の天井から青い光が快音を照らした。強烈な眠気を催した快音は意識を失っていく・・・・。
 女社長は立ち上がると壁に向かって歩いた。そこにはインターフォンがあり、女社長は、それに向かって、
「山星(やまほし)、よくやりました。あれを持ってくるように。」
と話す。インターフォンからは男の声で、
「了解、誘拐完了ですね、女王様。」
それに答えて女社長は、
「山星、何を言うの。時間が来たら返却するから、こいつを。」
と話し、
「すぐに行動よ。」
促す。インターフォンからは、
「アイアイ・クイーン。」
と返事が流れた。
間もなくドアが開くと黒い上下の背広に黒の帽子、しかも黒のサングラスを掛けた背の高い男が現れ、ソファに寝そべった快音に近づき、快音の頭にヘッドフォンのようなものを取り付けた。それが終わると女社長の方を向き、
「王家・女王、完了いたしました。」と気を付けの姿勢で報告する。
王家と呼ばれた女社長は、
「ご苦労だ。山星、サングラスは外しなさいよ。」
男はサングラスに手を当てて、
「あ、すみません。寝る時もサングラスを掛けたまま寝たりしています。」
と弁解すると急速な動きでサングラスを外した。王家女社長は、
「よろしい。あんたも見ていきなさいね。今日は仕事は休みで、いいから。」
と、ねぎらうような話し方で語る。山星は姿勢を更に整えると、
「はいっ、有難き幸せ。それでは見学いたします。」
と答えた。
王家社長はテーブルの上のリモコンを取ると操作を始めた。応接室の奥の壁にスクリーンが投影された。王家社長はソファに寝そべっている快音の右側に座ると、
「山星、あんたは、この男の左の空いている所に座りなさい。」
「はい、有難き幸せです、王家社長、それでは失礼します。」
社長の前を通る訳には、いかないのでサングラスを外した黒服の山星はU字型のソファの後ろを移動して快音の左側に腰を静かに落下させた。
スクリーンは薄い闇が映っている。王家は、
「今、映っているのは寝そべっているデリバリーホストの快乱の頭の中よ。これから、そこを、いじってやろうというのさ。東京から来た男みたいだね、さっきの口ぶりでは。」
と長いUの字ソファの左端にいる部下の山星に話しかける。
山星は両手を両膝に置いたまま、
「そうでしょうね。軟弱そうですし。奴の頭の後ろの方はカツラが少し、外れているですよ。」
と横目で快乱を見下ろしつつ評した。王家は、
「若禿げでも、ないようだな。うん?」
スクリーンを見た王家は、画面の中に仏像が現れたのに気付く。女社長は、
「若い男にしては夢の中に仏像が出て来るとはねー。」
山星も、それを見て、
「もしかして、坊主じゃないんですか?こいつは。」
と発言した。王家社長は、
「わたしも、そう睨んだよ。でも坊主でデリバリーホストを、しているとはねー。東京なら有り得る話さ。もうちょっと、見ておこうか、山星。」
「ええ、見させて貰います。王家社長。」
だがスクリーンからは仏像は消えた。代わりに現れたのが、赤いビキニの美女だった。それを見て王家社長はニヤニヤ笑いをして、
「やっぱり坊主でも性欲は抑えられないよ。だって夢の中だろ?」
と黒服の山星に云う。山星も笑いだしそうな顔をして、
「夢の中だから現れるんでしょうね、あの胸と尻が大きくて足の長い美人が。」
画面、つまり快音の脳内は、しかし美女がビキニで右手を腰に当てて体を傾けてポーズを取ったままだ。王家女社長は、
「なんだか、つまらないなあ。快乱が夢の中に出てこない。よーし、こうして。」
と話すとリモコンを操作する王家。すると画面には快乱が現れる。しかも全裸の快乱。ビキニ美女は驚くどころか快乱に近づいた。横から映っている二人。快乱はビキニ美女と五十センチの距離で、股間の肉道具をスグに勃起させた。
 王家がソファに横たわっている快音の股間を見て、
「山星、現実の快乱も勃起しているよ。」
と伝えると山星も快音のソコを見て、
「本当ですね。夢は現実に、というやつですか。」
王家は、
「美女を少し動かしてみるよ。」
と話すとリモコンを操作する。
ビキニ美女は自分で胸の部分の水着を外した。そこは、いつの間にか森の中になっている。土の上にビキニはフラリと落ちた。白い肌の乳房が露わになる。その部分が日焼けしていないので、ビキニの形が白く残っているみたいだ。快音の肉道具は金づちのように硬く上を向く。快音は美女に近づくと強く抱きしめた。彼の肉金槌は美女の股間のビキニの食い込んだ部分に当たる。美女は感じて口を開けた。快音は美女の股間のビキニを両手で素早く降ろす。しゃがんだ快音は美女の薄い股間のビキニを彼女の足首まで降ろした。美女は両脚を交互に持ち上げて赤いビキニを外す。
黒く手縮れた美女の股間の陰毛が快音の視界に入った。下から見上げている快音だ。快音は立ち上がり美女を横抱きに抱くと、芝生のような場所で彼女を降ろすと、二人は重なり合い、快音の肉金槌は美女が大きく足を開いた、その付け根にある開いた淫穴に入り込んでいく。森の中は薄暗いが日の出前らしく、二十分も激しく腰を一緒に振り続けた二人に太陽光線が当たった。
と同時に全裸で仰向けになり、上から、のしかかった快音に肉金槌を嵌められていた美女は消えたのだった。
 射精をしていない快音は、まだ肉金槌を強固にしたままだ。
「おや?消えてしまった。もしかして、これは夢か幻か、なんだろう?」
と四つん這いのまま独り言を言う。
それを見ていた王家富富(おうけ・ふふ)は、
「奴の思念は夜明けを迎えた。坊主らしい女を忌避する考えが夢にも出て来ている。ようし、それなら。山星、見ていろよ。」
と黒服部下の山星に告げる。
山星は姿勢を正して、
「はい、社長、拝見します。」
と即答した。
 四つん這いの全裸の快音の体に何処から現れたのか、植物の太い蔓が四本、伸びて来て快音の両手、両足に絡みつき、四つん這いの状態から起こすと後ろに引っ張って行って、大きな樹木の下部にキリストの磔のように固定したのだ。快音の両手は水兵に横に伸び、両脚は揃えて固定された。全裸の快音は、
「なんだー、これは?手が。足が、動かなーい。」
と絶叫した。怒叫とも表現できる。
快音の股間の肉金槌は少し下を向いた。それでも下腹部からは直角の角度は保っている。
 森の何処からか裸の女性たちが続々と現れた。十人以上と見える。
三十路が大半で、容姿は波の女性ばかり、中には肥満体の女、痩せて貧乳の女もいた。美女は皆無である。
 彼女達は大木の下の部分に磔されているような快音を取り囲んだ。裸体の快音の肉金槌は、まだ水平に勃起している。一人の女が、
