SF小説・未来の出来事31 試し読み

医師のセックスレス妻の丸代が指さす部分を見て、丸代と同じ全裸のヨガ講師、与儀は両手を腰に当てると、
「今は想像でなくて、現実に見ているし、少し前まで俺のモノを刺し込んでいたからな、そこに。君は、とても気持ちよさそうだったよ、丸代。」
と肌を重ねた男女の会話らしい遠慮のない響きで話した。丸代は頬を染めて「ええ、人生で一番、気持ちよかったわ。」
満足げな与儀は、
「次はガルーダーサナでセックスするのもいい。」
丸代は、そのポーズを思い出して、
「ワシのポーズね。片足で立って右手を上げる・・・。」
その時、広い室内の出入り口が開いて数名の男が這入り込んできた。
裸の与儀は彼らに、
「なんだ、君達は外からは入れないように鍵を掛けていたが。」
彼らは三人で横に並んでいる。肌の色は白いし金髪の男は真ん中で、
「鍵が役に立たない事を実証するために入ったんだ。強盗とかではないので安心されたし。」
と与儀と同じ180センチくらいの彼らは全員が灰色の背広の上下に身を包んでいる。
丸代は慌てて下着と服を着た。与儀は未だに全裸だ。謎の男たちの右にいる人物は与儀を見て、
「中々の股間じゃないか。そこの女性と楽しんでいたようで申し訳ない。でも、これから君達を連れていくのが俺たちの使命なんだ。」
と確信的に宣言する。与儀は混乱を余儀なくされてしまい、
「一体、何処に連れていくつもりだ?」
熊のように体格のいい左側の男は、
「屋上に上がれば分かる。服は着ないのか?」
「ああ、着るよ。どうせ抵抗しても、連れていくんだろう?」
真ん中の男は上着の内側からピストルに似たものを取り出すと、全裸の与儀に狙いを定めて、
「そうだ、抵抗すれば、この飛び道具でオタクを撃たないといけなくなるよ。」
と静かに云う。静かに脅される方が脅しは、より凄みを帯びるものだ。与儀はゾクゾクゾクッと背中の上を冷水が逆流していくような感覚がして急いで下着と服を身に着ける。真ん中の男はピストルを上着の中にしまうと、
「屋上へ案内しろ。オレ以外の二人もピストルを持っている。素手でもオタクを倒すことは容易な話だ。そこの奥さんも一緒に来るように。」
と少し震えて立っている月森丸代に誘いかける。三人の前を与儀と丸代は歩かされた。屋上に登る。平屋建ての住居なので二階はなく屋上だった。ドアノブを与儀が回すとロック解錠で、五人は屋上に出た。屋上の面積一杯に停車しているのは地球の乗り物ではなかったのだ。UFOを見るのは与儀も丸代も生まれて初めてだった。与儀と丸代は同じような事を考えている。(そうすると、この人たちは・・・)二人を見て真ん中の男は笑顔になると、
「俺たちを宇宙人だと思っているんだろう。アメリカ人だよ。NASA勤務の俺たちだ。月まで来てもらいたいんだ。」
と簡潔に話した。
与儀は幾分、落ち着いた。それは彼らが地球外生命体ではないと打ち明けたからだ。日本語も日本人と遜色を感じない明瞭な話し方なので、与儀は、
「おれだけ、ついて行こう。この女性は必要ないだろう?」
と丸代を指さして訊く。
リーダーらしい列の真ん中にいた男は、
「いや、その奥さんにも来てもらわないとイケナイよ。二人で来てもらわないと、な。目的を達成できない、俺たちのね。」
与儀は丸代に、
「という事らしいけど、どうだろう?丸代さん。」
丸代は躊躇せずに、
「行きますわ。夫は驚くだろうけど平気です、わたし。」

 円盤の内部に廊下があって、一つのドアをリーダーが開けると、そこはホテルのラウンジのような豪奢で贅沢な雰囲気のある部屋だった。リーダーは与儀に、
「腰かけたまえ。月まで揺れることなく飛んでいくよ。さあ、出発だ。Go to the moon!」
ゴートゥ、ザ・ムーンというリーダーの言葉通りに円盤は離陸したのだが、室内の与儀と丸代には円盤が垂直に飛翔したのには気が付かなかった。赤いソファが円形に並べてあって、アメリカ人と話した三人と与儀と丸代は並んで向かい合う。リーダーは、
「これから月の地球から見て裏側に行くよ。おれの名前はカッター、アメリカのテキサス生まれでね。四十五歳だ。」
と両手を広げて自己紹介した。さっきヨガ教室で一列に横に並んだ時と同じ配置で他の二人はソファに座っている。リーダーのカッターは右手を与儀達から見て左の男を示すと、その熊のような大男は、
「俺の名前はキラミン。ニューヨーク生まれさ。四十歳だ。」
カッターは右手で自分の左にいる男を示す、その男は理知的な顔立ち、
「俺の名前はトムトム。カリフォルニア州ロサンゼルス生まれダヨ。日本にも何回か来たな。親日だから日本語も、うまくなった。」
カッターは身を乗り出すと、
「君達の自己紹介も、どうぞ。」
というので与儀は、
「福岡市生まれで父親はインド人の与儀です。よろしく36。」
トムトムは、
「36てのは君の年齢か?よくわからない。」
与儀は気軽に、
「しくイコール36でしょ?」
トムトム「あー、なるほどね。ダダダン、トだじゃれだね、あはは。」
丸代は細々と、
「月森といいます。東京生まれです。医師の妻です。」
カッターは面白そうに、
「そ。なら君は不倫をしていたんだな、ああ?」
与儀は横から割り込む様に、
「ぼくらは真面目な交際ですよ。結婚する予定ですから。」
アメリカ人三人は感心して、代表するようにカッターは、
「それは、いいな。オメデトウ。月に、これから行くのはツキがいい、なーんて本当さ。」
丸代は打ち解けたように、
「わたし月森という名前です。月に森なんて、ありませんよね?」
トムトムは首を右、左にスイングすると、
「いや、あるんだよ。それがねー、だって月には人が住んでいるんだから。」
与儀と丸代は一方ならず、四方八方驚いて丸代は、
「えええっー。月に森が、あるーんですか、信じられないですわ。」
熊のようなキラミンは髭もじゃもじゃの顔を丸代に向けると、
「森も林も湖も、池も小川も大河もあるさ。俺たちは、今は月に住んでいるんだから。」
と説明口調で解説してくれた。与儀は好奇心で、
「この円盤はアメリカのモノなのですか?知りたいなあ。」
トムトムが答えて、
「知りたいとは尻に鯛を載せる事だ、なんてのはサテ置き、アメリカのモノではないね、この円盤は月の富裕層から借りているよ。」
丸代は目玉焼きが出来そうな眼をして、
「月の富裕層ってアメリカの人は既に月に住んでいるんですか、凄いわ。」
カッターが説明する、
「アメリカ人は月では富裕ではなく、それに誰も住んでいない、月にはね。これは月人の所有するもので、それを借りているという訳さ。」
月まで、そう時間が掛かる訳がない。着陸したと思えないのに、円盤は月に着陸していたのだ。それも地球から見えない月の裏側に、である。月の一日は地球の一月程度もある。であるから半月が太陽が出ていて、半月は夜となる。ルナティックとは狂気の意味があるが地球で十五日間も太陽が出ていて、残りは夜などでは、どういう精神状態になるのだろう。
生物は太陽に依存する。月の人間は半月は起きていて、半月は寝ているのだろうか。カッターは壁にある何かを見て、
「月の裏側に着いたよ。降りよう、円盤を。」
と皆を促した。
そこはビルの屋上のような場所だった。月にビルディングがある。屋上から眺めると都市でビルだらけ。空にはUFOが、あちこちに飛んでいる。月の重力も地球と、ほぼ同じだった。だったらアポロの月面着陸で軽く飛んでいる宇宙飛行士は何故、あんなに軽々と月面を飛べるのだろうか。
しばらく五人は屋上にいた。明るい太陽の下に月の裏側が五人の目に見える。与儀は歩くと、
「地球と同じような重力ですね。月は重力が少ないと教えられていましたが。」
とカッターに尋ねる。カッターは両手を左右に広げて、両肩をすくめると、
「月への最初の月面着陸の映像はフェイクだ。つまり贋物、作りものさ。映画監督のスタンリー・キューブリックが特撮の関与を認めているだろう。月には宇宙からの訪問者で一杯なんだよ。地球と同じ環境どころか地球よりも生命が住むのに良い環境は宇宙には、いくつでもあって、そういう星がいくつもあったとしても不思議ではない。この考えられない程に広大な宇宙空間に生命が地球だけにあり、地球人だけが二足歩行して思考する生物だと考える方が狂気なのでは、ないだろうか。
これは我々、アメリカ人の中にも科学と称する妄想を正しいとする人々が多い。銀河には何百億人の人類がいると私は聞いた。それは真実だと思うよ。」
それに第一、酸素があるのだ。酸素ボンベなど不要の月面である。ビルの屋上にも植物を植えている鉢が見受けられる。とすれば雨が降り、成長するので鉢植えにされている緑が並んでいる。カッターは、
「太陽系の惑星には全て酸素がある。そうでないと生命は存在できないからね。地球以外の惑星には生命は存在できないと主張しておいた方が都合がいいんだ。なぜならアメリカ以外の国は他の惑星への興味を失う。そしたらアメリカが一番乗りで他の惑星に乗り込める。そして領土も取れる算段なんだよ。これに所謂、妄想の科学で生活している大学教授らが賛同して月どころか太陽系の惑星は地球以外には生命は、いないなどと、のたまわっているんだ。あめりかとしては一番いい宣伝工作に無料で活動してくれる日本の物理学者の教授たちだ。日本の政治家は全部がアメリカの飼い犬さ。餌を貰うために何でもやるんだぜ。でもなあ、」
そこでカッターは一息つくと、
「とんでもないのが現れたよ、日本の政治に。」
と話すと、与儀と丸代を見る。与儀は、
「誰なんですか、その政治家は?」
「日本紅党党首の桜見世子。過激派共産主義の女党首でね。でも、オレ達はアメリカがどうなろうと構わない、というのは月で生活しているからね。地球に行く時には誰かを、ここに連れてこないとイケナイ。これは随分前からの習慣みたいになっているよ。そして地球に返さない場合もある。」
と静かに話すカッターの口調だが、与儀と丸代はゾッゾクゥーと背筋が寒くなる。このビルの屋上は月の地面の上に建っているので二人が逃げ出しても、ビル内も月の土地も全くの不案内なのは二人とも分かっている。カッターたちに随行するしか方法は、ないのだ。不安に怯える二人を見るとカッターは獲物を捕らえた人の目をして、
「君達は返すかもしれない。月で性活したらいい。地球人の性の活動を観察したい人たちもいるし、ぼくらは実は公務員みたいなものでね、そういう月の政府の部門に連れていってホテル暮らしを君達にしてもらい、どこにあるのか分からないカメラで撮影されているだけで生活は保障されるよ。どうかな?」
とカッターは二人の目を覗き込んだ。与儀は不承不承の顔だが、
「それしか、ないでしょう。ぼくらは、そうすると月で新婚生活ですね。」
と答えると、カッターは快速な態度で、
「ようし、決定だ。今から地球対策省の地球人生活観察庁に行こう。このビル内に実はあるんだ。だから下に降りれば、いいだけさ。エレベーターに乗ろう。屋上の端にはエレベーターがあった。地球のエレベーターと、そんなに違いはない。かなり下に降りたが何階かは分からない与儀と丸代だった。階数は月の数字で表記されているためだ。エレベーターを出るとカッターはトムトムとキラミンに、
「ここまでで、いい。トムトム、キラミン。今日の仕事は終わりだ。」と告げた。
トムトムはヒューッ、と口笛を吹くとキラミンに英語で、
「地下のバーに行こう。地球対策省のバーだから安く、飲めるぜ。」
と誘うと理知的なキラミンも楽しそうに、
「ああ、昼から酒が飲めるな。どうせ半月は昼だけど。」
と英語で答えたので与儀と丸代には二人の対話の意味が分からなかった。
 カッターが地球人生活観察庁の部屋のドアを開けると、そこは受付のような場所で金髪の男性が座っていた。一般の受付口のようだ。カッターと受付の男性の会話は月の言語で行なわれているので与儀と丸代には理解不能だ。カッターとの話を了解した受付の男性は笑顔で先へ進む様に手で示す。受付の右横には廊下があり、それを三人は歩いていくと又、いくつものドアが廊下の左右に並んでいて、カッターを追いかけるように与儀と丸代は歩いた。
カッターは一つのドアの前で立ち止まると、
「ここが日本人研究課なんだ。入ろう。」
とドアを開ける。
中に入ると数人の職員が見えたが、対応してくれたのはカウンターに座っている中年男性で、
「ようこそ。お待ちしていました。」
と浅黒い顔の男は日本語で話した。
カッターは二人を紹介する。
「日本から来た与儀さんと月森さんだ。月での性活がしたいらしい。」
受付の男は座ったまま、
「ここでは職員全てが日本語を習得しています。お気軽に話してください。右に進んで最初のドアが日本人応対室となっています。」
又しても右手に進む三人だ。
最初のドアの前に立ち、カッターが待っていると自動でドアが開いた。三人が入った部屋は広くて応接室のような場所に男の職員が歩いてきて、
「ようこそ。そこのソファに腰かけてください。」
と明確な日本語で話し、自分も三人に対面する形で座る。北欧人に似た容貌の男性だ。白さは北欧人より白い肌の色、顔の色である。職員は笑顔で、
「わたくしたち職員は全員が地球の日本に行き、語学も学びました。」
と話す。与儀は疑問に感じた事を聞く。
「どのように日本に滞在したのですか。ホテル?民泊、それとも・・?」
職員は悠然と、
「日本の東京郊外の高尾山の地下に我々が宿泊できる施設があります。自家発電の装置を据え付けていてオール電化で風呂も沸かせます。電子レンジや冷蔵庫はネット通販で買って入り口から少し離れた場所で受け取り、車で施設に運び込みます。その離れた場所のマンションは一階を借りていますけどね。水道は地下水を導き入れているので天然のものです。水道代を払う事も、ありません。
その施設は三十人は泊まれます。施設の管理者は常駐していますし、日本の紙幣や硬貨も持っているので時々、地下から出て東京だけでなく北海道から沖縄まで旅行もしますよ。パスポートは要りませんから(笑)。」
と懇切丁寧、次節は不明に説明してくれた。その室内の温度は20度くらいだろうか。
与儀は納得して、
「語学学校に行くわけですか、日本語習得のために。」
と再度、質問すると職員は、
「それでは色々と面倒ですね。近くに借りているマンションまで個人教師として来てもらうのです。朝から夕方まで教えてもらえますし、入学手続きも要りません。ネットで募集したら、すぐに面接に来ますよ。その教師も学校で教えるよりも高額な報酬を貰えるのでね。」
と即答した。なるほど彼ら月の人達は既に日本にも来ているだけでなく宿泊施設も東京郊外に持っているらしい。でも与儀には、まだ疑問がある。それで与儀は、
「そのー、語学教師を雇える資金は何処から来るのですか?」
と訊くと職員は、
「当然なる疑問ですね。実は月にはダイアモンドが豊富に採れる場所があります。月政府で管理している場所もありますから、そのダイアモンドを地球に持ち込んで換金するのですよ。この活動のための施設は地球の全世界的な場所に置いていますから、日本には逆に云うと月のダイアモンドの換金施設は、ないわけですが海外から日本の施設に送金してもらいます。タックスフリーな島とかにも拠点がありますし、日本に税金なんか払わなくていいようにね。」
と魅力的に職員は話してくれた。
与儀は理解して、
「分かりました、話は別ですがヨガとか興味ありますか?」
職員は、
「うーん、それはインドのものでしょう。我々は日本にしか興味を持ちませんので。」
と答えた。与儀は小落胆して、
「私はインド人の父親を持つハーフです。純粋な日本人では、ないんですよ。」
職員は顔色を変更せずに、
「日本に住んでいれば大丈夫です。日本国籍ですか?」
与儀は、
「日本国籍で日本生まれです。インドには修行のために五年は滞在しました。」
職員は楽しそうに、
「それなら猶、興味深いですね。我々は純粋な日本人ばかりを研究していないのですよ。そもそも純粋な日本人なんて、いないんです。縄文人と弥生人の混血ですからね、古い日本人も。四国には古くからユダヤ人が住んでいますよ。キリストの墓も青森県にあります。これはキリストの遺体を埋めた墓と考えるよりも、キリストを慕うユダヤ人が建立したと思われます。とすると青森県にもユダヤ人が辿り着いているという事実がありますね。だから青森県の人の中にはユダヤ人の血が混じっている人も、いるはずですよ。」
 月の人間が、このような事実を知っていて一般の日本人が知らないというのも変な話ではあるが、大体に於いて日本の学者というものは常識と言われる範疇の外には出たがらないし学説も発表しない。
一般の日本人は読書をしない程度は隣国の中国よりも遥かに下なのだ。士農工商の時代が長く続いたので、仕方のない事ではあるだろう。だって士族以外は読書をしないのも自由だったからだ。
 インド人の血を持つ与儀も興味の中心はヨガであったので、キリストの墓が青森にあるのは知らなかった。それで与儀は、
「キリストの墓が青森に、ですか。知りませんでした。私にはキリストより、ババジやヨガナンダの方が救世主なのです。」
というと月の職員は、
「ババジ?ヨガナンダ?知りません、私は。ここは月政府の日本人研究課で、わたしは課長のドミリンダ・ケネフと言います。申し遅れましたが、ここでの会話は録音されていますし、映像として記録されています。」
与儀と丸代は無言で、うなずいた。いつの間にかカッターは、その場から姿を消していた。横にいる人間には注意を払わないものだ。しかもソファを距離を置いて座っていたカッターだった。与儀が横を見るとカッターがいないのでドミリンダ・ケネフに顔を向け、
「カッターさんが居なくなりました。」
ケネフは動ぜずに、
「あの人の役目は終わったのです。貴方方を、ここに連れてくるのが目的でしたから。」
丸代は唐突に、
「アメリカ人なんですか、あの人は?」
と質疑するとケネフは含み笑いをして、
「どうして、どうして。あの人たちも月の住民です。」
と話したのだ。
カッターはアメリカ人ではなかった。とするとトムトムやキラミンも、そうなのだろう。二人は騙されていたのだ。与儀は、
「でも何故、アメリカ人なんて言ったんでしょう、カッターさんは。」
ケネフは、
「あなた方を不安がらせないためですよ、きっとね。」
と話すと両手を前に出して組み、テーブルの上に置くと、
「月の生活では昼が半月くらいで夜が半月ほど、ですが、我々も地球人と同じ人間ですから半月、起きて、半月、寝続ける事なんてありません。我々の先祖は地球に似た環境の星から月に飛来して住み続けています。一晩中、太陽が出ていても部屋の中を暗くする工夫や、一日中、夜の場合も通勤、通学が出来る環境づくりをしています。だから貴方方も半月起きて、半月寝なくてもいいんです。その点は安心していてください。」
と念を押すようにケネフは話した。続けてケネフは、
「何か聞いておきたい事があれば、遠慮なく聞いて下さい。」
と両手を組んだまま云った。
与儀は少し身を乗り出して、
「僕らは地球に帰れるのですか?」
ケネフは思念顔で、
「うーん、どうでしょうか、それについては今は何とも言えない。ただし地球の日本よりは住みよいのが月です。というか月の裏側ですね、地球から見たら。完全なる共産主義ですからね、月の裏側は。あなた方は性の活動を我々に見せてくれれば、いい。なにも我々の目の前で、やってもらわなくていい。それだけで月で暮らせる月の貨幣、紙幣を報酬として上げるだけでなく生涯年金も積み立てられます。老後は地球の日本よりも高額な年金を受けられます。それでも地球の日本に帰りたいですか?」
という驚きの話をした。
月の裏側は共産主義の国で年金は地球の日本よりも高いという。それなら、あんなに貧富の差、それは過去の政治が作り出してきたものだが、そんな環境で生きていかなくてもいいのだ。