「この格好でチンコ立てて森にいるなんて、どういうつもりなのかしらねー。」
と快音を指さした。他の女たちは一斉に笑い始めた。もう一人の女が乳房を揺らすと、
「まるでキリストが十字架に掛かっているみたいよー。キリストのつもり?この人。」
他の女が、
「キリストでもチンコは出していなかったんでしょう?森の中なら見られないと思っていたんだー。」
別の女が、
「わたしたちモテない女の集まりなの。森の中でレズ乱交するために集まって、さっき全員脱いだら叫び声が聞こえてね。ここに来たら、あんたが叫んでいたんでしょう。チンコは水平に立ててさー。」
並の女とはいえ全裸になれば三十路でも美乳や豊満尻の女もいるから、それを目にして快音の肉金槌は少し上を向いた。それを見て三十路の女たちは、きゃー、すごういー、とか、はしゃぎたてる。
 全体の長らしき女が、
「ひとりずつ、この男を犯しましょう。両手と両脚は縛られているしね。」
と意見を御披露目した。全部の女が、
「さんせーい。」「あたしも、したい、犯したい。」「みんなで、ろーよ。この男。」「おー、おー。」「いえーいっ。」
と声を上げる。
長らしき女が全裸の胸を揺らすと、
「一人ずつ、犯していきましょう。そのために一列に並んでください。」
と快音を犯す遣り方を決めた。全裸の三十路集団は縦に一列、磔の全裸の快音の前に行儀よく並んだ。画面には三十路女の丸い尻が並んでいるのが映る。快音は見えなくなっている。
 王家富富はリモコンを手にして、
「ちょっと角度を変えよう。」
と云うと、リモコンを操作した。カメラが移動するように画面は磔の姿勢の快音を横から映し出す。
横から見える快音の股間は肉金槌は元気に反りかえり始めた。最初の女が快音の肉金槌を右手で握ったのだ。女は顔は普通だが胸と尻の大きな女で、快音に口づけると自分の股間を大きく開き、彼の肉金槌を自分の秘所に入れ込んでいく。彼女は長い髪を振り乱すと、
「あーん、強烈っ!太すぎて気持ちいいっ!」
と媚声を上げると自分で自分の乳房を揉む。尻を上げたり降ろしたりして、抜き差しする快感を楽しんでいるようだ。
横から見えるだけに彼女の乳房の大きさや揺れ、と尻の揺れも映し出されている。
 ソファに寝そべっている現実の快音は仰向けになると両手を水平にして磔になった姿勢を取った。快音のズボンの股間は、はち切れそうだ。それを見た王家富富は笑みを浮かべると、
「うふふ。夢の中は現実にも反映されるのね。スクリーンに映っている、あの情景を快乱は今、体験しているのだわ。夢とも思わずにね。あの三十路全裸集団はリモコン操作で登場させたのよ、わたしが。」
と部下の黒服の山星に話す。山星は度心臓を抜かれたように、
「そうだったのですか。それは凄い機械ですね。」
と相槌を打ちつつ頭を前後に振る。王家富富は、
「サイバーモーメントにも制作できない機械と思うわ。奴らに機械市場を独占させないわよ。」
と固く断言した。女社長の王家の視線はスクリーンに戻る。
 最初の女が尻を痙攣させてイッたらしく、快音から離れると尻を土に着いて寝そべった。
統率者らしき女性は、
「次に行きましょう。まだ男は萎えていないし射精もしていないから。」
と次に待っている三十路の裸女を促す。
背が高くて190センチは、ある裸の三十路女性は快音より背が高い。彼女は快音を見下ろすと、
「最初の人でイカなかったのなら、わたしでイってね。」
と言い裸体を快音に密着させると両膝を曲げた。
横から映っているので超長身の女の股間は見えない。王家富富は左手に持ったリモコンを右手で操作する。
映像は快音と長身女性の上からの俯瞰を映し出した。それが急降下して二人の性器の結合が映し出された。
何しろ快音は身動きが出来ない。長身女性は自分の両膝を曲げて伸ばして快音の肉ハンマーを膣内に擦りつけて、
「はあっ、はあーん、いくっ、いくっ。」
と悶えると右手で自分の黒髪を掻き揚げた。
快音は遂に射精してしまった。途端に彼の肉凶器は只の陰茎に変形した。長身の女は快音から離れる。
長らしき女はダラリと垂れた快音の股間のモノを見ると、
「しばらく休憩して貰いましょう。二人目で終わるとは意外でした。」
と語った。
 王家富富はリモコンを動かすと、
「あの長らしい女を操るよ、今からね。」
と山星に話す。
画面に映った全裸の統率者は、
「キリストの磔みたいな姿勢が勃起持続には難しいのかもしれないですね。」
と集団の全裸三十路女達に呼びかけ、続けて、
「今度は釈迦の悟りを顕わしているような結跏趺坐の姿勢を取らせましょう。」
と提案した。一人の全裸女性は、
「結跏趺坐って何でしょうか、わたし知りません。」
と質問したので裸の三十路の長は、
「座禅で組む姿勢ですよ。胡坐に似ているけど、そうだ、この人に自分で足を組んでもらいましょう。」
と虚脱している快乱に話す。
快乱は、
「この磔みたいな姿勢を解いてくれたら自分で結跏趺坐を組みます。」
と十字架に掛かったままのような体勢から即座に答える。
全裸の統率者は足元の地面からカッターナイフを拾うと、快乱を縛っている四本の蔓を切り捨てた。
崩れ落ちるように地面に座り込んだ全裸の快音は、両脚を組み、結跏趺坐の姿勢を取った。組んだ両脚の上に自分の萎えたモノを載せている。
全裸三十路女達は快音を取り巻くと、
「すごーい。坊さんみたいよ。ちんこ出しているのが違うかもね。」
「しごいてやったら立つんじゃないのー?」
「もう少し待ちましょう。」
「美人になら即、立つかも、この人。あれをしたらいい。」
「あれって、なーに?お姉さん。」
「あれは、あれですよ。変顔マスク。」
「あー、あれね。指導者さん、変顔マスクは在りますか?」
指導者の裸女性は、
「あるけど三枚しか今、ないわね。高価だけど売り切れて生産が間に合わないらしいのよ。」
変顔マスクとは所謂、仮面の事だがシリコン製で薄くて顔面に張り付くので仮面よりは実際の顔のように見える。メイク技術より簡単に美人になれるというものだ。
指導者の裸女はチラと座禅を組んでいる快音を見ると、
「あら?この人の頭の毛はカツラみたいよ。」
と話し、快音に近づくと彼の髪の毛を右手で掴むとグイと引っ張った。スポリと抜ける快音のカツラ。剃髪した頭が白く光っていた快音。

SF小説・未来の出来事33 試し読み

何とも毅然とした態度のエマーニだった。性感マッサージ師として快乱が見た最初のエマーニとは別人だ。快乱は下でな態度で、
「何を体験するんでしょうか?エマーニさん。」
「ついてくれば、分かる。」