不適切な関係 男女

不適切な関係 男女について、例えば、あるモノから始まる不倫モノ
の構想が泉のように湧いてきました。

それを無料で書いて、どうするんだ、という訳ですが。

SF小説・未来の出来事30 試し読み

<この星ではラクダに似た動物には乗れないのか>、と釣次郎は嘆息した。マリムは「明日、ボッダに頼めば乗れるかもしれません。ご期待下さいね。」と励ましてくれる。(そうなのか!)と期待する釣次郎だった。「期待しますよ、マリムさん。ラクディーって車の名前みたいですね。」と釣次郎。マリムは歩きながら「実際にラクディーを乗用車のように使っている地方も、この星にはあるんですよ。地球のエジプトに、よく似た地域もありますから、そこではラクディーが自動車の代わりになっています。地球のラクダの二倍の体ですからラクディーは何人もの人が乗れるんですよ。それでも飼いならすのは大変です。日本に似ている、この地域ではボッダの寺院くらいがラクディーを飼育しています。」と解説してくれたマリムは遠方を眺めつつ、「ピラミッドまで遠いので、今日は行くのを止めましょう。」と話すと、車道に近い歩道に脚の行き先を変えた。
 車も通っていないのに広い車道があるのも寺院としては珍しい。そもそも、こんなに車道が寺域にある寺院など地球では皆無である。向こうの方から車輪のない自動車が走ってきた。マリムはヒッチハイクを頼む様に右手の親指を、その自動車に向けた。
 反重力で走行していた自動車は二人のいる歩道に接近して停車した。運転席には剃髪した僧侶が乗っていた。運転席の窓ガラスを降ろすとマリムにハンドルを握ったまま、「道に迷ったのかい?後ろに乗るといい。」と話し、後部座席のドアを開けた。
二人は素早く、その車の後部に乗り込むとドアがタトンと閉まった。運転手がバックミラーを見ながら、
「何処に行きたいんだ?君達は。」
と訊くのでマリムは、
「宿舎に戻りたいんです、外来観光客が泊れる宿舎です。」
運転手は車を発進させつつ、
「ああ、すぐに戻れるよ。でも門限は、まだまだ。だから夕暮れまでは見れる場所もあるな。」
と話した。マリムは、
「見る所は余りにも多いでしょう?何処に行っていいのか、僕は未だに僧院内の見れる場所を把握していません。」
運転している僧侶は、
「それは別に可笑しなことではないさ。我々だって慣れるのに一年は、かかった。修行のために入門して五十年もして、この仕事をしているよ。寺から給料を貰う訳ではないし、朝の十時から夕方の四時まで寺院内を車で回って迷子の人達を乗せたりしている。四時で終わっても、その後は修行が平日は待っているさ。」
それでは、この僧侶の年齢は?マリムは、
「運転手、いや、お坊様の歳は何歳ですか?」
「おう、七十だよ。そう見えないかね?」
釣次郎が後ろから見ても、その僧侶は五十代にしか見えなかった。マリムは反論するかの如く、
「全然、七十歳には見えませんよ。二十歳で出家ですか。」
窓の外の景色は砂漠のように緑が無くなっている。運転手は、
「そうだよ。実家が寺院だからね。でも跡取りは兄貴がいるし、私は当本山に住み続けるしかないな。ここに居ると結婚できないけどな。」
と話してくれる。寺の事情としては地球の日本と似ているようだ。それにしても三人の目は前方に見えるピラミッドやスフィンクスが近づいてくるのを見ていた・・・。

 地球の話に戻ろう。左翼過激派の党首である桜見世子(さくらみ・よこ)を追っている時・流太郎は合同会社の部下の本池釣次郎と連絡が取れなくなり慌てていた。スマートフォンでも連絡が取れない。新宿のマンションに訪ねっていったが留守なのだ。行先も告げずに消えるなんて、そういう人間ではないと流太郎は思っていただけに巨大な不安の雲が入道雲のように彼の心を占めていった。
(もしかして何者かに連れ去られて、何処かに監禁されているとかではないか?有り得るとしたら中国共産党の公安かスパイに誘拐されたんだな。公安の指示で動くホストに感づかれたのだろう。スマートフォンも没収されて、もしかしたら拷問されているかもしれない。)と考えると流太郎は焦り始める。
流太郎は情報第三部の元海一佐にスマートフォンで連絡すると、
「はい、元海です。・・・何、本池が連絡が取れなくなった?困った事だが、こちらとしては何もしてあげられないよ。君達は正規の自衛隊員ではないし、自衛隊員でも行方不明者を追う事はないからね。」
「そんな・・・誘拐されて拷問されているかも、しれませんよ、本池は。」
「それは、ないと思う。中国の公安などが日本でする事では、ないからな。それに彼は独自にホストクラブの雇われ店長をしていただろう?だから彼の店に中国公安関係のホストがいた、とは報告は来ていない。君の方は潜入しているがね?過激左翼の桜見世子なんて自衛隊には、どうでもいい存在だからな。」
「そうでしたね。でも中国の工作員も別に危険ではないみたいですが。」
「そうだな。でも一応、見張っていないとな。仕事だからな、我々の。」
「でも軍事には関係ないような工作員ですよ。」
「それは、それ、軍事に関係ないから工作員なんだよ。」
「本池は見殺しにするのですか。」
「見殺しなんて言葉の表現は、やめたまえ。我々としては手の打ちようがない。もしかして他の惑星に連れられて行っているのなら、日本国に限らず宇宙では最先端のアメリカに頼んでも、まず無理だ。
そうじゃないのかね?時流太郎君。」
流太郎はハタリと気づいたのだ。自分にも、そういう経験、地球外に連れられて行った事がある。本池が連れ去られることは、ないとは断言できない筈だ。それにしても元海一佐の回答は、いい加減なもののような気もする。それで流太郎は、
「元海一佐は地球外に行った経験は、おありですか?」
「ないよ。ごく普通だろう、その方が。」
「それは普遍的にして一般的ですよ。」
「そうだ、な・・あ、ちょっと待て。大元帥からの電話だ。」
と通話は保留にされた。
元海一佐の部屋には大型のスクリーンがあり、それが稼働したのだ。そこに軍田大元帥の顔が大写しに映った。向こうからも元海一佐の部屋の中が見えるらしい。大元帥は、
「この度、しばらく中国人の工作員と思われる在日人の監視を規模を縮小する事にした。それで時と本池との契約を一旦、解除する。」
と呑気な顔で命令した。元海一佐は椅子の上で気を付けをすると、
「分かりました。通告しておきます。」
と素早く答えると大元帥は力なく、
「予算が削られてね。なんと極左政党が力を増大させてきている。日本紅党が議席を増しつつあるからのようだが。我々としては仕方がないね、外部委託は辞めなければ、ならない。」
「日本紅党・・・。」
「そうだ。桜見という女はカリスマらしい。BIの拡大のためには、やむを得ないだろう・・・。」
「BI、ベーシックインカムの事ですか。」
「ああ、そうだ。世界的にも平和が続くし、日本紅党が中国との政治的のみならず経済的にも軍事的にも連携を目指している。対中国への軍事的警戒は不必要になるかもしれん。日本紅党が中国との安全保障条約を結ぶという政策を掲げ出した。朝鮮民国と中国との国境に自衛隊の基地を置くという構想だ。その他、色々と発展するらしい。」
「ううん、それでは自衛隊の予算を増やす必要は、なくなりますね。」
「一応、そうだろう。でも、ひとまず、これでいい。平和な時代に自衛隊なんて災害派遣されて人命救助しか意味がないよ。本当は殺人集団なのだが。それは遠い昔に終わったんだ。時と本池にも我々に煩わされずに自由に生きてもらいたい。それでは。」
スクリーンは白い画面になった。
流太郎の耳に保留の音楽が消えて、
「やあ、待たせたな。時君、しばらくは自衛隊からの仕事は無くなるよ。もし将来的に頼む事があれば、又、連絡しよう。」
流太郎は顔色を変えて、
「突然ですね。なぜ、でしょうか。」
「うん、理由は話せないがね。ま、予算が減ったらしいよ。では、な。」
通話がプツー、と切れた。自衛隊情報第三部からの支援金は終わったのだ。流太郎は東京都町田市原町田のマンションに今、いる。窓の外には駅前の風景、外国人もコロナウイルスの再燃で日本に入国できず、新たな中国人に限らず何処の国からも訪問されないので外国人の影は少なくなったのだ。
町田市は観光地でもないから宿泊業界の打撃は少ない。しかし都心では姿を消したホテルも多い。それによる経済的な後退の波及を流太郎は感じないでは、いられないのだ。
例えば東京都内の電車の本数や鉄道関係の職員の大幅な切り捨てはハローワークへの人の殺到を産んでいる。航空業界も似た現象なのである。風俗業も衰退のやむなきに至り、失業した女性の行き場も、その道は閉ざされたのだ。流太郎の仕事は新宿のホストクラブで働く事だけになった。朝から昼までホストの仕事は、ない。ホストの仕事は副業として、やってもいい。それに例のコロナウイルス騒ぎでの自粛要請が出てホストの仕事も減っている。
元の古巣である株式会社夢春の籾山社長にスマートフォンで電話した流太郎は秋の朝の光を顔に浴びながら、「おはようございます。社長、時です。」「やあ、珍しくも久しぶりだな。時、時に何の話だ?え?あ?」ある意味で無関心さが現れる籾山社長の返答だ。流太郎は、「実は仕事が巧くいかなくなっていて、社長から仕事をいただければと思います。」
「あー、そうかー。どこも上手くいかない世相だな。今、何処に居るんだ?」「東京ですよ。住居は町田市の駅近くです。」
「ほう、いい営業があるんだ。それはサイバーセキュリティの売り込みをしてもらいたい。相手は日本紅党の党首、桜見世子というんだがね、これが中々の怪人物で電話とメールのセールスを俺がしたら、桜見さんは会って話を聞くというんだ。で、俺が直接東京に行く予定だったけどね、今、福岡の明太子の大手からサイトのサイバーセキュリティを頼まれてね。日本紅党よりも金がワンサカある企業だよ、こっちを優先したいから丁度、よかった。時、俺の代わりに日本紅党の党首の桜見様と会って交渉してくれないか。」
と機嫌のいい籾山社長の返事だった。
流太郎にしても桜見世子は会って話もしている。三空冬樹と名乗っていたと思う。それだけに、この営業は進めやすいだろう。それで、
「やりますよ。社長、是非、やらせてください、その仕事を。」
と熱を帯びて話す流太郎に籾山は、
「そうか、よかった。SMSで俺のスマートフォンに今の連絡先とか住所とか様々を送ってくれ。」
との事だった。
桜見世子にはメールを出した。
サイバーセキュリティの件で御座います
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 以前、お会いしました三空冬樹です。株式会社夢春の籾山の代理で、ご商談に参ります。つきましては御予定など、お知らせくださいませ。
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(すぐに返信は来ないだろうな)と思う流太郎であった。確かに、その通りで三時間後に流太郎のスマートフォンに紅党党首の桜見世子から返信メールが届いたのだ!
 お久しぶりです 桜見です
 確かに籾山さんと交渉予定でしたサイバーセキュリティの件で三空さんに、お越しねがいたいです。三空さんは確かホストクラブで、お会いしたような気がしますが。でも問題ありません。ホストは副業でも、やれるしね。
本日の午後三時に渋谷区代々木の日本紅党本部に来てください。
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という内容だった。
桜見世子は自分を覚えていたのだ。それで籾山に電話をすると、
「なに、どうした時。桜見さんの所に行くんだろ??え??」
「ええ、メールで連絡して交渉に行けるようになりました。今日の午後三時です。でも、前に桜見さんとはホストとして会っています。僕、新宿のホストクラブで働いていましたから。」
「おう、そうか。それが何か問題でも、あるのか。」
「三空冬樹と名乗っていましてね。そこを籾山社長にも知って戴かないと思いまして、はい。」
「おー三空冬樹というホストだな。分かった、話は合わせておこう。うちは副業は自由という事に、すればいいし。でも東京の新宿でホストをしていたなんて知らなかったなあ、オレは。」
「勿論ですよ。僕は社長に連絡もしていませんし、ご存じある訳がなでしょう。」
「うーむ。ま、ホストとしての経験は女性顧客との交渉に役立つだろう。紅党はクラウドサービスなんかを利用していないからウチの、お得意さんに出来るはずだ。あまりITの事は知らない女性らしいので、その辺も心得た上で話しを進めるといい。」
「はい、そうします。紅党のサイトは今のところ単純なものです。外部からの侵入は容易に行えるようですね。」
「そうオレも思う。党首のブログも乗っ取られて書き変えられるだろうね。今の与党の共和党も狙っているかもしれないなあ。」
「自衛隊出身者が多数の共和党だから実行しかねませんね。」
流太郎も自衛隊情報第三部の外部要員として紅党党首の桜見に会ったわけであるが。籾山の顔はスマートフォンの画面に映っているし、流太郎の顔も籾山のスマートフォンに映じている。手で耳に当てないで胸の前あたりに画面を構えて、画面の顔を見ながら話が出来る。その場合、高性能の集音器に切り替わるので従来の携帯通話とは違った姿勢になるのだ。顔を見ながらのスマホ通話は相手を良く確認できるものだ。
籾山の顔も朗らかで流太郎は安心した。この通話形式は料金も高くなるので相手との同意は必要だ。日本紅党党首の桜見も、この相手の顔を見ながら話すことの出来るスマートフォンを持っているはずだが、それは推測に今のところは過ぎない。画面の籾山は右手を上げると、
「じゃあ、よろしく頼むよ。福岡にも帰って来いよ、新しいラーメン屋が開店しているからな、では。」
通話は、そこで切れる。
 丁度、正午になった。流太郎は東京の古道具屋で珍しい時計を見つけたので買って部屋に飾っている。その古道具屋には行ったことが無いがインターネットのショップサイトで見て注文したのだ。それは大きな縦長の振り子時計なのだが、振り子が何と男性器の形をしている。陰茎の方は前に垂れ下がった形だが、包皮も向けて亀頭の形も露わなのだ。振り子時計の振り子は通常はガラスの中に入っているものが多い。が、流太郎の部屋にある振り子時計の振り子の部分、それは男性器の形なのだがガラスに収納されていない。振り子として揺れる二つの睾丸も見ものである。それよりも特筆すべきなのは正時になると、例えば正午とかに時計の長針が位置すると陰茎に似た部分が勃起するのだ。
十分間経過すると、その部分は元に戻りダラリと下に垂れ下がる。どうも限定生産の希少な柱時計、ボンボン時計などと呼ばれてきたものである。その柱時計は高さが一メートル七十センチはあるし、陰茎に似た部分の長さは勃起時に二十センチになる。
ボンヤリと商談について思いを馳せていた流太郎は、ふと我に戻り目の前の柱時計を見ると勃起は収まっていた。時計の針は十二時十一分だ。(外に出るか、まだ早いとは思うけど)と流太郎は思い、玄関を出たのだった。
町田駅前の賑やかな歩道にはゲイの夫婦が自分たちの子供を連れて歩いていた。信じられない話だが流太郎はネット記事で、その実態を知っていたので左程、驚かない。
ゲイの夫婦のどちらかは人工子宮を肛門内に取り付ける。精子銀行は昔からあるが今は卵子銀行も存在する。そこで代金を払って手に入れた卵子を医師に肛門内に入れてもらう。
ゲイ夫婦は遅くとも、その日のうちに性交して夫は妻の尻の中に射精する。翌日には妻は産婦人科を訪れ受精の有無を調べてもらう。産婦人科医は、
「奥さん、おめでとう。奥さんの子宮にある卵子は受精しています。」
と祝福を述べる。ショートカットだが女性の短い髪ほどに髪を伸ばした男だった妻は両手を胸の前で組み合わせて、
「嬉しいわ。お医者様、見つけてくれて有難う。」
と話すと喜びの涙さえ目に浮かべている。産婦人科医は謙遜して、
「いえいえ、私の技術ではありませんよ。大自然の云うなれば神の御手により受精されたのですよ、奥さんは。すぐに受精卵は取り出して試験管の中に保存しなければ、なりません。」
と提言する。男だった人妻は残念そうに、
「わたしの尻の中で成長していくのは、まだ無理なんですね。先生?」
医者は憐憫の色を顔に浮かべると、
「もう少ししたら人工膣も開発されて、その中に人工子宮を埋め込む技術が開発されますよ、そうすれば自分の胎内で受精卵が生育して自分の膣から出産が可能になります。でも今はまだ無理な相談です。さあ奥さん、あそこのベッドで手術しますから、ベッドで俯せになって尻を高く上げてください。」
と指示する。
その通りに男だった妻は全裸になりベッドに、うつぶせになると大きな尻を高く突きあげて肛門の中から医師が受精卵を取り出すのを待つ。巨乳も下へ垂れ下がっている。股間には性転換手術をしていない小さな陰茎も垂れ下がっている。睾丸も小さすぎてパっと見ては見落としそうな大きさだ。もちろん陰茎は包茎だが剥ける必要は、ないだろう。女性の陰核、クリトリスにしては大きい。
産婦人科医は、その男だった、今でも小さなモノはついている妻の高く突き上げられた尻の穴から特別なピンセットで受精卵を取り出した。それを試験管の中に素早く保存する。試験管内は女性の子宮内と同じ環境を作り出している。産婦人科医は安堵した顔で、
「奥さん、成功だ。貴方方の性交は成功したんだ。これで元気な子供が生まれるよ。」
尻を高く突き上げたままにしていた夫人は尻を下げると、
「ありがとうございます、先生。後は代理母探しですか?」
医師は、それを聞いて揉み手をしながら、
「代理母の方が費用的に安くなるのだけどね、今の医学では女性の胎内に相当する巨大なフラスコがある。そこで生育する胎児は代理母よりも完璧な栄養補給を受けるんだ。へその緒が出てきたら、それを繋げてチューブの中から胎児に栄養が送られる。代理母の拡張した膣口から生まれる必要もないさ。産みの苦しみとはいうが、もしかしたら生まれてくる胎児も苦しいのかもしれないね。いくらか頭部を胎児は母親の膣口で締め付けられるしね。」
と驚異的な話をする。それを聞いた男だった夫人は、
「すごーい。でも、それは神の領域に踏み込んでいませんか、もしかして?」
揉み手を止めた医師は真顔で、
「神の領域ではなくて女性の膣内の領域だよ、子宮内のね。神様が子供を産む訳では、ないよな。」
「そういう意味ではないというか、先生、子供は女性の胎内から生まれてくるように神様が作られたのでは?という意味です。」
「あー。そんな事?何事も自然のままがいいのなら癌患者は医師を頼らなくてもいいだろう。その病気以外だって様々なものがあるよ。それらは人為的に医術で治せるさ。奥さんの出産願望だって普通の方法では子供はできない。それを貴女の尻の中で射精してもらって、その旦那の精液を受精させるのは人為的だよ。でも、それが上手くいくから貴女にも子供が授かるんだよ。医学の勝利だと思わないかね?奥さん?え?そうだろう!」
男だった夫人はベッドの上に起き上がって医師を向いて座った。白い肌に女の美巨乳が揺れた。彼女は両膝を閉じているので極小のペニスは隠れて股間の陰毛は逆三角形をしているために女の下腹部のように見える。脇腹も窪んでいるからクビレがいい、処女のような顔をしているのも処女膜を貫通されないからだろう。
処女膜を回復する手術を女性が受けたとしても過去に処女膜を貫通されたという記憶までは消し去れない。それで手術で処女膜を再生しても心理的には処女に戻れないのだ。
妙齢の処女の美女が全裸でベッドに座り、自分を見ているという状況のように医師はフト、思い込み少し勃起したが自制してみる。彼女は、
「あら?先生の股間が少し膨らみましたよ。わたしの裸に感じての勃起じゃないのかしら?」
医師は慌てて右手を横に振ると、
「男は別に女性の裸を見なくても勃起する事は、ありますよ。わたしは産婦人科医です。女性の裸には慣れていますから。」
とはいえ産婦人科に処女は来ることはない。処女を証明するために来る場合もあるとはいえ、それは極、稀で、その産婦人科には未だに処女が来院した事は皆無だった。夫人は悪戯っぽく微笑むと、
「代理母に頼むと安上がりになるけど、要は金を持っているか、いないかというのが判断の基準になりますよね。」

SF小説・未来の出来事29 他の惑星に移住? 試し読み

メゾモント閣下は顔色を変えて、「うむっ。」と声を上げるとメリリアンの右手の平と重ねている自分の右手を震わせた。射精したようなのだ、メゾモント閣下は。閣下が右手をメリリアンの右手から離すと、その右手の平に突出していた勃起した男根は消えていたし、メリリアンの右手の平の女性器も見えない。二人の手の平は何ら不思議なものでは、なくなっていた。メゾモント閣下は釣次郎に、
「我々が小柄でありながら社会に力を持っているのは、この手の平から性器を出せる能力があるからです。」
と話すと、感嘆の眼差しのマリムに、
「どうだ、マリム。おまえには手の平で性交は出来まい。」
マリムは気を付けの姿勢で、
「出来ません。私は鼻を伸ばして男根化できますが、手の平から勃起したモノを出す力は、ありません。」
メゾモント閣下は身長140センチの体を誇らしげに反らすと、
「であるからして我々は人口が多い、背の高い連中よりは、な。例えば公衆が乗っている乗り物の中でも我々は手の平を合わせてセックス出来るのだ。しかも避妊具を付けないから妊娠も増える。メリリアンも妊娠したら私の妻にする予定だ。秘書で採用するのは公務中でも手の平で性交できるからなんだ。それは秘書に応募する女子も理解したうえで面接に来る。な?そうだろう、メリリアン。」
 身長130センチにして張り出した尻と胸のメリリアンは顔を赤らめると、
「ええ、閣下。閣下と手の平を合わせて交われるのを思っていました。母も秘書から妻に、なったのです。」
恐るべし、異星の上流階級の人々だ。メゾモント閣下はズボンのポケットからリモコンを取り出すと、机の上に置いて、
「これは未来投影機というものです。地球のアメリカの自由の女神像を見てみましょう。」
壁がスクリーンに変わった。そこに映し出された映像はアメリカの海岸近くにある有名な自由の女神像だ。が、しかし・・・自由の女神が右手に掲げているのは聖火のようなものではなく、なんと、それは中国の国旗だった!
メゾモント閣下はリモコンを止めた。そして釣次郎に、
「今、見たものは誰にも言わないでください。特に貴方は・・・。」
そういうとメゾモント閣下は、さっき釣次郎に向けて光を放った機器を見ると、
「自衛隊に関係しているようですね。自衛隊の方にも話さないでください。」
と念を強く押す。釣次郎は自分が自衛隊に関わっていることを見破れたのに驚いて、
「ええ、それは話しません。でも、何故でしょうか。」
「それは未来については話さない方が、いいからです。これをアメリカが知ったら、どうなります?今以上に中国を警戒するでしょう。それは地球の国際的に見ても、よくないのでは、ないかな。」
とメゾモント閣下は、のたまわった。続いて、
「君のための個室も、あるから、そこへ行って休んでいいよ。マリム、連れていきなさい、釣次郎さんを。それから、これは電子書籍を読むためのもの。」
薄いタブレット型の機器を釣次郎に手渡すメゾモント閣下であった。
 長い廊下をマリムに連れられて歩いている釣次郎は、ここが空飛ぶ円盤の内部だとは思えなかった。地球の乗り物は多かれ少なかれ、揺れが来るものだ。だが、ここは静止している建物の内部のようなのだ。
個室に入った釣次郎。ベッドが目に付いたので、すぐに寝そべってみた。手にしている電子書籍リーダーを寝転んでみると、スイッチも見当たらないし操作方法が分からない。(これの扱い方を聞いておけば、よかった。)地球の電子書籍リーダーと同じようなものだろうと思っていたのだ。暗い画面を眺めているとパッと電源が入った。日本語で表示されているので画面を指で押していけば、いい。
「変顔」
という小説がある。それを指で押して釣次郎は読み始めた。