と答えたエマーニは単なる更衣室みたいな、その部屋のドアを開けると部屋を出る。快乱も続いて出たが、そこは入った時の廊下とは違った廊下だった。壁も白から茶色になっていたのだ。
しばらく二人は歩いた。快乱はエマーニの後ろを少し離れて歩く。エマーニの服装は茶色の上下で、下はズボンだ。女性らしい体型を顕わさないような服である。ピッタリと尻に、くっついているズボンでもないのでエマーニの大きな尻も感じられない位だ。
立ち止まり、右側の部屋のインターホンを押すとエマーニは、月の言葉で何かを言った。するとインターホンからも月の言葉が年配の男性の声で聞こえる。ドアが自動ドアのように横滑りに開いたのでエマーニは中に入ると顔と右手を出して快乱を部屋の中に入るように手招きした。
快乱が急いで中に入る。自分の服装もエマーニと同じの茶色の上下だったのだ、と快乱は気づいた。部屋の奥の窓際の近くに机を前にして座っているのは月の人間だ。というのは雰囲気として地球の人間とは違う。ただ軍人ではないか、と思われる風貌だ。彼は快乱を見ると、
「ようこそ!地球から、」
と日本語で話したのだ。快乱は、
「初めまして。快乱と言います。」
と話すと頭を下げた。
軍人は椅子から立ち上がると、
「快乱君。まあ、そこの椅子に掛けなさい。」
と明瞭な日本語で話す。
簡素な木の椅子に快乱は座った。軍人は胸を張ると、
「月政府も軍隊を持っている。規模も、かなりのものだが地球人は知らない。アポロ15号などを攻撃したのは月政府軍によるものだ。特に我々は有人でロケットを月に飛ばしているのは探知している。アメリカ人が、いい気になって行っていたものだな。それで、その頃に我々の諜報部隊から何人もの人間、月の人間だがアメリカを探りに行った。」・・・・
 アメリカの首都、ワシントンに降り立った月政府軍の諜報部隊員、マルノ・ゲッティーは自分の顔にアメリカ人らしく見せる特殊メイクを施している。それで彼は月からのスパイと誰からも気づかれずにワシントンで生活を始めた。
マルノ・ゲッティーは二十代後半に見える青年で、実年齢は二十代ではないのだが地球では、彼は二十九歳と称している。
ワシントンの新聞社に入社した彼の履歴書はイギリスの名もないビジネス専門学校だったが筆記試験と面接ではハーバード大学を首席で卒業した入社希望者よりも実力があったのでアメリカの習慣として実力主義による判定としてマルノ・ゲッティーは採用された。ハーバード大学首席卒業者は採用されなかったのである。日本の新聞社では、あり得ない話だろう。世界的にも紙による新聞は部数が毎年、減り続けている。ワシントンの新聞社としても新規採用は少なめにしか採用できない。
 マルノ・ゲッティーも下働きから見習いを経て、一人で取材に行くようになった。宇宙開発に関する機関に彼は出入りするようになった。その機関が宇宙に関するアメリカの公式声明に関与しているらしい。
その機関に取材に行くマルノ・ゲッティーは報道担当の部屋で広報担当の女性、アイラン・メリットン(27)と今日は二人きりになっていた。マルノは、
「ワシントン・タイムズのマルノです。よろしく、お願いします。」
と挨拶する。アイラン・メリットンは高学歴(大学院修士課程修了)の女性らしく理知的な目でマルノを見ると、
「前に一度、取材に来ましたよね、ゲッティーさん。」
と確認した。マルノは右斜め上を見上げて、
「そうでしたか?すみません、記憶になくなってしまって。」
と顔をメリットンに向けて答えた。アイラン・メリットンは、
「いいえ。構いませんのよ、ご多忙なんでしょ?」
「ええ、それは新人ですから忙しいのです。最近、又、UFOが多く目撃されていますが、月にUFOは存在しますか?」
と切り出したマルノにメリットンは、
「いえ、月には生物は存在しませんので、未確認飛行物体も存在しないと思います。」
「それは、こちらの見解ですか?メリットンさん。」
平静で動じないアイラン・メリットンは、
「ええ、ここの見解です。」
「メリットンさん個人の見解は如何でしょう?」
そう聞かれたメリットンは髪を後ろに揺らせて、
「わたし個人には、そうね、見解を持っていないとしか、お答えできませんわ。」
「月には生物がいない、というのもメリットンさんは、どうですか?(おれは月から来た人間なんだ、と心の中でマルノは思った)」
「そうですね、わたしは大学で物理学を学びましたから、月に就いても勉強しましたし、一般的に云われているような考えしか持っていませんわ。」
と余裕のある発言だ。マルノは(この無智女が!)と思いつつも顔には出さずに、
「私だって社から命じられて取材に来ています。新聞社としてはUFOを、まともに取り上げられないらしいので。こちらの意見を聞いてこい、という事だったんです。」
メリットンは、あら?そう?という顔をした。彼女は、
「UFOも自然現象だと思います。中に誰かが乗っているなんて考えるのは、どうかと思います。」
と理路見ろ整然という返事だ。マルノは、
「メリットンさん昼は、どちらで御食事をされますか?」
と話を変えて聞く。
メリットンは左斜め上を見上げて、
「外でランチは取りますけど。」
顔をマルノに向けて短く答えた。
マルノの顔は月光のように輝き、
「行きつけの店なんか、ありますか?」
「それは、ありますけど・・・。あなたに関係あるのかしら、マルノさん?」
大きな窓の外には緑の樹木が数本と芝生が見えている。室内にはアメリカ国旗が置いてあるし、メリットンの背後にはズラリと並んだ資料のファイルが並んでいる。マルノは、それらを眺めると、
「ええ、よろしければメリットンさんのランチ代を差し上げます。」
「ワーオ、素敵だわ。ご馳走になろうかしら。」
「ええ、喜んで。どんな店でも構いません。」
室内の壁の丸い掛け時計は昼の十二時を指していた。

 アメリカの首都であるワシントンDCにも安いレストランやハンバーガーショップが、ある。マルノは安い店は混むので、その反対に高級な店を選んだ。個室のあるレストランだ。メリットンは、いつも行く店は安い方のレストランやハンバーガー店なので、室内にシャンデリアがある個室にはマルノと入って新鮮な衝撃を感じたのだ。マルノはドアを閉めると四人が座れるテーブルの椅子をメリットンに右手で示して、
「どうぞ。おかけください。」
室内の壁には大型のディスプレイがある。マルノは、そこへ行くとボタンを押した。すると料理場、厨房が画面に出る。白い服と帽子を被った料理人が数人画面に映る。そこへボーイみたいな男が現れて、
「いらっしゃいませ。本日は、ようこそ、おいで下さいました。ご注文を承ります。」