 朝、目が覚めると自分が何か違った顔になっているのを感じた。おれはベッドから起きて洗面所の鏡の処へ行き、自分の顔を見ると(ああ、これでは外に出られない)と自分で嘆息したものだ。
自分の顔とか頭部が男性器になっている。頭部の天辺から亀頭が突き出しているが、それは頭の円周の長さに等しく、河童の頭を思わせる。それと両方の頬っぺたが袋のように垂れ下がり、それは巨大な睾丸のようだ。おれは手で、両方の頬を触ったが、まるで、それは金玉だったのだ。つまり、俺の頭部は巨大な男性器が含まれてしまったのである。
外には出れないが今日は休みの日、おれは女友達にスマートフォンで電話した。
「よお、滝子。今から遊びに来ないか。おれを見て、きっと、びっくり、しゃっくりもするだろうから。」
滝子はアパレル関係、つまり衣料品の店で働いている。その店はネット通販も、やっていて、そっちの方が売り上げも増えているらしい。で滝子の声が、
「あなたを見て驚くんですって?整形手術でも、したの?」
と高音の音程で話してくる。
「いや、手術は、してないよ。それに、こんな整形の手術を受けたい人は、いないだろう。」
「あー、そうなの?なんか気になるわ。遊びに行くね、今から。」
「ああ、待ってるぜ、滝子。」
崖野滝子はオレのマンションの部屋から歩いて五分の所に住んでいる。やっぱり女は近くの方が、いい。俺の方から滝子のマンションの部屋に行ってオマンコする事も、あるし。
滝子は五分で、やってきた。カップラーメンを長く放置するような時間だ。実際に滝子とオレの分のカップラーメンに、お湯を入れていたのだ。それで滝子が玄関を開けた時は、カップラーメンは伸びかかる頃だった。滝子は玄関で俺の顔を見ると、
「きゃぁっ。何の冗談なの、それ?頭から何か、かぶっているんでしょ、それ。」
と嘲笑うような目で俺を見る。俺は、
「まあまあ。上がってくれよ、滝子。」
「うん、そうするわ。」
玄関はオートロックだ。自動で施錠する。おれは両方の頬の金玉を揺らせながら、椅子のあるテーブルに滝子を導く。そのテーブルの上にはカップラーメンが二つ、置いてある。湯気が立っている蓋をしたままのカップラーメンが。
「座れよ、滝子。」
「ええ、座るわ。おいしそうな匂いがするわね、カップラーメン。」
「ああ、食べていいよ。俺も食べるからさ、ふたは自分で取れよ。」
滝子は椅子に座ってカップラーメンの蓋を取った。割りばしも置いておいたので彼女は割りばしをペシ、と折ると又、俺の顔を見て、
「本当は何か、かぶっているんじゃないの?」
「いや、何もかぶっていないさ。朝起きたら、こんな顔と頭になっていた。まるでカフカの「変身」みたいだ。」
「カフカって誰なの、その人?」
「昔の小説家さ。変身の場合は虫みたいになったらしいが、それよりはマシだね。」
そう答えると俺はカップラーメンを、すする。カップラーメンといっても進化した贅沢版でエビ入りラーメンだ。伊勢海老みたいな大きなエビが入っているから値段も、それなりに高い。滝子は、その伊勢海老を食べると、
「おいしいわ、このエビ。カップラーメンの中に入っているものじゃないみたい。」
「ああ、そうだろ?で滝子。こんな顔の俺と、まだ付き合うか?」
滝子は視線を激しく俺の頭部に縦横に走らせると、
「整形手術で取ってもらえば、いいのよ。でも、しばらくは、そのままでもいいな。」
唇の端を吊り上げて滝子はニヤニヤした。俺は意外だったので、
「意外と気にしないんだな。女性って、そんなものなんだろうな。」
と話すと滝子は何も言わなかった。同意しているのと同じだ。伊勢海老入りカップラーメンを食べ終わった俺たちは、しばらくユッタリと休憩した。目を、ぱっちりと開けた滝子は俺に、
「今日は休みだから今からセックスしようよ。」
と、せがむ。
「ああ、そうしよう。ん?おれの頭の上に出たものは勃起するのか、どうか滝子、触ってくれ。」
「うん、触るわ。」
滝子は立ち上がると、おれに近づき、俺の頭の上の亀頭に右手で触る。細くて柔らかな滝子の指に、おれは感じた。すると頭の上のモノが伸びるのを感じた。
 滝子は驚きの声を上げた。
「勃起したけど亀頭は小さくなったわ。それでも立派。陰茎は二十センチは、ある。頭の中心から勃起しているのよ。さっきまでは亀頭は薄く広がっていたのかも。」
と云う。更に、
「あああっ、陰茎の根元から金玉が二つ出て来た。あなたの頬っぺた、普通になってるよ。」
と滝子は指摘する。おれは両頬を触ると、確かに垂れ下がっていた睾丸は二つともない。滝子は頼もしそうに、
「ねえ、ベッドに行きましょ。あんたの股間のモノより立派じゃない、頭の上から勃起しているモノの方が。」
そう言われれば、そうだ。俺の股間のモノは勃起しても十四センチだから。だから俺は答えて、
「うん、ベッドに行こう、滝子。」
広めの縦長のワンルームに食卓もベッドもあるから、ベッドまでは移動はスグだ。
おれと滝子は急いで全裸になると、俺は彼女の張りきった乳房を軽く身んでからキスをして、滝子をベッドに仰向けにして太ももを大きく開かせると、彼女の股間に俺の頭の上の猛り立っているモノを挿入していったのだ。滝子は、
「あはーん。いいっ、太すぎて気持ちいいっ、いくうーっ。」
と今までとは違った快感の声を上げる。
何しろ俺の目はベッドのシーツを見ているわけだから面白みはないとはいえ、いつもと違う滝子のマンコの締め付けが心地よいのだ。それが股間に感じるのではなく、頭の上で感じられるのも変な感じだ。頭の上に竿とタマキンがあり、おれは両手で白い滝子の太ももを抑えて頭を動かしている。シーツを見続けるのは面白くない。
「滝子。態勢を変えよう。シックスナイン、69の体位にするぜ。」
と俺は告げて、一旦、彼女から頭の上の俺の逞しいモノを抜き取って彼女の胴体を跨ぐと、両膝を着き、股間は彼女の顔に降ろして自分の頭の上の猛り狂ったものを滝子の淫穴に埋め込んでやった。
滝子は大きく白い足を広げて受け入れると、おれの股間のモノを口に咥えた。ああ、おれは股間のモノも勃起したのだ。滝子の口の中で膨張した俺のモノは、しかし十四センチ。頭の上の俺のモノは二十センチである。滝子は自分の二つの穴で俺の硬く伸びた肉棒を味わっている。おれも頭と股間で滝子の二つの穴に締められて気持ちいい。頭の上の俺のモノは前に九十度曲がっている。そうしないと挿入できない。俺の目は滝子の淫核、つまりクリトリスを眺めている。
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ここまで読んだ釣次郎はベットで寝てしまった。

 朝が来たようだ。太陽の光が眩しい。結局、地球に戻ったのだろうか。あの円盤の中の個室とは違うし、けれども自分のマンションの部屋でもない。彼、釣次郎は東京都・新宿にマンションを借りている。その部屋とは違う室内だ。ドアが開くと身長が140センチのメゾモント閣下が顔を出して、
「おはよう、本池さん。ここは私の自宅ですよ。部屋が百はあります。それで半分はホテルにしています、ワッハッハ。大体、毎日が満室ですね。哄笑が止まりません。何故なら、この星には地球のようにコロナウイルスなど発生しませんから。この近くは観光地で地球のカジノのような施設もあります。わたしのホテルが常に満室なのも、そういう理由からですよ。
駐車場に小型の円盤が百機は駐円盤できます。そのうちの五十は私のホテルの客の円盤ですね、大体。」
と、朗らかに話した。
頭も大きいけど肩幅も広いメゾモント閣下だ。それで身長は140センチだから、比較するものがないと小柄には見えない。釣次郎は起き上がると、
「おはようございます。では私は円盤の中で寝たまま、ここへ移動させてもらったんですね。」
「ああ、マリムに背負わせましたよ、あなたを。原始的だけど、それが一番いいし、建物の最上階に円盤を止めて、ここまでスグですよ、ここは最上階だから。私の部屋も、この最上階にあります。洗面所で顔を洗ってね。歯ブラシも、あるよ。歯磨き粉は、つけなくていい。」
後半の部分は重々しく威厳のある声でメゾモント閣下は話すと、ドアを閉めた。釣次郎が洗面室に入ると電灯が自動で点灯した。洗面台に立てかけてあった歯ブラシが空中に浮揚すると釣次郎の口の近くに移動して停止した。まるで釣次郎が口を開けるのを待っているかのようだ。釣次郎は、まさかとは思うが口を開けた。それと同時に歯ブラシは歯磨き粉をブラシに滲ませて、釣次郎の口の中に潜り込み彼の歯を磨き始めたのだ。取っ手の部分が大きいので、その中に歯磨き粉が入っているのだろう。
その歯ブラシは釣次郎の上の歯と下の歯の表と裏側を磨いた。磨き終わると釣次郎の口の中から抜け出て、水道の蛇口の下に移動して停止している。釣次郎は水道の蛇口をひねり、水を出した。歯ブラシはブラシの部分を水で流すと、元に在った位置に戻る。コップに水を入れて口をすすぐのは地球と同じだが、ハイテクノロジーの歯ブラシだ。洗面所を出るとマリムが待っていた。彼は、
「同じ階のレストランで食事が出来ます。行きますか。」
「行きましょう。でも、ぼくは、この星のお金を持っていませんが。」
「気にしないで、いいですよ。メゾモント閣下が後で払うんです。ぼくの分も同じですよ。どの店でも僕を知っていますから、釣次郎さんの事は話しておきます。第一、今は開店前の時間ですし。」
部屋の外にマリムの後をついて出た釣次郎は地球のホテルのような廊下を歩いていくとガラスみたいな壁が左右に現れて飲食店らしい店が並んでいる。もちろん客は、見えない。
ひとつの店にマリムが入る。何故だか和風な感じのする店で、お座敷もある。店員の身長は日本人位だ。
メニュー表は、その星の言語で書かれていて釣次郎には読めない。畳に似た個室に入った二人である。マリムが、
「ここはね、うなぎ料理が安く食べられる店なんですよ。」
とメニュー表を読めないけれど熱心に眺めている釣次郎に話す。釣次郎は顔を上げて、
「うなぎ?地球の、うなぎですか?」
「そう、この星にも、地球のウナギに似た魚がいたけれど繁殖しないので、地球のウナギを持ち帰った人々が、この星の鰻と交配させるとグングンと繁殖しましてね。川に一杯、鰻が取れるようになりました。異星間での魚の養殖は成功しましたよ。そのビジネスにメゾモント閣下が乗り出して、この店も閣下の店です。
という事で私たちも安い鰻を多く食べられます。ウナギの蒲焼きの十段重ねも定番だから、それにしましょう。」
とマリムは提案した。
釣次郎には只、驚きであった。マリムの提案に異論はない。ので、
「それで、いいです。ぼくは漁師だったんですよ。ウナギは関わらなかったけど。」
「そうなんですね、釣次郎さん。では、店員を呼びますよ。」
とテーブルの呼び出しベルを押すマリム。
十秒くらいして襖があくと着物姿の日本人女性に似た女店員がリモコンのようなものを持って現れた。マリムは彼女の方を向くと、
「ウナギ十枚重ね定食を二つ。」
と日本語で注文した。
女店員はペンのようなものをリモコンの画面に立てると、磁石でもあるのか垂直にペンは附着した。驚くのは、それからで、そのペンは言われた通りの注文をリモコンの画面に書き込んでいるようなのだ!!!驚いている釣次郎に女店員は、
「人工知能ペンですよ、お客さん。」
と解説してくれた。
その言葉も日本語ではないか。釣次郎は女店員を見ると、
「地球の人から貴女も来たんですね。」
女店員は微笑みを浮かべると、
「私の母は、そうですけど私は、この星で生まれましたわ。地球と同じくらいの体積と面積を持つ惑星です。それで酸素も地球と同じ、ですから広大な宇宙空間には地球と同じ星は幾つも、あると思います。銀河系には凄い人口の人間がいるらしいですよ。でも距離が離れているために交通は、ほとんどないらしいですね。」
釣次郎は、うなずき、
「厨房に行かなくて大丈夫ですか。」
「ええ、行きます。でも注文は人工知能ペンが記述した時に厨房に届いていますから。」
「ああ、そうですね。この星では日本語は地球から来た日本人からしか習えないでしょう、貴方の場合、母親からとか。」
「そんな事、ないですよ。大学に宇宙学部太陽系学科というものもあるし、そこで地球の日本語も学べます。私は母から習いましたので大学には行っていませんけど、大学以外にも日本語を教えている語学学校がありますわ。地球へのビジネスのために速習で学ぶ必要のある人達のためにベガリック・スクールという学校が駅前にあります。」
鰻の蒲焼きの匂いがしてきた。地球とは少し違うが、よりおいしそうな匂いだ。釣次郎は円盤の中で読んだ作品を話す、
「『変顔』という電子書籍を読んでいました。面白いですね、あれは。」
着物姿の日本人というよりハーフかもしれない女性は、着物の襟の中にリモコンを入れると、
「カスガという日本人が書いたらしいですよ。こっちで結構、売れています。ポルノ小説というか官能小説しかベストセラーにならないんです、この星では。それなのに地球では、そうじゃないんですってね、そうなのですか?」
「ぼくは漁師だったけど、小説は割と読みましたよ。官能小説は減ベストセラーには、なりませんねー、うーん。」
「やっぱりね。地球の人口が爆発的に伸びたら食料問題やら何やらで、困ってしまうから性は抑えられるのですよ。この星は近くに地球と似た星があるから人口が増えたら、そっちに移住します。腰を使ってのセックスは人前では認められませんけど、手と手を合わせてする性交は街中でも認められています。でも、これは小さな背丈の知能指数が高くてIQのようなものの数値で700から800の人達が、するんです。創造知能指数みたいなものも、あります。その人たちは自分の脳内の願望から手の平に性器を突出させられるように、なったんですって。」
厨房の方から男の料理人が、
「ゆず子。出来たよー。」
と日本語で女性店員を呼んだ。彼女は厨房の方へ姿勢を変えると、
「はーい、今すぐ参りますー。」
と駆け出し、高さの高い重箱を二つ持ってきた。ゆず子と呼ばれた女子店員は、
「ごゆっくりと、お寛ぎください。」
と声を掛けて襖を閉めた。
 鰻の蒲焼が十枚も重ねられている重箱だ。高さがあるのは当たり前、何枚でも食べ続けたくなる鰻の蒲焼、それは釣次郎にとって異星である、ここでも同じだ。卵焼きの細いものも地球のモノに似ているが量が多い。マリムは箸を止めて、
「この星の鶏は地球の鶏の二倍の大きさです。それも、この星の遺伝子操作で改良したから卵も二倍になったんです。」
「あの身長140センチの人達も遺伝子操作なんですか?」
「それは、どうでしょうか。この星にも大昔の太古には巨人が、いました。身長が五メートルもあり、ペニスも60センチの男も存在したんです。それらの巨人は集団行動が出来ず、今の身長140センチの人達に指揮された我々の先祖が戦争で倒したんです。」
「集団行動の出来ない巨人・・・。」
「彼らは武器を持たずに素手で、どんな野生動物でも殺せましたからね。それで武器も発明しなかったんです。一方の我々は地球と同じように石斧とか槍などを作り始めました。それは野生動物を倒すためだけでなく巨人との戦いにも使用しました。
そんな時代を過ごし洞窟で暮らしていた我々の先祖の前に現れたのが、あの小さな人達です。それも陸地から歩いて、やってきたのではないんです。ここは地球の日本と同じく周りは海です。でも面積は日本の二倍はあります。洞穴の我々の先祖の住居の前に、あの小さな人達は空飛ぶ円盤に乗って、降りてきたんです。
我々の先祖も少なからぬ言語を持っていましたが、それは地球の日本ではないから日本語ではありません。その言語を大幅に発展させたのが、あの小さな人達で身長は当時でも男は140センチ、女は130センチぐらいだったと言います。
あの人前でも許される手交セックスで人口を増やし、すぐに我々の先祖よりも人口を多くしたのは小さな超知性を持つ人たちでした。他の惑星から、やってきたそうです。宇宙空間の歪みと宇宙に流れている自然のエネルギーで動く円盤を発明してからは宇宙のあちこちに現れて居住しやすい星を探していたら酸素も豊富な、この星を見つけたので着陸したそうですよ。」

SF小説・未来の出来事28 試し読み

元チベット仏教の修行僧、ユイマは檻の中にいる美青年チントンに、こう語る。
「ダライ・ラマが観音菩薩の生まれ変わりという証明は、できない。だから観音菩薩の生まれ変わりというのはウソだ。少し前に公安で用意してくださった何人もの美女と乱交させてもらった。彼女達もチベット仏教の尼僧だった。強くマンコを締め付けてくるし、それはもう本当の極楽だったよ。それを否定して生きるダライ・ラマこそ生き極楽を否定して生き地獄に誘う悪魔のような奴だ。公安で極楽を味わい、僕は共産主義者になった。日本にも行くことに、なっている。チントン君、一緒に僕と日本に行こう。そして日本女性のオマンコを味わうんだ。ダライ・ラマを捨てろ。」
それを聞いたチントンは檻の中で、
「いやだ!君こそ騙されている。女こそ修行を妨げる悪魔の手先だ。」
と断言した。公安の中年男性は困ったような顔をすると、
「チンチンの檻の中にも美女の元・尼僧を送ったのだが、全く動じなかった。チントンの股間にも美女に触らせたのだが変化なし。しかも美女は全裸だったんだけどねえ。それで日本製のラブドールを注文した。やっと届いたから、それを差し向けよう。おい李、運んできてくれ。」
と近くにいた部下に指示する。檻のある部屋を出た李という公安の男性は、しばらくすると服を付けているラブドールを抱えて戻って来た。李という姓は中国では多い人名だ。李から日本製のラブドールを受け取った中年男は檻の扉を鍵で開けて、ラブドールの背中にあるらしいボタンを指で押して檻の中に入れた。
 ボタンを押されたラブドールはシャキーンとした感じになり、生きた女性の動きでチントンに近づく。清楚な顔立ちでチントンに中国語で、
「おはよう。ここで何しているの?」
と尋ねたのだ。チントンは驚いて、
「何もしていないよ。君は日本人のようだが、ラブドールとも聞いたが。」
と話すとラブドールは、
「サイボーグのようなラブドールなのよ。人体を改造してもらっているわ。元々が日本人だから、日本人のよう、じゃないの。」
そう云うと、ラブドールは右手を素早くチントンの股間に持っていき、平常時の長さの彼のモノを握った。きめ細やかな肌触りを感じたチントンのモノは次第に大きくなり始める。彼は、
「ああっ、何故なんだ。勃起しない修行をしてきたのに・・おおっ、立つーっ。」
ほどなく全勃起したチントン。ラブドールはアンドロイドの目で、
「あなたは前回、ここに入った美女を元・尼僧という事で女性と思わないように、したようね。でも私はチベット人でも中国人でもない日本人女性なのよ。」
「そーかー。それで立ってしまったんだ。十年ぶりだー。僧院で尼僧と生活していても立たないように、していたのに。」
ラブドールの右手はチントンのフルエレクト・ステックを、ゆっくりとシゴキ始めた。チントンは歯を食いしばり始める。あまりの気持ちよさに出してしまいそうなのだ。檻の前には公安の人間と元・チベット仏教の修行者の男性が立っていて、自分を見ているのは分かるが、その外界の事象よりも自分の脳内の快楽の方に意識が向かい、檻の外の二人の姿は、ぼやけてしまう。
女性に自分のモノを触られた事も、かつてないチントンは、
「ズボンとパンツを脱ぐから待って。」
と美女ラブドールの動きを制止させた。ラブサイボーグドールはチントンの要請を受け入れ、右手を離す。
チントンは立ち上がって囚人服みたいなズボンを脱ぎ、パンツも捨てた。反り返ったバナナのようなチントンの巨大なものが姿を現す。ラブサイボーグは、チントンの巨大化した肉竿を右手で掴むと身を屈めて柔らかい自分の赤い唇の中に入れる。プチョ、プチョと音を立てて吸い付くラブサイボーグは、その口内の肉棒を巨大なソーセージのように味わうのだ。チントンは、
「ああっ、とめられないっ。!!!。」
と叫ぶとラブサイボーグの口の中に連続して五発も白い恋液を出したのだ。それは濃い液でも、あった。白い恋液を恋の駅に出した、とも言えよう。五発も出したためグニャリと萎えたチントンのバナナはラブサイボーグの口中からポロンと出てくる。
檻の外から公安の白いカッターシャツを着た中年男性が、
「チントン。日本に行けばサイボーグでない日本女性とセックス出来るぞ。それで給料も、もらえる。日本でホストという仕事をしてな。それに公安の方でも元でだけど給料を出すからな。成績に応じてはボーナスも上積みしよう。もちろん寝る場所は東京の新宿に分譲マンションを買ってある。同じ階に飲食店やサウナ、喫茶店もあるマンションだ。だから家賃の心配も、いらない。東京在住の政治公務員や東京都知事なんかにも献金しているから。あり得ないとは思うが、君が警察に掴まっても政治公務員に働きかければ、すぐ釈放してもらえる。金が大好きな日本の政治公務員だ。十億は、ばら撒く。共和党の議員は元・自衛隊が多いから金を受け取らないが、都議会議員は共和党員が少ない。話が長くなった。ダライ・ラマに騙されていたのが分かっただろう。」
下半身を露出しているチントンである。彼は黙思考すると、
「うーん・・・一時の快楽に心を惑わせただけだ。やはり転向は、したくない。」
と不快げに立ったまま、答えた。檻の外の中年公安は、
「よーし、ラブトール霧子。チントンの前で尻を向けて四つん這いに、なれ。その前に服を脱ぎなさい。」
ラボドール霧子は、うなずくと服をサラサラと脱いだ。パンティも取ると白い裸身に黒い股間と黒髪が色彩の対比として鮮やかにチントンの視界に点じると、ラブドール霧子はクルリと白い背中をチントンに見せて、両膝を着き、両手を着いて四つん這いになり、白い大きな量感のタップリとある巨大な桃のような尻を高く上げて自分の股間をチントンに見せつけた。
肛門の下に見える彼女の男をいざなう切れ目は割れて開いている。チントンの股間のモノは突如、上に向けて立った。上に向けて♪勃起しようよ♪精液が遠くに飛ぶよーに♪という歌詞がチントンの脳内を流れた。「上に向けて勃起しよーよ」という日本の歌だった、チントンの祖母が日本人だった。幼いチントンは祖母に抱かれて、祖母は、よく、この「上に向けて勃起しよーよ」を歌ってくれたのを思い出したチントン。(ダライ・ラマの性欲否定は詐欺だ。優しい祖母の子守歌、「上に向けて射精しよーよ」を思い出した。いや、「上に向けて勃起しよーよ」だったようだけど)入れて欲しそうなラブトール霧子の女の穴にチントンは自分の男の道具を亀頭から、のめり込ませていった。口の中より滑らかな霧子の膣内事情だった。ズイン、ズインと突きまくり始めたチントンの長竿である。
両膝をチントンも床に着いて後ろからラブトール霧子の女淫にズッポリと入れて両手は下に垂れている霧子の乳房を揉む。両手と竿に感じる女の感触にイキそうになるチントンを公安の中年男は見て、
「霧子、顔をアレに変えろ。」
と指示した。
四つん這いでチントンには見えない霧子の顔は変化していった。そして紛れもなく、あの顔になったのだ。ハリウッドメイクでも、女性の顔を、ここまで変えられないだろう。ハリウッドも中国に徐々に買収されつつある、というが。公安中年男は満足げに、
「霧子、顔をチントンに見せろ。」
と命じる。ラブトール霧子は顔だけでなく体も後ろに捻って顔をチントンに見せたのだ。嗚呼、霧子の顔はダライ・ラマの顔に変貌していたのだ!ニヤリと笑う霧子、いやダライ・ラマの顔だった。と同時に霧子は自分の女淫を強く締め付ける。あっ、と声を出したチントンはダライ・ラマの顔の霧子の柔らかな女淫穴の中に、ドクドクピュッピュッと連続射精してしまったのだ。
チントンは急いで霧子の体から離れた。霧子も立ち上がると全裸をチントンに向けたが、顔はダライ・ラマの顔のままだった。
苦々しく悔しそうな顔をするチントン。檻の外から公安中年男が、
「ダライ・ラマと、やった感想は、どうだ?え?チントン。」
と問う。チントンは両方の手を拳にして握りしめて、
「ダライ・ラマは、こうまでしてオレの性欲を嘲笑うのか、という思いです。」
「よし、そんなダライ・ラマは捨てろ。転向して日本に行き、存分に女を抱けるようにしてやるから。いいな?チントン、転向するな。」
「はい、共産主義者に転向します。ダライ・ラマは詐欺師で変態です。」
と高らかに下半身を露出したまま宣言したチントンだった。檻の外にいる公安の中年男性とユイマは笑顔でチントンを眺めるのだ。

 今、そのユイマとチントンは新宿駅に近い彼らのマンションで桜見世子と交わっている。ユイマは世子の唇を奪い、チントンは世子の片乳を揉んでいる。世子はユイマが唇を外すと、
「みんな、右手は空いてるでしょ。右手を斜め上に上げて、『ハイル!桜見!』と言いながらセックスを続けて!」
と命じた。五人の男は一斉に右手を右斜め上に上げて、
「ハイル!桜見!ハイル!桜見!」
と叫びつつ、彼女に絡み続ける。桜見世子は快感に目を細めつつ右手を右斜め上方に上げ、
「予は日本紅党を結党して総統に就任する!ああんっ、いくうぅー。」
と叫ぶとアクメに達した。フューラー桜見の誕生でもあった。アクメに達しても桜見世子は右手を右斜め上に上げ続けるのを辞めなかった。それは五人の男も同じだった。
世子が立っていられなくなったので大和とトンリンは自分たちの欲棒を世子の穴から抜いた。射精は、しなかったのだ。
ホストは全員、身を整えてユイマがバスタオルを持ってくるとアクメに達して寝そべっている桜見世子の全裸の上に掛けた。
世子の尻の穴に入れていたトンリンは彼女を見下ろして、
「総統閣下は意識を失っているようだ。ユイマさんとチントンはチベット仏教僧だったらしいけど、総統は大丈夫?」
と視線を彼らに投げて問いかける。ユイマは落ち着いて、
「もうすぐ目を覚ますだろう。日本紅党には我々も入った方が、よさそうだな。」
と答えた。チントンも同意して、
「桜見総統は見所があるよ。彼女の乳房は柔らかくて、しっとりしていた。乳首の硬直度も凄くてね。」
桜見世子の最重要穴に入れていた大和も、
「ぼくも日本紅党には入りたいです。」
と決意を披露する。

 JR東京駅からリニアモーターカーで出発したホストの大和。桜見世子が意識を取り戻す前に中国人ホストのマンションを出て来た。JR新宿駅から東京駅へ行き、リニアモーターカーに乗った。新幹線より高い料金となるがスピードは速い事は確かだ。中国では速度の遅いリニアモーターカーは随分昔に開通している。
リニアモーターカーの窓の外に見える景色は地下が多い。最初は品川駅からの出発なのだったが遂に東京駅から乗れるようになった。それでも地下に降りないと乗れない。日本の地下を通って進むリニアモーターカー、ホストの大和を乗せて何処まで走るのだろう。
三時間を切る時間で到達した駅で大和は地上に出る。そこはJR博多駅だ。駅構内の喫茶店でコーヒーを飲み、寛いだ大和は店を出て地下に降り、今度は福岡市営地下鉄で南福岡駅まで行くと、そこを出て地上に出た。その前に駅の便所で顔を洗うと、おやおや不思議、大和の顔は中国人から日本人の顔に変貌した。
誰の顔に?それは、すぐに今から分かる。線路を渡れば自衛隊の基地が見える。門まで歩いて身分証を提示して中に入ったホストの大和、いや彼は今はホストの顔とは違う、そう時・流太郎の顔になったのだ。地下へ下り、元海教官の部屋へ行く。
椅子に座ってパソコンを見ていたた元海一等陸佐は流太郎を見ると、
「おや、久しぶりだな。会社の方は、うまくいっているか。」
と話した。
「ええ、なんとか、やっています。それにしても重大な情報が手に入りました。」
と身を正して話した流太郎に、元海は、
「ほう。どういう情報だ。」
「日本紅党という共産主義の政党が結成されます。」
「なにい?それは重大事だな。共産党が政権を取ったら自衛隊はクーデターを躊躇なく起こす。」
「なにか女性の左翼活動闘士が総統になるという事で。」
「問題がありすぎるな。で、君は、どうするつもりだ、時君。」
「その紅党に入党予定です。」
「それは、よろしい。活動資金などは遠慮なく言ってくれ。で、君は東京でホストクラブに潜入して、その情報を掴んだという事だな。」
「まあ、大体、そんなものですが、正確には中国人ホストの住んでいるマンションに、その過激派左翼の最高幹部、桜見世子が来たんです。それで我々五人とセックスプレイをしました。」
それを聞いて元海一佐はニヤリとし、
「お盛んな党首だな。日本紅党か。だけど百年以上前に日本赤軍というのが、あったが、あれは警察の機動隊とかで対処したんだ。日本紅党が過激派左翼でも自衛隊は出動しないだろうな。ただ裏で関われるのは情報第三部としては行えるよ。だけど対日活動をする組織などに対処するのが最優先事項だからな。その中国人ホストも怪しげだな。」
「そうみたいですよ。だから新宿のホストクラブに入りました。」
「うむ、それを示唆したのは我々だ。中国の対日工作は多岐に渡る、とはいえ彼らの狙いは日本よりもアメリカらしいね。」
「そうでしょう。いずれ中国はアメリカを支配下に置こうと目的を持っているようです。」
「だろうな。情報第三部はアメリカの為に働く必要はないものな。だけど一応、日本とアメリカは同盟国だし・・・匙加減が難しい所だね。日本にいる中国人は日本工作が狙いだから、予算はタップリと採れる。頑張り給え。」
「はい、頑張ります、元海一佐。」
「本池釣次郎君は、どうしているかね。」
「合同会社の留守番を、させていますよ。もっとも、彼は中国の女工作員を追っていますから会社の部屋に、居続けさせても、よくないので会社の固定電話を本池のスマートフォンに転送させています。電話は、ほとんど掛かってこないようです。」
「今のところ指示する事は、何もない。君達は自由に行動して報告書をスマートフォンで送ってもらえばいい。中国人ホストは調べていくと、いいよ。ではな。また東京へ行きたまえ、福岡に今のところ中国人ホストは、いないなー。」