と白い歯を見せて喋った。マルノは立ったまま、
「スペシャル・コースを頼む。」
「畏まりました。フルコースタイプで御座いますね。」
「そうだよ。会計はスマートフォンで、しておいたよ。」
ボーイは、そこにあるパソコンの画面を見ると、
「お支払い済みの御予約のマルノ・ゲッティ様で御座いますね。有難う御座います。丁寧にウチのチーフ・シェフが手をかけて料理を作りますので、しばらくの間、お待ちくださいませ。」
マルノはボタンを又、押すと大型ディスプレイの画面は消えた。
 アイラン・メリットンは初めて見た個室内のディスプレイを通しての注文に感嘆と関心を持って眺めていた。マルノ・ゲッティは席に戻りアイランと差し向かいに座った。マルノは両手を広げると、
「先端的な注文方法でしょ?メリットンさん。」
アイランは、
「驚きました。注目すべき店ですね、ここは。」
それから運ばれてきた豪勢な料理の数々、フランス料理のフルコースに似ていたが、大きな海老に様々なソースをかけ、ホイップクリームを最後に載せた皿が出ると、マルノはメリットンに、
「月の海老という料理名なんですよ、これは。」
と朗らかに話した。メリットンは皿を注視すると、
「風変りな料理名ですね。」
「月で食べているような趣きが、あるんですよ。僕は既に食していますから。どうぞ、ミス・メリットンさん、味わえますよ。」
銀色のナイフとフォークを巧みに動かすとメリットンは可愛い口の中に付きの海老を入れる。喉の下に飲下したメリットンは、
「本当だわ。月にいる気分に、なります。」
二人が食べるのを終了したのはメリットンの昼の休憩時間が終わりそうな時刻だった。
 店の外に出た二人、冬の寒い風も気にならない程に体の中は熱い料理と飲み物で発熱している。マルノは右手を上げると、
「それではメリットンさん。又、取材に来ますよ。」
「ご馳走様でした、ゲッティさん。次の取材を、お待ちしていますわ。」
メリットンが帰る方向とは逆の方向にマルノ・ゲッティは黒のズボンで歩いていった。

一日の業務を終えたアイラン・メリットンはオフィスを出ると、誰かが待っているのに気付いた。(誰?あっ!)そこには蛇の頭をした男が立っていた。と思ったのは一瞬で、それは今朝に取材に訪れてランチを御馳走してくれたワシントン・タイムズの記者であるマルノ・ゲッティが笑顔で立っていたのだ。彼は、
「お待ちしていました、メリットンさん。今日は今から空いていますか?」
メリットンは同意の顔をして、
「空いていますよ、ゲッティさん。仕事以外に趣味もないし。」
と即座に答えてくれる。マルノは、
「よかった、もしメリットンさんが予定があったら、とか考えていました。夕食は早いですね?」
「そうね、昼に御馳走になりましたから。」
背広のままのマルノ・ゲッティは、
「ティー・ルームというのが開店したんですよ。紅茶を主に出しています。そこへ行きましょう、メリットンさん。」
「ええ、喜んで。楽しみだわ、それは。」
マルノに連れられてティールームへ行くアイラン・メリットン。一階にあるティールームはホテルのラウンジ内にあった。マルノは店の中の入り口付近に立っていたボーイの青年が近づいてきたので、
「一番、いい席を頼むよ。」
と話すと白い服装に黒の帽子を被った青年は、
「承諾いたしました。ご案内します。」
と答えると店の奥に二人を連れていく。
そこにはエレベーターがあり、ボーイは最上階のボタンに指で触れる。すぐに店の奥まで降りて来たエレベーターだ。
それが開いたのでボーイは、
「さあ、どうぞ。お乗りください。」
とマルノとメリットンを先にエレベーターに乗せた。それからボーイは乗り込むとエレベーターは最上階へと向かう。
到達したのは数十秒後。
扉が開くと、そこはティールームではないホテルの中の外観だ。ボーイは、「ご案内します。」
と云い、エレベーターを出た。この最上階にもティールームが、あるのだろう、と歩きながらメリットンは思っていた。
ボーイが或る部屋の前に来ると円筒形のガラスのキーホルダーの付いた鍵をマルノに渡し、
「ごゆっくりと、お過ごしください。」
マルノがカギでドアを開けると、そこは部屋の中央にテーブルがあり喫茶店風の内装である壁紙も落ち着いた色調の色合いで、ティールームのようだ。メリットンは、もしかしたら、という思いが打ち消されて、
「個室のティールームなのね。エレベーターで最上階まで来た甲斐が、あるわ。でも、すごく高そう。予算が・・必要なのでは?マルノさん。」
と室内を見渡しつつ話した。マルノは背広の上着の襟の下を両手で整えると、
「予算は、あります。充分にね。座りましょう。メリットンさん。」
「ええ、それでは。」
テーブルの上にはメニュー表が立ててある。マルノはメリットンに、それを手渡した。彼女はメニューを見て、
「ふうん、紅茶の他にビーフステーキまで、あるのね。ディナーとしても食べられるものが並んでいるわ。」
と感心する。マルノは、
「少し早いけど食事を注文してもいいですよ。」
と誘う。メリットンはメニューから顔を上げて、
「それよりスペシャル・ティーを頼んでも、いいかしら?」
「ええ、もちろんです。」
テーブルにはインターホンがあった。それを押すとマルノは、
「スペシャル・ティーを二つね。」
と手軽な感じで注文した。メリットンは、
「最上階まで持ってくるわけ?スペシャル・ティーを。」
「いいえ、最上階にも店の厨房が、あるんですよ。」
とマルノは、説明したのだ。
それで三分もすると玄関チャイムのようにベルが二人のいる室内に鳴り響いた。出入り口のドアの上にはモニターカメラがあり、それには白い服に白い帽子の料理長のような男が手にした銀皿にティーカップを二つ載せて笑顔を浮かべている。マルノはドアを開けた。
「御機嫌如何です?スペシャルティーを、お持ちしました。」
マルノは、
「御機嫌いいから部屋の中に置いてね、それ。」
料理長は椅子に座っているメリットンを見ると、
「おや、これは奥様。失礼いたします。」
とスペシャルティーをテーブルに並べる。
それから深く一礼して料理長は立ち去った。部屋のドアが自動施錠で閉まる。
マルノは椅子に座り、メリットンに、
「どうぞ、飲んでください。メリットンさん。」
メリットンはマルノの顔を見て、
「わたしたち、夫婦に見えたのかしら?」
「そうですかね?別に貴女が誰かの奥さんに見えたとしても、料理長は奥様と呼ぶはずですよ。」
メリットンは、ふふ、という絵顔(笑顔ではなく)を浮かべると、
「そういう見方も、確かにあるわ。いただきます。」
アッサム紅茶に似ているが、別の味わいもある。メリットンにしてみると、
「初めて飲んだ高級な紅茶ね。深い味に異国どころか異星の味わいまで感じるわ。」
マルノも手に取って飲みつつ、
「うまいですね、例えるなら月の味も入っている・・・。」
メリットンは同意の顔をして、
「そうだわ、うまい形容です。」
「ついでにディナーも、どうですか?」
「まだ空腹でないもの。」
「運動すれば空腹になりますよ。」
「そうね。でも、この部屋で走り回る訳にも行かないでしょ。」
「逆立ちなら出来ますよ。」
「まあ、わたしスカートを履いているのよ。」
「誰も、いないじゃありませんか。」
「貴方が見ているわ、マルノさん。」
「私などに気にしないで下さい。」
「そうは行きませんよ、マルノさん。」
マルノは椅子から立ち上がると、
「それでは別の部屋に行きましょう。」
メリットンも立ち上がると、
「ええ、ついて行きますよ、マルノさん。」
部屋の奥にはドアがあった。二人は、その部屋に入る。
二人が入ると同時に照明が点いたようだ。
ドアはオートロックで自動的に閉まった。
広い部屋だが、そこはベッドルーム、寝室なのである。
ダブルベッドに赤い布団、赤いカーテンに床は白の絨毯が
敷き詰めている。メリットンは大驚して、
「なんとベッドルーム・・・・。」
と絶句した。
 マルノは上着を脱いだ。白いカッターシャツの彼は、
「アイラン・メリットンさん。ここでは貴女はUFO関連機関の人間である事を忘れて欲しいんです。貴女は服を着ていても素晴らしい魅力のある体だ。僕の股間を見てください。」
メリットンはマルノに云われたまま、彼の股間を見ると、そこは大きく盛り上がっていた。彼女は、
「まあ!凄い!」
声を上げると自分の上着を脱ぐ。その下にも服を着ているがメリットンの乳房が形よく浮き出ている。マルノはカッターシャツも脱いでシャツ姿になる。メリットンも最後の上着を脱いでブラジャーだけの上半身になった。
薄めのブラジャーで彼女の盛り上がった大きな乳房の先にある豆のような乳首はクッキリと浮かび出ている。二人は、どちらからともなく近づいて抱き合った。そして二人の唇は重なり、長い時間の間、
離れなかった。マルノはキスしたままメリットンを横抱きに抱いてダブルベッドに優しく寝そべらせる。キスを続けつつマルノはメリットンの白い薄めのブラジャーを外した。
揉まれるのを待っているような白い大きな乳房を見るとマルノは唇を離し、メリットンの乳首を右、左と吸う。メリットンは心地よさそうに目を細めると両脚を大きく開く。マルノは身を起こすと、メリットンのスカートを外した。白いパンティは薄くて彼女の股間の真っ黒な陰剛毛の縮れた様子をハッキリと映している。
そのパンティに食い込んだ彼女の陰部は男のモノを咥えたさそうな女陰を示していた。マルノは紐で外せる彼女のパンティを両側共に外すと、アイランの股間を隠していた薄い繊維を横に移動させる。
縦長の女のスジが少し開き、マルノの肉棒を欲しそうにしていた。
マルノは素早く自分のズボンとパンツを脱ぎ棄てる。
最大限に屹立したマルノのモノはアイランの開いた女性器の中に埋め込まれていく。アイランは気持ちよさそうに、
「アアッ、最高よっ、はーっ、奥まで来てーんっ。」
と少し自分の白い大きな臀部を持ち上げてマルノと深く身を合体させた。全裸の二人は共に腰を動かし始める。
三分間は性器をピッタリと合わせて擦り合う。アイランの白い大きな乳房は揺れて、ピンクの彼女の乳首は硬く尖っていた。
快感の波に乗っている二人だったが、マルノは腰の動きを止める。アイランは閉じていた両眼を開けると、
「どうして、止めるの?」
と意外な顔で聞く。彼女の黒髪は乱れていた。マルノは、
「気になっていたた事を思い出したよ、アイラン。」
メリットンは止まっている大きなマルノの陽肉棒を自分の中で感じつつ、
「なんなの?それは?」
「君の個人的な月への見解だ。」
押して引くという動作を止められてメリットンは快楽の波が止まったのを感じた。質問に答える彼女、
「個人的には月の見解は、ないんです。でも私の所属する機関は、月の裏側には人が住んでいる事や、月にある大気、水、酸素などの事実を捕まえている。重力も地球と、ほぼ同じらしいわ。」
「ありがとう。御褒美に快楽を一緒に味わおう。」
マルノの腰は再び動き始め、アイランの膣内を自在に往復した。アイランは長い髪を振り乱して自分の尻をマルノの腰の動きに合わせて振り続け、快楽の沼に溺れて行った・・・・。

 こちらは性感マッサージ師の快乱が座っている軍隊の部屋だ。一人の男が入って来た。彼は背広姿で軍服ではない。きりっと引き締まった顔で、両脚の踵をくっつけて背を伸ばすと部屋の中の軍人に敬礼し、
「サットン少佐、地球のアメリカから戻りましたっ。」
と報告した。
サットン少佐も立ち上がり、敬礼して、
「うむ、ご苦労だった。マルノ・ゲッティー大尉。かなり昔から活躍しておられますね。ゲッティー家は地球のアメリカで。」
と話す。マルノ・ゲッティ大尉は、
「私はマルノ・ゲッティ三世です。祖父が同じ名前のマルノ・ゲッティで、父はカルノ・ゲッティーでした。いずれも地球のアメリカのUFOに対する声明をしている公的機関の女をベッドに、いざない、
性交して動作を止める事により、彼女達の自白を引き出してきました。」
と喜び勇んで説明する。サットン少佐は椅子に座ると、
「ゲッティー大尉、座り給え。」
「はい、サットン少佐。」
ゲッティー大尉が木製の椅子に座った後、サットン少佐は自分の胸に触ると、
「一か月ほど、南の島で勤務してもらう。太陽の光は十分だ。ワシントンは寒かっただろう?」
と探りを入れるように聞く。ゲッティー大尉は思い出すように、
「寒かったですよ、アメリカの首都は。地球人って寒いのが好きなんですか。」
サットン少佐は、
「そうだな。我々は寒くなる地方に人は誰も住んでいない。地球の面積が狭いためだろう。」
「南の島の軍事施設では女もいないでしょう。」
とゲッティー大尉は云うと、うつむいた。
 サットン少佐は、
「原住民の女は、いる。それと施設内にある売店やレストラン、マッサージ室などにも若い女性が勤務している。あの施設では若い女性をハントする事が許されているんだ。ゲッティー大尉の寝室に若い女を連れ込み、セックスする事も許可されているからね。
売春施設がないだけに、腕の見せ所だよ、ゲッティー君。」
との訓示であった。サットン少佐は続けて、
「今から行ってもらう、ゲッティー大尉。コリントン中佐の部屋へ行け。」