 という事で、流太郎は福岡駐屯地を出てJR線の鉄道の線路を渡り、会社の事務所に戻ると本池釣次郎が自分の机の前に座っていた。釣次郎は流太郎を見ると、
「社長。お帰りなさい。ホストクラブに入って、どうでした?」
「上手くいったよ。中国人ホストは中国の工作員だろうと確信している。日本紅党の女党首ともセックスした。」
「日本紅党?ですか?そういうのが、出来たんですね。」
「過激派左翼の独身女性で皇族の血を引くと自称しているのが紅党党首で総統なんだ。」
「総統って珍しい名称ですね。」
「そうだなー。左翼なら書記長とか首席とか色々呼び名は、あるのに。アドルフ・ヒトラーを意識しているのかもしれない。」
「なんですか、そのアドレナリン・ヒットラーって。」
「アドルフ、だ。随分過去に実在したドイツの政治家で、従軍経験もある。桜見世子総統は自衛隊に体験入隊も、していないと思うよ。」
「そうですか。我が社は自衛隊と関係していますよ。その桜見世子って危険ですかねー。」
「今のところ影響力は少ないな。三十歳になったか、どうかの年齢らしい。紅党の実態も掴まなければ、いけない。」
本池釣次郎の目に燃え盛る好奇心の炎が炎上し始めた。釣次郎は、
「僕も手伝いに行かなくて、いいんですか?社長。」
流太郎は立ったまま、
「今のところは、いいよ。それより、中国人の顔にするメーキャップを手伝ってくれ。自分一人では面倒だ。」
「はい、社長。いますぐ、やります。」
釣次郎は机の中を引き出して特殊化粧の道具を取り出すと、時・社長の前に行く。釣次郎は、
「ここで、やってしまいますよ。」
と云うと、手にした薄い膜を最初に流太郎の顔に貼ると、その上に中国人の顔に見えるように化粧を、していった。

 予算が豊富に取れたので流太郎は福岡空港から羽田空港まで空の移動を行なった。東京郊外の町田市に部屋を借りている流太郎だ。ホストクラブは一週間ほど休む事にした。電話をすると店長が出たので流太郎は、
「少しダルイので一週間ほど休みます。コロナウイルス感染だと大変な事になりますから。」
と話すと店長は、
「そうか。ゆっくり休んでいい。一か月休んでもいい。PCR検査は受けたのか?」
「いいえ、この程度では受けさせてもらえません。もっとヒドクならないと受けさせてくれませんよ、店長。」
「そうだな。少しのダルさ、ならスグに良くなるよ。ゆっくり休養するように。」
という事で電話は切れた。
実は流太郎、体がダルイところなど、どこにもない。例の桜見世子を探る必要があると思ったのだ。そういう予算が会社宛てに振り込まれた。ホストクラブで働くよりも高い資金が入った以上、自衛隊の別働部隊に所属している流太郎としては、元海一佐からの指示なしでも動き始める。桜見世子については緊急に調査を要する人物では、ないらしい。が、あのような人物は、そう他には居るものではない。
 調査の初めは楽なものでインターネットから調べれば、よい。桜見世子で検索すると出て来た。なんとフェイスブックとツイッターにアカウント登録していて本名で活動中だ。そこから、かなりな情報を取ることが出来る。特にフェイスブックでは自己紹介、友達、なとで桜見世子の交友関係も分かってしまう。おそらく今の探偵は、これを使って調べない事は、ないだろう。
(あ、そうだ)と流太郎は思う。フェイスブックを開設しなければ。本名なんて載せる訳に、いくものか。偽名でも調べられる事は、ない。三空冬樹(みそら・ふゆき)の仮名で登録する。顔写真は・・・すぐに載せなくても、いいや。
よし、出来た。これで桜見世子に友達申請が出来る。ただ、その前に彼女のフェイスブックページに、いいね、を押さないと友達申請は出来ないのがフェイスブックの仕組みだ。これを知らない人も結構いる。
日本紅党最高幹部、桜見世子、経済学部卒業。大学名は表記されていない。おそらくマルクス経済学を学んだのだろう。党員募集中、とフェイスブックで募集している。
まず流太郎は桜見世子のフェイスブックのページに、いいね、を押した。自分のフェイスブックのページは、ほとんど白紙状態なので果たして桜見世子が、どう思うかだ。その上で友達申請をした。メッセンジャーで日本紅党に入隊したいです、とダイレクトメッセージを送ったのだ。
すぐに返信などは、来ないであろう。今は朝の八時だ。九時ごろにマンションの部屋を出て、都心に向かう予定の流太郎、町田駅近くに部屋を借りている。人妻デリヘルの多い町田市である。
まだ一時間は、ある。ネットサーフィンというより検索して桜見世子のツイッターのアカウントを発見、クリックしてみる。フォロワーが五十人程度、この位ではアフィリエイトのASP(運営会社)などではインフルエンサーではない、と判断する。
それは正しいとは限らないが、有名人には、やはり程遠いフォロワーだ。ツィートも毎日は桜見世子は、していない。
ーすごく、おいしい飲茶の店を見つけました。
などというツィートもある。日本紅党・党首とプロフィールに記載しているが本気で受け取る人も少ないだろう。
日本を共産主義社会へ、というメッセージも寄せている。ここへのツィートを流太郎は今のところ遠慮した。それに、まだツイッターのアカウントを作っていなかったので、早速、開設した。オールモーメントという自社の会社名をアカウント名にした。商用利用と見られるだろう。そうして桜見世子のツイッターをフォローしたのだ。
 それから流太郎は町田市のデリバリーヘルスのサイトを見て回る。町田市デリバリーでは宅配の会社がズラリと出て来たので、町田市デリバリーヘルスで検索しなおした。すると、まとめサイトのようなものが出てくる。一店舗ごとのサイトを見るより色々な店舗が見れるのだ。とはいうもののデリバリーヘルスとは無店舗型の性風俗だ。店に行って、やってもらうのではなく自分の部屋に来てもらうものだ。そのサイトで見ていくと、なんと!桜見世子に似た女性がデリバリーヘルスの店に在籍しているようだ。よく似た女性は世の中に、いるものだ。ただし桜見世子よりは若い。桜見世子は自称、三十歳なので多くの性風俗店では働けない事になる。