ゲッティー大尉は立ち上がると、気を付けの姿勢に敬礼をして、
「行ってまいります。」

SF小説・未来の出来事32 試し読み

 乗り物の中で官能的な描写を読んでいる貴美は頬を赤らめて、周囲を見回すと貴美を気にしている人物は、いなかった。慌てて電子書籍の画面に視線を戻す。
オレは喜悦しているアンドロイド妻の女の奥深くに男性の液体を、もう一度、放ってやった。
 こんな日々を送っているが、妻はアンドロイドなので婚姻届けは出していない。で、配偶者控除も出来ないが、そもそもオレは節税も必要ない。電子書籍のSFものを読むのがオレの趣味だ。今は*知らない星に連れられて*というものを読んでいる。それは・・・
 釣次郎はピラミッドの内部に連れていかれた。そこには水晶で出来た縦長の小屋みたいなものがあり、人間二人は入れる。二人を車に乗せて、ここへ案内してくれた僧侶は、
「その中に入ると他の惑星に瞬間的に移動できる。具体的な場所も入力すれば、そこへ行ける。一度に二人は可能だ。地球人のアンタは何処に行きたいかね?」
釣次郎は地球の時・流太郎が気になった。そこで、
「地球の日本の東京駅に行きたいです。」
と話すと、僧侶は小屋の壁にある機械に情報を入力した。僧侶は歯を見せて笑顔で、
「マリムさんと二人で一日か、その辺り地球の日本の東京に戻りなさい。これはボッダの指示だ。行く行かないは地球人のアンタが決められる。どうするかね?」
釣次郎は、いい息抜きだと思い、
「行きます、喜んで。地球も気になりますし、ぜひ行きます。」
僧侶は最後の入力を終えると、
「それでは中に入るように。マリムさん、あんたもな。」
その小屋の中に入った二人は、すぐに自分たちが何かに運ばれているのを感じた。ハッと思うと二人は東京駅の構内にいた。突然、現れたのに周囲の人達は気づかない。向こうから若い女性が歩いてくる。その女性は釣次郎に気づくと立ち止まり、
「本池釣次郎さんでしょ?もしか、しなくても。」
と呼びかけた。
「そうですが、貴女は、どなた?」
「サイバーモーメントの城川貴美と言います。時流太郎さんの会社に本池さんは、いるのでしょう?行方不明に、なったとか時さんが話していました。その時に本池さんの写真とかも見せて貰いましたから分かったんですよ。」
納得了解した釣次郎は、
「これから何処へ行かれますか、城川さん。」
と尋ねると、
「これからサイバーモーメントの東京営業所に行きますわ。」
そこで貴美は電子書籍を閉じた。東京駅に着いたからだ。ロケットカーを出て、そこからエスカレーターで一階に上がった貴美は快適に歩行していると二人の男性が自分を見ているのに気付いた。
日本人の男性と白人風の男性だ。日本人の男性は貴美に歩み寄ると、
「城川さんですね?」
と話しかけたので、貴美は立ち止まると、
「ええ、そうですが。貴方は?」
と不審げに聞く。話しかけた青年は笑顔で、
「本池と申します。時社長の会社の社員ですよ。時社長に東京駅に城川という女性がロケットカーで到着するから迎えに行って、と連絡がありました。」
貴美はホッと安堵の息をつくと、
「そうでしたの。不審な顔をしてごめんなさいね。」
釣次郎はニコニコして、
「いいえ、こちらこそ驚かせてしまって、すみません。我が社は町田市にあります。電車賃は、こちらで持ちますから。さあ、行きましょう。」
と申し出た。
 東京駅➡新宿駅➡小田急線・新宿駅➡小田急線・町田駅での移動だが夕方五時前なので座席に座れた。貴美を中央にして左右に釣次郎と白人風の男が座る。右にいる釣次郎に貴美は、
「本池さん、遠い惑星から一瞬で東京駅に着いたんじゃないのかしら?」
面食らったのは釣次郎で、
「ええっ?何故、その事を・・・・。」
と絶句した。貴美は、
「電子書籍のSFに書いてあったの。」と云うと左に座っている白人のような男性に、「あなたはマリムさん、じゃないのかしら?」
マリムと呼ばれて白人風男性は、「ぎょえっ、それも男子書籍に書いてありましたか?」貴美は「そうよ。ボッダの指示でしょ?」
釣次郎とマリムは、ほぼ・ほぼ的に同時に、
「ええ、そうです。」と併答したのだ。
電車の窓には流れていく神奈川の風景が見える。遠くに巨大な観音像が見えたりするのが新しい名所らしい。ボッダの事に話題が移った時に見えた白い観音像は偶発的な事象とは思えない。
 最近の日本は神社離れが加速している。コロナウイルスによる神社参拝を離れる人たちも増えるばかりだ。それよりも寺院は人も少ないので参詣客が増えている。ボッダは釣次郎に、これを見せたかったのか。そうではない、と思われるが未だに姿を見ていない釣次郎にとってのボッダであった。釣次郎は貴美に、
「遠い星に何故か覚者のボッダが、います。」
貴美は、どうでも良さそうに、
「ふーん、そうなの。仏教みたいで興味ないわ。」
とアッサリとアサリ貝の殻を捨てるような返答に釣次郎も、それから先を話せない。
町田に電車は到着した。三人横並びで歩けないので貴美は二人の後を追う。駅から歩いて数分の企業の缶詰のようなビルの地下に流太郎の合同会社は、ある。ドアを釣次郎が開けると中で座っていた流太郎が立ち上がり、
「やあ、いらっしゃい。城川さん。」
と待ちかねたように呼び掛ける。わずかながら来客の場合に対応できるテーブルとイスもある。そこへ貴美と釣次郎、マリムを導き、流太郎は、
「サイバーモーメントの黒沢社長から電話が入りましたよ。城川さんを出向社員として働かせて欲しい、とね。どうです?城川さん。」
それを簡素なソファに座って聞いた貴美は目をダイアモンドのように、きらめかせて、
「やりますわ、時社長。待ちに待った町田で始める仕事ですね?」
流太郎は上機嫌で、
「早速ですがホームページを作ってもらいます。あの机にパソコンも、あります。行きましょう、城川さん。」
貴美は手打ちでホームページを作れる。それを流太郎は黒沢社長に教えてもらっていた。HTML言語、CSS、さらにはブログを動かすXMLなどを駆使できる貴美である。
流太郎が大体の構想をWORDに、まとめていた。「出張ホストを手配します」というサイトを作って欲しいのか、と貴美は理解した。流太郎の声が貴美の頭の上から、
「それでは城川さん、よろしくね。早くなくていいから完成してください。」
と春風のように聞こえた。流太郎はソファにいる釣次郎とマリムの前に座ると、
「本池、こちらの方は、どなただ?」
釣次郎は改まると、
「この星の人では、ないんです。地球から遠い惑星の人ですよ。」
流太郎は左程、驚かずにマリムへ、