SF小説・未来の出来事27 試し読みをどうぞ

天神中央公園で水馬社長がズボンのポケットから何かを落としたとしても、それは重いもの、例えば財布などではないはずだ。彼は何かを落としたことに全く気付かなかった。紙谷と水馬社長は、しばらくして天神中央公園を立ち去った。
 その日の夜、公園のベンチで寝転んだ三十代の男性失業者は、即睡眠の状態に入った。ハローワーク求人で紹介された企業に明日から働くことに、なっている。その安心感から深い睡眠に入った模様だ。ガキリ!という感触を喉に感じて目を覚ました浮浪者は目の前に髪の長い女性が立っているのを見た。彼女の口からは赤く染まった牙が二本見える。が、顔だけが人間で首の下の部分は樹木のようだ。両腕に見える二本の枝があり、その先端は人間の手のように五本ずつ指のような小枝がある。浮浪者は(化け物!植物人間だ。もしかして、おれは・・・)と思い、自分の首に手を当てると何かに噛まれたように血が滲んでいる。(うわああーっ、吸血植物!!)ベンチから立ち上がると就職が明日から決まっている浮浪者は多目散といった視線で逃げていった。人間に似た植物は足に根が生えてはいなかった。一本足の人間が移動するように、ポンポンポンと飛び上がりつつベンチから離れていく。
 公園を逃げ出した浮浪者はネットカフェに逃げ込む。朝、目が覚めると胸の辺りに異変を感じた。上着とシャツを脱いで鏡に映してみると、「うわああああっ。」と浮浪者は声を上げてしまった。自分の裸の上半身は樹木の幹に変わろうとしている。すでに人間の肌では、ない。立ち上がると両脚は、くっつきかけている。それを開こうとすると樹木の粘液のようなものが両脚を接着させようとしている。それを無理に離してズボンを履いた浮浪者は、ふくらはぎの辺りも樹木に変わりかけているのを見た。かああああっ、と泣きたい気持ちになる今日から出社する浮浪者だ。会社に行かなければ、いけない。ネットカフェの料金を精算すると重い脚を動かして、外に出た。今日から働く会社も天神にある。あのネットカフェも北天神にある。天神中央公園からは一キロほど北へ逃げた浮浪者だった。今日から通勤する会社は天神の東にある。スマートフォンで時刻を見ると出社の午前九時には、まだ時間があるので浮浪者は天神地下街のモーニングサービスをしている喫茶店でコーヒーとパンの朝食を椅子に座って取った。自分の体内は、どんどんと変わっていっているみたいだ。(二酸化炭素を吸いたい)と何故か思った浮浪者。店内で高くつく炭酸飲料を注文した。ガラスのテーブルに置かれたコップに泡立つ清涼飲料水をゴッ、ゴッと飲み干した浮浪青年はレジで会計を済ませると、外へ出て勤務を始める会社のあるビルに近い出口から地上に上がった。徒歩で階段で登り、地上の光を浴びると周囲を歩く背広姿の出勤者と違い、私服の自分は契約社員である事をメリメリと自覚したのだ。ビルに入りエレベーターに乗ると、他の人が自分が降りる階数を押してくれた。私服姿は自分だけで、大学を出たのに就職をしなかった自分を強く自覚した。新卒しか社員に迎えない会社だが頑張りようによっては正社員に雇用されるという面接官の話だった。インターネット関連の会社でレンタルサーバーを福岡市から展開している。格安が売りで業界第二位のシェアを誇っている。会社の玄関を入ると「おはようございます。」と大声で挨拶した。受付の女子社員が赤い制服姿で、
「おはようございます。新星(しんほし)さん、仕事場まで案内します。」
と云うと立ち上がり、彼女に連れられて入ったのはレンタルサーバーを監視している部屋だ。エアコン空調を入れているが、ともすると熱くなってくる。その監視などや、その他の業務を手伝う仕事だった。三十に近づいているだろう外見の女子社員が椅子に座ってサーバーを管理している。受付の女性が「契約社員の新星さんよ、優しく教えてあげてね。」
と声を掛けると管理社員はニコリとすると、
「新星さん、よろしく。わたし後場頼子(ごば・よりこ)って言います。なにか株式市場の名前みたいだけど本名です。来月、結婚する事になって寿退社するから、来月からは新星さんに仕事を任せられると思う。色々と教える事があるけど、一か月で、かなり覚えられるわ。うん?」
後場頼子は新星の両手を見ると、
「手に植物に見えるアクセサリーをしているなんて珍しいわね。あんまり派手な飾りは、しない方が、いいわ。」
と指摘した。新星はサッと自分の手を見ると、それは、いつの間にか樹木の枝のようになっているではないか!これは、一体・・・冷や汗が出る新星だが平静を装うと、
「あ、これですね。新しい手袋なんです。涼しい手袋なんですよ。サーバーが置いてある部屋は、とても暑いって聞きましたので。」
後場頼子は面白そうに笑うと、
「ほほ、そうなの。それなら座って、仕事を教えるから。まず最初に、あっ、新星君!何よ、その口は・・・・。」
新星は座った途端に唇の両側から二本の長い牙が出て来た。彼は自分で、それを右手で触ると、
「あ、これですか!(おれは変身していっているんだっ)これはジョーク・グッズを付けてみたんです、面白いでしょ、後場さん。」
「なーんだ、そうなの。ふざけすぎは、いけないわ、仕事が始まっていま・・・キャアッ!」
後場頼子は椅子に崩れ落ちるように失神した。首筋には牙で噛まれた跡があり、薄く赤い血が滲んでいる。新星は彼女の首筋を噛みたい衝動に駆られ、実行してしまったのだ。(大変な事を、してしまった・・・。もう、ここには居られない!)新星は部屋を出ると会社の玄関に向かう。受付の女性は、その場に居なかった。彼は走るとマズいと思い、平静な足取りでエレベーターに乗り、会社の雑居ビルを出た。こんな時に、コロナウイルス再燃で誰でも多くがマスクを付けているから、新星も部屋を出る前にマスクを着用して会社を出たので唇の両端から出ている二本の長い血に染まった牙は誰にも見られなかった。通りにあったコンビニで白い軍手を買い、便所で軍手を両手に嵌めると新星はコンビニを出た。レジでは軍手を右手で素早く置いて、金を払うと素早く取ったので木の枝になりつつある両手を東南アジアの留学生の女性に気づかれずに済んだ。コンビニを出て大阪以西の最大の繁華街を歩く新星は天神中央公園で昨晩、吸血植物らしき女性に襲われた事を思い出した。自分も、あんな風に変貌するのだろうか、そして自分が首を噛んだ後場さんも・・・・!
後場さんの血を少量ながら自分は吸っている。うまい、人間の血が、こんなにうまいなんて考えてもみなかった事だ。それに活力が溢れてくるんだ。人を殺しても、その肉を食べ血をすすらないなんて勿体ない事だ。宗教で、というよりユダヤ教で汝、殺すなかれという戒律を設けたのは人肉や人の血のおいしさを知った人間の更なる暴行を止めるために作ったものなんだ。コロナ再燃で失業したオレだ。高級焼き肉店で働いていた。金持ちが来店しては高価な霜降り肉を食べて行ってくれた。福岡市にも富裕者は多いし、北九州市や久留米、その他からも来店してくれる。何故、俺がそれを知っているかというと、その高級焼き肉店では会員を募集している。で、その会員になるためには住所と電話番号を申込書に書いて出さなければ、ならないからだ。大卒の俺は会員名簿の作成管理を任されていた。だがコロナウイルスの再燃で来客は、いきなりゼロになった。金持ちという人達は情報を取るのも早いらしい。一般人より迅速に行動する。営業自粛なんて要請されなくても客は来なくなるんだよ。福岡市で家賃補助なんて抜かしやがる、アホが。うちは自前の土地建物で高級焼き肉店を運営しているんだ。経営者に呼ばれたから社長室に行くと、丸々と太った禿げ頭の社長、六十代に、
「新星君、お客さんが来なくなったから給料は払えないし、仕事もあげられない。自宅待機とか在宅勤務なども、提供出来ないんだ。別の仕事を探してくれ。会員の名簿管理も会員さんが新しくできるから仕事をしてもらえていた。高級路線で走っていたウチが、いきなり低価格店舗に切り替えても誰も来ないだろうし、数か月は続くコロナウイルスの再発らしいし、従業員は全員解雇せざるを得ない。申し訳ないけどハローワーク求人で再就職を探してほしい。心ばかりの退職金は、この封筒の中に入れている。」
と社長は茶色い封書を俺に渡した。
 会社を出てビルの日陰の部分に入り茶封筒の中身を出してみた。三万円、安いソープで女を抱き、溜まっている白濁液を洗いざらい女の壺に放出できる額だ。日本経済は百五十年、物価が上がらない。
これにはコロナウイルスの活躍も、その要因だろう。ヨーロッパの人口は一億人を切り、アメリカは二億人を切る人口となっている。日本の人口は一億二千万人程度だ。物の価値とは希少価値という言葉があるように供給が需要を上回ると価格は下降する。生産が少ないものには高価な値が付く。もしも地球の砂浜の砂が全てダイアモンドならばダイアモンドの価値は、ないのだ。コロナウイルスの活動で地球上の人口が減り、生産過剰となれば物の価値は右肩下がりとなる。又、日本の人口における女の人数が男を上回れば日本人女性の価値は下落するのである。重婚を認めない、つまり一夫多妻を法的に認めない日本という国は女性の余りを救えないから、ある女性は日本人男性との結婚を諦めるしか方法はなく、それでも日本人男性の陰茎の長さ及び周囲の最大値を自らの膣内に於いて感覚的に捉え、できれば快楽を全身で堪能し性的頂点に昇り詰めつつ、しかるのちに男性に自分の女性の器官を提供した、その対価として金銭を得せしめんとする職業に従事するという方法においてのみ日本人男性の体を知るという、やり方が妥当なものである。しかるに、こういう日本人女性の急増に至り、ソープの価格も上昇しない現象を惹起せしめている日本である。加えるに草食動物化する日本の若年層の男性が風俗、ソープ離れを起こしているから値上げができないソープの価格なのである。
まだまだ日本人女性の価値が上昇しない理由があるのだ。それはインドネシアの若い女性が大量に日本に来て働き、しかも日本人男性と結婚する例も増えて来た。それで、そのインドネシアの女性は日本に帰化して自分の宗教、つまりイスラム教も捨てる場合が多いという。なにせインドネシアの女性は一億人以上いる。男性も含めての平均寿命は30代半ばであるから若い女性は多い。彼女達が五百万人、日本に来て働き、日本人男性と結婚すれば日本人女性の結婚浪人の数は急増、爆増は不可避的なものとなる。それは徐々に起こりつつあるのだ。インドネシアの女性で可愛くて胸の大きな女性は昔から多く、おとなしい日本人女性では太刀打ちできない事も多々、あるのだ。鎖国して外国人を入れないで、しかも身分制で女性の結婚先まで両親などに決めさせていた時代の名残りは益々、日本人女性を結婚不利へと導いたのだ。それで福岡市にも久留米から男を探しに若い女性が西鉄電車で天神に、やってくる。天神中央公園にも足を運ぶ久留米のOLである。占い師に見てもらったら天神中央公園で素敵な彼氏が見つかるかもしれない、と言われたりもした。
それで今、久留米から会社が終わって天神に一人で男探しに電車で来た白い服装のAさん、二十五歳、独身は仮名として有菜(ありな)と呼ぼう、その割と美人な女性というよりトテモ美人な女性、だから独身の場合もある、は肩の下まで伸びている長い黒髪を掻き揚げつつベンチに座った。そのベンチの後ろには樹木が多く酸素に溢れているから有菜には心地よかった。久留米には男性が少ない。上司の既婚男性との不倫だけは避けたい。会社で事務をして外に出ないので色白の有菜は、でも豊満な胸を持っている。福岡市は明石標準時より遅い日没のために夏は七時過ぎも明るい、でも夕暮れは確実に訪れて天神中央公園も夕闇が全てを隠そうとしていた。白い服なので有菜の胸の谷間はクッキリ、ハッキリと明示されているが昔からの心理学の実験データに出ているように男は美人を避けていく、という実例が有菜にも適用されたらしい。誰一人の男性もベンチに座っている有菜に声を掛けなかったのだ。(わたしって魅力ないのかしら?)と思う有菜、そんな彼女を一顧だにせず太陽は地平線の見えない福岡市からも姿を消した。バサッと音がした。有菜は自分のふくよかな胸に木の枝が当たっているのを見る。それも左右の乳房の上にある、もちろん服を着ているのだが。その左右の木の枝は丸で人間の手のようだ。自分の乳房に感じるものも木の枝と云うより人間の、しかも男性の手のようだ。だが木の枝らしく動かないので有菜は、その枝を手で払おうとすると、その左右の木の枝は有菜の乳房をグイッ、グイッと揉む様に掴んで動いた。(あっ、オッパイを揉まれている、でも気持ちいいっ)と有菜は感じた。有菜は枝を払おうとした手を白いミニスカートから露出している柔肌の白い太ももの上に置いた。木の枝は人間の男の手のように有菜の乳房を服の上から揉み続け、時々、一本の枝で彼女の乳首に触れるとコリコリとピンクの乳首をいじった。硬くなっていく乳首を有菜は感じるとミニスカートで露出してている太ももを少し大胆に開いてしまう。ベンチに座っている彼女の正面に立てば有菜の開いた太ももの奥の白いパンティが湿り気を帯び、縦にスジを露わにしているのが容易に見えたはずだが公園には誰もいないし太陽は完全に姿を消していたので誰も有菜の開きかけた秘部を見る事はなかった。右の乳房から枝が離れた。あ、と有菜が思っていると、その右の木の枝は有菜の股間に滑り込んでくる。すぐに木の枝は有菜の股間を覆っている白い薄い布地の割れている個所を下から上になぞるように動いた。それは男の指で自分の恥部を愛撫されているかのような動きで有菜は脳が蕩けそうな快感を覚えたので赤い唇から赤い舌を出すと自分の唇を舐める。やがて右の木の枝は有菜の股間の割れた部分にパンティの上から奥へと侵入する。まるで男の指を受け入れたような感覚に有菜は背をのけ反らせると、ああん、と耐えられないように声を出した。有菜は左右の木の枝に抱きかかえられてベンチの上に浮き上がった。快感で陶酔しているので白い両脚は広げている。後ろの木が彼女を抱えているのだ。次にベンチの後ろに有菜を立たせると左右の木の枝は彼女の白いミニスカートの中に潜り込み、彼女の白いパンティをズリ降ろしたので白い薄いナイロンの布は有菜の膝の下辺りに、とどまっている。有菜の胸と股間を抱き寄せた木の枝は後ろから樹木の中心部から突き出した男根を有菜の女性の淫窟に入れていく。(はああんっ、そんなの・・・いいっ)樹木に犯されている気分の有菜だが心の中では樹木に扮装した男に後ろから嵌められているのだろうと予測した。というのも自分の中心の穴に入った男のモノは人間の肌である陰茎の部分やキノコのような亀頭の部分を感じられたからだ。有菜は処女ではあったがローターなどで自分のモノを弄っていた事がある。ホストクラブで露出させたホストの陰茎を見るだけでなく握った事もあるから亀頭や陰茎の肌触りも覚えているのだ。誰もいないとはいえパット見ただけでは、木に背中を付けて揺れているミニスカートの女性にしか見えなくもない。膝のあたりまで白いパンティを降ろしているのも暗くて見えにくいのだ。それでも木の一番上の部分は人間の男の顔だった。女を後ろから犯して楽しむ男の顔。それは失業者の新星の顔だ!!新星は天神中央公園で木に扮して獲物を待っていたのだろうか?
新星にしても久しぶりに抱き、勃起肉を入れる女の、それも若い女の体だ。その若い柔らかな淫肉に欲棒を突き入れる快感も失業してからは味わえなかったのだ。金を出して抱く女よりもイイ感覚がする女だ。後ろから突き入れて木の枝に変わった五本の指ではなく枝で女の乳房を揉む。まだ首や頭は動くのか試しに前に頭を倒すと前傾したので女の白い首を舌を出して舐め回してやる。女は感じたらしく首を少し縮めたので、右手は乳房から話して女の股間のクリトリス(陰核)を擦りまくると、それは肥大してきたようだ。でも強姦ではなく和姦なのだ、女は逃げようとしなかった。夜になった街中の公園は誰もいないし、そこで若い豊満な結婚前のOLを後ろから嵌めて激しく、または緩慢に張りきった亀頭と陰茎を女の膣内で運動させるのが、こんなに気持ちがいいとは新星は知らなかった。張りきった男根。張りきって、いこう、とか、張り切って頑張ろうなどという言葉は実は性的な意味があるが放送禁止用語ではない。
植物というか樹木になりつつある新星だ。完全に樹木になれば陰茎も木の幹の中に消えるのだろうか、それは新星には分からない。それよりも今を楽しもう。二十分は女の秘窟を出し入れしている。ん?ついに締め付けられるのを感じた新星は耐え切れずに二発連続で発射してしまった。女も激しく白い大きな尻を揺り動かした。樹木になりつつある新星は右手で、というより右枝で女の白い右足を高く上げさせて、左手で女の腰の上あたりを支えると、女を自分の方に向けさせた。トロンとした目で女が、つまり有菜が上を見上げると、
「きゃぁぁぁぁぁっ。」
と高い声を上げたが、周辺には聞く犬とて居合わせなかった。新星は言葉を掛けようとしたが、中々、声に出せない。小さくなった男根は有菜の尻の中に入ったままだ。有菜は化け物から逃げ出したかったが、それは大脳の新皮質で思考したのであって大脳の旧皮質、つまり本能は性の快楽を楽しみ続けたいので白い両脚を有菜は動かしも、しなかった。女は子宮で考えるなどという形容は適切ではなく、子宮に影響される又は神経線維により接合された脳内に於いて思考を発生させるので、しかも、それは大脳の前頭葉か、それ以外の部分で考えるかによっても思考過程は様々な選択肢を彷徨うものであるけれども、睡眠欲や食欲と同じく考える必要のない性欲に有菜も大脳の判断に身を任せることになる。化け物でもいい、さっきの交接は気持ちよかった、それに縫いぐるみを着た青年かもしれないではないか。髪の毛の一部が木の葉になりつつあるのは縫いぐるみとして良く出来たものかもしれない。有菜はジッとしてていると植物人間に抱きしめられ顔を近づけられてキスをされた。有菜の赤い唇は割られて男の舌が這入り込み、有菜の舌と絡み合う。有菜は、その時、自分の穴の中の男のモノが勢いよく膨張し始めて、それは見る見るさっきの長さと太さを取り戻したのが分かった。二発、発射した割には回復が早い。独身男性なのだろう。それならば何ら問題は、ないではないか、と白い大きな尻を揺らせながら有菜は考えている。ぬいぐるみの若い男に福岡市の中心部の公園でガンガンと突きまくられ有菜は心地よさに意識を失っていった・・・。
新星は女が意識を失い地面に倒れたので接合していたモノも外れてしまった。新星のその部分は未だに屹立していたが、彼は慌ててズボンの中にモノをしまうとジッパーを上に上げる。
気持ちよさそうに地面に寝ている久留米の女を見ていると新星は抑えきれない衝動のままに両膝を有菜の前について顔を近づけて彼女の喉元を軽く噛む。その時には新星の口から長い牙が二本出ていたので、いとも容易に有菜の喉から血を吸えたのだ。大量に血を吸ったり出血されると女は死ぬので新星は、その辺は巧みに噛んだ。
すぐに立ち上がると新星は公園を出た。背広のポケットから軍手を出して両手に嵌めると天神駅に向かって速足で歩き、地下鉄七隈線に乗った。階段を降りつつ新星は自分の行く先を刹那的に考えていたのだ。野芥駅で降りると階段を登り地上に出た。夜なので暗いとはいえ街灯や車道の車のヘッドライトが明かりを、もたらしている。

SF小説・未来の出来事26 試し読み

そこで水馬社長は聞いてみたのだ、カリスマンに。
「阿片と言うものは中毒性や何か人体によくないから世界各国で禁止されているようですが。」
「ああ、その事かい。いずれ問題になるような事は我々は最初からしないよ。その辺は安心していてくれて、いい。」
カリスマンは念を押すような顔をすると、
「せっかくだから外に出てパキナ星を見ていこうよ、水馬君。君とは永続的なビジネスパートナーシップを組みたい。パキナ星は地球の二分の一の大きさで、我々人類の他は植物だけ、とさっき話したね。それを見に行くのは植物園が、いいだろう。」
「それは是非、見せてください。地球の植物とは違うものが多いんでしょうね。」
と水馬宇摩士は関心を目に示す。
「それは違うよ。徹底的に違うものもある。自動車で行こうか。」