「ようこそ、お越しくださいました。あ、日本語でスミマセン。」
マリムは、さざ波のように笑顔を広げると、
「いやー、大丈夫ですよ。私は日本語を話せますし、日本の小説も読めますから。」
流太郎は安堵し、
「これは素晴らしい!これから色々と事業を広げたいんですけど、まずは手始めにホスト紹介業を行おうと思っています。コロナウイルス感染の一つの大きな原因がホストクラブに行く事だったりしますからね。店を構えていても女子は誰も来なくなります。
女性のデリバリーヘルスは古い昔からあるのに、デリバリーホストは多くないです。それにホストクラブではホストは酒を注いで、話を聞いたりするだけで女性客と肉体関係に陥る事は、ほとんどないし、出来ないんですね。それをデリバリーホストの場合では、女性客の望みを拡大させようという試みです。
しかし本番は、なしという設定にしなければ、いけないんですね。あ、お名前を御伺いしていませんでした。わたくし、時流太郎と申します。名刺を差し上げます。」
流太郎から名刺を貰うとマリムは、
「ぼくはマリム、といいます。地球と同じような星なんて銀河系にも幾つもありますし、宇宙は銀河系だけではないですから、その辺を地球人は自覚しないと、いけない。
身体能力も地球人は、それほど大したものではないです。僕の星にもホストクラブは、あるし、それにねー。」
マリムは両手を左右に広げると、
「地球とは規模が違うんですよ。ホストの活動のね、行動半径というか行動範囲というかね、ぼくの星のホストは遠距離出張もしますし、それに他の星にデリバリーホストとしてUFOで行きますよ。太陽系だって地球以外は、金星と火星で交流が行われています。彼らの認識では地球人は野蛮、という事で交流したがらないようですよ。
特にアメリカ人なんて地球防衛軍なんて構想するけど文明が発達している星が地球を征服するのは簡単です。彼らは武器を考えるけれど、我々の星では一つの惑星を爆発させるだけの爆弾がありますし、それに武器なんて核爆弾や水素爆弾でなくても、いい。コロナウイルスのようなものでも、いいんですからね。我々の星には生物兵器は豊富にある。それでも惑星侵略のためには使わないんです。
コロナウイルスより強力な細菌だって最近じゃなく、百年以上前から開発していますね。本当に惑星侵略をしたいのは地球人、特にアメリカ人かもしれないけど、子供の火遊びは危険ですよ。月の裏側からも攻撃されてアポロ計画は頓挫したらしいですね?」
と背広姿の流太郎に問うマリム、流太郎は、
「いえ、知りません。まあ地球の科学文明は太陽系内でも遅れているのだとは思いますけど。」
マリムは我が胃を満たしたように、昔風なら我が意を得たように、
「それ、それ、それです。アインシュタインは光速が一番早い、と考えていたし、それ以外のものを考えられなかったので宇宙での航行が進まずにいるのが地球です。他の惑星では光速を超えた移動手段を持っているという事実を認めれば地球人は特に科学者は物凄い劣等感を持たないと、いけない。その劣等意識を持ちたくないが故のUFO否定にも、なるんですよ。」
流太郎は沈思話考に及び、
「私も他の惑星の科学は理解できません。けれども、それより稼がないと生きて行けません。これは地球規模での経済構造ですし。」
マリムは静寂感を表して、
「本当に、そうだね。労働して金銭を得て税金を納める。それで自治体や国が運営されるのが地球です。我々の星では労働は必要ではないので嫌々ながら働いている人は、いませんよ。」
流太郎は簡単に感嘆して、
「素晴らしい星ですね。労働のない世界なんて、まるで見たことのない夢の世界のようです。」
突如、部屋が動き始めた。わずかな揺れが感じられる。地震か?そうでは、ないようだ。地震とは左右に揺れるものだか、これは一方向に引っ張られていく動きなのである。地下にある部屋が何処に引っ張られるのだろう。
 流太郎、貴美、釣次郎の顔は緊張感で引き締まる。マリムは平然とした様子だ。異星人のマリムには動ずるべき事態では、ないのだろうか。例えて言えば地下鉄の動きのようなものを、四人は感じている。段々、速度が上がっていくようなのだ。地下鉄に乗っても、その揺れに慣れるように三人も落ち着きを見せ始めた。マリムは変わらぬ落ち着きぶりだ。
マリムは流太郎の話しかけに答えて、
「ええ、地球とは資源の違いが凄くあります。地球とは豊かな国ではない。例えば水道水にしても日本では有料です。電気、ガスもタダでは、ないし。これが我々の星では全て無料。食べ物もレストランに行かなければ無料で貰えます。」
地下鉄に乗っている気分になった貴美はパソコンを打つ手を止めて、
「どうして無料なんですか?」
好奇の目で問いかけた。マリムは生徒に教える教師のように、
「農家に国家が収入を与えています。地球と違って悪天候が続いたり、雨が降らない事が続くような事態にも、ならないのです。つまり、常に豊作、毎年が豊作、海では大漁の日々です。漁業の人達と農業の人達は、それぞれが収穫したものを物々交換します。
要するに金が回る事が少ない。ボッダは、その超能力の凄さで人々から寄進を受け、広大な土地も彼に捧げられました。
ボッダは働く必要なく、信者の寄進により生活しています。それは地球の宗教法人も似ていますが、ボッダには個人で手に入れるものも、お金が要らないので税金も掛かりません。
 全ての国民はベーシックインカムを貰いますので、失業しても困りません。」
と鮮やかに説明した。釣次郎は、
「なんだ、本当に天国みたいですね。今の日本も格差が激しくて、その癖、公務員、特に国会議員の給料は高いですよー。」
と話す。
流太郎が右手を高く上げると下に降ろし、
「それを紅党党首の桜見党首が変えるらしい。日本の政治家なんか国民とか呼んで普通に生きている人々を見下しているだろう。特権階級とでも思っているみたいにな。それを選挙で選ぶから、こうなっているんだ!」
怒りを爆発させようとした流太郎、その時に室内の揺れは止まった。流太郎は出入り口のドアに行くと、ドアを開く。地下鉄の駅のホームのような光が室内に入って来た。マリムは流太郎の後ろに立ち、
「外に出ましょう。ビルの地下室の廊下とは違いますよ。」
マリムは何かを何故、知っているのか。
全員、外へ出た。確かに町田駅近くのビルの地下とは違う。マリムに似た男性が歩いてくると、
「ようこそ、ここは八王子市の高尾山近くにあるビルの地下です。実は町田のビルの所有主には数百億円の謝礼を払い、了解してもらっています。時さんも事前に知らされていたでしょう?」
と流太郎に念を押す。
流太郎は思い出すように、
「ええ、そういえば聞いていました。私の会社の部屋だけを家賃を下げる代わりに突然、移動する事もある、という話でした。何か分からなかったけど賃料が下がるのなら、それでいいと思っていましたが、しかし、こういう移動とは思いもよらない移動でしたね。一体、これは・・・?」
その辺りはビルの地下らしいが部屋があるのは、移動してきた流太郎達の部屋だけで白壁と白い床面の廊下がある。
マリムが流太郎の方を向くと、
「実は、このビルは我々の星が所有しています。ですので八王子の地下から町田の地下までトンネルを掘って、時さんが借りている地下室の底部の裏側にリニアモーターカーの底部にあるものを取り付けて、ここまで運べるようにしました。」
と説明した。流太郎は憤り、
「何か勝手じゃないですか。ま、部屋の賃料が下がっているから文句は・・・でも、我々も業務中ですよ。」
マリムはニヤとすると、
「ちょっと驚いて、もらいたかったのですよ。我々の星の科学および技術力の高さに、ね。業務の邪魔といっても静かに移動して、会話の妨げにも、ならなかったのではありませんか。」
流太郎は渋々、
「そういえば、そうです。そうだ、せっかくだから、こちらのビルを見学してもいいですか?」
マリムは鷹揚に、
「ええ。でも廊下と部屋だけで、部屋はロックされていますから入れませんし。それより屋上に行きましょう。」
三人は同時に、うなずく。
エレベーターで屋上に上がると、そこには中型とでもいうべき白い外観のUFOが、居座っていた。
マリムは三人に、
「私の星に来ませんか。無理には連れて行きません。。」
と誘う。
流太郎は貴美と釣次郎に、
「オレは乗ってみる。君達は、どうするかい?」
と二人の顔を見回すと、貴美は面白そうに、
「わたしも乗りますわ。」
と賛意を示し、同じように好奇の目の釣次郎も、
「僕も乗りますよ、時社長。」
と同意したのだった。
マリムに続いてUFOに乗り込んだ三人は半円形のソファをマリムが示し、
「そちらへ、おかけください。」
と教唆する。
飛び上がった感じもしないがUFOはビルの屋上から飛び上がったのだ。瞬間移動、という表現が適切だろう。
数分以内に見知らぬ惑星に到着した。外に出た四人。釣次郎は、
「ここはボッダが居る星だ!」
マリムは、
「みなさんを御案内します。地球での経済活動に興味を持たれたボッダが皆さんに会いたいそうです。」
UFOが到着したのは広い庭で枯山水のような趣きの場所も見えるが森林が半円形で建物を囲んでいる。日本の寺院というよりもインドの寺院に似ている。白い外観の建物の上部は流線形で先端は空に向けて尖っている。宝殊の形、涙滴、涙の形と形容できる。
 マリムが先導する玄関は開いていてボッダが四人を出迎えた。ボッダは背の高い筋肉質の男性で肩幅が広く、顔色は褐色で目は緑色だ。静寂に見えた顔は活火山のような動きのある容色に変化すると日本語で、
「みなさん、ようこそ!私がボッダです。」
と明るい声で話した。とても千歳の年齢には見えず、五十代にみえる外貌だ。白色の袈裟に似た服を身に纏い、身軽な動きで四人を手招きすると、
「さあ、中に入って歓談しましょう。」
開かれた扉の向こうは、広い空間でドアが多数並んでいる。その中の一つのドアを開けてボッダは四人を室内に入れた。
講義室のような部屋で黒板ではなく白いプラスチックの板があり、教壇のようなものの後ろにボッダは立ち、四人は最前列の椅子に座る。ボッダは、
「授業ではないので気楽にしてください。私は立って話をします。」
と丁寧な喋り方だ。釣次郎はボッダが予想していたよりも優しく、謙虚に見えた。緑色のボッダの瞳は静かな湖上のような趣きがあり、どこにも見ることの出来ない光がある。
それにしてもボッダが日本語を話すとは流太郎も思わなかった。ボッダは流太郎に、
「時さん、あなたは会社を作ったばかりだが、これから成功するだろう。」
と話したのだ。流太郎は横に座っているマリムを見ると、
「ボッダに話されたんですか?私の事を。」
「いいえ、話していませんよ。」
とマリムは答える。それではボッダの超能力か。流太郎は、
「ボッダ様。私の思考から読み取られたのでしょうか?」
と尋ねるとボッダは、
「君のアストラル体にある脳の部分を読めば分かる。何よりも君は事業を考えている。しかも思考というのは言語を元に行われる事が大半だからホスト・デリバリーを考えているのも分かる。色々とホストを募集すると、いいだろう。私も君のデリバリー・ホスト業を応援したい。」
と明快に答えた。貴美も釣次郎も驚きと賛美の目でボッダを仰ぎ見た。ボッダは貴美と釣次郎を見ると、
「城川さんと本池君、のアストラルの思念も私には読めるからね。貴方方の名前も分かるんだ。もちろん私も日本語を数十年は学習したから、あなた方の名前が分かるのだがね。」
とスラスラーンとの御言葉だった。
一層、驚く貴美と釣次郎。釣次郎は思わず、
「ボッダがデリバリーホストを応援してくださるなんて予想外でした。」
と目を四角にしたよう表情で云うと、ボッダは静顔小笑して、
「男女の性欲を否定しているのは地球に生まれたブッダだが、私はボッダだ。性欲を否定はしない、それどころか推奨する。禁欲をさせるのは、より性の活動に活力をもたらす為だ。私は二万人以上の女人を抱いた。というと抽象的だな。二万人以上と性交した。その多くは美女ばかりだったのだ。現在も妻は十人、愛人は五十人と昔より少ないが、毎日、性愛の相手に事欠く事はないよ。それも地球的に見て若い完熟した美人ばかりでね。もちろん、私の宗教で修行に励んでいる女性ばかりだ。釣次郎君が訪問していた、あの広い寺院内に私の妻と愛人は住んでいる。
諸君らも性欲を亢進させなさい。活力なき人間を作り出すのが地球の仏教だ。あの寺院では女性修行僧の方が多くて、禁欲の期間を満了した修行僧は寺院内で結婚する。あの寺院内には結婚した修行僧の男女が住む僧房がある。寺院内には産婦人科の病院はないが、日本の昔の産婆の資格を持った女性層がいるので、寺院の外に出て出産する必要は、ない。
という事で、なにか質問があるなら自由に挙手するように。」
と話すとボッダは長い髪を掻き揚げた。
流太郎は右手を上げる。ボッダはニンマリすると、
「時さん、どうぞ。質問しなさい。自衛隊の事か?」
図星、当たり彗星だった。流太郎は動揺を抑えると、
「そうです、さすがボッダ様。良く、お判りで。」
「それ以上は分からないから、質問を続けるように。」
「はい。こちらの星は他の惑星を攻めに行くような構想は、ないんですかねー。」