 オープンカーに乗ってカリスマンと水馬宇摩士は車道に出た。車輪が無くて地上より浮上し、前進する。それも半重力による推進だそうだ。だから!車道とはいっても地球のようにアスファルト舗装など、されていない。タイヤを必要としないせいだろう。水馬宇摩士は助手席で風を感じつつ、
「これでは車両税なんて要らないですね。路面も傷まないし。」
ハンドルを握っていなくて自動運転させているカリスマンは、
「ハハハ。この星には税金が、そもそも存在しないよ。」
と軽く答えた。水馬宇摩士は不思議そうに、
「では政府は、どうやって運営されるんですかねえ。」
「それがねえ、後払いになっているんだよ。」
「後払い?ですか、一体、それは・・・。」
「うん、政府は一年単位で行政を行なう。それで住民の満足度によって税金を納める額は国民で決めるのさ。」
「それでは税金を払わない人も、いるんでは?」
「いや、いないよ。税金を払わないと水道を止められる。水道代は税金の中に入っているから。」
屋根のない車の助手席での眺めは、郊外から街中に入ったらしい。建物の窓はカリスマンの家の部屋の窓のように上下の高さの幅が狭い。その代り、というか道路を走る車はオープンカーが多いようだ。地球と似た星だが植物が多いせいか酸素が多いらしい。自動車も化石燃料を燃やして走る原始的な車ではないため、二酸化炭素も出るわけがない。車道も歩道も同じような空気だ。
外に出た時は暑く感じた水馬宇摩士もオープンカーの助手席では涼しく感じる。吹いてくる風だけのせいではないようだが?水馬は、
「涼しいですね。エアコンもないのに。」
「うん、後部座席と前の座席を透明な壁で覆ったのさ。それで直射日光を、さえぎっている。ぼくらの頭の上に、その透明の防護シートみたいなものが出ているよ。それで雨が降っても上からは降らない。雨の場合には目の前まで透明な防護シートを降ろすから雨に濡れることはない。オープンカーには標準装備されているよ、この透明な防護シートはね。」
との事だった。
 飛ぶように走る、形容詞ではなく、そんな車だ。地球では考えられない車に水馬宇摩士は乗っているのだ。
 動物のいない星だから動物園はなく、植物園はあるというけれど、一般的には興味を持たれないのではないか、と水馬宇摩士は考えていた。それが植物園の前の駐車場にカリスマンの車が停まり、歩いて二分の場所に植物園の入り口があったが少し行列が出来ていた。入場料はカリスマンが水馬社長の分も払ってくれた。植物園の中に来ている人たちの肌の色は地球で言えば黄色人種のものが多い。カリスマンは室内に籠っていることが多いため、日焼けしないのだろう。パキナ星のあちこちに見られるような植物を植物園に置いていても入場料を払う価値はない。
 入り口を入ると屋根のない場所で、なんと!そこには見上げても見上げきれない高さの樹木が天を目指すかのように地に根を生やしていたのだ!高層建築物のような樹木である。表示板にはパキナ星の言語で説明しているため、水馬宇摩士には分からなかった。カリスマンは日本語で、
「この木は高さ1500メートルは、あるよ。」
と云う。地球の日本の山でも1500メートルは高い山だろう。パキナ星の植物の生命力には驚かされてしまう。カリスマンは続けて、
「この木の樹齢は千年に、なるらしい。」
パキナ星の人の寿命は五百歳らしい。水馬宇摩士にとっては晴天の驟雨だった。それから屋根付きの部屋に入っていくが、天井の高い植物園だ。
直径10メートルのスイカのようなものが展示されている。高さも十メートルは、ある。水馬社長は、それを見て、
「西瓜の和菓子が何人分作れるか分かりませんね、カリスマンさん。」
と右横のカリスマンに話す。ゆったりとした表情でカリスマンは、
「あの果物は、この植物園でだけ栽培しているんだ。いずれ市場に出るが、価格はね、普通のあれ、地球の名称は西瓜、と同じ値段だ。これを見るためにパキナ星の、あらゆる場所から見物に来るよ。
ぼくらパキナ星人が富裕なのも実は、ここにある。食べ物に不自由しないのさ。働かなくても生きていける。」
「本当ですか、夢みたいですね。」
「政府で生活費を支給してくれる。でも、それより働いた方が収入はいいから遊んでいる人間はパキナ星には、いないよ。所得税は払わなくて、いいし。」
「うわーを。それでは天国ですよ、ここは。」
「地球は地獄に近いだろ?太陽の恵みが乏しいから、それで地球には貧困が生まれるのさ。庶民から税金を取らないと政府が成り立たないものね。地球のどこででもなく確か産油国の何処かも無税だったんじゃないかな、地球の。」
「産油国は太陽の恵みが、あるんですねー。日本は石油は出ないし。」
「そうだ、だから働いて金を稼ぐしか、ない。」
小さな石油の貯蔵タンクのようにも見える緑色の巨大な果実。飽きずに眺めていたい水馬宇摩士だったが、ふと、聞いてみたいのが、
「もしかしてパキナ星の人には癌はないのでは、と思いまして。」
「ああ、いい質問だ。癌に限らずパキナ星人には病気が起こらない。千歳、いや二千歳まで生きられるのが普通だ。」
「それでは老人になって生き続けるという人生ですか。」
「いや違う。老化は死ぬ五十年前から始まる。千歳で死ぬ人もいる。」
その話に感銘を受けた水馬社長は口を閉ざした。カリスマンは歩き始めたので水馬宇摩士も随行する。
 高さ四メートルの樹木が向かい合うかのように立っている。その樹木の半分の高さ、二メートルほどの地点に一方の樹木に人間の陰茎のようなものが二十センチほどの長さで垂れ下がっていた。
もう一方の樹木の半分の高さには人間の女性の陰部に相当する割れた部分があったのだ。
だが何気なく見たのでは気づかないし、水馬宇摩士も通り過ぎようとしたのだが、カリスマンが立ち止まったので水馬も急停止して、
「カリスマンさん、どうしました?」
「あ、ああ。あの一対の樹木なんだが、夫婦木と言われているんだよ。」
「夫婦木?ですって?何でしょう、それ。」
「フウフキ、では分からないだろうね、メオトギ。と言えばいいかな。」
「めおとぎ、ですか。目を研ぐんですか?あの木に目があるんですかねえ。目を、どうやって研ぐんでしょう。」
「研磨ではないんだよ。カップルだ、男女のね、これで分かるだろう。」
「ああ夫と妻、ハズバンドとワイフですね。(水馬は目を凝らして二つの木を見ると)ああ、すごいなあ。あれは人間の男女の性器に似ていますねえ。でも、それだけでしょ?」
「いいや、違う。おい、始まるよ。」
と楽しそうに声を上げるカリスマン。
男性の陰茎のような垂れ下がったものを露出している樹木のそれが、まるで人間の男性の性器のように太くなり勃起するかのように屹立したのだ。その先端は亀頭のような形状をしているが、それは伸びに伸びて一方の向かい合わせて立っているような真ん中に女性の陰部の形状を持つ樹木の、その部分に伸びていく。すると!
その樹木の陰茎に呼応したかのように女性の陰部に似ている、その部分は少し開いたようだ。それに、そこが樹液で濡れたようになる。
男の樹木ともいえる、その陰茎に似た部分は女の樹木らしい、その陰部の穴に突入したのだ!
その瞬間、女の樹木は全身を震わせるような動きを見せた。上部にある枝葉を震わせて、それは快感を顕わしているような女性の樹木の姿だ。男の樹木の男性器は女の樹木の性器の中に出没、出る、入るを繰り返す。まるで向かい合わせて立った男女の性交のような動きだ。
来園者は少ないし、大人しかいない。木が交合するなとどは水馬宇摩士には考えたこともない現象だ。しかも、よく雌の樹木を見ると腰の辺りが横に広がって人間の女性のようなのだ。それにしても立っている樹木とは思えない程、柔軟な腰の動きを見せる夫婦木だ。男の樹木の性器のような部分は幹の方向に対して直角の角度で隆起している。やがて男木は腰を激しく連続して振り続けると、その動きを止めた。どうも人間で言えば射精したらしい。水馬は、
「果てましたね。ああいう樹木は精液のような樹液を放出するのですか。」
カリスマンは苦笑いすると、
「いや、大量の花粉を放出するんだ。その点は植物だね。女の木には、あの穴の中に雌しべが、あるんだよ。それで種子が結実したら、あの陰部が開いて夫婦木の種子がバラまかれる。この星で進化した植物として大昔より研究されてきた夫婦木だ。まるで人間のようだし、それに彼らの交わりは地球の動物のような春と秋ではない、一年中だ。神様が作ったような樹木だね。」
「そうですね、あっ!」
雌の木の股間に相当する部分の穴から雄の木の長く硬いものが柔らかく平常時の寸法に戻り、引き抜かれると以前のように男の木の股間にダラリと垂れ下がった。その亀頭に相当する部分には発射した花粉が大量に残っていた。
カリスマンは微笑むと、
「地球にはない植物は沢山、ある。あの若い美人の女性展示員に頼めば面白い事をしてくれるよ。」
と水馬に話すと、夫婦木から五メートルも離れて立っている赤い上着と赤色のスカートを履いて白いベレー帽をかぶって係員のように立っている美人にカリスマンは近づいた。カリスマンに気づいた女性展示員にパキナ星語で何かを話すカリスマン、彼女は少し頬を赤らめると、うなずき、夫婦木に近づいていった。男の木に接近すると彼女はダラリと下がっている陰茎のような部分を白い柔らかな右手で握った。すると!男の木のソレは固くなり、上に陰茎を向け始めたのだ!そして勃起角度は直角ではなく、自分の幹に近づくほど、そそり立った。美人展示員が握った手を巧みに動かして、男の木の陰茎部分を愛撫するように擦(こす)ると、二分で大量の花粉を放出した。それからダラリと垂れ下がる男の木の股間のモノだ。
展示員はパキナ星語で何かを説明した。カリスマンは、
「人間の若い女性の手で握られて、こすられて花粉を出すと男の木は次の日まで花粉を出したり勃起しないそうだよ。彼女は、この星の高等植物研究所の所員で、今は体験的に、ここで働いている。」
水馬は、その神秘的な瞳の若い美人と目が合ったので黙礼すると、彼女も少し金髪の頭を下げた。目は灰色がかった黒色の瞳の睫毛の長い美女で胸も勢いよく張り出している。
 彼女は地球人の水馬を見ても珍しい顔を見るような目をしなかった。その地点からカリスマンと水馬は先に進んで行った。パキナ星は、その星の太陽に、地球と地球の太陽との距離より短いという。その影響の成果として進化した(?)植物が生まれるのかもしれない。
 植物が展示されていない広い場所は円形のソファが、いくつもの場所にある休憩所のような所らしい。カリスマンは無人のソファに腰かけると、
「水馬君、座ってくれ。」
と話しかける。水馬宇摩士が言われた通りにカリスマンの横に座るとカリスマンは、
「こういう植物園にも展示できない危険な植物も、この星、パキナ星には、ある。吸血植物などが、そうだ。」
「吸血植物?ですか。信じられない植物ですね。」
「ああ。地球には、ないだろうからね。この星にも動物が誕生した時期は、あったらしい。四つ足の動物は化石として出土する地域もある。だが・・・。」
「どうなったんでしょうか、その動物たちは。絶滅?したんですか。」
「うん、絶滅している。それは吸血植物のカーキュラに、やられてしまったらしい。近くで寝ている動物に自分の蔓を巻き付けて、その動物の血を吸うのだ。しかも動物の首に蔓が巻き付けられて、まず、それで動物は窒息死するし、ほとんどの血を吸い取られてしまう。抵抗する暇もないまま、この星の動物は死んでいった。」
水馬は茫然として、
「そんな危険な植物は駆除されたんでしょう?この星では。」
カリスマンは首を横に振ると、
「それがね、駆除しきれていないんだよ。地球のライオンやトラでも絶滅させては、いないだろう?」
「ええ、そうですね。そういえば、そうです。」
「吸血植物カーキュラを絶滅させると、この星の生態系に良くない影響を与えると考えられている。野生の植物だし、動物みたいに移動するわけでは、ないからね。パキナ星の小学校で吸血植物カーキュラを危険なものとして図入りで教えているから、人が行かない野原に行ってもパキナ星の人間ならカーキュラを、すぐに分かるんだ。」
「教育されているほど危険な植物なんですね、カーキュラは。」
「そうだなー。だから、この星も行きたいところなら何処でも行けるわけではないんだ。ごく稀にではあるけれど幼児がカーキュラに殺されているという事も数年に一度は起こっている。その場合は、もしかしたら親が自分の子供をカーキュラのそばに置くというのも考えられるから、とはいえ、この星には警察が無いんだよ。」
「警察がないなら犯罪天国ではないですか。」
「それが犯罪なんて殆ど起こらない星だから警察はない。裁判所は、あるよ。検察庁もあるし弁護士もいる。ただ警察は、ないね。」
「それなら平和な星ですね。」
「そうだね、一つの国しかないし。それに一つの大陸しかないから過去に戦争をした事もないよ。」
「どういう大陸なんでしょうか、この星の大陸は。」
「ああ。この星も地球と似た球体なんだけれど、地球で言えば北極のあたりに広い大陸がある。その他は全て海だよ。」
「それでは魚とかは?いるんですか。」
「そうだ、魚類は動物では、ないからね。海産物は豊富すぎるよ。この星の人口は十億人程度。余った海産物は植物の、特に野菜の肥料にしている。それに魚介類も大きくてね。体長が一メートルの海老が一番小さなエビだ、というエビデンスがある。五メートルや十メートルの海老も採れる。地球の海老とは少し違うが、よく似ているし、おいしいよ。だから食べ物の値段は安いんだよ。
地球の経済格差の元は貧困な食料にあると思う。少ないから値段が上がる。宝石も、そうなんだけどね。鰻でも地球のウナギは数が少ないから、高価になるけどパキナ星のウナギは多い上に体長が五メートルはあるから、こちらの鰻丼はコメよりもウナギの方を分厚く載せているよ。地球の日本で鰻丼は、その逆と思うよ、ぼくはね。」
「その通りで、ございますよ、カリスマンさん。でもカリスマン様とは中国で、お会いしましたが。」
「ああ、そうだったね。中国のウナギ料理には、しゃぶしゃぶ、もあったな。日本では、うなぎの、しゃぶしゃぶ、は皆無だろうよ。」
「そうですな。私も知りません。それを日本で、やれば・・・。」
「成功しないだろう。君は中国に和菓子を出すのが望みなんだろ?

「ええ、ええ。左様で御座います、カリスマン様。秘密の成分を、よろしく御指導のほどを。」
「ああ。分かっているともさ。それはタダって訳には、いかない。しかしだ。地球の貨幣を貰っても仕方がない。金貨とかなら若干の価値は、あるけどパキナ星の金の埋蔵量は地球の十万倍は、あるし人口は地球の何十分の一だろう。金(かね)の価値は、それほどないし銀や銅も同じだね。それより創造的なものに価値があるからね、この星は。」
「はあ。わたくしどもの和菓子も創造的といえば創造的ですが。」
「いや、それも自然にあるものを加工しただけだからね。真に創造とはいえない。地球という星は大宇宙を作られた神様からすれば、恵の少ない星なんだよ。地球では金、すなわちゴールドが価値が高いのも埋蔵量が少ないからだ。キリストが何と叫ぼうと大宇宙を創造された創造主は地球を恵の少ないものとして作られた。我々の星、パキナ星は創造主の恵みは、もっとある。地球は寧ろ、ユダヤ人が信奉する宗教のようなものが生きるのに、ふさわしい。
すなわち、だね。物質の方が価値が高いのだよね。古い地球の世界では人が住める星は自分たちのいる所だけ、という発想だった。天動説だった。後は天国や地獄を考えた。神様は地球だけを、つまり人間が住める星として、作られたと考えたのだ。
なんという狭い発想だろうか。キリスト教は、その狭い発想の範囲内にあるのだ。大宇宙はキリストが考えたよりも遥かに、遥かに広大だ。我々の星にはキリスト教も仏教もない。地球の宗教は何もない。パキナ星は海には魚が多すぎて漁師は何時でも楽に大漁になる。雨の少ない年もないので米や小麦粉、その他の野菜が不足する事もない。野菜は例年、余っている。金(きん)が楽に取れる砂漠もある。金が豊富すぎると値段が高くならない。
ダイヤモンド。これもパキナ星には地球のガラス玉と同じくらい、ある。ルビー、サファイヤ、エメラルド、なども大量に採掘出来る星なので、それらの地球の宝石は、この星では珍しくないのだ。
では、われわれパキナ星人にとって珍しいものは、なにか。他の惑星の人間、地球人もそうだが、それも左程、珍しいものではなくなった。さっきの美人展示員が君を見ても平然としていたのを見たね。
 そういう訳で君、水馬宇摩士・君には或る所に行き、或る人に会って或る事をしてもらう。そうすれば対価が得られるので、それを私への謝礼にしてもらいたい。」
というカリスマンの話だ。
水馬宇摩士には良く分からなかったが、
「はい、そうします。それで御役に立てれば、と思います。」
と答えておいた。
カリスマンは立ち上がると、
「植物園は残りもあるけど、外に出よう。出口も入り口の近くだから。」
二人は最短の道で植物園を出た。車輪のない車でカリスマンが向かったのは企業のビルが立ち並んだようなオフィス街のような場所。
日本のオフィス街との違いはパキナ星の企業ビルには、それぞれ広い駐車場があり、そこには車輪のない車が停車している。地上に停車できない場合は地下にも駐車場がある。
カリスマンが停車させた駐車場の企業ビルは三階建てで、ガラス張りの入り口を入ると受付嬢が赤いベレー帽をかぶって受付の場所に座っていた。カリスマンは彼女の方に歩いていくと水馬も後を追った。パキナ星の言葉で話すカリスマンに対して受付嬢もパキナ星語で答える。彼女の肌の色は地球の白人より白い。氷のような肌の色だ。透明ではない氷の部分の白というべきだ。
カリスマンは後ろを振り向くと、
「最上階だ、エレベーターで昇ろう。」
エレベーターも反重力で動いているのか、瞬間的な移動だった。エレベーターを降りるとカリスマンは目の前にある部屋のドアへ行き、立ち止まった。そのドアの上部は広いパネルのような部分で、そこに何と部屋の中にいるらしい金髪で三十代らしき女性の顔が映った。その女性にはカリスマンが見えたようだ。ドアは右に移動して開いた。二人が入ると、その女性は近づいてきて、
「お待ちしていましたわ。カリスマンさん、と地球の方。ミズウマさんね?どうぞ、よろしく。」
地球の北欧の女性をさらに色白にしたような事務服を着たパキナ星の女性は右手を水馬に差し出した。握手をして感じられたのは暖かな手だ、という感触を水馬は感じた。ドアに自分の顔を映すのはパキナ星の独特の習慣だろうか。色々と不思議な思いの水馬の顔を見て、その女性は、
「アヌンと言います、私。日本に住んでいたこともあって、日本語は得意です。スウェーデン人という事でパスポートも持っていたし、コンビニでバイトをした事も、あります。地球に降りる前に日焼け機械で肌を焼いてから日本に降りたので、異星人には見られませんでした。東京に行って或る業界で仕事をしていましたけど、今は、それは言わない事にします。まずは先に水馬さんの和菓子が中国で成功してからの話です。成功しますよ、あなたは。水馬さん、又、会いましょう。」